JP6914754B2 - 可塑性油脂組成物及び食品 - Google Patents
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Description
該可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸の質量が、前記可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対して6.0質量%以上26質量%以下であり、
油脂の全構成脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量が、油脂の全構成脂肪酸の質量に対して、17質量%以上58質量%以下であり、
50℃における50質量%水溶液の粘度が10mPa・s以上40mPa・s以下であるイヌリンを含有する、可塑性油脂組成物。
本発明の可塑性油脂組成物は、可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸の質量が、可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対して6.0質量%以上26質量%以下であり、油脂の全構成脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量が、油脂の全構成脂肪酸の質量に対して、17質量%以上58質量%以下であり、50℃における50質量%水溶液の粘度が10mPa・s以上40mPa・s以下であるイヌリンを含有する。本発明の可塑性油脂組成物は、これにより、おいしさ、物性が良好になる。可塑性油脂組成物の用途によるが、例えば、本発明の可塑性油脂組成物を製パン練り込み用として用いた場合、べたつき、ソフトさ、しとり、コク味、トースト後の食感、もちもち感等の総合評価が良好となり、バタークリーム用として用いた場合、起泡性、口溶け、保形性、離水のしにくさ、コク味、ザラつき等の総合評価が良好となり、ロールイン用として用いた場合、作業性(可塑性油脂組成物の伸び)、内層のみずみずしさ、サクさ等の総合評価が良好となる。
本発明の可塑性油脂組成物において、可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸の質量は、可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対して6.0質量%以上26質量%以下であれば特に限定されないが、リノール酸の量が過小であると、作業性、おいしさ、物性が損なわれる可能性がある。このことから、可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸の質量が、可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対して9.0質量%以上であることが好ましく、12.0質量%以上であることがさらに好ましい。他方、リノール酸の量が過大であると、作業性、可塑性が損なわれ、おいしさ、物性が損なわれる可能性がある。このことから、可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸の質量が、可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対して24.0質量%以下であることが好ましく、20.0質量%以下であることが好ましく、18.0質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明は、50℃における50質量%水溶液の粘度が10mPa・s以上40mPa・s以下であるイヌリンを含有する。このイヌリンの粘度は、50℃における50質量%水溶液の粘度が10mPa・s以上40mPa・s以下であれば特に限定されないが、粘度が過小であると、十分な骨格を形成できず、保水性が低くなる等、おいしさ、物性が損なわれる可能性がある。このことから、本発明の可塑性油脂組成物に含まれるイヌリンは、50℃における50質量%水溶液の粘度が13mPa・s以上であることが好ましく、17mPa・s以上であることがより好ましく、20mPa・s以上であることがさらに好ましい。他方、イヌリンの粘度が過大であると、保水性等が強くなり、作業性や、ソフトさ、しとりが損なわれる可能性がある。このことから、本発明の可塑性油脂組成物に含まれるイヌリンは、50℃における50質量%水溶液の粘度が35mPa・s以下であることが好ましく、30mPa・s以下であることがより好ましく、28mPa・s以下であることがさらに好ましい。
