JPH05171518A - ピッチ系炭素繊維 - Google Patents
ピッチ系炭素繊維Info
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- JPH05171518A JPH05171518A JP35698591A JP35698591A JPH05171518A JP H05171518 A JPH05171518 A JP H05171518A JP 35698591 A JP35698591 A JP 35698591A JP 35698591 A JP35698591 A JP 35698591A JP H05171518 A JPH05171518 A JP H05171518A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 約1800〜2300℃の低温焼成で得ら
れ、然も密度が2.20g/cm3 以下で2000℃で
焼成したときの引張弾性率が65ton/mm2 以上の
低密度、高弾性を示し、且つ融膠着度が少なく糸扱い性
が良好なピッチ系炭素繊維を提供することである。 【構成】 密度(ρ)が1.95〜2.20g/cm3
の範囲にあり、X線構造パラメーターの積層厚み(Lc
002 )が80〜180Å、層間隔(d002 )が3.39
〜3.44Å、配向角(φ)が5.0°〜10.0°の
範囲にあり、且つ前記密度、積層厚み、層間隔及び配向
角が式:8.0<ρ×Lc002 /(φ×d002 )<1
5.0を満足し、融膠着度が20%以下で糸扱い性が良
好な高弾性率炭素繊維の特性を有するように規定した。 【効果】 目的の性能の炭素繊維が得られる。
れ、然も密度が2.20g/cm3 以下で2000℃で
焼成したときの引張弾性率が65ton/mm2 以上の
低密度、高弾性を示し、且つ融膠着度が少なく糸扱い性
が良好なピッチ系炭素繊維を提供することである。 【構成】 密度(ρ)が1.95〜2.20g/cm3
の範囲にあり、X線構造パラメーターの積層厚み(Lc
002 )が80〜180Å、層間隔(d002 )が3.39
〜3.44Å、配向角(φ)が5.0°〜10.0°の
範囲にあり、且つ前記密度、積層厚み、層間隔及び配向
角が式:8.0<ρ×Lc002 /(φ×d002 )<1
5.0を満足し、融膠着度が20%以下で糸扱い性が良
好な高弾性率炭素繊維の特性を有するように規定した。 【効果】 目的の性能の炭素繊維が得られる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、1800〜2300の
低温焼成で得られ、然も密度が2.20g/cm3 以下
で2000℃で焼成したときの引張弾性率が65ton
/mm2 以上の低密度、高弾性を示し、且つ繊維の融膠
着度が少なく糸扱い性が良いピッチ系炭素繊維に関す
る。本明細書にて「炭素繊維」とは特に明記しない場合
には炭素繊維のみならず黒鉛繊維をも含めて使用する。
低温焼成で得られ、然も密度が2.20g/cm3 以下
で2000℃で焼成したときの引張弾性率が65ton
/mm2 以上の低密度、高弾性を示し、且つ繊維の融膠
着度が少なく糸扱い性が良いピッチ系炭素繊維に関す
る。本明細書にて「炭素繊維」とは特に明記しない場合
には炭素繊維のみならず黒鉛繊維をも含めて使用する。
【0002】
【従来の技術】石油系ピッチ、石炭系ピッチ等の炭素質
ピッチから製造されるピッチ系炭素繊維は、現在最も多
量に製造されているレ−ヨン系やPAN系の炭素繊維に
比較して炭化収率が高く、弾性率等の物理的特性も優れ
ており、更に低コストにて製造し得るという利点を有し
ているために近年注目を浴びている。
ピッチから製造されるピッチ系炭素繊維は、現在最も多
量に製造されているレ−ヨン系やPAN系の炭素繊維に
比較して炭化収率が高く、弾性率等の物理的特性も優れ
ており、更に低コストにて製造し得るという利点を有し
ているために近年注目を浴びている。
【0003】現在、ピッチ系炭素繊維は、概略、次のよ
うな方法で製造されている。即ち、(1)石油系ピッ
チ、石炭系ピッチ等から炭素繊維に適した炭素質ピッチ
を調製し、該炭素質ピッチを加熱溶融して紡糸機にて紡
糸してピッチ繊維を製造し、これを集束してピッチ繊維
束と為した後、(2)ピッチ繊維を不融化炉にて酸化性
雰囲気下にて150〜350℃までに加熱して不融化
し、(3)次いで、得られた不融化繊維を予備炭化炉に
て不活性雰囲気下にて1300℃以下で予備炭化し、
(4)次いで、得られた予備炭化繊維を3000℃以下
にまで加熱焼成して炭化(黒鉛化を含む)すること、に
より製造されている。
うな方法で製造されている。即ち、(1)石油系ピッ
チ、石炭系ピッチ等から炭素繊維に適した炭素質ピッチ
を調製し、該炭素質ピッチを加熱溶融して紡糸機にて紡
糸してピッチ繊維を製造し、これを集束してピッチ繊維
束と為した後、(2)ピッチ繊維を不融化炉にて酸化性
雰囲気下にて150〜350℃までに加熱して不融化
し、(3)次いで、得られた不融化繊維を予備炭化炉に
て不活性雰囲気下にて1300℃以下で予備炭化し、
(4)次いで、得られた予備炭化繊維を3000℃以下
にまで加熱焼成して炭化(黒鉛化を含む)すること、に
より製造されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、炭素繊維を
使用した繊維強化複合材料の重量を小さくすべく、低密
度、軽量で高弾性を示し且つ融膠着度が少なく糸扱い性
の良い炭素繊維を、低温焼成の炭化で得ることが望まれ
ている。
使用した繊維強化複合材料の重量を小さくすべく、低密
度、軽量で高弾性を示し且つ融膠着度が少なく糸扱い性
の良い炭素繊維を、低温焼成の炭化で得ることが望まれ
ている。
【0005】しかしながら、従来は、原料ピッチの選
択、不融化、予備炭化及び炭化の各工程が、低温焼成の
炭化で高弾性率の炭素繊維を得るためには最適ではな
く、約1800〜2300℃の低温焼成で、密度が低く
軽量で且つ融膠着度が少なく糸扱い性の良い高弾性率の
炭素繊維は得られていなかった。
択、不融化、予備炭化及び炭化の各工程が、低温焼成の
炭化で高弾性率の炭素繊維を得るためには最適ではな
く、約1800〜2300℃の低温焼成で、密度が低く
軽量で且つ融膠着度が少なく糸扱い性の良い高弾性率の
炭素繊維は得られていなかった。
【0006】従って本発明の目的は、約1800〜23
00℃の低温焼成で得られ、然も密度が2.20g/c
m3 以下で2000℃で焼成したときの引張弾性率が6
5ton/mm2 以上の低密度且つ高弾性で、融膠着度
が20%以下と少なく糸扱い性が良好なピッチ系炭素繊
維を提供することである。
00℃の低温焼成で得られ、然も密度が2.20g/c
m3 以下で2000℃で焼成したときの引張弾性率が6
5ton/mm2 以上の低密度且つ高弾性で、融膠着度
が20%以下と少なく糸扱い性が良好なピッチ系炭素繊
維を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的は本発明に係る
ピッチ系炭素繊維にて達成される。要約すれば本発明
は、密度(ρ)が1.95〜2.20g/cm3 の範囲
にあり、X線構造パラメーターの積層厚み(Lc002 )
が80〜180Å、層間隔(d002 )が3.39〜3.
44Å、配向角(φ)が5.0°〜10.0°の範囲に
あり、且つ前記密度、積層厚み、層間隔及び配向角が下
記式 8.0<ρ×Lc002 /(φ×d002 )<15.0 を満足し、繊維の融膠着度が20%以下で糸扱い性が良
好であることを特徴とする高弾性率のピッチ系炭素繊維
である。
ピッチ系炭素繊維にて達成される。要約すれば本発明
は、密度(ρ)が1.95〜2.20g/cm3 の範囲
にあり、X線構造パラメーターの積層厚み(Lc002 )
が80〜180Å、層間隔(d002 )が3.39〜3.
