JP6909563B2 - スプレッド用油脂組成物及び食品 - Google Patents

スプレッド用油脂組成物及び食品 Download PDF

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本発明は、スプレッド用油脂組成物及び食品に関する。
従来より、スプレッド用油脂組成物には、口溶け、ザラつきの無さ等が求められている。
特許文献1には、酵素処理により調製されたイヌリン(製品名:フジFF、フジ日本精糖株式会社製)を含有する、スプレッド用油脂組成物が開示されている。該特許文献1には、このようなイヌリンを所定量配合することで、乳化剤の量を低減しながら、保水性が向上し、風味、物性の良好なスプレッドを得ることができることが記載されている。
特開2010−29120号公報
しかしながら、特許文献1のスプレッド用油脂組成物は、離水しやすく、ザラつきやすいという問題があり、さらにコク味や口溶けも未だ十分なものではなかった。
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが良好なスプレッド用油脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは所定の粘性を有するイヌリンにより良好な品質を得られ、さらに油脂の不飽和脂肪酸量とトリグリセリドの2位に結合したリノール酸及びオレイン酸量を所定の値で組み合わせることで、より一層良好な品質の油脂組成物を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) スプレッド用油脂組成物であって、
該油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したオレイン酸と前記油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸との合計質量が、前記油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対して36質量%以上73質量%以下であり、
油脂の全構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量が、油脂の全構成脂肪酸の質量に対して42質量%以上83質量%以下であり、
25℃における50質量%水溶液の粘度が30mPa・s以上70mPa・s以下であるイヌリンを含有する、スプレッド用油脂組成物。
(2) 前記イヌリンの含有量が、組成物全体の質量に対して5質量%以上35質量%以下である、(1)に記載のスプレッド用油脂組成物。
(3) 水分の含有量が、組成物全体の質量に対して23質量%以上55質量%以下である、(1)又は(2)に記載のスプレッド用油脂組成物。
(4) 油分の含有量が、組成物全体の質量に対して30質量%以上60質量%以下である、(1)から(3)のいずれかに記載のスプレッド用油脂組成物。
(5) 前記イヌリンがアガベ由来である、(1)から(4)のいずれかに記載のスプレッド用油脂組成物。
(6) (1)から(5)のいずれかに記載の油脂組成物が添加された食品。
本発明によれば、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが良好なスプレッド用油脂組成物を得ることができる。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
<油脂組成物>
本発明の油脂組成物は、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したオレイン酸と油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸との合計質量が、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対して36質量%以上73質量%以下であり、油脂の全構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量が、油脂の全構成脂肪酸の質量に対して42質量%以上83質量%以下であり、25℃における50質量%水溶液の粘度が30mPa・s以上70mPa・s以下であるイヌリンを含有する、スプレッド用油脂組成物である。本発明のスプレッド用油脂組成物は、これにより、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが良好となる。なお、「離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが良好であること」とは、「離水のしにくさ、コク味、口溶け及びザラつきの総合評価が良好であること」を指す。
イヌリンは多糖類の一種であるが、本発明に含まれるイヌリンは、25℃における50質量%水溶液の粘度が30mPa・s以上70mPa・s以下であるという特徴を有するものである。このような特徴を有するイヌリンは、常温でも水に対する溶解性も高い上に、多糖類としては低い粘度であり、つまり、低粘度のまま常温で多めに溶解しているということができる。このような特徴を有することにより、イヌリンが油脂組成物中で骨格を作り、また、保水性が高くなることによって、結果として離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきが良好になるものとなると考えられる。また、本発明における油脂において、トリグリセリドの2位に結合したオレイン酸とリノール酸との合計質量が所定の量の範囲である。リノール酸とオレイン酸はともに不飽和脂肪酸であって分子構造上歪みを形成しており、回転運動する際に、分子構造の障害となりやすい状態となる。これにより油脂中の各トリグリセリド分子同士が近付きにくくなる事から固化しにくい状態となる。そのため、固まりやすさ、作業性、可塑性等に影響を与えていると考えられるが、本発明では上記のようにトリグリセリドの2位に結合したオレイン酸とリノール酸との合計質量が所定の範囲内であることで、固まりやすさ、作業性、可塑性等のバランスが良好になり、結果として離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきが良好になるものとなると考えられる。さらに、本発明の油脂は、不飽和脂肪酸の含有量が所定の範囲内である。不飽和脂肪酸の含有量は油脂の保形性、作業性等に影響を与えていると考えられるが、本発明では上記のように不飽和脂肪酸の含有量が所定の範囲内であることで、固まりやすさ、保形性、作業性等のバランスが良好になり、結果として離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきが良好になるものとなると考えられる。つまり、上記で述べた全ての特徴を備えることで、本発明の油脂組成物は、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが良好になると考えられる。また、本発明の油脂組成物はスプレッド用に適している。なお、「スプレッド用」とは、食品に塗られたり、または食品の間にサンド等されて用いられることを指す。
