以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエレベータを示す構成図であり、リニューアル工事中の状態を示している。図1において、昇降路1内には、一対のかごガイドレール2が設置されている。各かごガイドレール2は、複数本のレール部材を上下方向に継ぎ合わせて構成されている。また、各かごガイドレール2は、複数のレールブラケット9を介して昇降路壁に対して固定されている。
昇降体であるかご3は、一対のかごガイドレール2間に配置されている。また、かご3は、かごガイドレール2に沿って昇降路1内を昇降する。
かご3の上部には、懸架体4の第1の端部が接続されている。懸架体4としては、複数本のロープ又は複数本のベルトが用いられている。懸架体4の第2の端部には、図示しない釣合おもりが接続されている。かご3及び釣合おもりは、懸架体4により昇降路1内に吊り下げられている。
懸架体4の中間部は、図示しない巻上機の駆動シーブに巻き掛けられている。かご3及び釣合おもりは、駆動シーブを回転させることにより、昇降路1内を昇降する。昇降路1内には、図示しない一対の釣合おもりガイドレールが設置されている。釣合おもりは、釣合おもりガイドレールに沿って昇降路1内を昇降する。
かご3の下部には、非常止め装置5が搭載されている。非常止め装置5は、一対のかごガイドレール2を把持することにより、かご3を非常停止させる。
かご3の上部の幅方向両端部とかご3の下部の幅方向両端部とには、かごガイドレール2に接するガイド装置6がそれぞれ取り付けられている。各ガイド装置6としては、スライディングガイドシュー又はローラガイド装置が用いられている。
かご3の下方には、かごガイドレール2に対して加工を施す加工装置本体7が設けられている。図1では加工装置本体7を単なるボックスで示しているが、詳細な構成は後述する。
加工装置本体7は、吊り下げ部材8を介して、かご3の下部から昇降路1内に吊り下げられている。吊り下げ部材8としては、可撓性を有する紐状の部材、例えば、ロープ、ワイヤ又はベルトが用いられる。
かご3は、加工装置本体7の上方に位置しており、加工装置本体7をかごガイドレール2に沿って移動させる。
加工装置本体7の下部には、接続部材51を介して測定装置52が接続されている。測定装置52は、加工装置本体7とともにかごガイドレール2に沿って移動可能に加工装置本体7に接続されている。即ち、測定装置52は、加工装置本体7をかごガイドレール2に沿って移動させることにより、かごガイドレール2に沿って移動される。また、測定装置52は、かごガイドレール2の厚さを測定する。
ガイドレール加工装置100は、加工装置本体7、吊り下げ部材8、接続部材51、及び測定装置52を有している。また、ガイドレール加工装置100は、昇降路1に設置された状態のかごガイドレール2に加工を施す際に使用されるもので、エレベータの通常運転時には撤去される。
図2は、図1のII-II線に沿うかごガイドレール2の断面図である。かごガイドレール2は、ブラケット固定部2aと、案内部2bとを有している。ブラケット固定部2aは、レールブラケット9に固定される部分である。案内部2bは、ブラケット固定部2aの幅方向中央からかご3側へ直角に突出し、かご3の昇降を案内する。また、案内部2bは、かご3の非常停止時に非常止め装置5により把持される。
さらに、案内部2bは、互いに対向する一対の制動面2cと、先端面2dとを有している。先端面2dは、案内部2bのブラケット固定部2aとは反対側、即ちかご3側の端面である。一対の制動面2c及び先端面2dは、かご3の昇降時に、ガイド装置6が接する案内面として機能する。また、一対の制動面2cは、かご3の非常停止時に非常止め装置5が接する面である。
図1の測定装置52は、かごガイドレール2の厚さとして、案内部2bの厚さを測定する。
<加工装置本体の構成>
図3は、図1の加工装置本体7の詳細な構成を示す斜視図である。図4は、図3の加工装置本体7を図3とは異なる角度から見た斜視図である。図5は、図3の加工装置本体7を図3及び図4とは異なる角度から見た斜視図である。図6は、図3の加工装置本体7を図3~5とは異なる角度から見た斜視図である。
加工装置本体7は、フレーム11、接続具12、加工具13、加工具駆動装置14、第1のガイドローラ15、第2のガイドローラ16、第1の押付ローラ17、第2の押付ローラ18、第1の先端面ローラ19、及び第2の先端面ローラ20を有している。
フレーム11は、フレーム本体21とフレーム分割体22とを有している。接続具12、加工具13、加工具駆動装置14、第1のガイドローラ15、第2のガイドローラ16、第1の先端面ローラ19、及び第2の先端面ローラ20は、フレーム本体21に設けられている。
第1の押付ローラ17及び第2の押付ローラ18は、フレーム分割体22に設けられている。