本発明の可塑性油脂組成物は、水相を実質的に含有しない形態と、水相を含有する形態のいずれの形態であってもよい。水相を含有する形態の場合、本発明の可塑性油脂組成物は、特に限定されないが、例えば、マーガリン類であってもよい。また、水相を含有する乳化形態は、特に限定されないが、例えば、油中水型、水中油型、油中水中油型、水中油中水型等が挙げられる。この場合の油相を構成する油分の含有量は、可塑性油脂組成物に応じて適宜変更してもよいが、可塑性油脂組成物の全体の質量に対して、好ましくは20質量%以上99.95質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上70質量%以下である。特に、例えば、本発明の可塑性油脂組成物を製菓又は製パンの練り込み用、又はバタークリーム用として用いた場合、油分の含有量は、可塑性油脂組成物の全体の質量に対して、より好ましくは30質量%以上60質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以上50質量%以下である。あるいは、本発明の可塑性油脂組成物を製菓又は製パンのロールイン用として用いた場合、油分の含有量は、可塑性油脂組成物の全体の質量に対して、より好ましくは40質量%以上70質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以上70質量%以下である。また、水相を構成する水分の含有量は、可塑性油脂組成物の全体の質量に対して、好ましくは0.05〜80質量%であり、より好ましくは、5質量%以上55質量%以下である。特に、例えば、本発明の可塑性油脂組成物を製菓又は製パンの練り込み用、又はバタークリーム用として用いた場合、水分の含有量は、可塑性油脂組成物の全体の質量に対して、より好ましくは15質量%以上60質量%以下であり、さらに好ましくは23質量%以上55質量%以下である。あるいは、本発明の可塑性油脂組成物を製菓又は製パンのロールイン用として用いた場合、水分の含有量は、可塑性油脂組成物の全体の質量に対して、より好ましくは10質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以上30質量%以下である。油分、水分の含有量が上記の好ましい範囲内にあることで、本発明の可塑性油脂組成物は、おいしさ、物性がより良好となる。また、乳化形態は、特に、おいしさ、物性が良好となることから、油中水型であることが好ましい。
本発明の可塑性油脂組成物の用途は特に限定されないが、製菓又は製パン用としては、練り込み用、バタークリーム用、ロールイン用等が挙げられる。
本発明の可塑性油脂組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、水相を含有する形態のもの(マーガリン類等)は、本発明の油脂組成物を含む油相と水相とを、適宜に加熱し混合して乳化した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサス等の冷却混合機により急冷捏和し得ることができる。水相を含有しない形態のもの(ショートニング等)は、本発明の油脂組成物を含む油相を加熱した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサス等の冷却混合機により急冷捏和し得ることができる。また、必要に応じて、冷却混合機において窒素ガス等の不活性ガスを吹き込んだり、急冷捏和後に熟成(テンパリング)して、得ることができる。
パーム系油脂、ラウリン系油脂、豚脂(ラード)、牛脂、菜種油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、米油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、イリッペ脂、マンゴー脂、サル脂、シア脂、カカオ脂、乳脂、それらの分別油又はそれらの加工油(硬化及びエステル交換反応のうち1つ以上の処理がなされたもの)、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)等が挙げられる。油脂中の構成脂肪酸である飽和脂肪酸の含有量を適宜調整するために、これらの油脂としては、1種あるいは2種以上を選択して含有させることが好ましい。なお、パーム系油脂は、全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量が35質量%以上の油脂であり、例えば、パーム油、パーム分別油等が挙げられる。ラウリン系油脂は、全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が30質量%以上の油脂であり、例えば、パーム核油、ヤシ油等が挙げられる。