(油脂)
本発明の油脂組成物において、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したオレイン酸と油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸との合計質量(以下、本明細書においては、「オレイン酸及びリノール酸の合計質量」と略称することがある。)は、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対して36質量%以上73質量%以下であれば特に限定されないが、合計質量が過小であると、油脂の固化が速くなりすぎ、作業性、可塑性が損なわれ、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが損なわれる可能性がある。このことから、オレイン酸及びリノール酸の合計質量は、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対して40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、55質量%以上であることが特に好ましい。他方、オレイン酸及びリノール酸の合計質量が過大であると、固化が遅くなりすぎ、作業性、可塑性が損なわれ、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが損なわれる可能性がある。このことから、オレイン酸及びリノール酸の合計質量は、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対して68質量%以下であることが好ましく、66質量%以下であることが好ましく、62質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明の油脂組成物において、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したオレイン酸の質量は、上記の「オレイン酸及びリノール酸の合計質量」を満たすようであれば特に限定されないが、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスがより良好となる観点から、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対して23.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましく、30.0質量%以上55.0質量%以下であることがより好ましく、35.0質量%以上52.0質量%以下であることがさらに好ましく、38.0質量%以上50.0質量%以下であることが特に好ましい。
本発明の油脂組成物において、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸の質量は、上記の「オレイン酸及びリノール酸の合計質量」を満たすようであれば特に限定されないが、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスがより良好となる観点から、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対して6.0質量%以上25.0質量%以下であることが好ましく、8.0質量%以上25.0質量%以下であることがより好ましく、10.0質量%以上20.0質量%以下であることがさらに好ましく、11.0質量%以上18.0質量%以下であることが特に好ましい。
油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したオレイン酸と、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸との質量比は、特に限定されないが、1.5〜5.5:1であることが好ましく、2.0〜5.0:1であることがより好ましく、2.5〜4.5:1であることがさらに好ましく、3.0〜4.0:1であることが特に好ましい。
本発明の油脂組成物において、油脂の全構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量は、油脂の全構成脂肪酸の質量に対して42質量%以上83質量%以下であれば特に限定されないが、不飽和脂肪酸の量が過大であると、結晶量が少なくなり、保形性、作業性が損なわれ、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが損なわれる可能性がある。このことから、油脂の全構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量は、油脂の全構成脂肪酸の質量に対して、78質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、66質量%以下であることがさらに好ましく、61質量%以下であることが特に好ましい。他方、不飽和脂肪酸の含有量の量が過小であると、油脂が硬くなりすぎて作業性が損なわれ、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが損なわれる可能性がある。このことから、油脂の全構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量は、油脂の全構成脂肪酸の質量に対して、45質量%以上であることが好ましく、49質量%以上であることがより好ましく、52質量%以上であることがさらに好ましく、57質量%以上であることが特に好ましい。
