JP2017062367A - トナー - Google Patents
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Description
電子写真方式では、正あるいは負に帯電したトナーをトナー担持体に担持し、静電荷像担持体を帯電させて画像部と非画像部に電位差を設け、トナー担持体上のトナーを静電荷像担持体の画像部に現像させる。現像された静電荷像担持体上のトナーは、紙などの転写材に転写、あるいは中間転写体に転写後さらに転写材に転写する工程(転写工程)を経て、熱と圧力で転写材に定着される。
転写工程では、静電荷像担持体上のトナーが転写バイアスを受けて、静電引力によって転写材に転写されるが、使用環境や使用枚数を検知して、転写電流を制御する制御機構を設けることがある。転写電流を細かく制御することで、種々の環境や状況でも、転写されずに静電荷像担持体に残るトナー、いわゆる残トナーを少なくすることができる場合が多いが、各種電位制御装置の複雑化というデメリットが生じてしまう。そのため、幅広い転写電流領域で残トナーが少ない(転写性が良好である)ことが求められている。本明細書においては、幅広い転写電量領域で残トナーが少ないことを転写ラチチュードが広いと表現する。
トナーの付着力を下げる手段として、外添剤をトナー粒子表面に付着させる方法が挙げられる。外添剤の代表例はシリカ微粒子である。シリカは、二酸化ケイ素によって構成され、化学構造はSiO2である。そこでトナー粒子表面をケイ素化合物で均一に覆うことができれば、これまで以上に付着力を下げることができるのではないかと考えた。さらに、トナー粒子表面を覆うケイ素化合物が、耐久使用後も劣化することなくトナーを被覆していれば、付着力を下げた効果を持続するトナーが得られるのではと考え、検討を続けてきた。
トナー粒子表面をケイ素化合物で覆う思想の例として、反応系にシランカップリング剤を添加することを特徴とする重合トナーの製造方法が開示されている(特許文献1参照)。
あるいは、表面部に連続した薄膜の形で施されたケイ素化合物を含んでいる重合トナーが開示されている(特許文献2参照)。
担持体上に留まり続けてしまい、その結果トナーの劣化が促進され、耐久使用中に付着力が上昇し転写性が低下する場合がある。さらに、劣化したトナーは、帯電量が不十分な粒や、設計思想と逆極性に帯電した粒(帯電量反転成分)が生じやすく、転写ラチチュードが狭くなってしまう恐れがある。
以上の理由から、トナー粒子表面をケイ素化合物で覆ったトナーにおいて、低温低湿環境下で転写性に優れたトナーが望まれている。
本発明は、低温低湿環境において、従来以上に転写性を改善し、その効果が耐久使用を通して持続するトナーを提供することを目的とする。特に、幅広い転写電流条件で高い転写効率が得られるトナーを提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、有機ケイ素重合体及びイオン性官能基を有する樹脂を含有する表面層を有するトナー粒子を有するトナーであって、
該有機ケイ素重合体は、下記式(1)又は(2)で表される部分構造を有し、
該トナー粒子の表面のX線光電子分光分析において、トナー粒子表面の、炭素原子の濃度dC、酸素原子の濃度dO、及びケイ素原子の濃度dSiの合計を100.0atomic%としたときに、該ケイ素原子の濃度dSiが、1.0atomic%以上22.2atomic%以下であり、
該イオン性官能基を有する樹脂のpKa(酸解離定数)が、6.0以上9.0以下であることを特徴とするトナーである。
該有機ケイ素重合体は、下記式(1)又は(2)で表される部分構造を有し、
該トナー粒子の表面のX線光電子分光分析において、トナー粒子表面の、炭素原子の濃度dC、酸素原子の濃度dO、及びケイ素原子の濃度dSiの合計を100.0atomic%としたときに、ケイ素原子の濃度dSiが、1.0atomic%以上22.2a
tomic%以下であり、
該イオン性官能基を有する樹脂のpKa(酸解離定数)が、6.0以上9.0以下であることを特徴とするトナーに関する。
本発明のトナーは、低温低湿環境において幅広い転写電流領域で高い転写効率が得られ、その効果が耐久使用を通して持続する。
本発明者らは、転写性を向上させるためにトナーの付着力を下げることに着目し、トナー粒子表面をケイ素化合物で均一に覆う検討を続けてきた。しかしながら低温低湿下においては、前述の通り、トナーがチャージアップしトナー担持体上に留まり続けてしまう場合が生じる。トナー担持体上に留まり続けたトナーは負荷が増大するため、トナー粒子表面のケイ素化合物が一部剥がれる場合や、剥がれたケイ素化合物が再びトナー表面に固着するなどしてトナー表面の均一性が損なわれてしまうことが考えられる。
その結果、トナーの付着力が耐久使用を通して上昇し、同時に帯電量が不十分な粒や帯電量反転成分も増加し、転写ラチチュードが狭くなってしまうと推測した。
そこでトナーのチャージアップを抑えることができれば、低温低湿下でも、トナーの劣化を抑えることができ、幅広い転写電流条件で高い転写効率を持続することができるのではないかと考えた。
そして鋭意検討の結果、トナー粒子が特定の有機ケイ素重合体と、イオン性官能基を有するpKa(酸解離定数)が6.0以上9.0以下の樹脂と、を含有する表面層を有することで、低温低湿環境下においてチャージアップを抑制し、耐久使用を通して幅広い転写電流条件で高い転写効率を持続することを見出した。
本発明のトナーは表面層に、上記式(1)又は(2)で表される部分構造を有した有機ケイ素重合体を含有している。有機ケイ素重合体は、Si原子の4個の原子価について、1個は下記式(iii)又は(iv)と、残り3個はO原子と結合している。
O原子は、原子価2個がいずれもSiと結合している状態、つまり、シロキサン結合(Si−O−Si)を構成する。有機ケイ素重合体としてのSi原子とO原子を考えると、Si原子2個でO原子3個を有することになるため、−SiO3/2と表現される。この有機ケイ素重合体の−SiO3/2構造は、多数のシロキサン結合で構成されるシリカ(SiO2)と類似の性質を有することが考えられる。従って本発明のトナーは、シリカを表面に添加した場合と似た状況を作り出していると考えられる。それにより、トナー粒子の表面を強固にすることができると考えられる。
一方で、式(iii)又は(iv)の構造を含むことで、ビニル系重合性単量体をはじめとする各種重合性単量体と反応し、架橋構造を形成することができる。従って本発明のトナーは、トナー粒子の内部と表面層との接着性を増すことができ、耐久使用での摺擦や圧力によるトナー劣化が起こり難くなる。そのため、耐久使用を通して本発明の効果の維持が可能であると考えられる。
上記イオン性官能基を有する樹脂は負帯電性であり、上記有機ケイ素重合体と共存させた場合に、低温低湿下でトナーの付着力を低減した状態を維持できることが明らかとなった。詳細は不明であるが、上記イオン性官能基を有する樹脂は調湿性に優れ、低温低湿下で、上記有機ケイ素重合体のチャージアップを適度に抑える効果があるためだと推測している。
また、耐久使用を通してトナーの帯電量を安定させ、帯電量反転成分も少なくなることが明らかとなった。この点についても詳細は不明であるが、上記有機ケイ素重合体は、上記式(iii)又は(iv)で表される部分構造による有機ネットワークを有するため、上記イオン性官能基を有する樹脂との親和性が高いと考えられる。そのため、双方の密着性は強固なものになる。結果として、耐久使用での摺擦や圧力によるトナー劣化が起こり難くなる。つまり耐久使用において、印刷のプロセススピードを上げたり、印刷枚数を多くしたりしても(これらを、本明細書においては過酷な耐久使用と表現する)、本発明のトナーは従来よりも劣化が抑制される。以上のことから本発明のトナーは、トナーの帯電量を安定させ、帯電量反転成分の抑制する効果を、過酷な耐久使用を通して持続させることが可能となったと考えている。
好ましくはイオン性官能基を有する樹脂のpKaが、7.0以上8.5以下の範囲である。
pKa(酸解離定数)の求め方は後述するが、中和滴定結果から求めることができる。
イオン性官能基を有する樹脂としては、上記pKa(酸解離定数)を満たすものであればどのようなものでも構わない。
例えば、芳香環に結合した水酸基や、芳香環に結合したカルボキシ基を有する樹脂がpKa(酸解離定数)を上記範囲にしやすい。
例えば、ビニルサリチル酸、フタル酸1ビニル、ビニル安息香酸、1‐ビニルナフタレン‐2‐カルボン酸を重合させたものが好ましい。
