JP7114650B2 - 可塑性油脂組成物 - Google Patents
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Description
そこで、トランス脂肪酸含量を十分に低く抑えながら、結晶性が良好で口どけが良く、また、パン・菓子等のベーカリー食品に使用した場合、十分なジューシー感が得られる、コンパウンドタイプの可塑性油脂組成物の開発が望まれてきた。
油脂A:乳由来の油脂
油脂B:全構成脂肪酸中に炭素数14以下の脂肪酸を20~65質量%、パルミチン酸を20~65質量%含有するエステル交換油
本発明の好ましい態様の1つは、上記油脂Bが、全構成脂肪酸中にステアリン酸を15質量%以下含有する、可塑性油脂組成物である。
本発明の好ましい態様の1つは、上記油脂Bが、炭素数16以上の飽和脂肪酸のみからなるトリ飽和トリグリセリド(H3)を15質量%以下含有する、可塑性油脂組成物である。
本発明の好ましい態様の1つは、上記可塑性油脂組成物を構成する油脂中の上記油脂Bの含有量が5~90質量%であって、さらに以下の油脂Cを5~75質量%含有する、可塑性油脂組成物である。
油脂C:パーム系油脂、パーム系油脂のエステル交換油の中から選ばれた1種又は2種以上の油脂
本発明の好ましい態様の1つは、上記可塑性油脂組成物を構成する油脂中の炭素数16以上の飽和脂肪酸のみからなるトリ飽和トリグリセリド(H3)の含有量が10質量%以下である、可塑性油脂組成物である。
本発明の好ましい態様の1つは、上記炭素数16以上の飽和脂肪酸のみからなるトリ飽和トリグリセリド(H3)中に占めるトリパルミチン(P3)の割合(質量比、P3/H3)が0.5以上である、可塑性油脂組成物である。
本発明の好ましい態様の1つは、上記可塑性油脂組成物がマーガリン又はショートニングである可塑性油脂組成物である。
また、本発明のまた別の態様の1つは、上記可塑性油脂組成物を使用した食品である。
本発明の可塑性油脂組成物は、可塑性油脂組成物を構成する油脂中に乳由来の油脂Aを5~75質量%含有する。本発明における乳由来の油脂Aは、いわゆる乳脂とその加工品を含むものであり、より具体的には、バター、バターオイルもしくはそれらの分別油、分別油の発酵物、発酵バター、発酵バターオイルもしくはそれらの分別油、等が挙げられ、それらの1種もしくは2種以上を任意に用いることができる。油脂Aは上記分別油が好ましく、特に、分別した液状部(オレイン部)を使用したものであると、ベーカリー食品のジューシー感を得る上で好ましい。分別した液状部は、油脂A中に10~90質量%含まれることが好ましく、20~80質量%含まれることがより好ましく、30~70質量%
含まれることが更に好ましい。可塑性油脂組成物を構成する油脂中の油脂Aの含有量は、7~65質量%であることが好ましく、9~55質量%であることがより好ましい。油脂Aの含有量が上記範囲にあると、乳風味豊かで結晶性が良い可塑性油脂組成物が得られるので好ましい。
しく、9~81質量%であることが更に好ましい。油脂Bの構成脂肪酸及び可塑性油脂組成物を構成する油脂中の含有量が上記範囲にあると、結晶性が良好で口どけが良い可塑性油脂組成物が得られるので好ましい。なお、油脂Bは上記構成を有するエステル交換油を1種もしくは2種以上使用しても良い。
物を使用したパン・菓子にジューシー感が出易いので好ましい。
化学的エステル交換は、例えば、常法に従って、原料油脂を十分に乾燥させ、触媒を原料油脂に対して0.1~1質量%添加した後、減圧下、80~120℃で0.5~1時間攪拌しながら反応を行うことができる。エステル交換反応終了後は、水洗にて触媒を洗い流した後、通常の食用油脂の精製工程で行われる脱色、脱臭処理を施すことができる。
なお、上記パーム系油脂のエステル交換油が油脂Bに該当する場合は、油脂Bとして扱う。