本発明の油脂組成物において、油脂の全構成脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量は、飽和脂肪酸の量が過小であると、結晶量が少なくなり、保形性、作業性が損なわれ、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが損なわれる可能性がある。このことから、油脂の全構成脂肪酸の質量に対して、17質量%以上であることが好ましく、21質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることがより一層好ましく、35質量%以上であることが特に好ましい。他方、飽和脂肪酸の含有量の量が過大であると、結晶量が多くなり、作業性が損なわれ、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが損なわれる可能性がある。このことから、油脂の全構成脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量は、油脂の全構成脂肪酸の質量に対して、58質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましく、48質量%以下であることがより一層好ましく、45質量%以下であることが特に好ましい。
本明細書において、「S」は、油脂を構成する飽和脂肪酸を意味し、「U」は、油脂を構成する不飽和脂肪酸を意味する。また、トリグリセリドの1、2、3位とは、構成脂肪酸が結合された位置を意味する。
本発明の油脂中の構成脂肪酸である飽和脂肪酸Sとしては、特に限定されないが、例えば、酪酸(4)、カプロン酸(6)、カプリル酸(8)、カプリン酸(10)、ラウリン酸(12)、ミリスチン酸(14)、パルミチン酸(16)、ステアリン酸(18)、アラキジン酸(20)、ベヘン酸(22)、リグノセリン酸(24)等が挙げられる。なお、上記飽和脂肪酸についての括弧内の数値表記は、各脂肪酸の炭素数である。本発明の油脂中の構成脂肪酸である飽和脂肪酸Sは、同一の飽和脂肪酸であってもよいし、異なる飽和脂肪酸であってもよい。
本発明の油脂中の構成脂肪酸である不飽和脂肪酸Uとしては、特に限定されないが、例えば、ミリストレイン酸(14:1)、パルミトレイン酸(16:1)、ヒラゴン酸(16:3)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)、エイコセン酸(20:1)、エルカ酸(22:1)、セラコレイン酸(24:1)等が挙げられる。上記不飽和脂肪酸についての括弧内の数値表記は、左側が脂肪酸の炭素数であり、右側が二重結合数を意味する。本発明の油脂中の構成脂肪酸である不飽和脂肪酸Uは、同一の不飽和脂肪酸であってもよいし、異なる不飽和脂肪酸であってもよい。
本発明の油脂組成物において、2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドの1、3位の構成脂肪酸は、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。2位がオレイン酸であるトリグリセリドとしては、例えば、SOS型トリグリセリド、SOU型トリグリセリド、UOU型トリグリセリド等が挙げられるが、特に限定されない。なお、「O」とは、トリグリセリドの構成脂肪酸であるオレイン酸を意味する。油脂組成物の離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが良好となることから、2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドの1位又は3位の構成脂肪酸が飽和脂肪酸である場合、炭素数4〜24の飽和脂肪酸であることが好ましい。2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドの1位又は3位の構成脂肪酸が不飽和脂肪酸である場合、炭素数16〜20の不飽和脂肪酸(パルミトレイン酸(16:1)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)、エイコセン酸(20:1)等)であることが好ましい。2位にオレイン酸が結合されたトリグリセリドの1位又は3位の構成脂肪酸が飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸である場合、上述の飽和脂肪酸(炭素数4〜24の飽和脂肪酸)と上述の不飽和脂肪酸(炭素数16〜20の不飽和脂肪酸)であることが好ましい。
本発明の油脂組成物において、2位にリノール酸が結合されたトリグリセリドの1、3位の構成脂肪酸は、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。2位がリノール酸であるトリグリセリドとしては、例えば、SLS型トリグリセリド、SLU型トリグリセリド、ULU型トリグリセリド等が挙げられるが、特に限定されない。なお、「L」とは、トリグリセリドの構成脂肪酸であるリノール酸を意味する。油脂組成物の離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが良好となることから、2位にリノール酸が結合されたトリグリセリドの1位又は3位の構成脂肪酸が飽和脂肪酸である場合、炭素数4〜24の飽和脂肪酸であることが好ましい。2位にリノール酸が結合されたトリグリセリドの1位又は3位の構成脂肪酸が不飽和脂肪酸である場合、炭素数16〜20の不飽和脂肪酸(パルミトレイン酸(16:1)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)、エイコセン酸(20:1)等)であることが好ましい。2位にリノール酸が結合されたトリグリセリドの1位又は3位の構成脂肪酸が飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸である場合、上述の飽和脂肪酸(炭素数4〜24の飽和脂肪酸)と上述の不飽和脂肪酸(炭素数16〜20の不飽和脂肪酸)であることが好ましい。
