JP7409337B2 - 缶用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、缶用鋼板およびその製造方法に関する。
特許文献1には、「鋼板の表面に、前記鋼板側から順に、金属クロム層およびクロム水和酸化物層」を有し、更に、金属クロム層が「粒状突起」を有する缶用鋼板が開示されている。
国際公開第2017/098991号
粒状突起を有する缶用鋼板は、良好な溶接性を示すことが期待される。これは、缶用鋼板どうしを溶接する際に、粒状突起によってクロム水和酸化物層が破壊されて、接触抵抗が低下するためである。
しかし、缶用鋼板に粒状突起を形成すると、良好な表面外観が得られない場合がある。これは、粒状突起が可視光を乱反射したりするためと推測される。
そこで、本発明は、溶接性だけでなく表面外観にも優れる缶用鋼板、および、その製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、粒状突起の最大粒径および個数密度を特定の範囲にすることにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]を提供する。
[1]鋼板の表面に、上記鋼板側から順に、金属クロム層およびクロム水和酸化物層を有し、上記金属クロム層の付着量が、50~200mg/mであり、上記クロム水和酸化物層のクロム換算の付着量が、3~30mg/mであり、上記金属クロム層は、平板状の基部と、上記基部上に設けられた粒状突起と、を含み、上記粒状突起の最大粒径が、10nm以下であり、上記粒状突起の個数密度が、200個/μm以上である、缶用鋼板。
[2]上記粒状突起の最大粒径が、10nm未満である、上記[1]に記載の缶用鋼板。
[3]上記[1]または[2]に記載の缶用鋼板を製造する方法であって、鋼板に対して、水溶液を用いて、陰極電解処理C1を施し、上記水溶液は、六価クロム化合物、フッ素含有化合物、硫酸および水溶性ポリマーを含有する、缶用鋼板の製造方法。
[4]上記水溶性ポリマーの重量平均分子量が、300~100,000である、上記[3]に記載の缶用鋼板の製造方法。
[5]上記水溶液における上記水溶性ポリマーの含有量が、0.1~100g/Lである、上記[3]または[4]に記載の缶用鋼板の製造方法。
[6]上記陰極電解処理C1の電流密度が、10~200A/dmである、上記[3]~[5]のいずれかに記載の缶用鋼板の製造方法。
本発明によれば、溶接性だけでなく表面外観にも優れる缶用鋼板、および、その製造方法を提供できる。
缶用鋼板の一例を模式的に示す断面図である。
[缶用鋼板]
図1は、缶用鋼板の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、鋼板2を有する。缶用鋼板1は、更に、鋼板2の表面に、鋼板2側から順に、金属クロム層3およびクロム水和酸化物層4を有する。
金属クロム層3は、鋼板2を覆う平板状の基部3aと、基部3a上に設けられた粒状突起3bとを含む。クロム水和酸化物層4は、粒状突起3bの形状に追従するように、金属クロム層3上に配置される。
以下、缶用鋼板の各構成について、より詳細に説明する。
〈鋼板〉
鋼板の種類は特に限定されない。通常、容器材料として使用される鋼板(例えば、低炭素鋼板、極低炭素鋼板)を使用できる。鋼板の製造方法、材質なども特に限定されない。通常の鋼片製造工程から熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍、調質圧延等の工程を経て製造される。
〈金属クロム層〉
上述した鋼板の表面には、金属クロム層が配置される。金属クロム層は、鋼板の表面露出を抑えて耐食性を向上させる。
《付着量》
缶用鋼板の耐食性が優れるという理由から、金属クロム層の付着量は、50mg/m以上であり、70mg/m以上が好ましく、80mg/m以上がより好ましい。付着量は、鋼板の片面当たりの付着量である(以下、同様)。
