JP5833729B1 - バタークリーム又はベーカリー製品用可塑性油脂組成物とそれを用いた食品の製造方法 - Google Patents

バタークリーム又はベーカリー製品用可塑性油脂組成物とそれを用いた食品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】乳脂分別軟質部を含有していても保存時に染みだしが起こりにくく長期にわたり安定した物性を保つことができ、保型性と口溶けが良く、乳脂特有の風味の発現性とその持続性が良好で、更に焼成品はシトリが良好で、風味と食感の持続性に優れたバタークリーム又はベーカリー製品用可塑性油脂組成物とそれを用いた食品を提供する。【解決手段】10℃の固体脂含量が20%以下である乳脂分別軟質部を含有し、構成脂肪酸の総炭素数が36〜48であるトリグリセリドの含有量が油脂全量に対して15〜50質量%、2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計量が油脂全量に対して30〜65質量%、2飽和トリグリセリドのうち対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)との質量比(SUS/SSU)が0.2〜1.1であることを特徴としている。【選択図】なし

Description

本発明は、バタークリームや、製菓製パンの生地への練り込みなどベーカリー製品に使用される可塑性油脂組成物とそれを用いた食品に関する。
乳脂は風味が良く、従来よりマーガリンやショートニングなどの可塑性油脂に配合されて使用されている。
乳脂は温度による硬さ変化が大きく、例えば5℃では硬く、20℃以上では軟化し、融点である30℃付近で溶解する。そのため可塑性油脂として使用する場合、組み合わせる他の油脂の配合を調整することが行われている。
一方、乳脂の低融点画分である乳脂分別軟質部は、乳脂に比べて低温での結晶量が少ないなど、乳脂とは異なる特性を持ちながらも、乳脂特有の風味を付与することができることから、このような分別乳脂を用いて他の油脂とコンパウンドし可塑性油脂とすることも検討されている(特許文献1、2)。
しかし乳脂は、結晶化が遅いことに起因して、低温で保管中に徐々に結晶化し、経時的に硬くなることから、可塑性油脂に要求される物性を満足するのが難しい。乳脂分別軟質部も、分画方法によっては低温において固体脂を含有しており、この固体脂の結晶化が遅いことから、乳脂と同様に経時的に硬くなるという問題がある。
この経時的に油脂が硬くなる現象を改善するものとして、特許文献1、2の技術が提案されている。
特許文献1には、2位の構成脂肪酸が炭素数16以上の脂肪酸であるトリグリセリドを乳由来の油脂に対して特定比率で配合する技術が提案されている。実施例では主に乳脂について検討され、乳脂分別軟質部としては、パーム核油と大豆極度硬化油とのエステル交換油脂や部分水素添加油とともに配合したものについて、経時での硬さ変化を抑制した結果が示されている。
特許文献2には、全構成脂肪酸中に炭素数14以下の脂肪酸とパルミチン酸を特定量含有するエステル交換油脂を、乳由来の油脂に組み合わせる技術が提案されている。実施例では主に乳脂について検討され、組織の状態などが評価されている。
しかし乳脂分別軟質部は、乳脂とは異なる側面として、経時的に結晶化するものの、非結晶である油脂も多く含有していることから、長期保存した場合に非結晶部分、すなわち2不飽和トリグリセリド及び3不飽和トリグリセリドなどの低融点トリグリセリドが染みだすという問題がある。このような液状油の染みだしは、可塑性油脂の保存時にベタツキや外観変化を生じることにも繋がり、その後の使用時における特性を損なう懸念もあることから、液状油の染みだしを抑制することが望まれている。
そして特許文献1、2の技術では、乳脂分別軟質部と他の油脂とを混合した場合の相溶性についての知見は開示がなく、また実施例において混合された油脂は乳脂分別軟質部の非結晶部分との相溶性が良好なものとは言えず、ここでは染みだしの問題を改善する知見は示されていない。
また、バタークリームや製菓製パンの生地への練り込みに使用される可塑性油脂には、他の原材料とともに混合する際に分散性が良く、速やかに含気させる起泡性が良好なことや、卵を使用する際には抱卵性が良好なことが求められる。また、可塑性油脂やそれを用いたバタークリームは、高温や経時によって形状が崩れにくい保型性が求められる。そしてバタークリームやベーカリー製品には、食感として口溶けが良好であること、風味が長期にわたり良好であることが求められる。そして、洋菓子やパンなどの焼成品においては、湿り気のあるシトリが食感として好まれている。
特開2003−3194号公報 国際公開第2014/050488号
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、乳脂分別軟質部を含有していても保存時に染みだしが起こりにくく長期にわたり安定した物性を保つことができ、保型性と口溶けが良く、乳脂特有の風味の発現性とその持続性が良好で、更に焼成品はシトリと表現される湿り気のあるなめらかな食感に優れ、風味と食感の持続性に優れたバタークリーム又はベーカリー製品用可塑性油脂組成物とそれを用いた食品を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するために、本発明のバタークリーム又はベーカリー製品用可塑性油脂組成物は、10℃の固体脂含量が20%以下である乳脂分別軟質部を含有し、構成脂肪酸の総炭素数が36〜48であるトリグリセリドの含有量が油脂全量に対して15〜50質量%、2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計量が油脂全量に対して30〜65質量%、2飽和トリグリセリドのうち対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)との質量比(SUS/SSU)が0.2〜1.1であることを特徴としている。
好ましい態様において、このバタークリーム又はベーカリー製品用可塑性油脂組成物は、ヤシ油由来の油脂を含有する。ヤシ油由来の油脂と10℃の固体脂含量が20%以下である油脂との質量比(ヤシ油由来の油脂/10℃の固体脂含量が20%以下である油脂)は、0.2〜2.5であることが好ましい。
好ましい別の態様において、このバタークリーム又はベーカリー製品用可塑性油脂組成物は、茶由来の抗酸化剤を含有する。
本発明の食品は、前記バタークリーム又はベーカリー製品用可塑性油脂組成物が添加されたものである。
本発明によれば、乳脂分別軟質部を含有していても保存時に液状油の染みだしが起こりにくく長期にわたり安定した物性を保つことができ、保型性と口溶けが良く、乳脂特有の風味の発現性とその持続性が良好で、更に焼成品はシトリが良好で、風味と食感の持続性に優れている。
以下に、本発明を詳細に説明する。
(油脂)
本発明において、油脂中のトリグリセリドとは、1分子のグリセロールに3分子の脂肪酸がエステル結合した構造を有するものである。トリグリセリドの1位、2位、3位とは、脂肪酸が結合した位置を表す。なお、トリグリセリドの構成脂肪酸の略称として、S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂肪酸、を用いる。
飽和脂肪酸Sは、油脂中に含まれるすべての飽和脂肪酸である。また、各トリグリセリド分子に結合している2つ又は3つの飽和脂肪酸Sは、同一の飽和脂肪酸であってもよいし、異なる飽和脂肪酸であってもよい。
飽和脂肪酸Sとしては、酪酸(4)、カプロン酸(6)、カプリル酸(8)、カプリン酸(10)、ラウリン酸(12)、ミリスチン酸(14)、パルミチン酸(16)、ステアリン酸(18)、アラキジン酸(20)、ベヘン酸(22)、リグノセリン酸(24)等が挙げられる。なお、上記の数値表記は、脂肪酸の炭素数である。