44Å、配向角(φ)が5.0°〜10.0°の範囲に
あり、且つ前記密度、積層厚み、層間隔及び配向角が下
記式 8.0<ρ×Lc002 /(φ×d002 )<15.0 を満足し、繊維の融膠着度が20%以下で糸扱い性が良
好であることを特徴とする高弾性率のピッチ系炭素繊維
である。
【0008】本発明者等は、約1800〜2300℃の
低温焼成により、密度が低く軽量で、2000℃で焼成
したときの引張弾性率が65ton/mm2 以上を示す
高弾性率の炭素繊維を得るべく鋭意研究を重ね、原料ピ
ッチの選択、不融化前処理、不融化、予備炭化及び炭化
(黒鉛化)の各工程を検討した。
低温焼成により、密度が低く軽量で、2000℃で焼成
したときの引張弾性率が65ton/mm2 以上を示す
高弾性率の炭素繊維を得るべく鋭意研究を重ね、原料ピ
ッチの選択、不融化前処理、不融化、予備炭化及び炭化
(黒鉛化)の各工程を検討した。
【0009】その結果、(1)特定の原料ピッチを使用
して紡糸し、(2)得られたピッチ繊維を高濃度のオゾ
ンを含む強酸化性ガス雰囲気で前処理し、(3)前処理
したピッチ繊維をオゾンを含まない酸素濃度20〜90
%の酸化性ガス雰囲気で迅速に不融化し、(4)得られ
た不融化繊維を延伸を加えた1段又は2段の延伸熱処理
により予備炭化すれば、その後、得られた予備炭化繊維
を1800〜2300℃の低温焼成で炭化することによ
り、密度が1.95〜2.20g/cm3 の範囲の低密
度且つ2000℃で焼成したときの繊維の引張弾性率が
65ton/mm2 以上の高弾性のピッチ系炭素繊維を
得ることができることが分かった。
して紡糸し、(2)得られたピッチ繊維を高濃度のオゾ
ンを含む強酸化性ガス雰囲気で前処理し、(3)前処理
したピッチ繊維をオゾンを含まない酸素濃度20〜90
%の酸化性ガス雰囲気で迅速に不融化し、(4)得られ
た不融化繊維を延伸を加えた1段又は2段の延伸熱処理
により予備炭化すれば、その後、得られた予備炭化繊維
を1800〜2300℃の低温焼成で炭化することによ
り、密度が1.95〜2.20g/cm3 の範囲の低密
度且つ2000℃で焼成したときの繊維の引張弾性率が
65ton/mm2 以上の高弾性のピッチ系炭素繊維を
得ることができることが分かった。
【0010】これらの繊維は、1800〜2300℃で
焼成したときの焼成温度と繊維の引張弾性率の関係が次
の式で表され、高温焼成により、より高弾性率の糸が得
られる。
焼成したときの焼成温度と繊維の引張弾性率の関係が次
の式で表され、高温焼成により、より高弾性率の糸が得
られる。
【0011】Et=AT+B Et:繊維の引張弾性率,Ton/mm2 T:焼成温度,℃ A、B:定数。A=0.03〜0.05、B=−20〜
5
5
【0012】以下、本発明に係る炭素繊維を製造法に則
して説明する。本発明の炭素繊維は、上述したように、
密度(ρ)が1.95〜2.20g/cm3 の範囲にあ
り、X線構造パラメーターの積層厚み(Lc002 )が8
0〜180Å、層間隔(d00 2 )が3.39〜3.44
Å、配向角(φ)が5.0°〜10.0°の範囲にあ
り、且つこれら密度、積層厚み、層間隔及び配向角が、
8.0<ρ×Lc002 /(φ×d002 )<15.0を満
足する特性を備えている。
して説明する。本発明の炭素繊維は、上述したように、
密度(ρ)が1.95〜2.20g/cm3 の範囲にあ
り、X線構造パラメーターの積層厚み(Lc002 )が8
0〜180Å、層間隔(d00 2 )が3.39〜3.44
Å、配向角(φ)が5.0°〜10.0°の範囲にあ
り、且つこれら密度、積層厚み、層間隔及び配向角が、
8.0<ρ×Lc002 /(φ×d002 )<15.0を満
足する特性を備えている。
【0013】上記において、ρ×Lc002 /(φ×d
002 )が8.0を超えないと、2000℃で焼成したと
きの繊維の引張弾性率が65ton/mm2 を超えず、
ρ×Lc002 /(φ×d002 )が15.0以上である
と、引張弾性率は高くできるが密度が高く、軽量効果が
少なくなり、又複合材料にしたときの圧縮強度が低下し
て好ましくない。このような特性の炭素繊維は、以下の
ようにして得られる。
002 )が8.0を超えないと、2000℃で焼成したと
きの繊維の引張弾性率が65ton/mm2 を超えず、
ρ×Lc002 /(φ×d002 )が15.0以上である
と、引張弾性率は高くできるが密度が高く、軽量効果が
少なくなり、又複合材料にしたときの圧縮強度が低下し
て好ましくない。このような特性の炭素繊維は、以下の
ようにして得られる。
【0014】本発明の炭素繊維を得るためには、公知の
原料、例えば石油系の各種重質油、熱分解タール、接触
分解タール、石炭の還流によって得られる重質油、ター
ルなどを原料として、その熱分解重縮合により得られる
メソフェースピッチ(光学的異方性ピッチ)を使用する
ことが肝要である。
原料、例えば石油系の各種重質油、熱分解タール、接触
分解タール、石炭の還流によって得られる重質油、ター
ルなどを原料として、その熱分解重縮合により得られる
メソフェースピッチ(光学的異方性ピッチ)を使用する
ことが肝要である。
【0015】更に好ましいピッチとしては、弗化水素、
三弗化硼素触媒の存在下で芳香族炭化水素類(縮合多環
水素又はこれらを含有するピッチ原料)を重合して得ら
れるメソフェースピッチを使用することができる。
三弗化硼素触媒の存在下で芳香族炭化水素類(縮合多環
水素又はこれらを含有するピッチ原料)を重合して得ら
れるメソフェースピッチを使用することができる。
【0016】このメソフェースピッチは、軟化点が18
0〜400℃と低く紡糸し易く、又ナフテン水素含有量
が多く、紡糸したピッチ繊維を不融化し易い。このた
め、ピッチ繊維のピッチ分子の配列性及び不融化繊維の
結晶の配向性が高まり、炭化時に炭素繊維の結晶性を高
くすることが可能になり、低温焼成で高弾性率の炭素繊
維を得るのに対し有利となる。
0〜400℃と低く紡糸し易く、又ナフテン水素含有量
が多く、紡糸したピッチ繊維を不融化し易い。このた
め、ピッチ繊維のピッチ分子の配列性及び不融化繊維の
結晶の配向性が高まり、炭化時に炭素繊維の結晶性を高
くすることが可能になり、低温焼成で高弾性率の炭素繊
維を得るのに対し有利となる。
【0017】更にメソフェースピッチとしては、上記の
接触分解タール等の熱分解重縮合により得たメソフェー
スピッチと、芳香族炭化水素類を原料として弗化水素、
三弗化硼素触媒の存在下で重合して得られるメソフェー
スピッチとを混合したメソフェースピッチを使用するこ
とができる。
接触分解タール等の熱分解重縮合により得たメソフェー
スピッチと、芳香族炭化水素類を原料として弗化水素、
三弗化硼素触媒の存在下で重合して得られるメソフェー
スピッチとを混合したメソフェースピッチを使用するこ
とができる。
【0018】メソフェースピッチとして使用するピッチ
のメソフェースピッチ含有量は、メソフェースピッチ7
0〜100%が好ましく、特に実質的に100%のメソ
フェースを含有するピッチが好ましい。
のメソフェースピッチ含有量は、メソフェースピッチ7
0〜100%が好ましく、特に実質的に100%のメソ
フェースを含有するピッチが好ましい。
【0019】上記のピッチは、加熱溶融して周知の方法
によって1〜2000本、好ましくは50〜1000本
のフィラメントに紡糸される。
によって1〜2000本、好ましくは50〜1000本
のフィラメントに紡糸される。
【0020】上記のようにして紡糸された多数フィラメ
ントは、通常通り、各フィラメントに通常オイリングロ
ーラを使用して集束剤を付与しながら収束されて、1本
の糸条としてボビンに巻取られる。
ントは、通常通り、各フィラメントに通常オイリングロ
ーラを使用して集束剤を付与しながら収束されて、1本
