JP7292951B2 - トナー - Google Patents
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Description
トナーの低温定着性を改善するための一般的な方法としては、使用する結着樹脂の軟化を目的として、結着樹脂のガラス転移温度(Tg)を低くする方法や結着樹脂の分子量を小さくする方法が挙げられる。しかしながら、単に結着樹脂のTgを低くさせるだけ、あるいは分子量を小さくするだけでは、定着時の離型性不足による定着部材へのオフセットの発生や、トナーの保存中における耐熱性の低下などが起こる。
そこで、結着樹脂のTgを低下させずにトナーの定着性を向上させる方法として、可塑剤の添加が行われている。定着時に十分にトナーを軟化させるためには、結着樹脂に対する相溶性が高く、可塑能力が大きい可塑剤を用いる必要がある。
また、分子量が小さい結着樹脂を用いたトナーにおいて、定着時の離型性を向上させる方法として、結着樹脂にシリコーンオイルを混合させる方法や、シロキサン化合物を含む結着樹脂を用いる方法がある。
特許文献2では、ビニルモノマーと、不飽和二重結合及びアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤とが共重合されたビニル系樹脂を結着樹脂として含有するトナーが提案されている。
しかしながら、当該トナーを用いて得られた定着画像は時間の経過により、ジエステル化合物が定着画像表面に露出し、定着画像のグロスが低下する課題があることが分かった。
特許文献2に記載されたトナーは、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤が架橋する際に生成されるシロキサン結合によるシリコーン樹脂特有の離型効果により優れた耐定着オフセット性及び感光体からの転写性が得られる。
しかしながら、特許文献2に記載されたトナーは低温定着性が十分でない。
また、特許文献2に記載されたトナーに、特許文献1に記載されたジエステル化合物をそのまま含有させても、得られた定着画像は時間の経過によりジエステル化合物が定着画像表面に露出し、グロスが低下することが分かった。
すなわち、本発明は、優れた低温定着性を有し、時間経過によるグロス低下が少ない定
着画像が得られるトナーを提供するものである。
結着樹脂、式(1)で表される樹脂、及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該ワックスは100℃において、該結着樹脂100.0質量部に対して、5.0質量部以上相溶するエステル化合物を含有することを特徴とするトナーである。
結着樹脂、式(1)で表される樹脂、及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該ワックスが、エステル化合物を含有し、
該エステル化合物は、炭素数2以上10以下のジオールと炭素数14以上22以下の脂肪族モノカルボン酸との縮合物であり、融点が、60℃以上100℃以下であることを特徴とするトナーである。
本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
また、モノマーユニットとは、ポリマー又は樹脂中のモノマー物質の反応した形態をいう。
結着樹脂、式(1)で表される樹脂、及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該ワックスは100℃において、該結着樹脂100.0質量部に対して、5.0質量部以上相溶するエステル化合物を含有することを特徴とするトナーである。
この理由については、以下のように推察している。
可塑剤が含有された従来のトナーは、定着時に可塑剤の融点以上にトナーが加熱されることで、溶融した可塑剤が結着樹脂と相溶しながら紙へと定着される。
定着された画像は、プリンター本体外に排紙される過程で、定着温度から室温付近へと温度が急激に低下していく。この間の時間が短いために、可塑剤は、核形成し結着樹脂と相分離しながら結晶成長していくよりも、結着樹脂に相溶した状態のまま存在しやすくなる。
これら相溶した状態のまま存在する可塑剤は、結晶化した状態で存在する可塑剤よりも、定着画像内における運動性が高いために、時間経過により定着画像中を移動し、定着画像表面に露出しやすい。このようにして表面に露出した可塑剤により定着画像のグロスが低下する。
樹脂A中の高分子部位は結着樹脂に対する親和性が高く、樹脂A中に存在するケイ素原
子は、エステル化合物中のエステル基部位に対する親和性が高いと考えられる。
このため、定着時にトナーが溶融し、トナー中の各分子の運動性が高くなる状態において、該ケイ素原子はエステル化合物のエステル基部位に配向しやすく、該高分子部位は結着樹脂に配向しやすくなる。
この際、結着樹脂に配向した高分子部位は、結着樹脂との相互作用が強いために、エステル化合物の運動性を制限することが可能となる。このために、時間経過によるエステル化合物の定着画像表面への露出を抑制することができるため、グロス低下が少ない定着画像が得られると考えられる。
また、樹脂Aを含有する該トナー粒子は、樹脂Aを含有しない従来のトナー粒子に比較して、負荷が加わった際に割れにくい。前述のように、樹脂A中の該ケイ素原子はエステル化合物のエステル基部位に配向しやすく、該高分子部位は結着樹脂に配向しやすい。そのため、トナー粒子中で樹脂Aは結着樹脂とエステル化合物との界面に存在しやすいと考えられる。トナーに負荷が加わり、トナーが変形する際、前記界面に存在する樹脂Aによって、結着樹脂とエステル化合物との界面接着性が向上するため、トナーが割れにくくなると考えられる。トナーが割れた場合、例えば、画像弊害としての現像スジが発生しやすくなる。
以上のように、トナー粒子が、結着樹脂及び樹脂A、並びに、該結着樹脂と特定の相溶性を示すエステル化合物を含有することで、上述した効果を有するトナーを得ることができる。
該式(1)で表される樹脂(樹脂A)中のケイ素原子の含有量が0.02質量%以上であれば、樹脂A中のケイ素原子がエステル化合物に対してより配向しやすい。
一方、該樹脂A中のケイ素原子の含有量が10.00質量%以下であれば、樹脂A中の高分子部位(例えば、ポリマー部位)が結着樹脂により配向しやすい。また、該ケイ素原子の含有量が5.00質量%以下であれば、該高分子部位が結着樹脂に対してさらに配向しやすくなる。樹脂A中のケイ素原子の含有量の測定方法は後述する。
該アルキル基の炭素数は、1~4であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。
該アルコキシ基の炭素数は、1~4であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。
該アリール基の炭素数は、6~12であることが好ましく、6~10であることがより好ましい。
これらの中でも、式(1)中のR1~R3のうち、少なくとも一つはアルコキシ基又はヒドロキシ基を表すことが好ましい。さらには、式(1)中のR1~R3は、それぞれ独立してアルコキシ基又はヒドロキシ基を表すことがより好ましい。
これらアルコキシ基又はヒドロキシ基は、エステル化合物中のエステル基部位に対する親和性がより高いために、該エステル基部位により配向しやすくなる。このために、定着画像におけるエステル化合物の運動性がさらに制限されると考えられる。
加水分解の方法は、どのような方法でも構わないが、例えば以下の手法がある。
式(1)中のR1~R3の一つ以上がアルコキシ基である樹脂を適当な溶媒(重合性単量体でも構わない)に溶解、又は懸濁し、酸やアルカリを用いてpHを酸性に調整、混合し、加水分解する。
また、トナー粒子製造中に加水分解を起こさせても構わない。
これらの中でも、該高分子部位が、スチレンアクリル酸共重合体部位、又はポリエステル部位を含有することが好ましい。
ここで、スチレンアクリル酸共重合体とは、スチレン系単量体と、アクリル酸系単量体及びメタクリル酸系単量体からなる群より選ばれる少なくとも一の単量体との共重合体を意味する。
スチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。スチレン系単量体は一種類で用いることもできるが、これらの中から選ばれる二種以上を組み合わせて用いることもできる。
アクリル酸系単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレートのようなアクリル酸アルキルエステル類;ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートなどのアクリル酸ジエステル類;アクリル酸などが挙げられる。
メタクリル酸系単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、iso-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルメタクリレートのようなメタクリル酸アルキルエステル類;メタクリル酸などが挙げられる。
アクリル酸系単量体、及びメタクリル酸系単量体は一種類で用いることもできるが、これらの中から選ばれる二種以上を組み合わせて用いることもできる。
スチレンアクリル酸共重合体を形成する全単量体中、スチレン系単量体の割合は、45質量%以上80質量%以下であることが好ましい。一方、アクリル酸系単量体及びメタクリル酸系単量体からなる群より選ばれる少なくとも一の単量体(例えば、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステル)の割合は、20質量%以上50
質量%以下であることが好ましい。
ポリエステル部位は、主鎖の繰り返し単位中にエステル結合(-CO-O-)を有する高分子部位をいう。例えば、多価アルコール(アルコール成分)と多価カルボン酸(カルボン酸成分)との縮重合体構造が挙げられる。具体例として、下記式(6)で表される構造(ジカルボン酸に由来する構造)と、下記式(7)~(9)からなる群より選ばれる少なくとも一の構造(ジオールに由来する構造)とがエステル結合を形成するように結合された高分子部位が挙げられる。また、下記式(10)で表される構造(1分子中にカルボキシ基と水酸基を有する化合物に由来する構造)がエステル結合を形成するように結合された高分子部位であってもよい。
メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、ネオペンチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、1,3-シクロペンチレン、1,3-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレン基。
該式(6)中のR9における(好ましくは炭素数6~12の)アリーレン基としては、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,2-フェニレン基、2,6-ナフチレン基、2,7-ナフチレン基、4,4’-ビフェニレン基が挙げられる。
メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、ネオペンチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、1,3-シクロペンチレン、1,3-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレン基。
該式(7)中のR10は置換基により置換されていてもよい。この場合、置換基としては、メチル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子及びそれらの組合せが挙げられる。
メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、ネオペンチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、1,4-シクロヘキシレン基。
該式(10)中のR11における(好ましくは炭素数1~40の)アルケニレン基としては、以下のものが挙げられる。
ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘキサジエニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基、デセニレン基、オクタデセニレン基、エイコセニレン基、トリアコンテニレン基。
これらのアルケニレン基は直鎖状、分岐状、及び環状のいずれの構造であってもよい。また、二重結合の位置はいずれの箇所でもよく、少なくとも一つ以上の二重結合を有していればよい。
2価のカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸など。これらのうち、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸が好ましい。
3価以上のカルボン酸としては、以下が例示できる。
1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、及び、これらの酸無水物又はこれらの低級アルキルエステルなど。
これらの2価のカルボン酸及び3価以上のカルボン酸は、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
すなわち、結着樹脂が、スチレンアクリル酸共重合体を含有する樹脂であり、該高分子部位が、スチレンアクリル酸共重合体を含有する場合、
又は、
結着樹脂が、ポリエステル部位を含有する樹脂であり、該高分子部位が、ポリエステル部位を含有する場合、
上述の親和性がさらに高くなるため、定着画像において、エステル化合物の移動をより阻害することができる。
なお、該アルキレン基又はフェニレン基は置換基により置換されていてもよい。この場合、置換基としては、メチル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子及びそれらの組合せが挙げられる。該アルキレン基の炭素数は1~12であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。
R5及びR6における、該アルキレン基の炭素数は、1~12であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。
該アリーレン基の炭素数は、6~12であることが好ましく、6~10であることがより好ましい。
R7及びR8における、該アルキレン基の炭素数は、1~12であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。
該アリーレン基の炭素数は、6~12であることが好ましく、6~10であることがより好ましい。
該オキシアルキレン基の炭素数は、1~12であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。
該連結基は、反応によって形成される場合に限らない。反応によって該連結基を形成させて、該式(1)で表される樹脂を生成させる場合、例えば、カルボキシ基を有する化合物と、アミノシラン化合物(例えば、アミノ基及びアルコキシシリル基を有する化合物、アミノ基及びアルキルシリル基を有する化合物など)とを反応させるとよい。
アミノシラン化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-6-(アミノヘキシル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメチルシラン、3-アミノプロピルシリコンなどが挙げられる。
該式(2)中のR5中のアルキレン基は、-NH-基を含有するアルキレン基であってもよい。
該連結基は、反応によって形成される場合に限らない。反応によって該連結基を形成させて、該式(1)で表される樹脂を生成させる場合は、例えば、ヒドロキシ基を有する化合物と、イソシアネートシラン化合物(例えば、イソシアネート基及びアルコキシシリル基を有する化合物、イソシアネート基及びアルキルシリル基を有する化合物など)との反応によって形成される。
イソシアネートシラン化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジメト
キシシラン、3-イソシアネートプロピルジメチルメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルジメチルエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメチルシランなどが挙げられる。
該連結基は、反応によって形成される場合に限らない。反応によって該連結基を形成させて、該式(1)で表される樹脂を生成させる場合は、例えば、エポキシ基を有するシラン化合物の挿入反応によって形成するとよい。
エポキシ基を有するシラン化合物の挿入反応とは以下のような反応である。
重合体中の主鎖に含まれるエステル結合に、エポキシ基を有するシラン化合物のエポキシ基を挿入反応させる工程を包含する。
ここでいう挿入反応は、例えば、有機合成化学、第49巻、第3号、第218頁、1991年に「ポリマー鎖中のエステル結合へのエポキシ化合物の挿入反応」として説明されている反応をいう。
この反応機構は、簡単なモデル式で表すと下記式(A)となる。
エポキシ基を有するシラン化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、β-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリメチルシランなどが挙げられる。
なお、該式(1)で表される樹脂は、1種類を単独で、又は2種類以上を組み合わせて含有されていてもよい。
重量平均分子量が3000以上であれば、式(1)における高分子部位(P1)と、結着樹脂の分子鎖との親和性が十分であり、定着画像中におけるエステル化合物の定着画像表面への露出をより抑制することができる。
一方、重量平均分子量が100000以下であれば、定着画像において、式(1)中の
ケイ素原子の、エステル化合物中のエステル基部位に対する配向性をより高めることができる。該重量平均分子量(Mw)の測定方法は後述する。
該トナー粒子の全樹脂中の該式(1)で表される樹脂の含有量は、0.4質量%以上、0.9質量%以上、6.0質量%以上であることが好ましい。また、該含有量は、20.0質量%以下、35.0質量%以下、50.0質量%以下、95.0質量%以下であるこ
とが好ましい。該数値範囲は任意に組み合わせることができる。
トナーの現像特性及び耐久性の観点から、結着樹脂は、スチレンアクリル酸共重合体を含有する樹脂、又は、ポリエステル部位を含有する樹脂であることが好ましい。
スチレンアクリル酸共重合体を含有する樹脂としては、スチレンアクリル酸共重合体を有していれば、スチレンアクリル酸共重合体のみからなる樹脂であってもよいし、スチレンアクリル酸共重合体と他の重合体とのブロック共重合体やグラフト共重合体、又はそれらの混合物であってもよい。
ここで、スチレンアクリル酸共重合体とは、スチレン系単量体と、アクリル酸系単量体及びメタクリル酸系単量体からなる群より選ばれる少なくとも一の単量体との共重合体を意味する。
アクリル酸系単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレートのようなアクリル酸アルキルエステル類;ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートなどのアクリル酸ジエステル類;アクリル酸などが挙げられる。
メタクリル酸系単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、iso-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルメタクリレートのようなメタクリル酸アルキルエステル類;メタクリル酸などが挙げられる。
アクリル酸系単量体、及びメタクリル酸系単量体は一種類で用いることもできるが、これらの中から選ばれる二種以上を組み合わせて用いることもできる。
