JP6622576B2 - 油脂組成物とその製造方法および乳化油脂組成物 - Google Patents

油脂組成物とその製造方法および乳化油脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、風味豊かで後味の優れた油脂組成物とその製造方法およびこの油脂組成物が乳化されたものである乳化油脂組成物に関する。
ホイップクリーム、マーガリンに代表される乳化油脂組成物では、乳脂肪の自然な風味を得ることを目的として、従来より原料としてバターおよび生クリームなどの乳製品や乳脂肪と他油脂との混合油である乳脂肪含有調整脂(以下単に調整脂と呼称する)などが利用されてきた。一方、近年バターおよび生クリームなどの原料である生乳の生産量が低下し、スーパーマーケットの乳製品コーナーからこれらの乳製品が姿を消したり、入荷があっても販売数が制限されるなどして、供給が追いつかない事例も出てきている。このような背景から、バターや生クリームなどに代わる、乳脂肪の自然な風味を持った油脂組成物の開発が望まれていた。
特にホイップクリームについては、従来の調整脂を用いて製造した場合、乳脂肪特有のエグ味が強く、後味が悪いため消費者から敬遠される傾向にあった。このため、乳脂肪の自然な風味を有しつつ、後味が良好な油脂組成物の開発が強く望まれている。
油脂組成物の風味を改善することを目的とする油脂の脱臭方法としては、これまでに活性炭や白土などの吸着剤を用いる方法や、高真空下での蒸留やこれに水蒸気吹き込みを併用した方法などが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特許文献1には、副生成物が少なく、風味および色相の良好な精製油脂の製造方法が提案されている。この精製油脂の製造方法においては、油脂に吸着剤として白土を接触させる処理を行った後に、特定の温度範囲で油脂と水蒸気とが接触する時間を短時間に制御する処理を行っている。
特許文献2には、食用油の風味上好ましくない物質として、アルデヒドを除去する方法が提案されている。この方法においては、食用油をアミノ酸と吸着剤に接触させることによって、アルデヒドを除去しており、アミノ酸としてはリジンの利用が好ましく、また、吸着剤としてはシリカの利用が好ましいとされている。
特許文献3には、適度な風味とコク味があり、加熱調理に適した食用油脂の製造方法が提案されている。この方法においては、使用する油脂の脱臭温度を200℃未満、好ましくは120℃〜160℃の範囲で、20分〜90分間脱臭することによって、くどさや雑味がとれ、風味の良好な食用油脂が得られるとされている。また、この食用油脂を用いて加熱調理した食品は、雑味がとれることによってコク味があり、しかもスパイス立ちがよいとされている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載の技術において、乳脂肪の自然な風味は残したまま、乳脂肪特有のエグ味や風味を低下させる香気成分を効率よく除去できるかどうかについては、十分に検討されていなかった。
一方、特許文献4では、乳脂肪の劣化によって生じた酸化臭などの異臭を効率よく除去する方法が提案されている。この方法では、バターやバターオイルなどの乳脂肪を溶融または溶解した再構成液状乳脂肪を、合成吸着樹脂を充填したカラムに通し、合成吸着樹脂に接触させることにより、脱臭することができるとされている。
特開2011−144343号公報 特開2013−521004号公報 特開2013−255484号公報 特開平6−7084号公報
しかしながら、特許文献4に記載された方法においては、脂肪酸以外の香気成分の除去については示唆されていない。しかも、再構成液状乳脂肪を合成吸着樹脂を充填したカラムに通過させるカラム処理だけでは、除去を必要とする酸化臭などの異臭の原因となる香気成分が規定の範囲まで除去されない。また、再構成液状乳脂肪の溶融状態を保つ必要があるため、合成吸着樹脂を充填したカラムを再構成液状乳脂肪の融点以上に保温可能な大型のカラムオーブンなどの設備コストが負担となる。
このように、乳脂肪の自然な風味を有しつつ、後味が良好な油脂組成物の開発が望まれていた。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、乳脂肪の自然な風味を有しつつ、後味が良好な油脂組成物とその製造方法および乳化油脂組成物を提供することを課題とする。
本発明の油脂組成物は、乳脂肪を含む油脂組成物であって、香気成分中における酪酸およびカプロン酸の含有量の合計が2000ppb以下、ペンタナールの含有量が50ppb以下であって、かつヘキサナール、オクタナールおよび2−ノネナールからなるアルデヒド類の含有量の合計が150ppb以下であることを特徴としている。
本発明の油脂組成物では、香気成分中における酪酸およびカプロン酸の含有量の合計が1000ppb以下であることが好ましい。
本発明の油脂組成物では、香気成分中における2−ヘプタノン、2−ノナノンおよび2−ウンデカノンからなるケトン類の含有量の合計が3000ppb以下であることが好ましい。
また、本発明の油脂組成物では、L表色系における色相が、明度L値が80以上、色度a値が−5以上かつ色度b値が10以下であることが好ましい。
さらに、本発明の油脂組成物では、酸価が0.3以下であることが好ましい。
本発明の油脂組成物の製造方法は、上記の発明の乳脂肪を含む油脂組成物の製造方法であって、脱色処理の後に、120℃〜200℃の範囲の温度で脱臭処理を行うことを特徴とする。
また、本発明の油脂組成物の製造方法では、150℃〜200℃の範囲の温度で脱臭処理を行うことや、10torr以下とくに5torr以下の真空度での水蒸気蒸留により脱臭処理を行うことが好ましい。
本発明の乳化油脂組成物では、上記の油脂組成物が乳化されたものであることが好ましい。
本発明によれば、乳脂肪の自然な風味を有しつつ、後味が良好な油脂組成物とその製造方法およびこの油脂組成物が乳化されたものである乳化油脂組成物が得られる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の油脂組成物は、乳脂肪を含む油脂組成物であって、香気成分中における酪酸およびカプロン酸の含有量の合計が2000ppb以下、ペンタナールの含有量が50ppb以下であって、かつヘキサナール、オクタナールおよび2−ノネナールからなるアルデヒド類の含有量の合計が150ppb以下であることを特徴とする。本発明の油脂組成物は、乳脂肪100%の油脂のみからなるもの、および乳脂肪とその他の食用油脂とを混合して得られる調整脂を含むものとする。
