JP5366294B2 - ホイップクリーム用油脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、乳化安定性に優れたホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物を製造でき、かつ口溶けがよいホイップクリームを製造することができる、トランス脂肪酸が低減された、ホイップクリーム用油脂組成物に関する。
従来から、製菓や料理に用いられるホイップクリームとして、植物性油脂を原料として製造される植物性クリーム(水中油型乳化物)が知られている。植物性クリームは生乳から得られる生クリームに比べて安定性に優れ、かつ比較的安価に製造されるという利点を有するためにその消費量は多い。この植物性クリームの製造では、流通時の温度が変化する条件下でも乳化安定性に優れ、口溶け、造花性、起泡性に優れたホイップクリームが求められており、従来より数多くの提案がなされている(例えば特許文献1参照)。また、特許文献2では炭素数6〜10の中鎖脂肪酸のトリグリセリドを所定量用いると乳化安定性が改善されることを報告している。
一方、硬化油(部分水素添加油)に含まれるトランス酸は、近年健康への影響が指摘される報告がなされており、その使用を制限する国もある。日本でも低トランス酸食物は近年注目を浴びていることから、硬化油(部分水素添加油)を使用しない技術の要請がある。硬化油(部分水素添加油)を使用しない技術として、分別油、未加工の油脂、極度硬化油の使用が挙げられるが(例えば、特許文献3参照)、分別油の使用は乳化特性を不安定化させ、未加工の油脂は耐熱保形性、酸化安定性を著しく低下させ、また極度硬化油の使用は口溶けを低下させる。
特開2002-17256 特開2007-236348 特開2007-244218
本発明は、流通時の温度が変化する条件下でも乳化安定性に優れたホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物、及び口溶け、造花性、起泡性に優れたホイップクリームを提供することを目的とする。更にトランス脂肪酸低減されたホイップクリームを提供することを目的とする。
本発明は特に、温度変化条件下でも乳化安定性が高いホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物及び口溶けが良く、風味的に優れたホイップクリームを製造することができるホイップクリーム用油脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の点に鑑み鋭意研究した結果、ホイップクリーム用油脂組成物において、特定の2種類の油脂を組み合わせる事で、上記目的を達成することができるという知見を得て、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(A)融点が30℃以上40℃未満であるラウリン系油脂と(B)ヤシ油とパーム系油の混合油のランダムエステル交換油を含む油脂を含み、油脂全質量に対して(A)及び(B)の油脂の合計質量が50質量%以上であり、(A):(B)の油脂の質量比が7:1〜1:7の範囲であるホイップクリーム用油脂組成物を提供する。かかる油脂組成物により、乳化安定性に優れたホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物を製造することができ、更に口溶け、造花性、起泡性、に優れたホイップクリームを製造することができる。
また、前記油脂組成物中の油脂の全構成脂肪酸質量に対するトランス脂肪酸含量は5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
本発明により、乳化安定性に優れたホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物、及び口溶け、造花性、起泡性等に優れたホイップクリームを製造することができるホイップクリーム用油脂組成物が提供される。
また、更に、トランス脂肪酸を含有しないかあるいは低トランス脂肪酸含量のホイップクリーム用油脂組成物、水中油型乳化油脂組成物及びホイップクリームを得ることができる。