接続具12は、フレーム本体21の上端部に設けられている。接続具12には、吊り下げ部材8が接続される。
加工具駆動装置14は、フレーム本体21の加工具13とは反対側に配置されている。また、加工具駆動装置14は、加工具13を回転させる。加工具駆動装置14としては、例えば電動モータが用いられている。
加工具13は、制動面2cに加工を施す。加工具13としては、砥石が用いられる。砥石としては、外周面に多数の砥粒が設けられている円筒状の平形砥石が用いられる。また、加工具13として、切削工具等を用いてもよい。
加工具13の外周面を制動面2cに接触させた状態で加工具13を回転させることにより、制動面2cの少なくとも一部、即ち一部又は全面を削り取ることができる。これにより、例えば制動面2cの表面粗さを粗くし、非常止め装置5に対する制動面2cの摩擦係数をより適正な値にすることができる。
フレーム本体21には、図示しないカバーが設けられている。加工具13により制動面2cに加工を施す際には、加工屑が発生する。カバーは、加工屑が加工装置本体7の周囲に散乱することを防止する。
第1のガイドローラ15及び第2のガイドローラ16は、加工具13と並んでフレーム本体21に設けられている。吊り下げ部材8によりフレーム11を吊り下げた状態で、第1のガイドローラ15は加工具13の上方に配置され、第2のガイドローラ16は加工具13の下方に配置される。加工具13は、第1のガイドローラ15と第2のガイドローラ16との中間に配置されている。
第1のガイドローラ15及び第2のガイドローラ16は、加工具13とともに制動面2cに接することにより、加工具13の外周面を制動面2cに平行に接触させる。即ち、加工具13の幅方向全体で加工具13の外周面を制動面2cに均等に接触させる。
ガイドローラ15,16の制動面2cとの接触部である2本の線分と、加工具13の制動面2cとの接触部である1本の線分とは、1つの平面内に存在できるように設定されている。
第1の押付ローラ17は、第1のガイドローラ15との間に案内部2bを挟み込む。第2の押付ローラ18は、第2のガイドローラ16との間に案内部2bを挟み込む。即ち、加工具13、第1のガイドローラ15、及び第2のガイドローラ16が、加工対象となっている側の制動面2cに接するとき、第1の押付ローラ17及び第2の押付ローラ18は、反対側の制動面2cに接する。
加工具13及びローラ15,16,17,18の回転軸は、互いに平行又はほぼ平行、かつ、かごガイドレール2の加工時には水平又はほぼ水平である。
第1の先端面ローラ19は、フレーム本体21の上端部に設けられている。第2の先端面ローラ20は、フレーム本体21の下端部に設けられている。即ち、第1及び第2の先端面ローラ19,20は、上下方向に互いに間隔をおいて配置されている。
フレーム分割体22は、挟み込み位置と解放位置との間で、フレーム本体21に対して直線的に移動可能になっている。挟み込み位置は、ガイドローラ15,16と押付ローラ17,18との間に案内部2bを挟み込む位置である。解放位置は、挟み込み位置よりも押付ローラ17,18がガイドローラ15,16から離れた位置である。
フレーム本体21には、一対の棒状のフレームガイド23が設けられている。フレームガイド23は、フレーム本体21に対するフレーム分割体22の移動を案内する。また、フレームガイド23は、フレーム分割体22を貫通している。
フレーム本体21の上下端部には、一対のロッド固定部24が設けられている。フレーム分割体22には、ロッド固定部24に対向する一対の対向部25が設けられている。各ロッド固定部24には、フレームばねロッド26が固定されている。各フレームばねロッド26は、対向部25を貫通している。
フレームばねロッド26には、フレームばね受け27が取り付けられている。フレームばね受け27と対向部25との間には、それぞれフレームばね28が設けられている。各フレームばね28は、フレーム分割体22を挟み込み位置へ移動させる力を発生している。
フレームばね28による押付ローラ17,18の加圧力は、加工装置本体7の重心位置の偏心によって、加工装置本体7が傾こうとする力に打ち勝ち、ガイドローラ15,16の外周面と制動面2cとの平行を維持できるような大きさに設定されている。
また、フレームばね28による押付ローラ17,18の加圧力は、加工具13を回転させながら加工装置本体7をかごガイドレール2に沿って移動させたときにも、ガイドローラ15,16の外周面と制動面2cとの平行を維持できるような大きさに設定されている。
フレーム本体21とフレーム分割体22との間には、図示しない解放位置保持機構が設けられている。解放位置保持機構は、フレームばね28のばね力に抗して、フレーム分割体22を解放位置に保持する。
