以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、有機ケイ素重合体および樹脂Aを含有するトナー粒子を有するトナーであって、前記有機ケイ素重合体は、下記式(2)又は(3)で表される部分構造を有し、前記トナー粒子の表面のX線光電子分光分析において、前記トナー粒子の表面の、炭素原子の濃度dC、酸素原子の濃度dO、及びケイ素原子の濃度dSiの合計を100.0atomic%としたときに、前記ケイ素原子の濃度dSiが1.0atomic%以上であり、前記樹脂Aは、下記式(1)で表されるイソソルビドユニットを0.10mol%以上30.0mol%以下有する樹脂であることを特徴とする。
(式(3)中のLは、メチレン基、エチレン基またはフェニレン基を表わす。)
本発明のトナーは、広範な環境において帯電量反転成分が効果的に抑制されることで、幅広いバックコントラスト領域でカブリを抑制でき、その効果が耐久を通して持続するトナーを提供できることを特徴としている。
まず、バックコントラストについて説明する。バックコントラストとは、前述の通り、静電荷像担持体の非画像部とトナー担持体あるいは現像剤担持体との電位差のことである。システムにもよるが、おおむね100V前後から200V前後までの間でバックコントラストが設定されている。また、カブリ抑制に非常に重要な制御要素であることから、使用環境や使用枚数を検知して、最適なカブリ抑制を発現できるバックコントラストを設定する制御機構を設けることが通常である。
バックコントラストを小さくしていくと、急激にカブリが増えていくが、これは普通の現象である。バックコントラストが小さくなると、静電荷像担持体と接触したトナーがトナー担持体に戻るためのドライビングフォースが小さくなるからである。よって、一定値以上のバックコントラストが必要である。
一方で、バックコントラストを大きくしていくと、徐々にカブリが増えていく場合がある。場合によってはある値を越えると急激にカブリが悪化することもある。これは、トナーが設計思想と逆極性に帯電しているトナー(このようなトナーを、本明細書においては帯電量反転成分と表現する)が存在するからである。すなわち、帯電量反転成分が効果的に抑制できれば、より幅広いバックコントラスト領域においてカブリを抑制することが可能となる。
一般的に、各種現像部品やトナーが劣化すると、弊害として認識されない程度にカブリを抑制できるバックコントラストの値が狭くなることが指摘できる。例えば、使用初期では、バックコントラストが80Vから300Vの間でカブリが目に見えない、というシステムがあったとする。しかしながら、耐久による各種部品やトナーの劣化が進むと、100Vから130Vの間が使用可能領域であり、その領域を外れるとカブリ弊害として認識されてしまう、という状況が生じる。程度は状況にもよるが、たいていの場合、このような耐久劣化によるバックコントラストの最適値狭化(この現象を、本明細書においてはカブリラチチュードの低下と表現する)は本質的に避けられない。さらには、カブリを抑制できるバックコントラストが設定できないまで劣化が進んだ場合、この弊害を基準として寿命に到達したと判断する場合もある。
また、使用する環境によって、カブリラチチュードが変化する場合もある。低湿環境では、トナーの帯電量がブロードになって帯電量反転成分が増加し、カブリが発生し易いため、狭い範囲でバックコントラストを設定しなければならない場合が存在する。高湿環境では、吸湿により低帯電量のトナーがどうしても生じてしまうため、最適なバックコントラストが限られてしまう場合が存在する。これらの特徴は、トナーを使用する電子写真装置としては極めて一般的である。
帯電量反転成分が効果的に抑制されることで、幅広いバックコントラスト領域でカブリを抑制できるトナーが提供できれば、現像制御装置の簡素化、トナー使用量の削減、クリーニング機構の簡素化あるいはレス化などへ対応が容易となる。
次に、本発明のトナーが、耐久や環境を通して幅広いバックコントラスト領域でカブリを抑制できる理由を考察する。
カブリの原理からすると、帯電量反転成分が抑制された状態が耐久や環境を通して従来以上に維持できれば、カブリラチチュードが広がると考えられる。そこで、トナー担持体上の本発明トナーの帯電量分布を測定すると、帯電量反転成分が極端なまでに少ない訳ではなかった。そこで、種々の検討を実施した結果、本発明のトナーは静電荷像担持体とトナー担持体が最も接近する部位(これを、本明細書においては現像部位と表現する)を通過する前後で、帯電量分布の変化が非常に少ないことが示唆された。一般的に、現像部位をトナーが通過する際、トナーには電荷のやり取りが起こっている。なぜなら、トナー担持体上のトナーが現像部位を通過し、そのトナーが現像されずトナー担持体上に留まっている場合でも、帯電量分布が通過前後で変化することが観察されるからである。最近知られるようになった現象だが、現像部位通過前後で帯電量分布が変わるトナーは、詳細な理由は不明な点が多いが、カブリラチチュードが狭い場合がある。帯電量分布を測定するまでの時間変化により、現像前後の瞬間をとらえることが困難であるため、推定の域を出ないが、以下のようなメカニズムを考えている。
現像部位通過時にトナー帯電量分布の変化が大きく、カブリラチチュードが低下する場合は、現像部位で帯電量反転成分が生じていると考えられる。もし、現像部位でトナー帯電量分布が変化しても、帯電量反転成分が発生しなければ、カブリラチチュードは大きく変わらないと考えられるからである。よって、トナー担持体上の帯電量反転成分がある程度少なく、かつ現像部位で帯電量分布が変化しない(新たに帯電量反転成分が発生しない)状態を、耐久や環境を通して達成できれば、カブリラチチュードの広い状態が維持されるはずである。
本発明のトナーは、上記式(2)又は(3)で表される部分構造を有する有機ケイ素重合体を含有する。有機ケイ素重合体は、Si原子の4個の原子価について、1個は下記式(i)または(ii)と、残り3個はO原子と結合している。
(式(i)、(ii)中の※は、ケイ素原子との結合部である。式(ii)中のLは、メチレン基、エチレン基またはフェニレン基を表わす。)
O原子は、原子価2個がいずれもSiと結合している状態、つまり、シロキサン結合(Si−O−Si)を構成する。有機ケイ素重合体としてのSi原子とO原子を考えると、Si原子2個でO原子3個を有することになるため、−SiO3/2と表現される。この有機ケイ素重合体の−SiO3/2構造は、多数のシロキサン結合で構成されるシリカ(SiO2)と類似の性質を有することが考えられる。従って本発明のトナーは、シリカを表面に添加した場合と似た状況を作り出していると考えられるが、式(i)または(ii)の構造の存在により、シリカとは一部異なる物性を示すと考えられる。
また、本発明のトナーは、上記式(1)で表されるイソソルビドユニットを有する樹脂Aを含有することを特徴とする。従って、この樹脂Aと上記有機ケイ素重合体を共に含んでいることが、帯電量反転成分を効果的に抑制し、幅広いカブリラチチュードを発揮させる重要な因子であると考えられる。そこで、それぞれの役割について考察する。
まず本発明のトナーは、上記式(2)又は(3)で表される部分構造を有する有機ケイ素重合体が、トナー粒子表面に存在する。Si原子の4個の原子価について、1個は上記式(i)または(ii)と結合しているため、酸素密度がシリカよりも小さい。そのため恐らくは、トナー帯電の電荷密度はシリカよりも小さいと思われる。一方で、式(1)で表されるイソソルビドユニットを有する樹脂Aがトナーに含有されている。これは、環状構造物上にエーテル結合を2個有するユニットである。環状であるため、この2個のエーテル基の相対的存在位置は変わらないと考えて良い。つまり、上記式(2)又は(3)で表される部分構造を有する有機ケイ素重合体の酸素が適正な密度であること、相対的存在位置の変わらない2個のエーテル基がトナー粒子中に存在することで、現像部位におけるトナー電荷のやり取りを抑制していると推定している。その結果、現像部位前後で帯電量分布が変化しない(新たに帯電量反転成分が発生しない)トナー、すなわち帯電量反転成分を効果的に抑制し、幅広いカブリラチチュードを発揮することのできるトナーとなる。これを耐久や環境を通して達成したのが、本発明トナーであると、本発明者らは考えている。
本発明のトナーは、上記式(2)又は(3)で表される部分構造(式(3)中のLは、メチレン基、エチレン基またはフェニレン基を表わす。)を有する有機ケイ素重合体を含有する必要がある。
