JPH05270977A - 平板ダイヤモンド結晶、及びその形成方法 - Google Patents

平板ダイヤモンド結晶、及びその形成方法

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JPH05270977A
JPH05270977A JP4068680A JP6868092A JPH05270977A JP H05270977 A JPH05270977 A JP H05270977A JP 4068680 A JP4068680 A JP 4068680A JP 6868092 A JP6868092 A JP 6868092A JP H05270977 A JPH05270977 A JP H05270977A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 電子部品材料として有用な平板ダイヤモンド
結晶を提供する。 【構成】 気相合成法(燃焼法又はCVD法)により、
炭素、酸素濃度、及び基体面の核発生密度を制御して結
晶を形成する。得られた結晶2は、高さhと幅lの比が
1:4以上で、かつ基体面1aと結晶面2aとのなす角
度θは10度以下の板状である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子材料として優れた
特性をもつ平板状ダイヤモンド結晶、及びその形成方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】ダイヤモンドは、大きなバンドギャップ
(5.5eV)、大きなキャリア移動度(電子1800
cm2 /V・S,正孔1600cm2 /V・S)、大き
な熱伝導度(20W/cm・K)を持ち、更に高硬度で
耐摩耗性に優れる等の他の材料では得られない種々の特
性を有している。
【0003】近年、気相からのダイヤモンド合成、特に
化学的気相析出法(CVD法)の研究が進んでいる。
【0004】従来、CVD法で基体上に形成されるダイ
ヤモンドには以下のようなものがあった。 (1)基体としての天然、または人工ダイヤモンド結晶
への、ホモエピタキシャル成長、及びダイヤモンド結晶
に近い結晶構造を持つ立方晶窒化ホウ素(c−BN)へ
のヘテロエピタキシャル成長によるもの。これらは共
に、下地基体とエピタキシャル関係と持ち、非常に平滑
性の高い単結晶膜が得られる。 (2)基体としてシリコン基板、モリブデン、タングス
テン、タンタル等高融点金属、石英基板などへの一般的
な合成条件でのダイヤモンド形成では、核形成密度や膜
厚、その他合成条件により析出ダイヤモンドの形態が異
なる。
【0005】i)核発生密度が低い場合、ダイヤモンド
結晶は、粒状に、又方位関係はランダムに析出する。
【0006】ii)核発生密度が高い場合、ダイヤモンド
結晶は、凹凸の大きな多結晶膜状に析出する。
【0007】iii )膜厚を厚くし、かつ特定の合成条件
(炭素源濃度を比較的高く保つ)ことで、{100}面
が優勢な、配向性の高い多結晶膜が得られる。 (3)ニッケルやコバルト基体上へのヘテロエピタキシ
ャル成長。
【0008】炭素を固溶するこれらの基体上へは、ダイ
ヤモンドが部分的にエピタキシャル成長する。このとき
の析出形態は粒子状で、核発生密度が小さく、均一膜と
はならない。
【0009】しかしながら、上記従来例のダイヤモンド
結晶には以下のような問題点があった。 (1)ダイヤモンドおよび立方晶窒化ホウ素基体へのエ
ピタキシャル成長で得られる単結晶膜は、平滑で結晶性
も良好であるが、基体が非常に高価なため実用的ではな
い。 (2)シリコン、高融点金属、石英基体への一般的な条
件でのダイヤモンド形成では、 i)核発生密度が低い場合、単結晶ではあるが、析出の
方位がランダムで、かつ粒子状(高さと横幅の比が1:
3以下、一般的には1:2以下)である。
【0010】ii)核発生密度が高い場合、凹凸の大きな
多結晶膜となる。
【0011】iii ){100}配向膜は、その表面は基
体に対しほぼ並行で、又平滑性も良好な領域が認められ
るものの、本質的には多結晶膜であり、かつその膜中に
は多数の結晶欠陥(転位,欠陥,双晶)が存在する。 (3)ニッケルやコバルト基体へのエピタキシャル成長
では、下地とエピタキシャル関係のある単結晶粒子が得
られるが、析出形態は粒子状(高さと横幅の比が1:3
以下、代表的には1:2以下)であり、又特に{11
1}面が荒れやすく、結晶中に多数の結晶欠陥が存在す
る。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは上記問題