不飽和脂肪酸Uは、油脂中に含まれるすべての不飽和脂肪酸である。また、各トリグリセリド分子に結合している2つ又は3つの不飽和脂肪酸Uは、同一の不飽和脂肪酸であってもよいし、異なる不飽和脂肪酸であってもよい。
不飽和脂肪酸Uとしては、ミリストレイン酸(14:1)、パルミトレイン酸(16:1)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)、エルカ酸(22:1)等が挙げられる。なお、上記の数値表記は、脂肪酸の炭素数と二重結合数の組み合わせである。
本発明の可塑性油脂組成物に使用される油脂は、1位、2位、3位のすべてに飽和脂肪酸Sが結合した3飽和トリグリセリドを含み、1分子のグリセロールに2分子の飽和脂肪酸Sと1分子の不飽和脂肪酸Uが結合した2飽和トリグリセリドとして、1位及び3位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ2位に不飽和脂肪酸Uが結合した対称型トリグリセリド(SUS)と、1位及び2位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ3位に不飽和脂肪酸Uが結合した非対称型トリグリセリド(SSU)とを含む。また、1分子のグリセロールに2分子の不飽和脂肪酸Uと1分子の飽和脂肪酸Sが結合した2不飽和トリグリセリドを含み、1位、2位、3位のすべてに不飽和脂肪酸Uが結合した3不飽和トリグリセリドを含む。
本発明の可塑性油脂組成物は、油脂として乳脂分別軟質部を含有する。乳脂分別軟質部を含有する本発明の可塑性油脂組成物は、乳脂特有の風味が強く良好である。乳脂分別軟質部を調製するための乳脂としては、乳等省令で定められるバター又はクリームからほとんどすべての乳脂肪以外の成分を除去(脂肪率99.3質量%以上、水分5質量%以下)した乳脂や、牛乳から分離したクリームを転相し、濃縮、真空乾燥することで、脂肪率99.9質量%以上の無水乳脂肪(anhydrous milk fat AMF)を使用することができる。
上記乳脂を分別して乳脂分別軟質部を得る方法としては、乾式分別、溶剤分別、界面活性剤(乳化)分別があり、これらを1種単独であるいは2種以上を組み合わせて分別を行うことができる。
乾式分別では、高融点と低融点のトリグリセリドの融点差を利用して、完全に溶解した油脂を徐々に冷却し、生成した結晶部分と液体部分とをろ別して分離し得ることができる。また乾式分別では、温度を段階的に低下させる一段分別、二段分別、又は多段分別により分別油を得ることができる。
溶剤分別では、アセトンやヘキサンなどの溶剤に対する溶解度差を利用して、油脂を溶剤に溶解し、冷却することで、溶剤に対して溶解度の低い高融点部、次いで中融点部の順に結晶を析出させる。結晶を十分成長させた後、結晶部分と液油部分とに分離し、溶媒を留去して、液油部分を分別油として得ることができる。
界面活性剤(乳化)分別では、油脂を溶解し、冷却して結晶化後、界面活性剤(乳化剤)の水溶液を添加して結晶部分に混在している液体部を大きな液滴とし、液状油、固体脂と水溶液の懸濁液、過剰の水溶液の三層に分離し分別油を得ることができる。
本発明の可塑性油脂組成物に使用される乳脂分別軟質部は、10℃の固体脂含量(SFC)が20%以下であり、好ましくは10%以下である。また、乳脂分別軟質部の融点は、25℃以下であり、好ましくは20℃以下であり、最も好ましくは15℃以下である。
なお、ここで固体脂含量と融点は、後述の実施例に記載の方法で測定することができ、固体脂含量は、加熱溶解後、10℃で7日間保存後における値である。このような乳脂分別軟質部を使用することで、長期保存による硬さの経時変化を抑制することができる。以下の記述においては、ここで定義されたものを単に「乳脂分別軟質部」と言う。
また、このような乳脂分別軟質部は、長期にわたり結晶が析出しないものであると、可塑性油脂としたときに、硬さの経時変化が起こりにくく、焼成品の風味・食感の持続性も良好であることから、加熱溶解後、10℃で3週間保存後における固体脂含量が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
乳脂分別軟質部は、乳脂特有の風味が強く、本発明の可塑性油脂組成物は風味発現性が良好である。また、乳脂に比べて低温での結晶量が少ないため、口溶けが良好で、温度による硬さ変化も小さいことから作業性を良好なものとすることができる。
本発明の可塑性油脂組成物に使用される油脂は、構成脂肪酸の総炭素数が36〜48であるトリグリセリドを油脂全量に対して15〜50質量%、好ましくは15〜46質量%含有する。この範囲内であると、乳脂分別軟質部を含有していても、保存時に染みだしが起こりにくく、長期にわたり安定した物性を保つことができる。また、染みだしを抑制するとともに、2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計量やSUS/SSUを下記のような範囲に調整することで、保型性と口溶けが良く、乳脂特有の風味の発現性とその持続性が良好で、更に焼成品はシトリが良好で、風味と食感の持続性にも優れている。
本発明の可塑性油脂組成物に使用される油脂は、2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計量が、油脂全量に対して多い方が、液状油の染みだしが起こりにくく、可塑性油脂やバタークリームの保型性、風味と食感の持続性も良好になる。この観点から、2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計量は、油脂全量に対して30質量%以上、好ましくは34質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。しかし、この合計量が油脂全量に対して多すぎると、口溶け、風味の発現性、焼成品のシトリが低下する傾向がある。この観点から、2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計量は、油脂全量に対して65質量%以下である。すなわち、本発明の可塑性油脂組成物は、2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計量が、油脂全量に対して30〜65質量%であることによって、乳脂分別軟質部を含有していても保存時に染みだしが起こりにくく長期にわたり安定した物性を保つことができる。そして、保型性と口溶けが良く、乳脂特有の風味の発現性とその持続性が良好で、更に焼成品はシトリが良好で、風味と食感の持続性に優れている。
本発明の可塑性油脂組成物は、2飽和トリグリセリドのうち対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)との質量比(SUS/SSU)が低い方が、可塑性が良くなり、保型性が向上し、染みだしが抑制される。これは、SSUが多いと、結晶の析出が速くなり、マーガリンやショートニング等の製造機において練られやすくなり、また、油脂の相溶性が良くなるためと考えられる。この観点から、SUS/SSUは、1.1以下、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.6以下である。しかし、SUS/SSUが低すぎると、結晶の析出が速過ぎて製造機で練られすぎ、腰のないものとなって、可塑性が低下し、液状油の染みだしが起こりやすくなる。この観点から、SUS/SSUは、0.2以上、好ましくは0.3以上である。すなわち、本発明の可塑性油脂組成物は、SUS/SSUが0.2〜1.1であることによって、乳脂分別軟質部を含有していても保存時に染みだしが起こりにくく長期にわたり安定した物性を保つことができる。そして、保型性も良好である。