スチレンアクリル酸共重合体を形成する全単量体中、スチレン系単量体の割合は、45質量%以上80質量%以下であることが好ましい。一方、アクリル酸系単量体及びメタク
リル酸系単量体からなる群より選ばれる少なくとも一の単量体(例えば、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステル)の割合は、20質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
また、該ポリエステル部位は、ウレア基を含有したポリエステルであってもよい。ポリエステルとしては末端などのカルボキシ基はキャップしないことが好ましい。
結着樹脂中のスチレンアクリル酸共重合体を含有する樹脂、又は、ポリエステル部位を含有する樹脂の含有量は、50.0質量%以上100.0質量%以下であることが好ましく、80.0質量%以上100.0質量%以下であることがより好ましい。含有量が前記範囲であると、以下に示すエステル化合物の結着樹脂に対する可塑効果が十分となり、良好な低温定着性を示す。これら結着樹脂は単独又は混合して使用できる。
架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられる。
例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどのような芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートのような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンなどのジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物;が挙げられる。
これらは、単独で、又は2種以上の混合物として用いられる。架橋剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.001質量部以上15.000質量部以下であることが好ましい。
100℃における、結着樹脂100質量部に対する相溶量については、以降、飽和相溶量とも称する。
飽和相溶量は、結着樹脂にエステル化合物がどれだけ相溶できるかを示す数値であり、結着樹脂とエステル化合物との相溶性を示していると考えている。
トナー粒子中に含有されるエステル化合物の量が同じであっても、飽和相溶量が大きいエステル化合物ほど、低温定着性への効果が大きくなる。
エステル化合物の飽和相溶量は、5.0質量部以上であり、9.0質量部以上であることが好ましく、14.0質量部以上であることがより好ましく、25.0質量部以上であることがさらに好ましい。一方、該飽和相溶量の上限値は、特に限定されないが、100.0質量部以下であることが好ましく、50.0質量部以下であることがより好ましく、
45.0質量部以下であることがさらに好ましい。該数値範囲は任意に組み合わせることができる。
飽和相溶量が前記条件を満たす場合、結着樹脂に対するエステル化合物の可塑効果が十
分に得られ、良好な低温定着性を示す。
エステル化合物のSP値をSPWとし、結着樹脂のSP値をSPCとし、エステル化合物の重量平均分子量をMwとした場合、該SPW、該SPC、及び該Mwが、下記式(I)の関係を満たす(但し、溶解度パラメータの単位は(cal/cm3)1/2である。)ことが好ましい。
〔(SPC-SPW)2×Mw〕≦960 (I)
〔(SPC-SPW)2×Mw〕は、370以上、390以上、420以上、440以上であることがより好ましく、950以下、800以下、720以下、536以下であることがより好ましい。該数値範囲は任意に組み合わせることができる。例えば、370≦〔(SPC-SPW)2×Mw〕≦960である。
なお、溶解度パラメーター(SP値)の単位は(cal/cm3)1/2である。
〔(SPC-SPW)2×Mw〕が、前記範囲を満たすエステル化合物を用いることにより、結着樹脂に対するエステル化合物の相溶性を十分とすることができる。飽和相溶量の測定方法、SP値の計算方法、及び重量平均分子量の測定方法については後述する。
エステル化合物は、上記条件を満たすものであれば、特に制限はなく公知のものが利用できる。例えば、アルコール成分とカルボン酸成分との縮合物であるエステル化合物が、結着樹脂に含まれるスチレンアクリル酸共重合体、又はポリエステル部位に対して相溶性に優れるため好ましい。
これらのうち、炭素数2以上10以下の脂肪族ジオールと炭素数14以上22以下の脂肪族モノカルボン酸との縮合物が好ましく、炭素数2以上6以下のジオールと炭素数14以上22以下の脂肪族モノカルボン酸との縮合物がより好ましい。
炭素数2以上6以下のジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどが挙げられる。
炭素数14以上22以下の脂肪族モノカルボン酸としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などが挙げられる。
さらに、エチレングリコールとステアリン酸とのエステル化合物であるエチレングリコールジステアレートが特に好ましい。
エステル化合物のジオール成分の炭素数、及びモノカルボン酸の炭素数については、トナー粒子を熱分解GC/MSで分析することによって求めることができる。必要に応じて、メチル化剤などによる誘導体化を事前に行うことで分析が容易になる。
エステル化合物の含有量が上記範囲であれば、結着樹脂に対する可塑効果がより良好となり、優れた低温定着性を示す。また、結着樹脂に対する可塑効果が過剰とならず、定着時の結着樹脂粘度が低下しすぎないため、紙に対する密着性が良好になり、定着巻きつきが発生しにくい。該エステル化合物の含有量については、重クロロホルムなどの溶媒を用いてトナー粒子を溶解し、13C-NMR分析をすることによって求めることができる。
トナー中の式(1)で表される樹脂の含有量をB質量%としたとき、
該Bの該Aに対する比(B/A)が、0.10以上10.00以下であることが好ましく、0.10以上2.00以下であることがより好ましい。B/Aが上記範囲であれば、エステル化合物が定着画像表面に露出するのをより抑制することができる。また、エステル化合物が結着樹脂をより可塑化することが可能となり、低温定着性がより向上する。B/Aの算出方法は後述する。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプッシュワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、又はそれらのブロック共重合物;パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類が挙げられる。該ワックスは、1種を又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、炭化水素系ワックスを含有することが好ましい。
エステル化合物以外のワックスの含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して0.5質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
黄色顔料としては、黄色酸化鉄、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどの縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180。
橙色顔料としては以下のものが挙げられる。
パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK。
赤色顔料としては、ベンガラ、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドC、レーキッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリラントカーミン3B、エオキシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキなどの縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254。
青色顔料としては、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBGなどの銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物などが挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66。
紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。
緑色顔料としては、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGが挙げられる。白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛が挙げられる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、非磁性フェライト、マグネタイト、上記黄色系着色剤、赤色系着色剤及び青色系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。これらの着色剤は、単独又は混合して、さらには固溶体の状態で用いることができる。
必要により、着色剤には表面処理を施してもよい。
なお、着色剤の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して1.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましい。
荷電制御剤として、トナー粒子を負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。