前述の通り、−SiO3/2構造をもった前記有機ケイ素重合体がトナー表層に存在すると、トナー粒子中の樹脂Aの存在と併せて、恐らくは酸素密度が適正化されるため、帯電量反転成分を効果的に抑制することが可能となる。更に、表層に−SiO3/2構造を有することでトナー粒子表面の疎水性を向上させることができ、その結果、トナーの環境安定性を向上させることが可能となる。また、前記有機ケイ素重合体は、上記式(i)又は(ii)で表わされる部分構造を含むことで、ビニル系重合性単量体をはじめとする各種重合性単量体と反応し、炭素結合による有機ネットワークを有する。そのため、前記有機ケイ素重合体を表層にもつトナー粒子は、トナー粒子の表層が、−SiO3/2のシロキサン結合と、上記式(i)又は(ii)で表される炭素結合の両方で架橋された、強固な無機−有機ネットワーク構造を有することになる。従って本発明のトナーは、前記ネットワーク構造を有する表層の存在によって、耐久での摺擦や圧力によるトナー劣化が起こり難くなる。また、本発明の効果を達成するために必須ではないものの、前記各種重合性単量体がトナー母体の構成材料の一つである場合には、上記式(i)または(ii)の構造を介して、トナー内部と表層の結合が生じる。つまり、トナー内部と表層との接着性が強固なものとなり、それによっても、耐久での摺擦や圧力によるトナー劣化が起こり難くなる。つまり耐久において、印刷のプロセススピードを上げたり、印刷枚数を多くしたりしても(これらを、本明細書においては過酷な耐久と表現する)、本発明のトナーは従来よりも劣化が抑制される。以上のことから本発明のトナーは、上記式(2)又は(3)で表わされる部分構造を有するケイ素重合体を含有することで、帯電量反転成分の抑制と広範な環境安定性という効果を、過酷な耐久を通して持続させることが可能となる。
前記有機ケイ素重合体を表層に含有させやすくするために、前記ケイ素重合体の炭素数は少ないことが好ましい。具体的には、式(3)で表わされる部分構造のうち、Lがメチレン基であることが好ましく、より好ましくは式(2)で表わされる部分構造である。前記有機ケイ素重合体1ユニットあたりの炭素数が3以上になると、有機ケイ素重合体の表面析出性の低下が起こり、それに伴ってトナー粒子の被覆性低下が起こる。前記炭素数が多くなるほど表面析出性の低下が顕著になり、被覆性が十分でなくなるため、本発明の十分な効果を発揮させるのが難しくなる。また、式(3)で表わされる部分構造のうち、Lが炭化水素基であることが重要であり、例えばエステル基を含む場合には、エステル結合の結合力が弱いため耐久性が悪化し易い傾向にある。
本発明のトナー粒子の表面のX線光電子分光分析において、前記トナー粒子の表面の、炭素原子の濃度dC、酸素原子の濃度dO、及びケイ素原子の濃度dSiの合計を100.0atomic%としたときに、前記ケイ素原子の濃度dSiが1.0atomic%以上であることも必要である。
通常考えられるトナー粒子の主要原子は、炭素(C)、酸素(O)である。本発明においては、トナー粒子表面にケイ素(Si)原子が存在した場合、式(2)又は(3)で表わされる部分構造に由来する−SiO3/2構造が存在する。X線光電子分光分析は数nmの最表面の元素分析を行うものであり、前記ケイ素原子の濃度dSiが高いほど、トナー粒子表面に本発明の有機ケイ素重合体が多く存在することになる。dSiが1.0atomic%未満であると、トナー粒子表面に十分な量の前記有機ケイ素重合体が存在しないことになる。摩擦帯電はトナー表面で起きるほか、環境安定性もトナー表面の寄与が大きい。そのため、トナー表面に規定量の前記有機ケイ素重合体が存在しないと、前述のような本発明の効果を得ることは困難な場合がある。
前記ケイ素原子の濃度dSiは、より好ましくは9.0atomic%以上である。一方、構造安定性の観点より、28.6atomic%以下であることが好ましい。
また、前記dSiは、有機ケイ素重合体形成時におけるトナー粒子の製造方法、有機ケイ素重合体形成時の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。また、有機ケイ素重合体のモノマー種や量によっても制御することができる。
本発明のトナー粒子は、式(1)で表されるイソソルビドユニットを0.1mol%以上30.0mol%以下有する樹脂Aを含有する必要がある。前述の通り、このユニットは環状構造物上にエーテル結合を2個有しており、環状であるため、この2個のエーテル基の相対的存在位置は変わらない。前記有機ケイ素重合体の存在と併せて、このユニット構造が現像部位におけるトナー電荷のやり取りを抑制し、その結果、現像部位前後で新たに帯電量反転成分が発生しないというメカニズムを推定している。つまり、本発明の効果を発現させる必要条件は、前記有機ケイ素重合体の存在と併せて、樹脂中に式(1)で表されるイソソルビドユニットを0.1mol%以上30.0mol%以下組み込まれた樹脂Aを使用することである。
イソソルビドユニットが0.1mol%未満の場合、樹脂Aのポリマー鎖内のイソソルビドユニットの存在割合が少なすぎるため、帯電量反転成分の抑制効果に寄与する特性が損なわれてしまう。また、イソソルビドユニットは吸湿性を有しており、イソソルビドユニットが30.0mol%を超える場合、樹脂Aの吸湿特性が強く働きすぎるため、高湿環境下でのトナーの帯電量が低下する。恐らくはこの吸湿性が原因で、樹脂Aのイソソルビドユニット量が30.0mol%を超えると、高湿環境におけるカブリラチチュードの低下が起こる。
イソソルビドユニット量は、帯電量反転成分の抑制と環境安定性の観点から、より好ましくは1.00mol%以上21.0mol%以下である。
本発明の有機ケイ素重合体をトナー粒子表面に存在させたときの、さらなる好条件は、トナー粒子の表面層を前記有機ケイ素重合体によって形成させることである。具体的には、前記トナー粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面観察において規定できるが、詳細は後述する。後述の方法により測定された、前記有機ケイ素重合体を含有する表面層の平均厚みDav.は5.0nm以上であることが好ましい。この表面層厚みにより、帯電量反転成分の抑制と広範な環境安定性のみならず、過酷な耐久での摺擦や圧力からトナー粒子をより強固に守ることが出来る。よって、本発明の効果がさらに持続する、すなわち幅広いカブリラチチュードのさらなる維持が可能となる。
より好ましくは、前記平均厚みが10.0nm以上である。一方、前記平均厚みは、高湿環境でのカブリ性能の観点から、150nm以下であることが好ましい。
本発明の有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表面層の厚みが、2.5nm以下である分割軸の数の割合(以下、表面層の厚み2.5nm以下の割合ともいう)が、20.0%以下であることも、さらなる好条件である。この条件は、トナー粒子の表面層のうち少なくとも80.0%以上が、2.5nm以上の前記有機ケイ素重合体を含む表面層で構成されていることを近似している。すなわち、本条件を満たすと、前記有機ケイ素重合体を含む表面層の隙間が少なく、十分にトナー粒子表面を被覆することとなる。そのため、トナー粒子中の樹脂Aの作用と相まって、過酷な耐久や環境を通して帯電量反転成分を効果的に抑制し、幅広いカブリラチチュードを発揮するという本発明の効果を、さらに安定的なものにすることができる。
表面層の厚み2.5nm以下の割合は、より好ましくは10.0%以下である。
本発明の有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子表面層の平均厚みDav.、及び、表面層の厚み2.5nm以下の割合は、有機ケイ素重合体形成時におけるトナー粒子の製造方法、有機ケイ素重合体形成時の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。また、有機ケイ素重合体のモノマー量によっても制御することができる。
本発明のトナー粒子のTHF不溶分の29Si−NMRの測定で得られるチャートにおいて、前記有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する下記式(4)の構造に帰属されるピーク面積の割合が40%以上であることも、さらなる好条件である。
Rf−SiO3/2 式(4)
(式(4)中、Rfは、下記式(i)又は(ii)である。)
(式(i)、(ii)中の※は、ケイ素原子との結合部である。式(ii)中のLは、メチレン基、エチレン基またはフェニレン基を表わす。)
詳細な測定法については後述するが、これは、トナー粒子に含まれる有機ケイ素重合体の中で、−SiO3/2で表される部分構造と上記式(i)又は(ii)で表わされる部分構造の両方を、40.0%以上有していることを近似している。