析出性が低下し、それに伴ってトナー粒子の被覆性が低下する傾向にある。また、式(2)で表される部分構造のうち、Lが炭化水素基であることが重要である。例えば、エステル基を含む場合には、エステル結合の結合力が弱いため耐久性が低下し易い傾向にある。
通常考えられるトナー粒子の主要原子は、炭素(C)、酸素(O)である。本発明においては、トナー粒子表面にケイ素(Si)原子が存在した場合、式(1)又は(2)で表される部分構造に由来する−SiO3/2構造が存在する。X線光電子分光分析は数nmの最表面の元素分析を行うものであり、前記ケイ素原子の濃度dSiが高いほど、トナー粒子表面に本発明の有機ケイ素重合体が多く存在することになる。
dSiが1.0atomic%未満であると、トナー粒子表面に十分な量の前記有機ケイ素重合体が存在しないことになる。そのため、トナーの付着力を下げることができず、前述のような本発明の効果を得ることは困難である。dSiが22.2atomic%より多くなると、トナー粒子表面に上記イオン性官能基を有する樹脂がほぼ存在しないことになる。そのため過酷な耐久使用を通してチャージアップが発生し本発明の効果を維持することは困難である。前記ケイ素原子の濃度dSiが1.0atomic%以上22.2atomic%以下であることで本発明の効果が効果的に発現される。前記ケイ素原子の濃度dSiは、好ましくは9.0atomic%以上21.0atomic%以下である。また、前記dSiは、有機ケイ素重合体形成時におけるトナー粒子の製造方法、有機ケイ素重合体形成時の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。また、有機ケイ素重合体のモノマー種や量によっても制御することができる。
以上、上記トナー構成により、低温低湿環境において転写ラチチュードが広く、その効果が耐久使用を通して持続する。
したがって上記有機ケイ素重合体を含有するトナー母粒子を製造した後、上記イオン性官能基を有する樹脂を外部から固着させる手法が好ましい。
具体的には、トナー母粒子と樹脂を乾式で混合し、機械的処理によって固着させる方法や、水系媒体中にトナー母粒子と上記イオン性官能基を有する樹脂を樹脂粒子の状態で分散させて、加熱したり凝集剤を添加したりする方法が挙げられる。
本発明においては、水系媒体中でトナー母粒子表面に上記樹脂粒子を加熱によって固着させることが好ましい。水系媒体中では樹脂粒子は電荷を帯びた状態で分散するため、上記イオン性官能基を有する樹脂をトナー母粒子の表面に凝集することなく均一に固着させることができるためである。またトナー粒子表面の凹凸を大きくすることができるため、さらにトナーの付着力を下げることができる。
転相乳化法では、自己分散性を有する樹脂、又は中和によって自己分散性を発現し得る樹脂を使用する。ここで、水系媒体中での自己分散性は、分子内に親水性基を有している樹脂において発揮される。具体的には、ポリエーテル基やイオン性官能基を有する樹脂において良好な自己分散性が発揮される。
上記樹脂中のイオン性官能基を中和することによって親水性が増大し、水系媒体中での自己分散が可能となる。上記樹脂を有機溶剤に溶解し、中和剤を加え、撹拌しながら水系媒体と混合すると、上記樹脂の溶解液が転相乳化を起こして微小な粒子を生成する。有機溶剤は、転相乳化後に加熱、減圧などの方法を用いて除去する。このように、転相乳化法によれば、実質的に乳化剤や分散安定剤を用いることなく、安定した樹脂粒子の水系分散体を得ることができる。
より好ましくは、前記平均厚みが10.0nm以上である。一方、前記平均厚みは、低温定着性の観点から、150.0nm以下であることが好ましく、100.0nm以下であることがより好ましい。
表面層の厚み2.5nm以下の割合は、より好ましくは10.0%以下である。
上100%以下がより好ましい。
Rf−SiO3/2 式(5)
(式(5)中、Rfは、下記式(iii)又は(iv)である)
詳細な測定法については後述するが、これは、トナー粒子に含まれる有機ケイ素重合体の中で、−SiO3/2で表される部分構造と上記式(iii)又は(iv)で表される部分構造の両方を、40.0%以上有していることを近似している。
前述の通り、Si原子の4つの原子価のうち、3つが酸素原子と結合し、さらにそれら酸素原子が別のSi原子と結合することが、−SiO3/2の部分構造の意味である。もし、そのうち酸素1つがシラノール基であったとすると、その有機ケイ素重合体の部分構造はRf−SiO2/2−OHで表現される。さらに、酸素2つがシラノール基であれば、その部分構造はRf−SiO1/2(−OH)2となる。これら構造を比較すると、より多くの酸素原子がSi原子と架橋構造を形成するほうが、SiO2で表されるシリカ構造に近い。そのため−SiO3/2骨格が多いほど、より硬い性質を示し、耐久性が向上すると考えられる。一方で、酸素原子がシラノール基のような形で残り、架橋構造を形成していないと、樹脂的な性質が支配的になり、耐久性が低下する傾向にあると考えられる。
よって、上記式(5)の構造に帰属されるピーク面積の割合が40%以上であることが、耐久性と環境安定性をさらに向上させるためには、好ましい。
前記ピーク面積の割合は、有機ケイ素重合体形成時におけるトナー粒子の製造方法、有機ケイ素重合体形成時の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
トナー粒子を水系媒体中で製造する場合、有機ケイ素化合物のシラノール基のような親水基による親水性によって、有機ケイ素化合物をトナー粒子表面に存在させやすい。そのため、有機ケイ素重合体が表面層を形成するというコアシェル構造の制御が容易であり、本発明の効果がさらに発揮される。
また、有機ケイ素重合体を形成する有機ケイ素化合物は、トナー粒子の結着樹脂となる
重合性単量体とともに水系媒体中で重合することによって、上記式(iii)又は(iv)で表される架橋構造を形成し易くなる。それによって、トナー粒子の内部と表面層との接着性がより強固なものとなり、本発明における帯電量反転成分抑制効果の耐久持続性がさらに向上する。
有機ケイ素化合物の添加量は、結着樹脂又は重合性単量体100質量部に対し、1質量部以上40質量部以下が好ましい。
トナー粒子の表面層は、具体的には、アルコキシシランに代表される有機ケイ素化合物の加水分解重縮合によって生成されることが好ましい。この表面層をトナーの粒子の表面に均一に設けることによって、従来のトナーで行なわれているような無機微粒子の固着や付着を行わなくても、長期使用時におけるトナーの性能低下が生じにくく、保存安定性に優れたトナーが得られる。
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジエトキシメトキシシラン、ビニルエトキシジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメトキシジクロロシラン、ビニルエトキシジクロロシラン、ビニルジメトキシクロロシラン、ビニルメトキシエトキシクロロシラン、ビニルジエトキシクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジアセトキシメトキシシラン、ビニルジアセトキシエトキシシラン、ビニルアセトキシジメトキシシラン、ビニルアセトキシメトキシエトキシシラン、ビニルアセトキシジエトキシシラン、ビニルトリヒドロキシシラン、ビニルメトキシジヒドロキシシラン、ビニルエトキシジヒドロキシシラン、ビニルジメトキシヒドロキシシラン、ビニルエトキシメトキシヒドロキシシラン、ビニルジエトキシヒドロキシシラン、のような三官能性のビニルシラン;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルジエトキシメトキシシラン、アリルエトキシジメトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルメトキシジクロロシラン、アリルエトキシジクロロシラン、アリルジメトキシクロロシラン、アリルメトキシエトキシクロロシラン、アリルジエトキシクロロシラン、アリルトリアセトキシシラン、アリルジアセトキシメトキシシラン、アリルジアセトキシエトキシシラン、アリルアセトキシジメトキシシラン、アリルアセトキシメトキシエトキシシラン、アリルアセトキシジエトキシシラン、アリルトリヒドロキシシラン、アリルメトキシジヒドロキシシラン、アリルエトキシジヒドロキシシラン、アリルジメトキシヒドロキシシラン、アリルエトキシメトキシヒドロキシシラン、アリルジエトキシヒドロキシシラン、のような三官能性のアリルシラン;p-スチリルトリメトキシシラン。有機ケイ素化合