有機金属化合物及びキレート化合物として、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、又はエステル類、ビスフェノールのようなフェノール誘導体類なども含まれる。さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーンが挙げられる。
一方、トナー粒子を正荷電性に制御する荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。
ニグロシン及び脂肪酸金属塩のようなによるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム-1-ヒドロキシ-4-ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような4級アンモニウ
ム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩のようなオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;樹脂系荷電制御剤。
これら荷電制御剤は単独で又は2種類以上組み合わせて含有することができる。これらの荷電制御剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
外添剤としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などよりなる無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、あるいは、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、表面処理が行われていてもよい。外添剤のBET比表面積は、10m2/g以上450m2/g以下であることが好ましい。
BET比表面積は、BET法(好ましくはBET多点法)に従って、動的定圧法による低温ガス吸着法により求めることができる。例えば、比表面積測定装置(商品名:ジェミニ2375 Ver.5.0、(株)島津製作所製)を用いて、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて測定することにより、BET比表面積(m2/g)を算出することができる。
これらの種々の外添剤の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上5質量部以下である。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
キャリアとしては、例えば、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金など、公知の材料からなる磁性体を用いることができる。これらの中ではフェライトを用いることが好ましい。また、キャリアとしては、磁性体の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粒子を分散してなる樹脂分散型キャリアなどを用いてもよい。
キャリアとしては、体積平均粒径が15μm以上100μm以下のものが好ましく、25μm以上80μm以下のものがより好ましい。
例えば、混練粉砕法によりトナー粒子を製造する場合、結着樹脂、式(1)で表される樹脂及びワックスと、必要に応じて、着色剤、荷電制御剤、及びその他の添加剤をヘンシェルミキサ、ボールミルなどの混合機により十分混合する。その後、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練して各種材料を分散又は溶解し、冷却固化工程、粉砕工程、分級工程、必要に応じて表面処理工程を経てトナー粒子を得る。
粉砕工程では、機械衝撃式、ジェット式などの公知の粉砕装置を用いるとよい。また、分級工程及び表面処理工程の順序はどちらが先でもよい。分級工程においては生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
以下に、懸濁重合法を用いたトナー粒子の製造例について工程ごとに説明するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
(重合性単量体組成物の調製工程)
懸濁重合法においてはまず、結着樹脂を生成するための重合性単量体、式(1)で表される樹脂、ワックスと、必要に応じて、着色剤、荷電制御剤、架橋剤、重合開始剤、及びその他の添加剤をボールミル、超音波分散機のような分散機を用いてこれらを均一に溶解又は分散して重合性単量体組成物を得る。前記重合性単量体としては、前述のスチレンアクリル酸共重合体を形成する単量体として例示したものが挙げられる。
次に、重合性単量体組成物を予め用意しておいた水系媒体中に投入し、高剪断力を有する撹拌機や分散機により、重合性単量体組成物からなる液滴を所望のトナー粒子のサイズに造粒する。
造粒工程における水系媒体は分散安定剤を含有していることが、トナー粒子の粒径制御、粒度分布のシャープ化、製造過程におけるトナー粒子の合一を抑制するために好ましい。
分散安定剤としては、一般的に立体障害による反発力を発現させる高分子と、静電気的な反発力で分散安定化を図る難水溶性無機化合物とに大別される。
難水溶性無機化合物の微粒子は、酸やアルカリにより溶解するため、重合後に酸やアルカリで洗浄することにより溶解させて容易に除去することができるため、好適に用いられる。
難水溶性無機化合物の分散安定剤としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、リンのいずれかが含まれているものが好ましく用いられる。より好ましくは、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、リンのいずれかが含まれていることが望まれる。具体的には、以下のものが挙げられる。
リン酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ヒドロキシアパタイド。該難水溶性無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用してもよいが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させて用いることができる。例えば、リン酸三カルシウムの場合、高速撹拌下、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性のリン酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。
分散安定剤に有機系化合物、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンを併用しても構わない。これら分散安定剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.1質量部以上20.0質量部以下使用することが好ましい。
さらに、これら分散安定剤の微細化のため、重合性単量体100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下の界面活性剤を併用してもよい。具体的には市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤が利用できる。例えばドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムが好ましく用いられる。
造粒工程の後、又は造粒工程を行いながら、好ましくは50℃以上90℃以下の温度に設定して、重合性単量体組成物に含まれる重合性単量体の重合を行い、トナー粒子分散液を得る。
重合工程では容器内の温度分布が均一になる様に攪拌操作を行うことが好ましい。重合開始剤を添加する場合、任意のタイミングと所要時間で行うことができる。また、所望の分子量分布を得る目的で重合反応後半に昇温してもよく、さらに、未反応の重合性単量体、副生成物などを系外に除去するために反応後半、又は反応終了後に、一部水系媒体を蒸留操作により留去してもよい。蒸留操作は常圧又は減圧下で行うことができる。
懸濁重合法において使用する重合開始剤としては、重合反応時における半減期が0.5時間以上30時間以下であるものが好ましい。また、重合性単量体100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下の添加量で用いて重合反応を行うと、分子量5000から50000の間に極大を有する重合体を得ることができる。
2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリルのようなアゾ化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、デカノニルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシピバレート、クメンヒドロパーオキサイドのようなパーオキサイド系開始剤を挙げることができる。
重合開始剤は必要に応じて水溶性開始剤を用いてもよく、以下のものが挙げられる。
過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチロアミジン)塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミノジノプロパン)塩酸塩、アゾビス(イソブチルアミジン)塩酸塩、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルスルホン酸ナトリウム、硫酸第一鉄又は過酸化水素。
これらの重合開始剤は単独又は複数を併用して使用でき、重合性単量体の重合度を制御するために、連鎖移動剤、重合禁止剤などをさらに添加し用いることも可能である。
トナー粒子表面に付着した分散安定剤を除去する目的で、トナー粒子分散液を酸又はアルカリで処理してもよい。