本発明の可塑性油脂組成物の製造に用いられる乳脂分別軟質部以外の油脂としては、特に限定されないが、植物油脂、動物油脂、これらの分別油、硬化油、エステル交換油脂等が挙げられる。具体的には、例えば、パーム系油脂、ヤシ油、パーム核油、豚脂(ラード)、牛脂、菜種油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、米油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、乳脂、これらの分別油、硬化油、エステル交換油脂等が挙げられる。油脂中における、構成脂肪酸の総炭素数が36〜48であるトリグリセリドの含有量、2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計量、及びSUS/SSUのバランスを適宜調整するために、これらの油脂は、1種あるいは2種以上を選択して含有させることが好ましい。またエステル交換油脂は、上記のような油脂の1種あるいは2種以上を選択した配合物をエステル交換反応したものであってよい。上記油脂に極度硬化油を含有させる場合、融点が50℃以上の極度硬化油の添加量が油脂全量に対して5質量%以下、更には3質量%以下であると、可塑性油脂組成物の口溶けの低下を抑制できる。ここで、上記パーム系油脂としては、パーム油、パーム分別油、これらの硬化油、エステル交換油脂等が挙げられ、パーム分別油としては、硬質部、軟質部、中融点部等が挙げられる。
上記油脂のうち、本発明の可塑性油脂組成物の製造には、エステル交換油脂を使用することが好ましく、エステル交換油脂を含有させると、油脂中における、構成脂肪酸の総炭素数が36〜48であるトリグリセリドの含有量、2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計量、及びSUS/SSUのバランスを適宜調整するのが容易である。
本発明の可塑性油脂組成物は、好ましい態様において、油脂として次のエステル交換油脂Aを含有する。このエステル交換油脂Aは、ラウリン系油脂とパーム系油脂とをエステル交換反応して得られるものであり、以下、このエステル交換油脂Aを使用した場合について説明する。
エステル交換油脂Aの原料であるラウリン系油脂は、全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が30質量%以上、好ましくは40〜55質量%である。このようなラウリン系油脂としては、パーム核油、ヤシ油、これらの分別油、硬化油等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。ラウリン系油脂は、ヨウ素価が2以下であることが好ましい。ヨウ素価が2以下のラウリン系油脂を用いると、エステル交換油脂Aを乳脂分別軟質部等の他の油脂と混合する際に結晶核となり固化し易く、また極度硬化油であるためトランス酸の生成の虞も少ない。
エステル交換油脂Aの原料であるパーム系油脂は、全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量が35質量%以上である。このようなパーム系油脂としては、パーム油、パーム分別油、これらの硬化油等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。パーム分別油としては、硬質部、軟質部、中融点部等を用いることができる。パーム系油脂として硬化油を使用する場合、極度硬化油を使用するとトランス酸の生成の虞が少ない。パーム系油脂は、ヨウ素価が30〜55であることが好ましい。また、パーム系油脂は、全体として極度硬化油を5〜45質量%含有することが好ましく、20〜45質量%含有することがより好ましい。
そしてエステル交換油脂Aは、ラウリン系油脂5質量%以上30質量%未満と、パーム系油脂70質量%超95質量%以下とをエステル交換反応して得られる。好ましくはラウリン系油脂10質量%以上30質量%未満と、パーム系油脂70質量%超90質量%以下とをエステル交換反応して得られ、より好ましくは、ラウリン系油脂10〜28質量%と、パーム系油脂72〜90質量%とをエステル交換反応して得られる。ラウリン系油脂の含有量が30質量%未満であると、可塑性油脂からの液状油の染みだし抑制と、口溶けの向上に適している。
そしてエステル交換油脂Aは、ヨウ素価が20〜45である。この範囲内であると、乳脂分別軟質部等の他の油脂との相溶性が良く、そして乳脂分別軟質部等の他の油脂に対して核となりやすく、核発生を誘発し、その結果として固化が遅れることを抑制することができる。ヨウ素価が20以上であると、乳脂分別軟質部等の他の油脂との相溶性が良く、例えば硬い油脂だけで固まることが抑制され、ヨウ素価が45以下であると、乳脂分別軟質部等の他の油脂に対して核となりやすく、核発生を誘発し、その結果として固化が遅れることを抑制することができる。
油脂として、以上のエステル交換油脂Aを使用する場合、パーム系油脂をエステル交換反応して得られ、ヨウ素価が45〜60であるエステル交換油脂Bを併用することが好ましい。ここでパーム系油脂としては、パーム分別軟質油が好ましい。
本発明の可塑性油脂組成物におけるエステル交換油脂Aの含有量は、油脂全量に対して5〜30質量%が好ましい。エステル交換油脂Bを使用する場合には、エステル交換油脂Bの含有量は、油脂全量に対して30〜60質量%が好ましい。エステル交換油脂Aとエステル交換油脂Bとの合計量は、油脂全量に対して40〜75質量%が好ましい。また、このような含有量のエステル交換油脂Aや、エステル交換油脂A及びBとともに使用される乳脂分別軟質部の含有量は、2〜45質量%が好ましい。
また、本発明の可塑性油脂組成物は、油脂として、以上の乳脂分別軟質部やエステル交換油脂A、B以外に、液状油を併用することが好ましい。乳脂分別軟質部とともに液状油を使用すると、口溶けが良くなり、焼成品はシトリが良好で、風味と食感の持続性も良好である。
ここで液状油としては、5℃で流動状を呈するものであり、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、米油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油を分別したスーパーオレイン等が挙げられる。
本発明の可塑性油脂組成物における液状油の含有量は、油脂全量に対して35質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
本発明の可塑性油脂組成物は、油脂として、以上の乳脂分別軟質部、エステル交換油脂A、B、及び液状油以外に、ヨウ素価70以下、好ましくはヨウ素価45〜70の油脂を使用することができる。このような油脂を使用すると、トリグリセリド組成、すなわち構成脂肪酸の総炭素数が36〜48であるトリグリセリドの含有量や、2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計量及びSUS/SSUを前述のような範囲内に調整することが容易である。
ヨウ素価70以下の油脂としては、植物油脂、動物油脂、これらの分別油、硬化油、エステル交換油脂等が挙げられる。
植物油脂としては、パーム油、ヤシ油、パーム核油、これらの分別油、硬化油、エステル交換油脂等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
動物油脂としては、動物の脂肉から溶出法により採取した脂肪を精製したものを用いることができる。具体的には、ラード、牛脂、これらの分別油、硬化油、エステル交換油脂等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
エステル交換油脂Aや、エステル交換油脂A及びBを使用する場合、本発明の可塑性油脂組成物におけるヨウ素価70以下の油脂の含有量は、油脂全量に対して40質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
本発明の可塑性油脂組成物を、バタークリームや、製菓練り込みなどベーカリー製品に使用する場合、ヨウ素価70以下の油脂として、ヤシ油由来の油脂を含有することが好ましい。ヤシ油由来の油脂を含有すると、クリーミング性と抱卵性が向上する。