物は単独で用いても、2種類以上を複合して用いてもよい。
また、前記式(3)の構造を有する有機ケイ素化合物と共に、一分子中に4つの反応基を有する有機ケイ素化合物(四官能性シラン)、一分子中に3つの反応基を有する有機ケイ素化合物(三官能性シラン)、一分子中に2つの反応基を有する有機ケイ素化合物(二官能性シラン)又は1つの反応基を有する有機ケイ素化合物(一官能性シラン)を併用して得られた有機ケイ素重合体を用いてもよい。併用してもよい有機ケイ素化合物としては以下のようなものが挙げられる。
ロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシラン、のような三官能性のメチルシラン;エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、のような三官能性のエチルシラン;プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン、のような三官能性のプロピルシラン;ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシシラン、のような三官能性のブチルシラン;ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリヒドロキシシラン、のような三官能性のヘキシルシラン;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシランのような三官能性のフェニルシラン;ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、トリメチルシリルクロライド、トリエチルシリルクロライド、トリイソプロピルシリルクロライド、t−ブチルジメチルシリルクロライド、N,N‘−ビス(トリメチルシリル)ウレア、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフロロアセトアミド、トリメチルシリルトリフロロメタンスルホネート、1,3−ジクロロ−1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサン、トリメチルシリルアセチレン、ヘキサメチルジシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、テトライソシアネートシラン、メチルトリイソシアネートシラン、ビニルトリイソシアネートシラン。
従って、有機ケイ素重合体を形成するには、反応媒体がアルカリ性の状態でゾルゲル反応を進めることが好ましく、水系媒体中で製造する場合には、具体的には、pH8.0以上であることが好ましい。これによって、より強度の高い、耐久性に優れた有機ケイ素重合体を形成することができる。また、ゾルゲル反応は、反応温度85℃以上、かつ、反応時間5時間以上で行うことが好ましい。このゾルゲル反応を上記反応温度及び反応時間で行うことによって、トナー粒子表面のゾルやゲルの状態のシラン化合物同士が結合した合一粒子の形成を抑制することができる。
R1及びR2におけるアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられ、アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
また、重合体Aに含まれる構造式(4)で示される1価の基aの含有量は50μmol/g以上1000μmol/g以下であることが好ましい。50μmol/g以上とすることで、良好な帯電性と耐久性が発揮できる。また、1000mol/g以下にすることで、チャージアップを抑制することができる。
なお、重合体Aが構造式(4)で示される1価の基a以外の部位にカルボキシ基を有している場合は、重合体Aを作製する際に構造式(4)で示される1価の基aを付加反応させる直前の化合物(例えばポリエステル樹脂)の酸価をあらかじめ測定しておく。構造式(4)で示される1価の基aの付加量は、付加反応後の重合体Aの酸価との差で算出することができる。
また、NMRを測定し、各単量体成分の特徴的な化学シフト値から導出した積分値より各成分のmol比を算出し、それを基に含有量(μmol/g)を算出することができる。
第一製法としては、重合性単量体、有機ケイ素化合物を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で造粒し、前記重合性単量体及び有機ケイ素化合物を重合する方法(以下、懸濁重合法とも称する)によって重合体粒子であるトナー母粒子を得た後、イオン性官能基を有するpKaが6.0以上9.0以下である樹脂を添加し、固着する方法である。このトナー母粒子は、有機ケイ素化合物がトナー母粒子表面に析出した状態で重合されるため、トナー母粒子表面に有機ケイ素重合体を含む層を形成させることができる。また、有機ケイ素化合物が均一に析出し易い利点が挙げられる。一方で、イオン性官能基を有する樹脂は有機ケイ素重合体よりも外側に存在する。すなわち、本発明に係るトナー粒子は、有機ケイ素重合体及びイオン性官能基を有する樹脂を含有する表面層、並びに結着樹脂を有することが好ましい。
(i)重合性単量体及び有機ケイ素化合物を含有する重合性単量体組成物の粒子を水系媒
体中で形成する工程。
(ii)前記重合性単量体組成物の前記粒子に含まれる前記重合性単量体及び前記有機ケイ素化合物の少なくとも一部を重合させて重合体粒子の分散液を得る工程。
(iii)前記重合体粒子の分散液にイオン性官能基を有するpKaが6.0以上9.0以下である樹脂を含有する樹脂粒子を添加する工程。
(iii)の後、重合体粒子表面上に付着した樹脂粒子を種々の方法によって、固着させることがさらに好ましい。固着させる方法については後述する。
本発明において好ましい水系媒体とは、以下のものが挙げられる。水、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、これらの混合溶媒が挙げられる。
上記重合性単量体組成物には、必要に応じて離型剤、着色剤、その他の樹脂を添加してもよい。また、重合工程終了後は、生成した粒子を洗浄、濾過により回収し、乾燥してトナー粒子を得る。なお、上記重合工程の後半に昇温してもよい。さらに未反応の重合性単量体又は副生成物を除去する為に、重合工程後半又は重合工程終了後に一部分散媒体を反応系から留去することも可能である。
ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスのような天然ワックス及びその誘導体、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸のような脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス、シリコーン樹脂。なお、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。これらは単独で又は混合して使用できる。
好ましくは、ポリエステル樹脂が挙げられ、ウレア基を含有するポリエステル樹脂がより好ましい。
スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチル、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンのようなスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、蟻酸ビニルのようなビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン。
これらのビニル系重合性単量体の中でも、スチレン、スチレン誘導体、アクリル系重合性単量体、及びメタクリル系重合性単量体が好ましい。すなわち、結着樹脂が、スチレン重合体、スチレン−アクリル共重合体又はスチレン−メタクリル共重合体であることが好ましい。上記式(1)又は(2)で表される構造を有する有機ケイ素重合体との接着性が良好になり、耐久性が良化する。
また、トナー粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合性単量体の重合に際して、連鎖移動剤を添加してもよい。好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対し、0.001質量部以上15.000質量部以下である。
また、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。この