得られたトナー粒子分散液からトナー粒子を得るための固液分離は、一般的な濾過方法で行うことができ、その後トナー粒子表面から除去しきれなかった異物を除去するため、リスラリーや洗浄水のかけ洗いなどによってさらに洗浄を行うことが好ましい。十分な洗浄が行なわれた後に、再び固液分離してトナーケーキを得る。その後、公知の乾燥手段により乾燥され、必要であれば分級により所定外の粒径を有する粒子群を分離してトナー粒子を得る。このとき分離された所定外の粒径を有する粒子群は最終的な収率を向上させるために再利用してもよい。
得られたトナー粒子に対し、必要に応じて外添剤を添加してもよい。外添工程は、外添剤とトナー粒子を、高速回転する羽根を備えた混合装置に入れ、十分混合することによって行う。
得られたトナー粒子は、前記の懸濁重合法と同様の方法で、固液分離工程、洗浄工程、乾燥工程、及び外添工程を必要に応じて行うとよい。
溶解懸濁法における樹脂溶液に用いる有機溶媒は、結着樹脂、式(1)で表される樹脂及びワックスなどトナー粒子の原材料となるものと相溶するものであれば特に限定されるものではないが、溶媒除去の観点から水の沸点以下でもある程度の蒸気圧があるものが好ましい。
例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを用いることができる。
得られたトナー粒子は、懸濁重合法と同様の方法で、固液分離工程、洗浄工程、乾燥工程、及び外添工程を必要に応じて行うとよい。洗浄工程では、得られた粒子の洗浄、濾過を繰り返すことによりトナー粒子中の不純物を除去することができる。具体的にはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)及びそのNa塩などのキレート剤を含有した水溶液を用いてトナー粒子を洗浄し、さらに純水で複数回洗浄することが好ましい。
トナー粒子の粒径は、高精細かつ高解像の画像を得るという観点から、重量平均粒径が3.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。トナーの重量平均粒径は細孔電気抵抗法により測定することができる。例えば「コールター・カウンター Multisizer 3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定することができる。
<トナーと外添剤の分離>
トナー粒子の表面に外添剤を有するトナーにおいては、トナー粒子と外添剤を下記方法により分離し、トナー粒子を得る。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブ(容量50mL)に前記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(容量50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R 株式会社コクサン製)にて3500rpm、30分間の条件で分離する。この操作により、トナー粒子と外れた外添剤が分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラなどで採取する。採取したトナー粒子を減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥し、トナー粒子を得る。この操作を複数回実施して、必要量のトナー粒子を得る。
トナー粒子中の式(1)で表される樹脂の取り出しはテトラヒドロフラン(THF)を用いた抽出物を溶媒グラジエント溶出法により分離することで行う。調製方法を以下に示す。
トナー粒子10.0gを秤量し、円筒濾紙(東洋濾紙製No.84)に入れてソックスレー抽出器にかける。溶媒としてTHF200mLを用いて20時間抽出し、抽出液を脱溶剤して得られた固体がTHF可溶分である。THF可溶分には、式(1)で表される樹脂が含まれる。これを複数回行い、必要な量のTHF可溶分を得る。
溶媒グラジエント溶出法には、グラジエント分取HPCL(島津製作所製LC-20AP高圧グラジエント分取システム、Waters社製SunFire分取カラム50mmφ250mm)を用いる。カラム温度は30℃、流量は50mL/分、移動相には良溶媒としてTHF、クロロホルム、トルエンを適時選択し、貧溶媒としてアセトニトリル、アセトン、メタノール、n-ヘキサンを適時選択する。前記THF可溶分0.02gを良溶媒1.5mLに溶解させたものを試料としてグラジエント分取HPCLにかける。移動相は貧溶媒100%の組成から開始し、試料注入後5分経過した時点で、毎分4%ずつ良溶媒の比率を増加させ、25分かけて移動相の組成を良溶媒100%とする。得られた分画を乾固させることで、式(1)で表される樹脂を得る。どの分画区間が式(1)で表される樹脂であるかは後述するケイ素原子の含有量の測定、及び、13C-NMR測定により判別することができる。必要に応じて溶媒グラジエント溶出を繰り返すことで、必要な量の式(1)で表される樹脂を得る。
式(1)で表される樹脂中のケイ素原子の含有量は、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。
なお、X線管球のアノードとしてはRhを用い、加速電圧、電流値はそれぞれ、24kV、100mAとする。
測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mm、測定時間10秒とする。検出器はプロポーショナルカウンタ(PC)を用いる。測定はPETを分光結晶に用いた際に回折角(2θ)=109.08°に観測されるSi-Kα線の計数率(単位:cps)を測定し、下記検量線を用いて算出する。
測定サンプルは、式(1)で表される樹脂そのものを用いるか、前記取り出し方法によりトナー粒子から取り出した樹脂を用いる。
測定用ペレットは、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(前川試験機製作所社製)を用いる。専用のプレス用アルミリングの中に測定サンプル4gを入れて平らにならし、20MPaで60秒間加圧し、厚さ2mm、直径39mmに成型したペレットを用いる。
含有量を求めるための検量線を作成するためのペレットとして、バインダー[商品名:Spectro Blend、成分:C 81.0、O 2.9、H 13.5、N 2.6(質量%)、化学式:C19H38ON、形状:粉末(44μm);(株)リガク製]100質量部に対して、SiO2(疎水性フュームドシリカ)[商品名:AEROSIL NAX50、比表面積:40±10、炭素含有量:0.45~0.85%;日本アエロジル(株)製]が0.50質量部となるように添加し、コーヒーミルを用いて充分混合し、ペレット成型したものを用意する。同様にして、SiO2が5.00質量部、10.00質量部、15.00質量部となるように混合・ペレット成型したものをそれぞれ用意する。
得られたX線の計数率を縦軸に、各検量線用試料中のSi添加濃度を横軸として、一次関数の検量線を得る。
次に、測定サンプルについても同様に、Si-Kα線の計数率を測定する。そして、得られた検量線からケイ素原子の含有量(質量%)を求める。
式(1)で表される樹脂におけるR1~R3の構造は、29Si-NMR(固体)測定、及び、13C-NMR(固体)測定により確認する。測定条件は以下のとおりである。測定サンプルは式(1)で表される樹脂そのものを用いるか、前記取り出し方法によりトナー粒子から取り出した樹脂を用いる。
(29Si-NMR(固体)の測定条件)
装置:JEOL RESONANCE製 JNM-ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料量:150mg
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:97.38MHz(29Si)
基準物質:DSS(外部標準:1.534ppm)
試料回転数:10kHz
コンタクト時間:10ms
遅延時間:2s
積算回数:2000~8000回
前記測定により、ケイ素に結合した酸素原子の数に応じた複数のシラン成分をカーブフィッティングにてピーク分離・積分することで存在比を求めることができる。このようにして、式(1)で表される樹脂のR1~R3のアルコキシ基又はヒドロキシ基のケイ素原子に対する価数を確認できる。
装置:JEOL RESONANCE製 JNM-ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料量:150mg
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:123.25MHz(13C)
基準物質:アダマンタン(外部標準:29.5ppm)
試料回転数:20kHz
コンタクト時間:2ms
遅延時間:2s
積算回数:1024回
前記測定により、式(1)中のR1~R3の種類により各種ピークに分離し、それぞれを同定してR1~R3の構造を決定する。
式(1)で表される樹脂におけるP1及びL1の構造は13C-NMR(固体)測定により確認できる。測定条件は上記(13C-NMR(固体)の測定条件)と同様である。測定サンプルは式(1)で表される樹脂そのものを用いるか、前記取り出し方法によりトナー粒子から取り出した樹脂を用いる。
前期測定により、式(1)中のP1及びL1の種類により各種ピークに分離し、それぞれを同定してP1及びL1の構造を決定する。
重合体、樹脂又はトナー粒子の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そし
て、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調製する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF-801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10mL
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
100℃における、結着樹脂100質量部に対するエステル化合物の飽和相溶量は、以下のように測定する。
まず、トナー粒子から結着樹脂を取り出す。
