JP7194680B2 - 衣材用酸化澱粉の製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1(特開平6-30713号公報)には、次亜塩素酸処理加工澱粉、焙焼デキストリン、酸化澱粉、低粘性酸処理澱粉、エーテル化澱粉またはエステル化澱粉を含む衣材を用いた乾燥天ぷらに関する技術が記載されている。また、同文献には、次亜塩素処理加工澱粉を特定量含む天ぷら粉を用いて得られた乾燥天ぷらを熱湯に浸漬したところ完全に復元して、風味、食感、色調の良い天ぷらとなったことが記載されている。
また、本発明者らが検討したところ、上述した特許文献3に記載の技術を用いた場合、揚げ物の衣に好ましい硬さとサクサク感を付与し、保管後もそれらの好ましさを維持するという点で改善の余地があることが明らかになった。
原料澱粉を含むスラリーを準備する工程と、
前記スラリー中の前記原料澱粉を酸化して酸化澱粉を得る工程と、
を含み、
酸化澱粉を得る前記工程が、
前記スラリーに酸化剤を添加する工程と、
前記スラリーのpHが9.2以上11.7以下である条件下に前記スラリーを所定時間維持することにより、前記原料澱粉を酸化する工程と、
を含む、衣材用酸化澱粉の製造方法が提供される。
前記本発明における衣材用酸化澱粉の製造方法により衣材用酸化澱粉を得る工程と、
前記衣材用酸化澱粉を配合して衣材を得る工程と、
を含む、フライ食品用衣材の製造方法が提供される。
前記本発明におけるフライ食品用衣材の製造方法によりフライ食品用衣材を得る工程と、
前記フライ食品用衣材を加熱調理する工程と、
を含む、フライ食品の製造方法が提供される。
たとえば、本発明によれば、前記本発明における製造方法により得られる衣材用酸化澱粉、衣材およびフライ食品が提供される。
(工程1)原料澱粉を含むスラリーを準備する工程
(工程2)上記スラリー中の原料澱粉を酸化して酸化澱粉を得る工程
そして、工程2すなわち酸化澱粉を得る工程が、以下の工程2-1および工程2-2を含む。
(工程2-1)上記スラリーに酸化剤を添加する工程
(工程2-2)上記スラリーのpHが9.2以上11.7以下である条件下にスラリーを所定時間維持することにより、原料澱粉を酸化する工程
以下、各工程についてさらに具体的に説明する。
工程1においては、原料澱粉のスラリーを準備する。スラリーは、具体的には原料澱粉および水を含む。
原料澱粉の由来となる植物の具体例として、とうもろこし、もちとうもろこし、米、もち米、小麦、甘藷、馬鈴薯、もち馬鈴薯、タピオカ、サゴヤシ等が挙げられる。
また、原料澱粉は、好ましくはコーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉、もち米澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、ワキシー馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉ならびにこれらのアセチル化澱粉およびヒドロキシプロピル化澱粉からなる群から選択される1種または2種以上であり、より好ましくはタピオカ澱粉ならびにこれらのアセチル化澱粉およびヒドロキシプロピル化澱粉からなる群から選択される1種または2種以上であり、さらに好ましくはタピオカ澱粉である。
また、揚げ物の調製時の硬さおよびサクサク感を向上する観点、およびこれらの好ましさを維持する観点から、原料澱粉は、好ましくは未化工の澱粉であり、より好ましくは未化工のタピオカ澱粉である。
また、工程2における酸化反応の安定性を高める観点から、スラリー中の原料澱粉の乾物換算質量濃度は、スラリー全体に対してたとえば50質量%以下であり、好ましくは45質量%以下である。
工程2は、酸化澱粉を得る工程であり、前述した工程2-1および工程2-2を含む。工程2-1は、工程2中に1回おこなわれても2回以上に分けておこなわれてもよく、2回目以降の工程2-1が、工程2-2中におこなわれてもよいが、工程2-1は、工程2中に1回おこなわれることが好ましい。
