JPH0548238Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この考案は緩衝装置により鍵盤蓋の急激な落下
回動を防ぐようにした鍵盤楽器に関する。

（従来の技術） これまでに、鍵盤蓋の緩衝装置として、円筒形
ケースと、ケース内に回転可能に軸支されたダン
パー軸と、ダンパー軸に巻き付けられたスプリン
グと、ケースの開口端を閉じる蓋板とからなり、
スプリングの一端をケースの蓋部凹所に係止させ
たローリダンパーを鍵盤蓋の基端部両側面に埋設
する一方、楽器本体の腕木の内面に受け具を取付
け、この受け具のＵ字みぞにダンパー軸の突出端
を係合させ、鍵盤蓋を一定角度だけ前側に回動さ
せたところで、スプリングがダンパー軸を締付け
るようになつて抵抗を生じ、蓋の落下衝撃を和ら
げるようにしたものが特開昭63−41898号により
提案されている。

（考案が解決しようとする課題） ところで、上記装置では、ダンパー部材を鍵盤
蓋に取付け、そのダンパー軸の突出端を腕木内面
に取付けた受け金具に係合させて、鍵盤蓋を楽器
本体に組付けるようにしているため、ダンパー軸
は長大な鍵盤蓋の重量を支えることになり、ダン
パー軸には曲げ作用が働いて無理がかかり、ダン
パー自体の耐久性に不安があり、そして、ダンパ
ー軸に巻き付けたスプリングで重い鍵盤蓋の閉じ
動作を抑えるようにしているので、強いスプリン
グが必要で、動作が硬い感じのものとなり、鍵盤
蓋を閉じた最終状態においても、スプリングの反
発力で鍵盤蓋は浮きぎみになつてしまう。

また、鍵盤蓋は器体の外観、開閉動作、着脱な
どに支障のないように構造的な制約を受けてお
り、ダンパー部材を肉厚な基端部に取付けるにし
ても、その取付位置は限られたものとなり、ダン
パーケースに取付ける押え板が鍵盤蓋の内面から
突出してしまうことがある。

そこで、この考案はダンパー部材の取付けが容
易であり、しかも、ダンパー軸には鍵盤蓋の重み
がかからず、耐久性があり、鍵盤蓋の閉じ動作が
滑らかで、蓋を閉じたときに浮きぎみにならない
ようにすることを目的とする。

（課題を解決するための手段ならびに作用） 上記目的のもとにこの考案は、 オイルダンパーと、連結具とからなる鍵盤蓋の
緩衝装置を有する鍵盤楽器であつて、 オイルダンパーは、三角形状のフランジ部と、
内部にオイル室を有するダンパーケースと、円板
状の裏当て部とで形成され、フランジ部の表面を
楽器本体の両側の腕木の内面に一致させて各腕木
の所要の位置に埋設され、ダンパーケースには、
一端に角形端部を有するダンパー軸がオイル室を
貫通して回動可能に設けられ、フランジ部の表面
には、ダンパー軸の角形端部が突出すると共にこ
の角形端部を囲むＵ字状の受け具が設けられ、 連結具は、杆部と、その一端において所定幅の
スリツトを有するほぞ状の突部とで形成され、鍵
盤蓋の基端部の両側面に設けられた凹所内に取付
けられ、 従来オイルダンパーのダンパー軸の角形端部の
両側面に上記連結具の突部のスリツトを係合させ
て、鍵盤蓋を楽器本体に回動かつ着脱可能に組付
けたものである、ことを特徴としている。

かくて、鍵盤蓋の重量は両側の連結具を介して
オイルダンパーのフランジ部の受け具に支えら
れ、鍵盤蓋を上方に開く際には、ダンパーケース
内のオイルの抵抗が少なく、楽に速やかに回動
し、下方に閉じる際には、下降するにしたがいオ
イルの抵抗が徐々に大きくなつて、ゆつくりと回
動する。

（実施例） 図面を参照してこの考案の実施例について説明
すれば、第１図において１は鍵盤楽器本体の側板
の一部をなす腕木（図では片側のものだけを示
す）であつて、その内面後部の所要の位置にオイ
ルダンパー１０がそれぞれ埋設されている。