の糸条としてボビンに巻取られる。
【0021】集束剤としては、例えば水、エチルアルコ
ール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコー
ル、ブチルアルコール、等のアルコール類又は粘度5〜
1000cst(25℃)のジメチルポリシロキサン、
アルキルフェニルポリシロキサン等を、低沸点のシリコ
ーン油(ポリシロキサン)又はパラフィン油等の溶剤で
稀釈したもの、又は乳化剤を入れて水に分散させたも
の;同様にグラファイト又はポリエチレングリコールや
ヒンダードエステル類を分散させたもの;界面活性剤を
水で稀釈したもの;その他通常の繊維、例えばポリエス
テル繊維に使用される各種油剤の内ピッチ繊維を犯さな
いものを使用することができる。
ール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコー
ル、ブチルアルコール、等のアルコール類又は粘度5〜
1000cst(25℃)のジメチルポリシロキサン、
アルキルフェニルポリシロキサン等を、低沸点のシリコ
ーン油(ポリシロキサン)又はパラフィン油等の溶剤で
稀釈したもの、又は乳化剤を入れて水に分散させたも
の;同様にグラファイト又はポリエチレングリコールや
ヒンダードエステル類を分散させたもの;界面活性剤を
水で稀釈したもの;その他通常の繊維、例えばポリエス
テル繊維に使用される各種油剤の内ピッチ繊維を犯さな
いものを使用することができる。
【0022】集束剤のピッチ繊維への付与量は、通常
0.01〜10重量%とされるが、特に0.05〜5重
量%が好ましい。
0.01〜10重量%とされるが、特に0.05〜5重
量%が好ましい。
【0023】上述のようにして一旦ボビンに巻取られた
多数のフィラメントから成る糸条は、複数個の、例えば
2〜50個のボビンを同時に解舒することによって、又
は複数回に分けて、例えば1回目は2〜10本を、次い
で残余分をといつたように、解舒合糸を繰返し行なうこ
とによつて、2〜50本の糸条を合束(合糸)し、10
0〜100000本、好ましくは500〜10000本
のフィラメントからピッチ繊維束が製造され、他のボビ
ンに巻取られる。
多数のフィラメントから成る糸条は、複数個の、例えば
2〜50個のボビンを同時に解舒することによって、又
は複数回に分けて、例えば1回目は2〜10本を、次い
で残余分をといつたように、解舒合糸を繰返し行なうこ
とによつて、2〜50本の糸条を合束(合糸)し、10
0〜100000本、好ましくは500〜10000本
のフィラメントからピッチ繊維束が製造され、他のボビ
ンに巻取られる。
【0024】斯る合糸時に、不融化時及び予備炭化時の
処理を考慮してピッチ繊維に耐熱性の油剤が付与され
る。耐熱性の油剤としては、アルキルフェニルポリシロ
キサンが好ましく、フェニル基を5〜80%、好ましく
は10〜50%含み、又、アルキル基としてはメチル
基、エチル基、プロピル基が好ましく、同一分子に2種
以上のアルキル基を有していても良い。又、粘度は25
℃にて10〜1000cstのものが使用される。更に
後述するような酸化防止剤を添加することもできる。
処理を考慮してピッチ繊維に耐熱性の油剤が付与され
る。耐熱性の油剤としては、アルキルフェニルポリシロ
キサンが好ましく、フェニル基を5〜80%、好ましく
は10〜50%含み、又、アルキル基としてはメチル
基、エチル基、プロピル基が好ましく、同一分子に2種
以上のアルキル基を有していても良い。又、粘度は25
℃にて10〜1000cstのものが使用される。更に
後述するような酸化防止剤を添加することもできる。
【0025】他の好ましい油剤としては、ジメチルポリ
シロキサンに酸化防止剤を入れたものが使用可能であ
り、粘度としては25℃で5〜1000cstのものが
好ましい。酸化防止剤としては、アミン類、有機セレン
化合物、フェノール類等、例えばフェニル−α−ナフチ
ルアミン、ジラウリルセレナイド、フェノチアジン、鉄
オクトレート等を挙げることができる。これらの酸化防
止剤は、上述したように、更に耐熱性を高める目的で上
記アルキルフェニルポリシロキサンに添加することも可
能である。
シロキサンに酸化防止剤を入れたものが使用可能であ
り、粘度としては25℃で5〜1000cstのものが
好ましい。酸化防止剤としては、アミン類、有機セレン
化合物、フェノール類等、例えばフェニル−α−ナフチ
ルアミン、ジラウリルセレナイド、フェノチアジン、鉄
オクトレート等を挙げることができる。これらの酸化防
止剤は、上述したように、更に耐熱性を高める目的で上
記アルキルフェニルポリシロキサンに添加することも可
能である。
【0026】更に、好ましい油剤としては、上記各油剤
を沸点が600℃以下の界面活性剤を用いて、乳化した
ものを使用することもできる。このとき界面活性剤とし
ては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキ
シエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレン変性
シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等を
使用し得る。
を沸点が600℃以下の界面活性剤を用いて、乳化した
ものを使用することもできる。このとき界面活性剤とし
ては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキ
シエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレン変性
シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等を
使用し得る。
【0027】これら油剤は、ローラ接触、スプレー塗
布、泡沫塗布等により、ピッチ繊維に0.01〜10重
量%、好ましくは0.05〜5重量%が付与される。
布、泡沫塗布等により、ピッチ繊維に0.01〜10重
量%、好ましくは0.05〜5重量%が付与される。
【0028】上述のように、合糸されたピッチ繊維に耐
熱性油剤を付与することにより、該ピッチ繊維は強度が
著しく強くなり糸扱い性が極めて向上する。
熱性油剤を付与することにより、該ピッチ繊維は強度が
著しく強くなり糸扱い性が極めて向上する。
【0029】さて、繊維束とされたピッチ繊維は耐熱性
油剤を付与後に不融化されるが、本発明では、それに先
立って不融化の前処理として、高濃度のオゾンを含む酸
素含有雰囲気を有する前処理炉内にピッチ繊維束を線状
で連続的に通して、130〜220℃で極く短時間加熱
することにより、ピッチ繊維を予備的に不融化する。こ
れは、オゾンで速く不融化することにより、ピッチ繊維
の表面にスキン層を形成して、以後の不融化、予備炭化
及び炭化工程においてピッチ繊維間の融着が起こりづら
くすると共に、ピッチ繊維の内部の結晶性を大とし、炭
素繊維の弾性率を高くするのに有利とするためである。
油剤を付与後に不融化されるが、本発明では、それに先
立って不融化の前処理として、高濃度のオゾンを含む酸
素含有雰囲気を有する前処理炉内にピッチ繊維束を線状
で連続的に通して、130〜220℃で極く短時間加熱
することにより、ピッチ繊維を予備的に不融化する。こ
れは、オゾンで速く不融化することにより、ピッチ繊維
の表面にスキン層を形成して、以後の不融化、予備炭化
及び炭化工程においてピッチ繊維間の融着が起こりづら
くすると共に、ピッチ繊維の内部の結晶性を大とし、炭
素繊維の弾性率を高くするのに有利とするためである。
【0030】これによる結果として、炭化後の炭素繊維
の融膠着度を20%以下に減少することができ、複合材
料にする際の糸扱い性が良好な炭素繊維を得ることがで
きる。
の融膠着度を20%以下に減少することができ、複合材
