JPH0651928B2 - ピッチ系炭素繊維と製造方法 - Google Patents

ピッチ系炭素繊維と製造方法

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JPH0651928B2
JPH0651928B2 JP62219224A JP21922487A JPH0651928B2 JP H0651928 B2 JPH0651928 B2 JP H0651928B2 JP 62219224 A JP62219224 A JP 62219224A JP 21922487 A JP21922487 A JP 21922487A JP H0651928 B2 JPH0651928 B2 JP H0651928B2
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    • D01NATURAL OR MAN-MADE THREADS OR FIBRES; SPINNING
    • D01FCHEMICAL FEATURES IN THE MANUFACTURE OF ARTIFICIAL FILAMENTS, THREADS, FIBRES, BRISTLES OR RIBBONS; APPARATUS SPECIALLY ADAPTED FOR THE MANUFACTURE OF CARBON FILAMENTS
    • D01F9/00Artificial filaments or the like of other substances; Manufacture thereof; Apparatus specially adapted for the manufacture of carbon filaments
    • D01F9/08Artificial filaments or the like of other substances; Manufacture thereof; Apparatus specially adapted for the manufacture of carbon filaments of inorganic material
    • D01F9/12Carbon filaments; Apparatus specially adapted for the manufacture thereof
    • D01F9/14Carbon filaments; Apparatus specially adapted for the manufacture thereof by decomposition of organic filaments
    • D01F9/145Carbon filaments; Apparatus specially adapted for the manufacture thereof by decomposition of organic filaments from pitch or distillation residues

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Description

【発明の詳細な説明】 (イ)産業上の利用分野 本発明は、ピッチから得られる高性能を有し、加工の優
れた(軽度炭化)炭素繊維及びこれを製造する方法に関
する。
さらに詳しくは、本発明は、ピッチの紡糸の際に塗布し
た耐熱性シリコーン系紡糸油剤が部分的に残留する程度
に一次炭化処理を軽くし、残留する耐熱性シリコーン系
紡糸油剤により集束性、潤滑性を高く保ち、優れた加工
性等を有する(軽度炭化)炭素繊維及びこれの製造方法
に関する。
本発明によるピッチ系(軽度炭化)炭素繊維は、炭素分
子の結晶および配向組織が不完全であり、しかも特に、
弛緩状態での二次炭化処理により結晶および配向組織が
高度に成長して引張強度および弾性率が大幅に向上する
性能を有する。
また、本発明によるピッチ系(軽度炭化)炭素繊維は、
ボビンへの巻取りの容易性、高度の炭化あるいは黒鉛化
の実現、その工程への移送の容易性、さらに製織、製編
などの加工上取扱性の簡便化、樹脂の繊維強化の際に炭
素繊維の取扱性の容易さなど種々の次段工程への適合性
に優れている。
また、本発明によるピッチ系(軽度炭化)炭素繊維は、
炭化程度が低い状態にあるので加工が容易であり、炭化
程度が高いものより低コストで加工を実施できるため、
加工ロスを生じても製品コストにひびく割合が小さい利
点を有する。
また、本発明によるピッチ系(軽度炭化)炭素繊維は、
炭化程度の高いものに比べて曲率半径の小さい曲げに対