例えば、ヤシ油由来の油脂を含有する本発明の可塑性油脂組成物は、バタークリームや練り込み用油脂として使用する際に、クリーミング性が良好であるため、バター風味のクリームを容易に得ることができ、バターケーキやクッキー等の各種の用途に好適に使用できる。
また、抱卵性が良好であるため、本発明の可塑性油脂組成物と全卵や卵白又は卵黄を、粉糖や液糖等と一緒にホイップすると分離せずにバター風味のクリームを得ることができ、バターケーキやクッキー等の各種の用途に好適に使用できる。
本発明の可塑性油脂組成物に使用されるヤシ油由来の油脂は、ラウリン酸含有量が40質量%以上のものであれば特に限定されず、ヤシ油、その分別油、硬化油、エステル交換油脂を使用することができる。
ヤシ油由来の油脂のヨウ素価は、10以下が好ましく、1以下がより好ましい。また、ヤシ油は融点が比較的低く、口溶けの低下も抑制できる。
本発明の可塑性油脂組成物において、ヤシ油由来の油脂を添加する場合、乳脂分別軟質部を含む、10℃の固体脂含量が20%以下である油脂との質量比(ヤシ油由来の油脂/10℃の固体脂含量が20%以下である油脂)は、0.2〜2.5が好ましく、0.5〜1.8がより好ましい。この範囲内であると、可塑性油脂組成物の食感がゴリついてしまうことなく、低温(18℃)でのクリーミング性を良好なものとすることができる。ここで、10℃の固体脂含量が20%以下である油脂とは、上記液状油や油脂の分別軟質部等が挙げられる。
本発明の可塑性油脂組成物におけるヤシ油由来の油脂の含有量は、油脂全量に対して3〜30質量%が好ましく、5〜25質量%がより好ましく、15〜25質量%が更に好ましい。この範囲内であると、抱卵性を良好なものとすることができる。
トランス型脂肪酸は動脈硬化症のリスクを増加させると言われており、健康への影響が懸念される点を考慮し、本発明の可塑性油脂組成物は、トランス酸量が油脂全量に対して0.1〜5.0質量%であることが好ましい。
ここで、トランス酸量はガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.4.4.3−2013 トランス脂肪酸含量(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」)で測定することができる。
以上において、本発明の可塑性油脂組成物に使用される油脂の分別、硬化反応、エステル交換反応は、次のような方法によって行うことができる。
油脂の分別は、前述した乳脂より乳脂分別軟質部を分別する方法と同様に、乾式分別、溶剤分別、又は界面活性剤(乳化)分別によって行うことができ、これらを1種単独であるいは2種以上を組み合わせて行うことができる。
油脂の硬化反応は、常法にしたがって、ニッケル触媒等の触媒を用いて油脂に水素添加し、加温、攪拌しながら反応を進め、トリグリセリドを構成する不飽和脂肪酸の二重結合部分に水素を結合させ飽和化することによって行うことができる。この際、圧力、温度、時間、触媒を制御することにより、求める硬さの油脂を得ることができる。
油脂のエステル交換反応は、1分子のグリセロールに3分子の脂肪酸が結合したトリグリセリドのグリセロールに結合している脂肪酸の位置や脂肪酸の種類を組みかえる操作であり、常法にしたがって、ナトリウムメチラート等の化学触媒を用いて行われる化学的エステル交換反応や、リパーゼ等を触媒として用いた酵素的エステル交換反応等によって行うことができる。
化学的エステル交換反応は、ナトリウムメチラート等の化学触媒を用いて行われる、位置特異性の乏しいエステル交換反応である(ランダムエステル交換反応とも言われる)。
化学的エステル交換反応は、例えば、常法にしたがって、原料油脂を十分に乾燥させ、触媒を原料油脂に対して0.05〜1質量%添加した後、減圧下、80〜120℃で0.5〜1時間攪拌することにより行うことができる。エステル交換反応終了後は、触媒を水洗にて洗い流した後、通常の食用油の精製工程で行われる脱色、脱臭処理を施すことができる。
酵素的エステル交換反応は、リパーゼを触媒として用いて行われる。リパーゼとしては、リパーゼ粉末やリパーゼ粉末をセライト、イオン交換樹脂等の担体に固定化した固定化リパーゼを使用するができる。酵素的エステル交換によるエステル交換反応は、リパーゼの種類によって、位置特異性の乏しいエステル交換反応とすることもできるし、1、3位特異性の高いエステル交換反応とすることもできる。
位置特異性の乏しいエステル交換反応を行うことのできるリパーゼとしては、アルカリゲネス属由来リパーゼ(例えば、名糖産業株式会社製のリパーゼQLM、リパーゼPL等)、キャンディダ属由来リパーゼ(例えば、名糖産業株式会社製のリパーゼOF等)等が挙げられる。
1、3位特異性の高いエステル交換反応を行うことのできるリパーゼとしては、リゾムコールミーハイ由来の固定化リパーゼ(ノボザイムズ社製のリポザイムTLIM、リポザイムRMIM等)等が挙げられる。
酵素的エステル交換反応は、例えば、リパーゼ粉末又は固定化リパーゼを原料油脂に対して0.02〜10質量%、好ましくは0.04〜5質量%添加した後、40〜80℃、好ましくは40〜70℃で0.5〜48時間、好ましくは0.5〜24時間攪拌することにより行うことができる。エステル交換反応終了後は、ろ過等によりリパーゼ粉末又は固定化リパーゼを除去後、通常の食用油の精製工程で行われる脱色、脱臭処理を施すことができる。
なお、エステル交換油脂A、Bを得るために用いるエステル交換反応は、化学的エステル交換反応であっても酵素的エステル交換反応であってもよい。
(抗酸化剤)
本発明の可塑性油脂組成物は、好ましい態様において、抗酸化剤を含有する。乳脂分別軟質部は、長期保存による脂質の酸化、光劣化により風味の劣化が起こる。乳脂分別軟質部に対し、抗酸化剤を用いることで、長期保存による風味の劣化を抑制でき、バタークリームなど油脂そのもの、あるいは油脂を添加した焼成品の風味を長期にわたり良好なものとすることができる。
抗酸化剤としては、油溶性のもの、例えば、茶抽出物や茶葉等の茶由来の抗酸化剤、トコフェロール類、トコトリエノール類、ビタミンC(アスコルビン酸)パルミテート、カロテン、フラボン、ケルセチン、ルチン等のフラボン誘導体、コーヒー豆やカカオ豆等に含まれるコーヒー酸、没食子酸、フェルラ酸、クロロゲン酸、オリザノール、ヤマモモ等の没食子酸誘導体、ローズマリー抽出物、セサモール、テルペン類、リン脂質等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、乳脂分別軟質部を含有する本発明の可塑性油脂組成物には、ビタミンC(アスコルビン酸)パルミテートや茶由来の抗酸化剤が好適であり、乳脂分別軟質部に由来する強い乳脂感が長期にわたって持続し、風味の低下を抑制できる。更に、ビタミンC(アスコルビン酸)パルミテート又は茶由来の抗酸化剤と、トコフェロール類とを組み合わせることが好適である。
ビタミンC(アスコルビン酸)パルミテートを含む抗酸化剤としては、市販品を使用でき、理研ビタミン(株)製「理研EオイルCP3+L」、三菱化学フーズ(株)製「エアコートC」などを使用することができる。
茶由来の抗酸化剤としては、茶抽出物を好ましく用いることができる。茶抽出物は、緑茶、ウーロン茶、紅茶等の茶葉又はその加工品を、水、熱水、又は有機溶剤などにより抽出したもので、カテキン類を主成分とする。
カテキン類としては、ガレート型カテキン(エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、カテキンガレート、ガロカテキンガレート)と遊離型カテキン(エピガロカテキン)、エピカテキン、カテキン、ガロカテキン)が挙げられる。
茶抽出物が油脂に不溶である場合、乳化剤、アルコール、油脂等に分散させて添加するのが好ましい。茶抽出物としては市販の茶抽出含有物が使用でき、市販品としては、三井農林(株)製「サンカテキン油性E」、太陽化学(株)製「サンカトールNo.1」、三菱化学フーズ(株)製「サンフード油性」、小川香料(株)製「ピュアフェノン10−O」などを使用することができる。これらの市販の茶抽出含有物には茶抽出物が10質量%程度含まれている。
