JP3683524B2 - フルオロアルキル基を有する架橋ポリシロキサンおよびその製造方法 - Google Patents

フルオロアルキル基を有する架橋ポリシロキサンおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フルオロアルキル基を有する架橋ポリシロキサンおよびその利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、基材表面に撥水性および/または撥油性(以下、撥水撥油性という。)を付与する材料として、ポリテトラフルオロエチレンに代表されるフッ素系有機高分子材料が用いられている。しかし、ポリテトラフルオロエチレンは基本的に炭素−炭素結合を主鎖としているため、ある程度以上(例えば270℃程度以上)に耐熱性を高めることは困難であった。
一方、セラミックス、シリコン等の無機系材料からなる被膜では、ポリテトラフルオロエチレン等に比べて高い耐熱性を備えるとともに、ある程度の撥水撥油性をも示すものが知られている。しかしこれら無機系材料からなる被膜の撥水撥油性は、一般にそれほど高いものではない。
【0003】
ところで、ケイ素原子に1個の非加水分解性有機基Rと3個の加水分解性基Xとが結合した下記一般式(4)で示される化合物(例えばメチルトリメトキシシラン)は、適当な条件で加水分解および縮合されて、非加水分解性有機基Rを有するポリシロキサン型のポリマー(以下、単にポリシロキサンともいう。)を形成する。
【0004】
【化8】
Figure 0003683524
【0005】
このような非加水分解性有機基R0 を有するポリシロキサンは、ポリシロキサン骨格に基づく無機系材料的な性質に加えて、非加水分解性有機基R0 に基づく有機系材料的な性質を併せ有するものとすることが可能である。例えば、一般式(4)におけるR0 がフルオロアルキル基を有する有機基であるような化合物(モノマー)を加水分解縮合させて得られたポリシロキサンは、撥水撥油性および耐熱性に優れたものとなることが期待される。
【0006】
フルオロアルキル基を有するポリシロキサンとして、特開2000−290287号公報には、フルオロアルキル基を有する多面体構造の有機ケイ素化合物(カゴ状ポリシロキサン)およびその製造方法が開示されている。また、特開2000−351938号公報には、シリコンアルコキシド(例えばテトラメトキシシラン)およびフルオロアルキル基含有シラン化合物を含有するコーティング液をを被加工物品に塗布し、その後これらの化合物を加水分解共縮合させて撥水膜被覆物品を製造する方法が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの公報に記載されたポリシロキサン、あるいはこれらの公報に記載された化合物等の加水分解縮合により得られたポリシロキサンは、撥水撥油性および/または耐熱性(例えば、高温下あるいは高温耐久後においても撥水撥油性等の性能が維持されることをいう。)の点等において、さらなる性能の向上が望まれるものであった。
【0008】
そこで、本発明の一つの目的は、フルオロアルキル基を有し、耐熱性に優れた架橋ポリシロキサンを提供することである。本発明の他の一つの目的は、フルオロアルキル基を有し、撥水撥油性に優れた架橋ポリシロキサンを提供することである。本発明の他の一つの目的は、フルオロアルキル基を有し、耐熱性および撥水撥油性に優れた架橋ポリシロキサンを提供することである。また、本発明の他の一つの目的は、フルオロアルキル基を有する特定の化合物の加水分解縮合反応により形成された構造部分を有する、新規な架橋ポリシロキサンを提供することである。本発明の他の一つの目的は、加水分解縮合反応を行う工程においてフルオロアルキル基を有する特定の化合物を用いる、フルオロアルキル基を有する架橋ポリシロキサンの製造方法を提供することである。本発明の他の一つの目的は、フルオロアルキル基を有する架橋ポリシロキサンを主成分とする架橋ポリシロキサン膜を被処理物品上に形成する架橋ポリシロキサン膜の製造方法を提供することである。本発明の他の一つの目的は、かかる架橋ポリシロキサン膜の作製に適したコーティング用組成物を提供することである。また、本発明の他の側面は、これらフルオロアルキル基を有する架橋ポリシロキサンを利用した、高度な耐熱性および/または撥水撥油性を実現した材料および加工品を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によると、
以下の条件:
TG−DTA測定における主発熱ピークが350℃以上にある;
TG−DTA測定における到達重量(室温から10℃/分の速度で800℃まで昇温した後に残存した試料重量をいう。)が初期重量の10〜70%の範囲にある;および、
下記一般式(1)で示される構造部分を有する;
を満たす、フルオロアルキル基を有する架橋ポリシロキサンが提供される。
【化9】
Figure 0003683524