して丈夫であり、しかもその曲げた部分が二次炭化処理
により応力緩和し、その曲げた部分の耐磨耗性、耐屈曲
性および耐スクラッチ性が優れている特徴を有する。
(ロ)従来の技術 高軟化点のピッチを溶融紡糸して得た繊維を酸化させて
不融化した後、不活性雰囲気中で炭化し、炭素繊維を得
る方法は特公昭41−15728号公報に開示されてい
る。
この方法はたしかに優れたピッチ系炭素繊維の製造法で
あるが、開示されている方法によると、高弾性率の繊維
を得るには炭化の際に緊張状態を保つ必要がある。不融
化したピッチ繊維は極めて脆いため、緊張状態で把持す
ることが困難であり、この方法によって高弾性率の繊維
を得ることは事実上不可能と考えられる。
この課題を解決するために、特公昭49−8634号公
報、特公昭49−19127号公報などに開示されてい
るように光学異方性ピッチを用いる方法が提案されてい
る。
光学異方性ピッチは易炭化、易黒鉛化材料であり、高強
度、高弾性率の炭素繊維を与える原料として優れた性質
を示す。とくに、炭化の際に緊張状態に置く必要がない
ため、コスト的にも品質的にも有利な方法と考えられ
る。
このような光学異方性ピッチからの炭素繊維は、容易に
高強度、高弾性率にすることが可能である半面、加工時
に折れるなど傷つき易い課題を有している。
このような課題は脆い繊維には多かれ少なかれ存在して
おり、例えばガラス繊維やPAN系炭素繊維などでは潤
滑性と集束性を付与するため、サイジング剤又は油剤を
塗布している。
ところが、光学異方性ピッチからの炭素繊維の場合、易
黒鉛化性がわざわいしてサイジング剤又は油剤をはじめ
傾向があり、均一に塗布し難いため潤滑性も集束性も不
足する課題がある。
この課題を解決するために、特開昭60−21911号
公報では、不融化後400〜650℃で軽度に炭化処理
する方法を開示している。この方法は炭素繊維の弾性率
を小さく保ち、傷付き難くするにはある程度有効である
が、炭化後の集束性や潤滑性が不十分であるため、加工
性が良好でない課題を有している。
このような課題を解決するために、一次炭化後に油剤を
塗布することが一般的な方法である。しかし、軽度に炭
化したピッチ繊維は油剤をはじく傾向が生じており、一
方ではまだ強度が上がっていないため、油剤の塗布の際
に繊維に傷を付け易い課題を有する。
ピッチ系炭素繊維の油剤に対して最も厳しい処理条件
は、酸化性雰囲気下での熱処理である不融化工程である
ので、油剤の酸化分解を避けるため、不融化工程の後に
油剤を付与することが有利と考えられる。
この方法の課題は、不融化ピッチ繊維が紡糸後のピッチ
繊維と同等以上に脆いため、油剤の付与時に繊維に傷を
付け易いことである。この工程での油剤の付与にはスプ
レー式が採用されているが、飛散して失われる量が多
く、シリコーン系油剤のように高価なものに対しては採
用し難い課題がある。
また、特開昭60−173121号公報などによると、
メソフェースピッチ繊維を不融化後、二段階炭化により
高強度・高弾性率の炭素繊維を得るに際し、該ピッチ繊
維にシリコーン系油剤(集束剤)を施し集束することが
記載されている。
そもそも、このような油剤(集束剤)はその後の熱処理
(不融化、一次炭化、二次炭化など)段階での支障など
を考慮して分解若しくは飛散して失われるものを用いる
のが普通であり、しかもこの実施例によるとジメチルシ
リコン油のように熱処理で分解または放出されるタイプ
を用いており、シリコーン系油剤の一部を熱処理の段階
でも積極的に残存させることは到底考えつかないもので
あった。
(ハ)発明が解決しようとする課題 本発明は光学異方性ピッチもしくはそれと近似の炭化特
性を有する高軟化点のピッチから製造される炭素繊維に
ついて、脆さ、潤滑性の不足および集束性の不足を解決
することを目的とする。
ピッチ繊維の炭化は不活性雰囲気中の熱処理により一般
に行われており、その効果は温度と時間に支配されてい
ると一般に考えられている。
しかし、得られた炭素繊維の加工性について詳細に検討
すると、ピッチ繊維などに集束のため等に施された油剤
として耐熱性シリコーン系紡糸油剤を使用すると、その
油剤の一部が残留することによる特有の効果が存在する
ことが分かり、特に潤滑性と集束性に関しては顕著であ
ることが分かった。
また、軽度炭化処理の際の不融化ピッチ繊維の状態とく
に、搬送用ベルト上での炭化によるなど、炭化装置の種
類による効果の差異も存在する。
これらの理由ついては明確ではないが、潤滑性と集束性
が良好なピッチ繊維の形態が、その炭素繊維に部分的に
残留する耐熱性シリコーン系紡糸油剤の作用によって維