一方、金属クロム層の付着量が多すぎる場合、高融点の金属クロムが鋼板の全面を覆い、その結果、溶接時に溶接強度が低下したりチリの発生が著しくなったりして、溶接性が不十分となり得る。
缶用鋼板の溶接性が優れるという理由から、金属クロム層の付着量は、200mg/m以下であり、180mg/m以下が好ましく、160mg/m以下がより好ましい。
(付着量の測定方法)
金属クロム層の付着量、および、後述するクロム水和酸化物層のクロム換算の付着量は、次のようにして測定する。
まず、金属クロム層およびクロム水和酸化物層を形成させた缶用鋼板について、蛍光X線装置を用いて、クロム量(全クロム量)を測定する。次いで、缶用鋼板を90℃の6.5N-NaOH中に10分間浸漬させるアルカリ処理を行なってから、再び、蛍光X線装置を用いて、クロム量(アルカリ処理後クロム量)を測定する。アルカリ処理後クロム量を、金属クロム層の付着量とする。
次に、(アルカリ可溶性クロム量)=(全クロム量)-(アルカリ処理後クロム量)を計算し、アルカリ可溶性クロム量を、クロム水和酸化物層のクロム換算の付着量とする。
このような金属クロム層は、平板状の基部と、基部上に設けられた粒状突起と、を含む。次に、金属クロム層が含むこれらの各部について、詳細に説明する。
《基部》
金属クロム層の基部は、主に、鋼板の表面を被覆し、耐食性を向上させる。
金属クロム層の基部は、ハンドリング時に不可避的に缶用鋼板どうしが接触した際に、表層に設けられた粒状突起が基部を破壊して鋼板が露出しないように、十分な厚みを確保していることが好ましい。
缶用鋼板の耐食性が優れるという理由から、金属クロム層の基部の付着量は、10mg/m以上が好ましく、30mg/m以上がより好ましく、40mg/m以上が更に好ましい。
《粒状突起》
金属クロム層の粒状突起は、上述した基部の表面に形成されており、缶用鋼板どうしの接触抵抗を低下させて溶接性を向上させる。
接触抵抗が低下する推定のメカニズムを、以下に記述する。
金属クロム層の上に被覆されるクロム水和酸化物層は、不導体皮膜であるため、金属クロムよりも電気抵抗が大きく、溶接の阻害因子になる。金属クロム層の基部の表面に粒状突起を形成させると、溶接する際の缶用鋼板どうしの接触時の面圧により、粒状突起がクロム水和酸化物層を破壊して、溶接電流の通電点になり、接触抵抗が大幅に低下する。
(最大粒径)
ところで、粒状突起の最大粒径が大きすぎると、表面外観が劣る場合がある。
これは、粒状突起が、短波長側(青系)の光を吸収し、その反射光が減衰することで、赤茶系の色を呈する;粒状突起が、反射光を散乱することで、全体的な反射率が低減するため色調が暗くなる;等の理由が考えられる。
そこで、粒状突起の最大粒径を小さくする。これにより、短波長側の光の吸収が抑制されたり、反射光の散乱が抑制されたりして、缶用鋼板の表面外観が優れる。
具体的には、粒状突起の最大粒径は、10nm以下であり、缶用鋼板の表面外観がより優れるという理由から、10nm未満が好ましく、9nm以下がより好ましく、8nm以下が更に好ましい。
粒状突起の最大粒径の下限は、特に限定されない。
もっとも、上述したように、粒状突起は、クロム水和酸化物層を破壊することにより、接触抵抗を低下させて溶接性を向上させる。この機能を発揮させる観点からは、粒状突起の最大粒径は、3nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましい。
(個数密度)
粒状突起が多い場合は、通電点が増加することにより、溶接性が優れる。
このため、金属クロム層の粒状突起の個数密度は、200個/μm以上であり、500個/μm以上が好ましく、1,000個/μm以上がより好ましい。
一方、良好な表面外観を維持する観点からは、粒状突起は多すぎない方が好ましい。
具体的には、缶用鋼板の表面外観がより優れるという理由から、粒状突起の個数密度は、5,000個/μm以下が好ましく、2,000個/μm以下がより好ましい。
(個数密度および最大粒径の測定方法)
粒状突起の個数密度および最大粒径は、次のようにして求める。