特に、本発明のホイップクリーム用油脂組成物から製造される水中油型乳化油脂組成物は高いヒートショック耐性を有し、流通時の温度変化に耐えて乳化安定性を示す一方で、ホイップクリームを製造した時、優れた口溶けを実現するため、従来製品に比べて、非常に優れた商品価値を与えるものである。
<ホイップクリーム用油脂組成物>
本発明のホイップクリーム用油脂組成物は、(A)融点が30℃以上40℃未満であるラウリン系油脂と(B)ヤシ油とパーム系油の混合油のランダムエステル交換油を含むことを特徴とする。
なお、本発明のホイップクリーム用油脂組成物から水中油型乳化油脂組成物を作成する際には、後述するように油相部に乳脂肪を添加することができるが、本明細書において「ホイップクリーム用油脂組成物」という場合には、特に断らない限り、植物性油脂(すなわち、乳脂肪を除く油脂)からなる油脂組成物を意味する。
油脂全質量に対して(A)及び(B)の油脂の合計質量は50質量%以上、好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。水中油型乳化油脂組成物を作成する際に油相部に乳脂肪を添加する場合であっても、前記「油脂全質量」とは、植物性油脂(すなわち、乳脂肪を除く油脂)からなる油脂組成物の全質量を意味する。他の成分の含有量についても同様に、特に断らない限り「油脂全質量」とは、植物性油脂(すなわち、乳脂肪を除く油脂)からなる油脂組成物の全質量を意味する。
(A):(B)の油脂の質量比は、7:1〜1:7の範囲であり、好ましくは2:6〜6:2の範囲である。
(A)融点が30℃以上40℃未満であるラウリン系油脂
本発明において、「ラウリン系油脂」とは、ヤシ油、パーム核油等が例示でき、上記油脂類の単独又は混合油あるいはそれらの硬化、分別等を施した加工油脂が利用できる。
ラウリン系油脂のうち、融点が30℃以上40℃未満のものを使用することができる。より好ましくは融点は30℃以上38℃以下である。
融点が30℃以上40℃未満のラウリン系油脂として、(A1)パーム核極度硬化油のランダムエステル交換油及び(A2)ヨウ素価3〜12のパーム核硬化油からなる群及び(A3)ヤシ極度硬化油より選択される油脂を挙げることができ、上記油脂類の単独又は混合油を利用できる。
(A2)のパーム核硬化油のヨウ素価はより好ましくは4〜11である。
本明細書において、ヨウ素価は、基準油脂分析法2.3.4.1-1996ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)により測定したものを示す。
融点が30℃以上40℃未満であるラウリン系油脂は、より好ましくは(A1)パーム核極度硬化油のランダムエステル交換油及び(A2)ヨウ素価3〜12のパーム核硬化油からなる群より選択される。
本明細書において、「硬化」とは、水素添加によって不飽和脂肪酸を飽和することである。また、「極度硬化」とは、水素添加によって不飽和脂肪酸を完全に飽和することである。水素添加の方法は当業者に公知の方法により適宜行うことができる。例えば「食用油製造の実際」(宮川高明著、幸書房、昭和63年7月5日 初版第1刷発行)に記載の方法に従い、行うことができる。
油脂全質量に対して、(A)ラウリン系油脂を10質量%以上含むことが好ましく、20質量%以上含むことがより好ましく、25質量%以上含むことが最も好ましい。(A) ラウリン系油脂が少なくなるとヒートショック耐性が低下して、粘度が大きく上昇してしまうため好ましくない。
また、油脂全質量に対して、(A) ラウリン系油脂を70質量%以下含むことが好ましく、60質量%以下含むことがより好ましく、55質量%以下含むことが最も好ましい。(A) ラウリン系油脂が多くなると口溶けが低下するため好ましくない。
(B)ヤシ油とパーム系油の混合油をランダムエステル交換処理した油脂
本発明において、パーム系油とは、パーム油、パーム油の分別油、それらの硬化油を含む油脂を意味する。これらの中で特にパーム油であることが好ましい。
本発明の一つの特徴は、(B)ヤシ油とパーム系油の混合油をランダムエステル交換処理した油脂を使用する点にある。(B)ヤシ油とパーム系油の混合油をランダムエステル交換処理した油脂を使用すると、乳化安定性を維持しつつ口溶けを良好にすることができ有利である。