ような界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム。
黄色顔料としては、黄色酸化鉄、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどの縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。具体的には以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー111、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー180。
橙色顔料としては以下のものが挙げられる。パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK。
紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。
緑色顔料としては、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGが挙げられる。白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛が挙げられる。
なお、着色剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100質量部に対して3.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましい。
本発明のトナーは、必要に応じて、トナー粒子に各種有機又は無機微粉体を外添してもよい。該有機又は無機微粉体は、トナー粒子に添加した時の耐久性から、トナー粒子の重量平均粒径の1/10以下の粒径であることが好ましい。
(1)流動性付与剤:シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック及びフッ化カーボン。
(2)研磨剤:金属酸化物(例えばチタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化クロム)、窒化物(例えば窒化ケイ素)、炭化物(例えば炭化ケイ素)、金属塩(例えば硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム)。
(3)滑剤:フッ素系樹脂粉末(例えばフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム)。
(4)荷電制御性粒子:金属酸化物(例えば酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ)、カーボンブラック。
有機又は無機微粉体は、トナーの流動性の改良及びトナー粒子の帯電均一化のためにトナー粒子の表面を処理することもできる。有機又は無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独でも併用してもよい。
前記イオン性官能基を有する樹脂を含有する樹脂粒子を水系媒体中でトナー母粒子表面に固着させる工程(固着工程)では、水系媒体のpHが、樹脂粒子のpKa−2.0以上であることが好ましい。
水系媒体のpHが、樹脂粒子のpKa−2.0以上では樹脂粒子の凝集が抑制され、樹脂粒子がトナー母粒子に均一かつ強固に固着するため、樹脂粒子の優れた帯電安定性を長期間保つことができる。好ましくは、水系媒体のpHが、樹脂粒子のpKa以上である。さらに、イオン性官能基の過剰な解離を抑えるため水系媒体のpHが、樹脂粒子のpKa+4.0以下であることが好ましい。
より好ましくは、樹脂粒子を強固にトナー母粒子に固着させる観点から水系媒体を樹脂粒子のガラス転移温度−20℃以上ガラス転移温度+30℃以下に加熱する手法である。
トナー母粒子のゼータ電位は、上記分散安定剤を利用して制御することができる。具体的にはトナー母粒子の表面に付着する分散安定剤の種類及び量や付着の方法により制御することができる。
樹脂粒子をトナー母粒子表面に固着させた後は、公知の方法でろ過、洗浄、乾燥してトナー粒子を得る。無機の分散安定剤を用いた場合は、酸又は塩基により溶解させた後除去することが好ましい。
<トナー粒子表面に存在するケイ素原子の濃度(atomic%)>
本発明におけるトナー粒子表面に存在するケイ素原子の濃度(atomic%)は、X線光電子分光分析(ESCA)により表面組成分析を行い算出した。
本発明では、ESCAの装置及び測定条件は、下記の通りである。
使用装置:ULVAC−PHI社製 Quantum2000
X線光電子分光装置測定条件: X線源 Al Kα
X線:100μm 25W 15kV
ラスター:300μm×200μm
PassEnergy:58.70eV StepSize:0.125eV
中和電子銃:20μA、1V Arイオン銃:7mA、10V
Sweep数:Si 15回、C 10回、 O 10回
本発明では、測定された各原子のピーク強度から、PHI社提供の相対感度因子を用いてトナー粒子の表面層に存在する、ケイ素原子の濃度[dSi]、炭素原子の濃度[dC]、酸素原子の濃度[dO](いずれも、atomic%)を算出した。
そして、トナー粒子の表面層の、炭素原子の濃度dCと酸素原子の濃度dOとケイ素原子の濃度dSiの合計(dC+dO+dSi)を100.0atomic%としたときのケイ素原子の濃度dSiの割合(atomic%)を求めた。
本発明において、トナー粒子の断面観察は以下の方法により行う。
トナー粒子の断面を観察する具体的な方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナー粒子を十分分散させた後、40℃の雰囲気下で2日間硬化させる。得られた硬化物か
らダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い薄片状のサンプルを切り出す。このサンプルを透過型電子顕微鏡(FEI社製電子顕微鏡Tecnai TF20XT)(TEM)で1万〜10万倍の倍率に拡大し、トナー粒子の断面を観察する。
本発明においては、用いる樹脂と有機ケイ素化合物の中の原子の原子量の違いを利用し、原子量が大きいとコントラストが明るくなることを利用して確認を行っている。さらに、材料間のコントラストを付けるためには四酸化ルテニウム染色法及び四酸化オスミウム染色法を用いてもよい。
当該測定に用いた粒子は、上記TEMの顕微鏡写真より得られたトナー粒子の断面から円相当径Dtemを求め、その値が後述の方法により求めたトナー粒子の重量平均粒径D4の±10%の幅に含まれるものとした。
上述のように、FEI社製電子顕微鏡Tecnai TF20XTを用い、加速電圧200kVでトナー粒子断面の明視野像を取得する。次にGatan社製EELS検出器GIF Tridiemを用い、Three Window法によりSi−K端(99eV)のEFマッピング像を取得して表面層に有機ケイ素重合体が存在することを確認する。
次いで、円相当径Dtemがトナー粒子の重量平均粒径D4の±10%の幅に含まれるトナー粒子1個について、トナー粒子断面の最大径である長軸Lと、長軸Lの中心を通りかつ垂直な軸L90の交点を中心にして、トナー粒子断面を均等に16分割する(図1参照)。すなわち、長軸Lの中点を通り、且つ、前記中点における交差角が均等(交差角は11.25°)になるように前記断面を横断する直線を16本ひくことにより前記中点から前記トナー粒子の表面まで32本の線分を形成する。次に、該中心からトナー粒子の表面層へ向かう線分(分割軸)をそれぞれAn(n=1〜32)、線分(分割軸)の長さをRAn、有機ケイ素重合体とイオン性官能基を有する樹脂を含有するトナー粒子の表面層の厚みをFRAnとする。
そして、該線分(分割軸)上の32箇所の有機ケイ素重合体とイオン性官能基を有する樹脂を含有するトナー粒子の表面層の平均厚みDav.を求める。さらに、32本存在する各線分(分割軸)上における有機ケイ素重合体とイオン性官能基を有する樹脂を含有するトナー粒子の表面層の厚みが2.5nm以下である線分(分割軸)の数の割合を求める。
本発明では、平均化するため、トナー粒子10個の測定を行い、トナー粒子1個あたりの平均値を計算した。
TEM写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)は以下の方法で求める。まず、1つのトナー粒子に対して、TEM写真より得られるトナー粒子の断面から求めた円相当径Dtemを下記式に従って求める。