本発明の油脂組成物は、油脂の構成脂肪酸としてトランス脂肪酸を含んでいてもよく、含まなくてもよいが、トランス脂肪酸の摂取量が多くなると、人体に摂取された際のLDLコレステロールが増加しうる。よって、これを抑制しやすい観点で、本発明においては、油脂の構成脂肪酸中のトランス脂肪酸の含有量は、油脂の構成脂肪酸全体の質量に対して10質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましく、3質量%未満であることが最も好ましい。
(イヌリン)
本発明は、25℃における50質量%水溶液の粘度が30mPa・s以上70mPa・s以下であるイヌリンを含有する。このイヌリンの粘度は、25℃における50質量%水溶液の粘度が30mPa・s以上70mPa・s以下であれば特に限定されないが、粘度が過小であると、十分な骨格を形成できず、保水性が低くなる等、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが損なわれる可能性がある。このことから、本発明の油脂組成物に含まれるイヌリンは、25℃における50質量%水溶液の粘度が35mPa・s以上であることが好ましく、40mPa・s以上であることがより好ましく、45mPa・s以上であることがさらに好ましい。他方、イヌリンの粘度が過大であると、保水性等が強くなり、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが損なわれる可能性がある。このことから、本発明の油脂組成物に含まれるイヌリンは、25℃における50質量%水溶液の粘度が65mPa・s以下であることが好ましく、60mPa・s以下であることがより好ましく、55mPa・s以下であることがさらに好ましい。
本発明において、イヌリンの25℃における50質量%水溶液の粘度は、SV型粘度計SV−10株式会社エー・アンド・ディ製)により測定する。
イヌリンとは、キクイモ、チコリ、ダリア、アガベ等の根や茎に貯蔵され、フルクトースが重合した構造を有するものであり、分子内にβ−2,6結合又はβ−2,1結合の少なくとも一方を有するものであるが、分子内にβ−2,6結合を少なくとも有するものである方が、その立体的構造が枝分かれして架橋されたような構造となり、保水性、骨格の強さがより高まるものと考えられ、これが離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスをより良好とするものと考えられる。よって、本発明におけるイヌリンは、少なくとも分子内にβ−2,6結合を有するものであることが好ましい。
本発明のイヌリンは、合成されたイヌリン又は天然のイヌリンのいずれであってもよいが、天然のイヌリンとしては、分子内にβ−2,6結合を有し、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスがより良好となることから、アガベ(リュウゼツラン科のAgave americana)由来のイヌリンを用いることが好ましい。
本発明のイヌリンの重合度は特に限定されないが、例えば、重合度が3〜180のものを用いることが好ましい。例えば、アガベ由来のイヌリン(アガベイヌリン)は、その重合度が150を超えて分布するにもかかわらず、分枝鎖構造を有するため、驚くほどの溶解性を有し、50質量%水溶液の高濃度でさえ粘度は低いため本発明の効果を得やすいことから好ましい。
本発明の油脂組成物における上記のイヌリン(25℃における50質量%水溶液の粘度が30mPa・s以上70mPa・s以下であるイヌリン)の含有量は、例えば、油脂組成物全体の質量に対して0.1〜60質量%であってもよいが、過小であると、保水性、骨格の強さを十分に得られずに離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが損なわられる可能性があることから、本発明の油脂組成物における上記のイヌリンの含有量は、油脂組成物全体の質量に対して3.0質量%以上であることが好ましく、5.0質量%以上であることがより好ましく、10.0質量%以上であることがさらに好ましく、15.0質量%以上であることが特に好ましい。他方、上記のイヌリン(25℃における50質量%水溶液の粘度が30mPa・s以上70mPa・s以下であるイヌリン)の含有量が過大であると、保水性、骨格の強さが高くなりすぎて、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが損なわれる可能性がある。このことから、本発明の油脂組成物における上記のイヌリンの含有量は、油脂組成物全体の質量に対して、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、33質量%以下であることがさらに好ましく、28質量%以下であることが好ましい。
本発明の油脂組成物において、油脂の全構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量と、上記のイヌリン(25℃における50質量%水溶液の粘度が30mPa・s以上70mPa・s以下であるイヌリン)の含有量(油脂組成物全体の質量に対する含有量)との質量比は、例えば、0.1〜50:1であってもよいが、0.5〜40:1であることが好ましく、1〜30:1であることがより好ましい。
本発明において、油脂組成物に含まれるイヌリンの含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定する。
本発明の油脂組成物は、上記のイヌリン(25℃における50質量%水溶液の粘度が30mPa・s以上70mPa・s以下であるイヌリン)以外のイヌリンを含んでもよく、含まなくてもよいが、上記のイヌリン(25℃における50質量%水溶液の粘度が30mPa・s以上70mPa・s以下であるイヌリン)以外のイヌリンを含む場合、本発明の油脂組成物全体に含まれるイヌリンについて、25℃における50質量%水溶液の粘度が30mPa・s以上70mPa・s以下であることが好ましい。
(その他の成分)