また、本発明の油脂組成物では、香気成分中における酪酸およびカプロン酸の含有量の合計が、1000ppb以下であることがより好ましい。
前記乳脂肪としては、例えば、バターを一旦溶解して乳タンパク質および水分を除去することで得られるバターオイルなどが例示される。
前記食用油脂としては、通常食品に添加することができる油脂であれば特に制限はなく、また、常温で液体、固体等の形態は問わない。食用油脂の具体例としては、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米糠油、小麦胚芽油、ヤシ油、カカオ脂、パーム油、パーム核油および藻類油等の植物油脂が例示される。また、豚脂、牛脂、魚油等の動物油脂が例示される。また、これらの食用油脂の分別油、硬化油、エステル交換油などを配合したものであってもよい。食用油脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用した調合油を用いてもよい。
調整脂に含まれる食用油脂の量としては、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
調整脂に含まれる食用油脂の量が50質量%を超えると、乳脂肪の風味が低下し、その結果所望の乳脂肪の風味を得るためには、油脂組成物や乳化油脂組成物などの製品中における調整脂の配合比率を増やさなければならず、配合検討においても不都合を生じる。
トランス脂肪酸は、動脈硬化症や心臓疾患のリスクを増大させると言われており、健康への影響が懸念される点を考慮し、本発明の油脂組成物に使用される食用油脂では、トランス脂肪酸の含有量が油脂全量に対して、例えば、0.1質量%以上3.0質量%以下の範囲が例示される。トランス脂肪酸の含有量を3.0質量%以下にする点からは、硬化処理していない油脂を主体とし、適宜に完全水素添加した極度硬化油を配合したものが好ましい。ここで植物油脂の極度硬化油としては、パーム極度硬化油、ヤシ極度硬化油、パーム核極度硬化油、菜種極度硬化油などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
特にホイップクリームの製造においては、ホイップ後やナッペや注入後の二次加工後に経時的にクリームが硬くなっていく現象(シマリ)が軽減されることから、ヤシ油に比べて融点が高いパーム核油およびパーム油やそれらの分別油や極度硬化油、エステル交換油を用いることが好ましい。マーガリンの製造においては、例えばスプレッド用途やバタークリーム用途のマーガリンにおいて、マーガリンの保形性と口どけから、パーム油およびヤシ油、および、ナタネ油に代表される液状油、それらの分別油や極度硬化油、エステル交換油を用いることが好ましい。
また、本発明の油脂組成物には、その風味、物性を損なわない限りにおいて乳化剤、抗酸化剤、色素等、適宜に添加し用いることができる。
本発明の油脂組成物では、乳脂肪の自然な風味に寄与度が高いと考えられる香気成分であって、かつ定量可能である10成分についてGC−MSを用いて定量評価することによって油脂組成物を特定することができる。
前記乳脂肪の自然な風味に寄与度が高いと考えられる香気成分であって、かつ定量可能である10成分としては、揮発性の高い脂肪酸である酪酸やカプロン酸、アルデヒド類であるペンタナール、ヘキサナール、オクタナール、2−ノネナール、ケトン類である2−ペンタノン、2−ヘプタノン、2−ノナノン、2−ウンデカノンが挙げられる。
これらの香気成分の内、脂肪酸およびアルデヒド類は、乳製品特有の好ましくない臭気の原因物質であって、可能な限り低減化させることが望ましい。具体的には、香気成分中における酪酸およびカプロン酸の含有量の合計が2000ppb以下であることが例示され、より好ましくは1000ppb以下であることが例示される。また、香気成分中におけるペンタナール含有量が50ppb以下であって、かつヘキサナール、オクタナールおよび2−ノネナールからなるアルデヒド類の含有量の合計が150ppb以下であることが例示される。各香気成分の含有量が上記の範囲内であれば、乳製品特有の好ましくない臭気を感じることがなく、しかも乳脂肪の自然な風味を有しつつ、後味が良好な油脂組成物が得られる。
本発明の油脂組成物では、香気成分中における2−ペンタノン、2−ヘプタノン、2−ノナノンおよび2−ウンデカノンからなるケトン類のうち、2−ペンタノンにおいては含有量が500ppb以下であることが好ましい。また、その他の3種ケトン類(2−ヘプタノン、2−ノナノン、2−ウンデカノン)の含有量の合計が3000ppb以下であることが好ましい。ケトン類は甘みに関わる香気成分であるため、本発明の油脂組成物が乳化されたものである乳化油脂組成物がマーガリンである場合、上記の3種ケトン類の含有量の合計が500ppb以上3000ppb以下の油脂組成物を用いることで、乳成分特有の甘みを備え、かつ後味の良好なマーガリンを得ることができる。
一方、乳化油脂組成物が、ホイップクリームの場合、上記の3種ケトン類の含有量の合計が500ppb未満の油脂組成物を用いることで、すっきりとした乳脂の後味を感じるホイップクリームを得ることができる。
上記の香気成分は、例えば、SPMEファイバーに吸着固定した上で、GC−MSを用いて測定、定量することが好ましく例示される。
さらに、本発明の油脂組成物では、酸価が0.3以下であることが好ましく考慮される。酸価が上記の範囲内であれば、上記アルデヒド類などが低減していることを確認することができ、油脂組成物の風味が良好なものとなる。なお、酸価は、基準油脂分析試験法2.3.1−2013に従って試料1g中に含有する遊離酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg量で測定することが例示される。
(油脂組成物の製造方法)