加工具13及び加工具駆動装置14は、加工位置と離隔位置との間でフレーム本体21に対して直線的に移動可能になっている。加工位置は、ガイドローラ15,16が制動面2cに接した状態で、加工具13が制動面2cに接する位置である。離隔位置は、ガイドローラ15,16が制動面2cに接した状態で、加工具13が制動面2cから離れる位置である。
上記のように、押付ローラ17,18は、制動面2cに対して直角の方向へ移動可能になっている。また、加工具13及び加工具駆動装置14も、制動面2cに対して直角の方向へ移動可能になっている。
図4に示すように、加工具駆動装置14は、平板状の可動支持部材29に取り付けられている。フレーム本体21には、一対の棒状の駆動装置ガイド30が固定されている。可動支持部材29は、駆動装置ガイド30に沿ってスライド可能になっている。これにより、加工具13及び加工具駆動装置14は、フレーム本体21に対して直線的に移動可能になっている。
可動支持部材29とフレーム本体21との間には、加工具ばね31が設けられている。加工具ばね31は、加工具13及び加工具駆動装置14を加工位置側へ移動させる力を発生する。加工具ばね31による加工具13の加圧力は、ビビリなどの不具合が発生しない大きさに設定されている。
フレーム本体21と可動支持部材29との間には、図示しない離隔位置保持機構が設けられている。離隔位置保持機構は、加工具ばね31のばね力に抗して、加工具13及び加工具駆動装置14を離隔位置に保持する。
なお、図7は、図3の加工装置本体7をかごガイドレール2にセットした状態を示す斜視図である。図8は、図4の加工装置本体7をかごガイドレール2にセットした状態を示す斜視図である。図9は、図5の加工装置本体7をかごガイドレール2にセットした状態を示す斜視図である。
図10は、図7の加工具13とかごガイドレール2との接触状態を示す断面図である。加工具13の外周面の幅寸法は、制動面2cの幅寸法よりも大きい。これにより、加工具13は、制動面2cの幅方向の全体に接触している。
図11は、図7の第1のガイドローラ15、第2のガイドローラ16、第1の押付ローラ17、及び第2の押付ローラ18と、かごガイドレール2との接触状態を示す断面図である。第1及び第2のガイドローラ15,16の外周面は、円筒状である。即ち、第1及び第2のガイドローラ15,16の回転中心C1に沿う断面における第1及び第2のガイドローラ15,16の外周面の形状は、直線である。
第1及び第2の押付ローラ17,18の外周面は、略球面状である。即ち、第1及び第2の押付ローラ17,18の回転中心C2に沿う断面における第1及び第2の押付ローラ17,18の外周面の形状は、円弧状である。
<測定装置の構成>
図12は、図1の測定装置52を示すブロック図である。測定装置52は、検出部53、測定部54、記憶部55、及び報知部56を有している。
検出部53は、案内部2bの厚さ測定時に、制動面2cに対向する。また、検出部53は、案内部2bの厚さを測定するための検出信号を測定部54に出力する。
測定部54は、検出部53からの検出信号に基づいて、案内部2bの厚さを測定する。また、測定部54は、測定により得られた測定値を、予め設定された目標値と比較して、加工装置本体7による加工の度合いが目標の度合いに達したかどうかを判定する。また、測定部54は、測定結果として、測定値及び判定結果を報知部56に出力する。
記憶部55は、案内部2bの厚さに関する目標値を記憶している。報知部56は、測定部54で測定された測定値と、測定部54による判定結果とを外部に報知する。
検出部53としては、レール厚さ計を用いることができる。測定部54としては、市販されている弁別器又はリレーメータを用いることができる。
また、測定部54と記憶部55とを組み合わせた構成として、コンピュータを用いることができる。コンピュータとしては、一般的なパーソナルコンピュータを用いることができる。この場合、コンピュータは、演算装置であるCPU(central processing unit)と、判定プログラム及び目標値を記憶したハードディスクドライブとを有している。
また、測定部54は、ケーブル等を介して検出部53に接続されている。報知部56としては、例えば、リレー、DIO(digital input/output)装置、回転灯、警報器、液晶ディスプレイ、又はこれらの組み合わせを用いることができる。
図13は、図12の検出部53の構成の一例を模式的に示す斜視図である。また、図14は、図13の検出部53をかごガイドレール2に装着した状態を示す斜視図である。
検出部53は、断面U字形の厚さ計フレーム57と、一対の第1の変位センサ58a,58bと、一対の第2の変位センサ59a,59bと、一対の第3の変位センサ60a,60bとを有している。
厚さ計フレーム57は、第1の対向部57a、第2の対向部57b、及び第3の対向部57cを有している。第1の対向部57aは、案内部2bの厚さ測定時に、一方の制動面2cに対向する。第2の対向部57bは、案内部2bの厚さ測定時に、他方の制動面2cに対向する。第3の対向部57cは、案内部2bの厚さ測定時に、先端面2dに対向する。