を解決するために種々検討した結果、本発明に想到し
た。即ち、本発明は、ダイヤモンド結晶の根本的な見直
しの結果なされたもので、ダイヤモンド結晶の高品質化
が、本発明の平板ダイヤモンド結晶の成長へ関与するこ
とを明らかにすることができたものである。
【0013】従って、本発明の目的とする所は、電子部
品等に有用な平板状のダイヤモンド結晶を提供すること
にある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、気相合成法で基体上に形成された平板ダ
イヤモンド結晶であって、その基体面の上方向に沿った
長さと基体面方向に沿った長さの比が1:4〜1:10
00で、かつ基体面と前記結晶上面とがなす角度が0〜
10度である平板ダイヤモンド結晶を提供するものであ
る。
【0015】また、酸素とアセチレンガスとを主たる原
料ガスとする燃焼法による上記平板ダイヤモンド結晶の
形成方法において、主たる原料ガス中の酸素とアセチレ
ンとのモル比の値が0.9≦O2 /C22 ≦1であ
り、かつ基体上に発生するダイヤモンドの核発生密度を
102 〜1×105 個/cm2 とするものである。
【0016】また、少なくとも1種のガスからなり、水
素、炭素、及び酸素の各元素を含む原料ガスを用いるC
VD法による上記の平板ダイヤモンド結晶の形成方法に
おいて、前記原料ガス中の炭素源濃度が0.01〜10
%で、かつ前記原料ガス中の酸素原子数と炭素原子数の
比の値が0.5≦O/C≦1.2で、更に基体上に発生
するダイヤモンドの核発生密度を104 〜2×106
/cm2 とするもので、CVD法が高周波、直流又はマ
イクロ波を励起源とするプラズマCVD法、もしくは熱
フィラメントを励起源とする熱フィラメントCVD法で
あることを含む。
【0017】基体温度を400〜900℃とすることに
より、平板ダイヤモンド結晶の上面を{111}面で形
成すること、基体温度を950〜1300℃とすること
により、平板ダイヤモンド結晶の上面を{100}面で
形成することを含む。
【0018】更に、基体の所定の部位にホウ素イオン又
は炭素イオンを注入し、次いで上記記載の形成方法によ
り基体の所定の部位に選択的に平板ダイヤモンド結晶を
形成させるものである。
【0019】以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】本発明の平板ダイヤモンド結晶の断面の模
式図を図1に、又、従来例の粒子状ダイヤモンド結晶の
断面の模式図を図2に示す。
【0021】図1中1は基体で、その上面に本発明に係
る平板ダイヤモンド結晶2が形成されている。この平板
ダイヤモンド結晶2の基体面上方向に沿った長さ(高
さ)hと、基体面方向に沿った長さ(横幅)lの比は
1:4以上、一般的には1:4.5以上、好ましくは
1:5〜1:1000である。また、基体面1aと結晶
上面2aとがなす角θは10度以下、好ましくは5度以
下のものである。
【0022】以下、このような形態をもつダイヤモンド
結晶を平板ダイヤモンド結晶と言う。
【0023】又、従来例の粒子状ダイヤモンド結晶4
は、高さhと横幅lの比が1:3以下、一般的には1:
2以下となる。なお、3は基体である。
【0024】以下、このような形態のダイヤモンド結晶
を粒子状ダイヤモンド結晶と言う。このとき、粒子上面
と基体3とがなす角θは、一般的にはランダムとなる。
(ニッケル、及びコバルト基体上では、下地基体の方位
とエピタキシャル関係となる。)本発明の平板ダイヤモ
ンド結晶の成長機構の詳細は不明であるが、この平板ダ
イヤモンド結晶の析出する合成条件が、非常に高品質の
ダイヤモンド結晶を合成する条件であることを考える
と、例えば高品質結晶合成条件では、ダイヤモンド結晶
のエッチングガスとして働く水素ラジカルやOHラジカ
ルが多数存在し、結晶上面の成長速度が抑制されるのに
対して、結晶側面は、エッチングの効果が弱まるため
(側面では単位面積あたりの水素ラジカルやOHラジカ
ルの量が減る、又は、基体などとの衝突により、エッチ
ングガスとしての働きを失ったガス種が多く存在する等
の理由が上げられる。)成長速度があまり抑制されず、
結果として側面のみが成長する等の機構を考えることが
できる。
【0025】又、本発明の平板ダイヤモンド結晶の上面
は、3角形又は6角形のモルフォロジーを持つ{11
1}面、さらには、4角形又は8角形のモルフォロジー
を持つ{100}面である。又側面は{111}面、又
は{100}面よりなっている。