また、工程2-1が工程2-2の前におこなわれることがさらに好ましい。
ここで、上記有効塩素濃度とは、水溶液中で次亜塩素酸や次亜塩素酸イオン等の酸化力のある塩素化合物である有効塩素の濃度を指し、たとえば、第五版食品添加物公定書解説書(廣川書店、1987年)のD-383~D-384に記載の方法で測定することができる。
工程2-1に用いる酸化剤が塩素系酸化剤であるとき、工程2-2開始時のスラリー中の原料澱粉の乾物換算質量に対する有効塩素濃度は、酸化反応の効率を高める観点から、好ましくは1質量%/g以上であり、より好ましくは1.2質量%/g以上、さらに好ましくは1.4質量%/g以上、さらにより好ましくは1.6質量%/g以上である。
また、酸化反応の安定性を高める観点から、上記原料澱粉の乾物換算質量に対する有効塩素濃度は、好ましくは3.5質量%/g以下であり、より好ましくは3.0質量%/g以下、さらに好ましくは2.6質量%/g以下、さらにより好ましくは2.3質量%/g以下である。
ここで、上記原料澱粉の乾物換算質量に対する有効塩素濃度とは、原料澱粉の乾物換算質量1gに対する酸化剤の有効塩素濃度のことを指し、酸化反応が進行するにつれ低下する。
すなわち、スラリーのpHは、フライ食品の衣材として用いた際に、衣の好ましい硬さとサクサク感を維持する観点から、9.2以上であり、好ましくは9.4以上である。
また、原料澱粉の過度の酸化およびスラリーの糊化を抑制する観点から、スラリーのpHは、11.7以下であり、好ましくは11.5以下、より好ましくは11.0以下、さらに好ましくは10.5以下である。
ここで、スラリーのpHを維持するとは、酸化反応中のスラリーpHを設定値±0.2の範囲内に収めることをいう。
塩基の具体例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物等が挙げられる。pHを前述した条件に安定的に維持する観点から、塩基は好ましくはアルカリ金属の水酸化物である。
また、酸化澱粉の製造安定性を高める観点から、工程2-2における反応温度は、好ましくは60℃以下であり、より50℃以下、さらに好ましくは45℃以下である。
また、工程2-2における所定時間は、前述の酸化反応終了までの時間とすることができるが、酸化澱粉の収率を高める観点から、好ましくは30分以上、より好ましくは60分以上である。また、酸化澱粉の製造効率を高める観点から、工程2-2における所定時間は、好ましくは500分以下、より好ましくは300分以下である。
また、工程2の後、酸化澱粉をエステル化またはエーテル化する工程(工程3)をさらに含んでもよい。
工程3で酸化澱粉におこなうエステル化の具体例として、アセチル化、リン酸化等が挙げられ、エーテル化の具体例として、ヒドロキシプロピル化等が挙げられる。
揚げ物の調製時の硬さおよびサクサク感を向上する観点、およびこれらの好ましさを維持する観点から、本実施形態で得られる酸化澱粉には、他の化工処理がなされていないことが好ましい。
工程4における酸の具体例として、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸;酢酸等の有機酸等が挙げられる。酸化反応を確実に停止する観点から、酸は好ましくは無機酸であり、より好ましくは塩酸であり、さらに好ましくは1質量%以上5質量%以下の濃度の塩酸である。
また、工程4においては、酸化反応を確実に停止する観点から、pHを7.0以下とすることが好ましく、6.5以下とすることがより好ましい。
また、工程4におけるpHの下限値は、酸化澱粉の分解を抑制する観点から、好ましくは3.5以上であり、より好ましくは4.5以上である。
このうち、酸化澱粉を乾燥する工程においては、たとえば脱水後の酸化澱粉を30℃以上150℃以下の温度で乾燥させてもよい。
なお、酸化澱粉を乾燥する工程の後に、酸化澱粉を粉砕する上記工程、および粉砕した酸化澱粉を篩う上記工程をおこなうことが好ましい。