第1の変位センサ58a、第2の変位センサ59a、及び第3の変位センサ60aは、第1の対向部57aに設けられている。第1の変位センサ58b、第2の変位センサ59b、及び第3の変位センサ60bは、第2の対向部57bに設けられている。
第1の変位センサ58a,58bは、互いに対向している。第2の変位センサ59a,59bは、互いに対向している。第3の変位センサ60a,60bは、互いに対向している。
第1の変位センサ58a、第2の変位センサ59a、及び第3の変位センサ60aは、案内部2bの厚さ測定時に、かごガイドレール2の長手方向に平行な直線上に互いに間隔をおいて配置されている。
第1の変位センサ58b、第2の変位センサ59b、及び第3の変位センサ60bは、案内部2bの厚さ測定時に、かごガイドレール2の長手方向に平行な直線上に互いに間隔をおいて配置されている。
各変位センサ58a,58b,59a,59b,60a,60bは、案内部2bの厚さ測定時に、対向する制動面2cまでの距離に応じた信号を発生する。また、各変位センサ58a,58b,59a,59b,60a,60bとしては、非接触式のセンサ、例えば渦電流式変位センサを用いることができる。
<加工方法>
次に、図15は、実施の形態1のガイドレール加工方法を示すフローチャートである。加工装置本体7によりかごガイドレール2に加工を施す場合、まずステップS1において、図示しない制御装置及び電源をかご3に搬入する。制御装置は、加工装置本体7及び測定装置52を制御する装置である。また、ステップS2において、ガイドレール加工装置100を昇降路1のピットに搬入する。
続いて、かご3を昇降路1の下部に移動させておき、ステップS3において、吊り下げ部材8をかご3に接続して、ガイドレール加工装置100を昇降路1内に吊り下げる。また、ステップS4において、ガイドレール加工装置100を制御装置及び電源に接続する。そして、ステップS5、6において、ガイドレール加工装置100をかごガイドレール2にセットする。
具体的には、ステップS5において、図16に示すように、加工具13が離隔位置に保持され、フレーム分割体22が解放位置に保持された状態で、ガイドローラ15,16を一方の制動面2cに接触させる。また、先端面ローラ19,20を先端面2dに接触させる。
この後、ステップS6において、フレーム分割体22を挟み込み位置に移動させ、図17に示すように、ガイドローラ15,16と押付ローラ17,18との間に案内部2bを挟み込ませる。
このようにして加工装置本体7をかごガイドレール2にセットした後、ステップS7において、加工具13を回転させる。そして、ステップS8において、図18に示すように、加工具13及び加工具駆動装置14を加工位置に移動させるとともに、かご3を定格速度よりも低速の一定速度で最上階へ移動させる。即ち、加工具13によって制動面2cに加工を施しながら、加工装置本体7をかごガイドレール2に沿って移動させる。
かご3が最上階に到着すると、ステップS9において、加工具13及び加工具駆動装置14を離隔位置に移動させる。また、ステップS10において、加工具13の回転を停止させるとともに、かご3を停止させる。
この後、ステップS11において、かご3を最下階へ移動させながら、測定装置52により案内部2bの厚さの測定を行う。この例では、かご3の上昇時のみ制動面2cに加工を施すので、かご3の下降時には、加工具13を制動面2cから離しておくのが好ましい。
かご3が最下階に到着すると、ステップS12において、案内部2bの厚さが目標値に達していたかどうかを確認する。案内部2bの厚さが目標値に達していない場合、ガイドローラ15,16と押付ローラ17,18との間に案内部2bを挟み込み、ステップS7~12を再度実施する。案内部2bの厚さが目標値に達していた場合、加工完了となる。
反対側の制動面2cに対して加工を施す場合、図3とは左右対称の加工装置本体7を用いるか、又は図3の加工装置本体7を上下反対向きに吊り下げればよい。後者の場合、フレーム本体21の下端部にも接続具12を追加すればよい。
上記の加工方法を残りのかごガイドレール2に対しても施すことにより、全ての制動面2cに加工を施すことができる。また、2台以上の加工装置本体7により2面以上の制動面2cに同時に加工を施すこともできる。
実施の形態1のガイドレール加工方法は、吊り下げ工程と移動工程とを含んでいる。吊り下げ工程では、加工装置本体7と測定装置52とが、昇降路1内に吊り下げられるとともに、かごガイドレール2に対してセットされる。また、吊り下げ工程では、かごガイドレール2に沿って昇降するかご3から、加工装置本体7と測定装置52とが吊り下げられる。
移動工程では、加工装置本体7と測定装置52とがかごガイドレール2に沿って移動される。
