JPH0431036B2 - - Google Patents
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- Electroplating Methods And Accessories (AREA)
Description
<産業上の利用分野>
本発明は、飲料缶、食料缶などの食缶関係、あ
るいは18缶、ペール缶などの雑缶関係などの分
野で使われる溶接缶用テインフリー鋼板に関する
ものである。 <従来技術とその問題点> 缶用材料として一般にブリキとテインフリー鋼
板が主として使われている。省資源、コスト削
減、外観等のためにブリキ缶は半田缶から溶接缶
へ急速に移行しつつあり、また錫目付も2.8g/
m2以上のものに代わり、1.0g/m2以下の薄目付
のものが開発されている。しかし、コスト的にみ
るならば、薄目付ブリキといえどもテインフリー
鋼板に優れるとはいえない。それがテインフリー
鋼板の使用が増加している理由の一つである。 このようにコスト的に有利なテインフリー鋼板
にも大きな問題がある。テインフリー鋼板は表面
に金属クロムと非金属クロムの薄い被膜を形成せ
しめた鋼板であり、主に接着缶として使われてい
る。これは半田付ができないこと、およびその表
面被膜の高抵抗、高融点のために溶接できないと
いうテインフリー鋼板の欠点を解決するためであ
る。 しかし、この接着缶は缶内容物を高温殺菌処理
するときに接着部が破れて缶が破胴するトラブル
を起こすことがある。テインフリー鋼板のクロム
水和酸化物被膜の改質によりかなり改善されたと
はいえ、接着缶は常にそのような危険を伴つてい
る。もし、溶接できるテインフリー鋼板が開発さ
れればこのようなトラブルがなくなるだけでな
く、接合部の重ね合せが5mm(接着缶)から0.2
〜0.4mmとなるために素材を節約でき、かつ巻締
部からの真空もれの危険も防止できるなどのメリ
ツトも生れる。したがつて、溶接できるテインフ
リー鋼板の開発に対する期待は大きい。 溶接できるテインフリー鋼板あるいは製造方法
を提供するものとして、例えば特公昭57−19752
号や特公昭57−36986号がすでに公知である。し
かし、これらはいずれも金属クロムあるいは非金
属クロムの量を少なくすることにより、溶接性の
向上をはかつているために、そのようなテインフ
リー鋼板は金属クロム層がポーラスな構造となつ
て、どうしても耐食性を著しく損なうことにな
る。 また、「TFSの溶接性に及ぼす突起状金属クロ
ムの影響」(「鉄と鋼」(1986)S442)あるいは
「テインフリースチールの溶接性におよぼす被膜
形態と被膜組成の影響」(「鉄と鋼」(1986)
S443)に発表されているところでは金属クロム
の粒状析出したTFSが溶接性に対して良好であ
ると述べている。しかし、この2つの発表は効果
的な粒状金属クロムの詳細な形態までは言及して
いなかつた。 さらに粒状析出した金属クロム層が断続電解に
よつて製造できることは「金属表面技術」第35巻
(1984)P354−358の「電析クロムの結晶方位と
成長状態」およびおなじく「金属表面技術」第35
巻(1984)P397−401の「電析金属クロムの粒状
析出機構」で述べられており、公知であるが、両
報告では金属クロム層の微視的に見た均一性が耐
食性に重要であり、粒状クロムの成長は下地金属
クロムの配向に影響され、微視的には不均一であ
るので、耐食性の観点からは好ましくないものと
位置づけており、これら粒状析出を均一にかつ特
定の直径範囲、個数範囲に制御することにより、
優れた溶接性、耐食性が得られることは何ら示さ
れていない。 従来の缶用クロムめつき鋼板の問題点は、下記
の通りである。 (1) クロムめつき鋼板は鋼板表面に絶縁体である
クロム酸化被膜があり、シーム溶接性が劣る。 (2) 金属クロム量あるいは非金属クロム量を減ら
すと溶接性は多少向上するが耐食性が劣る。 (3) 粒状金属クロムを有するクロムめつき鋼板は
溶接性は向上するが、断続電解で形成される粒
状金属クロムは不均一で耐食性に影響を与え
る。 (4) 粒状金属クロムの析出、および分布状態が溶
接性に及ぼす影響、効果がわかつていない。 <発明の目的> 本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解
消しようとするもので、溶接性、耐食性に優れた
溶接缶用クロムめつき鋼板を提供するものであ
る。 <発明の構成> 本発明は以上のような従来技術の問題点を陽極
処理法を用いて粒状析出の形態分布をコントロー
ルし、金属クロム量、酸化膜量を詳細に検討した
結果、溶接性ならびに耐食性の良好なクロムめつ
き鋼板を見出したものである。 本発明は、鋼板表面に50〜150mg/m2の金属ク
ロム層と金属クロム換算で5〜20mg/m2のクロム
酸化被膜を有し、かつその金属クロム層の一部が
突起しており、突起基部の直径が10〜200nm、1
m2当り1.2×1014〜1.0×1017個の突起部を持つこ
とを特徴とする溶接缶用クロムめつき鋼板を提供
するものである。 以下に本発明を更に詳細に説明する。 本発明のクロムめつき鋼板は、鋼板表面に50〜
150mg/m2の金属クロム層と金属クロム換算で5
〜20mg/m2のクロム酸化被膜を有し、かつ金属ク
ロム層の一部が角状あるいは粒状に突起してお
り、突起基部の直径が10〜200nm、1m2あたり
1.2×1014〜1.0×1017個の突起部分を持つクロム
めつき鋼板であり、これは耐食性、溶接性ともに
優れた缶用鋼板である。 金属クロム量を50〜150mg/m2の範囲に限定し
たのは以下の理由による。金属クロム量が50mg/
m2より少ないと、金属クロム層がポーラスな構造
となつて鋼板表面を十分に被膜できず、塗装後耐
食性の低下を招く。さらに金属クロムの突起部が
1m2あたり1.2×1014〜1.0×1017個の密度まで成
長しない。また、金属クロム量が150mg/m2を超
えても塗装後耐食性の更なる向上は望めない。従
つて、本発明においては金属クロム量50〜150