本発明の油脂組成物は、水相を実質的に含有しない形態と、水相を含有する形態のいずれの形態であってもよい。水相を含有する形態の場合、本発明の油脂組成物は、特に限定されないが、例えば、マーガリン類であってもよい。また、水相を含有する乳化形態は、特に限定されないが、例えば、油中水型、水中油型、油中水中油型、水中油中水型等が挙げられる。この場合の油相を構成する油分の含有量は、油脂組成物に応じて適宜変更してもよいが、油脂組成物の全体の質量に対して、好ましくは20質量%以上99.95質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上70質量%以下であり、さらに好ましくは、30質量%以上60質量%以下である。また、水相を構成する水分の含有量は、油脂組成物の全体の質量に対して、好ましくは0.05〜80質量%であり、より好ましくは、5質量%以上65質量%以下であり、さらに好ましくは23質量%以上55質量%以下である。油分、水分の含有量が上記の好ましい範囲内にあることで、本発明の油脂組成物は、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスがより良好となる。また、乳化形態は、特に、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの全体のバランスが良好となることから、油中水型であることが好ましい。
マーガリン類とは、マーガリン又はファットスプレッドのことを指す。マーガリンは、油脂を80質量%以上含み、ファットスプレッドは、油脂を80質量%未満含むものである。
水相を実質的に含有しない形態としては、ショートニングが挙げられる。本発明において、「実質的に含有しない」とは、水分(揮発分を含む)の含有量が0.5質量%以下であることである。
本発明の油脂組成物は、上記成分以外に、従来の公知の成分を含んでもよく、含まなくてもよい。そのような公知の成分としては、特に限定されないが、例えば、乳化剤、乳、乳製品、粉末油脂、酵素又は蛋白質、増粘剤、糖質、塩類、卵加工品、酸味料、pH調整剤、抗酸化剤、調味料、コンソメ・ブイヨン等の植物及び動物エキス、ウイスキー・ウォッカ・ブランデー等の蒸留酒、ワイン・日本酒・ビール等の醸造酒、各種リキュール、乳製品を酵素処理した呈味剤、香辛料、着色成分、フレーバー等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
乳化剤としては、特に限定されず、例えば、本発明の油脂組成物は、上記のポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノグリセリンモノパルミチン酸エステル、モノグリセリンモノステアリン酸エステル等)、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリン脂肪酸エステル(グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル等)、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。乳化剤の含有量は、例えば、油脂組成物全体の質量に対して、0.1〜10質量%であってよい。
乳としては、例えば、牛乳等が挙げられる。乳製品としては、脱脂乳、クリーム、チーズ(ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等)、発酵乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、タンパク濃縮ホエイパウダー、ホエイチーズ(WC)、ホエイ蛋白コンセントレート(WPC)、ホエイ蛋白アイソレート(WPI)、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム等が挙げられる。酵素としては、糖質分解、リン脂質分解等の酵素、蛋白質としては、大豆蛋白、エンドウ豆蛋白、小麦蛋白等の植物蛋白等が挙げられる。増粘剤としては、カラギーナン、キサンタンガム、グァガム、カードラン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、アルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。糖質としては、単糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等)、二糖類(ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース等)、オリゴ糖、糖アルコール等が挙げられる、抗酸化剤としては、例えば、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸誘導体、トコフェロール、トコトリエノール、リグナン、ユビキノン類、キサンチン類、オリザノール、植物ステロール、カテキン類、ポリフェノール類、茶抽出物等が挙げられる。香辛料としては、例えば、カプサイシン、アネトール、オイゲノール、シネオール、ジンゲロン等の成分を含むものが挙げられる。着色成分としては、例えば、カロテン、アスタキサンチン、アナトー等が挙げられる。フレーバーとしては、バターフレーバー、ミルクフレーバー等が挙げられる。
<油脂組成物の製造方法>
本発明の油脂組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、水相を含有する形態のもの(マーガリン類等)は、本発明の油脂組成物を含む油相と水相とを、適宜に加熱し混合して乳化した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサス等の冷却混合機により急冷捏和し得ることができる。水相を含有しない形態のもの(ショートニング等)は、本発明の油脂組成物を含む油相を加熱した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサス等の冷却混合機により急冷捏和し得ることができる。また、必要に応じて、冷却混合機において窒素ガスなどの不活性ガスを吹き込んだり、急冷捏和後に熟成(テンパリング)して、得ることができる。
本発明の油脂組成物は、水相を含有することが好ましく、水相を含有する場合、イヌリンは、水相、油相、乳化後のいずれにも添加できるが、水相に添加することが好ましい。