また、移動工程は、加工工程、測定工程、判定工程、及び報知工程を含んでいる。加工工程では、加工具13によりかごガイドレール2に加工が施される。測定工程では、測定装置52により案内部2bの厚さが測定される。
判定工程では、測定工程で測定された測定値を目標値と比較して、加工装置本体7による加工の度合いが目標の度合いに達したかどうかが判定される。報知工程では、判定工程での判定結果が外部に報知される。
また、加工工程では、測定工程で測定された測定値に基づいて、加工装置本体7が制御される。加工装置本体7を制御する方法としては、加工具13の回転数、加工具13の制動面2cへの押し付け力、及び加工装置本体7の移動速度の少なくともいずれか1つを制御する方法が挙げられる。
例えば加工具13の回転数を上げることで、加工量を増加させることができる。また、加工具13の制動面2cへの押し付け力を増加させることで、加工量を増加させることができる。また、加工装置本体7の移動速度を遅くすることで、加工量を増加させることができる。
<リニューアル方法>
次に、実施の形態1のエレベータのリニューアル方法について説明する。実施の形態1では、既設のかごガイドレール2を残したまま、既設のかご3及び既設の非常止め装置5を新設のかご及び新設の非常止め装置に入れ換える。また、実施の形態1のリニューアル方法は、レール加工工程及び入れ換え工程を含む。
レール加工工程では、既設のかごガイドレール2の制動面2cの少なくとも一部を、上記のような加工装置本体7を用いて削り取る加工を施す。このとき、吊り下げ部材8を介して加工装置本体7を既設のかご3に接続し、既設のかご3の移動により加工装置本体7を既設のかごガイドレール2に沿って移動させる。
この後、入れ換え工程を実施する。入れ換え工程では、既設のかごガイドレール2を残したまま、既設のかご3及び既設の非常止め装置5を、新設のかご及び新設の非常止め装置に入れ換える。
このようなガイドレール加工装置100では、加工装置本体7及び測定装置52がかごガイドレール2に沿って移動され、測定装置52によって案内部2bの厚さが測定される。このため、実際のかごガイドレール2の状態に応じた加工をより容易に行うことができる。
また、測定装置52は、加工装置本体7とともにかごガイドレール2に沿って移動可能に加工装置本体7に接続されている。このため、かごガイドレール2に対する加工作業と測定作業とを効率的に行うことができる。
また、測定部54は、測定値を目標値と比較して、加工装置本体7による加工の度合いが目標の度合いに達したかどうかを判定する。このため、追加の加工が必要であるかどうかの判定をスムーズに行うことができる。
また、測定装置52には、測定部54による判定結果を外部に報知する報知部56が設けられている。このため、追加加工が必要であるかどうかの判定を、ガイドレール加工装置100の外部で容易に確認することができる。
また、実施の形態1のガイドレール加工方法の吊り下げ工程では、加工装置本体7と測定装置52とが、昇降路1内に吊り下げられるとともに、かごガイドレール2に対してセットされる。また、移動工程では、加工装置本体7と測定装置52とがかごガイドレール2に沿って移動される。このため、実際のかごガイドレール2の状態に応じた加工をより容易に行うことができる。
また、加工工程では、測定工程で測定された測定値に基づいて、加工装置本体7が制御される。このため、加工装置本体7による加工の度合いをより適正に調整することができる。
また、加工工程では、加工具13の回転数、加工具13のかごガイドレール2への押し付け力、及び加工装置本体7の移動速度の少なくともいずれか1つが制御される。このため、加工装置本体7による加工の度合いをより適正に調整することができる。
また、判定工程では、測定工程で測定された測定値を目標値と比較して、加工装置本体7による加工の度合いが目標の度合いに達したかどうかが判定される。このため、追加の加工が必要であるかどうかの判定をスムーズに行うことができる。
また、報知工程では、判定工程での判定結果が外部に報知される。このため、追加加工が必要であるかどうかの判定を、ガイドレール加工装置100の外部で容易に確認することができる。
また、吊り下げ工程では、加工装置本体7と測定装置52とが、かご3から吊り下げられる。このため、かごガイドレール2に対する加工作業と測定作業とを効率的に行うことができる。
また、上記のようなガイドレール加工装置100及びガイドレール加工方法では、吊り下げ部材8を介して加工装置本体7が昇降路1内に吊り下げられる。そして、加工具13により制動面2cに加工を施しながら加工装置本体7がかごガイドレール2に沿って移動される。このため、非常止め装置5に対するかごガイドレール2の摩擦係数を、かごガイドレール2を昇降路1に設置したまま、より適正化することができる。