結着樹脂は、前記溶媒グラジエント溶出法による分離操作により得られる。または、1H-NMR分析、13C-NMR分析、FT-IR分析、GC-MS分析、GPC分析などの公知の分析手法によりトナー粒子中の結着樹脂の種類と構造を同定し、別途、結着樹脂を合成することにより得てもよい。
一方、トナー粒子からエステル化合物を取り出す。
トナー粒子中のエステル化合物の取り出しはTHFを用いた抽出物を溶媒グラジエント溶出法により分離することで行う。前記<トナー粒子から式(1)で表される樹脂を取り出す方法>と同様の操作で必要な量のTHF可溶分を得る。THF可溶分にはエステル化合物が含まれる。
移動相には良溶媒としてTHF、クロロホルム、トルエンを適時選択し、貧溶媒としてアセトンまたはメタノールを適時選択し、前記<トナー粒子から式(1)で表される樹脂を取り出す方法>と同様の操作で分画を乾固することでエステル化合物を得る。どの分画区間がエステル化合物であるかは、1H-NMR分析、13C-NMR分析、FT-IR分析、GC-MS分析、GPC分析などの公知の分析手法により判別できる。前記分析手法により、トナー粒子中のエステル化合物の種類と構造を同定し、別途、エステル化合物を合成することにより得てもよい。
該操作により得られた結着樹脂を30mLのバイアル瓶に1.00g測り取り、100℃まで加熱した。その後、エステル化合物をバイアル瓶に添加し、100℃で十分に混合して目視観察する。
相溶の可否は、目視観察によって透明であれば相溶していると判断する。
エステル化合物を0.005g(結着樹脂に対して0.5質量部)ずつ添加していき、白濁せずに相溶と判断される最大量を求める。
トナー中のエステル化合物の含有量Aは、トナーからエステル化合物を取り出す過程で求めることができる。
上記<飽和相溶量の測定方法>において、秤量したトナー質量と、前記トナーから得られたエステル化合物の質量より、トナー中のエステル化合物の含有量「A」質量%を算出することができる。
トナー中の式(1)で表される樹脂の含有量Bは、トナーから式(1)で表される樹脂
を取り出す過程で求めることができる。
<トナー粒子から式(1)で表される樹脂を取り出す方法>において、秤量したトナー質量と前記トナーから得られた式(1)で表される樹脂の質量より、トナー中の式(1)で表される樹脂の含有量「B」質量%を算出することができる。
得られたA、Bの値より、該Bの該Aに対する比(B/A)を算出する。
溶解度パラメータ(SP値)は、下記式(II)に示すFedorsの式を用いて求める。
下記Δei、及び、Δviの値は、「コーティングの基礎科学、54~57頁、1986年(槇書店)の表3-9に記載された、原子及び原子団の蒸発エネルギーとモル体積(25℃)」を参考にすることができる。
なお、SP値の単位は、(cal/cm3)1/2であるが、1(cal/cm3)1/2=2.046×103(J/m3)1/2によって(J/m3)1/2の単位に換算することができる。
δi=(Ev/V)1/2=(Δei/Δvi)1/2 (II)
式(II)中、Ev:蒸発エネルギー、V:モル体積、Δei:i成分の原子又は原子団の蒸発エネルギー、Δvi:i成分の原子又は原子団のモル体積、をそれぞれ表す。
エステル化合物などの融点は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TAインストルメント社製)を用いて、ASTM D3418-82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料5mgを精秤し、これを銀製のパンの中に入れ、リファレンスとして空の銀製のパンを用い、測定開始温度20℃から測定終了温度180℃まで、昇温速度10℃/minで、1回の測定を行う。この1度目の昇温過程での温度20℃以上180℃以下の範囲におけるDSC曲線の最大吸熱ピークのピーク温度を求める。該最大吸熱ピークのピーク温度を融点(℃)とする。
下記の手順により、スチレンアクリル酸共重合体(A-1)を製造した。
プロピレングリコールモノメチルエーテル100.0部を窒素置換しながら加熱し、液温120℃以上で還流させた。そこへ、重合性単量体として、スチレン83.4部、アクリル酸ブチル20.9部、アクリル酸1.0部、及び、重合開始剤として、tert-ブチルパーオキシベンゾエート[日油(株)製、商品名:パーブチルZ]0.6部を混合したものを3時間かけて滴下した。滴下終了後、溶液を3時間撹拌した後、液温を170℃まで昇温しながら常圧蒸留した。液温が170℃に到達した後、1hPaに減圧し、1時間蒸留して脱溶剤し、樹脂固形物を得た。前記樹脂固形物をテトラヒドロフランに溶解し、n-ヘキサンで再沈殿させて析出した固体を濾別することでスチレンアクリル酸共重合体(A-1)を得た。
得られたスチレンアクリル酸共重合体(A-1)の酸価は10.6mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)は13000であった。
スチレンアクリル酸共重合体(A-1)の製造例において、重合性単量体を、スチレン82.0部、メタクリル酸10.0部、アクリル酸8.0部に変更し、重合開始剤の量を1.0部にそれぞれ変更した以外は、同様の操作で、スチレンアクリル酸共重合体(A-2)を得た。
得られたスチレンアクリル酸共重合体(A-2)の酸価は161.0mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)は46000であった。
下記の手順によりポリエステル部位(A-3)を製造した。
減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、及び撹拌装置を備えたオートクレーブ中に下記材料を仕込み、窒素雰囲気下、常圧、200℃で5時間反応を行った。
・ビスフェノールA-プロピレンオキサイド2.1モル付加物 :39.6部
・テレフタル酸 : 8.0部
・イソフタル酸 : 7.6部
・テトラブトキシチタネート : 0.1部
その後、トリメリット酸0.01部及びテトラブトキシチタネート0.12部を追加し、220℃で3時間反応し、さらに10~20mmHgの減圧下で2時間反応してポリエステル樹脂(A-3)を得た。
得られたポリエステル部位(A-3)の酸価は6.1mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)は10200であった。
ポリエステル部位(A-3)の製造例において、より低分子量体を得るために、又は、より高分子量体を得るために、反応圧力、反応温度、反応時間を適宜調整した以外は同様にして、ポリエステル部位(A-4)及び(A-5)を製造した。
得られたポリエステル部位(A-4)の酸価は28.0mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)は3100であった。
また、得られたポリエステル部位(A-5)の酸価は1.2mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)は99500であった。
下記の手順により式(1)で表される樹脂(B-1)を製造した。
N,N-ジメチルアセトアミド200.00部に、スチレンアクリル酸共重合体(A-1)50.00部を溶解し、シラン化合物として、3-アミノプロピルトリエトキシシラン1.20部、トリエチルアミン2.90部、縮合剤としてDMT-MM〔4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド〕を2.90部添加し、常温で5時間撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール中に滴下し再沈殿して濾過することで、式(1)で表される樹脂(B-1)を得た。得られた式(1)で表される樹脂(B-1)の重量平均分子量(Mw)は13200であった。
式(1)で表される樹脂(B-1)の製造例において、P1(高分子部位)の種類;シラン化合物の種類及び添加量;トリエチルアミン及びDMT-MMの添加量を表1のように変更した以外は同様にして、式(1)で表される樹脂(B-2)~(B-8)、(B-10)、及び(B-11)を得た。
式(1)で表される樹脂(B-8)10.0部をトルエン90.0部に溶解した溶液に
、純水400.0部と混合撹拌し、希塩酸を用いてpHを4.0に調整し、常温で10.8時間撹拌させた後、撹拌を止め分液ロートに移し油相を抽出した。前記油相を濃縮し、メタノールで再沈殿することによって、式(1)で表される樹脂(B-9)を得た。
得られた式(1)で表される樹脂(B-9)を29Si-NMR(固体)測定によって分析したところ、式(1)におけるR1~R3は、いずれもヒドロキシ基であった。
下記の手順により式(1)で表される樹脂(B-12)を製造した。
クロロホルム500.00部に、ポリエステル部位(A-3)50.00部を溶解し、窒素雰囲気下、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン0.74部とチタン(IV)テトライソプロポキシド0.50部を添加し、常温で5時間撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール中に滴下し再沈殿して濾過することで、式(1)で表される樹脂(B-12)を得た。
反応容器に、イオン交換水390.0部、及びリン酸ナトリウム(12水和物)〔ラサ工業(株)製〕14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。次に、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12,000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、該水系媒体に塩酸を投入し、pHを6.0に調整し、水系媒体1を得た。
一方、下記材料をアトライタ(日本コークス工業(株)製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を投入して、220rpmで5.0時間分散させた後、ジルコニア粒子を取り除き、着色剤が分散された分散液1を調製した。