持され、従って、その炭素繊維の加工性に大きく影響を
及ぼすものと推察される。
(ニ)課題を解決するための手段 すなわち、本発明は: 引張強度が12.6〜49.2kgf/mm2である
ピッチ系炭素繊維において、耐熱性シリコーン系紡糸油
剤が繊維重量に対し0.15%〜0.42%の残量で該
ピッチ系炭素繊維に残留している、ピッチ系炭素繊維を
提供する。さらに、 高軟化点のピッチを溶融紡糸した後、不融化処理お
よび炭化或いはさらに黒鉛化処理するに際し、紡糸した
ピッチ繊維に耐熱性シリコーン系紡糸油剤を塗布した
後、搬送用ベルトに載せた状態で、最高200〜400
℃の酸化性雰囲気中に導入して該ピッチ繊維を不融化さ
せ、引き続いて搬送用ベルトに載せた状態で、不活性ガ
ス雰囲気中、最高温度500〜700℃、最高温度での
処理時間3〜60秒、かつピッチ系炭素繊維に残留する
耐熱性シリコーン系紡糸油剤が繊維重量に対して0.1
5%〜0.42%の残量となる条件で炭化処理をする、
引張強度が12.6〜49.2kgf/mm2であるピッ
チ系炭素繊維の製造方法を提供する。また、 前記の製造方法において、ピッチ繊維を搬送ベル
トに載せる際に、該ベルト面とピッチ繊維の送り込み方
向との角度を小さくする点にも特徴を有する。
以下、本発明を詳細に説明する。
(i)ピッチ原料: 本発明において高軟化点のピッチとしては、光学異方性
ピッチのような易黒鉛化性ピッチ、これと近似の黒鉛化
性を示すドーマントメソフェースピッチやプリメソフェ
ース炭素質が含まれる。
(ii)耐熱性シリコーン系紡糸油剤: 本発明に用いられる耐熱性シリコーン系紡糸油剤として
は、炭化処理(一次炭化)によっても該油剤が完全には
分解または飛散せず炭素繊維に一定量残留するものなら
特に限されないが、耐熱性が500℃以上の油剤が望ま
しい。
ここで油剤の耐熱性とは、窒素気流中で昇温度10℃/
分の熱天秤〔理学電機製TG高温型CN8068A
2;;サンプルサイズ10mg、窒素流量40ml/
分、セル直径5mm、セル深さ2.5mm〕による減量が事
実上0になる(昇温100℃当たりの重量変化が感量以
下になる。感量は初期重量の0.1%)温度により指標
されるものである。
本発明に使用される耐熱性シリコーン系紡糸油剤として
は、例えばポリシロキサン型やポリアミノシロキサン型
を挙げることができる。
ピッチ繊維に対して耐熱性シリコーン系紡糸油剤を塗布
する際に、希釈溶偉材のほかにシリコーン系でない界面
活性剤や潤滑剤あるいは酸化防止剤などの添加剤を混合
することができる。
耐熱性シリコーン系紡糸油剤の残量については、繊維を
灰化しIPC発光分析で珪素含有量を測定し、その数値
を耐熱性シリコーン油剤の主構成分子の珪素含有量とみ
なし油剤の残量として算出する。
耐熱性シリコーン系紡糸油剤の残留量は、繊維重量に対
して0.15〜0.42%である。油剤の残量が0.1
5%未満と少なすぎる場合に、糸条の集束性や潤滑性が
乏しくなり、静電気によるトラブルを生じ易くなる。ま
た油剤の残量が0.42%を越えて多すぎる場合には、
紡糸時に付与する油剤量が多くなり、コスト的に不利で
あるほか、不融化の速度が低下するので好ましくない。
この不融化速度が低下する理由は明らかではないが、ピ
ッチ繊維の表面が油剤の膜に広く覆われることによって
酸素の拡散が妨げられることと、炭化炉内に油剤の蒸気
が多量に発生して酸素を炉外に追い出す結果、有効な酸
素濃度が低下するためではないかと考えられる。
(iii)ピッチ系(軽度炭化)炭素繊維: 本発明によるピッチ系(軽度炭化)炭素繊維は、引張強
度が12.6〜49.2kgf/mm2であり、耐熱性シ
リコーン系紡糸油剤が0.15〜0.42%の残量で該
ピッチ系炭素繊維に残留することと相俟って、次段の加
工及び/または処理に好適に付与することができる。
本発明のピッチ系(軽度炭化)炭素繊維において、この
ピッチ系炭素繊維の引張強度が12.6kgf/mm2
り小さくなると加工時に繊維が傷付き易くなるので好ま
しくない。また、引張強度が49.2kgf/mm2より
大きくなると加工時に折れやすくなり、耐磨耗性が低下
するので好ましくない。
また、このピッチ系炭素繊維の伸度が0.3%より小さ
くなると加工時に繊維が傷付き易くなるので好ましくな
い。また、伸度が8.0%より大きくなると、製品の形
態および寸法安定性が悪くなるので好ましくない。
軽度な炭化によって得られた本発明によるピッチ系炭素
繊維は、黒鉛結晶の積層厚さLc(002)8〜32
Å、好ましくは16〜28Å、黒鉛結晶の面間隔d
002が3.46〜3.49Åと言う微細構造を持ち、
比重が1.30〜1.70、好ましくは1.35〜1.