また、加工装置本体7は、吊り下げ部材8により吊り下げられている。このため、制動面2cの加工中に、かご3の振動が加工装置本体7に伝わるのを防止することができる。これにより、加工不具合の発生を防止し、制動面2cを安定して加工することができる。
また、加工装置本体7及び測定装置52は、かご3から吊り下げられる。このため、加工装置本体7を揚重する装置を別途用意する必要がない。また、かごガイドレール2の非常止め装置5が把持する領域に、効率的に加工を施すことができる。また、昇降行程が長いエレベータにおいても、長い吊り下げ部材を用いることなく、かごガイドレール2のほぼ全長に渡って容易に加工を施すことができる。
また、加工装置本体7には、ガイドローラ15,16が設けられている。このため、加工具13の外周面をより確実に制動面2cに平行に接触させることができ、削り残しを発生させずに、制動面2cに均等に加工を施すことができる。
また、案内部2bは、ガイドローラ15,16と押付ローラ17,18との間に挟み込まれる。このため、加工具13の外周面をより安定して制動面2cに平行に接触させることができる。また、制動面2cに上下方向の傾きがあった場合にも、加工具13の外周面と制動面2cとの平行を維持することができる。
また、フレーム本体21には、接続具12が設けられている。このため、接続具12に吊り下げ部材8を接続して昇降路1内に吊り下げた状態で、加工装置本体7をかごガイドレール2に沿って移動させることができる。これにより、非常止め装置5に対するかごガイドレール2の状態を、昇降路1にかごガイドレール2を設置したまま、より適正な状態にすることができる。
また、加工具13の上方に第1のガイドローラ15が配置され、加工具13の下方に第2のガイドローラ16が配置されている。このため、加工具13の外周面と制動面2cとの平行をより安定して維持することができる。これにより、かごガイドレール2の上下方向の傾き、曲がり、又はうねりがあった場合にも、加工具13の外周面と制動面2cとの平行を維持することができる。
また、加工具13は、第1及び第2のガイドローラ15,16の中間位置に配置されている。このため、フレーム本体21に対する加工具13の移動方向を、制動面2cに直角な方向とすることができる。これにより、加工具13を制動面2cに押し付ける力を安定させることができる。また、加工のムラ、即ち削り取る量の不均一が発生することがなく、安定した加工を施すことができる。
また、フレーム11は、フレーム本体21とフレーム分割体22とに分割されている。そして、フレームばね28は、フレーム分割体22を挟み込み位置側へ移動させる力を発生している。このため、簡単な構成により、ガイドローラ15,16と押付ローラ17,18との間に案内部2bを安定して挟み込むことができる。
また、加工具13及び加工具駆動装置14は、加工位置と離隔位置との間で移動可能となっている。そして、加工具ばね31は、加工具13及び加工具駆動装置14を加工位置側へ移動させる力を発生している。このため、簡単な構成により、加工具13を安定して制動面2cに押し当て、安定した加工を施すことができる。また、加工具13を離隔位置に移動させることで、制動面2cを加工せずに加工装置本体7をかごガイドレール2に沿って移動させることもできる。
また、フレーム本体21には、先端面ローラ19,20が設けられている。このため、加工装置本体7をかごガイドレール2に沿って安定した姿勢でスムーズに移動させることができる。
また、上記のようなエレベータのリニューアル方法では、既設のかごガイドレール2の制動面2cの少なくとも一部を削り取る加工を施す。この後、既設のかごガイドレール2を残したまま、既設のかご3及び既設の非常止め装置5を、新設のかご及び新設の非常止め装置に入れ換える。このため、新設の非常止め装置に対する既設のかごガイドレール2の摩擦係数を、かごガイドレール2を昇降路1に設置したまま、より適正化することができる。
これにより、既設のかごガイドレール2を取り換えることなく、エレベータのリニューアルを実現することができる。従って、工期を大幅に短縮することができるとともに、工事にかかる費用も大幅に削減することができる。
また、測定装置52による測定値を監視しながら制動面2cに加工を施すことで、制動面2cを加工し過ぎることによる不良品の発生を防ぐことができる。これにより、歩留まりを向上できるとともに、工事にかかるコストを削減することができる。
また、加工装置本体7を既設のかご3を利用して移動させるので、加工時に発生する加工屑等が新設のかご及び新設の非常止め装置5に付着するのを防止することができる。
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2の測定装置52は、制動面2cの面粗さを測定する。また、実施の形態2の測定装置52の構成は、図12と同様である。