・スチレン 60.0部
・着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3) 6.5部
次に、調製した前記分散液1に下記材料を加えた。
・スチレン 15.0部
・アクリル酸n-ブチル 25.0部
・スチレンアクリル酸共重合体(A-1) 4.0部
・樹脂A(B-1) 8.0部
・ジビニルベンゼン 0.6部
・エステル化合物(エチレングリコールジステアレート) 12.0部
・ワックス(フィッシャートロプシュワックス、融点:78℃) 3.0部
これを65℃に保温し、T.K.ホモミクサーを用いて、500rpmにて均一に溶解、分散させることで、重合性単量体組成物1を調製した。
前記水系媒体1の温度を70℃、撹拌装置の回転数を12,000rpmに保ちながら、前記水系媒体1中に前記重合性単量体組成物1を投入し、重合開始剤として、t-ブチルパーオキシピバレート9.0部を添加した。そのまま前記撹拌装置にて12,000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
前記撹拌装置からプロペラ撹拌羽根を備えた撹拌機に変更し、150rpmで攪拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、さらに85℃に昇温して2.0時間加熱保持を行った後、室温まで0.83℃/秒の速度で冷却し水系分散液を得た。その後、前記水系分散液を55℃まで昇温し、5.0時間保持させたのち、室温まで冷却することで、トナー粒子分散液1を得た。
得られたトナー粒子分散液1に塩酸を添加し、pHを1.4以下として、前記分散安定
剤を溶解し、ろ過、洗浄、乾燥を行うことによって、トナー粒子1を得た。
還流冷却管、撹拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、下記材料を入れた。
・トルエン 100.0部
・スチレン 75.0部
・アクリル酸n-ブチル 25.0部
・ジビニルベンゼン 0.6部
・t-ブチルパーオキシピバレート 3.0部
前記反応容器内を毎分200回転で撹拌し、70℃に加熱して10時間保持し、樹脂溶解液2を得た。
次いで、
・樹脂溶解液2 203.6部
・ポリエステル部位(A-3) 4.0部
・樹脂A(B-1) 8.0部
・エステル化合物(エチレングリコールジステアレート) 12.0部
・ワックス(フィッシャートロプシュワックス、融点:78℃) 3.0部
・着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3) 6.5部
上記成分に直径1.7mmのジルコニア粒子を投入して、220rpmで10.0時間分散させた後、ジルコニア粒子を取り除き、樹脂組成物溶解液2を得た。
次に、トナー粒子1の製造と同様の操作で得られた水系媒体1中に前記樹脂組成物溶解液2を投入し、クレアミクスにて15000回転/分を維持しつつ10分間の造粒工程を行い、樹脂組成物分散液2を得た。
前記樹脂組成物分散液2を95℃に昇温して、120分間撹拌を行うことで樹脂組成物分散液2中のトルエンを除去した。その後、0.83℃/秒の速度で室温まで冷却し、次に、55℃に昇温し5.0時間保持したのちに室温まで冷却することで、トナー粒子分散液2を得た。
得られたトナー粒子分散液2に塩酸を添加し、pHを1.4以下として、分散安定剤を溶解し、ろ過、洗浄、乾燥を行うことによって、トナー粒子2を得た。
反応容器に下記材料を入れ、溶解させた。
・スチレン 75.0部
・アクリル酸n-ブチル 25.0部
・スチレンアクリル酸共重合体(A-1) 4.0部
・樹脂A(B-1) 8.0部
・ジビニルベンゼン 0.6部
・n-ラウリルメルカプタン 3.2部
次に、ネオゲンRK(第一工業製薬社製)1.5部とイオン交換水150.0部からなる水溶液を添加して分散させた。さらに、ゆっくりと撹拌しながら、過硫酸カリウム0.3部とイオン交換水10.0部からなる水溶液を添加した。反応容器を窒素置換させたのちに70℃で6時間乳化重合を行った。重合終了後、反応液を室温まで冷却し、イオン交換水を添加することで、固形分濃度12.5質量%、重量平均粒径0.2μmの樹脂粒子分散液を得た。
また、エチレングリコールジステアレート80.0部、フィッシャートロプシュワックス(融点:78℃)20.0部、ネオゲンRK15.0部をイオン交換水385.0部に混合させ、湿式ジェットミル JN100((株)常光製)を用いて1時間分散させた。得られた分散液にイオン交換水を添加することで、固形分濃度20.0質量%のワックス分散液を得た。
また、着色剤として、C.I.ピグメントブルー15:3を100.0部、ネオゲンRK15.0部をイオン交換水885.0部に混合させ、湿式ジェットミル JN100を用いて1時間分散させた。得られた分散液にイオン交換水を添加することで、固形分濃度10.0質量%の着色剤分散液を得た。
上記操作で得られた、前記樹脂粒子分散液80.0部、前記ワックス分散液9.0部、前記着色剤分散液6.0部を反応容器に入れ、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて撹拌させた。次に、前記撹拌操作をしながら反応容器内の温度を30℃に調整して、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=8.0に調整した。次に、凝集剤として、硫酸下マグネシウム0.3部をイオン交換水10.0部に溶解させた水溶液を、30℃で撹拌しながら、10分間かけて添加した。
さらに3分間経過後に昇温を開始し、50℃まで昇温することで、凝集粒子の生成を行った。前記凝集粒子の粒径を「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)」にて測定した。
前記凝集粒子の重量平均粒径が、6.0μmになった時点で、塩化ナトリウム0.9部とネオゲンRK5.0部を反応容器に添加して前記凝集粒子の粒子成長を停止させた。
その後、反応容器を62℃まで昇温させ、8時間保持させた後に、反応容器を85℃に昇温させ、1分間保持させた後に、室温まで0.83℃/秒で冷却させた。次に、反応容器を55℃まで昇温させ、5.0時間保持させたのちに室温まで冷却することで、トナー粒子分散液3を得た。
得られたトナー粒子分散液3をろ過、洗浄し、これを数回繰り返した後に、乾燥を行うことによって、トナー粒子3を得た。
トナー粒子1の製造例において、樹脂Aの種類及び添加量、エステル化合物の種類及び添加量、並びに、ワックスの種類及び添加量を表3に記載されたようにそれぞれ変更した以外は同様にして、トナー粒子4~9、11、13~16、19~23、及び25~34を得た。
反応容器に下記材料を入れたのち、直径1.7mmのジルコニア粒子を投入し、220rpmで10.0時間分散させた後、ジルコニア粒子を取り除き、樹脂組成物溶解液10を得た。
・トルエン 100.0部
・ポリエステル部位(A-3) 100.0部
・樹脂A(B-3) 8.0部
・エステル化合物(エチレングリコールジステアレート) 12.0部
・着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3) 6.5部
次に、トナー粒子1の製造例と同様の操作で得られた水系媒体1中に前記樹脂組成物溶解液10を投入し、クレアミクスにて15000回転/分を維持しつつ10分間の造粒工程を行い、樹脂組成物分散液10を得た。
前記樹脂組成物分散液10を95℃に昇温して、120分間撹拌を行うことで樹脂組成物分散液10中のトルエンを除去した。その後、0.83℃/秒の速度で室温まで冷却し、次に、55℃に昇温し5.0時間保持したのちに室温まで冷却することで、トナー粒子分散液10を得た。
得られたトナー粒子分散液10に塩酸を添加し、pHを1.4以下として、分散安定剤を溶解し、ろ過、洗浄、乾燥を行うことによって、トナー粒子10を得た。
トナー粒子2の製造例において、樹脂溶解液2を101.8部、ポリエステル部位(A-3)を50.0部、エステル化合物をアジピン酸ジベヘニルに変更し、フィッシャート
ロプシュワックスを添加しない以外は同様の操作によって、トナー粒子12を得た。
トナー粒子2の製造例において、ポリエステル部位(A-3)をスチレンアクリル酸共重合体(A-1)に、樹脂A(B-1)8.0部を樹脂A(B-3)20.0部に、エチレングリコールジステアレートをアジピン酸ジベヘニルに変更し、また、フィッシャートロプシュワックスを添加しない以外は同様の操作によって、トナー粒子17を得た。
トナー粒子17の製造例において、樹脂A(B-3)を55.0部に、アジピン酸ベヘニルを5.0部に変更した以外は同様の操作によって、トナー粒子18を得た。
トナー粒子17の製造例において、樹脂A(B-3)を20.0部に、アジピン酸ベヘニルを30.0部に変更した以外は同様の操作によって、トナー粒子24を得た。
トナー粒子1の製造例において、樹脂A(B-1)8.0部をトリメトキシビニルシラン3.7部に変更した以外は同様にして、トナー粒子35を得た。
トナー粒子35における、飽和相溶量は44.5質量部であり、〔(SPC-SPW)2×Mw〕は537であった。
得られたトナー粒子1~31、及び、トナー粒子32~35のそれぞれ100.0部に対して、BET値が200m2/gであり、一次粒子の個数平均粒径が8nmの疎水性シリカ微粒子0.6部をヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)で混合した。
前記混合処理後、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー1~31、及び、比較トナー32~35を得た。
得られたトナー1~31、及び、比較トナー32~35のそれぞれについて以下の方法に従って性能評価を実施した。評価結果については表4に示す。
画像形成装置として定着ユニットを外したカラーレーザープリンタ(HP Color