本発明では、通常の食用油脂の製造工程における脱臭条件よりも低温条件下で、油脂組成物の脱臭処理を行うことにより、乳脂肪の自然な風味を有しつつ、後味が良好な油脂組成物およびこれを用いた乳化油脂組成物を得ることができる。
本発明では、油脂組成物に対し、例えば、吸着剤として白土を添加し、常圧または減圧条件下で加熱することによって、油脂組成物を脱色し、色相を改善させることができる。また、本発明では、脱臭工程として油脂組成物に対し、減圧条件下で過熱し、水蒸気蒸留を行うことによって、好ましくない香気成分を除去することができる。
本発明で用いる白土は、カオリンやモンモリロン石と呼ばれる粘土鉱物を主成分とした酸性白土や、酸性白土を硫酸や塩酸などで活性化処理を施した活性白土であり、産地により、pHや成分が異なる。本発明において使用する白土としては、例えば、pH2.0以上、好ましくはpH3.0以上のものが例示される。白土のpHの測定方法としては、JIS K 5101−17−1:2004 顔料試験方法などが例示される。
また、本発明において使用する白土の二酸化ケイ素(SiO)含量は、例えば、白土の全組成の65質量%以上85質量%以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは68質量%以上83質量%以下の範囲が例示される。SiO含量が、上記の範囲内であれば、乳脂肪および調整脂中の好ましくない香気成分をより低減させることができる。このような白土の市販品としては、例えば、GALLEON EARTH V2(pH3.3、SiO含量79.8%、水澤化学工業株式会社製)等が例示される。
上記の白土の添加量は、油脂組成物の全量に対して、例えば、0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは0.25質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以上5質量%の範囲が例示される。白土の添加量が上記の範囲内であれば、油脂組成物の色味が明るい白色となり、汎用性が高く多様な最終製品に利用することができる油脂組成物を得ることができる。
また、脱色処理の条件としては、常圧下、減圧下どちらでも可能であるが、効率的に脱色反応が行える点からも減圧下が好ましい。その他の条件として、例えば、温度が70℃以上120℃以下の範囲であって、真空度が30torr以下の範囲が例示される。さらに、脱色処理の時間は、白土の水分が抜けるのに十分であれば特に制限はなく、例えば、10分以上30分以下の範囲が例示される。
脱臭処理の工程は、油脂を減圧下で加熱して水蒸気蒸留し、油脂中の食用上好ましくない匂い成分や呈味成分を除去する工程である。このような脱臭処理の工程を実現するための脱臭装置としては、バッチ式、半連続式、連続式等の型が知られる。また、構造に応じて、ガードラー式、キャンプロ式、キャンプロ−ミウラ式等の各種の脱臭装置が知られる。本発明においても、バッチ式、半連続式、連続式の脱臭装置を使用することができる。
脱臭処理の条件としては、脱臭温度が120℃以上200℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは、150℃以上200℃以下、最も好ましくは160℃以上200℃以下の範囲が例示される。脱臭温度が上記の範囲内であれば、乳脂肪の自然な風味を有しつつ、エグ味の原因となる香気成分が所望の水準まで除去されているため、後味が良好な油脂組成物を得ることができる。また、脱臭温度が150℃以下では、ケトン類の量も多く、しかも白土の味が抜けきらず、所望の自然な風味を備える油脂組成物が得られない。脱臭温度が200℃以上では、脱臭によって不要な香気成分が増加すると共に、乳脂肪の後味も抜けてしまい、所望の自然な風味を備える油脂組成物が得られない。
また、その他の脱臭処理の条件としては、例えば、10torr以下、さらに好ましくは5torr以下の真空度が例示される。ケトン類の量は脱臭効率に応じて変化するため、真空度を3torr以上5torr以下とすることで乳脂の甘みを感じる油脂組成物を得ることができる。一方、真空度を3torr未満とすることでケトン類の量がほぼ0ppbとなり、すっきりとした乳脂の後味を持つ油脂組成物を得ることができる。
また、真空解除は、乳脂肪および調整脂の温度が70℃程度まで低下してから行うことが好ましく考慮される。さらに、脱臭時間としては、例えば、20分程度、水蒸気の吹き込み量としては、例えば、対油2質量%が例示される。
このようにして得られた油脂組成物は用途に合わせ、抗酸化剤、乳化剤などを添加することができる。また、油脂組成物は、単独もしくは他の食用油脂と配合して、製菓用、製パン用、ホイップクリーム用油脂、ショートニング、マーガリン、練り込み用油脂、ロールイン用油脂、マヨネーズ用油脂、チョコレート用油脂、無水クリーム用油脂、スプレー用油脂等の食品として用いることができる。そして上記のような油脂を用いてホイップクリーム、乳代替組成物、デザート、アイスクリーム、飲料、マヨネーズ、ドレッシング、チョコレート、無水クリーム、食パン、菓子パン、パイ、デニッシュ、シュー、ドーナツ、ケーキ、クラッカー、クッキー、ビスケット、ワッフル、スコーン、スナック菓子、キャンディー、ガム、米菓、サンドクリーム、フィリングクリーム、サラダ、レトルト食品、ルー、冷凍食品等の食品を製造することができる。
(脱色処理および脱臭処理後の評価測定)
本発明の油脂組成物では、上記の脱色処理について、処理後の色相をL表色系によって評価する。L値は、色度を示すa、b軸よりなる直交座標と、これに垂直なL軸とから構成される色立体を成す表色系であり、aが正側で増加すると赤味、負側で増加すると緑味が増し、またbが正側で増加すると黄味、負側で増大すると青味が増していることを意味する。L値は明度に対応し、L=100のときは白、L=0のときは黒となり、L値が大きくなるほど明るくなる傾向にある。L表色系による色相の測定は、例えば、色差計(SE6000、日本電色工業(株)製)などを用いて行うことができる。
本発明の油脂組成物は、L表色系における色相が、Lが80以上、aが−5以上、bが10以下であることが考慮される。L表色系における色相が上記の範囲内であれば、油脂組成物の色味は、ほぼ白色となり、汎用性が高く様々な最終製品に使用することが可能となる。