mg/m2の範囲に限定した。 金属クロム層は平滑なものよりも金属クロム層
の一部が突起した形状を有するもののほうが接触
抵抗が小さい。 シーム溶接に最も大きく影響するのは接触抵抗
であり、接触抵抗が小さいほどシーム溶接性は良
い。シーム溶接は銅ワイヤー中間電極を介して電
流を流したとき抵抗加熱で溶接されるが、接触抵
抗が大きいと表面に熱が集中し、スプラツシユの
原因となる。金属クロム層の一部が突起した形状
で存在すると、これに荷重がかかつた時、硬い金
属クロム層の突起部分が高抵抗のクロム酸化被膜
を破壊し、電気が通り易くなるためと考えられ
る。 本発明では特願昭60−52935号(特開昭61−
213399号)の知見に基づいて更に検討を加え、溶
接性、耐食性の向上を図り、それに適した突起部
の形状、径、密度について鋭意研究し、以下のよ
うな結果を得た。 突起部の形状は製造方法により、多少は異なる
が、主に角状あるいは粒状がよく、溶接性を向上
させるためには突起部の直径が10nm以上必要と
思われる。望ましくは20nm以上必要である。ま
た200nm超の径をもつものは突起部の密度が必要
量確保できず、次に述べる様に溶接性が悪くな
る。 突起部密度は1m2あたり1.2×1014〜1.0×1017
個で広い適正溶接電流範囲が得られる。溶接時の
接触抵抗は集中抵抗と被膜抵抗があり、突起状金
属クロムが存在する場合、クロム酸化膜による被
膜抵抗は突起部によつて破壊されるため、突起部
の密度が1m2あたり1.2×1014個未満であると集
中抵抗が高くなる。 また突起部が1.0×1017個を超えると突起部の
結合あるいは1個あたりの粒が小さくなり過ぎて
しまい、クロムの酸化被膜を破壊することができ
なくなつてしまうため、適正溶接電流範囲が小さ
くなつてしまう。 次にクロム酸化被膜の量を金属クロム換算で5
〜20mg/m2の範囲に限定する。クロム酸化被膜量
が5mg/m2未満であると、ポーラスな構造となつ
て表面を十分に被覆することができず、裸耐食性
の低下を招く。また、クロム酸化被膜が高抵抗物
質であるため20mg/m2を超えると、溶接性が急激
に低下し、さらに外観も悪くなる。 以上述べたように、鋼板表面に50〜150mg/m2
の金属クロム層と金属クロム換算で5〜20mg/m2
のクロム酸化膜を有し、かつ金属クロムの一部が
突起しているクロムめつき鋼板は耐食性、溶接性
ともに優れた缶用鋼板である。 本発明の溶接缶用クロムめつき鋼板を安定して
経済的に製造する方法について詳しく説明する
と、陽極処理前に金属クロム層とクロム酸化被膜
を鋼板上に均一に形成させ、耐食性の向上をはか
り、突起状金属クロムを成長させる下地とする。
次に陽極処理により、金属クロム表面に欠陥部を
多数形成させる。続けて金属クロムを析出させる
と、欠陥部を核にして金属クロムは突起状に析出
する。この機構をもつて耐食性を損うことなく溶
接性を向上せしめるものである。 上記のそれぞれの過程について説明すると、陽
極処理前に行うクロムめつきの目的は鋼板の露出
部を最小限に抑え、耐食性を向上させることと、
突起状金属クロムを析出させるための下地を形成
させることにある。そのため、このメツキ方法は
通常の電気クロムめつき法を採用すればよく、そ
の方法は特に限定させることはない。陽極処理前
のクロムめつきに於いては金属クロムのめつき量
を10〜140mg/m2の範囲とする。金属クロム量が
10mg/m2未満では金属クロム層がポーラスな構造
となり、鋼板表面を十分に被覆できず耐食性が劣
り、かつ、均一な突起状金属クロムの形成ができ
ない。金属クロム量が140mg/m2を超える時は陽
極処理後の陰極電解で10mg/m2以上析出させるた
め、製品の金属クロム層が50〜150mg/m2の範囲
を逸脱する。 クロムめつき量を10〜140mg/m2とするには、
好ましくは電流密度30〜100A/dm2、5〜77C/
dm2のクロムめつきとする。 上記のように鋼板上に単純にクロムめつきを施
した状態では金属クロム表面は平滑なのでクロム
めつきに続いて鋼板を陽極として単位付着量(陽
極処理前に電析したクロム付着量)当りの電気量
で0.033〜11C/mgの電解処理した後、続いて、後
述する条件での陰極電解によつて10〜140mg/m2
の金属クロムを突起状に析出させ、突起基部の直
径10〜200nm、1m2当り1.2×1014〜1.0×1017個の
突起部を形成させる。 粒状あるいは角状に突起した金属クロムが析出
する現象そのものは断続的にクロムめつきを行う
場合に観察されることがある。これは電解が一旦
中断した時に電解液によつて化学的に金属クロム
層の表面に欠陥を多数生成し、これが再電解した
時に金属クロムの突起状析出を引き起こすことに
よる。しかし、このような断続電解による方法で
は、突起状金属クロムを安定して得ることは困難
であり、十分な突起状金属クロムの析出密度が得
られない。下地金属クロムの結晶配向によつて突
起状金属クロムの分布が不均一になる。TFSは
微視的に見た均一性が耐食性に重要であることか
らこの方法は工業的に不適である。 そこで、本発明者らは安定かつ均一に突起状金
属クロムを多数析出させる方法について研究した
結果、陽極処理(逆電解)が優れていることを見
出した。これは1液法、2液法いずれの場合にも
適用可能である。陽極処理法を用いた場合、電気
化学的に強力に金属クロム層の表面に欠陥を生成
させると、十分な突起状金属クロムの析出密度が
得られ、下地金属クロムの結晶の配向の影響を受
けずに全面に粒状析出が起こり、微視的に見ても
均一性が向上する。陽極処理の電気量が単位付着
量当り0.033C/mg未満では十分な突起状金属クロ
ムの析出が起こらない。また11C/mgを超える
と、析出した金属クロムの溶解が起こり、突起状
析出が起こりにくくなる。 なお、陽極処理用対極として通常クロムめつき
用不溶性アノードとして使用している鉛系電極の
使用も可能であるが、金属クロムの析出の起こり
にくい白金、金、白金黒で表面を被覆した電極を
用いた方が陽極処理を安定して行うことができ
る。 陽極処理後の陰極処理においては金属クロムが