LaserJet 3525dn、HP社製)を用意し、シアンカートリッジからトナーを取り出して、代わりに評価するトナーを充填した。次いで、受像紙(HP Laser Jet90、HP社製、90g/m2)上に、充填したトナーを用いて、縦2.0cm横15.0cmの未定着のトナー画像(トナーの載り量:0.9mg/cm2)を、通紙方向に対し上端部から1.0cmの部分に形成した。次いで、取り外した定着ユニットを定着温度とプロセススピードを調節できるように改造し、これを用いて未定着画像の定着試験を行った。
まず、常温常湿環境下(温度23℃、相対湿度60%)、プロセススピードを350mm/sに設定し、初期温度を140℃として設定温度を5℃ずつ順次昇温させながら、各温度で前記未定着画像の定着を行った。
低温定着性の評価基準は以下の通りである。低温側定着開始点とは、低温オフセット現象(トナーの一部が定着器に付着してしまう現象)が観察されない下限温度のことである。(評価基準)
A:低温側定着開始点が165℃以下
B:低温側定着開始点が170℃以上180℃以下
C:低温側定着開始点が185℃以上195℃以下
D:低温側定着開始点が200℃以上210℃以下
E:低温側定着開始点が215℃以上
前記低温定着性の評価により得られた定着画像を用いて、グロス低下の評価を行った。
得られた定着画像を常温常湿環境下(温度23℃、相対湿度60%)で10分静置させたのち、ハンディ型グロスメーターPG-1(日本電色工業株式会社製)を用いてグロス値を測定した。測定条件は、投光角度、受光角度をそれぞれ75°に合わせ、定着画像上の異なる5点を測定し、その平均値を定着後初期のグロス値とした。
次に、グロス値を測定した定着画像を、温度40℃、相対湿度95%の環境下で10日間静置させたのち、常温常湿環境下(温度23℃、相対湿度60%)で1日静置させた。
定着後初期においてグロス値を測定した同一個所でグロス値を測定し、5点の平均値を経時変化後のグロス値とした。
これら結果から、定着後初期のグロス値に対する経時変化後のグロス値変化率を算出した。
(評価基準)
A:グロス値変化率が5.0%未満
B:グロス値変化率が5.0%以上10.0%未満
C:グロス値変化率が10.0%以上15.0%未満
D:グロス値変化率が15.0%以上20.0%未満
E:グロス値変化率が20.0%以上
トナーが現像装置内で負荷を受けることにより割れると、画像弊害としての現像スジが発生しやすくなる。現像スジが発生する度合いを以下の方法で評価した。
評価紙として、GF-500(A4、坪量64.0g/m2、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を使用し、常温常湿下(温度23℃、相対湿度60%)で、印字率2%チャートを20000枚連続して画出しした。画出し後、さらにハーフトーン画像(トナーの載り量:0.6mg/cm2)を出力し、前記ハーフトーン画像における画像スジの状態について評価した。
(評価基準)
A:現像スジが未発生
B:現像スジが1箇所以上2箇所以下発生
C:現像スジが3箇所以上4箇所以下発生
D:現像スジが5箇所以上6箇所以下発生
E:現像スジが7箇所以上発生、あるいは、幅0.5mm以上発生
定着画像の離型性が十分であると、定着画像が定着ローラーに巻き付きにくくなる。耐定着巻き付き性評価を以下のように行った。
前記低温定着性評価で用いた評価機を用いて、先端部から1mmの位置に通紙方向に幅60mmで、紙上のトナー載り量が1.2mg/cm2になるように調整し、未定着画像を10枚作成した。
評価紙は、GF-500(A4、坪量64.0g/m2、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を使用した。
その後、高温高湿環境(温度30℃、相対湿度80%)において、定着温度を150℃から順に5℃ずつ上げ、200mm/secの紙搬送速度にて10枚連続で通紙し、定着巻きつきの発生しない上限温度を耐定着巻きつき温度とした。
(評価基準)
A:200℃においても巻きつきが発生しない
B:耐定着巻きつき温度が190℃以上200℃未満
C:耐定着巻きつき温度が180℃以上190℃未満
D:耐定着巻きつき温度が170℃以上180℃未満
E:165℃において巻きつきが発生
トナーの性能評価の結果を表4に示す。
Claims (10)
- 結着樹脂、式(1)で表される樹脂、及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂が、スチレンアクリル酸共重合体を含有する樹脂であり、
該ワックスは100℃において、該結着樹脂100.0質量部に対して、5.0質量部以上相溶するエステル化合物を含有することを特徴とするトナー。
(該式(1)中、P1は高分子部位を表し、該高分子部位はスチレンアクリル酸共重合体を含有し、L1は単結合又は2価の連結基を表し、R1~R3はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基又はアリール基を表し、mは正の整数を表す。mが2以上である場合の、複数のL1、複数のR1、複数のR2、及び複数のR3はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。) - 結着樹脂、式(1)で表される樹脂、及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂が、ポリエステル部位を含有する樹脂であり、
該ワックスは100℃において、該結着樹脂100.0質量部に対して、5.0質量部以上相溶するエステル化合物を含有することを特徴とするトナー。
(該式(1)中、P1は高分子部位を表し、該高分子部位はポリエステル部位を含有し、L1は単結合又は2価の連結基を表し、R1~R3はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基又はアリール基を表し、mは正の整数を表す。mが2以上である場合の、複数のL1、複数のR1、複数のR2、及び複数のR3はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。) - 結着樹脂、式(1)で表される樹脂、及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該ワックスは100℃において、該結着樹脂100.0質量部に対して、5.0質量部以上相溶するエステル化合物を含有し、
該トナー粒子が、さらに炭化水素系ワックスを含有することを特徴とするトナー。
(該式(1)中、P1は高分子部位を表し、L1は単結合又は2価の連結基を表し、R1~R3はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基又はアリール基を表し、mは正の整数を表す。mが2以上である場合の、複数のL1、複数のR1、複数のR2、及び複数のR3はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。) - 結着樹脂、式(1)で表される樹脂、及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該ワックスは100℃において、該結着樹脂100.0質量部に対して、5.0質量部以上相溶するエステル化合物を含有し、
該エステル化合物は、炭素数2以上10以下のジオールと炭素数14以上22以下の脂肪族モノカルボン酸との縮合物であり、融点が60℃以上100℃以下であることを特徴とするトナー。
(該式(1)中、P1は高分子部位を表し、L1は単結合又は2価の連結基を表し、R1~R3はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロ
キシ基又はアリール基を表し、mは正の整数を表す。mが2以上である場合の、複数のL1、複数のR1、複数のR2、及び複数のR3はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。) - 結着樹脂、式(1)で表される樹脂、及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該ワックスが、エステル化合物を含有し、
該エステル化合物は、炭素数2以上10以下のジオールと炭素数14以上22以下の脂肪族モノカルボン酸との縮合物であり、融点が、60℃以上100℃以下であることを特徴とするトナー。
(該式(1)中、P1は高分子部位を表し、L1は単結合又は2価の連結基を表し、R1~R3はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基又はアリール基を表し、mは正の整数を表す。mが2以上である場合の、複数のL1、複数のR1、複数のR2、及び複数のR3はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。) - 前記R1~R3のうち、少なくとも1つが、アルコキシ基又はヒドロキシ基を表す、請求項1~5のいずれか1項に記載のトナー。
- 前記エステル化合物の含有量が、前記結着樹脂100質量部に対して、5.0質量部以上30.0質量部以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載のトナー。
- 前記式(1)で表される樹脂中のケイ素原子の含有量が、0.02質量%以上10.00質量%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載のトナー。
- 前記トナー中の前記エステル化合物の含有量をA質量%とし、
前記トナー中の前記式(1)で表される樹脂の含有量をB質量%としたとき、
該Bの該Aに対する比が、0.10以上10.00以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載のトナー。 - 前記式(1)で表される樹脂の重量平均分子量が、3000以上100000以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載のトナー。
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