6、電気比抵抗が5×10〜5Ω・cm、好ましくは1
×10〜1×10Ω・cmを有するものである。
また、元素分析によると、本発明によるピッチ系(軽度
炭化)炭素繊維は、酸素2.0〜15.0重量%、硫黄
0.07〜0.7重量%含有していることが望ましい。
これらが少なすぎると、加工性で見劣りするものとな
り、逆に多すぎると2000℃以上の高温炭化した最終
製品の性能低下を引き起こす傾向がある。
(iv)ピッチ系炭素繊維の加工など: 本発明のピッチ系炭素繊維は、弛緩状態で二次炭化する
ことにより、引張強度が150kgf/mm2以上、好ま
しくは200〜450kgf/mm2、弾性率が30,0
00kgf/mm2以上、好ましくは40,000〜10
0,000kgf/mm2という向上した性能をする炭素
繊維(黒鉛繊維)にできる。
すなわち、本発明によるピッチ系炭素繊維は、弛緩状態
での二次炭化処理により強度および弾性率の上昇を可能
とすることができる。
二次炭化処理後の炭素繊維の引張強度が150kgf/
mm2より小さいものでは製品の耐疲労性、耐酸化性が劣
るので望ましくない。
また、炭化処理後の弾性率が30,000kgf/mm2
より小さいものでは耐疲労性、耐酸化性が劣り、とくに
加工時の寸法変化が大きいので望ましくない。
その二次炭化処理によって高強度・高弾性率化した炭素
繊維の微細構造は、黒鉛結晶の積層厚さLc(002)
が36Å以上、好ましくは70〜240Å、積層厚さL
c(002)の増加が5Å以上、黒鉛結晶の面間隔d
002が3.46Å以下、好ましくは3.36〜3.4
4Å、面間隔d002の減少が0.03Å以上と緻密な
微細構造へと変えられるのである。
(v)ピッチ系炭素繊維の製造法: 本発明の好適な製法においては、高軟化点のピッチを溶
融紡糸した後、一旦巻き取るかあるいは巻き取らずし
て、得られたピッチ繊維を搬送用ベルトに載せて最高2
00〜400℃の酸化性雰囲気中に連続的に導入して該
ピッチ繊維を不融化させ、引き続き搬送用ベルトに載せ
て不活性ガス雰囲気中最高温度500〜700℃、最高
温度での処理時間30〜60秒、かつピッチ系炭素繊維
に付着して残留する耐熱性シリコーン系紡糸油剤が0.
15%〜0.42%の残量となる条件で軽度(一次)炭
化処理を行うものである。
このような手段により得られたピッチ系炭素繊維は、次
段の加工に移行する。
本発明に使用する耐熱性シリコーン系紡糸油剤は紡工程
中に、搬送用ベルトに載せる前に付与することが好まし
い。該油剤が軽度炭化後の繊維に残留していると、次段
の繊維の巻き取り、あるいは種々の加工時の取扱性を改
善する効果がある。
搬送用ベルトに載せた状態で軽度(一次)炭化処理する
ことの好ましい理由は明らかでないが、炭化装置の種類
によってピッチ繊維の取扱性が異なり、とくに、搬送用
ベルトの上で炭化したものが最も取扱性が優れている。
例えば、一次炭化時にピッチ繊維を耐熱性ボビンに巻い
て処理したもの、ケンス中で処理したもの、ベルトに載
せた処理したものなど一次炭化処理後のピッチ系炭素繊
維を比較したところ、これらは強度、伸度および弾性率
では大差ない値を示したが、巻き取り、製織、製編など
の加工性ではベルトに載せて一次炭化処理したものの集
束性が優れていることが分かった。
紡糸後のピッチ繊維を搬送用ベルトに載せる様式は、す
でに形成された繊維層の中に後から載せられた繊維が潜
り込んで積層された繊維の順番が逆転されることのない
様式であれば、どのようなものでも良い。
搬送用ベルトに載せられたピッチ繊維が、振動や気流に
よって移動しないように搬送用ベルトは多孔質のものと
し、背面から吸引してピッチ繊維をベルトに圧着するこ
とが好ましい。この場合に、搬送用ベルトはネットコン
ベアーであることが好ましい。
搬送用ベルトに送り込まれるピッチ繊維は、ベルト面に
垂直に近い方向から送り込まれると、ベルトの孔やすで
に形成されたピッチ繊維層の中に突き刺さることがある
ので、走行するピッチ繊維を円運動、8の字運動など種