本発明の油脂組成物の製造に用いられる油脂としては、特に限定されないが、パーム系油脂、ラウリン系油脂、豚脂(ラード)、牛脂、菜種油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、米油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、イリッペ脂、マンゴー脂、サル脂、シア脂、カカオ脂、乳脂、それらの分別油又はそれらの加工油(硬化及びエステル交換反応のうち1つ以上の処理がなされたもの)、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)等が挙げられる。油脂中の構成脂肪酸である飽和脂肪酸の含有量を適宜調整するために、これらの油脂としては、1種あるいは2種以上を選択して含有させることが好ましい。なお、パーム系油脂は、全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量が35質量%以上の油脂であり、例えば、パーム油、パーム分別油などが挙げられる。ラウリン系油脂は、全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が30質量%以上の油脂であり、例えば、パーム核油、ヤシ油などが挙げられる。
以下に、本発明の油脂組成物の製造に用いる油脂について、より具体的な例示を示す。本発明の油脂は、例えば、以下の3つの油脂種(A油脂、B油脂及びC油脂)を組み合わせることで調製することができる。
(A油脂)
本明細書において、「A油脂」とは、トリ飽和量が20〜50質量%でありヨウ素価が20〜50である油脂のことを指す。このようなA油脂としては、特に限定されないが、例えば、上記で述べたパーム系油脂、パーム系油脂のエステル交換油脂等の植物油脂や乳脂等の動物油脂を挙げることができ、1種以上組合せて使用することもできる。中でも、パーム分別硬質油、パーム系油脂とラウリン系油脂とのエステル交換油脂を用いると、結晶核となり、その結果、他の油脂の結晶を誘発し結晶量が確保され、焼成品に弾力性を付与できる。なお、本明細書において、油脂の「トリ飽和量」とは、その油脂全体の質量に対する、その油脂に含まれるトリ飽和脂肪酸グリセリドの質量を指し、例えば、上記A油脂の「トリ飽和量」は、A油脂全体の質量に対する、A油脂に含まれるトリ飽和脂肪酸グリセリドの質量を意味する。
(B油脂)
本明細書において、「B油脂」とは、トリ飽和量が2〜20質量%未満である油脂のことを指す。(但し「B油脂」としては、前述の「A油脂」及び後述の「C油脂」は包含しない。)このようなB油脂としては、特に限定されないが、例えば、A油脂、C油脂以外の植物油脂、動物油脂(豚脂(ラード)、牛脂等)、これらの分別油、硬化油、エステル交換油脂が挙げられる。中でも、A油脂との相溶性を考慮すると、パーム系油脂であるパーム油、パーム分別軟質部、パーム分別軟質部のエステル交換油脂、豚脂等を組み合わせて用いることが好ましい。
(C油脂)
本明細書において、「C油脂」とは、トリ飽和量が2%未満である油脂、又はトリ飽和量が50質量%超である油脂のことを指す。
トリ飽和量が2%未満である油脂としては、特に限定されないが、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、米油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
トリ飽和量が50質量%超である油脂としては、特に限定されないが、植物油脂又は動物油脂又はこれらの硬化油(部分水素添加油又は極度硬化油)や分別油の硬質油、これらを含む油脂を原料とするエステル交換油脂等が挙げられる。これらの中でも、植物油脂又は動物油脂の極度硬化油、あるいはこれを含む油脂を原料とするエステル交換油脂を用いることが好ましい。植物油脂としては、例えば、ヤシ油やパーム核油が挙げられ、植物油脂の極度硬化油としては、例えば、ヤシ極度硬化油、パーム極度硬化油、パーム核極度硬化油、菜種極度硬化油、大豆極度硬化油等が挙げられる。動物油脂の極度硬化油としては、例えば、豚脂極度硬化油、牛脂極度硬化油等が挙げられる。焼成品の口溶けが良好となる観点からは、融点が50℃以上の極度硬化油を用いる場合は、油脂全量に対し、5質量%以下とすることが好ましい。
以上で述べたA油脂、B油脂、C油脂の配合割合は、A油脂は、全油脂に対して10〜65質量%で配合することが好ましく、B油脂は、全油脂に対して5〜75質量%で配合することが好ましく、C油脂は、全油脂に対して0〜70質量%で配合することが好ましい。
<油脂組成物が添加された食品>
本発明は、上記油脂組成物が添加された食品を包含する。
本発明の食品は、特に限定されないが、焼成品であることが好ましい。焼成品は、特に限定されないが、例えば、菓子(例えば、パイ、ケーキ(パウンドケーキ等)、クッキー、ビスケット、クラッカー、ワッフル、スコーン、シュー、ドーナツ等)、パン(食パン、菓子パン、クロワッサン、デニッシュ、ベーグル、ロールパン、コッペパン、バンズ等)等が挙げられる。本発明の食品は、油脂組成物が塗られるために用いられる食品であることが好ましい。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
(1)測定方法
イヌリンの粘度はビーカー(100ml容量)に粉末状のイヌリンを30g計量し、そこに薬さじで攪拌しながら30℃に調温した水を等量加え、イヌリンを溶解させる。イヌリン粉末が溶け切るのを目視で確認後、25℃にて調温し、その際の粘度を25℃における50質量%水溶液の粘度とした。油脂のヨウ素価は、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.3.4.1−2013ヨウ素価(ウィイス―シクロヘキサン法)で測定した。油脂における飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」)で測定した。なお、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の含有量は、上記試験法のとおりガスクロマトグラフィーで測定した全ピーク面積である油脂全量(油脂の構成脂肪酸全体の質量)を基準としている。油脂におけるトランス脂肪酸の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.4.3−2013トランス脂肪酸含量(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」で測定した。なお、トランス脂肪酸の含有量は、添加量既知の内部標準物質(ヘプタデカン酸)との面積比により算出した。油脂におけるトリグリセリドの2位に結合されたリノール酸の含有量、トリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」と「奨2−2013 2位脂肪酸組成」)で測定した。なお、トリグリセリドの2位に結合されたリノール酸の含有量とトリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の含有量は、上記試験法のとおり、リパーゼ溶液で処理後のモノアシルグリセリン画分をガスクロマトグラフィーで測定した全ピーク面積である油脂全量(油脂の2位構成脂肪酸全体の質量)を基準としている。
