JP6863812B2 - 組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、各種基材に撥水・撥油性を付与することができる皮膜を形成する組成物に関する。
各種車両や屋外設備等において、窓ガラス表面の汚れに由来する視認性の悪化や、外観不良等の問題が生じる場合がある。そのため、ガラス等の基材表面の撥水・撥油性が良好であることが求められる。特に基材表面への液滴の付着を防止するだけでなく、付着した液滴の除去が容易であることも求められる。
例えば、特許文献1には、ゾルゲル膜を得るための塗布液であり、固形分及び溶媒を有し、固形分はアルコキシシランを酸性水溶液中で加水分解及び重縮合することで得られる酸化ケイ素オリゴマーを有し、溶媒はエチレングリコールモノアルキルエーテルと前記酸性水溶液を有する塗布液が開示されている。前記アルコキシシランとしては、メチルトリエトキシシランやγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどが具体的に開示されている。
特許文献2には、有機シラン、金属アルコキシドを所定の比率で混合し、蒸気圧が水より大きな有機溶媒、水、触媒を含む溶液を、ガラス基板上にスピンコートした例が開示されている。
特許文献3には、アミノ変性ポリシロキサン、酸、及び活性剤を含む撥水剤において、さらに、アミノシランを含むガラス用撥水剤をハンドスプレーで塗布することが開示されている。また、特許文献4には、アミノ変性ジメチルポリシロキサンと、アルコール類と。水と、を含有する自動車用艶出し組成物をスプレーで塗布することが開示されている。
特開2010−31188号公報 特開2013−213181号公報 特開2009−173491号公報 特開2009−40936号公報
上記特許文献1に記載の塗布液は、撥水・撥油性を有するものではない。また、撥水・撥油コーティングの塗布方法として、特許文献2ではスピンコート法、特許文献3、4でもスプレーコート法が用いられているが、これらの方法で用いるような特別な設備や器具等を用いることなく手塗りで皮膜を塗布できることは、コスト面や簡便さの点で非常に有利である。また、特許文献1には、手塗りの製膜方法が開示されているが、余剰成分を仕上げに拭取る必要があり、簡便とは言えない手法である。更に、皮膜は摩擦等を受けると破壊されやすくなって、液滴が付着し、或いは除去されにくくなる場合があり、その結果、基材の汚れや腐食、さらには性能低下が問題となることがあり、耐摩耗性等の耐久性も要求される。
そこで、本発明は、撥水・撥油性及び耐摩耗性を有すると共に、手塗り可能な組成物を提供することを目的とする。
本発明は、
メチレン基の一部が酸素原子に置き換わっていてもよい炭素数6〜20のアルキル基と、少なくとも1つの加水分解性基とがケイ素原子に結合している有機ケイ素化合物(A1)、または少なくとも1つのトリアルキルシリル基含有分子鎖と、少なくとも1つの加水分解性基とがケイ素原子に結合している有機ケイ素化合物(A2)を含み、
さらに、少なくとも1つの加水分解性基が金属原子に結合しており、炭化水素鎖部分の最大鎖長が前記有機ケイ素化合物(A1)または(A2)の最大鎖長よりも短い炭化水素鎖含有基が前記金属原子に結合していてもよい金属化合物(B)と、
20℃での蒸気圧が1000Pa以下であること及び沸点が120℃以上であることの少なくともいずれかを満たし、かつ溶解度パラメータが8.0(cal/cm31/2以上である高沸点溶媒(C)と、
20℃での蒸気圧が1000Pa超であり且つ沸点が120℃未満である低沸点溶媒(D)とを含み、
前記高沸点溶媒(C)の濃度が、組成物100質量部に対して、0.088質量部以上、1.74質量部未満である組成物である。
前記有機ケイ素化合物(A1)又は(A2)に対する前記金属化合物(B)のモル比は2以上、48以下であることが好ましい。
前記有機ケイ素化合物(A1)は、下記式(AI)で表されることが好ましい。
Figure 0006863812
[前記式(AI)中、Ra1はメチレン基の一部が酸素原子に置き換わっていてもよい炭素数が6〜20のアルキル基を表し、
複数のAa1は、それぞれ独立に、加水分解性基を表す。
a1は、炭化水素鎖含有基、または、加水分解性基を表し、Za1が炭化水素鎖含有基の場合、Ra1とZa1とは同一であっても異なっていてもよく、Za1が加水分解性基の場合、Za1とAa1とは、同一であっても異なっていてもよい。また、複数の式(AI)間でRa1とZa1とは同一であっても異なっていてもよい。]
前記有機ケイ素化合物(A2)は、下記式(AII)で表されることが好ましい。
Figure 0006863812
[式(AII)中、Ra2はトリアルキルシリル基含有分子鎖を表し、複数のAa2は、それぞれ独立に、加水分解性基を表す。Za2は、トリアルキルシリル基含有分子鎖、炭化水素鎖含有基、シロキサン骨格含有基又は加水分解性基を表す。]
前記金属化合物(B)は、下記式(BI)で表されることが好ましい。
Figure 0006863812
[前記式(BI)中、
b1は、炭化水素鎖部分の最大鎖長が前記炭素数6〜20のアルキル基の最大鎖長よりも短い炭化水素鎖含有基または加水分解性基を表す。
b1は、それぞれ独立に、加水分解性基を表す。
Mは、Al、Fe、In、Ge、Hf、Si、Ti、Sn、Zr、または、Taを表す。
mは、Mの価数に応じて、1〜4の整数を表す。]
前記式(BI)中、Rb1とAb1は同一の基であることが好ましい。
前記式(BI)中、MはSiであることが好ましい。
本発明の組成物によれば、メチレン基の一部が酸素原子に置き換わっていてもよい炭素数が6〜20のアルキル基と加水分解性基とがケイ素原子に結合している有機ケイ素化合物(A1)又は少なくとも1つのトリアルキルシリル基含有分子鎖と、少なくとも1つの加水分解性基とがケイ素原子に結合している有機ケイ素化合物(A2)と、加水分解性基が金属原子に結合している金属化合物(B)と、高沸点溶媒(C)と、低沸点溶媒(D)とを含むため、撥水・撥油性及び耐摩耗性を有する皮膜を、手塗りでムラなく基材に塗布することができる。
本発明の組成物は、メチレン基の一部が酸素原子に置き換わっていてもよい炭素数が6〜20のアルキル基と、少なくとも1つの加水分解性基とがケイ素原子に結合している有機ケイ素化合物(A1)または少なくとも1つのトリアルキルシリル基含有分子鎖と、少なくとも1つの加水分解性基とがケイ素原子に結合している有機ケイ素化合物(A2)と、少なくとも1つの加水分解性基が金属原子に結合し、炭化水素鎖部分の最大鎖長が前記有機ケイ素化合物(A1)または(A2)の最大鎖長よりも短い炭化水素鎖含有基が前記金属原子に結合していてもよい金属化合物(B)とを含む。このような組成物から、ケイ素原子、或いは金属原子に結合している加水分解性基が加水分解、重縮合して皮膜が形成される。また、本発明の組成物によれば、成膜にあたり仕上げに余剰分を拭き取る作業を必要としない。
有機ケイ素化合物として(A1)を用いる場合の皮膜は、この皮膜を形成するケイ素原子のうち一部のケイ素に、メチレン基の一部が酸素原子に置き換わっていてもよい炭素数が6〜20のアルキル基(以下、単に炭素数6〜20のアルキル基と呼ぶ場合がある)が結合した状態となる。そして、この炭素数6〜20のアルキル基によって、皮膜に撥水・撥油機能が付与される。また、有機ケイ素化合物として(A2)を用いる場合の皮膜は、この皮膜を形成するケイ素原子のうち一部のケイ素に、トリアルキルシリル基含有分子鎖を有する基が結合した状態となる。そして、このトリアルキルシリル基によって、皮膜に撥水・撥油機能が付与される。
炭素数6〜20のアルキル基及びトリアルキルシリル基が結合していない元素(例えば、上記金属原子)は、皮膜中で実質的にスペーサーとして機能することになり、耐摩耗性が高められる。そして、本発明の組成物の好ましい態様では、前記有機ケイ素化合物((A1)又は(A2))と金属化合物(B)のモル比を特定範囲に調整しているため、得られる皮膜において、炭素数6〜20のアルキル基又はトリアルキルシリル基とスペーサーとが特定の割合で存在することとなり、撥水・撥油機能が高められると同時に、耐摩耗性がより一層高められた皮膜を提供できる。
更に、本発明の組成物は、所定の要件を満たす高沸点溶媒(C)を含む。高沸点溶媒を含むことによって、組成物を基材に手塗りで塗布する際に、揮発することなく基材上に残った高沸点溶媒(C)により、組成物をムラなく塗布することが可能となる。
以下、有機ケイ素化合物(A1)及び(A2)についてそれぞれ説明する。
(1−1)有機ケイ素化合物(A1)
撥水・撥油性に関して、本発明では、有機ケイ素化合物(A1)の中心ケイ素原子に炭化水素鎖含有基(以下、第1の炭化水素鎖含有基と呼ぶ)が結合しており、この第1の炭化水素鎖含有基として炭素数6〜20のアルキル基がケイ素原子に結合している点が重要である。この炭素数が6〜20のアルキル基によって、得られる皮膜界面(表面)に撥水・撥油性が付与される。特に液滴(水滴、油滴等)と皮膜の間の摩擦係数が小さくなり、液滴が移動しやすくなる。前記した炭素数が6〜20のアルキル基は、炭素数が7以上、17以下であることが好ましく、8以上、15以下であることがより好ましい。
有機ケイ素化合物(A1)のケイ素原子には、炭素数6〜20のアルキル基が1つ結合している他、更に第1の炭化水素鎖含有基が結合していても良い。第1の炭化水素鎖含有基(炭素数6〜20のアルキル基を含む)は、通常、炭化水素基(炭化水素鎖)のみから構成されるが、必要により、この炭化水素鎖の一部のメチレン基(−CH2−)が酸素原子に置き換わっていていてもよい。このように一部が酸素原子で置換された基であっても、残りの部分に炭化水素鎖が存在するため、炭化水素鎖含有基に分類される。なおSi原子に隣接するメチレン基(−CH2−)は酸素原子に置き換わることはなく、また連続する2つのメチレン基(−CH2−)が同時に酸素原子に置き換わることもない。以下、特に断りがない限り、酸素非置換型のアルキル基及び炭化水素鎖含有基(すなわち1価の炭化水素基)を例にとって第1の炭化水素鎖含有基について説明するが、いずれの説明でも、そのメチレン基(−CH2−)のうち一部を酸素原子に置き換えることが可能である。
また、有機ケイ素化合物(A1)のケイ素原子に結合する第1の炭化水素鎖含有基のうち炭素数6〜20のアルキル基の他に更に結合していても良い前記第1の炭化水素鎖含有基は、それが炭化水素基の場合には、炭素数が6以上、20以下であることが好ましく、より好ましくは炭素数7以上、17以下であり、更に好ましくは炭素数8以上、15以下である。
なお、第1の炭化水素鎖含有基の一部のメチレン基が酸素原子に置き換わっている場合、これらの基の炭素数とは、酸素原子に置き換わる前の炭素数を意味するものとする。
炭素数6〜20のアルキル基を含む第1の炭化水素鎖含有基(炭化水素基の場合)は、分岐鎖であっても直鎖であってもよい。また、炭素数6〜20のアルキル基の他に更に結合していても良い第1の炭化水素鎖含有基(炭化水素基の場合)は、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素鎖含有基であることが好ましく、飽和脂肪族炭化水素鎖含有基であることがより好ましい。前記飽和脂肪族炭化水素鎖含有基(炭化水素基の場合)としては、飽和脂肪族炭化水素基がより好ましい。
炭素数6〜20のアルキル基及び前記飽和脂肪族炭化水素基には、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が含まれる。