本明細書において、「A油脂」とは、トリ飽和量が20〜50質量%でありヨウ素価が20〜50である油脂のことを指す。このようなA油脂としては、特に限定されないが、例えば、上記で述べたパーム系油脂、パーム系油脂のエステル交換油脂等の植物油脂や乳脂等の動物油脂を挙げることができ、1種以上組み合わせて使用することもできる。中でも、パーム分別硬質油、パーム系油脂とラウリン系油脂とのエステル交換油脂を用いると、結晶核となり、その結果、他の油脂の結晶を誘発し結晶量が確保され、焼成品に弾力性を付与できる。なお、本明細書において、油脂の「トリ飽和量」とは、その油脂全体の質量に対する、その油脂に含まれるトリ飽和脂肪酸グリセリドの質量を指し、例えば、上記A油脂の「トリ飽和量」は、A油脂全体の質量に対する、A油脂に含まれるトリ飽和脂肪酸グリセリドの質量を意味する。
本明細書において、「B油脂」とは、トリ飽和量が2〜20質量%未満である油脂のことを指す。(但し「B油脂」としては、前述の「A油脂」及び後述の「C油脂」は包含しない。)このようなB油脂としては、特に限定されないが、例えば、A油脂、C油脂以外の植物油脂、動物油脂(豚脂(ラード)、牛脂等)、これらの分別油、硬化油、エステル交換油脂が挙げられる。中でも、A油脂との相溶性を考慮すると、パーム系油脂であるパーム油、パーム分別軟質部、パーム分別軟質部のエステル交換油脂、豚脂等を組み合わせて用いることが好ましい。
本明細書において、「C油脂」とは、トリ飽和量が2%未満である油脂、又はトリ飽和量が50質量%超である油脂のことを指す。
本発明は、上記可塑性油脂組成物が添加された食品を包含する。
イヌリンの粘度はビーカー(100ml容量)に粉末状のイヌリンを30g計量し、そこに薬さじで攪拌しながら80℃に加温された水を等量加え、60℃湯煎にてイヌリンを溶解させる。イヌリン粉末が溶け切るのを目視で確認後、常温で放冷し、50℃になったときの粘度を50℃における50質量%水溶液の粘度とした。油脂のヨウ素価は、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.3.4.1−2013ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)」で測定した。本発明において、油脂における飽和脂肪酸の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」)で測定した。なお、飽和脂肪酸の含有量は、上記試験法のとおりガスクロマトグラフィーで測定した全ピーク面積である油脂全量(油脂の構成脂肪酸全体の質量)を基準としている。油脂におけるトランス脂肪酸の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会))の「2.4.4.3−2013トランス脂肪酸含量(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」で測定した。なお、トランス脂肪酸の含有量は、添加量既知の内部標準物質(ヘプタデカン酸)との面積比により算出した。
エステル交換油脂1:(ヨウ素価40 トリ飽和酸量24.3質量%)
原料油脂:パーム油 70質量%、パーム核油 15質量%、パーム極度
硬化油 7.5質量%、パーム核極度硬化油7.5質量%
エステル交換油脂2:(ヨウ素価56 トリ飽和酸量9.1質量%)
原料油脂:パーム分別軟質油
エステル交換油脂3:(ヨウ素価53 トリ飽和酸量13.7質量%)
原料油脂:パーム油
以下の実施例及び比較例の可塑性油脂組成物の作製に用いたイヌリン1〜3と、各イヌリンの50℃における50質量%水溶液の粘度(以下、単に「粘度」と略称する場合がある。)を以下に示す。配合割合は、後述する表1〜4に記載されたとおりである。