(乳化油脂組成物の調製)
本発明の乳化油脂組成物は、上記の油脂組成物を乳化させたものであり、その乳化油脂組成物は、水中油型、油中水型、水中油中水型、油中水中油型のいずれの形態であってもよい。例えば、乳化油脂組成物が水中油型の乳化油脂組成物である場合、油脂組成物の配合量は特に制限されないが、乳化油脂組成物全量に対して、例えば、25質量%以上40質量%以下の範囲で配合されることが好ましく、さらに好ましくは30質量%以上40質量%以下の範囲が例示される。
本発明の乳化油脂組成物には、乳化剤を配合してもよい。乳化剤としては、例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が用いられる。中でも、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルが好適に用いられる。
本発明の乳化油脂組成物における乳化剤の含有量は、例えば、油脂組成物および乳化油脂組成物全量に対して0.2質量%以上1.2質量%以下の範囲が好ましく、0.4質量%以上1.0質量%以下の範囲がさらに好ましく考慮される
レシチンは、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン等のリン脂質が主成分であり、大豆、卵等から得られるペースト状のレシチンや、これを粉末化した高純度レシチン、溶剤で分画した分画レシチン、酵素処理したリゾレシチンなどを使用できる。
グリセリン脂肪酸エステルは、結晶核を形成しやすいという観点からは、構成脂肪酸として飽和脂肪酸を含むものが好ましく、中でも、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸により構成されるモノグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。このようなモノグリセリン飽和脂肪酸エステルを使用すると、核形成が起こりやすく、乳化安定性の良い乳化油脂組成物が得られる。
本発明の乳化油脂組成物は、以上の油脂成分と乳化剤と水以外に、本発明の所望の目的、効果を阻害しない範囲で、あるいは副次的効果を与えるものとして、その他の成分を配合することができる。その他の成分としては、乳製品、糖質、リン酸塩等の塩類など、その他、乳化油脂組成物に通常使用される各種の食品素材や食品添加物などが挙げられる。その他の成分の配合量は、乳化油脂組成物全量に対して合計で、例えば、3質量%以上10質量%以下の範囲が好ましく例示される。
乳製品としては、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳、バターミルクパウダー、ホエイパウダー、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、クリームパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、牛乳、生クリーム等が例示され、また上記乳製品由来の乳タンパク質やその分解物なども好適に利用できる。
上記の乳製品の配合量としては、例えば、脱脂粉乳については、製品中1質量%〜15質量%含むことが好ましく、さらには3質量%〜10質量%含むことが好ましい。脱脂濃縮乳については、製品中5質量%〜20質量%含むことが好ましく、さらには10質量%〜15質量%を含むことが好ましい。生クリームについては、製品中5質量%〜20質量%含むことが好ましく、さらに好ましくは10質量%〜17質量%含むことが好ましい。
糖質としては、例えば、砂糖、異性化糖、液糖、澱粉糖化物、糖アルコール、乳糖、寒天、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、グルコマンナン、ジェランガム、大豆多糖類、タラガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、タマリンドシードガム、ペクチン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースなどが例示される。
本発明の乳化油脂組成物は、例えば、水中油型の乳化物である場合、次の手順で製造することができる。
まず油脂組成物、乳化剤、水などの各成分を混合して乳化する。乳化にはホモミキサーなどを用いることができる。乳化剤のレシチンは水相、油相のいずれに添加してもよいが、油相に添加しておくことが好ましい。また、乳製品や塩類等を用いる場合、これらは予め水に溶解して用いる。乳化は、油相については配合する油脂組成物が完全に溶解する温度に加温し、水相については混合後の油相が温度低下を起こさない温度に加温し、油相と水相を混合し、例えば60℃〜70℃で行うことができる。
次に、水相と油相が乳化した後、均質化を行う。均質化は、高圧ホモジナイザーを用いて、従来より乳化油脂組成物の製造に用いられている圧力等の条件を適宜に設定して行うことができる。この均質化の工程において油滴のメディアン径を調整することができる。また均質化の前後の工程として、殺菌または滅菌処理をすることができる。
そして、均質化後の乳化物を冷却することにより、本発明の乳化油脂組成物を製造することができる。冷却は、短時間で目的の温度まで冷却できる設備を用いて行うことが好ましく、このような設備としては、例えば、プレート式熱交換器、チューブ式熱交換器などを挙げることができ、このような設備を用いて短時間で1℃以上7℃以下の温度範囲まで冷却することが好ましい。このような温度範囲であると、製品の粘度増加も抑制できる。乳化油脂組成物は、冷却後、例えば1〜2日程度放置し安定化させる(エージング)。その後、充填され製品となる。
また、乳化油脂組成物がマーガリンに代表される油中水型の乳化油脂組成物である場合、前記の油脂組成物を加温した後、乳化剤等の副原料を適宜配合し、水相を添加した後、混練し冷却して可塑化することで得られる。冷却、可塑化する装置としては、乳化物を急冷し練り合わせることができるものであれば特に限定されず、従来より知られているマーガリン製造機やそれに準じた構成の装置等を用いることができる。