第1の炭化水素鎖含有基の炭化水素基の一部のメチレン基(−CH2−)が酸素原子に置き換わる場合、炭化水素基としては飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。第1の炭化水素鎖含有基において、炭化水素基の一部のメチレン基(−CH2−)が酸素原子に置き換わった基としては、具体的には、(ポリ)エチレングリコール単位を有する基、(ポリ)プロピレングリコール単位を有する基等を例示することができる。
有機ケイ素化合物(A1)において、中心ケイ素原子に結合する第1の炭化水素鎖含有基の個数は、炭素数が6〜20のアルキル基の個数を含めて通常1以上であり、2以下であることが好ましく、1であること(すなわち第1の炭化水素鎖含有基として炭素数が6〜20のアルキル基のみである)が特に好ましい。
前記有機ケイ素化合物(A1)の加水分解性基としては、加水分解によりヒドロキシ基(シラノール基)を与える基であればよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;ヒドロキシ基;アセトキシ基;塩素原子;イソシアネート基;等を好ましく挙げることができる。中でも、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜2のアルコキシ基がより好ましい。
有機ケイ素化合物(A1)において、中心ケイ素原子に結合する加水分解性基の個数は、通常1以上であり、2以上であることが好ましく、通常、3以下であることが好ましい。
また、有機ケイ素化合物(A1)のケイ素原子には、炭素数6〜20のアルキル基、加水分解性基のほか、この炭素数6〜20のアルキル基よりも炭化水素鎖部分の炭素数が少ない炭化水素鎖含有基(以下、第2の炭化水素鎖含有基と呼ぶ)が結合していてもよい。
炭素数6〜20のアルキル基及び第2の炭化水素鎖含有基の長さは、Si等の金属原子に結合する元素を含む最長直鎖(以下、「主鎖」ともいう。)の長さ(最長鎖長)として評価することができる。第2の炭化水素鎖含有基を前記炭素数6〜20のアルキル基よりも主鎖の長さが短いものとするためには、例えば、炭化水素鎖部分の炭素数が前記炭素数6〜20のアルキル基の炭素数よりも少ないものであることが好ましい。通常、第2の炭化水素鎖含有基は、前記炭素数6〜20のアルキル基と同様に炭化水素基(炭化水素鎖)のみから構成されるが、必要により、この炭化水素鎖の一部のメチレン基(−CH2−)が酸素原子に置き換わった基であってもよい。また、Si原子に隣接するメチレン基(−CH2−)は酸素原子に置き換わることはなく、また連続する2つのメチレン基(−CH2−)が同時に酸素原子に置き換わることもない。
なお、炭化水素鎖部分の炭素数とは、酸素非置換型の炭化水素鎖含有基では炭化水素基(炭化水素鎖)を構成する炭素原子の数を意味し、酸素置換型の炭化水素鎖含有基では、酸素原子をメチレン基(−CH2−)と仮定して数えた炭素原子の数を意味するものとする。
以下、特に断りがない限り、酸素非置換型の炭化水素鎖含有基(すなわち1価の炭化水素基)を例にとって第2の炭化水素鎖含有基について説明するが、いずれの説明でも、そのメチレン基(−CH2−)のうち一部を酸素原子に置き換えることが可能である。
前記第2の炭化水素鎖含有基は、それが炭化水素基の場合には、炭素数は1以上、5以下であることが好ましく、より好ましくは1以上、3以下である。また、前記第2の炭化水素鎖含有基(炭化水素基の場合)は、分岐鎖であっても直鎖であってもよい。
第2の炭化水素鎖含有基(炭化水素基の場合)は、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素鎖含有基であることが好ましく、飽和脂肪族炭化水素鎖含有基であることがより好ましい。前記飽和脂肪族炭化水素鎖含有基(炭化水素基の場合)としては、飽和脂肪族炭化水素基がより好ましい。飽和脂肪族炭化水素基には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が含まれる。
炭化水素基の一部のメチレン基(−CH2−)が酸素原子に置き換わる場合、炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭化水素基の一部のメチレン基(−CH2−)が酸素原子に置き換わった基としては、具体的には、(ポリ)エチレングリコール単位を有する基等を例示することができる。
有機ケイ素化合物(A1)において、中心ケイ素原子に結合する第2の炭化水素鎖含有基の個数は、2以下であることが好ましく、より好ましくは1以下であり、特に好ましくは0である。
前記有機ケイ素化合物(A1)は、具体的には、下記式(AI)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 0006863812
[前記式(AI)中、Ra1はメチレン基の一部が酸素原子に置き換わっていてもよい炭素数が6〜20のアルキル基を表し、複数のAa1は、それぞれ独立に、加水分解性基を表す。Za1は、炭化水素鎖含有基、または、加水分解性基を表し、Za1が炭化水素鎖含有基の場合、Ra1とZa1とは同一であっても異なっていてもよく、Za1が加水分解性基の場合、Za1とAa1とは、同一であっても異なっていてもよい。また、複数の式(AI)間でRa1とZa1とは同一であっても異なっていてもよい。]
式(AI)中、Za1の炭化水素鎖含有基、Aa1、Za1の加水分解性基は、それぞれ第1の炭化水素鎖含有基(炭素数が6〜20のアルキル基を含む)、第2の炭化水素鎖含有基、加水分解性基として上記説明した範囲から適宜選択できる。
式(AI)中、Za1は、第2の炭化水素鎖含有基、または、加水分解性基であることが好ましく、加水分解性基であることがより好ましい。
有機ケイ素化合物(A1)としては、炭素数が6〜20のアルキル基を1つと、加水分解性基を3つ有する化合物;炭素数が6〜20のアルキル基を1つと、第2の炭化水素鎖含有基を1つと、加水分解性基を2つ有する化合物;等を好ましく挙げることができる。
炭素数が6〜20のアルキル基を1つと、加水分解性基を3つ有する化合物において、3つの加水分解性基はケイ素原子に結合している。3つの加水分解性基がケイ素原子に結合している基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリプロポキシシリル基、トリブトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基;トリヒドロキシシリル基;トリアセトキシシリル基;トリクロロシリル基;トリイソシアネートシリル基;等が挙げられる。
炭素数が6〜20のアルキル基を1つと、第2の炭化水素鎖含有基を1つと、加水分解性基を2つ有する化合物において、1つの第2の炭化水素鎖含有基と、2つの加水分解性基は、ケイ素原子に結合している。1つの第2の炭化水素鎖含有基と、2つの加水分解性基がケイ素原子に結合している基としては、メチルジメトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、メチルジプロポキシシリル基等のアルキルジアルコキシシリル基;等が挙げられる。
炭素数が6〜20のアルキル基を1つと、加水分解性基を3つ有する化合物としては、具体的には、炭素数6〜20のアルキル基を有するアルキルトリメトキシシラン、炭素数6〜20のアルキル基を有するアルキルトリエトキシシラン等の炭素数6〜20のアルキル基を有するアルキルトリアルコキシシラン;炭素数6〜20のアルキル基を有するアルキルトリヒドロキシシラン;炭素数6〜20のアルキル基を有するアルキルトリアセトキシシラン;炭素数6〜20のアルキル基を有するアルキルトリクロロシラン;炭素数6〜20のアルキル基を有するアルキルトリイソシアネートシラン;等が挙げられる。
また、炭素数が6〜20のアルキル基を1つと、第2の炭化水素鎖含有基を1つと、加水分解性基を2つ有する化合物としては、具体的には、炭素数6〜20のアルキル基を有するアルキルメチルジメトキシシラン、炭素数6〜20のアルキル基を有するアルキルメチルジエトキシシラン等のアルキルメチルジアルコキシシラン;炭素数6〜20のアルキル基を有するアルキルメチルジヒドロキシシラン;炭素数6〜20のアルキル基を有するアルキルメチルジアセトキシシラン;炭素数6〜20のアルキル基を有するアルキルメチルジクロロシラン;炭素数6〜20のアルキル基を有するアルキルメチルジイソシアネートシラン;等が挙げられる。
中でも、炭素数が6〜20のアルキル基を1つと、加水分解性基を3つ有する化合物が好ましく、炭素数6〜20のアルキル基を有するアルキルトリアルコキシシランがより好ましい。
(1−2)有機ケイ素化合物(A2)
前記有機ケイ素化合物(A2)は、1分子中に、中心ケイ素原子に結合している少なくとも1つのトリアルキルシリル基含有分子鎖と、中心ケイ素原子に結合している少なくとも1つの加水分解性基とを有する。有機ケイ素化合物(A2)としては、1つのトリアルキルシリル基含有分子鎖と、3つの加水分解性基とが中心ケイ素原子に結合している化合物;1つのトリアルキルシリル基含有分子鎖と、1つのシロキサン骨格含有基と、2つの加水分解性基とが中心ケイ素原子に結合している化合物;1つのトリアルキルシリル基含有分子鎖と、1つの炭化水素鎖含有基と、2つの加水分解性基とが中心ケイ素原子に結合している化合物;等を挙げることができる。
具体的には、有機ケイ素化合物(A2)は、下記式(AII)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 0006863812
[式(AII)中、Ra2はトリアルキルシリル基含有分子鎖を表し、複数のAa2は、それぞれ独立に、加水分解性基を表す。Za2は、トリアルキルシリル基含有分子鎖、炭化水素鎖含有基、シロキサン骨格含有基又は加水分解性基を表す。]
前記トリアルキルシリル基含有分子鎖は、トリアルキルシリル含有基が分子鎖の末端に結合した構造を有する1価の基であり、分子鎖にトリアルキルシリル含有基が結合していることで、本発明の組成物から形成される皮膜の撥水性及び撥油性が向上する。またトリアルキルシリル基含有分子鎖が存在することで、液滴(水滴、油滴等)と該皮膜の間の摩擦が低減され、液滴が移動しやすくなる。さらに、トリアルキルシリル基を有することで、化学的・物理的耐久性が高められ、耐熱性、耐光性が向上する。トリアルキルシリル含有基のアルキル基がフルオロアルキル基に置き換わっている場合においても、同様に該皮膜界面(表面)の撥水・撥油性を向上することができる。
前記トリアルキルシリル含有基は、少なくとも1つのトリアルキルシリル基を含む基であり、好ましくは2つ以上、さらに好ましくは3つのトリアルキルシリル基を含む。トリアルキルシリル含有基は、式(s1)で表される基であることが好ましい。
Figure 0006863812
[式(s1)中、Rs1は炭化水素基又はトリアルキルシリルオキシ基を表し、該炭化水素基又はトリアルキルシリルオキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子に置換されていてもよい。ただし、Rs1が全て炭化水素基である場合、Rs1はアルキル基である。*は結合手を表す。]
s1で表される炭化水素基の炭素数は、1〜4であることが好ましく、より好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2である。Rs1が全て炭化水素基である場合、3つのRs1の合計の炭素数は、9以下であることが好ましく、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である。