本発明の可塑性油脂組成物における茶由来の抗酸化剤の含有量は、茶抽出物由来の苦みを感じて風味を損なうことなく、油脂の酸化を抑制して風味や食感の持続性を高めることを考慮すると、油脂100質量部に対して0.001〜1質量部が好ましく、0.005〜0.5質量部がより好ましい。この際、前述したような茶由来の抗酸化剤以外の抗酸化剤を併用してもよい。
(可塑性油脂組成物)
本発明の可塑性油脂組成物は、油相中に前述した油脂を含有するものである。本発明の可塑性油脂組成物における油脂の含有量としては、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%である。
本発明の可塑性油脂組成物は、水相を実質的に含有しない形態と、水相を含有する形態をとることができる。水相を含有する形態としては油中水型、油中水中油型が挙げられ、油相の含有量は、好ましくは60〜99.4質量%、より好ましくは65〜98質量%であり、水相の含有量は、好ましくは0.6〜40質量%、より好ましくは2〜35質量%である。水相を含有する形態としては油中水型が好ましく、マーガリン類が挙げられる。ここでマーガリン類とは、日本農林規格のマーガリン又はファットスプレッドに該当するものである。
また水相を実質的に含有しない形態としてはショートニングが挙げられる。ここで「水相を実質的に含有しない」とは日本農林規格のショートニングに該当する、水分(揮発分を含む。)の含有量が0.5質量%以下のことである。
本発明の可塑性油脂組成物は、水以外に、従来の公知の成分を含んでもよい。公知の成分としては、前述した抗酸化剤の他、例えば、乳、乳製品、蛋白質、糖質、塩類、酸味料、pH調整剤、香辛料、着色成分、香料、乳化剤等が挙げられる。乳としては、牛乳等が挙げられる。乳製品としては、脱脂乳、クリーム、チーズ(ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等)、発酵乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白濃縮ホエイパウダー、ホエイ蛋白コンセントレート(WPC)、ホエイ蛋白アイソレート(WPI)、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム等が挙げられる。蛋白質としては、大豆蛋白、エンドウ豆蛋白、小麦蛋白等の植物蛋白等が挙げられる。糖質としては、単糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等)、二糖類(ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース等)、オリゴ糖、糖アルコール、デンプン、デンプン分解物、多糖類等が挙げられる。香辛料としては、カプサイシン、アネトール、オイゲノール、シネオール、ジンゲロン等が挙げられる。着色成分としては、カロテン、アナトー、アスタキサンチン等が挙げられる。香料としては、バターフレーバー、ミルクフレーバー等が挙げられる。乳化剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
本発明の可塑性油脂組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば水相を含有する形態のものは、本発明の可塑性油脂組成物を含む油相と水相とを適宜に加熱し混合して乳化した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサス等の冷却混合機により急冷捏和し得ることができる。水相を含有しない形態のものは、本発明の可塑性油脂組成物を含む油相を加熱した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサス等の冷却混合機により急冷捏和急冷捏和し得ることができる。冷却混合機による急冷捏和後には、必要に応じて熟成(テンパリング)してもよい。
(可塑性油脂組成物を用いた食品)
本発明の食品は、以上に説明した、可塑性油脂組成物が添加されたものであり、バタークリームとベーカリー製品を包含する。
〔バタークリーム〕
本発明の可塑性油脂組成物を用いたバタークリームは、本発明の可塑性油脂組成物と、所望により糖質等の呈味成分を加えて起泡させ、あるいは本発明の可塑性油脂組成物を起泡させたものに糖質等の呈味成分などを配合したものである。
起泡(クリーミング)は、公知の方法によって起泡させることで行うことができる。例えば、電動式もしくは手動の泡立て器を用いて、比重が適度に軽くなるまで含気させることにより行うことができる。バタークリームの比重は、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.3〜0.7である。
バタークリームに配合する呈味成分としては、糖質、乳製品、卵類、果実、果汁、ジャム、カカオ及びカカオ製品、ナッツペースト、香辛料、コーヒー及びコーヒー製品、酸味料、調味料、着色成分、香料等が挙げられる。糖質としては、液糖、粉糖、糖アルコール等であってよく、例えば、単糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等)、二糖類(ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース等)、オリゴ糖、糖アルコール、デンプン、デンプン分解物、多糖類、水あめ、異性化液糖等が挙げられる。乳製品としては、脱脂乳、クリーム、チーズ(ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等)、発酵乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白濃縮ホエイパウダー、ホエイ蛋白コンセントレート(WPC)、ホエイ蛋白アイソレート(WPI)、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム等が挙げられる。卵類としては、全卵、卵黄、卵白、加工卵等が挙げられる。
バタークリームに呈味成分やそれ以外の成分を配合する場合は、これらの配合量は、通常、バタークリームに配合される範囲で特に制限なく配合することができる。バタークリームに糖質を配合する場合は、本発明の可塑性油脂組成物100質量部に対して、例えば10〜200質量部の範囲内で配合することができる。
この本発明の可塑性油脂組成物を用いたバタークリームは、ナッペ用、フィリング用、サンド用、注入用、トッピング用等として、パン、菓子、ケーキ等に好適に用いることができる。
〔ベーカリー製品〕
本発明の可塑性油脂組成物は、穀粉を原料として加熱調理されたベーカリー製品に用いることができる。
例えば、本発明の可塑性油脂組成物を原料に用いて生地を作製し、この生地を焼成することによってベーカリー製品を製造することができる。本発明の可塑性油脂組成物は、例えば、菓子やパン等のベーカリー製品生地に練り込んで使用することができる。
生地は穀粉を主成分とし、穀粉としては、通常、ベーカリー製品の生地に配合されるものであれば、特に限定されないが、例えば、小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉等)、大麦粉、米粉、とうもろこし粉、ライ麦粉、そば粉、大豆粉等が挙げられる。
生地には、穀粉と本発明の可塑性油脂組成物以外にも、通常、焼成品の生地に配合されるものであれば、特に制限なく配合することができる。また、これらの配合量も、通常、ベーカリー製品の生地に配合される範囲を考慮して特に制限なく配合することができる。具体的には、例えば、水や、前記したような乳、乳製品、蛋白質、糖質の他、卵、卵加工品、塩類、乳化剤、乳化起泡剤(乳化油脂)、可塑性油脂、イースト、イーストフード、カカオマス、ココアパウダー、チョコレート、コーヒー、紅茶、抹茶、野菜類、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、肉類、魚介類、豆類、きな粉、豆腐、豆乳、大豆蛋白、膨張剤、甘味料、調味料、香辛料、着色成分、香料等が挙げられる。