[TEM写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)]=(RA1+RA2+RA3+RA4+RA5+RA6+RA7+RA8+RA9+RA10+RA11+RA12+RA13+RA14+RA15+RA16+RA17+RA18+RA19+RA20+RA21+RA22+RA23+RA24+RA25+RA26+RA27+RA28+RA29+RA30+RA31+RA32)/16
トナー粒子10個の円相当径を求め、粒子1個あたりの平均値を計算してトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)とする。
トナー粒子の表面層の平均厚み(Dav.)は以下の方法で求める。
まず、1つのトナー粒子の表面層の平均厚みD(n)を以下の方法で求める。
D(n)=(分割軸上における表面層の厚みの32箇所の合計)/32
平均化するためトナー粒子10個のトナー粒子の表面層の平均厚みD(n)(n=1〜10)を求め、トナー粒子1個あたりの平均値を計算してトナー粒子の表面層の平均厚み
(Dav.)とする。
Dav.={D(1)+D(2)+D(3)+D(4)+D(5)+D(6)+D(7)+D(8)+D(9)+D(10)}/10
[表面層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合]=〔{表面層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である分割軸の数}/32〕×100
この計算をトナー粒子10個に対して行い、得られた10個の表面層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合の平均値を求め、トナー粒子の表面層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合とした。
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以
下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
本発明において、前記式(5)で表される部分構造のうちRfのユニットについては、13C−NMR(固体)測定により確認した。以下に測定条件及び試料調製方法を示す。「13C−NMR(固体)の測定条件」
装置:BRUKER製 AVANCE III 500
プローブ:4mm MAS BB/1H
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分、調製方法は以下)150mgを直径4mmのサンプルチューブに入れる。
測定核周波数:125.77MHz
基準物質:Glycine(外部標準:176.03ppm)
観測幅:37.88kHz
測定法:CP/MAS
コンタクト時間:1.75ms
繰り返し時間:4s
積算回数:2048回
LB値:50Hz
測定試料の調製:トナー粒子10.0gを秤量し、円筒濾紙(東洋濾紙製No.86R)に入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)200mlを用いて20時間抽出し、円筒濾紙中のろ物を40℃で数時間真空乾燥して得られたものをNMR測定用のサンプルとする。
なお、本発明において、トナーに上記有機微粉体又は無機微粉体が外添されている場合は、下記方法によって、該有機微粉体又は無機微粉体を除去し、トナー粒子を得る。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20minで振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて3500rpm、30minの条件で分離する。この操作により、トナー粒子と外れた外添剤が分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥し、トナー粒子を得る。この操作を複数回実施して、必要量を確保する。
Rfが上記式(iii)の場合、ケイ素原子に結合しているメチン基(>CH−Si)に起因するシグナルの有無により、上記式(iii)で表されるユニットの存在を確認した。
Rfが上記式(iv)の場合、ケイ素原子に結合しているメチレン基(Si−CH2−)、エチレン基(Si−C2H4−)、又はフェニレン基(Si−C6H4−)に起因するシグナルの有無により、上記式(iv)で表されるユニットの存在を確認した。
本発明において、トナー粒子のTHF不溶分の29Si−NMR(固体)測定は、以下の測定条件で行った。
「29Si−NMR(固体)の測定条件」
装置:BRUKER製 AVANCE III 500
プローブ:4mm MAS BB/1H
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分)150mgを直径4mmのサンプルチューブに入れる。
測定核周波数:99.36MHz
基準物質:DSS(外部標準:1.534ppm)
観測幅:29.76kHz
測定法:DD/MAS、CP/MAS
29Si 90° パルス幅:4.00μs@−1dB
コンタクト時間:1.75ms〜10ms
繰り返し時間:30s(DD/MASS)、10s(CP/MAS)
積算回数:2048回
LB値:50Hz
上記測定後に、トナー粒子の、置換基及び結合基の異なる複数のシラン成分をカーブフィティングにて下記X1構造、X2構造、X3構造、及びX4構造にピーク分離して、ピークの面積比から各成分のモル%を算出する。
X1構造:(Ri)(Rj)(Rk)SiO1/2 式(6)
X2構造:(Rg)(Rh)Si(O1/2)2 式(7)
X3構造:RmSi(O1/2)3 式(8)
X4構造:Si(O1/2)4 式(9)
なお、本発明では化学シフト値でシランモノマーを特定して、トナー粒子の29Si−NMRの測定において全ピーク面積から未反応のモノマー成分を取り除いたX1構造の面積とX2構造の面積とX3構造の面積とX4構造の面積の合計を重合体の全ピーク面積とした。SX1+SX2+SX3+SX4=1.00
SX1={X1構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX2={X2構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX3={X3構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX4={X4構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
本発明においては、トナー粒子のTHF不溶分の29Si−NMRの測定で得られるチャートにおいて、前記有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する上記式(5)の構造に帰属されるピーク面積の割合が、40%以上であることが好ましい。この測定方法において
、−SiO3/2構造を示す値は上記SX3である。この値が、0.40以上であることが好ましい。
なお、式(5)表される部分構造をさらに詳細に確認する必要がある場合、上記13C−NMR及び29Si−NMRの測定結果と共に1H−NMRの測定結果によって同定してもよい。
樹脂粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、ゼータサイザーNano−ZS(MALVERN社製)を用い、動的光散乱法(DLS:Dynamic Light Scattering)で粒子径を測定することにより算出する。
まず、装置の電源を入れ、レーザーが安定するまで30分待つ。その後、Zetasizerソフトウェアを起動する。
MeasureメニューからManualを選択し、測定の詳細を以下に示すように入力する。
測定モード:粒子径
Material:Polystyrene latex(RI:1.59、Absorption:0.01)
Dispersant:Water(Temperature:25℃、Viscosity:0.8872cP、RI:1.330)
Temperature:25.0℃
Cell:Clear disposable zeta cell
Measurement duration:Automatic
試料は0.50質量%となるように、水で希釈して調製し、ディスポーザブルキャピラリーセル(DTS1060)に充填し、セルを装置のセルホルダに装入する。
以上の準備が終わったら測定表示画面のStartボタンを押し、測定する。