ここで、「主発熱ピーク」とは、DTA(示差熱分析)において現れた最も大きな発熱ピークの頂点温度を指す。本発明の架橋ポリシロキサンでは、通常この主発熱ピークの出現する温度域は、TG(熱重量)測定において試料が急激な重量減少を示す温度域とほぼ一致する。このような熱特性を有する架橋ポリシロキサンは、300℃以上の高温域までは、その撥水撥油性に影響を与えるような構造変化(例えば、撥水撥油性に寄与するフルオロアルキル基の分解)が実質的に起こらないものと推察される。したがって、このような熱特性を有する本発明の架橋ポリシロキサンは、フルオロアルキル基を備えることから高い撥水撥油性を示し、また高温下あるいは高温耐久後においても撥水撥油性が良好である。
【0010】
なお、本明細書において「架橋ポリシロキサン」とは、シロキサン結合がネットワーク状(三次元網目状)に拡がって形成されているSi化合物(種々の塩や誘導体を包含する。)をいう。このネットワークの構造は規則的であっても不規則であってもよく、また不規則な構造のなかに規則的構造(例えばハシゴ状構造、カゴ状構造等)が部分的に形成された構造であってもよい。
また、本明細書中において「フルオロアルキル基」とは、アルキル基(直鎖アルキル基、分岐を有するアルキル基および脂環式アルキル基を含む)における水素原子のすべてがフッ素原子に置き換えられたパーフルオロアルキル基に加えて、このパーフルオロアルキル基におけるフッ素原子の一部(通常は末端の炭素原子に結合したフッ素原子のうち一つ)が他のハロゲン原子または水素原子に置き換えられた基をも含む意味である。
【0013】
上記一般式(1)におけるaが1である架橋ポリシロキサンは特に撥水撥油性に優れる。また、上記一般式(1)におけるaが2以上である架橋ポリシロキサンは特に耐熱性に優れる。
【0014】
また、本発明によると、
以下の条件:
TG−DTA測定における主発熱ピークが350℃以上にある;
TG−DTA測定における到達重量(室温から10℃/分の速度で800℃まで昇温した後に残存した試料重量をいう。)が初期重量の10〜70%の範囲にある;および、
下記一般式(2)で示される化合物の加水分解縮合反応により得られた構造部分を有する
を満たす、フルオロアルキル基を有する架橋ポリシロキサンが提供される。
このような架橋ポリシロキサンは、フルオロアルキル基を備えることから高い撥水撥油性を示し、上記一般式(2)で示される化合物の加水分解縮合反応により得られた構造部分を有することにより優れた耐熱性を示す。
【0015】
【化10】
Figure 0003683524
【0016】
上記本発明の架橋ポリシロキサンは、例えば次の方法により好適に製造される。すなわち、本発明のフルオロアルキル基を有する架橋ポリシロキサンの製造方法は、ポリシロキサンを生成させるための加水分解縮合反応を行う工程において、少なくとも上記一般式(2)で示される化合物を使用することを特徴とする。
【0017】
本発明の架橋ポリシロキサンは、さらに下記一般式(3)で示される化合物の加水分解縮合反応により得られた構造部分を有することが好ましい。上記一般式(2)で示される化合物と下記一般式(3)で示される化合物とを併用して(共縮合させて)得られた構造部分を有する本発明の架橋ポリシロキサンは、架橋密度および/または分子量が高いことから、さらに優れた耐熱性を示す。下記一般式(3)におけるbが0である化合物の使用が特に好ましい。
【0018】
【化11】
Figure 0003683524
【0019】
上記本発明の架橋ポリシロキサンは、例えば次の方法により好適に製造される。すなわち、本発明のフルオロアルキル基を有する架橋ポリシロキサンの製造方法は、TG−DTA測定における主発熱ピークが350℃以上にあり、かつTG−DTA測定における到達重量(室温から10℃/分の速度で800℃まで昇温した後に残存した試料重量をいう。)が初期重量の10〜70%の範囲にある架橋ポリシロキサンを製造する方法であって、ポリシロキサンを生成させるための加水分解縮合反応を行う工程において、少なくとも上記一般式(2)で示される化合物および一般式SiY 4 (Yは加水分解性基である。)で示される化合物を含むモノマー類を、酸触媒の存在下で加水分解縮合させることを特徴とする。
【0020】
また、本発明によると、フルオロアルキル基を有する架橋ポリシロキサンを主成分とする架橋ポリシロキサン膜を製造する方法が提供される。この製造方法では、まず上記一般式(2)で示される化合物を含むモノマー類(加水分解縮合反応によりシロキサン結合を生成し得る化合物をいう。)を被処理物品に塗布する。次いで、その被処理物品上で、塗布されたモノマー類の加水分解縮合反応を進行させる。これにより、被処理物品の表面に架橋ポリシロキサンを主成分とする被膜が形成される。この方法によると、実質的に本発明の架橋ポリシロキサンのみからなる架橋ポリシロキサン膜を製造することができる。
【0021】
被処理物品上でモノマー類を加水分解縮合反応させるにあたっては、被処理物品に塗布されたモノマー類に酸性水溶液(加水分解縮合反応を促進する酸触媒の水溶液)を接触させることが好ましい。これにより加水分解縮合反応の進行が促進される。
【0022】
本発明により提供されるコーティング用組成物は、上記一般式(2)で示される化合物で示される化合物一般式SiY 4 (Yは加水分解性基である。)で示される化合物を含むモノマー類と、有機溶媒とを含有する。この組成物を被処理物品に塗布し、その被処理物品上でモノマー類を加水分解縮合させることにより架橋ポリシロキサン膜を作製することができる。このコーティング用組成物は、加水分解縮合反応を促進する触媒(酸触媒または塩基触媒)をさらに含有することができる。また、このコーティング用組成物は、加水分解縮合反応を促進する触媒を実質的に含有しなくてもよい。かかる組成物は保存安定性に優れる。