ベーカリー製品としては、穀粉を原料として加熱調理されるものであれば特に限定されないが、例えば、製菓(例えば、シュトーレン、パネトーネ、クグロフ、ブリオッシュ、ドーナツ等のイースト菓子、デニッシュ、クロワッサン、パイ、シュー等のペストリー、バターケーキ、パウンドケーキ、スポンジケーキ、ドーナツ、ブッセ、ホットケーキ、ワッフル等のケーキ、ビスケット、クッキー、クラッカー、スコーン等)、製パン(食パン、菓子パン、調理パン、フランスパン、ライブレッド、クロワッサン、デニッシュ、ベーグル、ロールパン、コッペパン等)等が挙げられる。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
1.測定方法
各油脂のヨウ素価は、基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.3.4.1−2013ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)」で測定した。
乳脂分別軟質部の融点は、基準油脂分析法(社団法人日本油化学会)の「3.2.2.2−2013 融点(上昇融点)」で測定した。
固体脂含量は、基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.2.9−2013 固体脂含量(NMR法)」で測定した。また、基準油脂分析試験法の温度条件を変更し(0℃±2℃で30分保持後、26℃±0.2℃で30分保持し、その後0℃±2℃で30分保持する操作を除いた)、10℃で7日間及び3週間保存し測定した。
構成脂肪酸の総炭素数が36〜48であるトリグリセリドの含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.4.6.1−2013 トリアシルグリセリン組成(ガスクロマトグラフ法)」)で測定した。
油脂における2飽和トリグリセリド及び3飽和トリグリセリドの合計含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」と「奨2−2013 2位脂肪酸組成」)で測定し、それぞれ脂肪酸量を用いて計算にて求めた。
油脂における対称型トリグリセリド(SUS)及び非対称型トリグリセリド(SSU)の含有量と質量比(SUS/SSU)は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」と「奨2−2013 2位脂肪酸組成」)により測定し算出した。
2.可塑性油脂組成物の製造
表1〜表4に示す配合比にて各油脂を混合し、実施例及び比較例の油脂組成物を得た。この油脂組成物を用いて、下記のマーガリンを可塑性油脂組成物として得た。
(エステル交換油脂A)
パーム核極度硬化油20質量%、パーム油50質量%、パーム極度硬化油30質量%を混合して110℃に加熱し、十分に脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.08質量%添加し、減圧下、100℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、更に脱臭を行ってエステル交換油脂Aを得た。
(エステル交換油脂B)
パーム分別軟質部(ヨウ素価56)について、エステル交換油脂Aの製法に準じてエステル交換反応等を行い、エステル交換油脂Bを得た。
(乳脂分別軟質部1、2)
乳脂より常法により分別を行い、軟質部を得た。乳脂分別軟質部として2種類の融点(10℃、18℃)のものを使用した。これらについて、基準油脂分析法にしたがって測定した10℃のSFC、前述のとおり60℃±0.2℃で30分保持後、10℃で7日間保存し測定したSFCと、60℃±0.2℃で30分保持後、10℃で3週間保存し測定したSFCの値を表4に示す。なお、菜種油や、比較例で使用した乳脂(融点32.5℃)についても、基準油脂分析試験法、60℃±0.2℃で30分保持後、10℃で7日間及び3週間保存し測定した10℃のSFC値を示した。
Figure 0005833729
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3.評価
実施例及び比較例の各試料について次の評価を行った。
(マーガリンの製造)
油脂組成物82質量部を70℃に調温し、乳化剤0.5質量部を添加後、溶解させ油相とした。一方、水15.0質量部に脱脂粉乳1.5質量部及び食塩1.0質量部を添加し、85℃で加熱殺菌して水相を得た。
次に、該油相に該水相を添加し、プロペラ攪拌機で撹拌して、油中水型に乳化した後、コンビネーターによって急冷捏和して、下記の配合割合のマーガリンを得た。得られたマーガリンは熟成(テンパリング)後に5℃で保管した。
〈マーガリンの配合〉
油脂組成物 82質量部
乳化剤 0.5質量部
水 15.0質量部
脱脂粉乳 1.5質量部
食塩 1.0質量部
3−1.マーガリンの評価
表1及び表2の実施例1〜12と比較例1〜4(バタークリーム、洋菓子練り込み用)、及び表3及び表4の実施例13〜19と比較例5〜8(製パン練り込み用)の油脂組成物より製造したマーガリンを用いて、次の評価を行った。
[マーガリンからの液状油の染みだし]
上記で得たマーガリンを3×3×3cm角にカットし、30℃の恒温槽にて3日間保存した時の液状油の染みだしを目視にて以下の基準で評価した。
評価基準
◎:全く染みだしがない。
○:若干染みだしがある。
△:染みだしがある。
×:染みだしが多くある。
[マーガリンのコク味]
マーガリンをパネル20名で試食して、そのコク味を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル20名中、16名以上が良好と評価した。
○:パネル20名中、10〜15名が良好と評価した。
△:パネル20名中、5〜9名が良好と評価した。
×:パネル20名中、良好と評価したのは4名以下であった。
[マーガリンの口溶け]
マーガリンをパネル20名で試食して、その口溶けを以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル20名中、16名以上が良好と評価した。
○:パネル20名中、10〜15名が良好と評価した。
△:パネル20名中、5〜9名が良好と評価した。
×:パネル20名中、良好と評価したのは4名以下であった。
上記の評価結果を表6〜表9に示す。
Figure 0005833729
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Figure 0005833729
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マーガリンからの液状油の染みだしについては、実施例1〜19はいずれも評価が◎又は○で、室温で液状の乳脂分別軟質部を含有していても、30℃で3日間保存しても全く染みだしがないか、ほとんど染みだしがないレベルであった。すなわち、構成脂肪酸の総炭素数が36〜48であるトリグリセリドの含有量が油脂全量に対して15〜50質量%とし、かつ、2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計量及びSUSとSSUとの質量比を所定範囲内にすると、乳脂分別軟質部を含有していても染みだしが起こりにくく長期にわたり安定した物性を保つことができることが確認された。構成脂肪酸の総炭素数が36〜48であるトリグリセリドの含有量、2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計量、SUSとSSUとの質量比のいずれかがこれらの範囲外である比較例2〜4、6〜8は、染みだしが特に顕著に起こり、実施例より把握されるトリグリセリド組成が染みだしを抑制することを支持している。