衣の好ましい硬さとサクサク感を維持する観点からは、酸化澱粉の乾物換算質量濃度が15質量%のスラリーをラピッドビスコアナライザー(Rapid Visco Analyzer:RVA)にて95℃まで加熱した時の最高粘度は好ましくは900cP以下、より好ましくは700cP以下であるとともに、加熱の後、RVAにて25℃まで冷却した時の粘度は好ましくは6000cP以下、より好ましくは5000cP以下である。
また、95℃まで加熱した時の最高粘度の下限値は好ましくは50cP以上であり、加熱の後、RVAにて25℃まで冷却した時の粘度の下限値は好ましくは100cP以上である。
(95℃まで加熱した時の最高粘度と25℃まで冷却した時の粘度の測定方法)
1.専用のアルミニウム容器に酸化澱粉と水とを混合し、酸化澱粉の乾物換算質量濃度が15質量%のスラリーを調製する。上記アルミニウム容器に専用のパドルを入れ、ラピッドビスコアナライザー(Rapid Visco Analyzer:RVA)にセットする。
2.160rpmでの撹拌下で粘度を測定しながら、40℃で1分間維持し、その後、40℃から95℃まで6℃/分の速度で加熱する。
3.95℃を5分間維持した後、25℃まで4.5℃/分で冷却する。
4.95℃まで加熱した時の最高粘度である粘度A(cP)および25℃まで冷却した時の粘度B(cP)を読み取り、各粘度を測定する。
まず、本実施形態における衣材は、フライ食品に用いられ、本実施形態における製造方法により得られる酸化澱粉を含む。
また、本実施形態において、フライ食品用衣材の製造方法は、たとえば、前述した製造方法により酸化澱粉を得る工程と、衣材用酸化澱粉を配合して衣材を得る工程と、を含む。
また、同様の観点から、衣材中の本実施形態において得られる酸化澱粉の配合量は、衣材中の固形分全体を100質量%としたときに、好ましくは100質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
他の酸化澱粉における前述した粘度の比(粘度B/粘度A)は、制限はなく、たとえば0超1.4未満である。
衣材が他の酸化澱粉をさらに含むとき、衣材中の他の酸化澱粉の含有量は、本実施形態の方法により得られる酸化澱粉1質量部に対して、衣の好ましい硬さとサクサク感を維持する観点から、好ましくは0質量部超である。また、衣の好ましい硬さとサクサク感を維持する観点から、衣材中の他の酸化澱粉の含有量は、本実施形態の方法により得られる酸化澱粉1質量部に対して、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは3質量部以下である。
また、衣材が他の酸化澱粉をさらに含むとき、衣材中の酸化澱粉の総含有量は、衣材中の固形分全体を100質量%としたときに、衣の好ましい硬さとサクサク感を維持する観点から、好ましくは3質量%超であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、さらにより好ましくは12質量%以上である。また、衣の好ましい硬さとサクサク感を維持する観点から、衣材中の酸化澱粉の総含有量は、衣材中の固形分全体を100質量%としたときに、好ましくは100質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
また、酸化澱粉を含む固形分に水;卵液等の液状の食材;醤油等の液体調味料等の液体成分を配合してバッターとして用いることもできる。
バッター中の上記液体成分の含有量は、衣材の固形分100質量部に対して好ましくは90質量部以上、より好ましくは100質量部以上であり、また、好ましくは450質量部以下、より好ましくは300質量部以下、さらに好ましくは200質量部以下である。
本実施形態におけるフライ食品は、フライ食品用衣材を含むものであり、種物を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
たとえば、フライ食品には、揚げ玉のように種物を含まず、衣材のみを単独で調理した食品も含まれる。
また、本実施形態において、フライ食品の製造方法は、たとえば、前述した製造方法によりフライ食品用衣材を得る工程と、フライ食品用衣材加熱調理する工程と、を含む。