前述の通り、Si原子の4つの原子価のうち、3つが酸素原子と結合し、さらにそれら酸素原子が別のSi原子と結合することが、−SiO3/2の部分構造の意味である。もし、そのうち酸素1つがシラノール基であったとすると、その有機ケイ素重合体の部分構造はRf−SiO2/2−OHで表現される。さらに、酸素2つがシラノール基であれば、その部分構造はRf−SiO1/2(−OH)2となる。これら構造を比較すると、より多くの酸素原子がSi原子と架橋構造を形成するほうが、SiO2で表わされるシリカ構造に近い。そのため−SiO3/2骨格が多いほど、より硬い性質を示し、耐久性の向上が起こると考えられる。一方で、酸素原子がシラノール基のような形で残り、架橋構造を形成していないと、樹脂的な性質が支配的になり、耐久性の低下が起こると考えられる。更に、親水性も上がるため、環境の影響も受け易くなってしまう。また恐らくは−SiO3/2の部分構造であることにより、トナー粒子中の樹脂Aの作用と相まって、電化密度の適正化が起こると推定している。
また、上記式(i)又は(ii)の部分構造は、ビニル系重合性単量体をはじめとする各種重合性単量体と反応し、架橋構造を形成していることを意味する。そのため、式(4)の構造は、−SiO3/2による無機ネットワークと、上記式(i)又は(ii)による有機ネットワークの両方を有しているといえる。そのため、無機構造と有機構造の結合力が強いトナーとなり、耐久性がさらに向上する。
よって、上記式(4)の構造に帰属されるピーク面積の割合が40%以上であることが、耐久性と環境安定性、電化密度の適正化をさらに向上させるためには、好ましい。
前記ピーク面積の割合は、有機ケイ素重合体形成時におけるトナー粒子の製造方法、有機ケイ素重合体形成時の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
本発明のトナー粒子は、着色剤及び重合性単量体を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で造粒し、前記重合性単量体を重合することによって製造された重合法トナー粒子であればさらに好ましい。
トナー粒子を水系媒体中で製造する場合、有機ケイ素化合物のシラノール基の如き親水基による親水性によって、有機ケイ素化合物をトナー粒子表面に存在させやすい。そのため、有機ケイ素重合体が表層を形成するというコアシェル構造の制御が容易であり、本発明の効果がさらに発揮される。
また、本発明の有機ケイ素重合体を形成する有機ケイ素化合物は、トナー粒子のバインダとなる重合性単量体とともに水系媒体中で重合することによって、上記式(i)又は(ii)で表わされる架橋構造を、前記重合性単量体とも形成し易くなる。それによって、トナー粒子の内部と表層との接着性がより強固なものとなり、本発明における帯電量反転成分抑制効果の耐久持続性がさらに向上する。
なお、本発明に用いられる有機ケイ素重合体は、下記式(5)で表される構造を有する有機ケイ素化合物を重合して得られる有機ケイ素重合体であることが好ましい。
(式(5)中、Rfは上記式(i)又は(ii)を表わし、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、アセトキシ基又はアルコキシ基を表す。)
上記R1乃至R3の反応基が、加水分解、付加重合及び縮合重合することで、シロキサン結合(Si−O−Si)による架橋構造を形成する。重合条件のコントロール性とシロキサン構造の形成し易さから、R1乃至R3の反応基は、加水分解性が室温で穏やかなアルコキシ基が好ましい。さらに、有機ケイ素重合体のトナー粒子表面への析出性と被覆性の観点から、メトキシ基やエトキシ基がより好ましい。なお、R1乃至R3の加水分解、付加重合及び縮合重合は反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
本発明の樹脂Aは、ポリエステル樹脂であることが好適である。アルコールと酸との重縮合で得られるポリエステル樹脂において、アルコール成分としてイソソルビドを用いることで、容易にイソソルビドユニットを樹脂中に導入することが出来るからである。
イソソルビド以外の二価アルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの如きビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールの如き脂肪族系のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールAの如きビスフェノールA類が挙げられる。
三価以上のアルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
また、ポリエステル樹脂を形成するために用いられる酸成分としては下記のものが挙げられる。
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びピロメリット酸の如き芳香族多価カルボン酸;フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、コハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸の如き炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸の脂肪族多価カルボン酸;それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜8)エステル。
それらの中でも特に、ビスフェノール誘導体をアルコール成分とし、二価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルを酸成分として、これらを縮重合して得られるポリエステル樹脂を好ましく用いることができる。本発明において、樹脂Aの含有量は、トナー粒子中の樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上40.0質量部以下であることが好ましい。
本発明の有機ケイ素重合体の代表的な製造例としては、ゾルゲル法と呼ばれる製造方法が挙げられる。ゾルゲル法は、金属アルコキシドM(OR)n(M:金属、O:酸素、R:炭化水素、n:金属の酸化数)を出発原料に用いて、溶媒中で加水分解及び縮合重合させ、ゾル状態を経て、ゲル化する方法であり、ガラス、セラミックス、有機−無機ハイブリット、ナノコンポジットの合成に用いられる。この製造方法によれば、表層、繊維、バルク体、微粒子といった種々の形状の機能性材料を液相から低温で作製することができる。
トナー粒子の表層は、具体的には、アルコキシシランに代表される有機ケイ素化合物の加水分解重縮合によって生成される。この表層をトナーの粒子の表面に均一に設けることによって、従来のトナーで行なわれているような無機微粒子の固着や付着を行わなくても、環境安定性が向上し、かつ、長期使用時におけるトナーの性能低下が生じにくく、保存安定性に優れたトナーが得られる。
さらに、ゾルゲル法は、溶液から出発し、その溶液をゲル化することによって材料を形成しているため、様々な微細構造及び形状をつくることができる。特に、トナー粒子が水系媒体中で製造される場合には、有機ケイ素化合物のシラノール基の如き親水基による親水性によってトナー粒子表面に存在させやすい。しかし、有機ケイ素化合物の疎水性が大きすぎる場合(例えば、有機ケイ素化合物が疎水性の高い官能基を有する場合)、トナー粒子の表層に有機ケイ素化合物を析出させにくくなるため、その結果、トナー粒子は有機ケイ素重合体を含有する表層を形成しにくくなる。一方で、有機ケイ素化合物の疎水性が小さすぎる場合、トナー粒子の表層に有機ケイ素重合体が含有されていたとしても、トナーの帯電安定性が悪くなる傾向がある。微細構造及び形状は反応温度、反応時間、反応溶媒、pHや有機ケイ素化合物の種類及び添加量などによって調整することができる。