DLS測定から得られる光強度分布をミー理論により変換した体積基準の粒度分布のデータを元に、D50を算出する。
ゼータ電位の測定は、ゼータサイザーNano−ZS(MALVERN社製)を用いて測定する。試料の調製は分散液を0.50質量%となるように水で希釈する。次に固着工程のpHと等しくなるように、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液又は0.1mol/Lの塩酸水溶液で調整する。pHを調整した試料をディスポーザブルキャピラリーセル(DTS1060)に充填し、セルを装置のセルホルダに装入する。準備が終わったら温度条件を固着時の温度にして測定する。
トナー母粒子及びイオン性官能基を有する樹脂を含有する樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)M−DSC(商品名:Q2000、TA−インストルメンツ社製)を用いて、下記手順にて測定する。測定する試料3mgを精秤する。これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲20〜200℃の間で、昇温速度1℃/分、常温常湿下で測定を行う。このときのモジュレーション振幅±0.5℃、周波数1/minで測定する。得られるリバーシングヒートフロー曲線からガラス転移温度(Tg:℃)を計算する。Tgは、吸熱前後のベースラインと吸熱による曲線の接線との交点の中心値をTg(℃)として求めたものである。
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。本発明における酸価は、JIS K 0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
0.1モル/l水酸化カリウムエチルアルコール溶液(キシダ化学社製)を用いて滴定を行う。上記水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクターは、電位差滴定装置(京都電子工業株式会社製 電位差滴定測定装置AT−510)を用いて求めることができる。0.100モル/l塩酸100mlを250mlトールビーカーに取り、上記水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定し、中和に要した上記水酸化カリウムエチルアルコール溶液の量から求める。上記0.100モル/l塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作成されたものを用いる。
下記に酸価測定の際の測定条件を示す。
滴定装置:電位差滴定装置AT−510(京都電子工業株式会社製)
電極:複合ガラス電極ダブルジャンクション型(京都電子工業株式会社製)
滴定装置用制御ソフトウエア:AT−WIN
滴定解析ソフト:Tview
滴定時における滴定パラメーター並びに制御パラメーターは下記のように行う。
滴定パラメーター
滴定モード:ブランク滴定
滴定様式:全量滴定
最大滴定量:20ml
滴定前の待ち時間:30秒
滴定方向:自動
制御パラメーター
終点判断電位:30dE
終点判断電位値:50dE/dmL
終点検出判断:設定しない
制御速度モード:標準
ゲイン:1
データ採取電位:4mV
データ採取滴定量:0.1ml
本試験;
測定サンプル0.100gを250mlのトールビーカーに精秤し、トルエン/エタノール(3:1)の混合溶液150mlを加え、1時間かけて溶解する。上記電位差滴定装置を用い、上記水酸化カリウムエチルアルコール溶液を用いて滴定する。
空試験;
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(3:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C−B)×f×5.611]/S
(式中、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウムエチルアルコール溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウムエチルアルコール溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。)
測定サンプル0.100gを250mlのトールビーカーに精秤し、THF150mlを加え、30分かけて溶解する。この溶液にpH電極を入れ、サンプルのTHF溶液のpHを読み取る。その後、0.1モル/l水酸化カリウムエチルアルコール溶液(キシダ化学社製)を10μlずつ添加し、その都度pHを読み取り滴定を行う。pHが10以上となり、30μl添加してもpHの変化がなくなるまで0.1モル/l水酸化カリウムエチルアルコール溶液を加える。得られた結果から0.1モル/l水酸化カリウムエチルアルコール溶液添加量に対するpHをプロットし、滴定曲線を得る。得られた滴定曲線からpH変化の傾きが一番大きいところを中和点とし、添加した水酸化カリウム量から酸価(mgKOH/g)を算出する。pKaは中和点までに必要とした0.1モル/l水酸化カリ
ウムエチルアルコール溶液量の半分量でのpHと同じ値であるため、滴定曲線から半分量でのpHを読み取る。
重合体Aに含まれる構造aの含有量は核磁気共鳴分光分析(1H−NMR)[400MHz、CDCl3、室温(25℃)]を用いて行う。
測定装置:FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数:64回
得られたスペクトルの積分値から各単量体成分のmol比を求め、これを基に重合体Aに含まれる構造aのmol%を算出する。
(工程1)
2,5−ジヒドロキシ安息香酸100gと80%硫酸1441gとを50℃に加熱混合した。この分散液にtert−ブチルアルコール144gを加えて50℃で30分間撹拌した。その後、この分散液にtert−ブチルアルコール144gを加え30分間撹拌する操作を3回行った。反応液を室温まで冷却し、氷水1kgにゆっくり注いだ。析出物を濾過、水洗し、その後、ヘキサン洗浄した。この析出物をメタノール200mLに溶解させ、水3.6Lに再沈殿させた。濾過後、80℃にて乾燥することで下記構造式(10)に示すサリチル酸中間体74.9gを得た。
得られたサリチル酸中間体25.0gをメタノール150mLに溶解させ、炭酸カリウム36.9gを加えて65℃に加熱した。この反応液に4−(クロロメチル)スチレン18.7gとメタノール100mLの混合液を滴下し、65℃にて3時間反応させた。反応液を冷却後、濾過し、濾液を濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をpH=2の水1.5Lに分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。その後、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。析出物をヘキサン洗浄後、トルエンと酢酸エチルにて再結晶することで精製し、下記構造式(11)に示す重合性単量体M−1を20.1g得た。
構造式(10)のサリチル酸中間体を2,4−ジヒドロキシ安息香酸18gに変更する以外は、重合性単量体M−1の合成(工程2)と同じ方法で、下記構造式(12)の重合性単量体M−2を得た。
構造式(10)のサリチル酸中間体を2,3−ジヒドロキシ安息香酸18gに変更する以外は、重合性単量体M−1の合成(工程2)と同じ方法で、下記構造式(13)の重合性単量体M−3を得た。
構造式(10)のサリチル酸中間体を2,6−ジヒドロキシ安息香酸18gに変更する以外は、重合性単量体M−1の合成(工程2)と同じ方法で、下記構造式(14)の重合性単量体M−4を得た。
tert−ブチルアルコール144gを2−オクタノール253gに変更する以外は、重合性単量体M−1の合成(工程1)と同じ方法で、サリチル酸中間体を得た。ここで得られるサリチル酸中間体32gを用いる以外は、重合性単量体M−1の合成(工程2)と同じ方法で、下記構造式(15)の重合性単量体M−5を得た。
構造式(10)のサリチル酸中間体を2,5−ジヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸22gに変更する以外は、重合性単量体M−1の合成(工程2)と同じ方法で、下記構造式(16)の重合性単量体M−6を得た。