検出部53は、制動面2cの面粗さ測定時に、制動面2cに対向する。また、検出部53は、案内部2bの面粗さを測定するための検出信号を測定部54に出力する。
測定部54は、検出部53からの検出信号に基づいて、制動面2cの面粗さを測定する。記憶部55は、制動面2cの面粗さに関する目標値を記憶している。
検出部53としては、面粗さ計を用いることができる。また、面粗さ計としては、例えば光学式の面粗さ検出器を用いることができる。他の構成は、実施の形態1と同様である。
図19は、実施の形態2のガイドレール加工方法を示すフローチャートである。実施の形態2では、ステップS21において、かご3を最下階へ移動させながら、測定装置52により制動面2cの面粗さの測定を行う。そして、かご3が最下階に到着すると、ステップS22において、制動面2cの面粗さが目標値に達していたかどうかを確認する。他のガイドレール加工方法及びリニューアル方法は、実施の形態1と同様である。
このようなガイドレール加工装置100及びガイドレール加工方法では、加工装置本体7及び測定装置52がかごガイドレール2に沿って移動され、測定装置52によって制動面2cの面粗さが測定される。このため、実際のかごガイドレール2の状態に応じた加工をより容易に行うことができる。また、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
なお、図20は、図12の測定装置52の第1の変形例を示すブロック図である。第1の変形例では、記憶部55が省略されている。この場合、加工装置本体7による加工の度合いが目標値に達したかどうかの判定を、作業者が行ってもよい。
このような第1の変形例によれば、測定装置52の構成を簡略化することができる。また、図20に示した第1の変形例は、実施の形態1、2のどちらにも適用できる。
また、図21は、図12の測定装置52の第2の変形例を示すブロック図である。第2の変形例の測定部54は、測定値と目標値とに基づいて、補正値を算出する。補正値は、加工具13の回転数、加工具13のかごガイドレール2への押し付け力、及び加工装置本体7の移動速度の少なくともいずれか1つを制御するための制御パラメータを補正する値である。
測定部54で算出された補正値は、報知部56から通信対象へ出力される。これにより、測定装置52は、制御パラメータを補正する。報知部56は、通信対象との通信を行う通信装置を含んでいる。
補正値が上記の回転数及び押し付け力の少なくともいずれか一方の制御パラメータを補正する値を含む場合、通信対象は、加工装置本体7を制御する制御装置である。また、補正値が上記の移動速度の制御パラメータを補正する値を含む場合、通信対象は、かご3の移動速度を制御するエレベータ制御装置である。
このような第2の変形例によれば、制御パラメータの変更を自動的に行うことができ、作業効率を向上させることができる。また、図21に示した第2の変形例は、実施の形態1、2のどちらにも適用できる。
制動面2cの面粗さを調整する場合、例えば面粗さの測定値が目標値よりも小さい領域に対しては、加工具13の回転数を下げることで、面粗さを増加させることができる。また、加工具13の制動面2cへの押し付け力をを増加させることで、面粗さのを増加させることができる。また、加工装置本体7の移動速度を速くすることで、制動面2cの面粗さを増加させることができる。
また、実施の形態1、2において、検出部53に設けるセンサの数は特に限定されない。例えばセンサの数を減らすことで、コストを削減することができる。
また、実施の形態1、2では、加工装置本体7を上昇させながら制動面2cに加工を施し、測定装置52を下降させながら測定装置52による測定を行った。これに対して、加工装置本体7を下降させながら制動面2cに加工を施し、測定装置52を上昇させながら、測定装置52による測定を行ってもよい。
また、加工時の加工装置本体7の移動方向と、測定時の測定装置52の移動方向と、加工装置本体7に対する測定装置52の位置との組み合わせは、上記の例に限定されない。
図22は、ガイドレール加工装置100の移動方向と、加工装置本体7に対する測定装置52の位置との第1の組み合わせ例を示す説明図である。また、図23は、ガイドレール加工装置100の移動方向と、加工装置本体7に対する測定装置52の位置との第2の組み合わせ例を示す説明図である。
第1の組み合わせ例では、ガイドレール加工装置100が上昇しており、測定装置52が加工装置本体7の上に配置されている。また、第1の組み合わせ例では、ガイドレール加工装置100の上昇時に加工及び測定を行う。
第2の組み合わせ例では、ガイドレール加工装置100が下降しており、測定装置52が加工装置本体7の下に配置されている。また、第2の組み合わせ例では、ガイドレール加工装置100の下降時に加工及び測定を行う。