前記有機ケイ素重合体を得るには、前記式(2)又は(3)で表わされる構造を有する有機ケイ素化合物を1種以上用いる必要がある。前記式(2)又は(3)で表わされる構造を有する化合物としては以下のものが挙げられる。ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジエトキシメトキシシラン、ビニルエトキシジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメトキシジクロロシラン、ビニルエトキシジクロロシラン、ビニルジメトキシクロロシラン、ビニルメトキシエトキシクロロシラン、ビニルジエトキシクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジアセトキシメトキシシラン、ビニルジアセトキシエトキシシラン、ビニルアセトキシジメトキシシラン、ビニルアセトキシメトキシエトキシシラン、ビニルアセトキシジエトキシシラン、ビニルトリヒドロキシシラン、ビニルメトキシジヒドロキシシラン、ビニルエトキシジヒドロキシシラン、ビニルジメトキシヒドロキシシラン、ビニルエトキシメトキシヒドロキシシラン、ビニルジエトキシヒドロキシシラン、の如き三官能性のビニルシラン;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルジエトキシメトキシシラン、アリルエトキシジメトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルメトキシジクロロシラン、アリルエトキシジクロロシラン、アリルジメトキシクロロシラン、アリルメトキシエトキシクロロシラン、アリルジエトキシクロロシラン、アリルトリアセトキシシラン、アリルジアセトキシメトキシシラン、アリルジアセトキシエトキシシラン、アリルアセトキシジメトキシシラン、アリルアセトキシメトキシエトキシシラン、アリルアセトキシジエトキシシラン、アリルトリヒドロキシシラン、アリルメトキシジヒドロキシシラン、アリルエトキシジヒドロキシシラン、アリルジメトキシヒドロキシシラン、アリルエトキシメトキシヒドロキシシラン、アリルジエトキシヒドロキシシラン、の如き三官能性のアリルシラン;p−スチリルトリメトキシシラン。有機ケイ素化合物は単独で用いても、或いは2種類以上を複合して用いてもよい。
前記式(2)又は(3)を満たす有機ケイ素化合物の含有量は、有機ケイ素重合体中の50モル%以上が好ましく、より好ましくは60モル%以上である。前記式(1)を満たす有機ケイ素化合物の含有量を50モル%以上とすることによって、更に帯電量反転成分抑制効果の耐久持続性を向上させることができる。
また、前記式(2)又は(3)の構造を有する有機ケイ素化合物と共に、一分子中に4つの反応基を有する有機ケイ素化合物(四官能性シラン)、一分子中に3つの反応基を有する有機ケイ素化合物(三官能性シラン)、一分子中に2つの反応基を有する有機ケイ素化合物(二官能性シラン)または1つの反応基を有する有機ケイ素化合物(一官能性シラン)を併用して得られた有機ケイ素重合体を用いてもよい。併用してもよい有機ケイ素化合物としては以下のようなものが挙げられる。メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルメトキシジクロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシラン、の如き三官能性のメチルシラン;エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、の如き三官能性のエチルシラン;プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン、の如き三官能性のプロピルシラン;ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシシラン、の如き三官能性のブチルシラン;ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリヒドロキシシラン、の如き三官能性のヘキシルシラン;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシランの如き三官能性のフェニルシラン;ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、トリメチルシリルクロライド、トリエチルシリルクロライド、トリイソプロピルシリルクロライド、t−ブチルジメチルシリルクロライド、N,N‘−ビス(トリメチルシリル)ウレア、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフロロアセトアミド、トリメチルシリルトリフロロメタンスルホネート、1,3−ジクロロ−1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサン、トリメチルシリルアセチレン、ヘキサメチルジシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、テトライソシアネートシラン、メチルトリイソシアネートシラン、ビニルトリイソシアネートシラン。
一般的に、ゾルゲル反応では、反応媒体の酸性度によって生成するシロキサン結合の結合状態が異なることが知られている。具体的には、反応媒体が酸性である場合には、水素イオンが一つの反応基(例えばアルコキシ基(−OR基))の酸素に親電子的に付加する。次に、水分子中の酸素原子がケイ素原子に配位して、置換反応によってヒドロキシ基になる。水が十分に存在している場合には、H+ひとつで反応基(例えばアルコキシ基−OR基)の酸素をひとつ攻撃するため、反応の進行に伴って媒体中のH+の含有率および反応基が少なくなると、ヒドロキシ基への置換反応が遅くなる。よって、シランに付いた反応基のすべてが加水分解する前に重縮合反応が生じ、比較的容易に、一次元的な線状高分子や二次元的な高分子が生成し易い。
一方、媒体がアルカリ性の場合には、水酸化物イオンがケイ素に付加して5配位中間体を経由する。そのため全ての反応基(例えばアルコキシ基−OR基)が脱離しやすくなり、容易にシラノール基に置換される。特に、同一シランに3個以上の反応基を有するケイ素化合物を用いた場合には、加水分解及び重縮合が3次元的に生じて、3次元の架橋結合の多い有機ケイ素重合体が形成される。また、反応も短時間で終了する。
従って、有機ケイ素重合体を形成するには、反応媒体がアルカリ性の状態でゾルゲル反応を進めることが好ましく、水系媒体中で製造する場合には、具体的には、pH8.0以上であることが好ましい。これによって、より強度の高い、耐久性に優れた有機ケイ素重合体を形成することができる。また、ゾルゲル反応は、反応温度85℃以上、かつ、反応時間5時間以上で行うことが好ましい。このゾルゲル反応を上記反応温度及び反応時間で行うことによって、トナー粒子表面のゾルやゲルの状態のシラン化合物同士が結合した合一粒子の形成を抑制することができる。
以下、本発明トナーの具体的製造方法について説明するが、これらに限定されるわけではない。
第一製法としては、重合性単量体、着色剤、樹脂A及び有機ケイ素化合物を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で造粒し、前記重合性単量体を重合することによって本発明のトナー粒子を得る方法(以下、懸濁重合法とも称する)である。このトナー粒子は、トナー表面近傍に有機ケイ素化合物がトナー表面に析出した状態で重合されるため、トナー粒子表面に有機ケイ素重合体を含む層を形成させることが出来る。また、有機ケイ素化合物が均一に析出し易い利点が挙げられる。一方で、樹脂Aは有機ケイ素化合物よりも粒子の内側に閉じ込められる。このような懸濁重合法は、トナー粒子表面の有機ケイ素重合体を含む層の均一性の観点から、最も好ましい製法である。
第二製法としては、トナー母体を得てから水系媒体中で有機ケイ素重合体の表層を形成する方法である。トナー母体は、樹脂A、結着樹脂及び着色剤を溶融混練し、粉砕して得ても良く、樹脂Aを含む結着樹脂粒子、及び着色剤粒子を、水系媒体中で凝集し、会合して得ても良い。また、樹脂A、結着樹脂及び着色剤を、有機溶媒に溶解し製造された有機相分散液を、水系媒体中に懸濁、造粒、重合した後に有機溶媒を除去して得ても良い。
第三製法としては、樹脂A、結着樹脂、有機ケイ素化合物及び着色剤を、有機溶媒に溶解し製造された有機相分散液を、水系媒体中に懸濁、造粒、重合した後に有機溶媒を除去してトナー粒子を得る方法である。この方法においても、トナー粒子表面近傍に有機ケイ素化合物がトナー表面に析出した状態で重合される。
第四製法としては、樹脂Aを含む結着樹脂粒子、着色剤粒子、及びゾルまたはゲル状態の有機ケイ素化合物含有粒子を、水系媒体中で凝集し、会合してトナー粒子を形成する方法である。
第五製法としては、トナー母体の表面に有機ケイ素化合物を有する溶媒をスプレードライ法によりトナー母体表面に噴射し、熱風及び冷却により表面を重合又は乾燥させて、有機ケイ素化合物含有の表層を形成する方法である。トナー母体は、樹脂A、結着樹脂及び着色剤を溶融混練し、粉砕して得ても良く、樹脂Aを含む結着樹脂粒子、及び着色剤粒子を、水系媒体中で凝集し、会合して得ても良い。また、樹脂A、結着樹脂及び着色剤を、有機溶媒に溶解し製造された有機相分散液を、水系媒体中に懸濁、造粒、重合した後に有機溶媒を除去して得ても良い。
本発明において好ましい水系媒体とは、以下のものが挙げられる。水、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、これらの混合溶媒が挙げられる。
トナー粒子の製造方法として、上述した製造方法の中でも、第一製法である懸濁重合法が好ましい。懸濁重合法では有機ケイ素重合体がトナー粒子の表面に均一に析出し易く、トナー粒子の表層と内部との接着性に優れ、環境安定性、帯電量反転成分抑制効果、及びそれらの耐久持続性が良好になる。以下、懸濁重合法についてさらに説明する。