具体的には、配合する油脂及び油溶成分を混合溶解したものを油相とし、必要により調製した水相を混合乳化した後、冷却し、結晶化させることで製造することができる。冷却、結晶化は、冷却可塑化させることが好ましい。冷却条件は、好ましくは-0.5℃/分以上、更に好ましくは-5℃/分以上である。この際、徐冷却より急冷却の方が好ましい。また、油相の調製後又は混合乳化後は、殺菌処理することが望ましい。殺菌方法としては、タンクでのバッチ式や、プレート型熱交換機、掻き取り式熱交換機を用いた連続式が挙げられる。冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられる。また、冷却する機器としては、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組み合わせも挙げられる。
本発明のバタークリームにおいて、呈味成分の配合量は、好ましくは20~70質量%であり、より好ましくは20~60質量%であり、最も好ましくは20~50質量%である。
本発明のバタークリームにおいて、糖類の配合量は、好ましくは20~70質量%であり、より好ましくは20~60質量%であり、最も好ましくは20~50質量%である。
以下に示す可塑性油脂組成物を構成する油脂の各脂肪酸含量、各トリグリセリド含量は以下の方法により測定した。
各脂肪酸含量は、ガスクロマトグラフィー法(AOCS Celf-96に準拠)により測定した。
各トリグリセリド含量は、ガスクロマトグラフィー法(AOCS Ce5-86に準拠)により測定した。
〔油脂A1〕:バターオイル(日清オイリオグループ株式会社社内調製品、融点32℃)を油脂A1とした。
〔油脂A2〕:バターオイルオレイン(バターオイルを分別した液状部、日清オイリオグループ株式会社社内調製品、融点10℃)を油脂A2とした。
〔油脂B1〕:パーム油(日清オイリオグループ株式会社製造品)60質量部とパーム核油(日清オイリオグループ株式会社製造品)40質量部とを混合した混合油を、減圧下120℃に加熱することにより十分に乾燥させた後、対油0.1質量%のナトリウムメチラートを添加し、減圧下、110℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。反応終了後、ナトリウムメチラートを水洗除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭して、油脂B1(炭素数14以下の脂肪酸含量28.2質量%、パルミチン酸含量29.9質量%、ステアリン酸含量3.7質量%、H3含量3.4質量%、ヨウ素価39.0)を得た。
〔油脂B2〕:パームステアリン(日清オイリオグループ株式会社製造品)50質量部とパーム核ステアリン(日清オイリオグループ株式会社製造品)50質量部とを混合した混合油を、減圧下120℃に加熱することにより十分に乾燥させた後、対油0.1質量%のナトリウムメチラートを添加し、減圧下、110℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。反応終了後、ナトリウムメチラートを水洗除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理して、油脂B2(炭素数14以下の脂肪酸含量41.6質量%、パルミチン酸含量45.2質量%、ステアリン酸含量3.3質量%、H3含量9.2質量%、ヨウ素価10.0)を得た。
〔油脂b1〕:菜種極度硬化油(日清オイリオグループ株式会社製造品)50質量部とパーム核油(日清オイリオグループ株式会社製造品)50質量部とを混合した混合油を、減圧下120℃に加熱することにより十分に乾燥させた後、対油0.1質量%のナトリウムメチラートを添加し、減圧下、110℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。反応終了後、ナトリウムメチラートを水洗除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭して、油脂b1(炭素数14以下の脂肪酸含量34.7質量%、パルミチン酸含量7.0質量%、ステアリン酸含量46.8質量%、H3含量11.8質量%、ヨウ素価9.6)を得た。