イヌリン1:有機アガベイヌリン(アガベ由来 ニュートリアガベ社製 粘度:23mPa・s)
イヌリン2:フジFF (平均重合度16 フジ日本精糖株式会社製、粘度:15mPa・s)
イヌリン3:オラフティGR (平均重合度10 べネオ‐オラフティ社製、水に溶解せず)
以下の実施例の可塑性油脂組成物の作製に用いた乳化剤を以下に示す。配合割合は、後述する表1〜3に記載されたとおりである。
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR) (SYグリスターCR
―ED 阪本薬品工業株式会社製)
レシチン (昭和Mレシチン 昭和産業株式会社製 )
後述する表1、2に示す油脂配合で75℃の調温し、乳化剤、フレーバーを添加して40.3部の油相を作製した。一方、水22.7〜59.7質量部にイヌリンを0〜37質量部添加し、85℃で加熱殺菌して水相を得た。次に、上記で得た油相に水相を後述する表1、2に示す配合量になるように添加し、プロペラ攪拌機で攪拌して、油中水型に乳化した後、パーフェクターによって急冷捏和して、実施例1〜33、比較例1〜8に係る可塑性油脂組成物を製造した。得られた可塑性油脂組成物は5℃で保管した。なお、下記可塑性油脂組成物の配合は全体で100質量部であり、また、実施例1〜17、比較例1〜4に係る可塑性油脂組成物を練り込み用可塑性油脂組成物とし、実施例18〜33、比較例5〜8に係る可塑性油脂組成物をバタークリーム用可塑性油脂組成物とした。
油脂 40質量部
乳化剤 0.2質量部
フレーバー 0.1質量部
イヌリン 0〜37質量部
水 22.7〜59.7質量部
後述する表3に示す油脂配合で75℃の調温し、乳化剤、バターフレーバーを添加して60.3質量部又は61.2質量部の油相を作製した。一方、水11.7〜38.8質量部にイヌリンを0〜28質量部添加し、85℃で加熱殺菌して水相を得た。次に、上記で得た油相に水相を後述する表3に示す配合量になるように添加し、プロペラ攪拌機で攪拌して、油中水型に乳化した後、パーフェクターによって急冷捏和して、実施例34〜48、比較例9〜13に係るロールイン用可塑性油脂組成物を製造した。得られた可塑性油脂組成物は5℃で保管した。なお、下記可塑性油脂組成物の配合は全体で100質量部である。
油脂 60質量部
乳化剤 0.2又は1.1質量部
バターフレーバー 0.1質量部
イヌリン 0〜28質量部
水 11.7〜38.8質量部
(練り込み用可塑性油脂組成物を使用した焼成品の作製)
上記練り込み用可塑性油脂を用いて、下記の配合と工程により食パンを製造した。
・中種配合
強力粉 70質量部
イースト 2.5質量部
イーストフード 0.1質量部
水 40質量部
・中種工程
ミキシング 低速3分 中低速1分(フック使用)
捏上温度 24℃
発 酵 発酵室温27℃ 湿度75% 4時間
・本捏配合
強力粉 30質量部
上白糖 6質量部
食塩 1.8質量部
脱脂粉乳 2質量部
練り込み用可塑性油脂組成物 5質量部
水 25質量部
・本捏工程(本捏配合の全素材及び中種生地全量を添加)
ミキシング 低速3分 中低速3分
(練り込み用可塑性油脂組成物を投入)、低速3分 中低速4分
捏上温度 28℃
フロアータイム 28℃ 20分
生地分割 230g
ベンチタイム 28℃ 20分
成 型 モルダーで延ばしロール型に成型
U型にしてプルマン型に6本詰め
ホイロ 室温38℃ 湿度80% 40分
焼 成 200℃ 40分
実施例1〜17、比較例1〜4に係る可塑性油脂組成物が練り込まれた上記食パンに関して、べたつき、ソフトさ、しとり、コク味、トースト後の食感について評価を行った。以下の各評価においてパネルは五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判断された20〜40代の男性4名、女性6名を選抜した。
製パン時の生地のべたつき及び作業性を熟練した作業員が以下の基準により評価した。
◎:生地の丸め、分割時にべたつきを感じず、作業しやすい。
○:生地の丸め、分割時にべたつきを感じない。
△:生地の丸め、分割時にややべたつきを感じる。
×:生地の丸め、分割時にべたつきを感じる。
焼成した食パンを放冷後、20℃で1日保存し、試食したときの口あたりのソフトさをパネル10名で以下の基準により評価した。
◎:パネル10名中8名以上が、ソフトさがあると評価した。
○:パネル10名中5〜7名が、ソフトさがあると評価した。