s1で表される炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。複数のRs1は、同一でも異なっていてもよく、同一であることが好ましい。3つのRs1のうち少なくとも1つがメチル基であることが好ましく、少なくとも2つがメチル基であることがより好ましく、3つのRs1全てがメチル基であることが特に好ましい。
また、Rs1で表されるトリアルキルシリル基及びトリアルキルシリルオキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子に置換されていてもよい。フッ素原子の置換数としては、炭素原子の数をAとしたとき、1以上が好ましく、より好ましくは3以上であり、2×A+1以下が好ましい。また、アルキル基に含まれる水素原子がフッ素原子に置換される場合、置換されるアルキル基の数は、ケイ素原子1つあたり1〜3となる範囲で適宜選択できる。
s1が全て炭化水素基(アルキル基)である基(トリアルキルシリル基)としては、具体的には、下記式で表される基等が挙げられる。式中、*は結合手を表す。
Figure 0006863812
s1の少なくとも1つが、トリアルキルシリルオキシ基であってもよい。このような場合でも、トリアルキルシリル基含有分子鎖は、トリアルキルシリル基を有することとなる。前記トリアルキルシリルオキシ基としては、Rs1が全て炭化水素基(アルキル基)である基(トリアルキルシリル基)のケイ素原子に酸素原子が結合している基が挙げられる。
s1の少なくとも1つがトリアルキルシリルオキシ基である基としては、下記式で表される基が挙げられる。
Figure 0006863812
トリアルキルシリル基含有分子鎖において、トリアルキルシリル基は、分子鎖の末端(自由端側)、特に分子鎖の主鎖(最長直鎖)の末端(自由端側)に結合していることが好ましい。
トリアルキルシリル基が結合している分子鎖は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることが好ましい。前記分子鎖は、ジアルキルシロキサン鎖を含むことが好ましく、直鎖状ジアルキルシロキサン鎖を含むことが好ましい。また前記分子鎖は、2価の炭化水素基を含んでいてもよい。分子鎖の一部が2価の炭化水素基であっても、残部がジアルキルシロキサン鎖であるため、得られる皮膜の化学的・物理的耐久性が良好である。前記分子鎖は、式(s2)で表される基であることが好ましい。
Figure 0006863812
[式(s2)中、Rs2は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Zs1は、−O−又は2価の炭化水素基を表し、該2価の炭化水素基に含まれる−CH2−は、−O−に置き換わっていてもよい。Ys1は、単結合又は−Si(Rs22−Ls1−を表す。Ls1は、2価の炭化水素基を表し、該2価の炭化水素基に含まれる−CH2−は、−O−に置き換わっていてもよい。左側の*は、中心ケイ素原子との結合手を表し、右側の*はトリアルキルシリル含有基との結合手を表す。]
前記Rs2で表されるアルキル基の炭素数は、1〜4であることが好ましく、より好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2である。Rs2で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
n1は、1〜100であることが好ましく、より好ましくは1〜80、さらに好ましくは1〜50、特に好ましくは1〜30である。
s1又はLs1で表される2価の炭化水素基の炭素数は、1〜10であることが好ましく、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4である。前記2価の炭化水素基は、鎖状であることが好ましく、鎖状である場合、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。また、前記2価の炭化水素基は、2価の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルカンジイル基であることが好ましい。2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
さらに、前記2価の炭化水素基に含まれる一部の−CH2−は−O−に置き換わっていてもよい。この場合連続する2つの−CH2−が同時に−O−に置き換わることはなく、Si原子に隣接する−CH2−が−O−に置き換わることはない。2つ以上の−CH2−が−O−に置き換わっている場合、−O−と−O−の間の炭素原子数は、2〜4であることが好ましく、2〜3であることがさらに好ましい。2価の炭化水素基の一部が−O−に置き換わった基としては、具体的には、(ポリ)エチレングリコール単位を有する基、(ポリ)プロピレングリコール単位を有する基等を例示することができる。
前記式(s2)において、Zs1が−O−であり、Ys1が単結合であること、すなわち前記分子鎖は、ジアルキルシリルオキシ基の繰り返しのみからなることが好ましい。ジアルキルシロキサン鎖がジアルキルシリルオキシ基の繰り返しのみからなる場合、得られる皮膜の化学的・物理的耐久性が良好である。
トリアルキルシリル基含有分子鎖に含まれる分子鎖としては、下記式で表される分子鎖を挙げることができる。式中、p1は1〜30の整数を表し、*は、ポリシロキサン骨格を形成するケイ素原子又はトリアルキルシリル基に結合する結合手を表すものとする。
Figure 0006863812
Figure 0006863812
Figure 0006863812
また、トリアルキルシリル基含有分子鎖を構成する原子の合計数は、24以上であることが好ましく、より好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上であり、1200以下であることが好ましく、より好ましくは700以下、さらに好ましく250以下である。
トリアルキルシリル基含有分子鎖は、下記式(s1)で表される基であることが好ましい。
Figure 0006863812
[式(s1)中、Rs1、Rs2、Zs1、Ys1、n1は、上記と同義である。*は、ケイ素原子との結合手を表す。]
トリアルキルシリル基含有分子鎖は、下記式(s1−1)で表される基であることがより好ましく、下記式(s1−1−1)で表される基であることがさらに好ましい。
Figure 0006863812
[式(s1−1)及び(s1−1−1)中、Rs2、Zs1、Ys1、n1は上記と同義である。Rs3は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。*はケイ素原子との結合手を表す。]
また、トリアルキルシリル基含有分子鎖は、下記式(s1−2)で表される基であることも好ましく、下記式(s1−2−1)で表される基であることがさらに好ましい。
Figure 0006863812
[式(s1−2)及び式(s1−2−1)中、Rs2、Rs3、Zs1、Ys1、n1は上記と同義である。*は、ケイ素原子との結合手を表す。]
s3で表されるアルキル基としては、Rs1で表される炭化水素基として例示したアルキル基と同様の基が挙げられ、該アルキル基の炭素数は1〜3であることが好ましく、より好ましくは1〜2である。また、*−Si(Rs33に含まれるRs3の合計の炭素数は、9以下であることが好ましく、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である。さらに、*−Si(Rs33に含まれるRs3のうち、少なくとも1つがメチル基であることが好ましく、2つ以上のRs3がメチル基であることが好ましく、3つのRs3全てがメチル基であることが特に好ましい。
トリアルキルシリル基含有分子鎖としては式(s1−I)で表される基が挙げられる。
Figure 0006863812
Figure 0006863812
Figure 0006863812
有機ケイ素化合物(A2)において、中心ケイ素原子に結合するトリアルキルシリル基含有分子鎖の個数は、1〜3であることが好ましく、より好ましくは1〜2であり、特に好ましくは1である。
前記加水分解性基は、ケイ素原子に結合している場合、加水分解によりヒドロキシ基(シラノール基)を与える基であればよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;ヒドロキシ基;アセトキシ基;塩素原子;イソシアネート基;等を好ましく挙げることができる。中でも、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜2のアルコキシ基がより好ましい。
有機ケイ素化合物(A2)において、中心ケイ素原子に結合する加水分解性基の個数は、1〜3であり、2〜3であることが好ましい。
以下、加水分解性基がケイ素原子に結合している基を加水分解性ケイ素基という場合がある。
前記シロキサン骨格含有基は、シロキサン単位(Si−O−)を含有する1価の基であり、トリアルキルシリル基含有分子鎖を構成する元素数よりも少ない数の元素で構成されるものであればよい。これにより、シロキサン骨格含有基は、トリアルキルシリル基含有分子鎖よりも長さが短いか、立体的な広がり(かさ高さ)が小さな基となる。シロキサン骨格含有基には、2価の炭化水素基が含まれていてもよい。
シロキサン骨格含有基は、下記式(s2)で表される基であることが好ましい。
Figure 0006863812
[式(s2)中、Rs2は上記と同義である。Rs5は、炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、該炭化水素基に含まれる−CH2−は、−O−に置き換わっていてもよく、該炭化水素基に含まれる水素原子は、フッ素原子に置換されていてもよい。Zs2は、−O−又は2価の炭化水素基を表し、該2価の炭化水素基に含まれる−CH2−は、−O−に置き換わっていてもよい。Ys2は、単結合又は−Si(Rs22−Ls2−を表す。Ls2は、2価の炭化水素基を表し、該2価の炭化水素基に含まれる−CH2−は、−O−に置き換わっていてもよい。n2は、0〜5の整数を表す。*は、ケイ素原子との結合手を表す。]
s5で表される炭化水素基としては、Rs1で表される炭化水素基と同様の基が挙げられ、脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。炭素数は1〜4であることが好ましく、より好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2である。
s2又はLs2で表される2価の炭化水素基としては、Zs1で表される2価の炭化水素基と同様の基が挙げられ、炭素数は、1〜10であることが好ましく、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4である。また、Zs2又はLs2で表される2価の炭化水素基は、2価の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、直鎖状又は分岐鎖状のアルカンジイル基であることがさらに好ましい。
n2は、1〜5であることが好ましく、より好ましくは1〜3である。