【0023】
本発明のコーティング用組成物に用いられる有機溶媒としては、
(1).炭素原子数1〜4の一価アルコール40〜95wt%と、
(2).分子量当たり0.02個以上の水酸基を有するとともに沸点が150℃以上である多価アルコール5〜60wtとを含有する有機溶媒(混合溶媒)が好ましい。かかる有機溶媒を用いたコーティング用組成物は、被処理物品への塗布性に優れる。したがって、この組成物によると被処理物品の表面に均一な架橋ポリシロキサン膜を形成することが容易である。この被処理物品の材質がガラスである場合には、本発明のコーティング用組成物を用いることによる効果が特によく発揮されるので好ましい。
【0024】
このコーティング用組成物は、フルオロアルキル基を有する架橋ポリシロキサンを主成分とする架橋ポリシロキサン膜を作製するために好適に用いられる。例えば、この組成物を被処理物品の表面に塗布し、塗布された組成物から加熱等により有機溶媒を除去し、次いで被処理物品上のモノマー類に酸性水溶液(酸触媒の水溶液)を接触させることによって架橋ポリシロキサン膜を製造することができる。この組成物は、加水分解縮合反応を促進する触媒(酸触媒または塩基触媒)を実質的に含有しないことが好ましい。
なお、上記「モノマー類」は、少なくとも上記一般式(2)で示される化合物を含有し、一般式(2)で示される化合物と共縮合可能な他の化合物(好ましくは上記一般式(3)で示される化合物)をさらに含有することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態につき詳細に説明する。
本発明の架橋ポリシロキサンは、フルオロアルキル基を有することから、高い撥水撥油性(典型的には、水に対する初期接触角が90〜140°、好ましくは100〜120°、油に対する初期接触角が10〜130°、好ましくは40〜100°)を備える。さらにこの架橋ポリシロキサンは、TG−DTA測定における主発熱ピークが300℃以上(典型的には300〜600℃、好ましくは350〜550℃)にあることによって特徴付けられる。
なお、従来知られているフルオロアルキル基を有するポリシロキサン(例えば、一般式[CF3CH2CH2SiO1.58で示される多面体構造の有機ケイ素化合物)では、いずれも上記主発熱ピークの出現(または試料の急激な重量減少)が300℃よりも低い温度域で起こる。
【0026】
上記TG−DTA測定は、例えば、空気中において試料を室温(約25℃)から10℃/分の速度で昇温することにより行うことができる。上記主発熱ピークは一本であることが好ましいが、最も低温側に現れる発熱ピークが300℃以上にあれば、同程度の大きさの発熱ピークが二本以上あってもよい。本発明の架橋ポリシロキサンのうち、上記主発熱ピーク(複数ある場合には最も低温側の発熱ピーク)が350℃以上(より好ましくは400℃以上)にあるものは、さらに耐熱性に優れるので好ましい。
また、本発明の架橋ポリシロキサンは、上記TG−DTA測定において300℃まで昇温される間の重量減少率が15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。このような架橋ポリシロキサンは、高温曝露に対してさらに安定した撥水撥油性を示すことができる。なお、上記重量減少率は、例えばTG−DTA測定中における試料重量の推移から求めることができる。
【0027】
本発明の架橋ポリシロキサンは、上記一般式(1)に示す構造部分を有することが好ましい。この構造部分は、例えば上記一般式(2)に示す化合物(以下、di−Rf化合物ともいう。)の加水分解縮合反応により形成される。この化合物は、アルキル鎖の両端にRf基が結合しており、かつこのアルキル鎖を構成する炭素原子の一個以上(好ましくは二個以上)に、三個の加水分解性基を備えるケイ素原子がそれぞれ直結した構造を有する。
上記di−Rf化合物は、単独で加水分解縮合されて、あるいは他の化合物と共に加水分解縮合(共縮合)されて、ネットワーク状のポリシロキサンを形成することができる。di−Rf化合物と共縮合させる上記「他の化合物」としては、加水分解性基を有するシラン化合物等を用いることができる。このシラン化合物一分子の有する加水分解性基の数は二個以上であることが好ましく、より好ましくは三個以上、さらに好ましくは四個以上である。上記他の化合物として二種以上のシラン化合物を用いる場合には、その種類およびモル比から求めた平均の加水分解性基の数が一分子当たり2.5〜4個であることが好ましい。
1が水素原子である場合につき、di−Rf化合物の加水分解縮合反応により形成されたネットワーク状のポリシロキサン(架橋ポリシロキサン)の構造の一例を図1に示す。
【0028】
上記一般式(1)および(2)における「Rf」は、少なくとも一つのフルオロアルキル基を備える有機基を表す。このRfとしては、下記一般式(5)で示されるものが好ましい。
【0029】
【化12】
Figure 0003683524
【0030】