析出する条件で行うことが肝要である。すなわ
ち、金属クロムを析出させる方法としては、硫酸
イオン、フツ化物イオン、ケイフツ化物イオンな
どのクロムめつき助剤およCrO4 2-、Cr2O7 2-など
Cr(VI)のイオンを含む水溶液中での陰極電解で
よい。この時、電気量と電流密度は金属クロムを
析出させるため高い方がよく、それぞれ5C/d
m2以上、60A/dm2以上がよい。 突起部の径が、10〜200nm、1m2あたり1.2×
1014〜1.0×1017個の突起部を形成させるためには
陽極処理量の制御が必要なのは上記に述べた通り
であるが、さらに陰極処理時の電流密度が重要で
ある。 陽極処理量が十分でも電流密度が60A/dm2未
満であると、突起部の密度が十分でない場合があ
る。逆に陽極処理量が不十分であつたら、電流密
度が60A/dm2以上であつても突起部密度は満足
な大きさにならない。 電気量の方は好ましくは5〜77C/dm2がよ
い。突起状析出させる金属クロム量は5C/dm2
未満であると、金属クロムは10mg/m2未満しか析
出せず、突起部の成長が不十分である。 77C/dm2以上であると金属クロム量は140
mg/m2を超え、トータルの金属クロム量が150
mg/m2の範囲を逸脱する。突起部の径が、10〜
200nm、1m2あたり1.2×1014〜1.0×1017個の突起
部を形成させるには10〜140mg/m2の金属クロム
層を陽極処理後に5C/dm2以上の電気量、60A/
dm2以上の電流密度で析出させるのがよい。 クロム酸化被膜を5〜20mg/m2確保するには上
記の液中で付着させてもよいが、上記のめつき液
からさらにもう一つの液中で5〜20mg/m2に整え
てもよい。最終的に、金属クロム量50〜150mg/
m2、金属クロム換算で5〜20mg/m2の酸化被膜を
付着させればよい。 <実施例> 以下、本発明を実施例に基ずいて詳細に説明す
る。 なお実施例に用いためつき液の組成を表1に示
す。
るいは18缶、ペール缶などの雑缶関係などの分
野で使われる溶接缶用テインフリー鋼板に関する
ものである。 <従来技術とその問題点> 缶用材料として一般にブリキとテインフリー鋼
板が主として使われている。省資源、コスト削
減、外観等のためにブリキ缶は半田缶から溶接缶
へ急速に移行しつつあり、また錫目付も2.8g/
m2以上のものに代わり、1.0g/m2以下の薄目付
のものが開発されている。しかし、コスト的にみ
るならば、薄目付ブリキといえどもテインフリー
鋼板に優れるとはいえない。それがテインフリー
鋼板の使用が増加している理由の一つである。 このようにコスト的に有利なテインフリー鋼板
にも大きな問題がある。テインフリー鋼板は表面
に金属クロムと非金属クロムの薄い被膜を形成せ
しめた鋼板であり、主に接着缶として使われてい
る。これは半田付ができないこと、およびその表
面被膜の高抵抗、高融点のために溶接できないと
いうテインフリー鋼板の欠点を解決するためであ
る。 しかし、この接着缶は缶内容物を高温殺菌処理
するときに接着部が破れて缶が破胴するトラブル
を起こすことがある。テインフリー鋼板のクロム
水和酸化物被膜の改質によりかなり改善されたと
はいえ、接着缶は常にそのような危険を伴つてい
る。もし、溶接できるテインフリー鋼板が開発さ
れればこのようなトラブルがなくなるだけでな
く、接合部の重ね合せが5mm(接着缶)から0.2
〜0.4mmとなるために素材を節約でき、かつ巻締
部からの真空もれの危険も防止できるなどのメリ
ツトも生れる。したがつて、溶接できるテインフ
リー鋼板の開発に対する期待は大きい。 溶接できるテインフリー鋼板あるいは製造方法
を提供するものとして、例えば特公昭57−19752
号や特公昭57−36986号がすでに公知である。し
かし、これらはいずれも金属クロムあるいは非金
属クロムの量を少なくすることにより、溶接性の
向上をはかつているために、そのようなテインフ
リー鋼板は金属クロム層がポーラスな構造となつ
て、どうしても耐食性を著しく損なうことにな
る。 また、「TFSの溶接性に及ぼす突起状金属クロ
ムの影響」(「鉄と鋼」(1986)S442)あるいは
「テインフリースチールの溶接性におよぼす被膜
形態と被膜組成の影響」(「鉄と鋼」(1986)
S443)に発表されているところでは金属クロム
の粒状析出したTFSが溶接性に対して良好であ
ると述べている。しかし、この2つの発表は効果
的な粒状金属クロムの詳細な形態までは言及して
いなかつた。 さらに粒状析出した金属クロム層が断続電解に
よつて製造できることは「金属表面技術」第35巻
(1984)P354−358の「電析クロムの結晶方位と
成長状態」およびおなじく「金属表面技術」第35
巻(1984)P397−401の「電析金属クロムの粒状
析出機構」で述べられており、公知であるが、両
報告では金属クロム層の微視的に見た均一性が耐
食性に重要であり、粒状クロムの成長は下地金属
クロムの配向に影響され、微視的には不均一であ
るので、耐食性の観点からは好ましくないものと
位置づけており、これら粒状析出を均一にかつ特
定の直径範囲、個数範囲に制御することにより、
優れた溶接性、耐食性が得られることは何ら示さ
れていない。 従来の缶用クロムめつき鋼板の問題点は、下記
の通りである。 (1) クロムめつき鋼板は鋼板表面に絶縁体である
クロム酸化被膜があり、シーム溶接性が劣る。 (2) 金属クロム量あるいは非金属クロム量を減ら
すと溶接性は多少向上するが耐食性が劣る。 (3) 粒状金属クロムを有するクロムめつき鋼板は
溶接性は向上するが、断続電解で形成される粒
状金属クロムは不均一で耐食性に影響を与え
る。 (4) 粒状金属クロムの析出、および分布状態が溶
接性に及ぼす影響、効果がわかつていない。 <発明の目的> 本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解
消しようとするもので、溶接性、耐食性に優れた
溶接缶用クロムめつき鋼板を提供するものであ
る。 <発明の構成> 本発明は以上のような従来技術の問題点を陽極