上記重合性単量体組成物には、必要に応じて離型剤、その他の樹脂を添加してもよい。また、重合工程終了後は、生成した粒子を洗浄、濾過により回収し、乾燥してトナー粒子を得る。なお、上記重合工程の後半に昇温しても良い。更に未反応の重合性単量体又は副生成物を除去する為に、重合工程後半又は重合工程終了後に一部分散媒体を反応系から留去することも可能である。
上記離型剤としては、以下のものが挙げられる。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムの如き石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレンの如きポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックス及びその誘導体、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸の如き脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス、シリコ−ン樹脂。なお、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。単独或いは混合して使用できる。
上記その他の樹脂として、本発明の効果に影響を与えない範囲で、以下の樹脂を用いることができる。ポリスチレン、ポリビニルトルエンの如きスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリ酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体の如きスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂。単独或いは混合して使用できる。
上記懸濁重合法における重合性単量体として、上記式(2)又は(3)で表わされる構造を有する有機ケイ素化合物の他に、以下に示すビニル系重合性単量体が好適に例示できる。スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチル、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンの如きスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、蟻酸ビニルの如きビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン。
これらのビニル重合体の中でも、スチレン重合体、スチレン−アクリル共重合体またはスチレン−メタクリル共重合体が好ましい。上記式(2)又は(3)で表わされる構造を有する有機ケイ素重合体との接着性が良好になり、帯電量反転成分抑制効果及びその耐久持続性が良化する。
また、重合性単量体の重合に際して、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビス−(2,4−ジバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系、又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドの如き過酸化物系重合開始剤。これらの重合開始剤は、重合性単量体に対して0.5乃至30.0質量%の添加が好ましく、単独でも又は併用してもよい。
また、トナー粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合性単量体の重合に際して、連鎖移動剤を添加してもよい。好ましい添加量としては、重合性単量体の0.001乃至15.000質量%である。
一方、トナー粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合性単量体の重合に際して、架橋剤を添加してもよい。架橋性単量体としては、以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA 日本化薬)、及び以上のアクリレートをメタクリレートに変えたもの。
多官能の架橋性単量体としては以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシ・ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアクリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリールクロレンデート。好ましい添加量としては、重合性単量体に対して0.001乃至15.000質量%である。
上記懸濁重合の際に用いられる媒体が水系媒体の場合には、重合性単量体組成物の粒子の分散安定剤として以下のものを使用することができる。リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ。また、有機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン。
また、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。このような界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム。
本発明のトナーに用いられる着色剤としては、特に限定されず、以下に示す公知のものを使用することが出来る。
黄色顔料としては、黄色酸化鉄、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどの縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。具体的には以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180。
橙色顔料としては以下のものが挙げられる。パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK。
赤色顔料としては、ベンガラ、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドC、レーキッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリラントカーミン3B、エオキシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキなどの縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、、254。
青色顔料としては、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBGなどの銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66。
紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。
緑色顔料としては、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGが挙げられる。白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛が挙げられる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、非磁性フェライト、マグネタイト、上記黄色系着色剤、赤色系着色剤及び青色系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。これらの着色剤は、単独又は混合して、更には固溶体の状態で用いることが出来る。
なお、着色剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100質量部に対して3.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましい。
本発明のトナーには、トナー製造時に荷電制御剤を用いることができ、公知のものが使用できる。これらの荷電制御剤の添加量としては、結着樹脂又は重合性単量体100質量部に対して、0.01質量部以上10.00質量部以下であることが好ましい。
本発明のトナーは、必要に応じて、トナー粒子に各種有機又は無機微粉体を外添しても良い。該有機又は無機微粉体は、トナー粒子に添加した時の耐久性から、トナー粒子の重量平均粒径の1/10以下の粒径であることが好ましい。