上記pの値が15よりも大きすぎる場合には、di−Rf化合物の各種溶媒への溶解性が低下する傾向となる。このため、加水分解縮合反応に使用する反応溶媒の選択幅が狭くなる。また、加水分解縮合反応において高架橋密度および/または高分子量の架橋ポリシロキサンが生成し難くなる。一方、撥水撥油性能についてはpの値が大きいほうが良好となる傾向にある。これらの観点から、pは2〜10の整数であることが好ましく、3〜6の整数であることがより好ましい。
また、上記Zとしては、フッ素原子、塩素原子または水素原子が好ましく、Zがフッ素原子であるRf(すなわちパーフルオロアルキル基)が特に好ましい。
【0031】
一般式(5)で表されるRfの好ましい具体例は、F3 C−,F (CF2)2 −,F (CF2)3 −,F (CF2)4 −,F (CF2)5 −,F (CF2)6 −,F (CF2)7 −,F (CF2)8 −,F (CF2)9 −,F (CF2)10−,ClCF2 −,Cl(CF2)2 −,Cl(CF2)3 −,Cl(CF2)4 −,Cl(CF2)5 −,Cl(CF2)6 −,Cl(CF2)7 −,Cl(CF2)8 −,Cl(CF2)9 −,Cl(CF2)10−,HCF2−,H(CF2)2 −,H(CF2)3 −,H(CF2)4 −,H(CF2)5 −,H(CF2)6 −,H(CF2)7 −,H(CF2)8 −,H(CF2)9 −,H(CF2)10 −である。
【0032】
また、好ましいRfの他の例として、下記一般式(6)で表され、具体的には下記式(7)〜(15)に示されるものが挙げられる。
【0033】
【化13】
Figure 0003683524
【0034】
【化14】
Figure 0003683524
【0035】
【化15】
Figure 0003683524
【0036】
【化16】
Figure 0003683524
【0037】
【化17】
Figure 0003683524
【0038】
【化18】
Figure 0003683524
【0039】
【化19】
Figure 0003683524
【0040】
【化20】
Figure 0003683524
【0041】
【化21】
Figure 0003683524
【0042】
【化22】
Figure 0003683524
【0043】
上記一般式(6)におけるqの値が8よりも大きすぎると、di−Rf化合物の各種溶媒に対する溶解性が低下する傾向となる。このため、加水分解縮合反応に使用する反応溶媒の選択幅が狭くなる。また、加水分解縮合反応において高架橋密度かつ/または高分子量の架橋ポリシロキサンが生成し難くなる。一方、撥水撥油性および耐熱性のためにはqの値が大きいほうが有利である。これらの観点から、qの値は0〜6の整数であることが好ましく、0〜4の整数であることがより好ましい。
【0044】
本発明の架橋ポリシロキサンのうち一般式(6)で示されるRfを備えるものは、一般式(5)で示されるRfを備えるものに比べて、より高い耐熱性を有する傾向にある。また、本発明の架橋ポリシロキサンのうち一般式(5)で示されるRfを備えるものは、一般式(6)で示されるRfを備えるものに比べて、より高い撥水撥油性を示す傾向にある。
なお、一般式(1)に示す構造部分または一般式(2)で示される化合物はそれぞれ二つのRf基を有するが、これらのRf基は同じ基でもよく異なる基でもよい。一般式(2)で示される化合物の製造容易性の点からは、二つのRf基が同じ基あるいは類似の基(例えば、一般式(5)で示される基であってpの数が異なるもの)であることが好ましい。
【0045】
上記一般式(2)における「X」は、適当な条件で(例えば、酸触媒または塩基触媒と水との存在下において)加水分解されてシラノール基を生成し得る基である。このシラノール基の脱水縮合によりシロキサン結合が形成される。このようなXとしては、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アシロキシ基またはハロゲン原子等が例示される。上記「アルコキシ基」としては炭素原子数1〜5の低級アルコキシ基が好ましく、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基およびtert−ブトキシ基が挙げられる。また、上記「シクロアルコキシ基」の例としてはシクロヘキシルオキシ基が、「アリールオキシ基」の例としてはフェニルオキシ基が挙げられる。上記「アシロキシ基」の例としてはアセチルオキシ基(−OCOCH3)が、上記「ハロゲン原子」の例としては塩素原子が挙げられる。このうち、di−Rf化合物の取扱性がよく、かつ加水分解性が良好であることから、Xが炭素数1〜3のアルコキシ基であることが好ましく、Xがメトキシ基であることが特に好ましい。
なお、一般式(2)で示す化合物は一分子中に複数個のXを有するが、これらは全て同じ基でもよく二種以上の異なる基でもよい。
【0046】
上記一般式(1)および(2)における「R1」は水素原子または低級アルキル基である。この「低級アルキル基」としては炭素原子1〜5のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基およびtert−ブチル基等が挙げられ、このうちメチル基が好ましい。本発明の架橋ポリシロキサンにおいては、耐熱性および/または撥水撥油性等の観点から、R1が水素原子であることが特に好ましい。
【0047】
次に、上記一般式(1)および(2)におけるaにつき説明する。