シロキサン骨格含有基の原子数の合計は、100以下であることが好ましく、より好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下であり、10以上であることが好ましい。また、トリアルキルシリル基含有分子鎖とシロキサン骨格含有基の原子数の差は、10以上であることが好ましく、より好ましくは20以上であり、1000以下であることが好ましく、より好ましくは500以下、さらに好ましくは200以下である。
シロキサン骨格含有基としては、具体的には、下記式で表される基が挙げられる。
Figure 0006863812
前記炭化水素鎖含有基は、炭化水素鎖を含む1価の基であり、トリアルキルシリル基含有分子鎖の分子鎖を構成する原子数よりも炭化水素鎖部分の炭素数が少ないものであればよい。また、トリアルキルシリル基含有分子鎖の最長直鎖を構成する原子数よりも、炭化水素鎖の最長直鎖の炭素数が少ないものであることが好ましい。
炭化水素鎖含有基は、炭化水素基(炭化水素鎖)のみから構成されていてもよく、炭化水素鎖に含まれる−CH2−は−O−に置き換わっていてもよく、炭化水素基(炭化水素鎖)のみから構成されていることが好ましい。ただしケイ素原子に隣接する−CH2−は−O−に置き換わることはなく、また連続する2つの−CH2−が同時に−O−に置き換わることもない。
なお、炭化水素鎖部分の炭素数とは、酸素非置換型の炭化水素鎖含有基では炭化水素基(炭化水素鎖)を構成する炭素原子の数を意味し、酸素置換型の炭化水素鎖含有基では、−O−を−CH2−と読み替えて数えた炭素原子の数を意味するものとする。以下、特に断りがない限り、酸素非置換型の炭化水素鎖含有基(すなわち1価の炭化水素基)を例にとって炭化水素鎖含有基について説明するが、いずれの説明でも、その−CH2−のうち一部を−O−に置き換えることが可能である。
前記炭化水素鎖含有基の炭素数は1〜3であることが好ましく、より好ましくは1である。また、前記炭化水素鎖含有基(炭化水素基の場合)は、分岐鎖状であっても直鎖状であってもよい。前記炭化水素鎖含有基(炭化水素基の場合)は、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素鎖含有基であることが好ましく、飽和脂肪族炭化水素鎖含有基であることがより好ましい。前記飽和脂肪族炭化水素鎖含有基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基が好ましい。
炭化水素鎖に含まれる−CH2−が−O−に置き換わる場合、(ポリ)エチレングリコール単位を有する基等を例示することができる。
中でも、有機ケイ素化合物(A2)は、下記式(I−1)で表される化合物であることが好ましく、式(I−1−1)で表される化合物であることがより好ましい。
Figure 0006863812
[式(I−1)及び(I−1−1)中、Aa2、Za2、Zs1、Ys1、Rs2、Rs3、n1は、それぞれ上記と同義である。]
また有機ケイ素化合物(A2)は、式(I−2)で表される化合物であってもよく、好ましくは式(I−2−1)で表される化合物であってもよい。
Figure 0006863812
[式(I−2)及び式(I−2−1)中、Aa2、Za2、Zs1、Ys1、Rs2、Rs3、n1は、それぞれ上記と同義である。]
有機ケイ素化合物(A2)としては、具体的には、式(I−I)で表される基が挙げられる。
Figure 0006863812
Figure 0006863812
Figure 0006863812
Figure 0006863812
Figure 0006863812
有機ケイ素化合物(A2)の合成方法の例としては、次のような方法があげられる。第一の方法としては、トリアルキルシリル基含有分子鎖とハロゲン原子(好ましくは塩素原子)とが結合した化合物と、ケイ素原子に加水分解性基が3つ以上(特に4つ)結合した化合物とを反応させることにより、製造することができる。
第二の合成方法としては、ジアルキルシロキサン鎖の両末端にハロゲン原子が結合した化合物(以下、「ジハロゲン化ジアルキルシロキサン」)と、トリス(トリアルキルシリルオキシ)シリル基と、M1O−基(M1は、アルカリ金属を表す。)が結合した化合物(以下、「アルカリ金属シリルオキシド」)及びケイ素原子に加水分解性基が4つ結合した化合物を反応させることにより製造することができる。これらの化合物の反応順序は限定されないが、まずジハロゲン化ジアルキルシロキサンとアルカリ金属シリルオキシドを反応させ、次いで、ケイ素原子に加水分解性基が4つ結合した化合物を反応させることが好ましい。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。また、前記アルカリ金属としては、リチウムが好ましい。
アルカリ金属シリルオキシドは、例えば、トリス(トリアルキルシリルオキシ)シリル基とヒドロキシ基が結合した化合物に、アルキルアルカリ金属を反応させることにより製造することができる。有機アルカリ金属化合物としては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等のアルキルリチウムが挙げられ、特に好ましくはn−ブチルリチウムである。
また第三の合成方法としては、有機ケイ素化合物(A2)は、例えば、アルカリ金属シリルオキシド及び環状ジメチルシロキサンを反応させ、次いで、ケイ素原子に加水分解性基が3つとハロゲン原子(特に、塩素原子)が1つ結合している化合物を反応させることにより製造することもできる。環状ジメチルシロキサンに含まれるケイ素原子の数は、例えば、2以上、10以下であることが好ましく、より好ましくは2以上、5以下、さらに好ましくは2以上、4以下である。
また、第四の合成法としては、有機ケイ素化合物(A2)は、例えば、アルカリ金属シリルオキシド及び環状ジメチルシロキサンを反応させて、得られる水酸基末端ジメチルシロキサン化合物に、テトラアルコキシシランを反応させることにより、製造することもできる。
有機ケイ素化合物(A1)又は(A2)とともに組成物に含まれる前記金属化合物(B)は、少なくとも1つの加水分解性基が中心金属原子に結合しているものであり、前記第2の炭化水素鎖含有基が前記金属原子に結合していてもよい。前記第2の炭化水素鎖含有基の最長鎖長は、有機ケイ素化合物(A1)の中心ケイ素原子に結合する炭素数が6〜20のアルキル基の最長鎖長よりも短く、また有機ケイ素化合物(A2)の中心ケイ素原子に結合するトリアルキルシリル基含有分子鎖よりも短いため、金属化合物(B)の最長鎖長は有機ケイ素化合物の最長鎖長よりも短くなる。このため、金属化合物(B)から導かれる構造は、有機ケイ素化合物(A1)又は(A2)から導かれる構造よりも嵩高くなく、組成物に金属化合物(B)を含むことにより、得られる皮膜においてスペーサー機能を有する部位を形成することが可能となる。
金属化合物(B)の中心金属原子は、アルコキシ基と結合して金属アルコキシドを形成しうる金属原子であればよく、この場合の金属には、Si、Ge等の半金属も含まれる。金属化合物(B)の中心金属原子としては、具体的には、Al、Fe、In等の3価金属;Ge、Hf、Si、Ti、Sn、Zr等の4価金属;Ta等の5価金属;等が挙げられ、好ましくはAl等の3価金属;Si、Ti、Zr、Sn等の4価金属;であり、より好ましくはAl、Si、Ti、Zrであり、さらに好ましくはSiである。
金属化合物(B)の加水分解性基としては、有機ケイ素化合物(A1)又は(A2)の加水分解性基と同様のものが挙げられ、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜2のアルコキシ基がより好ましい。また、有機ケイ素化合物(A1)と金属化合物(B)の加水分解性基は、同一でも異なっていてもよい。また、有機ケイ素化合物(A1)と金属化合物(B)の加水分解性基は、いずれも炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましい。金属化合物(B)において、加水分解性基の個数は1以上であることが好ましく、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、4以下であることが好ましい。
金属化合物(B)の第2の炭化水素鎖含有基としては、上記説明した範囲から適宜選択でき、その個数は、1以下であることが好ましく、0であることが特に好ましい。
金属化合物(B)は、具体的には、下記式(BI)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 0006863812
[前記式(BI)中、Rb1は、第2の炭化水素鎖含有基または加水分解性基を表す。Ab1は、それぞれ独立に、加水分解性基を表す。Mは、Al、Fe、In、Ge、Hf、Si、Ti、Sn、Zr、または、Taを表す。mは、金属原子に応じて、1〜4の整数を表す。]
式(BI)中、Rb1の第2の炭化水素鎖含有基、Rb1、Ab1の加水分解性基は、それぞれ、第2の炭化水素鎖含有基、加水分解性基として上記説明した範囲から適宜選択できる。
式(BI)中、Rb1は、加水分解性基であることが好ましい。また、Rb1が加水分解性基の場合、Rb1とAb1とは同一であっても異なっていてもよく、同一であることが好ましい。さらに、有機ケイ素化合物(A1)と、金属化合物(B)の加水分解性基は同一であっても異なっていてもよい。
式(BI)中、Mとしては、Al、Si、Ti、Zr、Snが好ましく、Al、Si、Ti、Zrがより好ましく、Siがさらに好ましい。これら金属原子のアルコキシドは、液状化が容易であり、皮膜中、スペーサーとして機能しうる下記構造(b)の分布の均一性を高めることが容易である。また、式(BI)において、mは、MがAl、Fe、In等の3価金属の場合は2を表し、MがGe、Hf、Si、Ti、Sn、Zr等の4価金属の場合は3を表し、MがTa等の5価金属の場合は4を表す。
金属化合物(B)としては、加水分解性基のみを有する化合物;1つの第2の炭化水素鎖含有基と2つの加水分解性基を有する化合物;等を好ましく挙げることができる。
加水分解性基のみを有する化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;トリエトキシアルミニウム、トリプロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム等のトリアルコキシアルミニウム;トリエトキシ鉄等のトリアルコキシ鉄;トリメトキシインジウム、トリエトキシインジウム、トリプロポキシインジウム、トリブトキシインジウム等のトリアルコキシインジウム;テトラメトキシゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、テトラプロポキシゲルマニウム、テトラブトキシゲルマニウム等のテトラアルコキシゲルマニウム;テトラメトキシハフニウム、テトラエトキシハフニウム、テトラプロポキシハフニウム、テトラブトキシハフニウム等のテトラアルコキシハフニウム;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン;テトラメトキシスズ、テトラエトキシスズ、テトラプロポキシスズ、テトラブトキシスズ等のテトラアルコキシスズ;テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等のテトラアルコキシジルコニウム;ペンタメトキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、ペンタプロポキシタンタル、ペンタブトキシタンタル等のペンタアルコキシタンタル;等が挙げられる。