(エステル交換油脂組成物の作製)
エステル交換油脂1:(ヨウ素価40 トリ飽和脂肪酸24.3質量%)
原料油脂:パーム油 70質量%、パーム核油 15質量%、パーム極度硬化
油 7.5質量%、パーム核極度硬化油 7.5質量%
エステル交換油脂2:(ヨウ素価56 トリ飽和脂肪酸9.1質量%)
原料油脂:パーム分別軟質油
エステル交換油脂3:(ヨウ素価53 トリ飽和脂肪酸13.7質量%)
原料油脂:パーム油
エステル交換油脂1〜3は次の方法で作製した。上記に示す原料油脂の割合で混合し、減圧下で80〜120℃に加熱し、十分脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.05〜0.15質量%添加し、0.5〜1.0時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、さらに脱臭を行ってエステル交換油脂を得た。なお、例えば、エステル交換油脂1としてラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換反応が完了すると、構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を2個、不飽和脂肪酸(U)を1個含む2飽和トリグリセリドのうち、対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)とのエステル交換油脂(a)中における質量比(SUS/SSU)が0.45〜0.55の範囲内となる。対称型トリグリセリドと非対称型トリグリセリドの比が上記範囲内であると、結晶性が良くなり、他の油脂と混合した場合、相溶性が良く、可塑性が良好であり、染みだしの少ない可塑性油脂を得ることができる。
(スプレッド用油脂組成物の製造)
後述する表1に示す油脂配合で75℃の調温を行い、乳化剤、バターフレーバーを添加して40.3部の油相を作製した。一方水22.7〜59.7質量部にイヌリンを0〜37質量部添加し、85℃で加熱殺菌して水相を得た。次に、上記で得た油相に水相を後述する表1に示す配合量になるように添加し、プロペラ攪拌機で攪拌して、油中水型に乳化した後、パーフェクターによって急冷捏和して、実施例1〜14、比較例1〜6に係るスプレッド用油脂組成物を製造した。得られた油脂組成物は5℃で保管した。実施例、比較例のうち、イヌリンを配合したものについては、表1の配合割合となるように、水相に各イヌリンを配合した。なお、下記油脂組成物の配合は全体で100質量部である。
<スプレッド用油脂組成物の配合>
油脂 40質量部
乳化剤 0.2質量部
バターフレーバー 0.1質量部
イヌリン 0〜37質量部
水 22.7〜59.7質量部
上記実施例及び比較例の油脂組成物の作製に用いたイヌリン1,2と、各イヌリンの25℃における50質量%水溶液の粘度(以下、単に「粘度」と略称する場合がある。)を以下に示す。配合割合は、後述する表1に記載されたとおりである。
イヌリン1:有機アガベイヌリン(アガベ由来 ニュートリアガベ社製、粘度:50mPa・s)
イヌリン2:フジFF (平均重度16 フジ日本精糖株式会社製、溶解せず)
(乳化剤)
上記実施例の油脂組成物の作製に用いた乳化剤を以下に示す。配合割合は、後述する表1に記載されたとおりである。
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR) (SYグリスターCR―ED、阪本薬品工業株式会社製)
<スプレッド用油脂組成物の評価>
上記で得た実施例1〜14、比較例1〜6のスプレッド用マーガリンを用いて、離水、コク味、口溶け、ザラつきを評価した。以下のコク味、口溶け、ザラつきの評価においてパネルは五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判断された20〜40代の男性4名、女性6名を選抜した。
[離水]
スプレッド用油脂組成物5gをスパテラでガラス板上に薄膜状に塗布したときの離水状態について、以下の基準により評価した。
◎:全く離水がなく良好な状態
○:離水が僅かにあり、良好な状態
△:離水が観察された状態
×:完全に離水した状態
[コク味]
スプレッド用油脂組成物を食したときのコク味について、パネル10名で以下の基準により評価した。
◎:パネル10名中8名以上が、コク味があると評価した。
○:パネル10名中5〜7名が、コク味があると評価した。
△:パネル10名中3〜4名が、コク味があると評価した。
×:パネル10名中コク味があると評価したのは2名以下であった。
[口溶け]
スプレッド用油脂組成物を食したときの口溶けについて、パネル10名により以下の基準で評価した。
◎:パネル10名中8名以上が、良好であると評価した。
○:パネル10名中5〜7名が、良好であると評価した。
△:パネル10名中3〜4名が、良好であると評価した。
×:パネル10名中良好であると評価したのは2名以下であった。
[ザラつき]
スプレッド用油脂組成物を食したときのザラつきについて、パネル10名により以下の基準で評価した。
◎:パネル10名中8名以上が、ザラつきはないと評価した。
○:パネル10名中5〜7名が、ザラつきはないと評価した。
△:パネル10名中3〜4名が、ザラつきはないと評価した。
×:パネル10名中ザラつきはないと評価したのは2名以下であった。
<評価結果>