上記一般式(1)におけるaが1である架橋ポリシロキサンは、ケイ素原子に直結した炭素原子に二つのRfが(直接、またはアルキル鎖を介して間接的に)結合した構造部分を有する。このような構造部分は、ケイ素原子に直結した炭素原子に単一のRfが(直接または間接的に)結合した例えば下記式(16)に示す構造部分に比べてRf基の濃度が高いことから、より優れた撥水撥油性を示す。したがって、上記一般式(1)に示す構造部分を有する本発明の架橋ポリシロキサンや、この架橋シロキサンを含有する被膜等は、優れた撥水撥油性を発揮することができる。
【0048】
【化23】
Figure 0003683524
【0049】
また、上記一般式(2)におけるaが1であるdi−Rf化合物は、ケイ素原子に直結した炭素原子(アルキル鎖を構成する炭素原子)に二つのRfが結合した化合物である。このようなdi−Rf化合物を使用することにより、この化合物に代えて下記一般式(17)に示す化合物(ケイ素原子に直結した炭素原子に単一のRfが結合した化合物)を等モル使用した場合に比べて、Rf基の濃度の高い架橋ポリシロキサンを得ることができる。このdi−Rf化合物を加水分解縮合反応させて得られた本発明の架橋ポリシロキサンは、上記一般式(1)におけるaが1である構造部分を有するものとなる。
【0050】
【化24】
Figure 0003683524
【0051】
一方、上記一般式(1)におけるaが2以上である本発明の架橋ポリシロキサンは、例えば下記式(18)に示すように架橋密度の高い構造をとり得る。このため、優れた耐熱性を発揮することができる。なお、下記式(18)は、aが2である構造部分の一例を示すものであって、本発明の架橋ポリシロキサンの結合構造をこれに限定するものではない。
【0052】
【化25】
Figure 0003683524
【0053】
また、上記一般式(2)におけるaが2以上であるdi−Rf化合物は、一分子中に複数の−Si(X)3基を有する。そして、これらの−Si(X)3基は分子内において互いに近接して(メチレン基を介して隣接する炭素原子に結合して)位置している。さらに、このような化合物は、例えば上記一般式(17)に示す化合物に比べて分子量が高い。かかるdi−Rf化合物を使用した加水分解縮合反応により得られた本発明の架橋ポリシロキサンは、例えばこのdi−Rf化合物に代えて上記一般式(17)に示す化合物を等モル使用した場合に比べてネットワーク構造がよく発達した(例えば、架橋密度および/または分子量の高い)ものとなり得る。このため、優れた耐熱性を示すことができる。
【0054】
なお、aの値が6よりも大きすぎると、di−Rf化合物の各種溶媒に対する溶解性が低下する傾向となる。このため、加水分解縮合反応に使用する反応溶媒の選択幅が狭くなる。また、di−Rf化合物の入手容易性や製造容易性を考慮すると、上記一般式(2)におけるaは2〜4の整数であることが好ましく、2または3であることが特に好ましい。
また、di−Rf化合物の分子量は特に制限されないが、加水分解縮合時における反応溶媒への溶解性、di−Rf化合物の入手容易性や製造容易性、得られる架橋ポリシロキサンの撥水撥油性および/または耐熱性等を考慮すると、通常は340〜6000の範囲が好ましく、500〜4000の範囲がより好ましい。
【0055】
上記一般式(2)に示すdi−Rf化合物は、例えば下記一般式(19)で示される特定の過酸化フルオロアルカノイルと、下記一般式(20)で示される特定のビニルシラン類とを、適当な溶媒(ハロゲン化脂肪族炭化水素等)中で反応させることにより製造することができる。ここで、一般式(19)および(20)におけるRfおよびXは、製造しようとするdi−Rf化合物の有するRfおよびXに対応した基である。この反応により、一般式(20)に示すビニルシラン類またはそのオリゴマーのアルキル鎖の両端にRf基が導入された化合物が得られる。一般式(2)におけるaは、このビニルシラン類の重合度に相当する値となる。
【0056】
【化26】
Figure 0003683524
【0057】
【化27】
Figure 0003683524
【0058】
本発明の架橋ポリシロキサンは、ポリシロキサンを生成させるための加水分解縮合反応を行う工程において、少なくともdi−Rf化合物を使用することにより製造することができる。このdi−Rf化合物としては、上記一般式(2)で示される化合物のうち一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。二種以上のdi−Rf化合物を使用する場合には、使用するdi−Rf化合物の種類およびモル比から求めた平均のaの値が1.2〜6の範囲にあることが好ましく、1.5〜3の範囲にあることがより好ましい。また、使用されたdi−Rf化合物の種類およびモル比から求めた平均分子量が400〜4000の範囲にあることが好ましく、500〜2500の範囲にあることがより好ましい。この平均分子量は、例えばゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量として求めることができる。
【0059】