々のパターンで揺動させて、ベルト面とピッチ繊維が送
り込まれる方向とのなす角度を小さくすることが好まし
い。
さもないと繊維とベルトが衝突する際に、ショックで開
繊されることがあり、繊維の順番の逆転の原因になった
り、炭化後の加工において欠点を生じる原因になる。
本発明の好適な製法において、紡糸後のピッチ繊維に本
発明よる耐熱性シリコーン系紡糸油剤を塗布した後、好
ましくは搬送用ベルトに載せて、酸化性雰囲気の中で最
高200〜400℃に加熱して不融化する。
加熱温度は一定であるよりも、入口では200℃以下の
低温であり、徐々に昇温して出口付近で最高値とするこ
とが好ましい。不融化のための加熱温度は、最高200
〜400℃、好ましくは最高250〜350℃である。
不融化を終わったピッチ繊維は極めて弱いので、繊維に
力を加えるような処理をすることは出来ない。そのまま
搬送用ベルトに載せて軽度炭化装置に送入することが好
ましい。搬送用ベルトにのせた状態での軽度炭化処理に
際しては、すでに耐熱性シリコーン系紡糸油剤が施され
てあるので、この間に油剤などを付与する必要はない。
軽度(一次)炭化処理は不活性雰囲気中、最高温度50
0〜700℃、最高温度での処理時間30〜60秒、か
つピッチ系炭素繊維に付着して残留する耐熱性シリコー
ン系紡糸油剤が0.15%〜0.42%の残量である条
件での処理を行うことが必要である。
具体的には、軽度一次)炭化処理の初期には、好適な不
融化工程と連続して行うため、400℃付近の温度で不
融化工程での雰囲気である酸化性雰囲気を不活性ガスに
より置換することから始めることが好ましい。
不活性ガスによる置換が不十分である場合、繊維がやせ
たり、強度上昇が不十となるなどの問題を生じる。最高
温度が500℃未満では得られるピッチ系炭素繊維の引
張強度が小さくなりすぎ、最高温度が700℃を越える
と曲げに対する耐性が小さくなりすぎて、製織等に適さ
なくなる傾向がある。
炭化に要する時間は繊維の太さによって異なるが、初期
には10〜100℃/分でゆっくりと昇温するととも
に、十分に雰囲気の不活性ガスによる置換を行い、終期
には30秒ないし60秒の間一定温度に保つことが好ま
しい。
最高温度での処理時間が60秒を越えるとピッチ系炭素
繊維への油剤残留量が少なくなりすぎ、30秒未満で
は、処理温度にもよるが、ピッチ系炭素繊維への油剤残
留量が多すぎたり、引張強度が十分でなくなったりする
ので好ましくない。
(vi)ピッチ系炭素繊維の次段の加工: 得られたピッチ系(軽度炭化)炭素繊維は、引き続きボ
ビン等に巻き取って次段の加工を行うことができる。即
ち、さらに製織、製編などの加工を行った後、引き続き
さらに炭化を進めて高強度、高弾性率の炭素繊維とする
ことができる。
また、さらに高温で処理して黒鉛繊維とすることができ
る。このように引き続き炭化を進めるに当たっては、繊
維に緊張を与えながら行うことができ、強度、弾性率を
大きくすることができる。
本発明によるピッチ系炭素繊維は、搬送用ベルトの上か
らボビン等に巻き取ったり或いは次段の高温処理の炭化
炉に送るに際し、ローラー等により引張ることが必要で
ある。具体的には、搬送用ベルト上に載せられた炭素繊
維層を逆転させた後、引出して張力を加え、直線状に形
を修正してやる。
搬送用ベルト上の繊維層の逆転には種々の方法を挙げる
ことができるが、炭素繊維層の上に第二のベルトを接触
させ、方のベルトで炭素繊維層を挟んで上下を転させた
後、第二のベルト上に炭素繊維層を載せ、その上層から
炭素繊維を引出す方法が最も好ましい。
(vi)ピッチ系炭素繊維の特徴: 本発明によるピッチ系炭素繊維は、高度に炭化を進めた
繊維と異なり軽度炭化繊維なので、弾性率が小さく、集
束性が優れており、製織や製編などの小さい曲率半径で
曲げる工程を有する加工に対して優れた加工性を有す
る。
また、炭化を進めた繊維よりも低コストであるため、加
工ロスの多い製品の場合非常に有利である。