【0026】このモルフォロジーの変化は、主として結
晶形成時の基体温度に依存する。この基体温度が400
℃以上、900℃以下のとき、望ましくは600℃以
上、750℃以下のときに、上面は主として3角形又は
6角形の{111}面となる。また、950℃以上、1
300℃以下のとき、望ましくは1000℃以上、12
00℃以下のとき、上面は4角形又は8角形の{10
0}面となる。又、ダイヤモンド合成雰囲気中の炭素源
濃度が低い場合、上面が{111}面に、又高い場合、
上面が{100}面になる傾向がある。
【0027】本発明の平板ダイヤモンド結晶は、単結
晶、又は平板中の双晶面が形成された双晶である。特に
基体温度が400℃以上、900℃以下で形成された、
上面が{111}面の平板ダイヤモンド結晶には、上面
に平行に双晶面が形成されているものが多い。これは、
双晶面の形成により凹入角が形成されるためで、凹入角
効果と呼ばれる働きにより、凹入角のある方向に結晶の
成長が促進されやすく、平板ダイヤモンドの形成が進む
ためと考えられる。なお、上面に平行に形成された双晶
面は一つだけではなく、2個以上形成されることもあ
る。
【0028】本発明の平板ダイヤモンド結晶を基体上に
形成する方法は、気相合成法による。
【0029】気相合成法には、公知のCVD法、及び燃
焼炎法等がある。
【0030】CVD法は熱フィラメントCVD法、マイ
クロ波プラズマCVD法、有磁場マイクロ波プラズマC
VD法、直流プラズマCVD法、RFプラズマCVD法
等がある。
【0031】上記気相合成法に用いる原料ガスの炭素源
としては、メタン、エタン、エチレン、アセチレン等の
炭化水素ガス、及びアルコール、アセトン等の液状有機
化合物、一酸化炭素又はハロゲン化炭素などを用いるこ
とができ、さらに適宜、水素、酸素、塩素、フッ素を含
むガスを添加することができる。 (1)CVD法による平板ダイヤモンド結晶の形成 原料ガスは、少なくとも水素、炭素及び酸素元素を含ん
でいることが必要で、1種の原料ガス中に上記全元素を
含んでいるガスを用いてもよく、またいずれかの元素を
含む原料ガスの複数種を組合わせて用いても良い。この
場合、その原料ガス中の炭素源濃度は10%以下とする
必要がある。ここで言う炭素源濃度とは、 である。炭素源ガス中の炭素原子数は、例えばメタン
(CH4 )なら1、プロパン(C38 )なら3、アセ
トン(CH3 COCH3 )なら3となる。この炭素源濃
度を10%以下とする理由は、ダイヤモンド結晶の過飽
和度を抑え、特に高さ方向の結晶成長を抑制するためで
ある。下限は特にないが0.01%以下では、実用的な
平板ダイヤモンド結晶の形成速度が得られない場合があ
る。
【0032】更に、CVD法においては、原料ガス中の
酸素と炭素との原子数の比(O/C)を0.5≦O/C
≦1.2、望ましくは0.7≦O/C≦1.1とするも
のである。0.5未満では添加効果がなく、又1.2を
越えると酸素のエッチング効果で実用上使用可能なダイ
ヤモンド形成速度を得ることができない。上記O/C値
を調節するには、例えばO2 ,H2 O,N2 Oなどの酸
素添加ガスを原料ガス中に添加することもできる。
【0033】又、アルコールなど酸素含有有機化合物を
炭素源として用いる場合は、比較的低いO/C値でも、
平板ダイヤモンド結晶が形成可能である。例えば原料ガ
スとして水素とエタノール(C25 OH)を用いた場
合、O/C=0.5で、良質な平板ダイヤモンド結晶が
形成可能である。この理由の詳細は不明であるが、酸素
含有有機化合物は、酸素の活性種(OHラジカル等)が
形成されやすいため、と考えられる。
【0034】CVD法においては、炭素源濃度、及び酸
素と炭素原子数の比の値(O/C)を上述の範囲とした
雰囲気ガス中で、圧力を1〜1000Torrとして、
公知の熱フィラメントCVD法、及びマイクロ波プラズ
マCVD法を行なう。さらには0.01〜10Torr
の範囲内で公知の有磁場マイクロ波プラズマCVD法を
用いるなどにより平板ダイヤモンド結晶を形成する。
【0035】又、本発明の平板ダイヤモンド結晶は、比
較的低い核発生密度のときにのみ形成される。プラズマ
CVD法及び熱フィラメントCVD法では、2×106
個/mm2 以下のときにのみ、平板ダイヤモンド結晶が
形成される。この理由の詳細は不明であるが、本発明の
平板ダイヤモンド結晶の形成には、高さ方向の成長を抑
えるために、十分な量のエッチングガス(水素ラジカ
ル、又はOHラジカル)が必要であり、又横方向の成長
を促進させるため、側面にも十分な量のダイヤ形成に関