〔油脂C1〕:パーム油(日清オイリオグループ株式会社製造品、ヨウ素価53)を油脂C1とした。
〔油脂C2〕:パームミッドフラクション(日清オイリオグループ株式会社製造品、ヨウ素価45)を油脂C2とした。
〔油脂C3〕:パームオレイン(日清オイリオグループ株式会社製造品、ヨウ素価56)を、減圧下120℃に加熱することにより十分に乾燥させた後、対油0.1質量%のナトリウムメチラートを添加し、減圧下、110℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。反応終了後、ナトリウムメチラートを水洗除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理して、油脂C3(ヨウ素価56)を得た。
〔油脂C4〕:パーム油(日清オイリオグループ株式会社製造品、ヨウ素価53)65質量部と菜種油(日清オイリオグループ株式会社製造品)35質量部とを混合した後、1,3選択性有するリパーゼ製剤を対油0.5質量%添加し、60℃で16時間エステル交換反応を行った。反応終了後、リパーゼ製剤をろ過で除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理して油脂C4(ヨウ素価75)を得た。
〔油脂C5〕:パームスーパーオレイン(日清オイリオグループ株式会社製造品、ヨウ素価65)を油脂C5とした。
〔油脂D1〕:ヤシ硬化油(日清オイリオグループ株式会社製造品、ヨウ素価1未満)を油脂D1とした。
〔油脂D2〕:菜種油(日清オイリオグループ株式会社製造品)を油脂D2とした。
表1、2の配合に従って、油脂を混合し、各油脂100質量部に対して乳化剤0.4質量部を添加したものを加熱融解後、常法に従って、オンレーターにより急冷混捏し、例1~8の可塑性油脂組成物を製造した。
得られた例1~8の可塑性油脂組成物を10℃12時間、25℃12時間を1サイクルとして30サイクルの保存テストを行い、以下の基準に従って組織の状態を評価した。評価は5名のパネラーの総合評価とし、結果を表1、2に示した。
また、得られた例1~8の可塑性油脂組成物を縦型ミキサーでホイッパーを使用して起泡し、比重を0.45とした。ホイップ済み可塑性油脂組成物50質量部に対し、水15質量部、液糖34.7質量部、リキュール0.2質量部、香料0.1質量部からなる水相50質量部を、徐々にホイップ済み可塑性油脂組成物へ攪拌しながら添加し、最終比重を0.60に調整してバタークリームを得た。得られたバタークリームの口どけを以下の基準に従って評価した。評価は5名のパネラーの総合評価とし、結果を表1、2に示した。
なお、例5~8は比較例である。
可塑性油脂組成物の組織の状態
◎ キメが細かく良好
○ 良好
△ キメがやや粗くなっている
▲ キメが粗くなっている
× 粗大結晶が見られる
バタークリームの口どけ
◎ 非常に良好
○ 良好
△ ややとけ残り感がある
▲ とけ残り感がある
× とけ残り感が非常に強い
表3、4の配合に従って、油脂を混合し、各油脂67質量部に対して乳化剤1.0質量部及び香料0.3質量部を添加したものを加熱融解して油相を調製した。別途、水29.3質量部、食塩1.2質量部、呈味剤0.7質量部及び脱脂粉乳0.5質量部を混合溶解し、水相を調製した。常法に従って、油相に水相を混合攪拌して予備乳化した後、コンビネーターにより急冷混捏し、レスティングチューブを通してシート状に成形して、例9~14の可塑性油脂組成物を製造した。
得られた例9~14の可塑性油脂組成物を2週間冷蔵し、以下の基準に従って、可塑性油脂組成物の組織の状態を評価した。評価は5名のパネラーの総合評価とし、結果を表3、4に示した。
また、強力粉50質量部、中力粉50質量部、砂糖6質量部、食塩1.7質量部、全卵5質量部、乳製品3質量部、ショートニング6質量部、水53質量部、生イースト5質量部及びイーストフード1質量部からなるクロワッサン生地を調製し、生地3kgに対してシート状に成形した例9~14の可塑性油脂組成物を800gのせ、常法に従って、可塑性油脂組成物を生地に折り込み、成形、ホイロ後、焼成してクロワッサンを得た。可塑性油脂組成物の生地折り込み時の作業性及びクロワッサンの食感について、以下の基準に従って評価した。評価は5名のパネラーの総合評価とし、結果を表3、4に示した。