また、炭化に際して歪みの緩和が起こるため、小さい曲
率半径で曲げた部分の耐磨耗性や耐疲労性が優れてい
る。
また、磨耗により毛羽だち難く、耐屈曲性や耐スクラッ
チ性も優れている。
本発明によるピッチ系炭素繊維は、各種樹脂プレポリマ
ー、各種接着剤、各種油剤、各種サイジング剤などに濡
れ易く、優れた加工性を有する。
なお、本発明において、ピッチ系炭素繊維の微細構造を
構成する黒鉛結晶の面間隔d002とは、X線回折装置
を用いて、繊維を粉未化し、試料に対して約10重量%
のX線標準用高純度シリコン粉末を内部標準物質として
加え混合し、試料セルに詰め、Cukα線を線源とした
X線デフラクトメーター法によって、炭素002回折線
と標準シリコンの111回折線を計測したのち、ローレ
ンツ偏光因子、原子散乱因子、吸収因子に関する補正を
行った002回折ピークから炭素002面の回折角
(θ)を算出し、d002=1.5418Å/2sin
θの式から求める。
また、積層厚みLc(002)は上記X線回折曲線から
Kα、Kα二重線の補正を行った炭素002回ピー
クの半価巾(β)を算出し、Lc=91/βの式を用い
て求められる。
(実施例) 以下に実施例を挙げて、更に詳細に説明するが、こらは
本発明の範囲を制限しない。
実施例において、特に記載のない限り「%」は重量で示
す。
(実施例1) 熱接触分解(FCC)残油の初溜450℃、終溜560
℃(常圧換算)の溜分に、メタンガスを送入しながら4
00℃で6時間熱処理し、さらに330℃で8時間加熱
してメソフェースを成長させ比重差によりメソフェース
を沈降分離した。
このピッチは光学異方性成分を100%含有し、キノリ
ン不溶分43%、トルエン不溶分82%を含有してい
た。
このピッチを出口に拡張部を有する紡糸孔より紡出し、
油剤を常法により塗布した後270m/分で引き取り、
搬送用ベルトの上に螺旋状の軌跡を描くように揺動させ
ながら堆積させた。
油剤は耐熱性630℃、粘度230センチストークスの
シリコーン系のものを用いた。油剤の付着量は繊維重量
に対して3.0%であった。
引き続き、入口160℃で、出口320℃の炉中で、昇
温速度3℃/分で空気による酸化処理を行い、不融化し
た。不融化炉から出た繊維を搬送用ベルトに載せたまま
で炭化炉に送入した。炉の入口の温度は420℃で、5
00℃になるまでは5℃/分、580℃になるまでは2
0℃/分で昇温しながら、雰囲気の不活性ガスによる置
換を行った。その後45秒間580℃で処理を行った
後、炉から取り出し、搬送用ベルトと第二のベルトで挟
んで上下を反転させ、巻き取った。
得られた繊維に残留している油剤量は0.25%であ
り、強度27kgf/mm2、弾性率820kgf/mm2
伸度3.3%でかつLcは26Å、d002は3.47
6Å、比重は1.52、電気比抵抗は2×107Ω・cmであ
った。
この繊維を280℃のアルゴン中で2分間処理したとこ
ろ、強度290kgf/mm2、弾性率75,00kgf
/mm2、伸度0.4%の高強度、高弾性率繊維となっ
た。
アルゴン中での熱処理前後の繊維を用いてその製織性を
調べた。平織りの場合には両者の差は顕著で無かった
が、二重織りでは熱処理前の繊維が製織し易く、多重織
りや三次元織りでは熱処理後の繊維の製織が困難であっ
た。
アルゴン中での熱処理前後の繊維を平織りしたものの性
能を調べた。熱処理前の繊維の織物はアルゴン中で熱処
理して比較した。
両者とも強度、伸度、弾性率については大きな差がなか
ったが、熱処理後の繊維を織物にしたものはやや嵩高
く、磨耗時に毛羽だち易い傾向があり、耐屈曲性、耐ス
クラッチ性がやや劣り、耳部の耐磨耗性が大幅に劣って
いた。
(比較例1) 実施例1の紡糸後のピッチ繊維をアルミナ磁器製のボビ
ンに巻き取り、実施例1とほぼ同様の昇温条件で不融化
及び炭化処理を行った。
油剤の残留量は0.09%で、炭化処理後の冷却が遅い
ため分解ロスが多くなったものと見られる。得られた繊