実施例1〜14及び比較例1〜6に係るスプレッド用油脂組成物の組成並びに評価結果を、下記の表1に示す。なお、表1中、「油脂配合」のそれぞれの欄の数値は、それぞれの配合された油脂の、油脂全体の質量に対する配合量(質量%)を意味する。表1中の「不飽和脂肪酸量」の欄の数値は、油脂の全構成脂肪酸の質量に対する、油脂の全構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量(質量%)を意味する。表1中の「飽和脂肪酸量」の欄の数値は、油脂の全構成脂肪酸の質量に対する、油脂の全構成脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量(質量%)を意味する。表1中の「2位リノール酸量」の欄の数値は、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対する、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸の質量(質量%)を意味する。表1中の「2位オレイン酸量」の欄の数値は、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対する、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したオレイン酸の質量(質量%)を意味する。表1中の「2位オレイン酸量+2位リノール酸量」の欄の数値は、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対する、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸及びオレイン酸の合計質量(質量%)を意味する。表1中の「2位オレイン酸量/2位リノール酸量」の欄の数値は、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸の質量(質量%)に対する、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したオレイン酸の質量(質量%)の質量比を意味する。表1中の「不飽和脂肪酸量/イヌリン量」の欄の数値は、油脂組成物に含まれるイヌリンの含有量(質量%)に対する、油脂の全構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量(質量%)の質量比を意味する。表1中の「油分」、「乳化剤」、「フレーバー」、「イヌリン」、「水」の欄のそれぞれの数値は、それぞれの成分の、油脂組成物全体の質量に対する含有量(質量%)を意味する。表1中の「PGPR」とは、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを意味する。
Figure 0006909563
表1に示すように、実施例1〜14に係るスプレッド用油脂組成物は、離水、コク味、口溶け、ザラつきの総合評価が、比較例1〜6に係るスプレッド用油脂組成物より高かった。ここで、実施例1〜14に係るスプレッド用油脂組成物は、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したオレイン酸及び油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸の合計質量が36質量%以上73質量%以下であること、不飽和脂肪酸量が42質量%以上83質量%以下であること、及び25℃における50質量%水溶液の粘度が30mPa・s以上70mPa・s以下であるイヌリンを含有することの全ての条件を満たすものであるが、比較例1〜6に係るスプレッド用油脂組成物は、これら全ての条件を満たすものではない。これらのことから、油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したオレイン酸及び油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸の合計質量が36質量%以上73質量%以下であること、不飽和脂肪酸量が42質量%以上83質量%以下であること、及び25℃における50質量%水溶液の粘度が30mPa・s以上70mPa・s以下であるイヌリンを含有することにより、離水のしにくさ、コク味、口溶け、ザラつきの総合評価が良好になることがわかった。

Claims (6)

  1. スプレッド用油脂組成物であって、
    該油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したオレイン酸と前記油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合したリノール酸との合計質量が、前記油脂組成物に含まれるトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸全体の質量に対して36質量%以上73質量%以下であり、
    油脂の全構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量が、油脂の全構成脂肪酸の質量に対して45質量%以上66質量%以下であり、
    25℃における50質量%水溶液の粘度が30mPa・s以上70mPa・s以下であるイヌリンを含有し、
    前記イヌリンの含有量が、組成物全体の質量に対して3.0質量%以上である、
    スプレッド用油脂組成物。
  2. 前記イヌリンの含有量が、組成物全体の質量に対して5質量%以上35質量%以下である、請求項1に記載のスプレッド用油脂組成物。
  3. 水分の含有量が、組成物全体の質量に対して23質量%以上55質量%以下である、請求項1又は2に記載のスプレッド用油脂組成物。
  4. 油分の含有量が、組成物全体の質量に対して30質量%以上60質量%以下である、請求項1から3のいずれかに記載のスプレッド用油脂組成物。
  5. 前記イヌリンがアガベ由来である、請求項1から4のいずれかに記載のスプレッド用油脂組成物。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の油脂組成物が添加された食品。
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