上記ポリシロキサンを生成させるための加水分解縮合反応を行う工程においては、上記di−Rf化合物に加えて、このdi−Rf化合物と共縮合可能な他の化合物を使用することができる。上記「他の化合物」の例としては、一分子中に少なくとも一個(好ましくは二個以上、より好ましくは三個以上、さらに好ましくは四個以上)の加水分解性基を有するシラン化合物等が挙げられる。このようなシラン化合物としては、上記一般式(2)においてaが7以上である化合物、一般式(2)においてRf基の一方または両方が水素原子に置換された構造の化合物、上記一般式(2)におけるXの一部が水素原子または低級アルキル基に置換された下記一般式(2’)に示す化合物、上記一般式(3)で示される化合物、上記一般式(3)においてbが2または3である化合物等が挙げられる。
【0060】
【化28】
Figure 0003683524
【0061】
このうち、上記他の化合物としては、上記一般式(3)で示される化合物(以下、シランモノマーともいう。)が特に好ましく用いられる。上記di−Rf化合物および上記シランモノマーを併用して得られた本発明の架橋ポリシロキサンは、未反応の加水分解性基および/またはシラノール基の残存量が少ないものとなりやすい。したがって、架橋密度および/または分子量が高く、これにより高い耐熱性を発揮することができる。
【0062】
上記一般式(3)におけるYとしては、前述した加水分解性基Xと同様のもの等を使用することができる。このうち、シランモノマーの取扱性がよく、かつ加水分解性が良好であることから、Yとしては炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましく、入手容易性の点からエトキシ基が特に好ましい。
なお、上記一般式(3)で示すシランモノマーの一分子中に含まれる複数個のYは、全て同じ基であってもよく、二種以上の異なる基であってもよい。このシランモノマーの製造容易性の点からは、一分子中に含まれるYの全てが同じ基であることが好ましい。
【0063】
上記一般式(3)における「R2」は低級アルキル基である。この「低級アルキル基」としては炭素原子1〜5のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基およびtert−ブチル基等が挙げられ、このうちメチル基が好ましい。
上記一般式(3)におけるbは0または1であり、bが0である(すなわち4官能の)シランモノマーが特に好ましく使用される。このようなシランモノマーとdi−Rf化合物とを併用した加水分解共縮合反応によると、ネットワーク構造のよく発達した(例えば、架橋密度および/または分子量が十分に高い)架橋ポリシロキサンが形成される。このような架橋ポリシロキサンは特に高い耐熱性を発揮することができる。
【0064】
本発明の架橋ポリシロキサンの製造に好ましく使用されるシランモノマーを以下に例示する。
(1)bが0である(4官能の)シランモノマー
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシランおよびテトラクロロシラン等。このうち、テトラエトキシシランが特に好ましい。
(2)bが1である(3官能の)シランモノマー
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシランおよびn−ペンチルトリエトキシシラン等。
【0065】
本発明の架橋ポリシロキサンを形成するための加水分解共縮合反応における、di−Rf化合物とシランモノマーとの好ましい使用割合は、di−Rf化合物/シランモノマーの重量比が95/5〜25/75となる範囲であり、より好ましくは90/10〜50/50の範囲である。また、di−Rf化合物/シランモノマーのモル比が80/20〜3/97となる範囲が好ましく、50/50〜5/95となる範囲がより好ましい。
di−Rf化合物とシランモノマーとの合計量に占めるシランモノマーの割合が少なすぎると、得られた架橋ポリシロキサンにおいて、シランモノマーを併用する効果(すなわち、ネットワークを発達させる効果およびそれによる耐熱性の向上効果等)が十分に発揮されない場合がある。一方、di−Rf化合物とシランモノマーとの合計量に占めるdi−Rf化合物の使用割合が少なすぎると、得られた架橋ポリシロキサンの撥水撥油性が低下する傾向にある。
【0066】
また、本発明の架橋ポリシロキサンは、ポリシロキサンを生成させるための加水分解縮合反応を行う工程において使用される化合物(加水分解縮合反応によりシロキサン結合を形成し得る化合物;以下、「モノマー類」ともいう。)の全体重量のうち、di−Rf化合物とシランモノマーとの合計量が80wt%以上を占めることが好ましく、90wt%以上を占めることがより好ましく、95%以上を占めることがさらに好ましい。
【0067】
さらに、本発明の架橋ポリシロキサンは、TG−DTA測定における到達重量(800℃まで昇温した後に残存した試料重量をいう。)が、この試料の初期重量の5〜85%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは10〜70%である。この到達重量は、架橋ポリシロキサンに含まれるシリカ成分の比率を知る目安とすることができる。初期重量に対する到達重量の割合が低すぎる架橋ポリシロキサンは、ネットワークが十分に発達していないためシリカ成分の割合が少なく、耐熱性の低いものとなるおそれがある。一方、初期重量に対する到達重量の割合が高すぎる架橋ポリシロキサンは、有機系成分が少ないため撥水撥油性の低いものとなるおそれがある。