構造式(11)に示す重合性単量体M−1:10.7g、スチレン:59.2gをDMF42.0mlに溶解させ、窒素バブリングをしながら1時間撹拌した後、110℃まで加熱した。この反応液に、開始剤としてtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日本油脂株式会社製、商品名パーブチルI)2.1gとトルエン42mlの混合液を滴下した。更に110℃にて4時間反応した。その後、冷却しメタノール1Lに滴下し、析出物を得た。得られた析出物をTHF120mlに溶解後、メタノール1.80Lに滴下し、白色析出物を析出させ、濾過し、減圧下90℃にて乾燥させることで、重合体A−1を57.6g得た。得られた重合体A−1のNMRと酸価を測定し、重合性単量体M−1に由来する成分の含有量を確認した。
原料の仕込み量を表1のように変更する以外は重合体A−1の合成例と同様にして重合体A−2〜重合体A−8を得た。
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した反応容器にキシレン200部を仕込み、窒素気流下で還流した。
次に、
5−ビニルサリチル酸 9.0質量部スチレン 75.0質量部2−エチルヘキシルアクリレート 16.0質量部ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート) 5.0質量部を混合し、上記反応容器に撹拌しながら滴下し10時間保持した。その後、蒸留を行って溶剤を留去し、減圧下40℃で乾燥し重合体B−1を得た。
重合体B−1の合成例のうち、下記変更以外は同様に合成を行った。
5−ビニルサリチル酸 9.0質量部を
1−ビニルナフタレン−2−カルボン酸 10.9質量部に変更し、重合体B−2を得た。
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を取り付けた反応容器に、
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 500質量部
テレフタル酸 154質量部
フマル酸 45質量部
オクチル酸スズ 2質量部
を投入し、温度230℃で8時間の重縮合反応を行い、さらに、8kPaで1時間にわたって重縮合反応を継続した後、160℃に冷却することにより、ポリエステル樹脂を形成し、次いで、温度160℃の状態でアクリル酸10質量部を投入し、混合させて15分間保持した後、
スチレン 142質量部
n−ブチルアクリレート 35質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルペルオキサイド) 10質量部
の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下した後、温度160℃を維持した状態で1時間にわたって付加重合反応を行った後、200℃に昇温させ、10kPaで1時間保持することにより、重合体B−3を得た。
得られた重合体A−1〜A−8、B−1〜B−3の物性を表1に記載する。
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、メチルエチルケトン200.0質量部を仕込み、重合体A−1を100.0質量部加えて溶解した。
次いで、1.0N水酸化カリウム水溶液をゆっくり加え、10分間撹拌を行った後、イオン交換水500.0質量部をゆっくり滴下し、乳化させた。
得られた乳化物を減圧蒸留して脱溶剤し、イオン交換水を加えて樹脂濃度が20%になるように調製することで、樹脂粒子E−1の水分散体を得た。
得られた樹脂粒子の水分散体の物性値を表2に示す。
重合体A−1と、1.0N水酸化カリウム水溶液の量を表2に示すように変更した以外は、樹脂粒子E−1の製造例と同様にして樹脂粒子E−2〜樹脂粒子E−12の水分散体を得た。
得られた樹脂粒子E−2〜12の水分散体の物性値を表2に示す。
(イソシアネート基含有プレポリマーの合成)
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 725質量部
・フタル酸 290質量部
・ジブチルスズオキサイド 3.0質量部
上記材料を220℃にて撹拌して7時間反応し、さらに減圧下で5時間反応させた後、80℃まで冷却し、酢酸エチル中にてイソホロンジイソシアネート190質量部と2時間反応し、イソシアネート基含有ポリエステル樹脂を得た。イソシアネート基含有ポリエステル樹脂を25質量部とイソホロンジアミン1質量部を50℃で2時間反応させ、ウレア基を含有するポリエステルを主成分とするポリエステル系樹脂を得た。得られたポリエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は22300、数平均分子量(Mn)は2980、ピーク分子量は7200であった。
<トナー1の製造例>
還流管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた4つ口容器中にイオン交換水700質量部と0.1モル/リットルのNa3PO4水溶液1000質量部と1.0モル/リットルのHCl水溶液24.0質量部を添加し、高速撹拌装置T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて12,000rpmで撹拌しながら、60℃に保持した。ここに1.0モル/リットルのCaCl2水溶液85質量部を徐々に添加し、微細な難水溶性分散安定剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。その後、以下の原料を用いて、重合性単量体組成物を作製した。
・スチレンモノマー 75.0質量部
・n−ブチルアクリレート 25.0質量部
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 0.1質量部
・有機ケイ素化合物(ビニルトリエトキシシラン) 10.0質量部
・銅フタロシアニン顔料(ピグメントブルー15:3) 6.5質量部
・離型剤(べヘン酸ベヘニル) 10.0質量部
・ポリエステル系樹脂 5.0質量部
上記原料をアトライタ(日本コークス工業社製)で3時間分散させ、重合性単量体組成物とした。次に、この重合性単量体組成物を別の容器に移し、撹拌しながら60℃で20分保持し、その後、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート 16.0質量部(トルエン溶液50%)を添加し、撹拌しながら5分間保持した。次に、該重合性単量体組成物を水系分散媒体中に投入し、高速撹拌装置で撹拌しながら、10分間造粒した。その後、高速撹拌装置をプロペラ式撹拌器に変えて、内温を70℃に昇温させ、ゆっくり撹拌しながら5時間反応させた(反応1工程)。pHは5.1であった。次に、1.0N−NaOHを加えてpH8.1にし、容器内を温度90℃に昇温して6.5時間維持した(反応2工程)。その後、1.0Nの塩酸を加え、pHを5.1にした。次に、イオン交換水を300質量部添加して、還流管を取り外し、蒸留装置を取り付けた。容器内の温度が100℃の蒸留を5時間行って残存単量体及びトルエンを取り除き、トナー母粒子の分散液を得た(蒸留工程)。上記トナー母粒子の分散液を90℃にし、1.0N−NaOHを加えてpH9.0に調整し、樹脂粒子E−1の水分散体2.5質量部(固形分0.5質量部)を緩やかに添加した。さらに容器内を90℃のまま1.0時間維持した(固着工程)。
30℃に冷却後の上記分散液を含む容器内に10%塩酸を加えてpHを1.0に調整して2時間撹拌することで分散安定剤を溶解した。更に、ろ別、洗浄、乾燥してトナー粒子1を得た。風力分級によって微粗粉をカットし、トナー1とした。得られた粒子の処方及び条件を表3に示し、物性を表6に示した。
実施例1において、表3、表4、及び表5に示した処方及び条件に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー2〜21、24〜27を得た。
得られた粒子の物性を表6、表7及び表8に示した。
<トナー22の製造例>
還流管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた4つ口容器中にイオン交換水700質量部と0.1モル/リットルのNa3PO4水溶液1000質量部と1.0モル/リットルのHCl水溶液24.0質量部を添加し、高速撹拌装置T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて12,000rpmで撹拌しながら、60℃に保持した。ここに1.0モル/リットルのCaCl2水溶液85質量部を徐々に添加し、微細な難水溶性分散安定剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。その後、以下の原料を用いて、重合性単量体組成物を作製した。