第2の炭化水素鎖含有基と加水分解性基を有する化合物としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のアルケニルトリアルコキシシラン;等が挙げられる。
本発明の組成物の好ましい態様では、上記有機ケイ素化合物(A1)又は(A2)と金属化合物(B)とを特定の割合で含むため、撥水・撥油機能が高められると同時に、耐摩耗性にも優れた皮膜を提供することが可能となる。具体的には、本発明の組成物において、前記金属化合物(B)と有機ケイ素化合物(A1又はA2)のモル比(金属化合物(B)/有機ケイ素化合物(A1又はA2))は、2以上(より好ましくは15以上)、48以下が好ましく、44以下であることがより好ましく、更に好ましくは40以下、特に好ましくは36以下である。
本発明の組成物は、上記有機ケイ素化合物(A1)又は(A2)、金属化合物(B)に加えて、さらに高沸点溶媒(C)を含んでいる。組成物を手塗りで塗布する際に、高沸点溶媒(C)が揮発することなく基材上に残ることにより、有機ケイ素化合物(A1)又は(A2)と金属化合物(B)を基材上にムラなく行き渡らせることが可能となり、良好な撥水撥油性、耐摩耗性を有し、表面性状も良好な皮膜を実現できる。
本発明において、高沸点溶媒(C)とは、20℃での蒸気圧が1000Pa以下であること及び沸点が120℃以上であることの少なくともいずれかを満たすことを意味するものとする。本発明では、高沸点溶媒(C)と共に、後記する低沸点溶媒(D)を用いるため、低沸点溶媒(D)との相溶性を考慮して、溶解度パラメータが所定範囲にある高沸点溶媒(C)を用いることが必要である。本明細書において、溶解度パラメータ(SP値、Solubility Parameter)とは「R.F.Fedors、Polym.Eng.Sci.,14[2]、147−154(1974)」に記載の方法によって算出される値である。本発明では、高沸点溶媒(C)として、SP値[(cal/cm31/2]が8.0以上であるものを使用する。高沸点溶媒(C)のSP値[(cal/cm31/2]は、13.0以下のものを用いることが好ましい。このような要件を満たす溶媒として、1−ブタノールやエチレングリコールモノヘキシルエーテルがあげられる。
高沸点溶媒(C)の20℃での蒸気圧は800Pa以下が好ましく、より好ましくは600Pa以下であり、下限は特に限定されないが、例えば5Paである。また高沸点溶媒(C)の沸点は、好ましくは150℃以上であり、より好ましくは170℃以上であり、上限は特に限定されないが、例えば300℃である。
本発明の組成物は、上記有機ケイ素化合物(A)、金属化合物(B)と、高沸点溶媒(C)に加えて、さらに低沸点溶媒(D)を含んでいる。低沸点とは、20℃での蒸気圧が1000Pa超であり、且つ沸点が120℃未満であることを意味する。
このような低沸点溶媒(D)としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒が挙げられ、特にアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒が好ましい。アルコール系溶媒は、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコールなどである。ケトン系溶媒は、例えばアセトン、エチルメチルケトンなどである。エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。脂環式炭化水素系溶媒としては、ヘキサンが挙げられる。
低沸点溶媒(D)の20℃での蒸気圧は2000Pa以上が好ましく、より好ましくは3000Pa以上であり、上限は特に限定されないが、例えば13000Paである。また沸点溶媒(D)の沸点は、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは85℃以下である。
高沸点溶媒(C)及び低沸点溶媒(D)はそれぞれ1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上の溶媒を併用してもよい。また、本発明の組成物を作製するためには、低沸点溶媒(D)の一部を予め高沸点溶媒(C)と混合した混合液に、有機ケイ素化合物(A)と金属化合物(B)を投入して溶解させ(例えば室温で10〜30分程度攪拌)、好ましくは更に触媒(E)を添加して、例えば10〜30時間程度攪拌するなどして溶液を作製し、これを残りの低沸点溶媒(D)で希釈することが好ましい。低沸点溶媒(D)での希釈倍率は5〜40倍程度が好ましい。もちろん、本発明の組成物は、高沸点溶媒(C)及び低沸点溶媒(D)以外の溶媒(以下、その他溶媒ということがある。)を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
前記有機ケイ素化合物(A)(以下、有機ケイ素化合物(A1)と(A2)をまとめて、有機ケイ素化合物(A)と示す場合がある)は前記低沸点溶媒(D)に対して0.01〜0.15質量%であることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.13質量%である。前記金属化合物(B)は前記低沸点溶媒(D)に対して0.1〜1.2質量%が好ましく、より好ましくは0.15〜1.0質量%である。前記高沸点溶媒(C)は前記低沸点溶媒(D)に対して0.05〜1.8質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.8質量%であり、1.5質量%以下であってもよく、1.2質量%以下であってもよい。
また、高沸点溶媒(C)、低沸点溶媒(D)、その他溶媒及び後記する触媒(E)の合計100質量%に対して有機ケイ素化合物(A)は0.03〜0.15質量%であることが好ましく、より好ましくは0.035〜0.12質量%である。また、高沸点溶媒(C)、低沸点溶媒(D)、その他溶媒及び後記する触媒(E)の合計100質量%に対して金属化合物(B)は、0.1〜1.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.15〜1.2質量%である。
さらに、本発明の組成物は、必要に応じて、触媒(E)を共存させてもよい。触媒(E)は、ゾルゲル法で一般的に用いられる、塩酸、蟻酸、酢酸等の酸触媒;塩基触媒;有機金属触媒等から任意に選ぶことができる。
酸触媒(特に好ましくは塩酸)は、有機ケイ素化合物(A)と金属化合物(B)の合計に対して、質量比で1倍以上であることが好ましく、より好ましくは1.3倍以上であり、8倍以下であることが好ましく、より好ましくは7倍以下、さらに好ましくは6.5倍以下である。
さらに、有機ケイ素化合物(A)と、金属化合物(B)を基材と接触させる際、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の溶剤(高沸点溶媒(C)及び低沸点溶媒(D)のいずれにも相当しない溶剤)、酸化防止剤、防錆剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防カビ剤、抗菌剤、生物付着防止剤、消臭剤、顔料、難燃剤、帯電防止剤等の各種の添加剤を共存させてもよい。
前記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ヒンダ−ドアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
前記フェノール系酸化防止剤としては、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2−チオ−ジエチレン−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリ−エチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸}ペンタエリスリチル エステル、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス (6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)等が挙げられる。
前記硫黄系酸化防止剤としては、3,3’−チオジプロピオン酸 ジ−n−ドデシルエステル、3,3’−チオジプロピオン酸 ジ−n−テトラデシルエステル、3,3’−チオジプロピオン酸 ジ−n−オクタデシルエステル、テトラキス(3−ドデシルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールエステル等が挙げられる。
前記リン系酸化防止剤としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスフォナイト、ビス−[2,4−ジ−t−ブチル−(6−メチル)フェニル]エチルホスファイト等が挙げられる。
前記ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)エステル(融点81〜86℃)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート(融点58℃)、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}−1,6−ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等が挙げられる。
前記防錆剤としては、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;第四級アンモニウム塩;アルカンチオール;イミダゾリン、イミダゾール、アルキルイミダゾリン誘導体、ベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール等のアゾール類;メタバナジン酸ナトリウム;クエン酸ビスマス;フェノール誘導体;アルキルアミンやポリアルケニルアミン等の脂肪族アミン、芳香族アミン、エトキシ化アミン、シアノアルキルアミン、安息香酸シクロヘキシルアミン、アルキレンジアミン等の脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン等のアミン化合物;前記アミン化合物とカルボン酸とのアミド;アルキルエステル;ピリミジン;ナフテン酸;スルホン酸複合体;亜硝酸カルシウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸ジシクロヘキシルアミン等の亜硝酸塩;ポリアルコール、ポリフェノール等のポリオール化合物;モリブデン酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム、ホスホン酸ナトリウム、クロム酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム等のヘテロポリ酸塩;ゼラチン;カルボン酸のポリマー;ニトロ化合物;ホルムアルデヒド;アセチレンアルコール;脂肪族チオール、芳香族チオール、アセチレンチオール等のチオール化合物;脂肪族スルフィド、芳香族スルフィド、アセチレンスルフィド等のスルフィド化合物;スルホキシド、ジベンジルスルホキシド等のスルホキシド化合物;チオ尿素;アミンまたは第四級アンモニウム塩とハロゲンイオンの組合せ;アルキルアミンとヨウ化カリウムの組合せ;タンニンとリン酸ナトリウムの組合せ;トリエタノールアミンとラウリルサルコシンの組合せ;トリエタノールアミンとラウリルサルコシンとベンゾトリアゾールの組合せ;アルキルアミンとベンゾトリアゾールと亜硝酸ナトリウムとリン酸ナトリウムの組合せ;等が挙げられる。