△:パネル10名中3〜4名が、ソフトさがあると評価した。
×:パネル10名中ソフトさがあると評価したのは2名以下であった。
焼成した食パンを放冷後、20℃で1日保存し、試食したときのしとり感をパネル10名で以下の基準により評価した。
◎:パネル10名中8名以上が、しとり感があると評価した。
○:パネル10名中5〜7名が、しとり感があると評価した。
△:パネル10名中3〜4名が、しとり感があると評価した。
×:パネル10名中しとり感があると評価したのは2名以下であった。
焼成した食パンを放冷後、20℃で1日保存し、試食したときにコク味があると感じるかをパネル10名で以下の基準により評価した。
◎:パネル10名中8名以上が、コク味があると評価した。
○:パネル10名中5〜7名が、コク味があると評価した。
△:パネル10名中3〜4名が、コク味があると評価した。
×:パネル10名中コク味があると評価したのは2名以下であった。
焼成した食パンを放冷後、20℃で1日保存し、1100Wのトースターで3分間トーストした食パンを試食したときの、とろっとした食感をパネル10名で以下の基準により評価した。
◎:パネル10名中8名以上が、とろっとした食感があると評価した。
○:パネル10名中5〜7名が、とろっとした食感があると評価した。
△:パネル10名中3〜4名が、とろっとした食感があると評価した。
×:パネル10名中とろっとした食感があると評価したのは2名以下であった。
実施例18〜33、比較例5〜8に係るバタークリーム用可塑性油脂組成物について、起泡性、口溶け、保形性、離水、コク味、ザラつきを評価した。以下の各評価においてパネルは五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判断された20〜40代の男性4名、女性6名を選抜した。
卓上ミキサー(Kitchen Aid社)を用いて、調温した実施例18〜33、比較例5〜8に係るバタークリーム用可塑性油脂組成物の各々500gを多羽ホイッパーで速度4にてクリーミングし、比重が0.4よりも軽くなる時間で評価した。
◎:5分以内。
○:5分超〜6分30秒以内。
△:6分30秒超〜8分以内。
×:8分超、若しくは比重0.4よりは軽くならない。
前記の起泡性試験で得たバタークリームの口溶けについて、パネル10名により以下の基準で評価した。
◎:パネル10名中8名以上が、良好であると評価した。
○:パネル10名中5〜7名が、良好であると評価した。
△:パネル10名中3〜4名が、良好であると評価した。
×:パネル10名中良好であると評価したのは2名以下であった。
前記の起泡性試験で得たバタークリームを絞り袋に入れ、菊型口金で15gをポリカップ容器に絞り35℃の恒温槽で1日保管したときの保形性を目視で評価した。
◎:形状に全く変化がない。
○:形状に若干変化がある。
△:形状の崩れがある。
×:形状の崩れが多くある。
前記の起泡性試験で得たバタークリームを絞り袋に入れ、菊型口金で15gをポリカップ容器に絞り35℃の恒温槽で1日保管したときの離水状態を目視で評価した。
◎:全く離水がない。
○:僅かに離水がある。
△:離水がある。
×:離水が多くある。
前記の起泡性試験で得たバタークリームのコク味について、パネル10名により以下の基準で評価した。
◎:パネル10名中8名以上が、コク味があると評価した。
○:パネル10名中5〜7名が、コク味があると評価した。
△:パネル10名中3〜4名が、コク味があると評価した。
×:パネル10名中コク味があると評価したのは2名以下であった。
前記の起泡性試験で得たバタークリームのザラつきについて、パネル10名により以下の基準で評価した。
◎:パネル10名中8名以上が、ザラつきはないと評価した。
○:パネル10名中5〜7名が、ザラつきはないと評価した。
△:パネル10名中3〜4名が、ザラつきはないと評価した。
×:パネル10名中ザラつきはないと評価したのは2名以下であった。
(ロールイン用可塑性油脂組成物を使用した焼成品の作製)
下記の配合及び製造条件でデニッシュを作製した。具体的には実施例及び比較例のロールイン用可塑性油脂組成物及びショートニングZ(ミヨシ油脂株式会社製)以外の材料をミキサーに投入し、低速3分、中低5分ミキシングを行った後、ショートニングZを入れ低速2分、中低速4分ミキシングを行い、生地を得た。この生地を、フロアータイムをとった後、0℃で一晩リタードさせた。この生地にロールイン用可塑性油脂組成物を折り込み、3つ折り2回を加え−10℃にて30分リタードし、3つ折り1回を加え−10℃にて60分リタードさせた。その後シーターゲージ厚3mmまで延ばし、10cm角(10cm×1cm)にカットし、ホイロ後、焼成してデニッシュを得た。