まず、金属クロム層およびクロム水和酸化物層を形成させた缶用鋼板の表面に、カーボン蒸着を施して、観察用サンプルとする。次いで、観察用サンプルを、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、20,000倍の倍率でSEM像を得る。
得られたSEM像について、ソフトウェア(商品名:ImageJ)を用いて、二値化して画像解析することにより、粒状突起の個数密度(単位:個/μm)を求める。個数密度は、5視野の平均とする。更に、粒状突起の占める面積から逆算して、真円換算して、粒状突起の粒径(単位:nm)を求める。5視野の最大の粒径を、粒状突起の最大粒径とする。
〈クロム水和酸化物層〉
クロム水和酸化物は、鋼板の表面に金属クロムと同時に析出し、耐食性を向上させる。クロム水和酸化物は、例えば、クロム酸化物およびクロム水酸化物を含む。
《付着量》
缶用鋼板の耐食性を確保する理由から、クロム水和酸化物層のクロム換算の付着量は、3mg/m以上であり、4mg/m以上が好ましい。
一方、クロム水和酸化物は、金属クロムと比較して導電率が低く、量が多すぎると溶接時に過大な抵抗となり、チリやスプラッシュの発生および過融接に伴うブローホールなどの各種溶接欠陥を引き起こし、缶用鋼板の溶接性が劣る場合がある。
缶用鋼板の溶接性が優れるという理由から、クロム水和酸化物層のクロム換算の付着量は、30mg/m以下であり、15mg/m以下が好ましく、10mg/m以下がより好ましい。
クロム水和酸化物層のクロム換算の付着量の測定方法は、上述したとおりである。
[缶用鋼板の製造方法]
次に、上述した缶用鋼板を製造する方法を説明する。
概略的には、鋼板に対して、六価クロム化合物、フッ素含有化合物、硫酸および水溶性ポリマーを含有する水溶液を用いて、陰極電解処理C1を施す。これにより、鋼板の表面に、金属クロム層およびクロム水和酸化物層が生成し、更に、金属クロム層に粒状突起が形成される。
この理由は、明らかではないが、以下のように推測される。
陰極電解処理C1の際に、水溶性ポリマーが鋼板にランダムに吸着し、金属クロムの析出(電析)を阻害する。そして、水溶性ポリマーが吸着していない部分において、優先的に金属クロムが析出することにより、金属クロム層に粒状突起が形成される。
こうして、陰極電解処理の途中に陽極電解処理を実施する方法(特許文献1を参照)を採用することなく、陰極電解処理C1を実施するだけの簡便な方法によって、粒状突起を有する缶用鋼板を製造できる。
〈水溶液〉
陰極電解処理C1に用いる水溶液は、六価クロム化合物、フッ素含有化合物、硫酸および水溶性ポリマーを含有する。
水溶液中において、フッ素含有化合物および硫酸は、解離した状態(すなわち、フッ化物イオン、硫酸イオンおよび硫酸水素イオンの状態)で存在する。これらは、陰極電解処理C1において進行する、水溶液中に存在する六価クロムイオンの還元反応に関与する触媒として働く。
陰極電解処理C1に用いる水溶液が、フッ素含有化合物および硫酸を含有することにより、得られる缶用鋼板のクロム水和酸化物層のクロム換算の付着量を低減できる。この理由は明らかではないが、電解処理中のアニオン量が多くなることにより、クロム水和酸化物の生成量が減少するためと考えられる。
《六価クロム化合物》
六価クロム化合物としては、例えば、三酸化クロム(CrO);二クロム酸カリウム(KCr)などの二クロム酸塩;クロム酸カリウム(KCrO)などのクロム酸塩;等が挙げられる。
水溶液における六価クロム化合物の含有量は、Cr量として、0.14mol/L以上が好ましく、0.30mol/L以上がより好ましい。
一方、水溶液における六価クロム化合物の含有量は、Cr量として、3.00mol/L以下が好ましく、2.50mol/L以下がより好ましい。
《フッ素含有化合物》
フッ素含有化合物としては、例えば、フッ化水素酸(HF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化ナトリウム(NaF)、ケイフッ化水素酸(HSiF)および/またはその塩などが挙げられる。