与する活性種(CHx ラジカル種等)が到達することが
必要である。このため、核発生密度を、低くしなければ
ならないと考えられる。 (2)燃焼炎法による平板ダイヤモンド結晶の形成 燃焼炎法では、酸素−アセチレン炎を用いるが、この主
たる原料ガス中の酸素とアセチレンとのモル比の値は
0.9≦O2 /C22 ≦1.0となるように、好まし
くは0.95≦O2 /C22 ≦0.99とすること
で、再現性良く、さらに比較的高い形成速度(数十μm
/hr:横幅の成長速度)でダイヤモンド結晶を得るこ
とができる。
【0036】上述の燃焼炎法の場合、ダイヤモンド結晶
の核発生密度は1×105 個/mm 2 以下、好ましくは
1×102 〜1×105 個/mm2 とする。燃焼炎法
で、特に、核発生密度を下げなければならない理由は、
燃焼炎法では熱フィラメントCVD法や、マイクロ波プ
ラズマCVD法に比べて、10倍以上(数十μm/h
r)平板ダイヤモンド結晶の横方向成長速度が速いため
である。熱フィラメントCVD法や種々のプラズマCV
D法においても、広い横幅を持つ平板ダイヤモンド結晶
を形成する場合は、適宜核発生密度を下げて、平板ダイ
ヤモンド結晶の間隔を十分開ける必要がある。必要な間
隔は、形成条件により一概には言えないが、平板ダイヤ
モンド結晶の横幅分(横幅が10μmなら10μm間
隔)程度である。
【0037】核発生密度を調節する方法は、以下に示す
公知の各種方法が利用できる。
【0038】まず、鏡面研磨されたSi結晶基板を用い
た場合の核発生密度は、約104 個/cm2 である。し
かし、基板の洗浄を十分に行なった場合(例えば硫酸−
過酸化水素水で煮沸後、フッ化水素酸で洗浄する)、核
発生密度は、約102 個/cm2 となる。これに対し
て、フッ化水素酸(1%)−エチルアルコール溶液で処
理すると、基板表面がハイドロカーボン修飾され、核発
生密度が105 〜106個/cm2 に向上する。
【0039】又、炭化ケイ素やダイヤモンド砥粒を用い
て、基板表面に傷付け処理を行なうと核発生密度は10
6 〜109 個/cm2 に向上する。この傷付け処理した
基板を、ウエットエッチング又はドライエッチングで表
面を数十〜数百nmエッチングすると、核発生密度が1
5 〜107 個/cm2 に減少する。
【0040】以上述べたように公知の方法で、核発生密
度を制御することができる。本発明は、上記の方法に限
定されることなくいかなる方法で核発生密度を制御して
もよい。しかしながら核発生密度を、本発明の範囲内に
することが必要である。
【0041】次に、平板ダイヤモンド結晶の選択堆積法
について説明する。
【0042】本発明の平板ダイヤモンド結晶は、以下の
方法を用いて基体上の任意の部位に、選択的に形成でき
る。
【0043】まず、基体上の任意の部位に、ホウ素イオ
ン、又は炭素イオンを注入する。イオン注入の方法とし
ては、集束イオンビーム装置で、基体上の任意の部位に
注入を行なう。又はレジストパターンを形成した基体上
全体にイオン注入装置を用いてイオン注入を行なった
後、レジストパターンを除去し、基体上にイオン注入し
た部位を作り分ける等の方法である。イオン注入のエネ
ルギーは、特に限定はないが、一般的には2KeVから
2MeV程度のものが用いられる。又、イオン注入量は
1×1016ions/cm2 以上、望ましくは1×10
17〜1020ions/cm2 で行なう。
【0044】ホウ素イオン、又は炭素イオンを注入した
部位に選択的に平板ダイヤモンドが形成される理由につ
いては不明な点が多いが、例えば、基体表面に炭素、又
はホウ素が存在することにより、ダイヤモンド形成に関
与する炭素系活性種(炭素源ガスに依存するが、CH3
ラジカルなどが考えられている)との反応が促進され、
ダイヤモンド核発生が増加するため、と考えることがで
きる。
【0045】又、平板ダイヤモンド結晶の選択堆積法と
しては、例えば本発明者らの特開平2−30697号公
報に開示した方法をあげることができるが、特にかかる
方法に限定されるものではない。
【0046】特開平2−30697号公報に開示した方
法は、基体表面全面に傷付け処理を施した後、基体にパ
ターン状にマスクを形成し、エッチング処理を行ない、
マスクを除去することにより傷付け処理した部位を基体
表面にパターン状に形成する方法である。なお、基体に
パターン状にマスク部材を設け、基体表面に傷付け処理
を施しエッチング処理によりパターン状に形成した該マ
スク部材を除去することにより、傷付け処理した部位を
パターン状に形成する方法でもよい。また基体表面に傷