有機又は無機微粉体としては、例えば、以下のようなものが用いられる。
(1)流動性付与剤:シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック及びフッ化カーボン。
(2)研磨剤:金属酸化物(例えばチタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化クロム)、窒化物(例えば窒化ケイ素)、炭化物(例えば炭化ケイ素)、金属塩(例えば硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム)。
(3)滑剤:フッ素系樹脂粉末(例えばフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム)。
(4)荷電制御性粒子:金属酸化物(例えば酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ)、カーボンブラック。
有機又は無機微粉体は、トナーの流動性の改良及びトナー粒子の帯電均一化のためにトナー粒子の表面を処理することもできる。有機又は無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独であるいは併用して用いられても良い。
以下、本発明に関係する各種測定方法を述べる。
<トナー粒子表面に存在するケイ素原子の濃度(atomic%)>
本発明におけるトナー粒子表面に存在するケイ素原子の濃度(atomic%)は、X線光電子分光分析(ESCA)により表面組成分析を行い算出した。
本発明では、ESCAの装置および測定条件は、下記の通りである。
使用装置:ULVAC−PHI社製 Quantum2000
X線光電子分光装置測定条件: X線源 Al Kα
X線:100μm 25W 15kV
ラスター:300μm×200μm
PassEnergy:58.70eV StepSize:0.125eV
中和電子銃:20μA、1V Arイオン銃:7mA、10V
Sweep数:Si 15回、C 10回
本発明では、測定された各原子のピーク強度から、PHI社提供の相対感度因子を用いて表面原子濃度(atomic%)を算出した。
<透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナー粒子の断面観察によって測定される、トナー粒子の表面層の平均厚みDav.及び表面層の厚みが2.5nm以下の割合の測定方法>
本発明において、トナー粒子の断面観察は以下の方法により行う。
トナー粒子の断面を観察する具体的な方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナー粒子を十分分散させた後、40℃の雰囲気下で2日間硬化させる。得られた硬化物からダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い薄片状のサンプルを切り出す。このサンプルを透過型電子顕微鏡(FEI社製電子顕微鏡Tecnai TF20XT)(TEM)で1万〜10万倍の倍率に拡大し、トナー粒子の断面を観察する。
本発明においては、用いる樹脂と有機ケイ素化合物の中の原子の原子量の違いを利用し、原子量が大きいとコントラストが明るくなることを利用して確認を行っている。さらに、材料間のコントラストを付けるためには四酸化ルテニウム染色法及び四酸化オスミウム染色法を用いてもよい。
当該測定に用いた粒子は、上記TEMの顕微鏡写真より得られたトナー粒子の断面から円相当径Dtemを求め、その値が後述の方法により求めたトナー粒子の重量平均粒径D4の±10%の幅に含まれるものとした。
上述のように、FEI社製電子顕微鏡Tecnai TF20XTを用い、加速電圧200kVでトナー粒子断面の明視野像を取得する。次にGatan社製EELS検出器GIF Tridiemを用い、Three Window法によりSi−K端(99eV)のEFマッピング像を取得して表面層に有機ケイ素重合体が存在することを確認する。
次いで、円相当径Dtemがトナー粒子の重量平均粒径D4の±10%の幅に含まれるトナー粒子1個について、トナー粒子断面の最大径である長軸Lと、長軸Lの中点を通りかつ垂直な軸L90の交点を中心にして、前記断面を横断する直線を16本引くことにより、トナー粒子断面を均等(交差角は11.25°)に16分割する(図1参照)。次に、該中心からトナー粒子の表層へ向かう線分(分割軸)をそれぞれAn(n=1乃至32)、分割軸の長さをRAn、有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表面層の厚みをFRAnとする。
そして、該分割軸上の32箇所の有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表面層の平均厚みDav.を求める。さらに、32本存在する各分割軸上における有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表面層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合を求める。
本発明では、平均化するため、トナー粒子10個の測定を行い、トナー粒子1個あたりの平均値を計算した。
[透過型電子顕微鏡(TEM)写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)]
TEM写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)は以下の方法で求める。まず、1つのトナー粒子に対して、TEM写真より得られるトナー粒子の断面から求めた円相当径Dtemを下記式に従って求める。
[TEM写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)]=(RA1+RA2+RA3+RA4+RA5+RA6+RA7+RA8+RA9+RA10+RA11+RA12+RA13+RA14+RA15+RA16+RA17+RA18+RA19+RA20+RA21+RA22+RA23+RA24+RA25+RA26+RA27+RA28+RA29+RA30+RA31+RA32)/16
トナー粒子10個の円相当径を求め、粒子1個あたりの平均値を計算してトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)とする。
[トナー粒子の表面層の平均厚み(Dav.)]
トナー粒子の表面層の平均厚み(Dav.)は以下方法で求める。
まず、1つのトナー粒子の表面層の平均厚みD(n)を以下の方法で求める。
D(n)=(分割軸上における表面層の厚みの32箇所の合計)/32
平均化するためトナー粒子10個のトナー粒子の表面層の平均厚みD(n)(n=1乃至10)を求め、トナー粒子1個あたりの平均値を計算してトナー粒子の表面層の平均厚み(Dav.)とする。
Dav.={D(1)+D(2)+D(3)+D(4)+D(5)+D(6)+D(7)+D(8)+D(9)+D(10)}/10
[表面層の厚み2.5nm以下の割合]
[表面層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合]=〔{表面層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である分割軸の数}/32〕×100
この計算をトナー粒子10個に対して行い、得られた10個の表面層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合の平均値を求め、トナー粒子の表面層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合とした。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
<式(4)で表わされる部分構造の確認方法>
本発明において、下記式(4)で表わされる部分構造のうちRfのユニットについては、13C−NMR(固体)測定により確認した。以下に測定条件及び試料調製方法を示す。
Rf−SiO3/2 式(4)
(式(4)中、Rfは、下記式(i)又は(ii)である。)
(式(i)、(ii)中の※は、ケイ素原子との結合部である。式(ii)中のLは、メチレン基、エチレン基またはフェニレン基を表わす。)
「13C−NMR(固体)の測定条件」
装置:BRUKER製 AVANCEIII 500
プローブ:4mm MAS BB/1H
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分、調製方法は以下)150mgを直径4mmのサンプルチューブに入れる。
測定核周波数:125.77MHz