前記紫外線吸収剤/光安定剤としては、例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコール(分子量約300)との縮合物、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−エトキシ−2’−エチル−オキサリック酸ビスアニリド等が挙げられる。
前記防カビ剤/抗菌剤としては、2−(4−チアゾリル)ベンイミダゾール、ソルビン酸、1,2−ベンズイソチアゾリン−3オン、(2−ピリジルチオ−1−オキシド)ナトリウム、デヒドロ酢酸、2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾロン錯体、2,4,5,6−テトラクロロフタロニトリル、2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、1−(ブチルカルバモイル)−2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、モノあるいはジブロモシアノアセトアミド類、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、1,1−ジブロモ−1−ニトロプロパノールおよび1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−アセトキシプロパン等が挙げられる。
前記生物付着防止剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、ビス(N,N−ジメチルジチオカルバミン酸)亜鉛、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、ジクロロ−N−((ジメチルアミノ)スルフォニル)フルオロ−N−(P−トリル)メタンスルフェンアミド、ピリジン−トリフェニルボラン、N,N−ジメチル−N’−フェニル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、チオシアン酸第一銅(1)、酸化第一銅、テトラブチルチウラムジサルファイド、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、ジンクエチレンビスジチオカーバーメート、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、ビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)亜鉛塩、ビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)銅塩、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、フラノン類、アルキルピリジン化合物、グラミン系化合物、イソニトリル化合物等が挙げられる。
前記消臭剤としては、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、エチレンジアミンポリ酢酸、アルカン−1,2−ジカルボン酸、アルケン−1,2−ジカルボン酸、シクロアルカン−1,2−ジカルボン酸、シクロアルケン−1,2−ジカルボン酸、ナフタレンスルホン酸等の有機酸類;ウンデシレン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛等の脂肪酸金属類;酸化鉄、硫酸鉄、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酸化銀、酸化銅、金属(鉄、銅等)クロロフィリンナトリウム、金属(鉄、銅、コバルト等)フタロシアニン、金属(鉄、銅、コバルト等)テトラスルホン酸フタロシアニン、二酸化チタン、可視光応答型二酸化チタン(窒素ドープ型など)等の金属化合物;α−、β−、又はγ−シクロデキストリン、そのメチル誘導体、ヒドロキシプロピル誘導体、グルコシル誘導体、マルトシル誘導体等のシクロデキストリン類;多孔メタクリル酸ポリマー、多孔アクリル酸ポリマー等のアクリル酸系ポリマー、多孔ジビニルベンゼンポリマー、多孔スチレン−ジビニルベンゼン−ビニルピリジンポリマー、多孔ジビニルベンゼン−ビニルピリジンポリマー等の芳香族系ポリマー、それらの共重合体及びキチン、キトサン、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト、セラミック等の多孔質体等が挙げられる。
前記顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ペリレン又はペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロ−ピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、ジスアゾ縮合系顔料やベンズイミダゾロン系顔料等が挙げられる。
前記難燃剤としてはデカブロモビフェニル、三酸化アンチモン、リン系難燃剤、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
前記帯電防止剤としては、4級アンモニウム塩型のカチオン界面活性剤、ベタイン型の両性界面活性剤、リン酸アルキル型のアニオン界面活性剤、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アミン塩やピリジン誘導体等のカチオン界面活性剤、硫酸化油、石鹸、硫酸化エステル油、硫酸化アミド油、オレフィンの硫酸化エステル塩類、脂肪アルコール硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸エチルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、琥珀酸エステルスルホン酸塩や燐酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪アミノ又は脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物やポリエチレングリコール等のノニオン界面活性剤、カルボン酸誘導体やイミダゾリン誘導体等の両性界面活性剤等が挙げられる。
また、添加剤としてさらに、滑剤、充填剤、可塑剤、核剤、アンチブロッキング剤、発泡剤、乳化剤、光沢剤、結着剤等を共存させてもよい。
これら添加剤を含む場合、添加剤の含有量は、有機ケイ素化合物(A)と金属化合物(B)とを含む組成物中、通常、0.1〜70質量%であり、好ましくは0.1〜50質量%であり、より好ましくは0.5〜30質量%であり、さらに好ましくは2〜15質量%である。
また、有機ケイ素化合物(A)と金属化合物(B)の合計の含有量は、高沸点溶媒(C)、低沸点溶媒(D)、その他溶媒及び触媒(E)の合計100質量%に対して0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.13質量%以上であり、更に好ましくは0.15質量%以上であり、一層好ましくは0.185質量%以上であり、特に好ましくは0.2質量%以上である。また、有機ケイ素化合物(A)と金属化合物(B)の合計の含有量は、高沸点溶媒(C)、低沸点溶媒(D)、その他溶媒及び触媒(E)の合計100質量%に対して、1.65質量%以下が好ましく、より好ましくは1.5質量%以下であり、更に好ましくは1.32質量%以下であり、一層好ましくは1.2質量%以下であり、特に好ましくは1.1質量%以下である。
さらに、本発明の組成物は、炭素数が7以上、9以下(特に8)であるアルキル基が1つと、3つの加水分解性基がケイ素原子に結合している有機ケイ素化合物(A1)と、4つの加水分解性基が金属原子(特にケイ素原子)に結合している金属化合物(B)と、前記高沸点溶媒(C)及び低沸点溶媒(D)を含み、前記金属化合物(B)と有機ケイ素化合物(A)の重量比(金属化合物(B)/有機ケイ素化合物(A))が5以上(より好ましくは15以上)、36以下であることが特に好ましい。有機ケイ素化合物(A)、金属化合物(B)の構造やモル比をこのように調整することで、得られる皮膜の硬度と撥水・撥油性がより高度に両立される。
本発明の組成物は、手塗りで基材にムラなく接触させることができ、有機ケイ素化合物(A)、金属化合物(B)の加水分解性基が加水分解・重縮合され、基材表面に皮膜が形成される。本発明において手塗評価の実施に当たって、以下のような方法を採用し、実使用に近い状態を再現している。まずベンコットの上に疑似指(トンボ社製モノワンダストキャッチ)を2本乗せ、スチールウール試験機(大栄精機社製)に取り付け、ベンコットに塗布溶液1を1mL浸み込ませた。次いで1kgの荷重を加えながら、ストローク50mm、速度60r/minの条件で基材に往路のみ塗布し、時間を置かずにガラス基板をずらして重なり合う箇所ができるように、再度往路のみ塗布した。このように塗布を行うことにより、定量的に手塗りを再現した。
また、組成物と基材とを接触させた状態で、空気中で静置する(例えば10〜48時間程度)と、空気中の水分が取り込まれ、加水分解性基の加水分解・重縮合が促進されるため、好ましい。得られた皮膜は、さらに、乾燥してもよい。加温乾燥させる温度としては、通常40〜250℃であり、好ましくは60〜200℃であり、さらに好ましくは60〜150℃である。
有機ケイ素化合物(A1)を用いる場合と、有機ケイ素化合物(A2)を用いる場合に得られる皮膜について、それぞれ以下に説明する。
(2−1)有機ケイ素化合物(A1)を用いる場合の皮膜
得られた皮膜は、ケイ素原子や上記金属原子(好ましくはケイ素原子のみ)が、酸素原子を介して結合した網目状の骨格を有しており、有機ケイ素化合物(A1)に由来して、この骨格を形成するケイ素原子のうち一部のケイ素原子に、第1の炭化水素鎖含有基が結合した構造を有する。
前記炭素数が6〜20のアルキル基がケイ素原子に結合した構造としては、下記式(1)で表される構造(a1)が好ましい。
Figure 0006863812
[式(1)中、Ra3は炭素数が6〜20のアルキル基を表し、Za3は、炭化水素鎖含有基、または、−O−基を表し、Za3が炭化水素鎖含有基の場合、Ra3とZa3とは同一であっても異なっていてもよく、複数の式(1)間でRa3とZa3とは同一であっても異なっていてもよい。]
式(1)中、Za3 の炭化水素鎖含有基は、いずれも上記説明した第1の炭化水素鎖含有基(炭素数が6〜20のアルキル基を含む)、第の炭化水素鎖含有基の範囲から適宜選択できる。
中でもZa3としては、第2の炭化水素鎖含有基または−O−基が好ましく、−O−基が特に好ましい。
構造(a1)としては、例えば、下記式(1−1)〜式(1−32)で表される構造を好ましく例示することができる。
Figure 0006863812
Figure 0006863812
Figure 0006863812
本発明の組成物を用いて得られた皮膜では、金属化合物(B)に由来して、上記炭素数が6〜20のアルキル基が結合するケイ素原子とは異なるケイ素原子(第2ケイ素原子)に、第2の炭化水素鎖含有基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、またはヒドロキシ基が縮合した基が結合していてもよい。またこの第2ケイ素原子は、他の金属原子(例えば、Al、Fe、In、Ge、Hf、Si、Ti、Sn、Zr、または、Ta)に置き換わっていてもよい。こうした第2ケイ素原子や他の金属原子もまた前記炭素数が6〜20のアルキル基よりも鎖長が短い第2の炭化水素鎖含有基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、またはヒドロキシ基が結合しているためにスペーサーとして作用し、炭素数が6〜20のアルキル基による撥水・撥油特性向上作用を高めることが可能となる。