このようにして得られたマーガリンは、スプレッド用としてパンの表面に塗布したり、練り込み用としてパンの製造に用いたり、バタークリーム用としてホイップして使用するなどして好適に食品製造に用いることができる。
(乳化油脂組成物を用いたホイップドクリームの製造方法)
本発明の乳化油脂組成物を用いたホイップドクリームは、前記の水中油型乳化油脂組成物を起泡してなる。
具体的には、例えば、本発明の乳化油脂組成物を、泡立器具、または専用のミキサーを用いて空気を抱き込ませるように攪拌することによって、起泡状態を呈するホイップドクリームを製造することができる。なお、攪拌する際に、グラニュー糖、砂糖、液糖などの糖類や、アルコール類、香料、増粘安定剤、生クリームなどを添加してもよい。
このようにして得られたホイップドクリームは、食品の各種用途、例えば、ショートケーキ等のナッペ用や、ロールケーキ、パン、パイ、シュー、デニッシュ、クッキー、ビスケット等のサンド用などに好適に用いることができる。
上記の食品にホイップドクリームを供給する工程は、通常二次加工と呼称され、この二次加工の手法としては、例えば、ホイップ後にナッペマシーンや、デポジッター等を通過させる機械を用いた成形手法、またはスパチュラを用いたナッペやしぼり袋を用いた注入等、手作業による成形手法など手法などが例示される。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
バターオイル(森永乳業(株)製)100%の油脂400gに対し、1質量%の活性白土GALLEON EARTH V2(pH3.3、SiO含量79.8%、水澤化学工業株式会社製)を添加して、110℃、30torrの条件で15分処理し、脱色処理を行った。その後白土を濾過し、120℃、4.5torrの条件で20分間の脱臭処理を行い、油脂組成物を得た。
(実施例2)
脱臭処理の条件を160℃、2torrに変更したこと以外は、実施例1と同様にして油脂組成物を得た。
(実施例3)
原料として調整脂(カンピーナ社パラリンココ 乳脂肪69質量%ヤシ極度硬化油31質量%品)を用い、脱臭処理の条件を160℃、2torrに変更したこと以外は、実施例1と同様にして油脂組成物を得た。
(実施例4)
脱臭処理の条件を160℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして油脂組成物を得た。
(実施例5)
脱色処理時の白土の添加量を対油0.5質量%とし、脱臭処理の条件を180℃、4.5torrに変更したこと以外は、実施例1と同様にして油脂組成物を得た。
(実施例6)
脱臭処理の条件を180℃、2torrに変更したこと以外は、実施例1と同様にして油脂組成物を得た。
(実施例7)
原料として調整脂(カンピーナ社パラリンココ 乳脂肪69質量%ヤシ極度硬化油31質量%品)を用い、脱臭処理の条件を180℃、2torrに変更したこと以外は、実施例1と同様にして油脂組成物を得た。
(実施例8)
実施例7の油脂組成物約50gを、キャップ付き瓶に取り、40℃の恒温槽にて遮光下1週間保管することにより加温処理したものである。
(実施例9)
脱臭処理の条件を180℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして油脂組成物を得た。
(比較例1)
白土を添加せず、脱色処理および脱臭処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして油脂組成物を得た。
(比較例2)
原料として調整脂(カンピーナ社パラリンココ 乳脂肪69質量%ヤシ極度硬化油31質量%品)を用い、白土を添加せず、脱色処理および脱臭処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして油脂組成物を得た。
(比較例3)
白土の添加量を対油0.5質量%にて脱色処理を行い、その後、脱臭処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして油脂組成物を得た。
(比較例4)
脱臭処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして油脂組成物を得た。
(比較例5)
原料として調整脂(カンピーナ社パラリンココ 乳脂肪69質量%ヤシ極度硬化油31質量%品)を用い、脱臭処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして油脂組成物を得た。
(比較例6)
脱臭処理の条件を240℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして油脂組成物を得た。
(比較例7)
脱色処理を行わず、脱臭処理の条件を180℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして油脂組成物を得た。
(参考例)
市販のバター(株式会社明治製)を溶解したものを用いた。
<L表色系による油脂組成物の色相測定条件>
実施例1〜9、比較例1〜7および参考例の油脂組成物をバイアルビンに分注し、色差計(SE6000 日本電色(株)製、)を用いて、油脂組成物の色相を測定した。色相は、L表色系によって、表示した。
<酸価の測定条件>
実施例1〜9および比較例1〜7の油脂組成物について、基準油脂分析試験法2.3.1−2013に従って測定した。
<香気成分の測定条件>
実施例1〜9、比較例1〜7および参考例の油脂組成物について、SPME−GC/MS(固相マイクロ抽出−GC/MS)による香気成分の捕集、測定を行った。
SPME−GC/MSによる香気成分の捕集、測定は下記の方法で行った。
油脂組成物2gを20mLバイアルビンに秤量し、シリコンセプタムおよびアルミニウム製のキャップを用いて密封した。40℃恒温槽にて15分間インキュベートし、その後40℃にて25分間SPMEファイバー(50/30 DVB/Carboxen/PD
MS (SUPELCO社製))に香気成分を吸着した後、GC/MSにて測定した。香気成分の分析機器には、Agilent 7890A/5975C GC/MSD (AgilentTechnologies社製)を使用し、Pure−WAX(内径0.2