基準物質:Glycine(外部標準:176.03ppm)
観測幅:37.88kHz
測定法:CP/MAS
コンタクト時間:1.75ms
繰り返し時間:4s
積算回数:2048回
LB値:50Hz
「試料調製方法」
測定試料の調製:トナー粒子10.0gを秤量し、円筒濾紙(東洋濾紙製No.86R)に入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)200mlを用いて20時間抽出し、円筒濾紙中のろ物を40℃で数時間真空乾燥して得られたものをNMR測定用のサンプルとする。
なお、本発明において、トナーに上記有機微粉体又は無機微粉体が外添されている場合は、下記方法によって、該有機微粉体又は無機微粉体を除去し、トナー粒子を得る。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20minで振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて3500rpm、30minの条件で分離する。この操作により、トナー粒子と外れた外添剤が分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥し、トナー粒子を得る。この操作を複数回実施して、必要量を確保する。
Rfが上記式(i)の場合、ケイ素原子に結合しているメチン基(>CH−Si)に起因するシグナルの有無により、上記式(i)で表わされるユニットの存在を確認した。
Rfが上記式(ii)の場合、ケイ素原子に結合しているメチレン基(Si−CH2−)、エチレン基(Si−C2H4−)、又はフェニレン基(Si−C6H4−)に起因するシグナルの有無により、上記式(ii)で表わされるユニットの存在を確認した。
<トナー粒子のTHF不溶分の29Si−NMRにおいて測定される、式(4)の構造に帰属されるピーク面積の割合の測定方法>
本発明において、トナー粒子のTHF不溶分の29Si−NMR(固体)測定は、以下の測定条件で行った。
「29Si−NMR(固体)の測定条件」
装置:BRUKER製 AVANCEIII 500
プローブ:4mm MAS BB/1H
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分)150mgを直径4mmのサンプルチューブに入れる。
測定核周波数:99.36MHz
基準物質:DSS(外部標準:1.534ppm)
観測幅:29.76kHz
測定法:DD/MAS、CP/MAS
29Si 90° パルス幅:4.00μs@−1dB
コンタクト時間:1.75ms〜10ms
繰り返し時間:30s(DD/MASS)、10s(CP/MAS)
積算回数:2048回
LB値:50Hz
上記測定後に、トナー粒子の、置換基及び結合基の異なる複数のシラン成分をカーブフィティングにて下記X1構造、X2構造、X3構造、及びX4構造にピーク分離して、ピークの面積比から各成分のモル%を算出する。
X1構造:(Ri)(Rj)(Rk)SiO1/2 式(6)
X2構造:(Rg)(Rh)Si(O1/2)2 式(7)
X3構造:RmSi(O1/2)3 式(8)
X4構造:Si(O1/2)4 式(9)
(式(6)、(7)及び(8)中のRi、Rj、Rk、Rg、Rh、Rmはケイ素に結合している有機基、ハロゲン原子、水酸基またはアルコキシ基を示す。)
なお、本発明では化学シフト値でシランモノマーを特定して、トナー粒子の29Si−NMRの測定において全ピーク面積から未反応のモノマー成分を取り除いたX1構造の面積とX2構造の面積とX3構造の面積とX4構造の面積の合計を重合体の全ピーク面積とした。SX1+SX2+SX3+SX4=1.00
SX1={X1構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX2={X2構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX3={X3構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX4={X4構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
本発明においては、トナー粒子のTHF不溶分の29Si−NMRの測定で得られるチャートにおいて、前記有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する上記式(4)の構造に帰属されるピーク面積の割合が、40%以上であることを特徴とする。この測定方法において、−SiO3/2構造を示す値は上記SX3である。この値が0.40以上であることが本発明の条件である。
なお、式(4)表わされる部分構造をさらに詳細に確認する必要がある場合、上記13C−NMR及び29Si−NMRの測定結果と共に1H−NMRの測定結果によって同定してもよい。
以下、具体的な製造例、実施例、比較例をもって本発明をさらに詳細に説明するが、これは本発明を何ら限定するものではない。
<樹脂A−1の製造例>
無水トリメリット酸以外の原材料モノマーを表1に示した仕込み量で混合した混合物100質量部と、触媒としてジ(2−エチルヘキサン酸)錫0.52質量部を、窒素導入ライン、脱水ライン、撹拌機を装備した重合タンクに入れ、窒素雰囲気下、200℃で6時間かけて重縮合反応を行った。更に、210℃に昇温し、無水トリメリット酸を添加して、40kPaの減圧下にて縮合反応を行った。この樹脂を樹脂A−1とする。
なお、表中のイソソルビドとは、下記式(10)の構造を持つ化合物である。
<樹脂A−2〜7の製造例>
表1の原材料モノマー仕込み量にて、樹脂A−1と同様の操作を行い、樹脂A−2〜7を製造した。
<ポリエステル系樹脂(1)の製造例>
・テレフタル酸 :11.1mol
・ビスフェノールA−プロピレンオキシド2モル付加物(PO−BPA):10.9mol
上記単量体をエステル化触媒とともにオートクレーブに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置をオートクレーブに装着し、窒素雰囲気下、減圧しながら、常法に従って215℃でTgが70℃になるまで反応を行い、ポリエステル系樹脂1を得た。重量平均分子量(Mw)は7,940、数平均分子量(Mn)は3,130であった。
<ポリエステル系樹脂(2)の製造例>
(イソシアネート基含有プレポリマーの合成)
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 725質量部
・フタル酸 285質量部
・ジブチルチンオキサイド 2.5質量部
上記材料を220℃にて撹拌して7時間反応し、更に減圧下で5時間反応させた後、80℃まで冷却し、酢酸エチル中にてイソホロンジイソシアネート190質量部と2時間反応し、イソシアネート基含有ポリエステル樹脂を得た。イソシアネート基含有ポリエステル樹脂を25質量部とイソホロンジアミン1質量部を50℃で2時間反応させ、ウレア基を含有するポリエステルを主成分とするポリエステル系樹脂(2)を得た。得られたポリエステル系樹脂(2)の重量平均分子量(Mw)は23,440、数平均分子量(Mn)は3,030、ピーク分子量は6,800であった。
<荷電制御樹脂1の製造例>
還流管、撹拌機、温度計、窒素導入管、滴下装置及び減圧装置を備えた反応容器に、溶媒としてメタノール250質量部、2−ブタノン145質量部及び2−プロパノール100質量部、単量体としてスチレン85質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル6.0質量部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸6.5質量部を添加して撹拌しながら常圧の還流下で加熱した。重合開始剤である2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.0質量部を2−ブタノン18質量部で希釈した溶液を30分かけて滴下して5時間撹拌を継続した。更に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.0質量部を2−ブタノン20質量部で希釈した溶液を30分かけて滴下して、更に常圧の還流下で5時間撹拌して重合を終了した。
次に、重合溶媒を減圧留去した後に得られた重合体を150メッシュのスクリーンを装着したカッターミルにて100μm以下に粗粉砕し、さらにジェットミルにより微粉砕した。その微粉体を250メッシュの篩により分級し、60μm以下の粒子を分別して得た。次に該粒子を10%の濃度になるようにメチルエチルケトンを加え溶解し、得られた溶液をメチルエチルケトンの20倍量のメタノール中に徐々に投じ再沈殿した。得られた沈殿物を再沈殿に使用した量の2分の1のメタノールで洗浄し、ろ過した粒子を35℃にて48時間真空乾燥した。