ケイフッ化水素酸の塩としては、例えば、ケイフッ化ナトリウム(NaSiF)、ケイフッ化カリウム(KSiF)、ケイフッ化アンモニウム((NHSiF)などが挙げられる。
水溶液におけるフッ素含有化合物の含有量は、F量として、0.02mol/L以上が好ましく、0.08mol/L以上がより好ましい。
一方、水溶液におけるフッ素含有化合物の含有量は、F量として、0.48mol/L以下が好ましく、0.40mol/L以下がより好ましい。
《硫酸》
硫酸(HSO)は、その一部または全部が、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウムなどの硫酸塩であってもよい。
水溶液における硫酸の含有量は、SO 2-量として、0.0001mol/L以上が好ましく、0.0003mol/L以上がより好ましく、0.0010mol/L以上が更に好ましい。
一方、水溶液における硫酸の含有量は、SO 2-量として、0.1000mol/L以下が好ましく、0.0500mol/L以下がより好ましい。
《水溶性ポリマー》
水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
これらのうち、水溶液中での安定性に優れ、かつ、カルボキシ基を有することで鋼板に対する吸着力が高いという理由から、ポリ(メタ)アクリル酸が好ましく、ポリアクリル酸がより好ましい。
(重量平均分子量)
水溶性ポリマーの重量平均分子量(Mw)が小さすぎると、ポリマー1分子あたりが有する吸着起点の数が少なくなる。このため、鋼板に対する吸着が十分に行なわれず、粒状突起が形成されにくい場合がある。
このため、水溶性ポリマーのMwは、300以上が好ましく、500以上がより好ましく、1,000以上が更に好ましい。
一方、水溶性ポリマーのMwが大きすぎると、水溶性ポリマー自身が絡まり合い、鋼板に吸着できる起点が減少する場合がある。この場合も、水溶性ポリマーが鋼板に十分に吸着しないため、粒状突起が形成されにくい。
このため、水溶性ポリマーのMwは、100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、20,000以下が更に好ましい。
なお、粒状突起の最大粒径を小さくする観点からは、水溶性ポリマーのMwは、2,000未満が好ましく、1,800以下がより好ましく、1,500以下が更に好ましい。
同様の理由から、水溶性ポリマーのMwは、10,000超が好ましく、12,000以上がより好ましく、15,000以上が更に好ましい。
重量平均分子量(Mw)は、下記条件で実施するゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
・装置:HLC8020(東ソー社製)
・カラム:TSKgelGMHXLを3本直列に連結
・媒体:テトラヒドロフラン
・流速:1mL/min
・濃度:4mg/10mL
・注入量:0.1mL
・カラム温度:40℃
(含有量)
水溶性ポリマーが少なすぎると、鋼板に対する吸着量が足りなくなり、粒状突起が形成されにくい場合がある。
このため、水溶液における水溶性ポリマーの含有量は、0.1g/L以上が好ましく、1g/L以上がより好ましく、10g/L以上が更に好ましい。
一方、水溶性ポリマーが多すぎると、水溶性ポリマーが鋼板の全面に過剰に吸着するため、粒状突起が形成されにくい。
このため、水溶液における水溶性ポリマーの含有量は、100g/L以下が好ましく、70g/L以下がより好ましく、50g/L以下が更に好ましい。
水溶液の液温は、20℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。
一方、水溶液の液温は、80℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
〈陰極電解処理C1〉
陰極電解処理C1は、金属クロムおよびクロム水和酸化物を析出させる。