また、フライ食品が種物を含むとき、本実施形態におけるフライ食品用衣材とは、たとえば、食品中の種物を被覆する衣の材料、すなわち食品用被覆材として用いられ、さらに具体的には種物の表面に付着させる材料として用いられる。
フライ食品が種物を含むとき、フライ食品用衣材は、種物の一部を被覆していてもよいし、種物全体を被覆していてもよい。また、フライ食品用衣材は、種物の一部に付着していてもよいし、種物全体に付着していてもよい。
フライ食品の調理形態の具体例としては、種物に衣材を被覆した後、100℃~200℃の食用油中で油ちょうされた食品、薄く油をひいたフライパンや鉄板上で加熱された食品が挙げられる。また、本実施形態のフライ食品の製造方法は、たとえばフライ食品用衣材を加熱調理する工程を含む。
フライ食品として、たとえば天ぷら、から揚げ、竜田揚げなどが挙げられ、とんかつのようにパン粉やブレッダーをまぶしたものでもよい。また、本実施形態におけるフライ食品には、衣材で被覆をした後に、オーブン等で乾熱調理、マイクロ波加熱調理または過熱水蒸気調理されたフライ様食品も含まれる。フライ様食品では、油脂を含む衣材で種物の被覆をすることや衣材に油脂をまぶすことがさらに好ましい。
本実施形態における製造方法で得られたフライ食品は、加熱調理後のフライ食品の衣に好ましい硬さとサクサク感が付与し、保管後もそれらの好ましさを維持することができる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 原料澱粉を含むスラリーを準備する工程と、
前記スラリー中の前記原料澱粉を酸化して酸化澱粉を得る工程と、
を含み、
酸化澱粉を得る前記工程が、
前記スラリーに酸化剤を添加する工程と、
前記スラリーのpHが9.2以上11.7以下である条件下に前記スラリーを所定時間維持することにより、前記原料澱粉を酸化する工程と、
を含む、衣材用酸化澱粉の製造方法。
2. 前記酸化剤が次亜塩素酸塩およびさらし粉からなる群から選択される1種または2種である、1.に記載の衣材用酸化澱粉の製造方法。
3. 原料澱粉を酸化する前記工程において、前記スラリーに塩基を添加することにより前記pHを前記条件下に維持する、1.または2.に記載の衣材用酸化澱粉の製造方法。
4. 酸化剤を添加する前記工程が、原料澱粉を酸化する前記工程の前におこなわれる、1.乃至3.いずれか1つに記載の衣材用酸化澱粉の製造方法。
5. 原料澱粉を酸化する前記工程開始時の前記スラリー中の前記原料澱粉の乾物換算質量に対する有効塩素濃度が、1質量%/g以上3.5質量%/g以下である、2.乃至4.いずれか1つに記載の衣材用酸化澱粉の製造方法。
6. 前記原料澱粉がタピオカ澱粉である、1.乃至5.いずれか1つに記載の衣材用酸化澱粉の製造方法。
7. 前記酸化澱粉の乾物換算質量濃度が15質量%であるスラリーをラピッドビスコアナライザー(Rapid Visco Analyzer:RVA)にて測定して得られる、95℃まで加熱した時の最高粘度に対する25℃まで冷却した時の粘度の比が1.4以上20以下である、1.乃至6.いずれか1つに記載の衣材用酸化澱粉の製造方法。
8. 1.乃至7.いずれか1つに記載の衣材用酸化澱粉の製造方法により衣材用酸化澱粉を得る工程と、
前記衣材用酸化澱粉を配合して衣材を得る工程と、
を含む、フライ食品用衣材の製造方法。
9. 8.に記載のフライ食品用衣材の製造方法によりフライ食品用衣材を得る工程と、
前記フライ食品用衣材を加熱調理する工程と、
を含む、フライ食品の製造方法。
10. 1.乃至7.いずれか1つに記載の製造方法で製造された衣材用酸化澱粉をフライ食品用衣材として用いる、フライ食品の衣の硬さを維持する方法。
11. 1.乃至7.いずれか1つに記載の製造方法で製造された衣材用酸化澱粉をフライ食品用衣材として用いる、フライ食品の衣のサクサク感を維持する方法。
タピオカ澱粉(水分13.5質量%、Siam Starch(1966) Co., Ltd.製)