5mm 長さ30m 膜厚0.25μm Intert Cap社製)カラムを用いた。香気成分の定量は内部標準法にて計算した。
測定条件は以下に示すとおりである。すなわち、スプリットレスモード、注入口温度250℃、キャリアガスHe、カラム初期流量1.0mL/min、オーブン条件40℃3分保持後、230℃まで3℃/minで昇温後、24分保持して、香気成分の分離を行った。MS条件は以下に示すとおりである。すなわち、検出器はイオントラップ型(EIモード)、測定はスキャンモード、MSトラップ温度200℃、トランスファー温度250℃、質量範囲35〜500m/z、スキャン速度0.5sec/scanとした。測定結果の解析は GC/MS付属の解析ソフトを使用して行い、香気成分の同定にはNIST08 Mass Spectral Libraryをデータベースとして使用した。
実施例1〜9および比較例1〜7の油脂組成物について、次の評価を行った。
[油脂組成物の色味の官能評価]
実施例1〜9および比較例1〜7の油脂組成物について、バイアルビンに分注した油脂組成物を目視で確認し、以下の基準で色味を評価した。
◎:油脂組成物の色味が明るい白色に近く、とても良好であった。
○:油脂組成物の色味が白色に近く、良好であった。
△:油脂組成物の色味が白色に近く、やや良好であった。
×:油脂組成物の色味が黄色に近く、良好とはいえなかった。
[油脂組成物の香りの官能評価]
実施例1〜9および比較例1〜7の油脂組成物について、バイアルビンに分注した油脂組成物をパネルの鼻先に呈示し、以下の基準で香りを評価した。
パネルは、五味(甘、酸、塩、苦、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準臭覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判定された20〜40代の男性4名、女性6名を選抜した。
◎:10名中8名以上がクセの無い自然な乳脂の香りであると評価した。
○:10名中7〜5名がクセの無い自然な乳脂の香りであると評価した。
△:10名中4〜3名がクセの無い自然な乳脂の香りであると評価した。
×:10名中2名以下がクセの無い自然な乳脂の香りであると評価した。
[油脂組成物の風味評価]
実施例1〜9および比較例1〜7の油脂組成物について、パネル10人にスポイトを用いて油滴2ccを口に含んでもらい、2秒後に感じる風味を以下の基準で評価した。また、該油滴を飲み込んでもらい、後に残る風味(乳脂のコク味)を以下の基準で評価した。
パネルは、五味(甘、酸、塩、苦、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準臭覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判定された20〜40代の男性4名、女性6名を選抜した。
(口に含んで2秒後に感じる乳脂の味の評価基準)
◎:10名中8名以上がトップに自然な乳脂の味があると評価した。
○:10名中7〜5名がトップに自然な乳脂の味があると評価した。
△:10名中4〜3名がトップに自然な乳脂の味があると評価した。
×:10名中2名以下がトップに自然な乳脂の味があると評価した。
(飲み込んだ後に感じる乳脂の味)
◎:10名中8名以上が雑味の無い自然な乳脂の味が残ると評価した。
○:10名中7〜5名が雑味の無い自然な乳脂の味が残ると評価した。
△:10名中4〜3名が雑味の無い自然な乳脂の味が残ると評価した。
×:10名中2名以下が雑味の無い自然な乳脂の味が残ると評価した。
実施例1〜9の油脂組成物における各評価項目の評価結果を表1に、比較例1〜7の油脂組成物における各評価項目の評価結果を表2にそれぞれ示す。
Figure 0006622576
Figure 0006622576
表1、2に示すように、実施例1〜9と比較例1〜7の結果から、単に吸着剤として活性白土を添加するだけでは、香気成分の吸着はほとんど起こらず、むしろpHの低下によって好ましくない風味の原因となる香気成分が増加する傾向が示唆された。
また、実施例1〜9と比較例6の結果から、120℃以上180℃以下の温度範囲で脱臭処理を行うことにより、油脂組成物の色味が良好であって、しかも乳脂肪の自然な風味を有しつつ、後味が良好な油脂組成物が得られることが示された。また、真空度が2torrと高い実施例2、3、6、7、8では、甘い香りを呈する香気成分である3種類のケトン類の含有量がほぼ0ppbとなり、非常にすっきりとした風味の油脂組成物が得られることが確認された。
さらに、実施例1〜9と比較例7の結果から、脱色処理をせずに脱臭処理を行っても、所望の水準まで香気成分を減少させることができないことが示された。
なお、実施例1〜9と参考例であるバターの香気成分の結果から、本発明の油脂組成物の風味は、バターそのものとは全く別異のものであることが確認された。
これらの結果から、本発明の油脂組成物は、乳脂肪の自然な風味を有しつつ、後味が良好であることが示唆されていると考えられる。
次に、表1に示した実施例3、6、7、9および表2に示した比較例2、5の油脂組成物を原料の一つとして用い、ホイップドクリームを作製した。
<水中油型乳化物の製造1>
表3、4に記載した配合により、油分40質量%の水中油型乳化物を得た。具体的には、表3、4に記載した配合にて調合油を作製し、該調合油40質量%を70℃に調温し、乳化剤としてレシチン0.35質量%、モノグリセリン脂肪酸エステル0.08質量%を添加後、溶解させ油相とした。一方、水54.2質量%に脱脂粉乳5質量%、ショ糖脂肪酸エステル0.15質量%、リン酸ナトリウム0.2質量%、増粘多糖類0.02質量%を添加し、水相を得た。次に、該水相に該油相を添加し、ホモミキサーにて予備乳化を行った後、高圧ホモジナイザーにて均質化処理を行った。その後、殺菌工程として140℃にて2〜15秒の殺菌を行い、その後プレート式冷却機により製品を冷却し、以下の配合の水中油型乳化物を得た。
調合油 40質量%
乳化剤 0.58質量%
脱脂粉乳 5質量%
リン酸ナトリウム 0.2質量%
増粘多糖類 0.02質量%
水 54.2質量%
<ホイップドクリームの作製1>
卓上ミキサー(Kitchen Aid社製)を用いて上記水中油型乳化物1000gにグラニュー糖135gを添加し比重が0.45になるまでホイップした。得られたホイップドクリームは10℃にて20時間静置した後、官能評価に用いた。