また、乳脂分別軟質部を含有する実施例1〜12のマーガリンは、いずれも乳脂特有のコク味が良好であり、実施例13〜19のマーガリンは、いずれも口溶けが良好であることが確認された。
3−2.バタークリームの評価
表1及び表2の実施例1〜12と比較例1〜4の油脂組成物より製造したマーガリンを用いて、次の評価を行った。
[低温でのクリーミング性]
製造したマーガリン500gを18℃の調温下で、卓上ミキサー(Kitchen Aid社、以下同じ)を用いて、多羽ホイッパーを速度4に調節してホイップ(クリーミング)し、開始から12分、15分、18分後の比重を測定して以下の基準で評価した。
評価基準
◎:12分で比重0.3以下となる。
○:15分で比重0.3以下となる。
△:18分で比重0.3以下となる。
×:18分で比重0.3以下とならない。
[口溶け]
製造したマーガリン500gを25℃の調温下で、卓上ミキサーを用いて比重0.4付近までホイップし、その後20℃で24時保存したものをパネル20名で試食して、その口溶けを下記の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル20名中、16名以上が良好と評価した。
○:パネル20名中、10〜15名が良好と評価した。
△:パネル20名中、5〜9名が良好と評価した。
×:パネル20名中、良好と評価したのは4名以下であった。
[保型性]
製造したマーガリン500gを25℃の調温下で、卓上ミキサーを用いて比重0.4付近までホイップし、絞り袋に入れて星形の口金で絞り出したものを30℃の恒温槽で3日間保存した時の保型性について、下記の基準で評価した。
評価基準
◎:形状に変化がない。
○:形状に若干の変化がある。
△:形状に変化がある。
×:形状の変化が大きい。
上記の評価結果を表10及び表11に示す。
Figure 0005833729
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これらの結果より、実施例1〜12は、構成脂肪酸の総炭素数が36〜48であるトリグリセリドの含有量を油脂全量に対して15〜50質量%とし、かつ、2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計量を油脂全量に対して30〜65質量%、SUS/SSUを0.2〜1.1とすることで、前述のとおり乳脂分別軟質部を含有していても染みだしが起こりにくくなるとともに、それに加えて、口溶けと保型性も良好であった。比較例2〜4もこのことを支持している。
低温でのクリーミング性について、ヤシ極度硬化油を配合した実施例1〜9、12は、18℃の低温でも速やかに起泡し、比重が所定の値となるまで下がるのに要するホイップ時間が有意に短縮した。その中でも、ヤシ油由来の油脂と10℃の固体脂含量が20%以下である油脂との質量比(ヤシ油由来の油脂/10℃の固体脂含量が20%以下である油脂)が0.2〜2.5のもの、特に0.5〜1.8のものはホイップにより比重が速やかに下がり、低温でのクリーミング性が良好であった。
口溶けについては、このトリグリセリド組成では、すべての実施例でパネルの大部分が良好と評価し、乳脂を使用した比較例1に比べても有意差が見られた。
保型性については、実施例1〜12は、室温で液状の乳脂分別軟質部を含有していても、30℃の恒温槽で3日間保存後、形状に大きな変化がなく、良好であった。
3−3.ベーカリー製品(洋菓子焼成品:バターケーキ)の評価
表1及び表2の実施例1〜12と比較例1〜4の油脂組成物より製造したマーガリンを用いて、次の評価を行った。
[抱卵性]
バターケーキ製造時の抱卵性を以下の基準で評価した。
製造したマーガリン300gと砂糖300gを合わせて卓上ミキサーを用いて比重0.75付近までホイップし、その後少量ずつ全卵を加えてホイップした。分離せずに混合できた全卵質量をマーガリン質量に対する比率で表したものを抱卵量とし、以下の基準で評価した。
評価基準
◎:マーガリンに対して90%以上
○:マーガリンに対して80%以上90%未満
△:マーガリンに対して70%以上80%未満
×:マーガリンに対して70%未満
(バターケーキの製造)
前述のマーガリンを用いて、以下の配合でバターケーキを焼成した。
〈バターケーキの配合〉
マーガリン 80質量部
上白糖 90質量部
全卵 80質量部
薄力粉 100質量部
ベーキングパウダー 2質量部
マーガリンと上白糖を合わせて卓上ミキサーを用いて比重0.75付近までホイップし、その後少量ずつ全卵を加えてホイップして、最後にあらかじめベーキングパウダーと混合した薄力粉を軽く合わせて生地を得た。その後パウンドケーキ型に入れて170℃で45分間焼成してバターケーキを得た。得られたバターケーキは60分間放置して粗熱を取り、ポリ袋に入れて密封して20℃で保存した。
[焼成品の風味]
上記配合で製造したバターケーキを20℃で24時間保存後にパネル20名で試食し、以下の基準でその乳脂感を評価した。
評価基準
◎:パネル20名中、16名以上が良好と評価した。
○:パネル20名中、10〜15名が良好と評価した。
△:パネル20名中、5〜9名が良好と評価した。
×:パネル20名中、良好と評価したのは4名以下であった。
[焼成品のシトリ]
上記配合で製造したバターケーキを20℃で24時間保存後、パネル20名で試食し、その食感(シトリ)について以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル20名中、16名以上が良好と評価した。
○:パネル20名中、10〜15名が良好と評価した。
△:パネル20名中、5〜9名が良好と評価した。
×:パネル20名中、良好と評価したのは4名以下であった。
上記の評価結果を表12及び表13に示す。
Figure 0005833729
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これらの結果より、実施例1〜12は、構成脂肪酸の総炭素数が36〜48であるトリグリセリドの含有量を油脂全量に対して15〜50質量%とし、かつ、2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計量を油脂全量に対して30〜65質量%、SUS/SSUを0.2〜1.1とすることで、前述のとおり乳脂分別軟質部を含有していても染みだしが起こりにくくなるとともに、それに加えて、焼成品は乳脂特有の風味が良く、シトリが良好であった。比較例2〜4もこのことを支持している。
抱卵性については、ヤシ極度硬化油を配合した実施例1〜9、12は抱卵量が有意に増加した。その中でも、ヤシ油由来の油脂の添加量が15〜20質量%のものは、マーガリンへ多量の全卵を分離せずに混合することができた。
焼成品の風味については、実施例1〜12は、乳脂の風味が強く、乳脂を使用した比較例1などに比べて有意差が見られた。
また、乳脂分別軟質部を含有する実施例1〜12は、焼成品のシトリが良好で、乳脂を使用した比較例1に比べても有意差が見られた。
比較例3、4は、ヤシ油由来の油脂を含まない実施例10、11よりも抱卵性の評価が悪かった。この結果より、油脂組成が上記範囲外であるマーガリンは物性が悪いため、抱卵性が低下し、焼成品の風味やシトリも低下することが示された。抱卵性が低下すると、焼成品のボリュームが低下したり、ベタツキが出たり、食感としても硬くなってしまうためと推測される。
3−2.ベーカリー製品(パン)の評価
表3及び表4の実施例13〜19と比較例5〜8の油脂組成物より製造したマーガリンを用いて、次の評価を行った。
(パンの製造)
イーストを分散させた水、イーストフード、及び強力粉をミキサーボールに投入しフックを使用して、下記条件にてミキシング、発酵を行い、中種生地を得た。
その後、本捏配合のマーガリン以外の全材料及び中種生地を添加し低速3分、中低速3分でミキシングした後、マーガリンを投入し、さらに低速3分、中低速4分でミキシングしパン生地を得た。捏上温度は28℃であった。