陰極電解処理C1の電流密度が低すぎると、金属クロムの析出効率が低下し、クロム水和酸化物層の割合が高くなりやすい。
このため、陰極電解処理C1の電流密度は、10A/dm以上が好ましく、15A/dm以上がより好ましく、20A/dm以上が更に好ましい。
一方、陰極電解処理C1の電流密度が高すぎると、電解時の水素発生反応が激しくなり、水素発生によって、鋼板に吸着した水溶性ポリマーが脱離する場合がある。その場合、水溶性ポリマーによる電析阻害の効果が得られず、粒状突起が形成されにくい。
このため、陰極電解処理C1の電流密度は、200A/dm以下が好ましく、150A/dm以下がより好ましく、100A/dm以下が更に好ましい。
陰極電解処理C1の通電時間および電気量密度(電流密度と通電時間との積)は、目的の付着量を得るために、適宜設定される。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
〈缶用鋼板の作製〉
0.22mmの板厚で製造した鋼板(調質度:T4CA)に対して、通常の脱脂および酸洗を施した。
次いで、この鋼板に対して、下記表1に示す水溶液を用いて、下記表1に示す条件で陰極電解処理C1を実施した。水溶液は流動セルでポンプにより100mpm相当で循環させ、鉛電極を使用した。
水溶液には、三酸化クロム(CrO)、ケイフッ化ナトリウム(NaSiF)および硫酸(HSO)を含有させ、更に、任意で、下記表1に示す水溶性ポリマー(ポリアクリル酸またはポリビニルアルコール)を含有させた。下記表1中、水溶液について、含有しない成分の欄には「-」を記載した。
比較例2では、陰極電解処理C1の後に、続けて、下記表1に示す条件で、陽極電解処理A1および陰極電解処理C2を実施した。下記表1中、実施しなかった処理の欄には「-」を記載した。
こうして、缶用鋼板を作製した。作製後の缶用鋼板は、水洗し、ブロアを用いて室温で乾燥した。
〈付着量など〉
作製した缶用鋼板について、金属クロム層の付着量、および、クロム水和酸化物層のクロム換算の付着量(下記表1では単に「付着量」と表記)を測定した。
更に、作製した缶用鋼板の金属クロム層の粒状突起について、個数密度および最大粒径を測定した。
測定方法は、いずれも上述したとおりである。結果を下記表1に示す。
〈評価〉
作製した缶用鋼板について、以下の試験を行ない、溶接性および表面外観を評価した。結果を下記表1に示す。
《溶接性》
作製した缶用鋼板について、210℃×10分間の熱処理(到達板温210℃で10分間保持)を1回行なった後、接触抵抗を測定した。
より詳細には、まず、缶用鋼板から2枚のサンプルを採取し、バッチ炉中で熱処理を施し、熱処理後、重ね合わせた。
次いで、DR型1質量%Cr-Cu電極(先端径6mm、曲率R40mmとして加工した電極)を用いて、重ね合わせた2枚のサンプルを挟み込み、加圧力1kgf/cmとして、15秒保持した。
その後、電流値10Aで通電し、2枚のサンプル間の抵抗値(単位:μΩ)を測定した。10点測定し、平均値を接触抵抗値とし、下記基準に従い溶接性を評価した。「◎◎」、「◎」または「○」であれば、溶接性に優れると評価した。
◎◎:接触抵抗値100μΩ以下
◎:接触抵抗値100μΩ超、300μΩ以下
○:接触抵抗値300μΩ超、500μΩ以下
△:接触抵抗値500μΩ超、1000μΩ以下
×:接触抵抗値1000μΩ超
《表面外観》
作製した缶用鋼板について、旧JIS Z 8730(1980)において規定されるハンター式色差測定に基づいて、b値を測定し、下記基準に従い表面外観を評価した。「◎」または「○」であれば、表面外観に優れると評価した。
◎:b値≦0
○:0<b値≦2.0
△:2.0<b値≦3.0
×:3.0<b値
Figure 0007409337000001
Figure 0007409337000002
Figure 0007409337000003
〈評価結果まとめ〉
上記表1に示す結果から明らかなように、発明例1~30は、溶接性および表面外観が良好であった。これに対して、比較例1~9は、溶接性および表面外観の少なくともいずれかが不十分であった。