付け処理を施した後、耐熱性を有するマスク部材をパタ
ーン状に形成することにより傷付け処理した部位をパタ
ーン状に形成する方法でもよい。
【0047】ダイヤモンド砥粒を用いた傷付け処理の方
法は、特定の方法に限定されるものではなく、例えばダ
イヤモンド砥粒を用いて研磨を行なう、超音波処理を行
なう、又はサンドプラストを行なう等の方法がある。例
えば1μm以下のダイヤモンド砥粒と横ずり研磨器によ
りSi単結晶基板の傷付け処理を行なうと、107 個/
cm2 以上の核発生密度が得られる。又、超音波処理の
方法は、0.1〜1g/10mlの割合で、粒径1μm
〜50μmの砥粒を分散させた液体中に基体を入れ、5
分間〜4時間、望ましくは10分間から2時間程度、超
音波洗浄器等で超音波をかけることにより行なう。この
超音波処理法により、やはり107 個/cm2 以上の核
発生密度を得ることができる。
【0048】基体上にダイヤモンド砥粒を用いて傷付け
処理した部位をパターン状に形成することでダイヤモン
ドの選択堆積を行なう方法の一例について、図6(a)
〜(e)の模式図に従って説明する。
【0049】まず、基体22表面をダイヤモンド砥粒を
用いて均一に傷付け処理を施す(図6(a))。
【0050】この基体22表面にマスク23を形成する
(図6(b))。このマスクの材料としてはどのような
ものでもかまわないが、例えば、フォトリソグラフィー
法(光描画法)を用いてパターン状に形成されたレジス
トなどがあげられる。
【0051】単一核よりなるダイヤモンド結晶を形成す
るためには、このマスクの面積を10μm2 以下にする
必要がある。10μm2 以上の場合、このマスクパター
ン上に複数の核が発生し、多結晶化したダイヤモンドが
形成される。
【0052】次に、マスク23を介して基体22をエッ
チングすることにより傷付け処理を施した部位をパター
ン状に形成する(図6(c))。上記エッチングはドラ
イエッチングでもウェットエッチングでも、どちらでも
良い。ウェットエッチングの場合は、例えばフッ酸、硝
酸混液によるエッチングなどを挙げることができる。ま
たドライエッチングの場合は、プラズマエッチング、イ
オンビームエッチングなどを挙げることができる。プラ
ズマエッチングのエッチングガスとしては、CF4
ス、及びCF4 ガスに酸素、アルゴンなどのガスを加え
たものを用いることができる。イオンビームエッチング
のエッチングガスとしてはAr,He,Ne等の希ガス
や酸素、フッ素、水素、CF4 等のガスも可能である。
エッチング深さは100Å以上、望ましくは500〜1
0000Å、最適には800〜2000Å程度が好まし
い。
【0053】次に、マスク23を除去し(図6
(d))、前述した条件下でダイヤモンドを形成する
と、傷付け処理を施した部位に選択的に平板ダイヤモン
ド結晶24が形成される(図6(e))。
【0054】又、本発明の平板ダイヤモンド結晶を半導
体材料として用いるために、原料ガス中に適宜ドーピン
グガスを添加してもよい。ドーピングガスとしては、ホ
ウ素、リン、窒素、リチウム、アルミニウム等を含有し
たガスを用いることができる。
【0055】本発明で用いられる、平板ダイヤモンド形
成用基体は、Si,Ge,GaAs等の半導体基体、
W,Mo,Ta,等の高融点金属、SiO2 ,Al2
3 等の酸化物基体、Cu,Ag,Au,Pt,Fe,C
o,Ni,Cr,Ti等の金属など種々の基体を用いる
ことができる。なかでも、ホウ素を含んだ基体、例えば
種々のホウ化物、さらにはホウ素が多量にドーピングさ
れたSi基体、又は炭化物を形成しにくい基体、例えば
Cu,Ag,AuやSiO2 ,Al23 等の酸化物基
体において平板ダイヤモンド結晶ができやすい傾向があ
る。
【0056】
【実施例】次に、本発明の実施例について図面を参照し
て説明する。 <実施例1>本実施例では、燃焼炎法を用いた平板ダイ
ヤモンド結晶の形成方法について、図3を参照して説明
する。
【0057】図3は酸素−アセチレン炎バーナーを用い
た燃焼炎法を示す模式図であり、5はバーナー、6は基
体、7は内炎、8は外炎、9は基体ホルダーで、水冷に
より基体を冷却している。
【0058】基体としては、Si単結晶基板(1cm
角、ボロンドープ、比抵抗0.01Ω・cm)を用い
た。
【0059】ガス流量はC22 ;1.5l/min,
2 ;1.4l/minとし、基板温度は650℃、合
成時間は30分間とした。以上のようにして形成したダ
イヤモンド結晶は、6角形の{111}面を上面とし、
さらに高さと横幅の比が1:4以上、平均して1:4.