処理法を用いて粒状析出の形態分布をコントロー
ルし、金属クロム量、酸化膜量を詳細に検討した
結果、溶接性ならびに耐食性の良好なクロムめつ
き鋼板を見出したものである。 本発明は、鋼板表面に50〜150mg/m2の金属ク
ロム層と金属クロム換算で5〜20mg/m2のクロム
酸化被膜を有し、かつその金属クロム層の一部が
突起しており、突起基部の直径が10〜200nm、1
m2当り1.2×1014〜1.0×1017個の突起部を持つこ
とを特徴とする溶接缶用クロムめつき鋼板を提供
するものである。 以下に本発明を更に詳細に説明する。 本発明のクロムめつき鋼板は、鋼板表面に50〜
150mg/m2の金属クロム層と金属クロム換算で5
〜20mg/m2のクロム酸化被膜を有し、かつ金属ク
ロム層の一部が角状あるいは粒状に突起してお
り、突起基部の直径が10〜200nm、1m2あたり
1.2×1014〜1.0×1017個の突起部分を持つクロム
めつき鋼板であり、これは耐食性、溶接性ともに
優れた缶用鋼板である。 金属クロム量を50〜150mg/m2の範囲に限定し
たのは以下の理由による。金属クロム量が50mg/
m2より少ないと、金属クロム層がポーラスな構造
となつて鋼板表面を十分に被膜できず、塗装後耐
食性の低下を招く。さらに金属クロムの突起部が
1m2あたり1.2×1014〜1.0×1017個の密度まで成
長しない。また、金属クロム量が150mg/m2を超
えても塗装後耐食性の更なる向上は望めない。従
つて、本発明においては金属クロム量50〜150
mg/m2の範囲に限定した。 金属クロム層は平滑なものよりも金属クロム層
の一部が突起した形状を有するもののほうが接触
抵抗が小さい。 シーム溶接に最も大きく影響するのは接触抵抗
であり、接触抵抗が小さいほどシーム溶接性は良
い。シーム溶接は銅ワイヤー中間電極を介して電
流を流したとき抵抗加熱で溶接されるが、接触抵
抗が大きいと表面に熱が集中し、スプラツシユの
原因となる。金属クロム層の一部が突起した形状
で存在すると、これに荷重がかかつた時、硬い金
属クロム層の突起部分が高抵抗のクロム酸化被膜
を破壊し、電気が通り易くなるためと考えられ
る。 本発明では特願昭60−52935号(特開昭61−
213399号)の知見に基づいて更に検討を加え、溶
接性、耐食性の向上を図り、それに適した突起部
の形状、径、密度について鋭意研究し、以下のよ
うな結果を得た。 突起部の形状は製造方法により、多少は異なる
が、主に角状あるいは粒状がよく、溶接性を向上
させるためには突起部の直径が10nm以上必要と
思われる。望ましくは20nm以上必要である。ま
た200nm超の径をもつものは突起部の密度が必要
量確保できず、次に述べる様に溶接性が悪くな
る。 突起部密度は1m2あたり1.2×1014〜1.0×1017
個で広い適正溶接電流範囲が得られる。溶接時の
接触抵抗は集中抵抗と被膜抵抗があり、突起状金
属クロムが存在する場合、クロム酸化膜による被
膜抵抗は突起部によつて破壊されるため、突起部
の密度が1m2あたり1.2×1014個未満であると集
中抵抗が高くなる。 また突起部が1.0×1017個を超えると突起部の
結合あるいは1個あたりの粒が小さくなり過ぎて
しまい、クロムの酸化被膜を破壊することができ
なくなつてしまうため、適正溶接電流範囲が小さ
くなつてしまう。 次にクロム酸化被膜の量を金属クロム換算で5
〜20mg/m2の範囲に限定する。クロム酸化被膜量
が5mg/m2未満であると、ポーラスな構造となつ
て表面を十分に被覆することができず、裸耐食性
の低下を招く。また、クロム酸化被膜が高抵抗物
質であるため20mg/m2を超えると、溶接性が急激
に低下し、さらに外観も悪くなる。 以上述べたように、鋼板表面に50〜150mg/m2
の金属クロム層と金属クロム換算で5〜20mg/m2
のクロム酸化膜を有し、かつ金属クロムの一部が
突起しているクロムめつき鋼板は耐食性、溶接性
ともに優れた缶用鋼板である。 本発明の溶接缶用クロムめつき鋼板を安定して
経済的に製造する方法について詳しく説明する
と、陽極処理前に金属クロム層とクロム酸化被膜
を鋼板上に均一に形成させ、耐食性の向上をはか
り、突起状金属クロムを成長させる下地とする。
次に陽極処理により、金属クロム表面に欠陥部を
多数形成させる。続けて金属クロムを析出させる
と、欠陥部を核にして金属クロムは突起状に析出
する。この機構をもつて耐食性を損うことなく溶
接性を向上せしめるものである。 上記のそれぞれの過程について説明すると、陽
極処理前に行うクロムめつきの目的は鋼板の露出
部を最小限に抑え、耐食性を向上させることと、
突起状金属クロムを析出させるための下地を形成
させることにある。そのため、このメツキ方法は
通常の電気クロムめつき法を採用すればよく、そ
の方法は特に限定させることはない。陽極処理前
のクロムめつきに於いては金属クロムのめつき量
を10〜140mg/m2の範囲とする。金属クロム量が
10mg/m2未満では金属クロム層がポーラスな構造
となり、鋼板表面を十分に被覆できず耐食性が劣
り、かつ、均一な突起状金属クロムの形成ができ
ない。金属クロム量が140mg/m2を超える時は陽
極処理後の陰極電解で10mg/m2以上析出させるた
め、製品の金属クロム層が50〜150mg/m2の範囲
を逸脱する。 クロムめつき量を10〜140mg/m2とするには、
好ましくは電流密度30〜100A/dm2、5〜77C/
dm2のクロムめつきとする。 上記のように鋼板上に単純にクロムめつきを施
した状態では金属クロム表面は平滑なのでクロム
めつきに続いて鋼板を陽極として単位付着量(陽
極処理前に電析したクロム付着量)当りの電気量
で0.033〜11C/mgの電解処理した後、続いて、後
述する条件での陰極電解によつて10〜140mg/m2
の金属クロムを突起状に析出させ、突起基部の直
径10〜200nm、1m2当り1.2×1014〜1.0×1017個の
突起部を形成させる。 粒状あるいは角状に突起した金属クロムが析出
する現象そのものは断続的にクロムめつきを行う