このように、第1及び第2の組み合わせ例では、移動工程を実施する際に、測定装置52が、加工装置本体7に対して、加工装置本体7の移動方向の前方に配置されている。
これにより、加工直前の案内部2bの厚さ又は制動面2cの面粗さを測定しながら、制動面2cに加工を施すことができる。また、図21に示した第2の変形例のように、補正値により制御パラメータを補正する場合、制御パラメータを自動的に補正しながら、制動面2cに加工を施すことができる。
図24は、ガイドレール加工装置100の移動方向と、加工装置本体7に対する測定装置52の位置との第3の組み合わせ例を示す説明図である。また、図25は、ガイドレール加工装置100の移動方向と、加工装置本体7に対する測定装置52の位置との第4の組み合わせ例を示す説明図である。
第3の組み合わせ例では、ガイドレール加工装置100が上昇しており、測定装置52が加工装置本体7の下に配置されている。また、第3の組み合わせ例では、ガイドレール加工装置100の上昇時に加工及び測定を行う。
第4の組み合わせ例では、ガイドレール加工装置100が下降しており、測定装置52が加工装置本体7の上に配置されている。また、第4の組み合わせ例では、ガイドレール加工装置100の下降時に加工及び測定を行う。
このように、第3及び第4の組み合わせ例では、移動工程を実施する際に、測定装置52が、加工装置本体7に対して、加工装置本体7の移動方向の後方に配置されている。
これにより、制動面2cに加工を施しながら、加工直後の案内部2bの厚さ又は制動面2cの面粗さを測定することができる。また、図21に示した第2の変形例のように、補正値により制御パラメータを補正する場合、次の加工時に、制御パラメータを自動的に補正しながら、制動面2cに加工を施すことができる。
また、ガイドローラは、1個又は3個以上であってもよい。これに伴い、押付ローラも1個又は3個以上であってもよい。例えば、図26に示すように、1個のガイドローラ15と1個の押付ローラ17とにより案内部2bを挟み込む構成としてもよい。
また、加工具を制動面に安定して平行に当てることができれば、ガイドローラ及び押付ローラは省略してもよい。例えば、図27は加工具13と押付ローラ17とにより案内部2bを挟み込む構成を示している。このような構成によっても、加工具13を制動面2cに平行に当てることができる。
また、図28は、フレーム分割体及び押付ローラを省略し、フレーム本体21を一対のフレーム本体ばね33により案内部2b側へ押し付ける構成を示している。このような構成によっても、加工具13を制動面2cに平行に当てることができる。
また、測定装置により、ガイドレールの厚さと制動面の面粗さとの両方を測定してもよい。
また、加工装置本体の振動を検出する振動計をガイドレール加工装置に設け、加工装置本体の振動を測定しながらガイドレールに加工を施してもよい。そして、加工装置本体の振動が閾値以上となった場合に、加工を中断させるようにしてもよい。これにより、異常振動により発生する加工面の乱れを抑制することができ、不良品の発生を抑制することができる。従って、歩留まりを向上させることができるとともに、工事にかかるコストを削減することができる。
また、加工具の回転軸とガイドローラの回転軸とは、必ずしも平行でなくてもよい。
また、上記の例では、加工具及び押付ローラを制動面に押し付ける力をばねにより発生させたが、例えば、空圧シリンダ、油圧シリンダ、又は電動アクチュエータにより発生させてもよい。
また、接続具は、フレームに一体に形成してもよい。
また、上記の例では、既設のかごから加工装置本体を吊り下げたが、新設のかごから吊り下げてもよい。
また、上記の例では、加工装置本体をかごから吊り下げたが、昇降路の上部又はかごに設置したウインチ等の揚重装置から加工装置本体を吊り下げてもよい。
また、上記の例では、測定装置を加工装置本体に接続したが、測定装置を加工装置本体から切り離してもよい。この場合、例えば揚重装置により、測定装置を加工装置本体から独立して移動させてもよい。
また、上記の例では、昇降体がかごであり、加工対象がかごガイドレールである場合を示した。しかし、この発明は、昇降体が釣合おもりであり、加工対象が釣合おもりガイドレールである場合にも適用できる。この場合、加工装置本体は、釣合おもりから吊り下げてもよい。
また、上記の例では、リニューアル工事の際にガイドレールに加工を施した。しかし、例えば、新設のエレベータにおいて制動面の面粗さを調整したい場合、又は既設のエレベータの保守時に制動面をリフレッシュしたい場合にも、この発明を適用できる。
また、この発明は、機械室を有するエレベータ、機械室レスエレベータ、ダブルデッキエレベータ、ワンシャフトマルチカー方式のエレベータなど、種々のタイプのエレベータに適用できる。ワンシャフトマルチカー方式は、上かごと、上かごの真下に配置された下かごとが、それぞれ独立して共通の昇降路を昇降する方式である。