7の平板ダイヤモンド(平均横幅は25μm)であっ
た。なおこのときの核発生密度は2×104 個/cm2
であった。又、基板と上面のなす角は、10度以下であ
った。 <実施例2及び3,比較例1〜3>酸素ガス流量を変え
ること(実施例2及び3,比較例1)、又はダイヤモン
ド砥粒を分散させたアルコール中で超音波処理を行な
い、核発生密度を増加させること(比較例2及び3)以
外は実施例1と同様にしてダイヤモンド結晶を形成させ
た。酸素−アセチレン比が0.9以上の実施例2及び3
では平板ダイヤモンドが形成された。
【0060】酸素−アセチレン比が0.90以下(0.
87)の比較例1では、粒状ダイヤモンドが形成され
た。又、超音波処理により核発生密度を増加させた比較
例2及び3では、粒状ダイヤモンド、又は多結晶膜ダイ
ヤモンドが形成された。
【0061】なお、実施例2及び3において、平板ダイ
ヤモンド結晶の上面と基板とのなす角は10°以下であ
った。
【0062】
【表1】 <実施例4>基体ホルダーの冷却水流量を調整し、基体
温度を1050℃とすること以外は実施例1と同様の方
法でダイヤモンド結晶を形成したところ、4角形の{1
00}面を上面として、高さと横幅の比が平均して1:
4.3で横幅が平均20μmの平板ダイヤモンド結晶が
得られた。このときの核発生密度は2×104 個/cm
2 であった。又、平板ダイヤモンド結晶の上面と、基板
とのなす角は10°以下であった。 <実施例5>本実施例では、熱フィラメントCVD法を
用いた平板ダイヤモンド結晶の形成例について、図4を
参照して説明する。
【0063】図4は、水素、エチルアルコールを原料ガ
スとする熱フィラメントCVD法の一例を示す模式図
で、10は石英反応管、11は電気炉、12はタングス
テン製フィラメント、13は基体、14は原料ガス導入
口で、不図示のガスボンベ、及びアルコール気化装置、
流量調整器、バルブ等が接続されている。15はガス排
気口で、不図示のバルブ、圧力調整用バルブ、さらに排
気系(ターボ分子ポンプにロータリーポンプが接続され
たもの)が接続されている。
【0064】基体としては、銅基板(1インチ角、厚さ
0.5mm、純度99.5%)を用いた。
【0065】原料ガス流量は、H2 :200ml/mi
n,C25 OH:1ml/minで、フィラメント温
度:2000℃、基体温度:700℃,圧力:760T
orr、合成時間2時間とした。以上のようにして形成
したダイヤモンド結晶は6角形の{111}面を上面と
し、高さと横幅の比が、約1:4.5の平板ダイヤモン
ド結晶(平均横幅は、約5μm)であった。なお、この
ときの核発生密度は5×105 個/cm2 であった。
又、平板ダイヤモンド結晶の上面と基体面とがなす角
は、10度以下であった。 <実施例6>本実施例では、マイクロ波プラズマCVD
法を用いた平板ダイヤモンド結晶の形成例について、図
5を参照して説明する。
【0066】図5は、水素、メタン、酸素を原料ガスと
する、マイクロ波プラズマCVD法の一例を示す模式図
で、16は石英反応管、17は基体、18はガス導入系
で、ガスボンベや流量調整器が組み込まれている。19
はマイクロ波発振器で、2.45GHzのマイクロ波が
最大1.5KWまで印加可能である。20はマイクロ波
導波管、21は排気系でターボ分子ポンプとロータリー
ポンプが接続されている。
【0067】基体としては、石英基板(15mm角、厚
さ0.5mm)を用いた。原料ガス流量は、H2 :20
0ml/min,CH4 :2ml/min,O2 :0.