場合に観察されることがある。これは電解が一旦
中断した時に電解液によつて化学的に金属クロム
層の表面に欠陥を多数生成し、これが再電解した
時に金属クロムの突起状析出を引き起こすことに
よる。しかし、このような断続電解による方法で
は、突起状金属クロムを安定して得ることは困難
であり、十分な突起状金属クロムの析出密度が得
られない。下地金属クロムの結晶配向によつて突
起状金属クロムの分布が不均一になる。TFSは
微視的に見た均一性が耐食性に重要であることか
らこの方法は工業的に不適である。 そこで、本発明者らは安定かつ均一に突起状金
属クロムを多数析出させる方法について研究した
結果、陽極処理(逆電解)が優れていることを見
出した。これは1液法、2液法いずれの場合にも
適用可能である。陽極処理法を用いた場合、電気
化学的に強力に金属クロム層の表面に欠陥を生成
させると、十分な突起状金属クロムの析出密度が
得られ、下地金属クロムの結晶の配向の影響を受
けずに全面に粒状析出が起こり、微視的に見ても
均一性が向上する。陽極処理の電気量が単位付着
量当り0.033C/mg未満では十分な突起状金属クロ
ムの析出が起こらない。また11C/mgを超える
と、析出した金属クロムの溶解が起こり、突起状
析出が起こりにくくなる。 なお、陽極処理用対極として通常クロムめつき
用不溶性アノードとして使用している鉛系電極の
使用も可能であるが、金属クロムの析出の起こり
にくい白金、金、白金黒で表面を被覆した電極を
用いた方が陽極処理を安定して行うことができ
る。 陽極処理後の陰極処理においては金属クロムが
析出する条件で行うことが肝要である。すなわ
ち、金属クロムを析出させる方法としては、硫酸
イオン、フツ化物イオン、ケイフツ化物イオンな
どのクロムめつき助剤およCrO4 2-、Cr2O7 2-など
Cr(VI)のイオンを含む水溶液中での陰極電解で
よい。この時、電気量と電流密度は金属クロムを
析出させるため高い方がよく、それぞれ5C/d
m2以上、60A/dm2以上がよい。 突起部の径が、10〜200nm、1m2あたり1.2×
1014〜1.0×1017個の突起部を形成させるためには
陽極処理量の制御が必要なのは上記に述べた通り
であるが、さらに陰極処理時の電流密度が重要で
ある。 陽極処理量が十分でも電流密度が60A/dm2未
満であると、突起部の密度が十分でない場合があ
る。逆に陽極処理量が不十分であつたら、電流密
度が60A/dm2以上であつても突起部密度は満足
な大きさにならない。 電気量の方は好ましくは5〜77C/dm2がよ
い。突起状析出させる金属クロム量は5C/dm2
未満であると、金属クロムは10mg/m2未満しか析
出せず、突起部の成長が不十分である。 77C/dm2以上であると金属クロム量は140
mg/m2を超え、トータルの金属クロム量が150
mg/m2の範囲を逸脱する。突起部の径が、10〜
200nm、1m2あたり1.2×1014〜1.0×1017個の突起
部を形成させるには10〜140mg/m2の金属クロム
層を陽極処理後に5C/dm2以上の電気量、60A/
dm2以上の電流密度で析出させるのがよい。 クロム酸化被膜を5〜20mg/m2確保するには上
記の液中で付着させてもよいが、上記のめつき液
からさらにもう一つの液中で5〜20mg/m2に整え
てもよい。最終的に、金属クロム量50〜150mg/
m2、金属クロム換算で5〜20mg/m2の酸化被膜を
付着させればよい。 <実施例> 以下、本発明を実施例に基ずいて詳細に説明す
る。 なお実施例に用いためつき液の組成を表1に示
す。
【表】
【表】
(実施例 1)
0.22mm厚の冷延鋼板に通常の前処理を施した
後、本発明の処理を行なつた。A液(50℃)中で
70A/dm2、0.3秒(21C/dm2)の陰極電解を行
なつた。 この場合、陽極処理前のめつき量は20%のめつ
き効率とフアラデーの法則から計算すると、 21×0.2×52×105/96485×6=37.7(mg/m2) となる。 引き続き同浴中で5A/dm2、0.2秒(1.0C/d
m2)の陽極処理を施し、即ち、陽極処理量は、 1.0(C/dm2)/37.7(mg/m2)×100(dm2/m2)=
2.7(C/mg) であつた。水洗後B液中で60A/dm2、0.5秒の
陰極処理を行なつて供試材を得た。 供試材は金属クロム量96mg/m2、クロム酸化膜
15mgで、しかも突起基部の径10〜200nm、1m2あ
たり2.5×1016個の金属クロムの突起が認められ
た。 (実施例 2) 0.17mm厚の冷延鋼板に通常の脱脂酸洗を施した
後、本発明の処理を行なつた。C液(50℃)中で
50A/dm2、0.3秒(15C/dm2)の陰極電解に続
き、10A/dm2、0.25秒(2.5C/dm2)の陽極処
理を行なつた。同様な計算から陽極処理量は
9.3C/mgであつた。再び、同浴中で70A/dm2
0.7秒(49C/dm2)の陰極電解を施し、更に水洗
後D液(40℃)中で10A/dm2、2.1秒の陰極電
解を行なつて供試材を得た。 得られた供試材は、金属クロム量95mg/m2、ク
ロム酸化皮膜19mg/m2でかつ突起基部の径10〜
200nm、1m2あたり2×1014個の突起状金属クロ
ムが存在した。 (実施例 3) 0.22mm厚の冷延鋼板に通常の脱脂酸洗を施した
後、本発明の処理を行なつた。 E液(50℃)中で50A/dm2、1.4秒(70C/d
m2)の陰極電解に続き、1A/dm2、0.1秒
(0.1C/dm2)の陽極処理を行なつた。同様な計
算から陽極処理量は0.079C/mgであつた。再び、
同浴中で100A/dm2、0.1秒(10C/dm2)の陰
極電解を施して供試材を得た。 得られた供試材は、金属クロム量143mg/m2、
クロム酸化皮膜12mg/m2でかつ突起基部の径10〜
200nm、1m2あたり5×1015個の突起状金属クロ
ムが存在した。 (実施例 4) 0.32mm厚の冷延鋼板に通常の脱脂酸洗を施した
後、本発明の処理を行なつた。 A液(50℃)中で75A/dm2、0.2秒(15C/d
m2)の陰極電解に続き、5A/dm2、0.2秒