表3に示した実施例10〜17および表4に示した比較例8〜11の乳化油脂組成物について次の評価を行った。
[ホイップドクリームの風味評価1]
表3に示した実施例10〜17および表4に示した比較例8〜11の配合にて水中油型乳化物を製造し、ホイップして得たホイップドクリームをパネル10名に試食してもらい、風味を以下の基準で評価した。
パネルは、五味(甘、酸、塩、苦、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準臭覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判定された20〜40代の男性4名、女性6名を選抜した。
(トップに感じる乳脂の味の評価基準)
◎:10名中8名以上がトップに自然な乳脂の味があると評価した。
○:10名中7〜5名がトップに自然な乳脂の味があると評価した。
△:10名中4〜3名がトップに自然な乳脂の味があると評価した。
×:10名中2名以下がトップに自然な乳脂の味があると評価した。
(ラストに感じる乳脂の味の評価基準)
◎:10名中8名以上がくどくなく、すっきりとした乳脂の味があると評価した。
○:10名中7〜5名がくどくなく、すっきりとした乳脂の味があると評価した。
△:10名中4〜3名がくどくなく、すっきりとした乳脂の味があると評価した。
×:10名中2名以下がくどくなく、すっきりとした乳脂の味があると評価した。
(乳脂の香りの評価基準)
◎:10名中8名以上が自然な乳脂の香りがあると評価した。
○:10名中7〜5名が自然な乳脂の香りがあると評価した。
△:10名中4〜3名が自然な乳脂の香りがあると評価した。
×:10名中2名以下が自然な乳脂の香りがあると評価した。
実施例10〜17および比較例8〜11おける各評価項目の評価結果を表3、4に示す。
Figure 0006622576
Figure 0006622576
表3、4にそれぞれ示すように、ホイップドクリームにおいては実施例10、14と比較例8の結果から、ケトン類の少ない油脂組成物を使用することで、ラストにくどさを感じないすっきりとした乳脂の味を感じると評価された。
また、表1に示した実施例3、6、7、9および表2に示した比較例2、5の油脂組成物を原料の一つとしてマーガリンを製造した。
<マーガリンの製造>
表5、6に記載した配合により油分82質量%のマーガリンを得た。具体的には、表5、6に記載した配合にて調合油を作製し、該調合油82質量%に乳化剤を0.15質量%添加し、70℃に調温して油相とした。一方、水15.35質量%に脱脂粉乳1.5質量%、食塩1質量%を添加し、85℃で加熱殺菌して水相を得た。次に、該油相に該水相を添加し、プロペラ攪拌機で攪拌して、油中水型に乳化した後、コンビネーターによって急冷捏和して、下記の配合割合のマーガリンを得た。
調合油 82質量%
乳化剤 0.15質量%
脱脂粉乳 1.5質量%
食塩 1質量%
水 15.35質量%
なお、表5、6中に記載したエステル交換油1は、パーム核極度硬化油26質量%、パーム極度硬化油24質量%、パーム油50質量%の3種の食用油脂の混合油をランダムエステル交換することによって得られるエステル交換油である。また、エステル交換油2は、パーム分別軟質部エステル交換油(ヨウ素価56)である。
表5に示した実施例18〜25および表6に示した比較例12〜15の乳化油脂組成物について次の評価を行った。
[マーガリンの風味評価]
表5に示した実施例18〜25および表6に示した比較例12〜15の配合にて製造したマーガリンをパネル10名に試食してもらい、風味を以下の基準で評価した。
パネルは、五味(甘、酸、塩、苦、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準臭覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判定された20〜40代の男性4名、女性6名を選抜した。
(トップに感じる乳脂の味の評価基準)
◎:10名中8名以上がトップに自然な乳脂の味があると評価した。
○:10名中7〜5名がトップに自然な乳脂の味があると評価した。
△:10名中4〜3名がトップに自然な乳脂の味があると評価した。
×:10名中2名以下がトップに自然な乳脂の味があると評価した。
(ラストに感じる乳脂の味の評価基準)
◎:10名中8名以上が後味に甘みがあり、自然な乳脂の味があると評価した。
○:10名中7〜5名が後味に甘みがあり、自然な乳脂の味があると評価した。
△:10名中4〜3名が後味に甘みがあり、自然な乳脂の味があると評価した。
×:10名中2名以下が後味に甘みがあり、自然な乳脂の味があると評価した。
(乳脂の香りの評価基準)
◎:10名中8名以上が自然な乳脂の香りがあると評価した。
○:10名中7〜5名が自然な乳脂の香りがあると評価した。
△:10名中4〜3名が自然な乳脂の香りがあると評価した。
×:10名中2名以下が自然な乳脂の香りがあると評価した。
Figure 0006622576
Figure 0006622576
表5、6にそれぞれ示すように、マーガリンでは実施例24の結果からケトン類がある程度含まれている油脂組成物を使用することで、後味の良い甘みのある自然な乳脂の味を感じると評価された。
次に、実施例3、6、7の油脂組成物を原料の一つとして用い、配合の異なるホイップドクリームを作製した。
<水中油型乳化物の製造2>
表7に記載した配合により、油分40質量%の水中油型乳化物を得た。具体的には、表7に記載した配合にて調合油を作製し、該調合油33.3質量%を70℃に調温し、乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル0.25質量%、レシチン0.2質量%、モノグリセリン脂肪酸エステル0.07質量%、ソルビタン脂肪酸エステル0.04質量%を添加後、溶解させ油相とした。一方、水31.36質量%に脱脂濃縮乳(よつ葉乳業株式会社製)12質量%、ホエイパウダー5質量%、ショ糖脂肪酸エステル0.08質量%、リン酸ナトリウム0.2質量%を添加し、加熱溶解後、生クリーム(乳脂肪分47質量%品)15質量%、糖類2.5質量%を加え水相を得た。次に、該水相に該油相を添加し、ホモミキサーにて予備乳化を行った後、高圧ホモジナイザーにて均質化処理を行った。その後、殺菌工程として140℃にて2〜15秒の殺菌を行い、再度高圧ホモジナイザーにて均質化処理を行い、その後プレート式冷却機により製品を冷却し、以下の配合の水中油型乳化物を得た。また、実施例29については、調合油37質量%、生クリーム7質量%、ホエイパウダー5.3質量%、水35.36質量%とした以外は実施例26〜28、30と同様の配合により水中油型乳化物の製造を行った。