7ml/minとし、圧力:100Torr,マイクロ
波出力:600W,基板温度680℃、合成時間5時間
とした。
【0068】以上の条件で形成したダイヤモンド結晶
は、6角形の{111}面を上面とし、高さと横幅の比
が約1:4.6の平板ダイヤモンド結晶(平均横幅は、
約4μm)であった。なお、このときの核発生密度は8
×105 個/cm2 であった。又、平板ダイヤモンド結
晶の上面と基体面とがなす角は、10度以下であった。 <実施例7>マイクロ波出力を900Wとし、基板温度
を980℃とすること以外は実施例6と同様にし、ダイ
ヤモンド結晶を形成した。4角形の{100}面を上面
として、高さと横幅の比が約1:4.2で、横幅が約5
μmの平板ダイヤモンド結晶が形成された。
【0069】なお、このときの核発生密度は5×105
個/cm2 であり、又、平板ダイヤモンド結晶の上面と
基板とがなす角は、10度以下であった。 <実施例8〜12,比較例4〜7>原料ガスを、一酸化
炭素、水素混合ガスに変え、炭素源濃度を変化させるこ
と(実施例8及び9,比較例4)、又はO/C値を変化
させること(実施例10〜12,比較例5,6)、又は
ダイヤモンド砥粒を分散させたアルコール中で超音波処
理を行ない、核発生密度を増加させること(比較例7)
以外は実施例6と同様にしてダイヤモンド結晶を形成し
た。
【0070】原料ガス中の炭素源濃度が10%以下の実
施例8及び9では、平板ダイヤモンド結晶が形成された
ものの、10%以上(11.1%)の比較例4では、粒
状ダイヤモンドが形成された。
【0071】又、O/Cを0.5≦O/C≦1.2の範
囲内とした実施例10〜12では、平板ダイヤモンド結
晶が形成されたが、O/Cが0.5未満の比較例6では
粒状ダイヤモンド結晶が、またO/Cが1.2より大き
い比較例5では、ダイヤモンドが析出しなかった。
【0072】超音波処理により、核発生密度を高めて本
発明の範囲外とした比較例7では、O/C値は満たして
いるものの粒状ダイヤモンド結晶が形成された。
【0073】なお、実施例8〜12において、平板ダイ
ヤモンド結晶の上面が基板となす角は、10度以下であ
った。
【0074】
【表2】 <実施例13>本実施例では、平板ダイヤモンド結晶の
選択堆積例について述べる。
【0075】基体としては、Si単結晶基板(φ1イン
チ、厚さ0.5mm、比抵抗1000Ω・cm以上)を
用いた。この基板に、集束イオンビーム(FIB)装置
でホウ素イオン(B+ イオン)を、20KeVの加速電
圧で注入した。注入領域は、3μm角で、20μmピッ
チの間隔で行ない、又注入量は1×1017ions/c
2 とした。
【0076】この基板に対し、実施例6と同様な方法で
ダイヤモンドの形成を行なった所、ホウ素の注入領域に
選択的に平板ダイヤモンド結晶が形成された。
【0077】なお、得られた平板ダイヤモンド結晶は6
角形の{111}面を上面とし、高さと横幅の比が約
1:4.5で、横幅が約4μmであった。又、平板ダイ
ヤモンド結晶の上面と基板とがなす角は、10度以下で
あった。 <実施例14>本実施例では、平板ダイヤモンド結晶の
別の選択堆積例について述べる。
【0078】基体としては、実施例13と同様のSi単
結晶基板を用いた。
【0079】この基板に、光描画装置を用いたレジスト
パターン形成プロセスにより、20μmピッチの間隔
で、2.5μm角のSi表面が露出するように、レジス
トパターンを形成した。さらに、イオン注入装置を用い
て、この基板に炭素イオン(C + イオン)を、加速電圧
10keV、注入量2×1017ions/cm2 で全面
に注入した。イオン注入後レジストパターンを除去し、
実施例6と同様な方法でダイヤモンドの形成を行なっ
た。このダイヤモンド形成により、イオン注入時にSi
表面が露出していた部位に、選択的に平板ダイヤモンド
結晶が形成された。
【0080】なお得られた平板ダイヤモンド結晶は6角
形の{111}面を上面とし、高さと横幅の比が約1:
4.5で、横幅が約4μmであった。又、平板ダイヤモ
ンド結晶の上面と基板とがなす角は10度以下であっ
た。 <実施例15>本実施例では、平板ダイヤモンド結晶の
さらに別の実施例を示す。
【0081】まず、石英基板(25mmφ×0.5mm
t )を、平均粒径15μmのダイヤモンド砥粒を分散さ
せたアルコール中に入れ、超音波洗浄器を用いて傷付け
処理を行なった。
【0082】次いで、この基板上に、マスクアライナを
用いて、直径2μmのPMMA系レジストパターンを、
15μmピッチで形成した。
【0083】この基板をArイオンビームエッチング装
