JP6909563B2 - スプレッド用油脂組成物及び食品 - Google Patents
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該油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したオレイン酸と前記油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸との合計質量が、前記油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対して36質量%以上73質量%以下であり、
油脂の全構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量が、油脂の全構成脂肪酸の質量に対して42質量%以上83質量%以下であり、
25℃における50質量%水溶液の粘度が30mPa・s以上70mPa・s以下であるイヌリンを含有する、スプレッド用油脂組成物。
本発明の油脂組成物は、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したオレイン酸と油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸との合計質量が、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対して36質量%以上73質量%以下であり、油脂の全構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量が、油脂の全構成脂肪酸の質量に対して42質量%以上83質量%以下であり、25℃における50質量%水溶液の粘度が30mPa・s以上70mPa・s以下であるイヌリンを含有する、スプレッド用油脂組成物である。本発明のスプレッド用油脂組成物は、これにより、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが良好となる。なお、「離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが良好であること」とは、「離水のしにくさ、コク味、口溶け及びザラつきの総合評価が良好であること」を指す。
本発明の油脂組成物において、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したオレイン酸と油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸との合計質量(以下、本明細書においては、「オレイン酸及びリノール酸の合計質量」と略称することがある。)は、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対して36質量%以上73質量%以下であれば特に限定されないが、合計質量が過小であると、油脂の固化が速くなりすぎ、作業性、可塑性が損なわれ、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが損なわれる可能性がある。このことから、オレイン酸及びリノール酸の合計質量は、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対して40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、55質量%以上であることが特に好ましい。他方、オレイン酸及びリノール酸の合計質量が過大であると、固化が遅くなりすぎ、作業性、可塑性が損なわれ、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが損なわれる可能性がある。このことから、オレイン酸及びリノール酸の合計質量は、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対して68質量%以下であることが好ましく、66質量%以下であることが好ましく、62質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明は、25℃における50質量%水溶液の粘度が30mPa・s以上70mPa・s以下であるイヌリンを含有する。このイヌリンの粘度は、25℃における50質量%水溶液の粘度が30mPa・s以上70mPa・s以下であれば特に限定されないが、粘度が過小であると、十分な骨格を形成できず、保水性が低くなる等、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが損なわれる可能性がある。このことから、本発明の油脂組成物に含まれるイヌリンは、25℃における50質量%水溶液の粘度が35mPa・s以上であることが好ましく、40mPa・s以上であることがより好ましく、45mPa・s以上であることがさらに好ましい。他方、イヌリンの粘度が過大であると、保水性等が強くなり、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが損なわれる可能性がある。このことから、本発明の油脂組成物に含まれるイヌリンは、25℃における50質量%水溶液の粘度が65mPa・s以下であることが好ましく、60mPa・s以下であることがより好ましく、55mPa・s以下であることがさらに好ましい。
本発明の油脂組成物は、水相を実質的に含有しない形態と、水相を含有する形態のいずれの形態であってもよい。水相を含有する形態の場合、本発明の油脂組成物は、特に限定されないが、例えば、マーガリン類であってもよい。また、水相を含有する乳化形態は、特に限定されないが、例えば、油中水型、水中油型、油中水中油型、水中油中水型等が挙げられる。この場合の油相を構成する油分の含有量は、油脂組成物に応じて適宜変更してもよいが、油脂組成物の全体の質量に対して、好ましくは20質量%以上99.95質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上70質量%以下であり、さらに好ましくは、30質量%以上60質量%以下である。また、水相を構成する水分の含有量は、油脂組成物の全体の質量に対して、好ましくは0.05〜80質量%であり、より好ましくは、5質量%以上65質量%以下であり、さらに好ましくは23質量%以上55質量%以下である。油分、水分の含有量が上記の好ましい範囲内にあることで、本発明の油脂組成物は、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスがより良好となる。また、乳化形態は、特に、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが良好となることから、油中水型であることが好ましい。