強力粉 85質量部
薄力粉 15質量部
上白糖 10質量部
食塩 1.8質量部
脱脂粉乳 3質量部
全卵 6質量部
ショートニングZ 8質量部
イースト 5質量部
イーストフード 0.1質量部
水 53質量部
ロールイン用可塑性油脂組成物 生地100質量部に対して21質量部
ミキシング: 低速3分、中低速5分、(ショートニングを投入)、低速2分、
中低速4分
捏上温度: 25℃
フロアータイム:27℃ 75% 30分
リタード: 0℃ 一晩
ロールイン: 3つ折り×2回 −10℃にてリタード30分
3つ折り×1回 −10℃にてリタード60分
成型: シーターゲージ厚3mm 10cm角(10cm×10cm)にカット
ホイロ: 35℃ 75% 60分
焼成: 200℃ 14分
実施例34〜48、比較例9〜13に係る可塑性油脂組成物が折り込まれた上記デニッシュに関して、作業性(可塑性油脂組成物の伸び)、内層のみずみずしさ、サクさを評価した。以下の各評価においてパネルは五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判断された20〜40代の男性4名、女性6名を選抜した。
約1.8Kgのパン生地にシート状のロールイン用可塑性油脂組成物500gをのせ、折り込み時のロールイン用可塑性油脂組成物の伸展性について、熟練した作業員が以下の基準により評価した。
◎:生地中で油脂が均一に伸び、非常に伸展性が良好である。
○:生地中で油脂が均一に伸び、伸展性が良好である。
△:伸展性はあるものの、やや油脂切れがある。
×:油脂が均一に伸びず、油脂切れがある。
焼成したデニッシュ(焼成後20℃にて1日保管後)を食したときの内層のみずみずしさについて、パネル10名により以下の基準で評価した。
◎:パネル10名中8名以上がみずみずしさがあると評価した。
○:パネル10名中7〜5名がみずみずしさがあると評価した。
△:パネル10名中4〜3名がみずみずしさがあると評価した。
×:パネル10名中みずみずしさがあると評価したのは2名以下であった。
焼成したデニッシュ(焼成後20℃にて1日保管後)を食したときのサクさについて、パネル10名により以下の基準で評価した。
◎:パネル10名中8名以上がサクさがあると評価した。
○:パネル10名中7〜5名がサクさがあると評価した。
△:パネル10名中4〜3名がサクさがあると評価した。
×:パネル10名中サクさがあると評価したのは2名以下であった。
実施例1〜17及び比較例1〜4に係る練り込み用可塑性油脂組成物の組成並びに評価結果を、下記の表1に示す。実施例18〜33及び比較例5〜8に係るバタークリーム用可塑性油脂組成物の組成並びに評価結果を、下記の表2に示す。実施例34〜48及び比較例9〜13に係るロールイン用可塑性油脂組成物の組成並びに評価結果を、下記の表3に示す。なお、以下の表中、「油脂配合」のそれぞれの欄の数値は、それぞれの配合された油脂の、油脂全体の質量に対する配合量(質量%)を意味する。以下の表中の「飽和脂肪酸量」の欄の数値は、油脂の全構成脂肪酸の質量に対する、油脂の全構成脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量(質量%)を意味する。以下の表中の「飽和脂肪酸量(全油脂)/イヌリン量」の欄の数値は、可塑性油脂組成物に含まれるイヌリンの含有量(質量%)に対する、油脂の全構成脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量(質量%)の質量比を意味し、「飽和脂肪酸量(組成物)/イヌリン量」の欄の数値は、可塑性油脂組成物に含まれるイヌリンの含有量(質量%)に対する、可塑性油脂組成物に含まれる飽和脂肪酸の含有量(質量%)の質量比を意味する。以下の表中の「2位リノール酸量」の欄の数値は、可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対する、可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸の質量(質量%)を意味する。