料にする際の糸扱い性が良好な炭素繊維を得ることがで
きる。
【0031】オゾンを含む酸素含有雰囲気中のオゾン含
有量は、十分な反応効果を得るために0.1wt%以上
必要であるが、10wt%を超えると過度の反応が起こ
り易く、予備的な不融化の目的が達成されない等の問題
が生じるので、0.1〜10wt%の範囲が良く、好ま
しくは0.3〜5wt%とする。
有量は、十分な反応効果を得るために0.1wt%以上
必要であるが、10wt%を超えると過度の反応が起こ
り易く、予備的な不融化の目的が達成されない等の問題
が生じるので、0.1〜10wt%の範囲が良く、好ま
しくは0.3〜5wt%とする。
【0032】酸素含有雰囲気としては、空気、空気と酸
素の混合ガス、窒素と酸素の混合ガス又は酸素ガスが使
用される。
素の混合ガス、窒素と酸素の混合ガス又は酸素ガスが使
用される。
【0033】不融化の前処理における処理温度は、上記
したように130〜220℃とする。130℃未満であ
ると反応速度が遅く、ピッチ繊維の表面のみを選択的に
酸化するのが困難であり、逆に反応温度が220°を超
えると、オゾンが分解してしまい反応の促進効果が得ら
れなくなるので、いずれも好ましくない。
したように130〜220℃とする。130℃未満であ
ると反応速度が遅く、ピッチ繊維の表面のみを選択的に
酸化するのが困難であり、逆に反応温度が220°を超
えると、オゾンが分解してしまい反応の促進効果が得ら
れなくなるので、いずれも好ましくない。
【0034】前処理の時間はスキン層のみを酸化させる
必要があることから5分以下であり、好ましくは0.2
〜2分とされる。
必要があることから5分以下であり、好ましくは0.2
〜2分とされる。
【0035】次いで、前処理したピッチ繊維は、前処理
炉に続くオゾンを含まない酸素含有雰囲気の不融化炉内
に連続的に線状で通して、速い昇温速度で最高温度25
0〜350℃まで加熱焼成することにより不融化する。
炉に続くオゾンを含まない酸素含有雰囲気の不融化炉内
に連続的に線状で通して、速い昇温速度で最高温度25
0〜350℃まで加熱焼成することにより不融化する。
【0036】不融化時の加熱最高温度250〜350℃
までの昇温速度は、本発明では、既に前処理によりピッ
チ繊維の表面スキン層を酸化して安定化しているので、
不融化を急速に行なうことができることから、8〜40
℃/分の速い速度とする。従って不融化時間も短時間と
され、15分以下、好ましくは2〜13分とされる。
までの昇温速度は、本発明では、既に前処理によりピッ
チ繊維の表面スキン層を酸化して安定化しているので、
不融化を急速に行なうことができることから、8〜40
℃/分の速い速度とする。従って不融化時間も短時間と
され、15分以下、好ましくは2〜13分とされる。
【0037】不融化の酸素含有雰囲気としては、空気、
空気と酸素の混合ガス、窒素と酸素の混合ガス又は酸素
ガスが使用されるが、好ましいガスとして酸素濃度20
〜90%の富酸素ガスが使用される。
空気と酸素の混合ガス、窒素と酸素の混合ガス又は酸素
ガスが使用されるが、好ましいガスとして酸素濃度20
〜90%の富酸素ガスが使用される。
【0038】不融化炉内の温度は250〜350℃の範
囲内のある一定温度とすることもできるが、炉入口より
炉出口にかけて250℃から350℃へと次第に増大す
る温度勾配を有するように設定することもできる。
囲内のある一定温度とすることもできるが、炉入口より
炉出口にかけて250℃から350℃へと次第に増大す
る温度勾配を有するように設定することもできる。
【0039】本発明に従えば、前処理時及び不融化時
に、繊維束には張力をかけずに処理を行なうことができ
るが、不融化炉内での繊維束のたるみによる炉底、炉壁
を擦ることにより生じる引き摺り傷の発生防止、及び外
観が良く且つ引張強度、引張弾性率などの炭素繊維の物
性向上に寄与させるために、1フィラメント当たり0.
001〜0.2gの張力をかけながら前処理及び不融化
を行なうことが好ましい。
に、繊維束には張力をかけずに処理を行なうことができ
るが、不融化炉内での繊維束のたるみによる炉底、炉壁
を擦ることにより生じる引き摺り傷の発生防止、及び外
観が良く且つ引張強度、引張弾性率などの炭素繊維の物
性向上に寄与させるために、1フィラメント当たり0.
001〜0.2gの張力をかけながら前処理及び不融化
を行なうことが好ましい。
【0040】以上のようにして、ピッチ繊維を前処理
し、不融化して得られた不融化繊維は、不活性ガス雰囲
気とされた予備炭化炉内に通して予備炭化される。
し、不融化して得られた不融化繊維は、不活性ガス雰囲
気とされた予備炭化炉内に通して予備炭化される。
【0041】予備炭化時の不活性ガス雰囲気に使用する
好ましいガスとしては、窒素ガス、アルゴンガスが挙げ
られる。
好ましいガスとしては、窒素ガス、アルゴンガスが挙げ
られる。
【0042】本発明では、不融化繊維を予備炭化して得
られる予備炭素繊維が引張強度及び引張弾性率が向上し
た炭素繊維を得るのに有利なようにするために、この予
備炭化を、不融化繊維の溶融破断温度よりも30〜10
0℃低い温度まで急速に昇温して、繊維を短時間熱処理
しながら同時に延伸処理することにより実施する。
られる予備炭素繊維が引張強度及び引張弾性率が向上し
た炭素繊維を得るのに有利なようにするために、この予
備炭化を、不融化繊維の溶融破断温度よりも30〜10
0℃低い温度まで急速に昇温して、繊維を短時間熱処理
しながら同時に延伸処理することにより実施する。
【0043】上記において、不融化繊維の溶融破断温度
とは、窒素雰囲気の一定温度(例えば400℃)に保持
された加熱部長さ2mの炉に不融化繊維束を10m/分
で通糸して(繊維束の昇温速度5000℃/分に相
当)、繊維の溶融により繊維束が切断する温度をいう。
繊維の溶融破断温度は、切断した繊維束を目視により観
察して繊維に溶融が認められたときの温度として得るこ
とができるが、正確には走査型電子顕微鏡による観察で
繊維の溶融を認めたときの温度として求められる。
とは、窒素雰囲気の一定温度(例えば400℃)に保持
された加熱部長さ2mの炉に不融化繊維束を10m/分
で通糸して(繊維束の昇温速度5000℃/分に相
当)、繊維の溶融により繊維束が切断する温度をいう。
繊維の溶融破断温度は、切断した繊維束を目視により観
察して繊維に溶融が認められたときの温度として得るこ
とができるが、正確には走査型電子顕微鏡による観察で
繊維の溶融を認めたときの温度として求められる。
【0044】上記のような不融化繊維の急速な昇温によ
る熱処理及びこれと同時の延伸処理からなる短時間の延
伸熱処理は、不融化繊維の溶融破断温度よりも30〜1
00℃低い温度まで昇温して行なわれるが、好ましくは
溶融破断温度より40〜80℃低い温度がよい。上記の
昇温が溶融破断温度より30℃低い温度を超える高い温
度まで行なわれると、繊維束に融膠着が起こって繊維束
が破断するので、好ましくない。又上記の昇温が溶融破
断温度よりも100℃低い温度未満の低い温度までであ
ると、繊維束の延伸が困難になるので、同様に好ましく
ない。
る熱処理及びこれと同時の延伸処理からなる短時間の延
伸熱処理は、不融化繊維の溶融破断温度よりも30〜1
00℃低い温度まで昇温して行なわれるが、好ましくは
溶融破断温度より40〜80℃低い温度がよい。上記の
昇温が溶融破断温度より30℃低い温度を超える高い温
度まで行なわれると、繊維束に融膠着が起こって繊維束
が破断するので、好ましくない。又上記の昇温が溶融破
断温度よりも100℃低い温度未満の低い温度までであ
ると、繊維束の延伸が困難になるので、同様に好ましく
ない。
【0045】上記の溶融破断温度よりも30〜100℃
低い温度までの繊維束の昇温速度は、100〜5000
℃/分の速度が用いられるが、好ましくは500〜40