【0068】
次に、本発明の架橋ポリシロキサンを生成させるための加水分解縮合反応について説明する。この反応は、適当な溶媒中において、酸触媒または塩基触媒ならびに水の存在下で進行させることができる。
【0069】
上記「溶媒」は特に限定されず、上記モノマー類の良溶媒であって、これらを反応媒体中に均一に分散させ、混合させることができる有機溶媒等を用いることができる。この有機溶媒としては、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類およびエステル類などが挙げられる。これらのうち一種のみを使用してもよいし、均一に混合し得る二種以上を併用してもよい。
上記アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテルおよびエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。上記エーテル類としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキサン等が挙げられる。また、上記ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびイソホロン等が挙げられる。上記エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルおよび酢酸プロピル等が挙げられる。
その他、トリクロロトリフルオロエタン、トリクロロエタン、塩化メチレンおよびクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、さらにはトリエチルアミン、ピリジンおよびルチジン等のアミン類、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等の有機溶媒も使用可能である。なお、アミン系溶媒は、後述する塩基触媒と有機溶媒との両方として機能しうる。
【0070】
上記「酸触媒」としては、有機酸および無機酸から選択される一種または二種以上を使用することができる。このうち、加水分解縮合反応の進行が早く、かつ高架橋密度および/または高分子量の架橋ポリシロキサンが得られやすいことから、酸触媒として強酸を使用することが好ましい。例えば、pKaが約1.5以下である有機酸および/または無機酸が好ましく用いられる。
好ましい酸触媒の具体例としては、2−アミノエチルホスホン酸、イノシン酸、2−グリセリンリン酸、D−グルコース−1−リン酸、ジクロロ酢酸、シュウ酸、トリクロロ酢酸、o−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、ニトロ酢酸、ピクリン酸、ピコリン酸(2−ピリジンカルボン酸)、2,2’−ビピリジン、ピラジン、トリフルオロ酢酸、トリフロロメチルスルホン酸等の有機強酸;
過塩素酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸などの無機強酸;
が挙げられる。
【0071】
一方、上記「塩基触媒」としては、金属水酸化物類、アミン化合物類および四級アンモニウム塩水酸化物類等から選択される一種または二種以上を使用することができる。上記金属水酸化物類の例としては、KOH,NaOH,LiOH等のアルカリ金属水酸化物;Ca(OH)2 ,Ba(OH)2 等のアルカリ土類金属水酸化物等が挙げられる。上記アミン化合物類としては第三級アミンを用いることが好ましく、水酸化アンモニウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジン等を使用することができる。上記四級アンモニウム塩水酸化物類の例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム,水酸化テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。
【0072】
本発明の架橋ポリシロキサンは、上記モノマー類を酸触媒(より好ましくは強酸)の存在下で加水分解縮合させて得られたものであることが好ましい。このような条件で得られた本発明の架橋ポリシロキサンは、高架橋密度および/または高分子量であるため耐熱性が特に良好である。この酸触媒は、加水分解反応系において酸/水の重量割合が0.3以上(より好ましくは0.4以上)となるような量比で使用されることが好ましい。また、加水分解縮合時における系内のpHは2以下とすることが好ましい。このような条件で加水分解縮合反応を行って得られた架橋ポリシロキサンは、さらに高い耐熱性を有するものとなり得る。
上記加水分解反応を進行させる際の反応温度は、例えば0〜150℃の範囲とすることができ、10〜100℃の範囲が好ましく、20〜80℃の範囲がより好ましく、30〜60℃の範囲がさらに好ましい。好ましい反応時間は、反応温度によっても異なるが、通常は12時間以上であり、好ましくは36時間以上、より好ましくは100時間以上である。
【0073】