以下の表中の「2位オレイン酸量」の欄の数値は、可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対する、可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したオレイン酸の質量(質量%)を意味する。以下の表中の「2位オレイン酸量+2位リノール酸量」の欄の数値は、可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対する、可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸及びオレイン酸の合計質量(質量%)を意味する。以下の表中の「油分」「乳化剤」、「フレーバー」、「イヌリン」、「水」、の欄のそれぞれの数値は、それぞれの成分の、可塑性油脂組成物全体の質量に対する含有量(質量%)を意味する。以下の表中の「PGPR」とは、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを意味する。
後述する表4に示す油脂配合を調製し、イヌリンを0〜30質量部添加し、油相を作製した。得られた油相をプロペラ攪拌機で攪拌して、パーフェクターによって急冷捏和して、実施例49〜62、比較例14〜17に係る可塑性油脂組成物を製造した。得られた可塑性油脂組成物は5℃で保管した。なお、下記可塑性油脂組成物の配合は全体で100質量部である。
油脂 70〜100質量部
イヌリン 0〜30質量部
(練り込み用可塑性油脂組成物(ショートニング)を使用した焼成品の作製)
上記練り込み用可塑性油脂を用いて、下記の配合と工程により焼成品として食パンを製造した。
実施例49〜62、比較例14〜17については、穀粉100質量部に対して、中種の水を40質量部、本捏の水を25質量部使用し、可塑性油脂組成物を油分が3.5質量部になるよう調整した。実施例63〜71、比較例18については、穀粉100質量部に対して、中種の水を40質量部配合し、本捏の水を調整することで表5に示す水の量とし、かつ、油分が3.5質量部になるよう可塑性油脂組成物の添加量を調整した。実施例64、65、67、68、70、71、比較例18の食パンは、多加水パンに相当する。
・中種配合
強力粉 70質量部
イースト 2.5質量部
イーストフード 0.1質量部
水 40質量部
・中種工程
ミキシング 低速3分 中低速1分(フック使用)
捏上温度 24℃
発 酵 発酵室温27℃ 湿度75% 4時間
・本捏配合
強力粉 30質量部
上白糖 6質量部
食塩 1.8質量部
脱脂粉乳 2質量部
練り込み用可塑性油脂組成物(ショートニング) 3.5〜5質量部
水 25〜40質量部
・本捏工程(本捏配合の全素材及び中種生地全量を添加)
ミキシング 低速3分 中低速3分
(練り込み用可塑性油脂組成物を投入)、低速3分 中低速4分
捏上温度 28℃
フロアータイム 28℃ 20分
生地分割 230g
ベンチタイム 28℃ 20分
成 型 モルダーで延ばしロール型に成型
U型にしてプルマン型に6本詰め
ホイロ 室温38℃ 湿度80% 40分
焼 成 200℃ 40分
実施例49〜62、比較例14〜17に係る可塑性油脂組成物が練り込まれた上記食パンに関して、べたつき、ソフトさ(保存1日後又は4日後)、しとり(保存1日後又は4日後)、コク味、トースト後の食感について評価を行った。また実施例63〜71、比較例18においては、べたつき、ソフトさ(保存1日後又は4日後)、しとり(保存1日後又は4日後)、もちもち感(保存1日後又は4日後)の評価を行った。以下の各評価においてパネルは五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判断された20〜40代の男性4名、女性6名を選抜した。
製パン時の生地のべたつき及び作業性を熟練した作業員が以下の基準により評価した。
◎:生地の丸め、分割時にべたつきを感じず、作業しやすい。
○:生地の丸め、分割時にべたつきを感じない。
△:生地の丸め、分割時にややべたつきを感じる。
×:生地の丸め、分割時にべたつきを感じる。
焼成した食パンを放冷後、20℃で1日又は4日保存し、試食したときの口あたりのソフトさをパネル10名で以下の基準により評価した。
◎+:パネル10名中9名以上が、◎と比べてさらに良好な評価であると評価した。
◎:パネル10名中8名以上が、ソフトさがあると評価した。
○:パネル10名中5〜7名が、ソフトさがあると評価した。