オイルダンパー１０は第３図イおよび第４図イ
のように三角形状のフランジ部１１と、内部に90
度ないし100度程度の扇形状のオイル室１２ａを
備えたダンパーケース１２と、円板状の裏当て部
１３とで形成され、フランジ部１１の表面が腕木
１の内面と一致するように両側の腕木１に埋め込
まれ、複数の止めねじ１９によつて止着されてい
る。

フランジ部１１の表面の幅広部中央には、ダン
パー軸１４の角形段部１４ａが突出していると共
に、その角形端部１４ａを一定の間隔をおいて囲
むみぞ１１ｂを備えた所要肉厚のＵ字状の受け具
１１ａが設けられている。

また、第１図において２は鍵盤蓋で、その肉厚
な基端部２ａの両側面（図では片側だけを示す）
には、オイルダンパー１０のフランジ部１１上の
受け具１１ａが入れるような深さと大きさの凹所
２ｂが、鍵盤蓋２の内面（図で前面）側と端面側
が開放されるようにそれぞれ設けられ、各凹所２
ｂ内には、第３図ロのように杆部２１と、その一
端においてダンパー軸１４の角形端部１４ａを挟
み込む幅のスリツト２２ａを有するほぞ状突部２
２とで形成された連結具２０がそれぞれ配設さ
れ、その杆部２１を鍵盤蓋２の基端面にほぼ平行
させ、かつ突部２２を鍵盤蓋２の内面側に位置さ
せて取付けられている。

そして、鍵盤蓋２を第１図のように起立させた
状態すなわち開いた状態にして、両側の連結具２
０の突部２２のスリツト２２ａを、腕木１の内面
に突出しているダンパー軸の角形端部１４ａの両
側面にそれぞれ嵌め合せることにより、第２図の
ように楽器本体の腕木１に回動かつ着脱可能に組
付けられる。この場合、鍵盤蓋２の重みは、ダン
パー軸１４にかかることなく受け具１１ａで支え
られる。

なお、第２図において３は棚板で、４は鍵盤蓋
２の両側下部に配設される拍子木である。

第４図イ，ロは上記オイルダンパー１０のダン
パーケース１２の内部を示すものであり、扇形状
のオイル室１２ａの内部にシリコンオイルが封入
され、その一側の要に当たる位置にはダンパー軸
１４が直交して貫通する状態に配設され、ダンパ
ーケース１２の前後の側壁に気密に回動可能に軸
支され、一端は前記のようにフランジ部１１の表
面から突出して角形端部１４ａをなしている。

そして、ダンパー軸１４にはオイル室１２ａ内
において羽根板１５がボス１５ａを介して固定さ
れ、羽根板１５の中央部には通孔１５ｂが設けら
れ、その通孔１５ｂには頭部を上にしたポペツト
弁１６の長目の軸部がルーズにかつ抜け出さない
ように挿着されており、また、ダンパーケース１
２の後壁１２ｂの周囲部には、複数の小孔１７
が、ダンパー軸１４を中心とする円弧に沿つて、
間隔を下側程小さく、上側程大きくして設けら
れ、それらの小孔１７は裏当て部１３に設けられ
た側路１８によつてそれぞれ連通されている。

そこで、鍵盤蓋２を楽器本体に前記のように組
付け、かつこれを閉じた状態では、上記羽根板１
５は第４図イの点線位置にあり、この蓋の閉じ状
態において、鍵盤蓋２を上方（開き方向）に回動
させれば、オイル室１２ａの羽根板１５は実線矢
印のように下方に回動し、そのときには羽根板１
５の通孔１５ｂに挿着されているボペツト弁１６
の頭部がオイルの抵抗で通孔１５ｂから離れる。

そのため、室内のオイルが通孔１５ｂを上から
下に自由に通り抜けることになり、羽根板１５は
抵抗少なく回転し、すなわち鍵盤蓋２は楽に回転
させられる。そして、鍵盤蓋２が第５図の実線の
ように開いた状態では、羽根板１５は下側実線の
位置にくる。

その開き状態で、鍵盤蓋２を下方（閉じ方向）
に回動させれば、ダンパー軸１４を介し羽根板１
５が点線矢印のように上方に回動し、そのときに
は室内のオイルの抵抗でボペツト弁１６の頭部が
羽根板１５の通孔１５ｂに圧接してこれを閉じる
ことになり、そのため、羽根板１５より上部にあ
るオイルは羽根板１５により押されて、後側壁２
ｂの小孔１７および裏当て部１３の側路１８を通
つて羽根板１５の下側に流入する。