本発明の油脂組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、水相を含有する形態のもの(マーガリン類等)は、本発明の油脂組成物を含む油相と水相とを、適宜に加熱し混合して乳化した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサス等の冷却混合機により急冷捏和し得ることができる。水相を含有しない形態のもの(ショートニング等)は、本発明の油脂組成物を含む油相を加熱した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサス等の冷却混合機により急冷捏和し得ることができる。また、必要に応じて、冷却混合機において窒素ガスなどの不活性ガスを吹き込んだり、急冷捏和後に熟成(テンパリング)して、得ることができる。
本明細書において、「A油脂」とは、トリ飽和量が20〜50質量%でありヨウ素価が20〜50である油脂のことを指す。このようなA油脂としては、特に限定されないが、例えば、上記で述べたパーム系油脂、パーム系油脂のエステル交換油脂等の植物油脂や乳脂等の動物油脂を挙げることができ、1種以上組合せて使用することもできる。中でも、パーム分別硬質油、パーム系油脂とラウリン系油脂とのエステル交換油脂を用いると、結晶核となり、その結果、他の油脂の結晶を誘発し結晶量が確保され、焼成品に弾力性を付与できる。なお、本明細書において、油脂の「トリ飽和量」とは、その油脂全体の質量に対する、その油脂に含まれるトリ飽和脂肪酸グリセリドの質量を指し、例えば、上記A油脂の「トリ飽和量」は、A油脂全体の質量に対する、A油脂に含まれるトリ飽和脂肪酸グリセリドの質量を意味する。
本明細書において、「B油脂」とは、トリ飽和量が2〜20質量%未満である油脂のことを指す。(但し「B油脂」としては、前述の「A油脂」及び後述の「C油脂」は包含しない。)このようなB油脂としては、特に限定されないが、例えば、A油脂、C油脂以外の植物油脂、動物油脂(豚脂(ラード)、牛脂等)、これらの分別油、硬化油、エステル交換油脂が挙げられる。中でも、A油脂との相溶性を考慮すると、パーム系油脂であるパーム油、パーム分別軟質部、パーム分別軟質部のエステル交換油脂、豚脂等を組み合わせて用いることが好ましい。
本明細書において、「C油脂」とは、トリ飽和量が2%未満である油脂、又はトリ飽和量が50質量%超である油脂のことを指す。
本発明は、上記油脂組成物が添加された食品を包含する。
イヌリンの粘度はビーカー(100ml容量)に粉末状のイヌリンを30g計量し、そこに薬さじで攪拌しながら30℃に調温した水を等量加え、イヌリンを溶解させる。イヌリン粉末が溶け切るのを目視で確認後、25℃にて調温し、その際の粘度を25℃における50質量%水溶液の粘度とした。油脂のヨウ素価は、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.3.4.1−2013ヨウ素価(ウィイス―シクロヘキサン法)で測定した。油脂における飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」)で測定した。なお、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の含有量は、上記試験法のとおりガスクロマトグラフィーで測定した全ピーク面積である油脂全量(油脂の構成脂肪酸全体の質量)を基準としている。油脂におけるトランス脂肪酸の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.4.3−2013トランス脂肪酸含量(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」で測定した。なお、トランス脂肪酸の含有量は、添加量既知の内部標準物質(ヘプタデカン酸)との面積比により算出した。油脂におけるトリグリセリドの2位に結合されたリノール酸の含有量、トリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」と「奨2−2013 2位脂肪酸組成」)で測定した。なお、トリグリセリドの2位に結合されたリノール酸の含有量とトリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の含有量は、上記試験法のとおり、リパーゼ溶液で処理後のモノアシルグリセリン画分をガスクロマトグラフィーで測定した全ピーク面積である油脂全量(油脂の2位構成脂肪酸全体の質量)を基準としている。
エステル交換油脂1:(ヨウ素価40 トリ飽和脂肪酸24.3質量%)
原料油脂:パーム油 70質量%、パーム核油 15質量%、パーム極度硬化
油 7.5質量%、パーム核極度硬化油 7.5質量%
エステル交換油脂2:(ヨウ素価56 トリ飽和脂肪酸9.1質量%)
原料油脂:パーム分別軟質油
エステル交換油脂3:(ヨウ素価53 トリ飽和脂肪酸13.7質量%)
原料油脂:パーム油
後述する表1に示す油脂配合で75℃の調温を行い、乳化剤、バターフレーバーを添加して40.3部の油相を作製した。一方水22.7〜59.7質量部にイヌリンを0〜37質量部添加し、85℃で加熱殺菌して水相を得た。次に、上記で得た油相に水相を後述する表1に示す配合量になるように添加し、プロペラ攪拌機で攪拌して、油中水型に乳化した後、パーフェクターによって急冷捏和して、実施例1〜14、比較例1〜6に係るスプレッド用油脂組成物を製造した。得られた油脂組成物は5℃で保管した。実施例、比較例のうち、イヌリンを配合したものについては、表1の配合割合となるように、水相に各イヌリンを配合した。なお、下記油脂組成物の配合は全体で100質量部である。
油脂 40質量部
乳化剤 0.2質量部
バターフレーバー 0.1質量部
イヌリン 0〜37質量部
水 22.7〜59.7質量部
イヌリン1:有機アガベイヌリン(アガベ由来 ニュートリアガベ社製、粘度:50mPa・s)
イヌリン2:フジFF (平均重度16 フジ日本精糖株式会社製、溶解せず)
上記実施例の油脂組成物の作製に用いた乳化剤を以下に示す。配合割合は、後述する表1に記載されたとおりである。