00℃/分である。昇温速度が100℃/分未満の場
合、繊維組織の熱重合や炭化が一部進みながら焼成され
るので十分な延伸ができにくくなり、逆に5000℃/
分を超える場合、昇温が速すぎて繊維束の通糸速度を速
めなければならず、繊維束の巻取り速度に問題が出て
来、やはり好ましくない。
低い温度までの繊維束の昇温速度は、100〜5000
℃/分の速度が用いられるが、好ましくは500〜40
00℃/分である。昇温速度が100℃/分未満の場
合、繊維組織の熱重合や炭化が一部進みながら焼成され
るので十分な延伸ができにくくなり、逆に5000℃/
分を超える場合、昇温が速すぎて繊維束の通糸速度を速
めなければならず、繊維束の巻取り速度に問題が出て
来、やはり好ましくない。
【0046】上記の延伸熱処理は、例えば400℃とい
うような定温炉で行なってもよく、炉入り口部から出口
部にかけて300℃、400℃、500℃、600℃、
1100℃というように、段階的に高くした温度が保持
された温度傾斜炉で行なってもよい。
うような定温炉で行なってもよく、炉入り口部から出口
部にかけて300℃、400℃、500℃、600℃、
1100℃というように、段階的に高くした温度が保持
された温度傾斜炉で行なってもよい。
【0047】延伸熱処理の時間は、1〜300秒が用い
られるが、好ましくは5〜200秒℃の極く短時間であ
るのがよい。
られるが、好ましくは5〜200秒℃の極く短時間であ
るのがよい。
【0048】延伸熱処理における延伸処理は、繊維束に
テンションを付与するか、2つのローラの差動により行
なわれ、いずれの方法によっても達成される。延伸時の
テンションは1フィラメント当たり0.001〜0.2
0gが付与される。
テンションを付与するか、2つのローラの差動により行
なわれ、いずれの方法によっても達成される。延伸時の
テンションは1フィラメント当たり0.001〜0.2
0gが付与される。
【0049】繊維束の延伸率は5〜100%、好ましく
は10〜80%とするのがよい。延伸率が5%未満では
十分な延伸効果が得られず、又100%を超えると、延
伸による繊維のダメージが多くなるので好ましくない。
は10〜80%とするのがよい。延伸率が5%未満では
十分な延伸効果が得られず、又100%を超えると、延
伸による繊維のダメージが多くなるので好ましくない。
【0050】延伸熱処理は1回で行なってもよいが、例
えば400℃で1度延伸し、引き続き500℃で延伸す
るというように複数回に分けて実施することもできる。
複数回に分けた場合には繊維のダメージが少なく、延伸
が容易にできるようになるので好ましい。
えば400℃で1度延伸し、引き続き500℃で延伸す
るというように複数回に分けて実施することもできる。
複数回に分けた場合には繊維のダメージが少なく、延伸
が容易にできるようになるので好ましい。
【0051】上記の延伸熱処理終了後、引き続き、不融
化繊維に対し延伸処理のない通常の予備炭化処理を行な
ってもよい。
化繊維に対し延伸処理のない通常の予備炭化処理を行な
ってもよい。
【0052】従来であると、不融化繊維束は脆弱で、不
融化繊維束の予備炭化で繊維の切断や毛羽立ちが発生す
るのを避けようとすれば、予備炭化工程だけは繊維束に
テンションを掛けないか或いは掛けても取扱性が悪化し
ない最小限のテンションとして行なわざるを得ない状態
で、まして予備炭化の段階で積極的にテンションを掛け
て繊維束の延伸処理を加えることによっては、繊維の引
張強度、引張弾性率、圧縮強度の向上を図ることは不可
能であった。
融化繊維束の予備炭化で繊維の切断や毛羽立ちが発生す
るのを避けようとすれば、予備炭化工程だけは繊維束に
テンションを掛けないか或いは掛けても取扱性が悪化し
ない最小限のテンションとして行なわざるを得ない状態
で、まして予備炭化の段階で積極的にテンションを掛け
て繊維束の延伸処理を加えることによっては、繊維の引
張強度、引張弾性率、圧縮強度の向上を図ることは不可
能であった。
【0053】これが、本発明では、不融化繊維の溶融破
断温度よりも30〜100℃低い温度まで急速に昇温し
て、短時間の延伸熱処理をすることにより、不融化繊維
の切断や毛羽立ちの発生を防止するだけでなく、テンシ
ョンを掛けて延伸処理しながら予備炭化をすることがで
きる。この予備炭化の際の不融化繊維への積極的なテン
ションを掛けた延伸処理により、繊維組織の配列性が高
まり、最終的に得られる炭素繊維の引張強度、引張弾性
率及び圧縮強度を有効に向上することが可能となる。
断温度よりも30〜100℃低い温度まで急速に昇温し
て、短時間の延伸熱処理をすることにより、不融化繊維
の切断や毛羽立ちの発生を防止するだけでなく、テンシ
ョンを掛けて延伸処理しながら予備炭化をすることがで
きる。この予備炭化の際の不融化繊維への積極的なテン
ションを掛けた延伸処理により、繊維組織の配列性が高
まり、最終的に得られる炭素繊維の引張強度、引張弾性
率及び圧縮強度を有効に向上することが可能となる。
【0054】以上のようにして不融化繊維の予備炭化を
行なったら、得られた予備炭化繊維を続いて炭化炉で不
活性ガス雰囲気下にて最高温度1800〜2300℃ま
で加熱焼成して炭化し、黒鉛化すれば良い。これにより
1800〜2300℃の低温焼成で、低密度且つ200
0℃で焼成したときに65ton/mm2 以上の高弾性
のピッチ系炭素繊維を得ることができる。
行なったら、得られた予備炭化繊維を続いて炭化炉で不
活性ガス雰囲気下にて最高温度1800〜2300℃ま
で加熱焼成して炭化し、黒鉛化すれば良い。これにより
1800〜2300℃の低温焼成で、低密度且つ200
0℃で焼成したときに65ton/mm2 以上の高弾性
のピッチ系炭素繊維を得ることができる。
【0055】尚、ピッチ繊維の配向度を高め、高弾性率
の炭素繊維を得易くするために、通常の紡糸よりも30
〜50℃程度高温度で紡糸(可紡糸温度の直近で紡糸)
することも実施される。
の炭素繊維を得易くするために、通常の紡糸よりも30
〜50℃程度高温度で紡糸(可紡糸温度の直近で紡糸)
することも実施される。
【0056】以上のようにして製造される本発明の炭素
繊維は、密度(ρ)が1.95〜2.20g/cm3 の
低密度で、繊維の引張弾性率が65ton/mm2 以上
の高弾性を示し、且つ融膠着度が20%以下と少なく繊
維の糸扱い性が良好で、X線構造パラメーターの積層厚
み(Lc002 )が80〜180Å、層間隔(d002 )が
3.39〜3.44Å、配向角(φ)が5.0°〜1
0.0°の範囲にある結晶構造を有し、且つこれら前記
密度、積層厚み、層間隔及び配向角が、8.0<ρ×L
c002 /(φ×d002 )<15.0を満足するようにな
っている。
繊維は、密度(ρ)が1.95〜2.20g/cm3 の
低密度で、繊維の引張弾性率が65ton/mm2 以上
の高弾性を示し、且つ融膠着度が20%以下と少なく繊
維の糸扱い性が良好で、X線構造パラメーターの積層厚
み(Lc002 )が80〜180Å、層間隔(d002 )が
3.39〜3.44Å、配向角(φ)が5.0°〜1
0.0°の範囲にある結晶構造を有し、且つこれら前記
密度、積層厚み、層間隔及び配向角が、8.0<ρ×L
c002 /(φ×d002 )<15.0を満足するようにな
っている。
【0057】これらの繊維は、前述したように、180
0〜2300℃で焼成したときの焼成温度と、繊維の引
張弾性率との関係が次の式で表され、高温焼成により、
より高弾性率の糸が得られる。
0〜2300℃で焼成したときの焼成温度と、繊維の引
張弾性率との関係が次の式で表され、高温焼成により、
より高弾性率の糸が得られる。
【0058】Et=AT+B Et:繊維の引張弾性率,Ton/mm2 T:焼成温度,℃ A、B:定数。A=0.03〜0.05、B=−20〜