例えば、ヤシ油と同様にラウリン系油脂であるパーム核油あるいはパーム核分別油をヤシ油の代わりに用いて、パーム核油あるいはパーム核分別油とパーム油の混合油のランダムエステル油を用いても乳化安定性を維持できず、更に口溶けも良くない。この例から明らかなように、特にヤシ油とパーム系油の組み合わせにおいて優れた効果を発揮する。
また、(B)ヤシ油とパーム系油の混合油をランダムエステル交換処理した油脂におけるヤシ油とパーム系油は3:7〜5:5の質量比で混合されていることが好ましく、4:6であることが最も好ましい。
油脂全質量に対して、(B)ヤシ油とパーム系油の混合油をランダムエステル交換処理した油脂を10質量%以上含むことが好ましく、20質量%以上含むことがより好ましく、25質量%以上含むことが最も好ましい。(B)ヤシ油とパーム油の混合油のランダムエステル交換油の使用量が少なすぎる場合には、口溶けが悪くなり好ましくない。
また、油脂全質量に対して、(B)ヤシ油とパーム系油の混合油をランダムエステル交換処理した油脂を70質量%以下含むことが好ましく、60質量%以下含むことがより好ましく、55質量%以下含むことが最も好ましい。(B)ヤシ油とパーム系油の混合油をランダムエステル交換処理した油脂の使用量が多すぎると、乳化安定性が低下するため好ましくない。
本明細書において、「ランダムエステル交換」とは、当該技術分野において通常行われている方法に従って行うことができる。例えば、ナトリウムメチラートを触媒としてエステル交換を行う化学的な方法、非選択的リパーゼ等を触媒としてエステル交換を行う酵素的な方法に従って行うことができる。
(C)液体油
本発明の油脂組成物は、油脂として更に(C)液体油を、油脂全質量に対して35質量%以下の量で含んでいてもよい。液体油は、ヒートショック耐性及び口溶けを良好にすることができる。油脂組成物の油脂の全質量に対して、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、更に好ましくは15質量%以上25質量%以下含まれる。
本明細書において、液体油とは、通常常温で液体の油をいう。より好ましくは融点が20℃未満の油を意味する。
本発明において使用する液体油として好ましくは、炭素数18以上の不飽和脂肪酸を50%以上含む油脂が挙げられる。構成脂肪酸の50%以上が炭素数が18の不飽和脂肪酸である液体油脂であり、例えば、ナタネ油、大豆油、コーン油、オリーブ油、サフラワー油、綿実油、落花生油、ひまわり油、パーム分別油低融点部、ハイオレイックヒマワリ油、ハイオレイックナタネ油又はこれらの混合油が挙げられる。好ましくはハイオレイックナタネ油、パーム分別油低融点部が挙げられる。
<水中油型乳化油脂組成物>
本発明の水中油型乳化油脂組成物は、水相部と油相部からなり、上述した本発明のホイップクリーム用油脂組成物を油相部に含む。水相部と油相部の質量比はホイップクリームを製造するために適宜設定することができるが、通常、80:20〜50:50程度である。
前記油相部は、油脂として本発明のホイップクリーム用油脂組成物のみを含んでいてもよく、また乳脂肪を更に含んでいてもよい。乳脂肪としてバターオイル、バター、生クリーム、牛乳等を由来とする乳脂肪が挙げられる。以下、上述した本発明のホイップクリーム用油脂組成物を特に乳脂肪と区別して述べる場合には、「植物性油脂組成物」とも呼ぶ。
乳脂肪と植物性油脂組成物の混合比は、質量比で乳脂肪:植物性油脂組成物が0:100〜75:25の範囲内で変えることができる。前記範囲内であれば、植物性油脂組成物の乳化安定性、口溶け、造花性、起泡性等の効果を損なうことなく、ホイップクリームを製造することができる。
本発明の水中油型乳化油脂組成物は、一般的な製造方法により製造できるが、代表的な方法を述べると、先ず使用する乳化剤が親油性のものは原料油脂(本発明のホイップクリーム用油脂組成物)の一部または全部に添加し溶解ないし分散させて油相部を調製する。このような乳化剤としては、例えばレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド等従来公知の乳化剤のうちHLBの低い乳化剤が例示でき、本発明においてはこれらのいずれを適宜組み合わせて使用してもよい。