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR) (SYグリスターCR―ED、阪本薬品工業株式会社製)
上記で得た実施例1〜14、比較例1〜6のスプレッド用マーガリンを用いて、離水、コク味、口溶け、ザラつきを評価した。以下のコク味、口溶け、ザラつきの評価においてパネルは五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判断された20〜40代の男性4名、女性6名を選抜した。
スプレッド用油脂組成物5gをスパテラでガラス板上に薄膜状に塗布したときの離水状態について、以下の基準により評価した。
◎:全く離水がなく良好な状態
○:離水が僅かにあり、良好な状態
△:離水が観察された状態
×:完全に離水した状態
スプレッド用油脂組成物を食したときのコク味について、パネル10名で以下の基準により評価した。
◎:パネル10名中8名以上が、コク味があると評価した。
○:パネル10名中5〜7名が、コク味があると評価した。
△:パネル10名中3〜4名が、コク味があると評価した。
×:パネル10名中コク味があると評価したのは2名以下であった。
スプレッド用油脂組成物を食したときの口溶けについて、パネル10名により以下の基準で評価した。
◎:パネル10名中8名以上が、良好であると評価した。
○:パネル10名中5〜7名が、良好であると評価した。
△:パネル10名中3〜4名が、良好であると評価した。
×:パネル10名中良好であると評価したのは2名以下であった。
スプレッド用油脂組成物を食したときのザラつきについて、パネル10名により以下の基準で評価した。
◎:パネル10名中8名以上が、ザラつきはないと評価した。
○:パネル10名中5〜7名が、ザラつきはないと評価した。
△:パネル10名中3〜4名が、ザラつきはないと評価した。
×:パネル10名中ザラつきはないと評価したのは2名以下であった。
実施例1〜14及び比較例1〜6に係るスプレッド用油脂組成物の組成並びに評価結果を、下記の表1に示す。なお、表1中、「油脂配合」のそれぞれの欄の数値は、それぞれの配合された油脂の、油脂全体の質量に対する配合量(質量%)を意味する。表1中の「不飽和脂肪酸量」の欄の数値は、油脂の全構成脂肪酸の質量に対する、油脂の全構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量(質量%)を意味する。表1中の「飽和脂肪酸量」の欄の数値は、油脂の全構成脂肪酸の質量に対する、油脂の全構成脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量(質量%)を意味する。表1中の「2位リノール酸量」の欄の数値は、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対する、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸の質量(質量%)を意味する。表1中の「2位オレイン酸量」の欄の数値は、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対する、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したオレイン酸の質量(質量%)を意味する。表1中の「2位オレイン酸量+2位リノール酸量」の欄の数値は、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対する、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸及びオレイン酸の合計質量(質量%)を意味する。表1中の「2位オレイン酸量/2位リノール酸量」の欄の数値は、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸の質量(質量%)に対する、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したオレイン酸の質量(質量%)の質量比を意味する。表1中の「不飽和脂肪酸量/イヌリン量」の欄の数値は、油脂組成物に含まれるイヌリンの含有量(質量%)に対する、油脂の全構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量(質量%)の質量比を意味する。表1中の「油分」、「乳化剤」、「フレーバー」、「イヌリン」、「水」の欄のそれぞれの数値は、それぞれの成分の、油脂組成物全体の質量に対する含有量(質量%)を意味する。表1中の「PGPR」とは、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを意味する。
Claims (6)
- スプレッド用油脂組成物であって、
該油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したオレイン酸と前記油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸との合計質量が、前記油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対して36質量%以上73質量%以下であり、
油脂の全構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量が、油脂の全構成脂肪酸の質量に対して45質量%以上66質量%以下であり、
25℃における50質量%水溶液の粘度が30mPa・s以上70mPa・s以下であるイヌリンを含有し、
前記イヌリンの含有量が、組成物全体の質量に対して3.0質量%以上である、
スプレッド用油脂組成物。 - 前記イヌリンの含有量が、組成物全体の質量に対して5質量%以上35質量%以下である、請求項1に記載のスプレッド用油脂組成物。
- 水分の含有量が、組成物全体の質量に対して23質量%以上55質量%以下である、請求項1又は2に記載のスプレッド用油脂組成物。
- 油分の含有量が、組成物全体の質量に対して30質量%以上60質量%以下である、請求項1から3のいずれかに記載のスプレッド用油脂組成物。
- 前記イヌリンがアガベ由来である、請求項1から4のいずれかに記載のスプレッド用油脂組成物。
- 請求項1から5のいずれかに記載の油脂組成物が添加された食品。
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