そのとき、回動当初には羽根板１５の上方に位
置する小孔１７の数が多いためにオイルの抵抗が
比較的に少なく、羽根板１５は比較的に速やかに
回動し、上方に行くにつれて小孔１７が少なくな
ると共にその間隔が長くなるので、オイルの抵抗
が徐々に増し、羽根板１５はゆつくり回転しすな
わち鍵盤蓋２は急激な落下が緩和されてゆるやか
に回転し、鍵盤蓋２が第５図点線のように閉じた
ときには羽根板１５は上部点線の位置を占める。

なお、上述のオイルダンパー１０は一例であつ
て、鍵盤蓋２の開き動作は楽に速くでき、閉じ動
作は徐々に重くなるように制御できるものであれ
ば、図示の構成に限らず適宜に変更して差支えな
い。

（考案の効果） 以上のようにこの考案では、鍵盤蓋緩衝用のオ
イルダンパーを、取付け場所の制限された鍵盤蓋
でなく、面積的にゆとりのある楽器本体の側板に
取付けるようにしたので、組付け作業がやり易
く、そして、ダンパー軸の角形端部の両側面に、
鍵盤蓋基端部の連結具のスリツトを係合させたの
で、鍵盤蓋の重みをダンパー軸でなくフランジ部
の受け具に持たせることができ、ダンパー軸には
無理がかからず、耐久性を増し、鍵盤蓋に対する
緩衝動作を円滑に行うことができると共に鍵盤蓋
の着脱が容易であり、また、ダンパーはオイル式
のものなので、ばね式のものに比べ動作が柔軟
で、最終の閉じ状態において鍵盤蓋が浮きぎみに
なる不具合もなくなり、故障も少ないなどの利点
を有する。

【図面の簡単な説明】

第１図は鍵盤楽器の腕木と鍵盤蓋を分離した状
態の一部の斜視図。第２図は鍵盤蓋を組付けた状
態を後方からみた片側の断面図。第３図イはオイ
ルダンパーの斜視図。同図ロは連結具の斜視図。
第４図イは第３図イのＸ−Ｘ線に沿つた断面図。
同図ロは第４図イのＹ−Ｙ線に沿つた断面図。第
５図は鍵盤蓋の開閉状態を示す一部の側面図。 図中、１……腕木、２……鍵盤蓋、１０……オ
イルダンパー、１１……フランジ部、１１ａ……
受け具、１１ｂ……Ｕ字状みぞ、１２……ダンパ
ーケース，１２ａ……オイル室、１３……裏当て
部、１４……ダンパー軸、１４ａ……角形端部、
１５……羽根板、１６……ポペツト弁、１７……
小孔、２０……連結具、２１……杆部、２２……
突部、２２ａ……スリツト。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 オイルダンパー１０と、連結具２０とからなる
   鍵盤蓋２の緩衝装置を有する鍵盤楽器であつて、 オイルダンパー１０は、三角形状のフランジ部
   １１と、内部にオイル室１２ａを有するダンパー
   ケース１２と、円板状の裏当て部１３とで形成さ
   れ、フランジ部１１の表面を楽器本体の両側の腕
   木１の内面に一致させて各腕木１の所要の位置に
   埋設され、ダンパーケース１２には、一端に角形
   端部１４ａを有するダンパー軸１４がオイル室１
   ２ａを貫通して回動可能に設けられ、フランジ部
   １１の表面には、ダンパー軸１４の角形端部１４
   ａが突出すると共にこの角形端部１４ａを囲むＵ
   字状の受け具１１ａが設けられ、 連結具２０は、杆部２１と、その一端において
   所定幅のスリツト２２ａを有するほぞ状の突部２
   ２とで形成され、鍵盤蓋２の基端部２ａの両側面
   に設けられた凹所２ｂ内に取付けられ、 上記オイルルダンパー１０のダンパー軸１４の
   角形端部１４ａの両側面に上記連結具２０の突部
   ２２のスリツト２２ａを係合させて、鍵盤蓋２を
   楽器本体に回動かつ着脱可能に組付けたものであ
   る 鍵盤蓋の緩衝装置を有する鍵盤楽器。