(1.0C/dm2)の陽極処理を行なつた。 同様な計算から陽極処理量は3.7C/mgであつ
た。再び、同浴中で75A/dm2、0.1秒(7.5C/
dm2)の陰極電解を施して供試材を得た。 得られた供試材は、金属クロム量51mg/m2、ク
ロム酸化皮膜7mg/m2でかつ突起基部の径10〜
200nm、1m2あたり4×1016個の突起状金属クロ
ムが存在した。 (比較例 1) 実施例1と同じA液、B液を用い、陽極処理だ
けを除いて同様の条件で処理をした。 得られた供試材は、金属クロム量91mg/m2、ク
ロム酸化皮膜17mg/m2、かつ突起基部の径は100
〜1000nm、1m2あたり5×1012個の突起状金属
クロムが存在し、分布は不均一であつた。 (比較例 2) 実施例2とほぼ同様の処理を施し、陽極処理だ
けは10A/dm2、0.7秒(7C/dm2)行なつた。
陽極処理量は26C/mgだつた。 得られた供試材は、金属クロム量71mg/m2、ク
ロム酸化皮膜15mg/m2、かつ突起基部の径は100
〜1000nm、1m2あたり5×1010個の突起状金属
クロムが存在した。 (比較例 3) 陽極処理までは実施例3と同様に施し、陽極処
理後の陰極処理の電解条件を30A/dm2、2秒
(60C/dm2)とした。 得られた供試材は、金属クロム量134mg/m2、
クロム酸化皮膜17mg/m2、かつ突起基部の径は
100〜1000nm、1m2あたり5×1013個の突起状金
属クロムが存在した。 (比較例 4) 実施例1と同様の条件で処理し、更に水洗後D
液(40℃)中で10A/dm2、5秒の陰極電解を行
なつて供試材を得た。 得られた供試材は、金属クロム量101mg/m2、
クロム酸化皮膜29mg/m2、かつ突起基部の径10〜
200nm、1m2あたり2.7×1016個の突起状金属クロ
ムが存在した。 (比較例 5) 0.20mm厚の冷延鋼板に通常の前処理を施した
後、A液(50℃)中で60A/dm2、1.2秒(72C/
dm2)の陰極電解に続き、10A/dm2、0.1秒
(1C/dm2)の陽極処理、更に同液中で50A/d
m2、0.6秒(30C/dm2)の陰極電解を行なつて供
試材を得た。 得られた供試材は、金属クロム量189mg/m2、
クロム酸化膜量が19mg/m2、突起基部の径は10〜
500nm、1m2あたり1.5×1015個の突起状金属クロ
ムが存在した。 (実施例 5) 0.20mm厚の冷延鋼板に通常の前処理を施した
後、本発明の処理を行なつた。 クロムめつき液A液(50℃)中で60A/dm2、
0.2秒の陰極電解を行ない、引き続き同浴中で
5A/dm2、0.1秒の陽極処理を施し、水洗後、B
液(40℃)中で60A/dm2、0.5秒の陰極処理を
行つて供試材を得た。 供試材は金属クロム量75mg/m2、クロム酸化被
膜15mg/m2で、しかも突起基部の径10〜200nm、
1m2当り2.5×1014個の金属クロムの突起が認め
られた。 (実施例 6) 0.17mm厚の冷延鋼板に通常の脱脂酸洗を施した
後、本発明の処理を行なつた。 クロムめつき液C液(50℃)中で50A/dm2、
0.3秒の陰極処理に続き、2A/dm2、0.3秒の陽極
処理、再び同液中で70A/dm2、0.7秒の陰極電
解を施し、さらに水洗後D液(40℃)中で10A/
dm2、0.3秒の陰極電解を行つて供試材を得た。 得られた供試材は、金属クロム量116mg/m2、
クロム酸化被膜19mg/m2でかつ突起基部の径10〜
200nm、1m2当り2×1016個の突起状金属クロム
が存在した。 (比較例 6) 実施例5と同じA液、B液を用い、陽極処理だ
けを除いて同様の条件で処理をした。 得られた供試材は、金属クロム量81mg/m2、ク
ロム酸化被膜17mg/m2で、かつ突起基部の径は
100〜1000nm、1m2当り5×1012個の突起状金属
クロムが存在し、分布は不均一であつた。 (比較例 7) 実施例6とほぼ同様の処理を施し、陽極処理だ
けは20A/dm2、0.7秒行なつた。 得られた供試材は金属クロムは76mg/m2、クロ
ム酸化被膜15mg/m2でかつ突起基部の径は10〜
500nm、1m2当り4×1011個の突起状金属クロム
が存在した。 (比較例 8) 0.22mm厚の冷延鋼板に通常の前処理を施した
後、クロムめつき液E液(50℃)中で50A/d
m2、0.6秒の陰極電解に続き、10A/dm2、0.3秒
の陽極処理、さらに同浴中で5A/dm2、9秒の
陰極処理を行なつた。 得られた供試材は金属クロム55mg/m2、クロム
酸化被膜30mg/m2で突起状金属クロムは存在しな
かつた。 (比較例 9) 0.20mm厚の冷延鋼板に通常の前処理を施した
後、クロムめつき液E液(50℃)中で60A/d
m2、1.2秒の陰極電解に続き、10A/dm2、0.1秒
の陽極処理、さらに同浴中で50A/dm2、0.6秒
の陰極電解を行なつて供試材を得た。供試材は金
属クロム量が189mg/m2、クロム酸化膜が19mg/
m2で、突起基部の径は10〜500nm、1m2当り1.5
×1015個の突起状金属クロムが存在した。 このようにして得られた供試材について後述の
方法により、塗装後耐食性および溶接性の評価を
行なつた。 その結果を表2に示す。 本発明の要件すべてを満足する実施例1〜6は
塗装後耐食性が優れ、溶接性も良好なクロムめつ
き鋼板であつた。 比較例1,6は、陽極処理を行わなかつたた
め、比較例2,7は陽極処理電気量が大きすぎる
ため、ともに突起部密度が小さくなり、溶接性が
悪い。比較例3,8は陽極処理後の陰極電解電流
密度が小さすぎたため突起状析出が十分に起こら
なかつた。比較例5,9は陽極処理前の陰極電解
時のCrの析出量が多すぎるため、粒状クロムが
あるにもかかわらず溶接性が劣つた。 比較例4はクロム酸化膜量が多過ぎるため、や
はり粒状クロムがあるにもかかわらず溶接性が劣
つた。 なお、塗装後耐食性、溶接性の評価方法は以下
の通りである。 (塗装後耐食性) 食缶用内面塗料を片面当りの乾燥重量として70
mg/m2となるようサンプルの試験面に塗装、焼付