コーンスターチ:コーンスターチY(株式会社J-オイルミルズ製)
全卵粉:乾燥全卵No.1(キューピータマゴ株式会社製)
ベーキングパウダー:Fアップ(大宮糧食工業株式会社製)
他の酸化澱粉:ジェルコールSP-2(株式会社J-オイルミルズ製、粘度B:203cP、粘度A:1554cP、(粘度B/粘度A)=0.13)
(水分の測定方法)
澱粉を水分計(電磁水分計:型番MX50、研精工業株式会社製)を用いて、130℃で加熱乾燥させて水分を測定した。
本例においては、酸化澱粉の製造および評価をおこなった。表1に、酸化澱粉の製造条件、得られた酸化澱粉を用いて調製した衣材の種類、ならびに、得られた衣材を用いて調製した天ぷらの調製直後および調製後から20℃で4時間保存した調製4時間後の評価結果を示す。
また、表2に、酸化澱粉を用いて調製した衣材の配合を示す。
(酸化澱粉の製造方法)
セパラブルフラスコにタピオカ澱粉150gと蒸留水190gを加えて分散し、乾物換算質量濃度が38.2質量%のスラリーを調製した。
得られたスラリーの温度を37℃にした後、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度14.3%)18.2mLを一度に投入し、表1に記載の有効塩素濃度とした。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液を投入後、3質量%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、設定したpH(表1)にした。
その後、適時水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、反応終了までpHを設定値±0.03以内に維持し、酸化澱粉を得た。
反応終了は、スラリーを少量サンプリングして飽和ヨウ化カリウム水溶液に滴下し、紫色を呈しなくなった時点とした。
反応終了を確認後、スラリーに3質量%塩酸を添加してpH6まで中和した後、スラリー中の酸化澱粉を洗浄脱水した。
その後、40℃で1晩乾燥し、粉砕して60メッシュの篩(目開き250μm)で篩ったものを本例の酸化澱粉として用いた。
1.専用のアルミニウム容器に水分測定済の酸化澱粉と水とを混合し、酸化澱粉の乾物換算質量濃度が15質量%のスラリーを調製した。上記アルミニウム容器に専用のパドルを入れ、ラピッドビスコアナライザー(Rapid Visco Analyzer:RVA:型番RVA-4、ペルテン社製)にセットした。
2.160rpmでの撹拌下で粘度を測定しながら、40℃で1分間維持し、その後、40℃から95℃まで6℃/分の速度で加熱した。
3.95℃を5分間維持した後、25℃まで4.5℃/分で冷却した。
4.95℃まで加熱した時の最高粘度である粘度A(cP)および25℃まで冷却した時の粘度B(cP)を読み取り、各粘度を測定した。
表2に示す衣材のうち、衣材1のレシピに基づき原材料を同表の配合量にて混合し、酸化澱粉を含む打ち粉およびバッターを調製した。
1.サツマイモを厚さ0.8~1.0cmに輪切りして、水にさらした。
2.上記1.のサツマイモを水から取り出し、皮を切り落とした。
3.上記2.のサツマイモの水気をよく切って、揚げ種とした。
4.揚げ種に、前述の方法で得られた打ち粉をまぶし、さらに前述の方法で得られたバッターを付けた後、175℃のキャノーラ油で3分30秒揚げた。
5.キャノーラ油から取り出して油切りをして、天ぷらを得た。
得られた天ぷらの調製直後(1時間以内)および天ぷら調製後に20℃で4時間放置後に、4名の専門パネラーが食感評価をおこなった。以下の評価項目および評価基準にて評価をおこない、各項目について4人の平均点が2点超であるものを合格とした。
(硬さ)
5点:衣がとても硬い
4点:衣が硬い
3点:衣が少し硬い
2点:衣があまり硬くない
1点:衣が硬くない
(サクサク感)
5点:衣にとてもサクサク感がある
4点:衣にサクサク感がある
3点:衣に少しサクサク感がある
2点:衣にサクサク感が少ない
1点:衣にサクサク感が無い