置を用いて約1000Åの深さにエッチングを行なっ
た。なお、その際のエッチング条件は、加速電圧1k
V、エッチング時間10分間であった。
【0084】次いで、有機溶媒を用いてレジストを除去
し、実施例8と同様の方法でダイヤモンドの形成を行な
った所、レジスト形成部位(未エッチング部位)のみに
選択的に平板ダイヤモンド結晶が形成された。
【0085】なお得られた平板ダイヤモンド結晶は、6
角形の{111}面を上面とし、高さと横幅の比が約
1:4.5で、横幅が6μmであった。又、平板ダイヤ
モンド結晶の上面と基板とがなす角は、10度以下であ
った。
【0086】
【発明の効果】本発明により、上面が基板とほぼ平行
で、かつ高さと横幅の比が1:4以上の平板ダイヤモン
ド結晶が得られる。このような平板ダイヤモンド結晶
は、特に電子材料としてすぐれたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の平板ダイヤモンド結晶の一例を示す模
式的断面図である。
【図2】従来例の粒状ダイヤモンド結晶の模式的断面図
である。
【図3】燃焼炎法による本発明の一実施例を示す模式図
である。
【図4】本発明の実施に用いる熱フィラメントCVD装
置の一例を示す模式図である。
【図5】本発明の実施に用いるマイクロ波プラズマCV
D装置の一例を示す模式図である。
【図6】平板ダイヤモンド結晶の選択堆積法を説明する
工程図である。
【符号の説明】
1 基体 2 平板ダイヤモンド結晶 3 基体 4 粒状ダイヤモンド結晶 5 バーナー 6 基体 7 内炎 8 外炎 9 基体ホルダー 10 石英反応管 11 電気炉 12 フィラメント 13 基体 14 原料ガス導入口 15 ガス排気口 16 石英反応管 17 基体 18 原料ガス導入系 19 マイクロ波発振器 20 導波管 21 ガス排気系 22 基体 23 レジストパターン 24 平板ダイヤモンド結晶

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 気相合成法で基体上に形成された平板ダ
    イヤモンド結晶であって、その基体面の上方向に沿った
    長さと基体面方向に沿った長さの比が1:4〜1:10
    00で、かつ基体面と前記結晶上面とがなす角度が0〜
    10度であることを特徴とする平板ダイヤモンド結晶。
  2. 【請求項2】 酸素とアセチレンガスとを主たる原料ガ
    スとする燃焼法による請求項1記載の平板ダイヤモンド
    結晶の形成方法において、主たる原料ガス中の酸素とア
    セチレンとのモル比の値が0.9≦O2 /C22 ≦1
    であり、かつ基体上に発生するダイヤモンドの核発生密
    度を102 〜1×105 個/cm2 とすることを特徴と
    する平板ダイヤモンド結晶の形成方法。
  3. 【請求項3】 少なくとも1種のガスからなり、水素、
    炭素、及び酸素の各元素を含む原料ガスを用いるCVD
    法による請求項1記載の平板ダイヤモンド結晶の形成方
    法において、前記原料ガス中の炭素源濃度が0.01〜
    10%で、かつ前記原料ガス中の酸素原子数と炭素原子
    数の比の値が0.5≦O/C≦1.2で、更に基体上に
    発生するダイヤモンドの核発生密度を104 〜2×10
    6 個/cm2 とすることを特徴とする平板ダイヤモンド
    結晶の形成方法。
  4. 【請求項4】 CVD法が高周波、直流又はマイクロ波
    を励起源とするプラズマCVD法、、もしくは熱フィラ
    メントを励起源とする熱フィラメントCVD法である請
    求項3記載の平板ダイヤモンド結晶の形成方法。
  5. 【請求項5】 基体温度を400〜900℃とすること
    により、平板ダイヤモンド結晶の上面を{111}面で
    形成することを特徴とする請求項2又は3記載の平板ダ
    イヤモンド結晶の形成方法。
  6. 【請求項6】 基体温度を950〜1300℃とするこ
    とにより、平板ダイヤモンド結晶の上面を{100}面
    で形成することを特徴とする請求項2又は3記載の平板
    ダイヤモンド結晶の形成方法。
  7. 【請求項7】 基体の所定の部位にホウ素イオン又は炭
    素イオンを注入し、次いで請求項2又は3記載の形成方
    法により基体の所定の部位に選択的に平板ダイヤモンド
    結晶を形成させることを特徴とする平板ダイヤモンド結
    晶の選択堆積法。
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