前記アルコキシ基は、炭素数1〜4であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜3である。例えば、ブトキシ基、プロポキシ基、エトキシ基、メトキシ基等が挙げられる。
また、ヒドロキシ基は他のヒドロキシ基、アルコキシ基等と縮合して、−O−を形成するが、このようなヒドロキシ基が縮合した基が前記金属原子に結合していてもよい。
第2の炭化水素鎖含有基またはヒドロキシ基が第2のケイ素原子または他の金属原子に結合した構造としては、下記式(2)で表される構造(b)が好ましい。
Figure 0006863812
[式(2)中、Rb2は、第2の炭化水素鎖含有基またはヒドロキシ基を表し、Ab2はヒドロキシ基、または、−O−を表す。Mは、Al、Fe、In、Ge、Hf、Si、Ti、Sn、Zr、または、Taを表す。nは、Mに応じて、0〜3の整数を表す。]
式(2)中、Rb2の第2の炭化水素鎖含有基は、いずれも上記説明した範囲から適宜選択できる。Rb2は、ヒドロキシ基であることが好ましい。
また、式(2)中、MとしてはAl等の3価金属;Si、Ti、Sn、Zr等の4価金属;が好ましく、Al、Si、Ti、Zrがより好ましく、Siが特に好ましい。さらに、式(2)において、nは、MがAl、Fe、In等の3価金属の場合は1を表し、MがGe、Hf、Si、Ti、Sn、Zr等の4価金属の場合は2を表し、MがTa等の5価金属の場合は3を表す。
構造(b)としては、MがSiの場合、例えば、下記式(2−1)〜式(2−11)で表される構造を好ましく例示することができる。
Figure 0006863812
Figure 0006863812
得られた皮膜において、構造(a)と構造(b)の存在比(構造(a)/構造(b))は、モル基準で、0.01以上であることが好ましく、より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.03以上であり、0.3以下であることが好ましく、より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下、よりいっそう好ましくは0.09以下である。
(2−2)有機ケイ素化合物(A2)を用いる場合の皮膜
有機ケイ素化合物(A2)に由来する構造(a2)は、式(3)で表される。
Figure 0006863812
[式(3)中、Ra4はトリアルキルシリル基含有分子鎖を表し、Za4は、トリアルキルシリル基含有分子鎖、シロキサン骨格含有基、炭化水素鎖含有基又は−O−を表す。]
式(3)中、Ra4、Za4のトリアルキルシリル基含有分子鎖、Za4のシロキサン骨格含有基、炭化水素鎖含有基は、それぞれ、トリアルキルシリル基含有分子鎖、シロキサン骨格含有基、炭化水素鎖含有基として上記説明した範囲から適宜選択できる。
中でも、式(3)中、Za4は、シロキサン骨格含有基又は−O−であることが好ましく、−O−であることがより好ましい。
構造(a2)としては、式(3−1)で表される構造が挙げられる。
Figure 0006863812
Figure 0006863812
Figure 0006863812
金属化合物(B)に由来する構造(b)は、有機ケイ素化合物(A1)を用いた場合と同じである。
そして、本発明の組成物を用いて得られた皮膜は、通常、厚みが3〜50nm程度である。
さらに、本発明の組成物を用いて得られた皮膜は、ケイ素原子や上記金属原子(好ましくはケイ素原子のみ)が酸素原子を介して結合した網目状の骨格を有しており、この骨格を形成するケイ素原子のうち一部のケイ素原子に、前記炭素数6〜20のアルキル基が結合した構造を有するため、液滴の滑り性、さらには撥水・撥油性に優れている。撥水性は例えば、θ/2法により求めた液量:3μLの水滴の接触角で評価でき、接触角は例えば97°以上であり、より好ましくは100°以上であり、更に好ましくは101°以上であり、上限は特に限定されないが例えば110°である。また、液滴の滑り性は、例えば、基材上に付着させた液滴の滑落角や接触角ヒステリシスにより評価できる。具体的には液量6μLの水滴の滑落角が23°以下であることが好ましく、より好ましくは21°以下であり、更に好ましくは20°以下であり、下限は例えば5°である。接触角ヒステリシスは、8.0°以下が好ましく、より好ましくは7°以下、更に好ましくは6°以下であり、下限は例えば1.0°である。
本発明の組成物を基材上にコーティングすることで、皮膜を形成でき、基材の形状は、平面、曲面のいずれでもよい。また、基材は、有機系材料、無機系材料のいずれで構成されていてもよく、前記有機系材料としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂;等が挙げられ、無機系材料としては、セラミックス;ガラス;鉄、シリコン、銅、亜鉛、アルミニウム、等の金属;前記金属を含む合金;等が挙げられる。
前記基材には予め易接着処理を施しておいてもよい。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等の親水化処理が挙げられる。また、樹脂、シランカップリング剤、テトラアルコキシシラン等によるプライマー処理を用いてもよい。
本発明の組成物によれば、撥水・撥油性と耐摩耗性を両立した皮膜を手塗りで提供することができ、各種車両や建築物の窓ガラスなどに好適に用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
本発明の実施例で用いた測定法は下記の通りである。
(1)静的接触角の測定
接触角測定装置(協和界面科学社製 DM700)を用い、θ/2法で液量:3μLにて、皮膜表面の水の接触角を測定した。
(2)動的接触角(滑落角及び接触角ヒステリシス)の測定
協和界面科学社製DM700を使用し、滑落法(解析方法:接線法、水滴量:6.0μL、傾斜方法:連続傾斜、滑落検出:滑落後、移動判定:前進角、滑落判定距離:0.25mm)により、皮膜表面の動的撥水(接触角ヒステリシス、滑落角)を測定した。
(3)水滴の滑り性評価
皮膜表面に3μLの水滴を付け、水平方向から90°まで傾けた際の水滴の滑り具合を、滑落スピードの官能評価にて以下の通り評価した。
◎:水滴が非常に早く滑落した
○:水滴が滑落した
△:水滴がゆっくり滑落した
×:水滴が動かなかった
(4)皮膜表面の目視評価
照度1000ルクスの環境において、皮膜を目視にて観察し、着色や異物の有無(以下、まとめて「汚れ」と記載する)を官能評価にて、以下の通り評価した。
◎:全く汚れがない
○:よく見ると汚れが確認できる
△:膜の部分的な汚れが確認できる
×:膜の全体的な汚れが確認できる
(5)ヘーズ評価
ヘーズメーターHZ−2(スガ試験機)を用いて、D65光源(平均昼光)にて、表面のヘーズ(曇り度)を測定し、手塗り性の評価を行った。
(6)耐摩耗性の評価
(5)でヘーズが0.50以下となった皮膜について、耐摩耗性の評価を行った。消しゴム付きHB鉛筆(三菱鉛筆社製)を備えたスチールウール試験機(大栄精機社製)を使用した。消しゴムが皮膜表面に接した状態で、500gの荷重をかけて摩耗試験を行い、目視にて剥がれ又は傷が確認されるか、又は水の接触角が試験前の接触角よりも15°以上低下するまで試験を繰り返した。
実施例1−1
有機ケイ素化合物(A1)としてのトリエトキシ−n−オクチルシラン(オクチルトリエトキシシラン)2.2×10-4mol、金属化合物(B)としてのオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)3.5×10-3molを、イソプロピルアルコール0.95mlと1−ブタノール0.95mlの混合溶液に溶解させ、室温で20分攪拌した。得られた溶液に、触媒としての塩酸(0.01mol/L水溶液)1.0ml滴下した後、24時間攪拌して、試料溶液を作製した。前記試料溶液を、イソプロピルアルコールで30倍に希釈し、塗布溶液1−1とした。
塗布溶液1−1をベンコット(旭化成株式会社製クリーンルーム用ワイパー、登録商標)に浸み込ませ、アルカリ洗浄したガラス基板(5cm×5cm、Corning社製「EAGLE XG」)にコーティングし、1日室温で静置した。コーティングは以下の方法によりおこなった。ベンコットの上に疑似指(トンボ社製モノワンダストキャッチ)を2本乗せ、スチールウール試験機(大栄精機社製)に取り付け、ベンコットに塗布溶液1−1を1mL浸み込ませた。次いで1kgの荷重を加えながら、ストローク50mm、速度60r/minの条件で基材に往路のみ塗布し、時間を置かずにガラス基板をずらして重なり合う箇所ができるように、再度往路のみ塗布した。このように塗布を行うことにより、定量的に手塗りを再現することができる。このコーティング方法を手塗りということがある。
作製した皮膜について、初期の静的および動的接触角、耐摩耗性、ヘーズの評価を行った。また、官能評価としては、水滴滑り性、膜表面の目視観察を行った。
実施例1−2
塗布溶液中の1−ブタノールの割合が表7−1に記載の値となるようにしたこと以外は実施例1−1と同様にして塗布溶液1−2を作製し、実施例1−1と同様にして皮膜を作製して評価を行った。
実施例1−3
塗布溶液中の1−ブタノールの割合が表7−1に記載の値となるようにしたこと以外は実施例1−1と同様にして塗布溶液1−3を作製し、実施例1−1と同様にして皮膜を作製して評価を行った。
実施例2−1
有機ケイ素化合物(A1)としてのトリエトキシ−n−オクチルシラン(オクチルトリエトキシシラン)2.2×10-4mol、金属化合物(B)としてのオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)3.5×10-3molを、イソプロピルアルコール1.8mlとエチレングリコールモノヘキシルエーテル0.095mlの混合溶液に溶解させ、室温で20分攪拌した。得られた溶液に、触媒(E)としての塩酸(0.01mol/L水溶液)1.0ml滴下した後、24時間攪拌して、試料溶液を作製した。前記試料溶液を、イソプロピルアルコールで30倍に希釈し、塗布溶液2−1とした。それ以外は実施例1−1と同様にして皮膜を作製して評価を行った。
実施例2−2
塗布溶液中のエチレングリコールモノヘキシルエーテルの割合が表7−1に記載の値となるようにしたこと以外は実施例2−1と同様にして塗布溶液2−2を作製し、実施例1−1と同様にして皮膜を作製して評価を行った。
実施例3−1
有機ケイ素化合物(A1)としてのトリエトキシ−n−デシルシラン(デシルトリエトキシシラン)1.8×10-4mol、金属化合物(B)としてのオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)3.7×10-3molを、イソプロピルアルコール1.0mlと1−ブタノール1.0mlの混合溶液に溶解させ、室温で20分攪拌した。得られた溶液に、触媒としての塩酸(0.01mol/L水溶液)1.1ml滴下した後、24時間攪拌して、試料溶液を作製した。前記試料溶液を、イソプロピルアルコールで30倍に希釈し、塗布溶液3−1とした。それ以外は実施例1−1と同様にして皮膜を作製して評価を行った。