なお、例12~14は比較例である。
可塑性油脂組成物の組織の状態
◎ 非常に良好
○ 良好
△ 細かなヒビがやや見られる
▲ ヒビが目立つ
× 割れている
生地への折り込みの作業性
◎ 伸びが良く、非常に良好
○ 良好
△ やや割れがある
▲ 割れが目立つ
× 割れが目立ち、伸びが無い
クロワッサンのジューシー感
◎ ジューシー感が強く、非常に良好
○ ジューシー感があり、良好
△ 普通
▲ ジューシー感に乏しい
× パサパサしている。
表5の配合に従って、油脂を混合し、各油脂84.4質量部に対して乳化剤0.6質量部を添加したものを加熱融解して油相を調製した。別途、水15.0質量部からなる水相を用意した。常法に従って、油相に水相を混合攪拌して予備乳化した後、オンレーターにより急冷混捏し、例15~18の可塑性油脂組成物を製造した。
得られた例15~18の可塑性油脂組成物を6週間10℃で冷蔵し、以下の基準に従って、可塑性油脂組成物の組織の状態を評価した。評価は5名のパネラーの総合評価とし、結果を表5に示した。
また、例15~18の可塑性油脂組成物100質量部、強力粉37.9質量部、薄力粉62.1質量部、砂糖100質量部、全卵110質量部及びベーキングパウダー4.0質量部からなるマドレーヌ生地をそれぞれ調製し、カップに20gずつ充填した後、焼成して、例15~18それぞれの可塑性油脂組成物を使用したマドレーヌを得た。マドレーヌの食感(風味、ジューシー感)について、以下の基準に従って評価した。評価は5名のパネラーの総合評価とし、結果を表5に示した。
なお、例18は比較例である。
可塑性油脂組成物の組織の状態
◎ キメが細かく良好
○ 良好
△ キメがやや粗くなっている
▲ キメが粗くなっている
× 粗大結晶が見られる
マドレーヌの風味
◎ 乳味感が強く、非常に良好
○ 乳味感があり、良好
△ 普通
▲ 乳味感に乏しい
× パサパサしている。
マドレーヌのジューシー感
◎ ジューシー感が強く、非常に良好
○ ジューシー感があり、良好
△ 普通
▲ ジューシー感に乏しい
× パサパサしている。
Claims (5)
- 30~70質量%の水相を有さない可塑性油脂組成物を含有するバタークリームであって、
前記バタークリームに含まれる油脂が、
以下の油脂Aを20~51質量%、以下の油脂Bを15~80質量%、かつ、油脂Aと油脂Bを合計で51~100質量%含有し、
炭素数16以上の飽和脂肪酸のみからなるトリ飽和トリグリセリド(H3)の含有量が2.5~10質量%であり、
前記H3中に占めるトリパルミチン(P3)の割合(質量比、P3/H3)が0.5以上である、
前記バタークリーム
(ただし、
油脂Aは、バターオイルであり、
油脂Bは、全構成脂肪酸中に、炭素数14以下の脂肪酸を20~55質量%、パルミチン酸を20~55質量%、及びステアリン酸を2~10質量%含有するエステル交換油、
である)。 - 上記バタークリームに含まれる油脂が、上記油脂Bを31~80質量%含有する、請求項1に記載のバタークリーム。
- 上記バタークリームに含まれる油脂が、上記油脂Bを15~50質量%含有する、請求項1に記載のバタークリーム。
- 上記油脂Bが、炭素数16以上の飽和脂肪酸のみからなるトリ飽和トリグリセリド(H3)を15質量%以下含有する、請求項1~3の何れか1項に記載のバタークリーム。
- 上記バタークリームに含まれる油脂中の上記油脂Aと油脂Bの合計含有量の上限が70質量%であって、さらに以下の油脂Cを10~49質量%含有する、請求項1~4の何れか1項に記載のバタークリーム
(ただし、
油脂Cは、パーム系油脂、パーム系油脂のエステル交換油の中から選ばれた1種又は2種以上の油脂、
である)。
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