5
5
【0059】本発明の炭素繊維は、低温焼成で高弾性率
が得られるので、圧縮強度の高い繊維になる。又本発明
の炭素繊維は、引張強度が350kg/mm2 以上、破
断伸びが0.55%以上であり、低温焼成で弾性が高い
ばかりでなく、強度及び伸びにも優れる。
が得られるので、圧縮強度の高い繊維になる。又本発明
の炭素繊維は、引張強度が350kg/mm2 以上、破
断伸びが0.55%以上であり、低温焼成で弾性が高い
ばかりでなく、強度及び伸びにも優れる。
【0060】本明細書において、炭素繊維の特性は下記
の如き測定方法を採用して測定した。 ・X線構造パラメータ 配向角(φ)、積層厚さ(Lc002 )、層間隔(d
002 )は広角X線回折により求められる炭素繊維の微細
構造を表すパラメータである。
の如き測定方法を採用して測定した。 ・X線構造パラメータ 配向角(φ)、積層厚さ(Lc002 )、層間隔(d
002 )は広角X線回折により求められる炭素繊維の微細
構造を表すパラメータである。
【0061】配向角(φ)は結晶の繊維軸方向に対する
選択的配向の程度を示すもので、この角度(φ)が小さ
いほど配向が良いことを意味する。積層厚さ(Lc
002 )は炭素微結晶中の(002)面の見掛けの積層の
厚さを表し、一般に積層厚さ(Lc002 )が大きいほど
結晶性が良いと見なされる。又層間隔(d002 )は微結
晶の(002)面の層間隔を表し、層間隔(d002 )が
小さい程結晶性が良いと見なされる。
選択的配向の程度を示すもので、この角度(φ)が小さ
いほど配向が良いことを意味する。積層厚さ(Lc
002 )は炭素微結晶中の(002)面の見掛けの積層の
厚さを表し、一般に積層厚さ(Lc002 )が大きいほど
結晶性が良いと見なされる。又層間隔(d002 )は微結
晶の(002)面の層間隔を表し、層間隔(d002 )が
小さい程結晶性が良いと見なされる。
【0062】配向角(φ)の測定は繊維試料台を使用
し、繊維束が計数管の走査面に垂直になっている状態で
計数管を走査して、(002)回折帯の強度が最大とな
る回折角2θ(約26°)を予め求める。次に計数管を
この位置に保持した状態で、繊維試料台を360°回転
することにより(002)回折環の強度分布を測定し、
強度最大値の1/2の点における半価幅を配向角(φ)
とする。
し、繊維束が計数管の走査面に垂直になっている状態で
計数管を走査して、(002)回折帯の強度が最大とな
る回折角2θ(約26°)を予め求める。次に計数管を
この位置に保持した状態で、繊維試料台を360°回転
することにより(002)回折環の強度分布を測定し、
強度最大値の1/2の点における半価幅を配向角(φ)
とする。
【0063】積層厚さ(Lc002 )、層間隔(d002 )
は繊維を乳鉢で粉末状にし、学振法「人造黒鉛の格子定
数および結晶子の大きさ測定法」に準拠して測定・解析
を行ない、以下の式から求めた。 Lc002 =Kλ/βcosθ d002 =λ/2sinθ ここで、K=1.0、λ=1.5418Å θ:(002)回折角2θより求める β:補正により求めた(002)回折帯の半価幅 ・密度(ρ) 密度勾配管にて測定した。 ・融膠着度 3000フィラメントからなる炭素繊維束を1.5mm
幅に切り取り、これをエタノールに浸漬し、30秒間エ
アーを吹き込み、その後顕微鏡下で20倍の倍率で融膠
着しているフィラメントの総本数(N)を数えることに
より、次の式にて求められる。
は繊維を乳鉢で粉末状にし、学振法「人造黒鉛の格子定
数および結晶子の大きさ測定法」に準拠して測定・解析
を行ない、以下の式から求めた。 Lc002 =Kλ/βcosθ d002 =λ/2sinθ ここで、K=1.0、λ=1.5418Å θ:(002)回折角2θより求める β:補正により求めた(002)回折帯の半価幅 ・密度(ρ) 密度勾配管にて測定した。 ・融膠着度 3000フィラメントからなる炭素繊維束を1.5mm
幅に切り取り、これをエタノールに浸漬し、30秒間エ
アーを吹き込み、その後顕微鏡下で20倍の倍率で融膠
着しているフィラメントの総本数(N)を数えることに
より、次の式にて求められる。
【0064】融膠着度=(N/3000)×100
(%) 融膠着度が少ない方が糸扱い性が良い。 ・圧縮強度 炭素繊維をエポキシ樹脂に含浸したサンプルをASTM
D3410に従って測定した。
(%) 融膠着度が少ない方が糸扱い性が良い。 ・圧縮強度 炭素繊維をエポキシ樹脂に含浸したサンプルをASTM
D3410に従って測定した。
【0065】
実施例1 接触分解タールを原料とし、熱分解重縮合により得た光
学的異方性相98%からなる軟化点268℃の炭素繊維
用ピッチを、500孔の紡糸口金を有する溶融紡糸機
(ノズル孔径:直径0.3mm)に通し、355℃で押
し出して紡糸した。
学的異方性相98%からなる軟化点268℃の炭素繊維
用ピッチを、500孔の紡糸口金を有する溶融紡糸機
(ノズル孔径:直径0.3mm)に通し、355℃で押
し出して紡糸した。
【0066】紡糸した500本のフィラメントはエアー
サッカーで略集束してオイリングローラに導き、糸に対
して約0.2重量%の割合で集束用油剤を供給し、50
0フィラメントからなるピッチ繊維を形成した。油剤と
しては、25℃における粘度が14cstのメチルフェ
ニルポリシロキサンを使用した。
サッカーで略集束してオイリングローラに導き、糸に対
して約0.2重量%の割合で集束用油剤を供給し、50
0フィラメントからなるピッチ繊維を形成した。油剤と
しては、25℃における粘度が14cstのメチルフェ
ニルポリシロキサンを使用した。
【0067】該ピッチ繊維は、ノズル下部に設けた高速
で回転するボビンに巻き取り、約500m/分の巻き取
り速度で10分間紡糸した。
で回転するボビンに巻き取り、約500m/分の巻き取
り速度で10分間紡糸した。
【0068】次いで、ピッチ繊維を巻いた前記ボビン6
個を解舒し、そしてオイリングローラを使用して耐熱性
油剤を付与しながら合糸し、3000フィラメントから
なるピッチ繊維束を形成し、他のステンレス製ボビンに
巻取つた。
個を解舒し、そしてオイリングローラを使用して耐熱性
油剤を付与しながら合糸し、3000フィラメントから
なるピッチ繊維束を形成し、他のステンレス製ボビンに
巻取つた。
【0069】合糸時に油剤としては25℃で40cst
のメチルフェニルポリシロキサン(フェニル基含有量4
5モル%)を使用した。付与量は糸に対し0.5%であ
つた。
のメチルフェニルポリシロキサン(フェニル基含有量4
5モル%)を使用した。付与量は糸に対し0.5%であ
つた。
【0070】このようにして得た、ボビン巻のピッチ繊
維を本ボビンから解舒しつつ、不融化の前処理炉とへと
送給した。
維を本ボビンから解舒しつつ、不融化の前処理炉とへと
送給した。
【0071】炉内の雰囲気はオゾン3%を含む酸素/窒
素=60/40の富酸素雰囲気であった。温度は190
℃、前処理時間は1.0分であった。
素=60/40の富酸素雰囲気であった。温度は190
℃、前処理時間は1.0分であった。
【0072】このピッチ繊維束を前処理炉に続く、炉入
口温度190℃、最高温度295℃の温度勾配を持つオ
ゾンを含まない酸素/窒素=60/40の富酸素雰囲の
不融化炉に連続的に線状で送給して、ピッチ繊維を不融
化した。昇温速度は8℃/分であり、不融化時間は13
分であった。ピッチ繊維には1フィラメント当たり0.
007g(3000フィラメントの繊維束に対し20
g)のテンションがかけられた。
口温度190℃、最高温度295℃の温度勾配を持つオ
ゾンを含まない酸素/窒素=60/40の富酸素雰囲の
不融化炉に連続的に線状で送給して、ピッチ繊維を不融
化した。昇温速度は8℃/分であり、不融化時間は13
分であった。ピッチ繊維には1フィラメント当たり0.