実施例26〜28、30 実施例29
調合油 33.3質量% 37質量%
乳化剤 0.64質量% 0.64質量%
脱脂濃縮乳 12質量% 12質量%
生クリーム 15質量% 7質量%
ホエイパウダー 5質量% 5.3質量%
糖類 2.5質量% 2.5質量%
リン酸ナトリウム 0.2質量% 0.2質量%
水 31.36質量% 35.36質量%
なお、脱脂濃縮乳(よつ葉乳業株式会社製)は、生乳から油分を除去し無脂乳固形分を30%程度まで濃縮したものであり、水中油型乳化物に配合することにより、乳風味を豊かにすることができる。
また、脱脂濃縮乳は、高温の噴霧乾燥によって得られる脱脂粉乳(スキムミルクパウダー)とは製造法が異なり、製造過程におけるタンパク質の変性、香気成分の変化が抑えられることから、脱脂粉乳よりも自然な乳風味が得られる。
<ホイップドクリームの作製2>
卓上ミキサー(Kitchen Aid社製)を用いて上記水中油型乳化物1000gにグラニュー糖135gを添加し比重が0.45になるまでホイップした。得られたホイップドクリームは10℃にて20時間静置した後、官能評価に用いた。
表7に示した実施例26〜30および表3に示した実施例14の乳化油脂組成物について次の評価を行った。
[ホイップドクリームの風味評価2]
表7に示した実施例26〜30および表3に示した実施例14の配合にて水中油型乳化物を製造し、ホイップして得たホイップドクリームをパネル10名に試食してもらい、風味を以下の基準で評価した。
パネルは、五味(甘、酸、塩、苦、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準臭覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判定された20〜40代の男性4名、女性6名を選抜した。
(トップに感じる乳脂の味の評価基準)
◎+:10名中9名以上がトップに自然な乳脂の味があると評価した。
◎:10名中8〜7名がトップに自然な乳脂の味があると評価した。
○:10名中6〜5名がトップに自然な乳脂の味があると評価した。
△:10名中4〜3名がトップに自然な乳脂の味があると評価した。
×:10名中2名以下がトップに自然な乳脂の味があると評価した。
(ラストに感じる乳脂の味の評価基準)
◎+:10名中9名以上がくどくなく、すっきりとした乳脂の味があると評価した。
◎:10名中8〜7名がくどくなく、すっきりとした乳脂の味があると評価した。
○:10名中6〜5名がくどくなく、すっきりとした乳脂の味があると評価した。
△:10名中4〜3名がくどくなく、すっきりとした乳脂の味があると評価した。
×:10名中2名以下がくどくなく、すっきりとした乳脂の味があると評価した。
(乳脂の香りの評価基準)
◎+:10名中9名以上が自然な乳脂の香りがあると評価した。
◎:10名中8〜7名が自然な乳脂の香りがあると評価した。
○:10名中6〜5名が自然な乳脂の香りがあると評価した。
△:10名中4〜3名が自然な乳脂の香りがあると評価した。
×:10名中2名以下が自然な乳脂の香りがあると評価した。
(ラストに感じる粉っぽさ)
◎:10名中8名以上が後味に粉っぽさを感じないと評価した。
〇:10名中7〜5名が後味に粉っぽさを感じないと評価した。
△:10名中4〜3名が後味に粉っぽさを感じないと評価した。
×:10名中2名以下が後味に粉っぽさを感じないと評価した。
実施例26〜30および実施例14における各評価項目の評価結果を表7に示す。
Figure 0006622576
表7に示すように、ホイップドクリームにおいては、実施例26〜30と実施例14の比較の結果から、脱脂粉乳に代えて生クリームと脱脂濃縮乳を配合することで、自然な乳脂の香りを豊かにすることができ、しかもラストに感じる粉っぽさが低減されていると評価された。

Claims (10)

  1. 乳脂肪を含む油脂組成物であって、香気成分中における酪酸およびカプロン酸の含有量の合計が2000ppb以下、ペンタナールの含有量が50ppb以下であって、かつヘキサナール、オクタナールおよび2−ノネナールからなるアルデヒド類の含有量の合計が150ppb以下である油脂組成物。
  2. 前記香気成分中における酪酸およびカプロン酸の含有量の合計が1000ppb以下である請求項1に記載の油脂組成物。
  3. 前記香気成分中における2−ヘプタノン、2−ノナノンおよび2−ウンデカノンからなるケトン類の含有量の合計が3000ppb以下である請求項1または2に記載の油脂組成物。
  4. L*a*b*表色系における色相が、明度L値が80以上、色度a値が−5以上かつ色度b値が10以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の油脂組成物。
  5. 酸価が0.3以下である請求項1から4のいずれか一項に記載の油脂組成物。
  6. 請求項1に記載の乳脂肪を含む油脂組成物の製造方法であって、脱色処理の後に、120℃〜200℃の範囲の温度で脱臭処理を行う油脂組成物の製造方法。
  7. 10torr以下の真空度での水蒸気蒸留により脱臭処理を行う請求項6に記載の油脂組成物の製造方法。
  8. 150℃〜200℃の範囲の温度で脱臭処理を行う請求項6または7に記載の油脂組成物の製造方法。
  9. 5torr以下の真空度で脱臭処理を行う請求項7または8に油脂組成物の製造方法。
  10. 請求項1から5のいずれか一項に記載の油脂組成物が乳化されたものである乳化油脂組成物。
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