また、バターオイル、バター、生クリーム、牛乳等を由来とする乳脂肪を用いる場合には、これらを必要に応じて加熱融解して油相物を調製して用いる。乳脂肪を含む油相部と、上述した植物性油脂からなる本発明のホイップクリーム用油脂組成物を含む油相部は、水相部に混合した後添加してもよく、また各々添加してもよい。
次に、水相部にカゼインナトリウム、脱脂粉乳、糖類や必要に応じて、蔗糖脂肪酸エステル、クエン酸ナトリウム、トリポリりん酸ナトリウム、第二りん酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ヘキサメタりん酸ナトリウム、増粘多糖類、香料などを添加し調製する。
無脂乳固形分の量は、組成物の全質量に対して、1〜10質量%であることが好ましく、更に2〜7質量%であることが好ましく、3〜6質量%であることが最も好ましい。このような範囲で添加することにより、乳化安定性が改善され、また風味が改善される場合があるからである。無脂乳固形分の含有量が約1質量%未満であると、乳化組成物を泡立てて得られるホイップクリームの風味が悪くなる。また、無脂乳固形分の含有量が約10質量%を越えると乳化組成物の粘度が高くなり、エージング中に粘度上昇が起こる恐れがある。
これら、油相部と水相部を60℃から80℃に加温し、混合して予備乳化を行う。予備乳化後、ホモゲナイザーにて均質化し、バッチ式殺菌法、または間熱加熱方式あるいは直接加熱方式によるUHT滅菌処理法にて滅菌し、再びホモゲナイザーにて均質化し冷却しエージングする。
本発明の油脂組成物には、甘味や粘度の調節を目的として糖類を配合してもよい。糖類としては、例えば、水飴、粉飴、ショ糖、麦芽糖、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、トレハロース等が挙げられ、これは必要に応じ適宜組み合わせて配合される。
<ホイップクリーム>
本発明において、ホイップクリームは、本発明の水中油型乳化油脂組成物を、当該技術分野において通常の方法により起泡されたものである。
以下、本発明の水中油型乳化油脂組成物を使用したホイップクリームの製造例を示すが、本発明はかかる例に限定されるものではない。
まず、本発明の油脂組成物を融解混合等により調製する。油脂組成物に、レシチン、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤等の任意の添加剤を加え、混合して油相を調製する。
一方、水相部として、水に、メタリン酸Na、増粘多糖類、乳蛋白等の任意の添加剤を加えた後、これらを分散させて水相を調製する。
50〜85℃にて油相と水相を混合させ、予備乳化を行う。次いで20〜150kg/cm2の圧力下で均質化を行い、次いで75〜85℃にて加熱殺菌する。その後5〜10℃にまで冷却し、6〜24時間程度エージングを行なう。
このクリーム状油脂組成物をホバートミキサーにてホイップして起泡済みホイップクリームを得る。
実施例1〜8及び比較例1〜5
(実施例1、5及び8は参考例である)
油脂調製方法
以下の実施例で使用した油脂A〜Hは以下のようにして調製した。
油脂A…パーム核油の極度硬化処理を行って得られた油脂(融点41.0℃)を0.12%のナトリウムメチラートを触媒とし、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行い、脱色、脱臭を行い油脂Aを得た(融点37.4℃)。
油脂B…パーム核油をヨウ素価4.7となるように硬化を行い、脱色、脱臭を行い油脂Bを得た(融点35.5℃)。
油脂C…パーム核油の極度硬化処理を行い、脱色、脱臭を行い油脂Cを得た(融点41.0℃)。
油脂D…ヤシ油40%、パーム油60%の混合油を0.12%のナトリウムメチラートを触媒とし、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行い、脱色、脱臭を行い油脂Dを得た。
油脂E…パーム核ステアリン油40%、パーム油60%の混合油を用いる以外は、油脂Dと同様の反応を行い油脂Eを得た。