007g(3000フィラメントの繊維束に対し20
g)のテンションがかけられた。
【0073】不融化中、ボビンからのピッチ繊維の解舒
は円滑に行なわれ、不融化炉内での繊維の断糸もなく円
滑に不融化処理ができた。このようにして不融化された
不融化繊維束の窒素雰囲気中での溶融破断温度は450
℃であった。
は円滑に行なわれ、不融化炉内での繊維の断糸もなく円
滑に不融化処理ができた。このようにして不融化された
不融化繊維束の窒素雰囲気中での溶融破断温度は450
℃であった。
【0074】この不融化繊維を、400℃(不融化繊維
束の溶融破断温度よりも50℃低い温度)の窒素雰囲気
の予備炭化炉に3000℃/分の昇温速度で通糸して、
熱処理と延伸処理を同時に行なう延伸熱処理を施すこと
により、不融化繊維を予備炭化した。
束の溶融破断温度よりも50℃低い温度)の窒素雰囲気
の予備炭化炉に3000℃/分の昇温速度で通糸して、
熱処理と延伸処理を同時に行なう延伸熱処理を施すこと
により、不融化繊維を予備炭化した。
【0075】この延伸熱処理時間は25秒であった。繊
維束には1フィラメント当たり0.007gのテンショ
ンが付与された。延伸率は21%であった。1時間の連
続処理を行なったが、その間炉内での繊維束の断糸は生
じなかった。
維束には1フィラメント当たり0.007gのテンショ
ンが付与された。延伸率は21%であった。1時間の連
続処理を行なったが、その間炉内での繊維束の断糸は生
じなかった。
【0076】次いで上記のように延伸熱処理による予備
炭化をされた繊維束を更に100℃/分で1000℃ま
で昇温して、通常の予備炭化をした。
炭化をされた繊維束を更に100℃/分で1000℃ま
で昇温して、通常の予備炭化をした。
【0077】このようにして得られた予備炭化繊維を窒
素ガス雰囲気中で2000℃まで昇温して炭素繊維を
得、ボビンに巻取った。
素ガス雰囲気中で2000℃まで昇温して炭素繊維を
得、ボビンに巻取った。
【0078】得られた炭素繊維は、密度(ρ)が2.1
4g/cm3 で、X線構造パラメーターの積層厚み(L
c002 )が138Å、層間隔(d002 )が3.422
Å、配向角(φ)が7.0°であり、これらρ、Lc
002 、φ、d002 がρ×Lc002/(φ×d002 )=1
2.3で、本発明の範囲8.0<ρ×Lc002 /(φ×
d002 )<15.0にあった。
4g/cm3 で、X線構造パラメーターの積層厚み(L
c002 )が138Å、層間隔(d002 )が3.422
Å、配向角(φ)が7.0°であり、これらρ、Lc
002 、φ、d002 がρ×Lc002/(φ×d002 )=1
2.3で、本発明の範囲8.0<ρ×Lc002 /(φ×
d002 )<15.0にあった。
【0079】上記の炭素繊維の糸径は8.9μmであ
り、引張強度は410kg/mm2 、引張弾性率は6
5.0ton/mm2 、伸び率は0.63%、圧縮強度
は48kg/mm2 であった。
り、引張強度は410kg/mm2 、引張弾性率は6
5.0ton/mm2 、伸び率は0.63%、圧縮強度
は48kg/mm2 であった。
【0080】この場合の炭素繊維の融膠着度は18%と
少なく、繊維から複合材料を作る際の糸扱い性が良好で
あった。
少なく、繊維から複合材料を作る際の糸扱い性が良好で
あった。
【0081】実施例2 芳香族炭化水素類の1種のナフタレンを原料として、こ
れを弗化水素、三弗化硼素の存在下で重合して得た軟化
点268℃の実質的に100%の光学的異方性相からな
るピッチを用い、320℃で溶融紡糸した。紡糸時の油
剤は実施例1と同じものを使用し、又実施例1と同様に
して合糸を行ない、3000フィラメントからなる繊維
束を得た。合糸の際の合糸油剤も同じものを使用した。
れを弗化水素、三弗化硼素の存在下で重合して得た軟化
点268℃の実質的に100%の光学的異方性相からな
るピッチを用い、320℃で溶融紡糸した。紡糸時の油
剤は実施例1と同じものを使用し、又実施例1と同様に
して合糸を行ない、3000フィラメントからなる繊維
束を得た。合糸の際の合糸油剤も同じものを使用した。
【0082】不融化の前処理は、オゾン3%を含む酸素
/窒素=60/40の富酸素雰囲気で行なった。温度は
190℃、前処理時間は1分であった。
/窒素=60/40の富酸素雰囲気で行なった。温度は
190℃、前処理時間は1分であった。
【0083】このピッチ繊維束を炉入口温度190℃、
最高温度295℃の温度勾配を持つ、オゾンを含まない
酸素/窒素=60/40の富酸素雰囲気の不融化炉に、
実施例1と同様に連続で線状に通して、ピッチ繊維を不
融化した。昇温速度は20℃/分であり、不融化時間は
5分であった。
最高温度295℃の温度勾配を持つ、オゾンを含まない
酸素/窒素=60/40の富酸素雰囲気の不融化炉に、
実施例1と同様に連続で線状に通して、ピッチ繊維を不
融化した。昇温速度は20℃/分であり、不融化時間は
5分であった。
【0084】不融化中、ボビンからのピッチ繊維の解舒
は円滑に行なわれ、不融化炉内での断糸もなく、円滑に
不融化処理ができた。このようにして得た不融化繊維の
窒素雰囲気中での溶融破断温度は400℃であった。
は円滑に行なわれ、不融化炉内での断糸もなく、円滑に
不融化処理ができた。このようにして得た不融化繊維の
窒素雰囲気中での溶融破断温度は400℃であった。
【0085】この不融化繊維を350℃(不融化繊維の
溶融破断温度よりも50℃低い温度)の窒素雰囲気の予
備炭化炉に3000℃/分の昇温速度で通糸して、熱処
理と延伸処理を同時に行なう延伸熱処理を施すことによ
り、不融化繊維を予備炭化した。
溶融破断温度よりも50℃低い温度)の窒素雰囲気の予
備炭化炉に3000℃/分の昇温速度で通糸して、熱処
理と延伸処理を同時に行なう延伸熱処理を施すことによ
り、不融化繊維を予備炭化した。
【0086】この延伸熱処理の時間は25秒であり、繊
維束には1フィラメント当たり0.007gのテンショ
ンが付与された。延伸率は19%であった。1時間の連
続処理を行なったが、炉内での繊維束の断糸はなかっ
た。
維束には1フィラメント当たり0.007gのテンショ
ンが付与された。延伸率は19%であった。1時間の連
続処理を行なったが、炉内での繊維束の断糸はなかっ
た。
【0087】次いで、この繊維束を実施例1と同様にし
て、100℃/分で1000℃まで昇温して、通常の予
備炭化を行ない、その後2000℃まで昇温して炭素繊
維を得た。
て、100℃/分で1000℃まで昇温して、通常の予
備炭化を行ない、その後2000℃まで昇温して炭素繊
維を得た。
【0088】得られた炭素繊維は、密度(ρ)が2.1
6g/cm3 で、X線構造パラメータの積層厚さ(Lc
002 )が145Å、層間隔(d002 )が3.425Å、
配向角(φ)が7.5°であり、ρ×Lc002 /(φ×
d002 )=12.2で、本発明の範囲の8.0<ρ×L
c002 /(φ×d002 )<15.0にあった。
6g/cm3 で、X線構造パラメータの積層厚さ(Lc
002 )が145Å、層間隔(d002 )が3.425Å、
配向角(φ)が7.5°であり、ρ×Lc002 /(φ×
d002 )=12.2で、本発明の範囲の8.0<ρ×L
c002 /(φ×d002 )<15.0にあった。
【0089】上記の炭素繊維の糸径は9.0μmであ
り、引張強度は410kg/mm2 、引張弾性率は7
0.0ton/mm2 、伸び率は0.59%、圧縮強度
は45kg/mm2 であった。
り、引張強度は410kg/mm2 、引張弾性率は7
0.0ton/mm2 、伸び率は0.59%、圧縮強度
は45kg/mm2 であった。
【0090】この場合の炭素繊維の融膠着度は9%と少
なく、繊維から複合材料を作る際の糸扱い性が良好であ
った。
なく、繊維から複合材料を作る際の糸扱い性が良好であ
った。
【0091】比較例1 予備炭化繊維を1700℃で焼成して炭素繊維を得た以
外は、実施例1と同様に処理した。
外は、実施例1と同様に処理した。
【0092】得られた炭素繊維は、密度(ρ)が2.0
8g/cm3 で、X線構造パラメータの積層厚さ(Lc
002 )が60Å、層間隔(d002 )が3.448Å、配
向角(φ)が20°であり、ρ×Lc002 /(φ×d