後、トマトジユースの中に40℃、1ケ月浸漬し、
ブリスターの発生を観察した。ブリスターの発生
した面積を測定し、百分率で評価した。 (溶接性) 供試材を210℃、20分間加熱処理後、スードロ
ニツク溶接機で溶接し、適正溶接範囲は下の式に
て求めた。溶接が可能なものは上記の値が正のも
のである。 (適正溶接電流範囲)=(スプラツシユの発生す
る最低溶接電流)−(溶接強度を確保できる最低溶
接電流)
後、本発明の処理を行なつた。A液(50℃)中で
70A/dm2、0.3秒(21C/dm2)の陰極電解を行
なつた。 この場合、陽極処理前のめつき量は20%のめつ
き効率とフアラデーの法則から計算すると、 21×0.2×52×105/96485×6=37.7(mg/m2) となる。 引き続き同浴中で5A/dm2、0.2秒(1.0C/d
m2)の陽極処理を施し、即ち、陽極処理量は、 1.0(C/dm2)/37.7(mg/m2)×100(dm2/m2)=
2.7(C/mg) であつた。水洗後B液中で60A/dm2、0.5秒の
陰極処理を行なつて供試材を得た。 供試材は金属クロム量96mg/m2、クロム酸化膜
15mgで、しかも突起基部の径10〜200nm、1m2あ
たり2.5×1016個の金属クロムの突起が認められ
た。 (実施例 2) 0.17mm厚の冷延鋼板に通常の脱脂酸洗を施した
後、本発明の処理を行なつた。C液(50℃)中で
50A/dm2、0.3秒(15C/dm2)の陰極電解に続
き、10A/dm2、0.25秒(2.5C/dm2)の陽極処
理を行なつた。同様な計算から陽極処理量は
9.3C/mgであつた。再び、同浴中で70A/dm2
0.7秒(49C/dm2)の陰極電解を施し、更に水洗
後D液(40℃)中で10A/dm2、2.1秒の陰極電
解を行なつて供試材を得た。 得られた供試材は、金属クロム量95mg/m2、ク
ロム酸化皮膜19mg/m2でかつ突起基部の径10〜
200nm、1m2あたり2×1014個の突起状金属クロ
ムが存在した。 (実施例 3) 0.22mm厚の冷延鋼板に通常の脱脂酸洗を施した
後、本発明の処理を行なつた。 E液(50℃)中で50A/dm2、1.4秒(70C/d
m2)の陰極電解に続き、1A/dm2、0.1秒
(0.1C/dm2)の陽極処理を行なつた。同様な計
算から陽極処理量は0.079C/mgであつた。再び、
同浴中で100A/dm2、0.1秒(10C/dm2)の陰
極電解を施して供試材を得た。 得られた供試材は、金属クロム量143mg/m2、
クロム酸化皮膜12mg/m2でかつ突起基部の径10〜
200nm、1m2あたり5×1015個の突起状金属クロ
ムが存在した。 (実施例 4) 0.32mm厚の冷延鋼板に通常の脱脂酸洗を施した
後、本発明の処理を行なつた。 A液(50℃)中で75A/dm2、0.2秒(15C/d
m2)の陰極電解に続き、5A/dm2、0.2秒
(1.0C/dm2)の陽極処理を行なつた。 同様な計算から陽極処理量は3.7C/mgであつ
た。再び、同浴中で75A/dm2、0.1秒(7.5C/
dm2)の陰極電解を施して供試材を得た。 得られた供試材は、金属クロム量51mg/m2、ク
ロム酸化皮膜7mg/m2でかつ突起基部の径10〜
200nm、1m2あたり4×1016個の突起状金属クロ
ムが存在した。 (比較例 1) 実施例1と同じA液、B液を用い、陽極処理だ
けを除いて同様の条件で処理をした。 得られた供試材は、金属クロム量91mg/m2、ク
ロム酸化皮膜17mg/m2、かつ突起基部の径は100
〜1000nm、1m2あたり5×1012個の突起状金属
クロムが存在し、分布は不均一であつた。 (比較例 2) 実施例2とほぼ同様の処理を施し、陽極処理だ
けは10A/dm2、0.7秒(7C/dm2)行なつた。
陽極処理量は26C/mgだつた。 得られた供試材は、金属クロム量71mg/m2、ク
ロム酸化皮膜15mg/m2、かつ突起基部の径は100
〜1000nm、1m2あたり5×1010個の突起状金属
クロムが存在した。 (比較例 3) 陽極処理までは実施例3と同様に施し、陽極処
理後の陰極処理の電解条件を30A/dm2、2秒
(60C/dm2)とした。 得られた供試材は、金属クロム量134mg/m2、
クロム酸化皮膜17mg/m2、かつ突起基部の径は
100〜1000nm、1m2あたり5×1013個の突起状金
属クロムが存在した。 (比較例 4) 実施例1と同様の条件で処理し、更に水洗後D
液(40℃)中で10A/dm2、5秒の陰極電解を行
なつて供試材を得た。 得られた供試材は、金属クロム量101mg/m2、
クロム酸化皮膜29mg/m2、かつ突起基部の径10〜
200nm、1m2あたり2.7×1016個の突起状金属クロ
ムが存在した。 (比較例 5) 0.20mm厚の冷延鋼板に通常の前処理を施した
後、A液(50℃)中で60A/dm2、1.2秒(72C/
dm2)の陰極電解に続き、10A/dm2、0.1秒
(1C/dm2)の陽極処理、更に同液中で50A/d
m2、0.6秒(30C/dm2)の陰極電解を行なつて供
試材を得た。 得られた供試材は、金属クロム量189mg/m2、
クロム酸化膜量が19mg/m2、突起基部の径は10〜
500nm、1m2あたり1.5×1015個の突起状金属クロ
ムが存在した。 (実施例 5) 0.20mm厚の冷延鋼板に通常の前処理を施した
後、本発明の処理を行なつた。 クロムめつき液A液(50℃)中で60A/dm2、
0.2秒の陰極電解を行ない、引き続き同浴中で
5A/dm2、0.1秒の陽極処理を施し、水洗後、B
液(40℃)中で60A/dm2、0.5秒の陰極処理を
行つて供試材を得た。 供試材は金属クロム量75mg/m2、クロム酸化被
膜15mg/m2で、しかも突起基部の径10〜200nm、
1m2当り2.5×1014個の金属クロムの突起が認め
られた。 (実施例 6) 0.17mm厚の冷延鋼板に通常の脱脂酸洗を施した
後、本発明の処理を行なつた。 クロムめつき液C液(50℃)中で50A/dm2、
0.3秒の陰極処理に続き、2A/dm2、0.3秒の陽極