(ドライ感)
5点:とてもカラッとしている
4点:カラッとしている
3点:少しカラッとしている
2点:少しベチャついている
1点:ベチャついている
(飲み込みやすさ)
5点:衣の歯切れがとても良く、とても飲み込みやすい
4点:衣の歯切れが良く、飲み込みやすい
3点:衣の歯切れがやや良く、やや飲み込みやすい
2点:衣に少しヒキが有り、少し飲み込みにくい
1点:衣にヒキがあり、飲み込みにくい
スラリーのpHを表1に記載のとおりそれぞれ設定して反応させた以外は、実施例1と同じ条件および方法で酸化澱粉を製造した。
ここで、比較例4については、酸化処理中にスラリーが糊化したため、スラリーを脱水できず、酸化澱粉のサンプルを得られなかった。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度14.3%)9.1mLを一度に投入し、表1に記載の澱粉乾物換算質量に対する有効塩素濃度とした以外は、実施例2と同じ条件および方法で酸化澱粉を製造した。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度14.3%)31.9mLを一度に投入し、表1に記載の澱粉乾物換算質量に対する有効塩素濃度とした以外は、比較例2と同じ条件および方法で酸化澱粉を製造した。
実施例2の条件で次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度14.3%)での酸化反応を終了した後、3質量%塩酸でスラリーをpH8に調製した。
その後、無水酢酸2.2mLを15分かけて滴下し、酸化澱粉をアセチル化した。反応中は3質量%水酸化ナトリウム水溶液でpHを7.8~8.5に維持した。
滴下終了後、3質量%塩酸でpH6まで中和した後、スラリー中の酸化アセチル化タピオカ澱粉を洗浄脱水した。
脱水後、40℃で1晩乾燥し、粉砕して60メッシュの篩(目開き250μm)で篩ったものを本例の酸化澱粉として用いた。
本例においては、前述した特許文献3の実施例に記載の方法に従って酸化澱粉を製造した。
セパラブルフラスコにタピオカ澱粉150gと蒸留水190gを加えて分散し、乾物換算質量濃度が38.2質量%のスラリーを調製した。
得られたスラリーの温度を37℃にした後、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度14.3%)18.2mLを2分毎に30回(0.61mL/回)に分けて投入した。次亜塩素酸ナトリウム水溶液を投入中にスラリーのpHが7.5以上を保てるように3質量%水酸化ナトリウム水溶液を適宜滴下した。30回目の次亜塩素酸ナトリウム水溶液投入終了時点のスラリーのpHが最も高くなり、そのpHは8.5であった。
その後、3質量%水酸化ナトリウム水溶液で適時滴下することで、次亜塩素酸ナトリウム水溶液投入終了時点のpHを維持し、さらに90分間反応させた。
90分後にスラリーを少量サンプリングして飽和ヨウ化カリウム水溶液に滴下し、紫色を呈さないことを確認して、実施例1に記載と同じ方法で中和以降の工程に進み、酸化澱粉を得た。
一方、比較例1~3、5および6においては、酸化反応におけるスラリーのpHが低すぎたため、天ぷら調製4時間後の食感が各実施例に比べて劣っていた。
また、比較例4においては、酸化反応におけるスラリーのpHが高すぎたため、前述のとおり、酸化澱粉調製中にスラリーが糊化してしまい、酸化澱粉を得ることができなかった。
実施例1で得られた酸化澱粉を用いて、表2の衣材2および衣材3のレシピに基づき原材料を同表の配合量にて混合し、酸化澱粉を含む打ち粉およびバッターを調製した。
得られた打ち粉およびバッターを用いて実施例1に記載の方法に準じて天ぷらを調製し、評価した。評価結果を表3に示す。
本例では、実施例2で得られた酸化澱粉を用いて、表4に記載のバッター組成に基づき原材料を混合し、酸化澱粉を含むバッターを調製した。
冷凍ドーナツ生地(タマゴドーナツ、オーランドフーズ製)を、凍ったまま180℃に加熱した油(FryUp201、株式会社J-オイルミルズ製)にて2分油ちょうし、ひっくり返してさらに1分油ちょうし、ドーナツを作製した。