002 )は1.80で、本発明の範囲外であった。
8g/cm3 で、X線構造パラメータの積層厚さ(Lc
002 )が60Å、層間隔(d002 )が3.448Å、配
向角(φ)が20°であり、ρ×Lc002 /(φ×d
002 )は1.80で、本発明の範囲外であった。
【0093】上記の炭素繊維の糸径は9.0μmであ
り、引張強度は310kg/mm2 、引張弾性率は3
5.0ton/mm2 、伸び率は0.88%、圧縮強度
は100kg/mm2 であり、引張弾性率の高い繊維が
得られなかった。
り、引張強度は310kg/mm2 、引張弾性率は3
5.0ton/mm2 、伸び率は0.88%、圧縮強度
は100kg/mm2 であり、引張弾性率の高い繊維が
得られなかった。
【0094】この場合の繊維の融膠着度は15%と少な
かった。
かった。
【0095】比較例2 予備炭化繊維を2400℃で焼成して炭素繊維を得た以
外は、実施例1と同様に処理した。
外は、実施例1と同様に処理した。
【0096】得られた炭素繊維は、密度(ρ)が2.1
4g/cm3 で、X線構造パラメータの積層厚さ(Lc
002 )が18.5Å、層間隔(d002 )が3.401
Å、配向角(φ)が6.2°であり、ρ×Lc002 /
(φ×d002 )は18.8で、本発明の範囲外であっ
た。
4g/cm3 で、X線構造パラメータの積層厚さ(Lc
002 )が18.5Å、層間隔(d002 )が3.401
Å、配向角(φ)が6.2°であり、ρ×Lc002 /
(φ×d002 )は18.8で、本発明の範囲外であっ
た。
【0097】上記の炭素繊維の糸径は8.9μmであ
り、引張強度は420kg/mm2 、引張弾性率は8
0.1ton/mm2 であり、高い引張弾性率の繊維が
得られたが、圧縮強度は38kg/mm2 と少なく、伸
び率も0.52%と少なかった。又繊維の融膠着度は2
5%と大きく、複合材料を作る際の糸扱い性は良くなか
った。
り、引張強度は420kg/mm2 、引張弾性率は8
0.1ton/mm2 であり、高い引張弾性率の繊維が
得られたが、圧縮強度は38kg/mm2 と少なく、伸
び率も0.52%と少なかった。又繊維の融膠着度は2
5%と大きく、複合材料を作る際の糸扱い性は良くなか
った。
【0098】比較例3 ピッチ繊維の不融化に先立ってその前処理を実施しなか
った以外は、実施例1と同様に処理した。
った以外は、実施例1と同様に処理した。
【0099】この場合、予備炭化繊維を2000℃に焼
成して得られた炭素繊維は、融膠着度が70%であり、
複合材料にする際の糸扱い性が著しく悪かった。
成して得られた炭素繊維は、融膠着度が70%であり、
複合材料にする際の糸扱い性が著しく悪かった。
【0100】この炭素繊維は、密度(ρ)が2.16g
/cm3 で、X線構造パラメータの積層厚さ(Lc
002 )が14.5Å、層間隔(d002 )が3.420
Å、配向角(φ)が7.5°であり、ρ×Lc002 /
(φ×d002 )は5.3であった。
/cm3 で、X線構造パラメータの積層厚さ(Lc
002 )が14.5Å、層間隔(d002 )が3.420
Å、配向角(φ)が7.5°であり、ρ×Lc002 /
(φ×d002 )は5.3であった。
【0101】又炭素繊維は糸径9.8μmで、引張強度
が250kg/mm2 、引張弾性率が45ton/mm
2 、伸び率が0.55%、圧縮強度が49kg/mm2
と、実施例1と比べて低いものであった。
が250kg/mm2 、引張弾性率が45ton/mm
2 、伸び率が0.55%、圧縮強度が49kg/mm2
と、実施例1と比べて低いものであった。
【0102】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のピッチ系
炭素繊維は、密度(ρ)が1.95〜2.20g/cm
3 の範囲にあり、X線構造パラメーターの積層厚み(L
c002)が80〜180Å、層間隔(d002 )が3.3
9〜3.44Å、配向角(φ)が5.0°〜10.0°
の範囲にあり、且つ前記密度、積層厚み、層間隔及び配
向角が、式8.0<ρ×Lc002 /(φ×d002 )<1
5.0を満足する構成と規定したので、ピッチ系炭素繊
維は、密度が1.95〜2.20g/cm3 で繊維の引
張弾性率が65ton/mm2 以上の低密度で高弾性の
物性を備え、且つ融膠着度が20%以下と少なく、糸扱
い性が良好であり、然も1800〜2300℃の低温焼
成での炭化で得られる。
炭素繊維は、密度(ρ)が1.95〜2.20g/cm
3 の範囲にあり、X線構造パラメーターの積層厚み(L
c002)が80〜180Å、層間隔(d002 )が3.3
9〜3.44Å、配向角(φ)が5.0°〜10.0°
の範囲にあり、且つ前記密度、積層厚み、層間隔及び配
向角が、式8.0<ρ×Lc002 /(φ×d002 )<1
5.0を満足する構成と規定したので、ピッチ系炭素繊
維は、密度が1.95〜2.20g/cm3 で繊維の引
張弾性率が65ton/mm2 以上の低密度で高弾性の
物性を備え、且つ融膠着度が20%以下と少なく、糸扱
い性が良好であり、然も1800〜2300℃の低温焼
成での炭化で得られる。
Claims (1)
- 【請求項1】 密度(ρ)が1.95〜2.20g/c
m3 の範囲にあり、X線構造パラメーターの積層厚み
(Lc002 )が80〜180Å、層間隔(d00 2 )が
3.39〜3.44Å、配向角(φ)が5.0°〜1
0.0°の範囲にあり、且つ前記密度、積層厚み、層間
隔及び配向角が下記式 8.0<ρ×Lc002 /(φ×d002 )<15.0 を満足し、繊維の融膠着度が20%以下で糸扱い性が良
好であることを特徴とする高弾性率のピッチ系炭素繊
維。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35698591A JPH05171518A (ja) | 1991-12-25 | 1991-12-25 | ピッチ系炭素繊維 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35698591A JPH05171518A (ja) | 1991-12-25 | 1991-12-25 | ピッチ系炭素繊維 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05171518A true JPH05171518A (ja) | 1993-07-09 |
Family
ID=18451780
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP35698591A Pending JPH05171518A (ja) | 1991-12-25 | 1991-12-25 | ピッチ系炭素繊維 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH05171518A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0813255A (ja) * | 1994-07-05 | 1996-01-16 | Mitsubishi Chem Corp | 超高弾性率かつ高強度を有する炭素繊維とその製造方法 |
JPH08296125A (ja) * | 1995-04-26 | 1996-11-12 | Tokai Carbon Co Ltd | リン酸型燃料電池の多孔質電極基板用炭素繊維 |
-
1991
- 1991-12-25 JP JP35698591A patent/JPH05171518A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0813255A (ja) * | 1994-07-05 | 1996-01-16 | Mitsubishi Chem Corp | 超高弾性率かつ高強度を有する炭素繊維とその製造方法 |
JPH08296125A (ja) * | 1995-04-26 | 1996-11-12 | Tokai Carbon Co Ltd | リン酸型燃料電池の多孔質電極基板用炭素繊維 |
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