維の強度、伸度、弾性率、結晶の状態は実施例1と大差
無かったが、製織性は大幅に劣り、多軸織物や三次元織
物の製織は困難であった。
また、実施例1よりも紡糸後の油剤付着量を多くして残
留量を0.25%にしたところ、製織性は実施例1に近
くなったが、糸の巻形状が悪く、糸切れが頻発し製織準
備工程を通りにくかった。
(比較例2) 実施例1の紡糸後のピッチ繊維を耐熱合金製のケンスに
取り、実施例1とほぼ同様の昇温条件で不融化及び炭化
処理を行った。油剤の残留量は0.08%で、比較例1
と同様炭化処理後の冷却が遅いため、分解ロスが多くな
ったものと見られる。得られた繊維の強度、伸度、弾性
率、結晶の状態は実施例1と大差無かったが、ケンスか
ら取り出すことが難しく、製織性の評価は困難であっ
た。
また、実施例1よりも紡糸後の油剤付着量を多くして残
留量を0.25%目標でケンスに取ったところ、表層部
と底部とで油剤の残留量が大幅に異なるため、加工特性
に差を生じ、品質の良い織物は出来なかった。
(実施例2) 実施例1と同じピッチを用い、同じ紡糸条件で紡し、搬
送用ベルト上に積層した状態で不融化処理した繊維を、
炭化炉の最高温度を変えて炭化処理した後、同様にして
巻き取り、油剤の残留量を測定し、製織により加工性を
評価した。
その結果を第1表に示す。
(ホ)発明の効果 本発明によるピッチ系(軽度炭化)炭素繊維は、不融化
或いは炭化後に新たな油剤等を付与しなくても、集束
性、潤滑性が優れており、工程通過性、加工性が良好で
ある。
本発明によるピッチ系(軽度炭化)炭素繊維は、従来の
紡糸油剤の残留のない炭化程度が高いものより加工が容
易であり、油剤等の付与を必要としないため低コストで
ある。
本発明によるピッチ系(軽度炭化)炭素繊維は、紡糸油
剤の残留のない炭化程度が高いものに比べて、曲率半径
の小さい曲げに対して丈夫であり、その曲げた部分が二
次炭化処理によって応力緩和し、その曲げた部分の耐磨
耗性、耐屈曲性および耐スクラッチ性が優れている。
本発明によるピッチ系(軽度炭化)炭素繊維は、種々の
繊維複合材料にそのままで或いは炭化処理、または黒鉛
化処理を行って使用できる。また活性炭素繊維の原料と
することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−126324(JP,A) 特開 昭60−173121(JP,A)

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】引張強度が12.6〜49.2kgf/mm
    2であるピッチ系炭素繊維において、耐熱性シリコーン
    系紡糸油剤が繊維重量に対し0.15%〜0.42%の
    残量で該ピッチ系炭素繊維に残留していることを特徴と
    する、ピッチ系炭素繊維。
  2. 【請求項2】高軟化点のピッチを溶融紡糸した後、不融
    化処理および炭化或いはさらに黒鉛化処理するに際し、
    紡糸したピッチ繊維に耐熱性シリコーン系紡糸油剤を塗
    布した後、搬送用ベルトに載せた状態で、最高200〜
    400℃の酸化性雰囲気中に導入して該ピッチ繊維を不
    融化させ、引き続いて搬送用ベルトに載せた状態で、不
    活性ガス雰囲気中、最高温度500〜700℃、最高温
    度での処理時間30〜60秒、かつピッチ系炭素繊維に
    残留する耐熱性シリコーン系紡糸油剤が繊維重量に対し
    て0.15%〜0.42%の残量となる条件で炭化処理
    をすることを特徴とする、引張強度が12.6〜49.
    2kgf/mm2であるピッチ系炭素繊維の製造方法。
  3. 【請求項3】ピッチ繊維を搬送ベルトに載せる際に、該
    ベルト面とピッチ繊維の送り込み方向との角度を小さく
    することを特徴とする、特許請求の範囲第2項記載のピ
    ッチ系炭素繊維の製造方法。
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