処理、再び同液中で70A/dm2、0.7秒の陰極電
解を施し、さらに水洗後D液(40℃)中で10A/
dm2、0.3秒の陰極電解を行つて供試材を得た。 得られた供試材は、金属クロム量116mg/m2、
クロム酸化被膜19mg/m2でかつ突起基部の径10〜
200nm、1m2当り2×1016個の突起状金属クロム
が存在した。 (比較例 6) 実施例5と同じA液、B液を用い、陽極処理だ
けを除いて同様の条件で処理をした。 得られた供試材は、金属クロム量81mg/m2、ク
ロム酸化被膜17mg/m2で、かつ突起基部の径は
100〜1000nm、1m2当り5×1012個の突起状金属
クロムが存在し、分布は不均一であつた。 (比較例 7) 実施例6とほぼ同様の処理を施し、陽極処理だ
けは20A/dm2、0.7秒行なつた。 得られた供試材は金属クロムは76mg/m2、クロ
ム酸化被膜15mg/m2でかつ突起基部の径は10〜
500nm、1m2当り4×1011個の突起状金属クロム
が存在した。 (比較例 8) 0.22mm厚の冷延鋼板に通常の前処理を施した
後、クロムめつき液E液(50℃)中で50A/d
m2、0.6秒の陰極電解に続き、10A/dm2、0.3秒
の陽極処理、さらに同浴中で5A/dm2、9秒の
陰極処理を行なつた。 得られた供試材は金属クロム55mg/m2、クロム
酸化被膜30mg/m2で突起状金属クロムは存在しな
かつた。 (比較例 9) 0.20mm厚の冷延鋼板に通常の前処理を施した
後、クロムめつき液E液(50℃)中で60A/d
m2、1.2秒の陰極電解に続き、10A/dm2、0.1秒
の陽極処理、さらに同浴中で50A/dm2、0.6秒
の陰極電解を行なつて供試材を得た。供試材は金
属クロム量が189mg/m2、クロム酸化膜が19mg/
m2で、突起基部の径は10〜500nm、1m2当り1.5
×1015個の突起状金属クロムが存在した。 このようにして得られた供試材について後述の
方法により、塗装後耐食性および溶接性の評価を
行なつた。 その結果を表2に示す。 本発明の要件すべてを満足する実施例1〜6は
塗装後耐食性が優れ、溶接性も良好なクロムめつ
き鋼板であつた。 比較例1,6は、陽極処理を行わなかつたた
め、比較例2,7は陽極処理電気量が大きすぎる
ため、ともに突起部密度が小さくなり、溶接性が
悪い。比較例3,8は陽極処理後の陰極電解電流
密度が小さすぎたため突起状析出が十分に起こら
なかつた。比較例5,9は陽極処理前の陰極電解
時のCrの析出量が多すぎるため、粒状クロムが
あるにもかかわらず溶接性が劣つた。 比較例4はクロム酸化膜量が多過ぎるため、や
はり粒状クロムがあるにもかかわらず溶接性が劣
つた。 なお、塗装後耐食性、溶接性の評価方法は以下
の通りである。 (塗装後耐食性) 食缶用内面塗料を片面当りの乾燥重量として70
mg/m2となるようサンプルの試験面に塗装、焼付
後、トマトジユースの中に40℃、1ケ月浸漬し、
ブリスターの発生を観察した。ブリスターの発生
した面積を測定し、百分率で評価した。 (溶接性) 供試材を210℃、20分間加熱処理後、スードロ
ニツク溶接機で溶接し、適正溶接範囲は下の式に
て求めた。溶接が可能なものは上記の値が正のも
のである。 (適正溶接電流範囲)=(スプラツシユの発生す
る最低溶接電流)−(溶接強度を確保できる最低溶
接電流)
【表】
<発明の効果>
本発明の溶接缶用テインフリー鋼板は金属クロ
ム層が適切な大きさおよび密度の突起部を有する
ため溶接性がよく、さらに突起状金属クロムの分
布が均一なため耐食性も向上させることができ
る。
ム層が適切な大きさおよび密度の突起部を有する
ため溶接性がよく、さらに突起状金属クロムの分
布が均一なため耐食性も向上させることができ
る。
Claims (1)
- 1 鋼板表面に50〜150mg/m2の金属クロム層と
金属クロム換算で5〜20mg/m2のクロム酸化被膜
を有し、かつ、その金属クロム層の一部が突起し
ており、突起基部の直径が10〜200nm、1m2当り
1.2×1014〜1.0×1017個の突起部を持つことを特
徴とする溶接缶用クロムめつき鋼板。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP61-215300 | 1986-09-12 | ||
JP21530086 | 1986-09-12 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS63186894A JPS63186894A (ja) | 1988-08-02 |
JPH0431036B2 true JPH0431036B2 (ja) | 1992-05-25 |
Family
ID=16670037
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---|---|---|---|
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Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPS63186894A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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KR102507717B1 (ko) | 2018-08-29 | 2023-03-07 | 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 | 캔용 강판 및 그의 제조 방법 |
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-
1987
- 1987-09-11 JP JP22795987A patent/JPS63186894A/ja active Granted
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