実施例3−2
有機ケイ素化合物(A1)としてトリエトキシ−n−デシルシラン(デシルトリエトキシシラン)に代えてトリエトキシ−n−ドデシルシラン(ドデシルトリエトキシシラン)を用いたこと以外は実施例3−1と同様にして塗布溶液3−2を作製し、実施例1−1と同様にして皮膜を作製して評価を行った。
実施例3−3
試料溶液を、イソプロピルアルコールで50倍に希釈し、塗布溶液3−3とした以外は実施例3−2と同様にした。
実施例4
有機ケイ素化合物(A1)としてのトリエトキシ−n−オクチルシラン(オクチルトリエトキシシラン)1.2×10-3mol、金属化合物(B)としてのシリケート40を6.0×10-3molを、イソプロピルアルコール5.1mlと1−ブタノール5.1mlの混合溶液に溶解させ、室温で20分攪拌した。得られた溶液に、触媒としての塩酸(0.01mol/L水溶液)5.4ml滴下した後、24時間攪拌して、試料溶液を作製した。前記試料溶液を、イソプロピルアルコールで30倍に希釈し、塗布溶液4とした。その後は実施例1−1と同様にして皮膜を作製して評価を行った。
実施例5
有機ケイ素化合物(A1)としてのトリエトキシ−n−オクチルシラン(オクチルトリエトキシシラン)2.2×10-4mol、金属化合物(B)としてのオルトケイ酸テトラエチル3.5×10-3molを、イソプロピルアルコール0.89mlと1−ブタノール0.95mlの混合溶液に溶解させ、室温で20分撹拌した。得られた溶液に、触媒(E)としての塩酸1.0mLに代えて蟻酸(1mol/L水溶液)2.1mLを用いた以外は実施例1−1と同様にして皮膜を作製し、評価を行った。
実施例6
<アルコキシシラン化合物の合成例>
三ツ口フラスコに、トリス(トリメチルシロキシ)シラノールを4.69g、THFを21.0g仕込み、撹拌した。−40℃に冷却し、n−BuLiヘキサン溶液(1.6mol/L)を9.38mL滴下した。0℃まで昇温し、21gのTHFに溶解したヘキサメチルシクロトリシロキサン10.01gを滴下し、17時間撹拌した。−40℃に冷却し、反応液にTHF(テトラヒドロフラン)、イオン交換水、ヘキサンを順次加え、分液して、有機層を取り分けた。イオン交換水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮し、無色透明の中間体1を得た。
中間体1を9.47g、オルトケイ酸テトラメチルを8.97g、t−ブチルアミン151.2uLを仕込み、撹拌しながら30℃で5時間反応を行った。12hPa、140℃で減圧濃縮し、下記のアルコキシシラン化合物を得た。
Figure 0006863812
上記アルコキシシラン化合物において、NMRスペクトルから算出した平均の繰り返し数nは9である。
有機ケイ素化合物(A2)として、上記式で表されるアルコキシシラン化合物を1.4×10-4mol、金属化合物(B)としてのオルトケイ酸テトラエチル1.4×10-3molを、イソプロピルアルコール6.7mlと1−ブタノール2.0mlの混合溶液に溶解させ、室温で20分撹拌した。得られた溶液に、触媒(E)としての塩酸(0.01mol/L水溶液)2.8mLを滴下した後、24時間撹拌した以外は、実施例1−1と同様にして皮膜を作製し、評価を行った。
比較例1
有機ケイ素化合物(A)の代わりにメチルトリエトキシシラン3.59g、金属化合物(B)としてのオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)10.92gを、エチレングリコールモノブチルエーテル5.03gに溶解させ、室温で20分攪拌した。得られた溶液に、触媒としての酢酸(0.5mol/L水溶液)を10.46g滴下した後、24時間攪拌して、塗布溶液aとした。この塗布溶液aを用いて、実施例1−1と同様にしてガラス基板に手塗りでコーティングし、1日室温で静置して皮膜を作製し、評価した。
比較例2
有機ケイ素化合物(A)としてトリエトキシ−n−オクチルシラン(オクチルトリエトキシシラン)2.8g、金属化合物(B)としてのオルトケイ酸テトラメチル(テトラメトキシシラン)4.6gを、エタノール1.7gに溶解させ、室温で20分攪拌した。得られた溶液に、触媒としての塩酸(0.01mol/L水溶液)を0.28g滴下した後、24時間攪拌して、塗布溶液bとした。この塗布溶液bを用いて、実施例1−1と同様にしてガラス基板に手塗りでコーティングし、1日室温で静置して皮膜を作製し、評価した。
比較例3−1
有機ケイ素化合物(A)としてのトリエトキシ−n−オクチルシラン(オクチルトリエトキシシラン)2.2×10-4mol、金属化合物(B)としてのオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)3.5×10-3molを、1−ブタノール1.9mlの混合溶液に溶解させ、室温で20分攪拌した。得られた溶液に、触媒としての塩酸(0.01mol/L水溶液)1.0ml滴下した後、24時間攪拌した。それ以外は実施例1−1と同様にして皮膜を作製し、評価を行った。
比較例3−2
有機ケイ素化合物(A)としてのトリエトキシ−n−オクチルシラン(オクチルトリエトキシシラン)2.2×10-4mol、金属化合物(B)としてのオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)3.5×10-3molを、イソプロピルアルコール1.8mLと1−ブタノール0.095mLの混合溶液に溶解させ、室温で20分撹拌したこと以外は実施例1−1と同様にして皮膜を作製し、評価を行った。
比較例4−1
有機ケイ素化合物(A)としてのトリエトキシ−n−オクチルシラン(オクチルトリエトキシシラン)2.2×10-4mol、金属化合物(B)としてのオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)3.5×10-3molを、イソプロピルアルコール1.8mlとメチルエチルケトン0.095mlの混合溶液に溶解させ、室温で20分攪拌した。得られた溶液に、触媒としての塩酸(0.01mol/L水溶液)1.0ml滴下した後、24時間攪拌して、試料溶液を作製した。前記試料溶液をイソプロピルアルコールで7倍に希釈し、塗布溶液d−1を作製した。この塗布溶液d−1を用いて、実施例1−1と同様にしてガラス基板に手塗りでコーティングし、1日室温で静置して皮膜を作製し、評価した。
比較例4−2
メチルエチルケトンに代えてジメチルスルホキシドを0.095ml用いたこと以外は比較例4−1と同様にして塗布溶液d−2を作製した。この塗布溶液d−2を用いて、実施例1−1と同様にしてガラス基板に手塗りでコーティングし、1日室温で静置して皮膜を作製し、評価した。
比較例5
ジメチルスルホキシドに代えてn−オクタンを0.095ml用いたこと以外は比較例4−2と同様にして塗布溶液eを作製した。この塗布溶液eを用いて、実施例1−1と同様にしてガラス基板に手塗りでコーティングし、1日室温で静置して皮膜を作製し、評価した。
比較例6
オクタンに代えてドデカンを用いたこと以外は比較例5と同様にして、塗布溶液fを作製した。この塗布溶液fを用いて、実施例1−1と同様にしてガラス基板に手塗りでコーティングし、1日室温で静置して皮膜を作製し、評価した。
比較例7
ドデカンに代えて1,2ジメトキシエタンを用いたこと以外は比較例6と同様にして、塗布溶液gを作製した。この塗布溶液gを用いて、実施例1−1と同様にしてガラス基板に手塗りでコーティングし、1日室温で静置して皮膜を作製し、評価した。
結果を表7−1、7−2、8、9に示す。なお、表10には、各種溶媒の20℃での蒸気圧及び沸点を示した。
Figure 0006863812
Figure 0006863812
Figure 0006863812
Figure 0006863812
Figure 0006863812
上記の結果から、本発明の組成物によれば、撥水・撥油性と耐摩耗性を両立する皮膜を、手塗りで綺麗に塗布できることがわかる。

Claims (7)

  1. メチレン基の一部が酸素原子に置き換わっていてもよい炭素数6〜20のアルキル基と、少なくとも1つの加水分解性基とがケイ素原子に結合している有機ケイ素化合物(A1)、または少なくとも1つのトリアルキルシリル基含有分子鎖と、少なくとも1つの加水分解性基とがケイ素原子に結合している有機ケイ素化合物(A2)を含み、
    さらに、少なくとも1つの加水分解性基が金属原子に結合しており、炭化水素鎖部分の最大鎖長が前記有機ケイ素化合物(A1)または(A2)の最大鎖長よりも短い炭化水素鎖含有基が前記金属原子に結合していてもよい金属化合物(B)と、
    20℃での蒸気圧が1000Pa以下であること及び沸点が120℃以上であることの少なくともいずれかを満たし、かつ溶解度パラメータが8.0(cal/cm31/2以上である高沸点溶媒(C)と、
    20℃での蒸気圧が1000Pa超であり且つ沸点が120℃未満である低沸点溶媒(D)とを含み、
    前記高沸点溶媒(C)の濃度が、組成物100質量部に対して、0.088質量部以上、1.74質量部未満である組成物。
  2. 前記有機ケイ素化合物(A1)又は(A2)に対する前記金属化合物(B)のモル比が2以上、48以下である請求項1に記載の組成物。
  3. 前記有機ケイ素化合物(A1)が、下記式(AI)で表される請求項1または2に記載の組成物。
    Figure 0006863812
    [前記式(AI)中、Ra1はメチレン基の一部が酸素原子に置き換わっていてもよい炭素数が6〜20のアルキル基を表し、
    複数のAa1は、それぞれ独立に、加水分解性基を表す。
    a1は、炭化水素鎖含有基、または、加水分解性基を表し、Za1が炭化水素鎖含有基の場合、Ra1とZa1とは同一であっても異なっていてもよく、Za1が加水分解性基の場合、Za1とAa1とは、同一であっても異なっていてもよい。また、複数の式(AI)間でRa1とZa1とは同一であっても異なっていてもよい。]
  4. 前記有機ケイ素化合物(A2)が、下記式(AII)で表される請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
    Figure 0006863812
    [式(AII)中、Ra2はトリアルキルシリル基含有分子鎖を表し、複数のAa2は、それぞれ独立に、加水分解性基を表す。Za2は、トリアルキルシリル基含有分子鎖、炭化水素鎖含有基、シロキサン骨格含有基又は加水分解性基を表す。]
  5. 前記金属化合物(B)が、下記式(BI)で表されるものである請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
    Figure 0006863812
    [前記式(BI)中、
    b1は、炭化水素鎖部分の最大鎖長が前記炭素数6〜20のアルキル基の最大鎖長よりも短いか、もしくは前記トリアルキルシリル基含有分子鎖よりも短い炭化水素鎖含有基または加水分解性基を表す。
    b1は、それぞれ独立に、加水分解性基を表す。
    Mは、Al、Fe、In、Ge、Hf、Si、Ti、Sn、Zr、または、Taを表す。
    mは、Mの価数に応じて、1〜4の整数を表す。]
  6. 前記式(BI)中、Rb1とAb1とが同一の基である請求項5に記載の組成物。
  7. 前記式(BI)中、MがSiである請求項5または6に記載の組成物。
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