その後、20分のフロアータイムをとった後、生地を分割し、再度20分のベンチタイムをとった。生地の成型は、モルダーで5mmに延ばし、ロール型に成型後、ワンローフ型に入れ、38℃、湿度80%で45分間のホイロをとり、その後200℃で30分焼成した。
〈食パンの配合〉
・中種配合
強力粉 70質量部
イースト 2.5質量部
イーストフード 0.1質量部
水 40質量部
・本捏配合
強力粉 30質量部
上白糖 6質量部
食塩 1.8質量部
脱脂粉乳 2質量部
マーガリン 5質量部
水 25質量部
[焼成品の食感(シトリ)]
製造したマーガリンを使用して上記配合で製造したパンを20℃で24時間保存後にパネル20名で試食し、その食感(シトリ)について以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル20名中、16名以上が良好と評価した。
○:パネル20名中、10〜15名が良好と評価した。
△:パネル20名中、5〜9名が良好と評価した。
×:パネル20名中、良好と評価したのは4名以下であった。
[焼成品の風味と食感(シトリ)の持続性]
製造したマーガリンを使用して上記配合で焼成した食パンを20℃で3日間保存後にパネル20名で試食し、風味と食感(シトリ)の持続性について以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル20名中、16名以上が良好と評価した。
○:パネル20名中、10〜15名が良好と評価した。
△:パネル20名中、5〜9名が良好と評価した。
×:パネル20名中、良好と評価したのは4名以下であった。
上記の評価結果を表14及び表15に示す。
Figure 0005833729
Figure 0005833729
これらの結果より、実施例13〜19は、構成脂肪酸の総炭素数が36〜48であるトリグリセリドの含有量を油脂全量に対して15〜50質量%とし、かつ、2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計量を油脂全量に対して30〜65質量%、SUS/SSUを0.2〜1.1とすることで、前述のとおり乳脂分別軟質部を含有していても染みだしが起こりにくくなるとともに、それに加えて、焼成品はシトリが良好で、乳脂特有の風味と食感は長い間持続した。このようなトリグリセリド組成を満足しない比較例6〜8や、乳脂分別軟質部を使用せず乳脂を配合した比較例5の結果もこのことを支持している。
3−4.抗酸化剤の評価
実施例6の油脂組成物100質量部に対して下記の抗酸化剤0.02質量部を添加して、評価用の油脂組成物を調製した。
(抗酸化剤1)
抽出トコフェロール 「理研Eオイル600」理研ビタミン(株)製
(抗酸化剤2)
ビタミンCパルミテート+低αトコフェロール 「理研EオイルCP3+L」理研ビタミン(株)製
(抗酸化剤3)
茶抽出物+抽出トコフェロール 「サンカトールNo.1」太陽化学(株)製
(抗酸化剤4)
茶抽出物+抽出トコフェロール 「ピュアフェノン10−O」小川香料(株)製
この油脂組成物について、メトローム(株)製ランシマット743型CDM測定機にて、CDM時間を測定した。具体的には、120℃に加熱した油脂組成物3gに通気量20L/時で空気を吹き込み、酸化により生成した揮発性分解物を水中に捕集し、水の導電率が急激に変化する変曲点までの時間(hr)を調べた。CDM時間が長いほど油脂組成物の酸化安定性が高いことを示す。
更に、この抗酸化剤を含有する油脂組成物を使用したショートニングを製造し、以下の配合でアイスボックスクッキーを製造して、オーブン試験を行い風味の劣化を評価した。オーブン試験は、クッキーを開放状態で40℃に2週間保存後、官能により風味の劣化を評価した。
(ショートニングの製造)
上記評価用の油脂組成物を70℃に調温後、コンビネーターによって急冷捏和して、ショートニングを得た。
(クッキーの製造)
下記の生地配合にてミキシングして生地を作製し、棒状に成型後、冷蔵庫で一旦生地を休ませた。この生地を10mm厚に輪切りし、鉄板に並べて、170℃で15分間焼成し、クッキーを得た。
〈クッキーの配合〉
ショートニング 60質量部
上白糖 40質量部
全卵 15質量部
薄力粉 100質量部
上記の評価結果を表16に示す。
Figure 0005833729
表16より、抗酸化剤1〜4のいずれもCDM時間の延長効果が確認され、オーブン試験においても風味の低下が少なく乳脂感があるものであった。
その中でも、抗酸化剤3、4の茶抽出物を用いた場合には、トコフェロールやビタミンCパルミテートを用いた抗酸化剤1、2よりもCDM時間の延長効果が大きく、これらの間には有意差が確認された。また、オーブン試験においては、抗酸化剤2〜4を用いた場合には、抗酸化剤1に比べて特に風味の劣化が抑制され強い乳脂感が維持された。
以上の結果より、可塑性油脂組成物において、構成脂肪酸の総炭素数が36〜48であるトリグリセリドの含有量が油脂全量に対して15〜50質量%、2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計量が油脂全量に対して30〜65質量%、2飽和トリグリセリドのうち対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)との質量比(SUS/SSU)が0.2〜1.1であることで、乳脂分別軟質部を含有していても保存時に染みだしが起こりにくく長期にわたり安定した物性を保つことができ、保型性と口溶けが良く、乳脂特有の風味の発現性とその持続性が良好で、更に焼成品はシトリが良好で、風味と食感の持続性に優れていることが示された。

Claims (7)

  1. 生地に練り込んで使用されるベーカリー製品用可塑性油脂組成物であって、
    加熱溶解後、10℃で7日間保存後における10℃の固体脂含量が20%以下である乳脂分別軟質部を含有し、
    構成脂肪酸の総炭素数が36〜48であるトリグリセリドの含有量が油脂全量に対して15〜50質量%、2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計量が油脂全量に対して30〜65質量%、2飽和トリグリセリドのうち対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)との質量比(SUS/SSU)が0.2〜1.1であるベーカリー製品用可塑性油脂組成物。
  2. 請求項1に記載のベーカリー製品用可塑性油脂組成物が練り込まれた生地を焼成する食品の製造方法
  3. 加熱溶解後、10℃で7日間保存後における10℃の固体脂含量が20%以下である乳脂分別軟質部を含有し、
    構成脂肪酸の総炭素数が36〜48であるトリグリセリドの含有量が油脂全量に対して15〜50質量%、2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計量が油脂全量に対して30〜65質量%、2飽和トリグリセリドのうち対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)との質量比(SUS/SSU)が0.2〜1.1であるバタークリーム用可塑性油脂組成物。
  4. ヤシ油由来の油脂を含有する請求項3に記載のバタークリーム用可塑性油脂組成物。
  5. ヤシ油由来の油脂と乳脂分別軟質部との質量比(ヤシ油由来の油脂/10℃の固体脂含量が20%以下である油脂)が0.2〜2.5である請求項4に記載のバタークリーム用可塑性油脂組成物。
  6. 茶由来の抗酸化剤を含有する請求項3から5のいずれかに記載のバタークリーム用可塑性油脂組成物。
  7. 請求項3から6のいずれかに記載のバタークリーム用可塑性油脂組成物が添加されたバタークリーム。
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