油脂F…パーム分別油(ヨウ素価60)を脱色、脱臭を行い油脂Fを得た。
油脂G…ハイオレイックナタネ油を脱色、脱臭を行い油脂Gを得た。
油脂H…原料にヤシ油を用いる以外は、油脂Cと同様の反応を行い油脂Hを得た。
水中油型乳化油脂組成物の調製
油脂44.56質量部を加熱溶解し、そこに大豆レシチン0.27質量部、飽和酸モノグリセリド(パルミチン酸モノグリセリド)0.14質量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル)0.03質量部を加え、融解して油相を調製した。
一方、水49.8質量部と脱脂粉乳5.0質量部、メタリン酸Na0.1部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB=11)0.1質量部を加えた後、分散させて水相を調製した。
油相と水相を混合させ、65℃で予備乳化を行い、60kg/cm2、40kg/cm2の圧力下で均質化した。次いで、75℃にて加熱殺菌を行い、冷却してクリーム状水中油型乳化油脂組成物を得た。その後、組成物を冷却し、5℃で1晩のエージングをした。
粘度
水中油型乳化油脂組成物を、5℃で一晩静置してエージングを行い、500mlのビーカーに水中油型乳化油脂組成物を500g入れ、B型粘度計(BROOK FIELD社製粘度計のLVT)、スピンドル2番、スピード30にて測定した。
ホイップ時間
水中油型乳化油脂組成物(クリーム)500gに砂糖を50g加え、5.0℃に温調し、8分立てとなるまでホバートミキサーにて速度2にてホイップした。8分立てホイップクリームを更に10分立て(硬度140〜170)まで手立てした。ホイップにかかる時間(10分立てまでの時間)を記載した。
オーバーラン
ホイップ後(10分立て)の体積増加率(%)。ただし、体積増加率は、式:((a)(一定体積の水の重量−水と同体積のホイップ後のクリームの重量)/(b)(水と同体積のホイップ後のクリームの重量))×100、に従って計算した。
硬度
ホイップした水中油型乳化油脂組成物(クリーム)を45.5ml容器に入れ、ミクロペネメーター:RIGOSHA製のPENETRO METER使用、円スイ(1g)を使用し、平らにしたクリームへの円スイの針入度を測定(単位は1/10mm)した。
造花性評価
ホイップクリーム(10分立て)を三角袋に詰めて絞った時の、腰、伸び、艶、荒れを下記を基準とする5段階評価で評価した。
5…非常に良好
4…良好
3…普通
2…やや悪い
1…悪い
ヒートショック試験
牛乳瓶にホイップ前の水中油型乳化油脂組成物を約150g入れ、25℃の恒温槽に1時間入れ、その後、5℃の恒温槽に6時間保存した。保存後、分離、ボテ、粘度を評価した。これらの評価は、乳化安定性の指標となる。
B型粘度計…No.3ローター スピード30にて5分後の粘度を測定した。または、5分以内で4000mPa・s以上になった場合にはその時間を示した(表1では括弧を付して時間を示した)。
リオン…No.3ローターにて5分後の粘度を測定した。または、5分以内で10dPa・s以上になった場合にはその時間を示した。
口溶け評価
専門パネラー5名により、ホイップクリーム(10分立て)を実際に食して口溶けを評価した。
5…非常に良好
4…良好
3…普通
2…やや悪い
1…悪い
上記評価結果と油脂組成物の組成を表1に示した。表1において「%」は質量%を意味する。
表1の結果から明らかなように、本発明の油脂組成物から製造される水中油型乳化油脂組成物は特にヒートショック試験において良好であり、また本発明の油脂組成物から製造されたホイップクリームの口溶けも非常に良好であった(実施例1〜8)。
これに対して、(A)成分であるラウリン系油脂を含まない油脂組成物(比較例1)は、ヒートショック試験では、B型粘度計測定時4000mPa・sを越えてしまい(13秒)、乳化安定性が著しく低かった。また、(A)成分に代えて融点が41.0℃であるパーム核極度硬化油を用いた場合(比較例5)では、口溶けが非常に悪かった。