・スチレンモノマー 75.0質量部
・n−ブチルアクリレート 25.0質量部
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 0.1質量部
・有機ケイ素化合物(ビニルトリエトキシシラン) 10.0質量部
・銅フタロシアニン顔料(ピグメントブルー15:3) 6.5質量部
・離型剤(べヘン酸ベヘニル) 10.0質量部
・ポリエステル系樹脂 5.0質量部
上記原料をアトライタ(日本コークス工業社製)で3時間分散させ、重合性単量体組成物とした。次に、この重合性単量体組成物を別の容器に移し、撹拌しながら60℃で20分保持し、その後、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート 16.0質量部(トルエン溶液50%)を添加し、撹拌しながら5分間保持した。次に、該重合性単量体組成物を水系分散媒体中に投入し、高速撹拌装置で撹拌しながら、10分間造粒した。その後、高速撹拌装置をプロペラ式撹拌器に変えて、内温を70℃に昇温させ、ゆっくり撹拌しながら5時間反応させた(反応1工程)。pHは5.1であった。次に、1.0N−N
aOHを加えてpH8.1にし、容器内を温度90℃に昇温して6.5時間維持した(反応2工程)。その後、1.0Nの塩酸を加え、pHを5.1にした。次に、イオン交換水を300質量部添加して、還流管を取り外し、蒸留装置を取り付けた。容器内の温度が100℃の蒸留を5時間行って残存単量体及びトルエンを取り除き、トナー母粒子の分散液を得た(蒸留工程)。30℃に冷却後の上記分散液を含む容器内に10%塩酸を加えてpHを1.0に調整して2時間撹拌することで分散安定剤を溶解した。更に、ろ別、洗浄、乾燥して、トナー母粒子を得た。上記トナー母粒子全量に重合体A−2を0.5質量部添加し、乾式粒子複合化装置(ホソカワミクロン製 ノビルタNOB−130)に投入した。処理温度30℃、回転式処理ブレード90m/sec.の条件にて固着を行い、トナー粒子22を得た。その後、風力分級によって微粗粉をカットし、トナー22とした。
物性を表8に示した。
<トナー粒子23の製造例>
還流管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた4つ口容器中にイオン交換水700質量部と0.1モル/リットルのNa3PO4水溶液1000質量部と1.0モル/リットルのHCl水溶液24.0質量部を添加し、高速撹拌装置T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて12,000rpmで撹拌しながら、60℃に保持した。ここに1.0モル/リットルのCaCl2水溶液85質量部を徐々に添加し、微細な難水溶性分散安定剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。その後、以下の原料を用いて、重合性単量体組成物を作製した。
・スチレンモノマー 75.0質量部
・n−ブチルアクリレート 25.0質量部
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 0.1質量部
・有機ケイ素化合物(ビニルトリエトキシシラン) 10.0質量部
・銅フタロシアニン顔料(ピグメントブルー15:3) 6.5質量部
・離型剤(べヘン酸ベヘニル) 10.0質量部
・ポリエステル系樹脂 5.0質量部
上記原料をアトライタ(日本コークス工業社製)で3時間分散させ、重合性単量体組成物とした。次に、この重合性単量体組成物を別の容器に移し、撹拌しながら60℃で20分保持し、その後、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート 16.0質量部(トルエン溶液50%)を添加し、撹拌しながら5分間保持した。次に、該重合性単量体組成物を水系分散媒体中に投入し、高速撹拌装置で撹拌しながら、10分間造粒した。その後、高速撹拌装置をプロペラ式撹拌器に変えて、内温を70℃に昇温させ、ゆっくり撹拌しながら5時間反応させた(反応1工程)。pHは5.1であった。次に、1.0N−NaOHを加えてpH9.0にし、樹脂粒子E−2の水分散体2.5質量部(固形分0.5質量部)を緩やかに添加した。容器内を温度90℃に昇温して6.5時間維持した(反応2工程)。その後、1.0Nの塩酸を加え、pHを5.1にした。次に、イオン交換水を300質量部添加して、還流管を取り外し、蒸留装置を取り付けた。容器内の温度が100℃の蒸留を5時間行って残存単量体及びトルエンを取り除き、トナー粒子の分散液を得た(蒸留工程)。30℃に冷却後の上記分散液を含む容器内に10%塩酸を加えてpHを1.0に調整して2時間撹拌することで分散安定剤を溶解した。更に、ろ別、洗浄、乾燥してトナー粒子23を得た。その後、風力分級によって微粗粉をカットし、トナー23とした。物性を表8に示した。
図2のような構成を有するタンデム方式のキヤノン製レーザービームプリンタLBP9510Cを改造し、シアンステーションだけでプリント可能とした。また、転写電流を任意に設定できるよう改造した。このLBP9510C用トナーカートリッジを用い、トナーを200g充填した。そして、そのトナーカートリッジを低温低湿L/L(10℃/15%RH)の環境下で3日間放置した。この低温低湿L/L環境下で3日間放置後にトナーカートリッジをLBP9510Cに取り付け、1.0%の印字比率の画像をA4用紙横方向で15,000枚までプリントアウトして、初期と15,000枚出力時(耐久後)の転写ラチチュード、画像濃度、及び、帯電性の評価を行った。結果を表5に示す。
初期と15000枚印字後において、転写電流を2〜20μAの間で2μA刻みで変化させ、それぞれにおいてベタ画像を出力し、ベタ画像転写後の感光体上の転写残トナーをマイラーテープでテーピングして剥ぎ取った。その後、該テープとテーピングしていないテープをLETTERサイズのXEROX 4200用紙(XEROX社製、75g/m
2)に貼り付けた。該テープの反射率Ds(%)からテーピングせず貼り付けたテープの反射率Dr(%)を差し引いた数値により転写性を評価した。
この転写性の数値が2.0以下となる転写電流範囲を転写ラチチュードとした。
反射率の測定は、「REFLECTMETER MODEL TC−6DS」(東京電色社製)を用い、アンバーフィルターを装着して測定した。
初期及び15000枚出力後、20mm四方のべた黒画像が紙面の4隅と中央に印字されたサンプル画像を出力して、その5点の平均濃度を測定した。なお、画像濃度は「マクベス反射濃度計RD918」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。
ス電源、15:テンションローラー、16:転写搬送ベルト、17:従動ローラ、18:紙、19:給紙ローラ、20:吸着ローラ、21:定着装置
Claims (6)
- 有機ケイ素重合体及びイオン性官能基を有する樹脂を含有する表面層を有するトナー粒子を有するトナーであって、
該有機ケイ素重合体は、下記式(1)又は(2)で表される部分構造を有し、
該トナー粒子の表面のX線光電子分光分析において、トナー粒子表面の、炭素原子の濃度dC、酸素原子の濃度dO、及びケイ素原子の濃度dSiの合計を100.0atomic%としたときに、該ケイ素原子の濃度dSiが、1.0atomic%以上22.2atomic%以下であり、
該イオン性官能基を有する樹脂のpKa(酸解離定数)が、6.0以上9.0以下であることを特徴とするトナー。
- 前記トナー粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面観察において、前記トナー粒子の断面の最大径である長軸Lの中点を通り、且つ、前記中点における交差角が均等(交差角は11.25°)になるように前記断面を横断する直線を16本ひくことにより前記中点から前記トナー粒子の表面まで32本の線分が形成されたとき、前記32本の線分上において、前記表面層の平均厚みDav.が、5.0nm以上である請求項1に記載のトナー。
- 前記表面層の厚みが2.5nm以下である前記線分の数の割合が、20.0%以下である請求項2に記載のトナー。
- 前記イオン性官能基を有する樹脂のpKa(酸解離定数)が、7.0以上8.5以下である請求項1〜3の何れか一項に記載のトナー。
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