さらに前述の真空乾燥後の粒子を10%の濃度になるようにメチルエチルケトンを加え再溶解し、得られた溶液をメチルエチルケトンの20倍量のn−ヘキサン中に徐々に投じ再沈殿した。得られた沈殿物を再沈殿に使用した量の2分の1のn−ヘキサンで洗浄し、ろ過した粒子を35℃にて48時間真空乾燥した。こうして得られた荷電制御樹脂はTgが約83℃であり、メインピーク分子量(Mp)が20,300、数平均分子量(Mn)が12,900、重量平均分子量(Mw)が22,200であり、酸価は20.1mgKOH/gであった。得られた樹脂を荷電制御樹脂1とする。
<トナー粒子1の製造例>
還流管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた4つ口容器中にイオン交換水700質量部と0.1モル/リットルのNa3PO4水溶液1000質量部と1.0モル/リットルのHCl水溶液24.0質量部を添加し、高速撹拌装置T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて12,000rpmで撹拌しながら、60℃に保持した。ここに1.0モル/リットルのCaCl2水溶液85質量部を徐々に添加し、微細な難水溶性分散安定剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。その後、
・スチレンモノマー 76.0質量部
・n−ブチルアクリレート 24.0質量部
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 0.1質量部
・有機ケイ素化合物(ビニルトリエトキシシラン) 15.0質量部
・銅フタロシアニン顔料(ピグメントブルー15:3) 6.5質量部
・樹脂A−1 5.0質量部
・荷電制御樹脂1 0.4質量部
・荷電制御剤(3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸のアルミニウム化合物)
0.4質量部
・離型剤(べヘン酸ベヘニル) 10.0質量部
上記原料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)で3時間分散させ、重合性単量体組成物とした。次に、この重合性単量体組成物を別の容器に移し、撹拌しながら60℃で20分保持し、その後、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート 16.0質量部(トルエン溶液50%)を添加し、撹拌しながら5分間保持した。
次に、該重合性単量体組成物を上記水系分散媒体中に投入し、高速撹拌装置で撹拌しながら、10分間造粒した。その後、高速撹拌装置をプロペラ式撹拌器に変えて、内温を70℃に昇温させ、ゆっくり撹拌しながら5時間反応させた(反応1工程)。pHは5.1であった。次に、1.0N−NaOH 10.0質量部加えてpH8.1にし、容器内を温度90℃に昇温して5.0時間維持した(反応2工程)。その後、10%塩酸 4.0質量部をイオン交換水 50質量部に加え、pHを5.1にした。次に、イオン交換水を300質量部添加して、還流管を取り外し、蒸留装置を取り付けた。容器内の温度が100℃の蒸留を5時間行って残存単量体およびトルエンを取り除き、重合体スラリーを得た(反応3工程)。30℃に冷却後の重合体スラリーを含む容器内に希塩酸を添加して分散安定剤を除去した。更に、ろ別、洗浄、乾燥の後、風力分級によって微粗粉をカットし、トナー粒子1とした。得られた粒子の処方及び条件を表2に示し、物性を表5に示した。
<トナー粒子2、トナー粒子3、トナー粒子5、トナー粒子7乃至17の製造例>
表2、表3、及び表4に示した処方及び条件に従い、それ以外は上記トナー粒子1の製造例に従い、トナー粒子2、トナー粒子3、トナー粒子5、トナー粒子7乃至17を得た。得られた粒子の物性を表5、表6及び表7に示した。
<トナー粒子6の製造例>
トナー粒子1の製造例において、10%塩酸 1.0質量部とイオン交換水 50質量部の溶液を加えてpHを4.1に変更し、反応2工程でのNaOH添加を実施せず、反応2工程終了後の塩酸添加を実施しなかった以外は、トナー粒子1の製造例と同様にしてトナー粒子6を得た。得られた粒子の処方および条件を表2に示し、物性を表5に示した。
<比較トナー粒子1、比較トナー粒子3、比較トナー粒子4の製造例>
表4に示した処方及び条件に従い、それ以外は上記トナー粒子1の製造例に従い、比較トナー粒子1、比較トナー粒子3、比較トナー粒子4を得た。得られた粒子の物性を表7に示した。
<比較トナー粒子2の製造例>
トナー粒子1の製造例において、反応2工程でのNaOH添加を実施せず、反応2工程終了後の塩酸添加を実施しなかった以外は、表4に示した処方及び条件に従い、トナー粒子1の製造例と同様にして比較トナー粒子2を得た。得られた粒子の物性を表7に示した。
<トナー粒子4の製造例>
・ポリエステル系樹脂(1) 60.0質量部
・ポリエステル系樹脂(2) 40.0質量部
・樹脂A−1 5.0質量部
・銅フタロシアニン顔料(ピグメントブルー15:3) 6.5質量部
・有機ケイ素化合物(ビニルトリエトキシシラン) 15.0質量部
・荷電制御樹脂1 0.4質量部
・荷電性制御剤 0.4質量部
(3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸のアルミニウム化合物)
・離型剤(べヘン酸ベヘニル) 10.0質量部
上記材料を、トルエン400質量部に溶解して、溶解液を得た。
リービッヒ還流管を備え付けた四つ口容器中にイオン交換水700質量部と0.1モル/リットルのNa3PO4水溶液1000質量部と1.0モル/リットルのHCl水溶液24.0質量部を添加し、高速撹拌装置T.K.ホモミクサーを用いて12,000rpmで撹拌しながら、60℃に保持した。ここに1.0モル/リットルのCaCl2水溶液85質量部を徐々に添加し、微細な難水溶性分散安定剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。
次に上記溶解液100質量部をT.K.ホモミクサーで12,000rpmに撹拌しながら、投入し5分間撹拌した。ついでこの混合液を70℃ 5時間保持した。pHは5.1であった。1.0N−NaOH 10.0質量部を加え、pHを8.1にした。つぎに、90℃まで昇温して6.5時間保持した。その後、10%塩酸 4.0質量部とイオン交換水50質量部を加え、pHを5.1にした。イオン交換水を300質量部添加して、還流管を取り外し、蒸留装置を取り付けた。次に、容器内の温度が100℃の蒸留を5時間行って重合体スラリーを得た。重合体スラリーを含む容器内に希塩酸を添加して分散安定剤を除去した。更に、ろ別、洗浄、乾燥、風力分級による微粗粉カットをして、トナー粒子4を得た。物性を表5に示した。
〔実施例1〕
図2のような構成を有するタンデム方式のキヤノン製レーザービームプリンタLBP9510Cを改造し、シアンステーションだけでプリント可能とした。また、バックコントラストを任意に設定できるように改造した。さらに、プロセススピードを設定できるよう改造し、135mm/secから170mm/secに設定した。このLBP9510C用トナーカートリッジを用い、トナー粒子1を200g充填した。そして、そのトナーカートリッジを低温低湿L/L(10℃/15%RH)、常温常湿N/N(25℃/50%RH)、高温高湿H/H(32.5℃/85%RH)の各環境下で24時間放置した。各環境下で24時間放置後にトナーカートリッジをLBP9510Cに取り付け、1.0%の印字比率の画像をA4用紙横方向で17,000枚までプリントアウトして、初期と17,000枚出力時(耐久後)のカブリラチチュードの評価を行った。結果を表8に示す。
<カブリラチチュードの評価>
バックコントラストを50Vから400Vまで10V刻みで変化させ、それぞれにおいて全面白地画像(0%の印字比率の画像)をプリントし、「リフレクトメータ」(東京電色社製)にアンバーフィルターを装着して、カブリを測定した。また、その作業を初期及び17,000枚印刷後において実施した。カブリの測定値は、未使用紙の測定値から全面白地画像の測定値を差し引いた、カブリ濃度(%)である。図3に測定例を示すが、2.0%以内にカブリ濃度が収まっている範囲をカブリラチチュードと定義した。およそ、カブリ濃度が3.5%を超えると画像弊害として認識される傾向にある。従って、カブリ濃度が2.0%以内に収まるカブリラチチュードが50Vを超えると、カブリ制御設計の優位性が発現すると判断した。
<実施例2乃至17、比較例1乃至4>
表5、表6、及び表7に示した各トナー粒子を、実施例1と同様にしてカブリラチチュードの評価を行った。結果を表8に示す。