より詳細には、以下のとおりであった。
比較例1は、水溶性ポリマーを含有しない水溶液を用いて陰極電解処理C1を施した例である。比較例1では、粒状突起が形成されなかった(上記表1には「-」を記載した)。このため、溶接性が不十分であった。
比較例2は、水溶性ポリマーを含有しない水溶液を用いて、陰極電解処理C1を施した後に、更に、陽極電解処理A1および陰極電解処理C2を施した例である。
比較例2では、粒状突起が形成されたが、最大粒径が大きく、かつ、個数密度が低かった。個数密度は低いが、最大粒径は大きいため、溶接性は良好であった。しかし、最大粒径が大きいため、表面外観が不十分であった。
比較例3、発明例1~9および比較例4は、この順に、水溶性ポリマーの含有量を増やした例である。
水溶性ポリマーの含有量が少なすぎる比較例3および水溶性ポリマーの含有量が多すぎる比較例4では、粒状突起の個数密度が低く、溶接性が不十分であった。
発明例1~9では、粒状突起の個数密度が高くなるに従い、溶接性が良好になる傾向が見られた。
発明例1~9を対比すると、発明例7よりも、粒状突起の個数密度が低い発明例1~6、8および9の方が、表面外観が良好であった。
比較例5、発明例10~18および比較例6は、この順に、水溶性ポリマーのMwを大きくした例である。
水溶性ポリマーのMwが小さすぎる比較例5および水溶性ポリマーのMwが大きすぎる比較例6では、粒状突起の個数密度が低く、溶接性が不十分であった。
発明例10~18では、粒状突起の個数密度が高くなるに従い、溶接性が良好になる傾向が見られた。
発明例10~18を対比すると、発明例13~14よりも、粒状突起の最大粒径が小さい発明例10~12および15~18の方が、表面外観が良好であった。
発明例19~24は、水溶性ポリマーとして、ポリビニルアルコールを用いた例であり、ポリアクリル酸を用いた他の例と同様の傾向が見られた。
比較例7、発明例25~30および比較例8は、この順に、陰極電解処理C1の電流密度を高くした例である。
陰極電解処理C1の電流密度が低すぎる比較例7および陰極電解処理C1の電流密度が高すぎる比較例8では、粒状突起の個数密度が低く、溶接性が不十分であった。
発明例25~30では、粒状突起の個数密度が高くなるに従い、溶接性が良好になる傾向が見られた。
発明例25~30を対比すると、発明例28よりも、粒状突起の個数密度が低い発明例25~27および29~30の方が、表面外観が良好であった。
比較例9は、水溶性ポリマーのMwが大きく、かつ、陰極電解処理C1の電流密度が高い例である。
比較例9では、粒状突起の最大粒径が大きく、かつ、個数密度が低かった。このため、溶接性および表面外観がどちらも不十分であった。
1:缶用鋼板
2:鋼板
3:金属クロム層
3a:基部
3b:粒状突起
4:クロム水和酸化物層

Claims (2)

  1. 鋼板の表面に、前記鋼板側から順に、金属クロム層およびクロム水和酸化物層を有し、
    前記金属クロム層の付着量が、50~118mg/mであり、
    前記クロム水和酸化物層のクロム換算の付着量が、3~mg/mであり、
    前記金属クロム層は、平板状の基部と、前記基部上に設けられた粒状突起と、を含み、
    前記粒状突起の最大粒径が、nm以下であり、
    前記粒状突起の個数密度が、220~3,200個/μm ある、缶用鋼板。
  2. 請求項1に記載の缶用鋼板を製造する方法であって、
    鋼板に対して、水溶液を用いて、陰極電解処理C1を施し、
    前記水溶液は、六価クロム化合物、フッ素含有化合物、硫酸および水溶性ポリマーを含有し、
    前記水溶性ポリマーの重量平均分子量が、400~100,000であり、
    前記水溶液における前記水溶性ポリマーの含有量が、0.1~100g/Lであり、
    前記陰極電解処理C1の電流密度が、10~200A/dm である、缶用鋼板の製造方法。
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