△:パネル10名中3〜4名が、ソフトさがあると評価した。
×:パネル10名中ソフトさがあると評価したのは2名以下であった。
焼成した食パンを放冷後、20℃で1日又は4日保存し、試食したときのしとり感をパネル10名で以下の基準により評価した。
◎+:パネル10名中9名以上が、◎と比べてさらに良好な評価であると評価した。
◎:パネル10名中8名以上が、しとり感があると評価した。
○:パネル10名中5〜7名が、しとり感があると評価した。
△:パネル10名中3〜4名が、しとり感があると評価した。
×:パネル10名中しとり感があると評価したのは2名以下であった。
焼成した食パンを放冷後、20℃で1日保存し、試食したときにコク味があると感じるかをパネル10名で以下の基準により評価した。
◎:パネル10名中8名以上が、コク味があると評価した。
○:パネル10名中5〜7名が、コク味があると評価した。
△:パネル10名中3〜4名が、コク味があると評価した。
×:パネル10名中コク味があると評価したのは2名以下であった。
焼成した食パンを放冷後、20℃で1日保存し、1100Wのトースターで3分間トーストした食パンを試食したときの、とろっとした食感をパネル10名で以下の基準により評価した。
◎:パネル10名中8名以上が、とろっとした食感があると評価した。
○:パネル10名中5〜7名が、とろっとした食感があると評価した。
△:パネル10名中3〜4名が、とろっとした食感があると評価した。
×:パネル10名中とろっとした食感があると評価したのは2名以下であった。
焼成した食パンを放冷後、20℃で1日又は4日保存したパンを試食したときの、
もちもちとした食感をパネル10名で以下の基準により評価した。
◎:パネル10名中8名以上が、もちもちした食感があると評価した。
○:パネル10名中5〜7名が、もちもちした食感があると評価した。
△:パネル10名中3〜4名が、もちもちした食感があると評価した。
×:パネル10名中もちもちした食感があると評価したのは2名以下であった。
Claims (12)
- 可塑性油脂組成物であって、
該可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸の質量が、前記可塑性油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対して9.0質量%以上24.0質量%以下であり、
油脂の全構成脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量が、油脂の全構成脂肪酸の質量に対して、17質量%以上58質量%以下であり、
50℃における50質量%水溶液の粘度が10mPa・s以上40mPa・s以下であるイヌリンを含有し、
前記可塑性油脂組成物中における飽和脂肪酸(乳化剤を除く。)の含有量と、前記イヌリンの含有量との質量比が、0.4〜4:1である、
可塑性油脂組成物。 - 前記イヌリンの含有量が、組成物全体の質量に対して5質量%以上35質量%以下である、請求項1に記載の可塑性油脂組成物。
- 水分の含有量が、組成物全体の質量に対して5質量%以上55質量%以下である、請求項1又は2に記載の可塑性油脂組成物。
- 油分の含有量が、組成物全体の質量に対して30質量%以上70質量%以下である、請求項1から3のいずれかに記載の可塑性油脂組成物。
- 水分の含有量が、組成物全体の質量に対して0.5質量%以下である、請求項1又は2に記載の可塑性油脂組成物。
- 油分の含有量が、組成物全体の質量に対して60質量%以上100質量%未満である、請求項1、2及び5のいずれかに記載の可塑性油脂組成物。
- 前記イヌリンがアガベ由来である、請求項1から6のいずれかに記載の可塑性油脂組成物。
- 製菓又は製パン用である、請求項1から7のいずれかに記載の可塑性油脂組成物。
- 請求項1から8のいずれかに記載の可塑性油脂組成物が添加された食品。
- 前記食品が多加水パンである、請求項9に記載の食品。
- 請求項1から8のいずれかに記載の可塑性油脂組成物が添加された多加水パン生地。
- 穀粉と、請求項1から8のいずれかに記載の可塑性油脂組成物と、前記穀粉100質量部に対して70質量部以上100質量部以下の水と、を含有する多加水パン生地を焼成する工程を含む多加水パンの製造方法。
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