また、(B)成分のランダムエステル交換油を含まない油脂組成物を用いた場合(比較例2及び3)には、口溶けが非常に悪い結果であった。また、(B)成分であるヤシ油とパーム系油の混合油をランダムエステル交換処理した油脂に代えて、パーム核ステアリンとパーム油の混合油をランダムエステル交換処理した油脂を用いた場合にも(比較例4)口溶けが悪く、更に乳化安定性も低下した。
以上の結果から、本発明のホイップクリーム用油脂組成物から製造される水中油型乳化油脂組成物が、乳化安定性(特にヒートショック耐性)とホイップクリーム製造時の口溶けの双方において、バランスのとれた優れた組成物であることがわかる。
Figure 0005366294
実施例9〜13
実施例4のうち、水中油型乳化油脂組成物の調製方法を以下のように変えた以外は、実施例1〜8と同様に水中油型乳化油脂組成物を調製し、同様に評価を行った。
水中油型乳化油脂組成物の調製
本発明の油脂組成物X質量部を加熱溶解し、そこに大豆レシチン0.27質量部、飽和酸モノグリセリド(パルミチン酸モノグリセリド)0.14質量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル)0.03質量部を加え融解し油相−1を調製した。
無塩バター(乳脂肪分83%)Y質量部を加熱溶解して油相−2を調製した。
一方、水a質量部と脱脂粉乳b質量部、メタリン酸Na0.1質量部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB=11)0.1質量部を加えた後、分散させて水相を調製した。
水相を攪拌しながら、油相−1及び油相−2を順次投入して混合し、65℃で予備乳化を行い、60kg/cm2、40kg/cm2の圧力下で均質化した。次いで、75℃にて加熱殺菌を行い、冷却してクリーム状水中油型乳化油脂組成物を得た。その後、組成物を冷却し、5℃で1晩のエージングをした。
各実施例における本発明の油脂組成物X質量部、無塩バターY質量部、水a質量部及び脱脂粉乳b質量部については下記表2に示した。
また、各評価結果も併せて表2に示した。
Figure 0005366294
表2の結果から明らかなように、本発明のホイップクリーム用油脂組成物は、油脂組成物として単独で用いてもよいが、乳脂肪と組み合わせて用いても、乳化安定性(特にヒートショック耐性)とホイップクリーム製造時の口溶けの双方のバランスを維持することができる組成物である。

Claims (8)

  1. (A)(A1)パーム核極度硬化油のランダムエステル交換油及び(A2)ヨウ素価3〜12のパーム核硬化油からなる群より選択される融点が30℃以上38℃未満であるラウリン系油脂、(B)ヤシ油とパーム油の混合油をランダムエステル交換処理した油脂、及び(C)液体油を含み、油脂全質量に対する(A)及び(B)の油脂の合計質量が50質量%以上であり、かつ(A):(B)の油脂の質量比が55252555の範囲であり、油脂全質量に対して、(A)ラウリン系油脂を25質量%以上含み、(C)液体油を10質量%以上20質量%以下の量で含む、ホイップクリーム用油脂組成物。
  2. 油脂全質量に対して、(B)ヤシ油とパーム油の混合油をランダムエステル交換処理した油脂を20質量%以上含むことを特徴とする、請求項1に記載の油脂組成物。
  3. (B)ヤシ油とパーム油の混合油をランダムエステル交換処理した油脂におけるヤシ油とパーム油が3:7〜5:5の質量比で混合されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の油脂組成物。
  4. 水相部と油相部からなり、前記油相部が請求項1〜のいずれか一項に記載の油脂組成物を含むことを特徴とする、水中油型乳化油脂組成物。
  5. 油相部が更に乳脂肪を含むことを特徴とする、請求項記載の水中油型乳化油脂組成物。
  6. 乳脂肪と請求項1〜のいずれか一項に記載の油脂組成物の質量比が0:100〜75:25の範囲であることを特徴とする、請求項またはに記載の水中油型乳化油脂組成物。
  7. 請求項のいずれか一項に記載の水中油型乳化油脂組成物の、ホイップクリーム製造における使用。
  8. 請求項のいずれか一項に記載の水中油型乳化油脂組成物を用いて製造されたホイップクリーム。
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