油ちょうしたドーナツの粗熱を取った後、先に調製した酸化澱粉を含むバッターをドーナツに付け、180℃に加熱した油で片面75秒ずつ油ちょうし、衣付きドーナツを作製した。
また、実施例13のみ、冷凍ドーナツ生地に凍ったまま直接酸化澱粉を含むバッターを付け、180℃で2分油ちょうし、ひっくり返してさらに1分油ちょうし、衣付きドーナツを作製した。
得られた各衣付きドーナツを、21℃で4時間置いた。
本例では、実施例2で得られた酸化澱粉および比較例1で得られた酸化澱粉を用いて、表5に記載の組成に基づき原材料を混合し揚げ玉用バッターを調製した。
調製した揚げ玉用バッターを、175℃に加熱した油(スーパーキャノーラ油、株式会社J-オイルミルズ製)にて、実施例14は2分30秒、それ以外は3分油ちょうし、揚げ玉を作製した。
油ちょうした揚げ玉を20℃で4時間置いた後、目開き8.0mmの篩に入れて、篩下画分を回収した。回収した篩下画分を目開き5.6mmの篩に入れて、篩上画分を回収し、整粒揚げ玉を得た。
<測定条件>
測定機器:TA.XT.plus Texture Analyzer(ステイブルマイクロシステムズ社製)
プランジャー:φ20mm円盤型
測定速度:0.5mm/秒
測定モード:50%圧縮
一方、比較例7および比較例8は、ピーク数が少なかった。また、食した結果、あまりサクサクしていなかった。
Claims (11)
- 原料澱粉を含むスラリーを準備する工程と、
前記スラリー中の前記原料澱粉を酸化して酸化澱粉を得る工程と、
を含み、
酸化澱粉を得る前記工程が、
前記スラリーに塩基を添加する前に酸化剤を添加する工程と、
前記スラリーのpHが9.2以上11.7以下である条件下に前記スラリーを所定時間維持することにより、前記原料澱粉を酸化する工程と、
を含み、
酸化剤を添加する前記工程を、原料澱粉を酸化する前記工程の前におこなう、衣材用酸化澱粉の製造方法。 - 前記酸化剤が次亜塩素酸塩およびさらし粉からなる群から選択される1種または2種である、請求項1に記載の衣材用酸化澱粉の製造方法。
- 原料澱粉を酸化する前記工程において、前記スラリーに塩基を添加することにより前記pHを前記条件下に維持する、請求項1または2に記載の衣材用酸化澱粉の製造方法。
- 前記酸化澱粉に酸化以外の化工処理がなされていない、請求項1乃至3いずれか1項に記載の衣材用酸化澱粉の製造方法。
- 原料澱粉を酸化する前記工程開始時の前記スラリー中の前記原料澱粉の乾物換算質量に対する有効塩素濃度が、1質量%/g以上3.5質量%/g以下である、請求項2乃至4いずれか1項に記載の衣材用酸化澱粉の製造方法。
- 前記原料澱粉がタピオカ澱粉である、請求項1乃至5いずれか1項に記載の衣材用酸化澱粉の製造方法。
- 前記酸化澱粉の乾物換算質量濃度が15質量%であるスラリーをラピッドビスコアナライザー(Rapid Visco Analyzer:RVA)にて測定して得られる、95℃まで加熱した時の最高粘度に対する25℃まで冷却した時の粘度の比が1.4以上20以下である、請求項1乃至6いずれか1項に記載の衣材用酸化澱粉の製造方法。
- 請求項1乃至7いずれか1項に記載の衣材用酸化澱粉の製造方法により衣材用酸化澱粉を得る工程と、
前記衣材用酸化澱粉を配合して衣材を得る工程と、
を含む、フライ食品用衣材の製造方法。 - 請求項8に記載のフライ食品用衣材の製造方法によりフライ食品用衣材を得る工程と、
前記フライ食品用衣材を加熱調理する工程と、
を含む、フライ食品の製造方法。 - 請求項1乃至7いずれか1項に記載の製造方法で製造された衣材用酸化澱粉をフライ食品用衣材として用いる、フライ食品の衣の硬さを維持する方法。
- 請求項1乃至7いずれか1項に記載の製造方法で製造された衣材用酸化澱粉をフライ食品用衣材として用いる、フライ食品の衣のサクサク感を維持する方法。
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