この加水分解縮合反応系における上記モノマー類の濃度は、例えば上記溶媒の重量に対して0.01wt%以上とすることができ、好ましくは0.05wt%以上である。モノマー類の濃度が低すぎる場合には、加水分解縮合反応を十分に進行させるために長時間を要する。また、この加水分解縮合反応を攪拌下で実施する場合や、形成された架橋ポリシロキサンをさらに精製する場合等には、操作性および反応制御容易性の点から、反応系におけるモノマー類の濃度を25wt%以下とすることが好ましく、10wt%以下とすることがより好ましい。一方、後述するように被処理物品表面等において架橋ポリシロキサンを形成させる場合には、モノマー類の濃度の上限は特に限定されない。
【0074】
加水分解縮合反応を実施する際の具体的な操作方法としては、例えば上記モノマー類を有機溶媒に溶解させて得られた溶液に触媒(酸触媒または塩基触媒)水溶液を一度にあるいは徐々に添加する方法、上記モノマー類の有機溶媒溶液に触媒と水とを別々に、それぞれ一度にあるいは徐々に添加する方法等が挙げられる。この加水分解反応は、系を攪拌しつつ進行させることが好ましい。通常は、加水分解縮合反応が進行して上記モノマー類の重縮合度が上がるにつれて、この重縮合物が有機溶媒から次第に析出する。反応終了後、反応液から析出物(重縮合物)を分離し、必要に応じて洗浄、乾燥等の処理を行って本発明の架橋ポリシロキサンを得る。
さらに、予め上記モノマー類の一種または二種以上を部分的に加水分解縮合させたオリゴマーを作製し、このオリゴマーをさらに加水分解縮合させて本発明の架橋ポリシロキサンを形成させることもできる。このような場合、オリゴマーの平均重縮合度は1.5〜5程度とすることが好ましい。オリゴマーの平均重縮合度が大きすぎると溶媒への溶解性が低下するため、加水分解縮合反応に使用する反応溶媒の選択幅が狭くなる。
【0075】
本発明の架橋ポリシロキサンは、その形成に使用されたモノマー類が有していた加水分解性基のうち75個数%以上が縮合されていることが好ましく、90個数%以上が縮合されていることがより好ましく、加水分解性基の実質的に全てが縮合されていることがさらに好ましい。残存する加水分解性基の割合が多すぎる架橋ポリシロキサンでは、耐熱性を十分に高められない場合がある。
なお、「加水分解性基の実質的に全てが縮合されている」ことは、例えば、得られた架橋ポリシロキサンのTG−DTA測定における発熱ピークが一つであることから推察できる。また、得られた架橋ポリシロキサンのIRチャートにおいて加水分解性基に基づく吸収が観察されないことによって確認することもできる。さらに、蛍光X線分析法によりこの架橋ポリシロキサンに含まれる元素の量比を測定することによって確認することも可能である。
【0076】
ポリシロキサンを生成させるための加水分解縮合反応を行う工程において、上記di−Rf化合物のみを使用して得られた本発明の架橋ポリシロキサンは、下記一般式(21)により表すことができる。また、上記di−Rf化合物および上記シランモノマーを使用して得られた本発明の架橋ポリシロキサンは、下記一般式(22)により表すことができる。
【0077】
【化29】
Figure 0003683524
【0078】
【化30】
Figure 0003683524
【0079】
本発明の架橋ポリシロキサンは、フルオロアルキル基を有することから撥水撥油性に優れるので、例えば各種物品に撥水撥油性を付与する用途等に好適である。被処理物品に撥水撥油性を付与することにより、この物品に水性または油性の汚れ等が付着することを抑制し、あるいは付着物の除去を容易にすることができる。また、加熱調理に用いられる器具(例えば焼き網、ホットプレート内壁)に撥水撥油性を付与することによって、食品の焦げ付きや型くずれを防止または抑制することができる。
このうち、撥水撥油性とともに耐熱性が要求される用途においては、本発明の架橋ポリシロキサンのもつ特長が特によく発揮される。また、従来ポリテトラフルオロエチレンにより撥水撥油性等を付与していた用途において本発明の架橋ポリシロキサンを用いることにより、このポリテトラフルオロエチレンと同等以上の耐熱性を有する撥水撥油性被膜を備えた物品等を製造することができる。さらに、通常この架橋ポリシロキサンは透明性を有するし、かつ低屈折率であるので、窓材として用いられるガラスに撥水撥油性を付与する目的等にも利用することができる。したがって本発明によると、上述した本発明の架橋ポリシロキサンのいずれかを含むことを特徴とする耐熱性および/または撥水撥油性被膜(以下、耐熱性/撥水撥油性被膜という。)、この被膜を形成するための材料、およびこの材料により加工された物品を製造することができる。
【0080】
本発明の架橋ポリシロキサンを用いて撥水撥油性を付与するのに好ましい物品、すなわち本発明によって製造し得る耐熱性/撥水撥油性被膜付物品を以下に例示する。
(1)調理器具類
テーブルコンロ、オーブンレンジ、電子レンジ、焼き物器、電磁調理器、オーブントースター、ロースター、電気オーブン、ガスオーブン等における天板、外板、焼き網、水入れ皿、汁受け皿、内壁および前面パネル窓材用ガラス等;
炊飯器、コーヒーメーカー、ポット、ホットプレート、たこ焼き器等の内壁および外壁等;
ミキサー、ジューサー、スピードカッター等の攪拌容器、コーヒーメーカーのデカンター、グリルパン等に用いられるガラス等。
(2)熱機器類
給湯器、風呂釜等の熱交換器および燃焼室;
排気ダクト、浴槽、温水器等の壁面;
熱帯魚等の鑑賞魚用水槽およびそのヒーター表面、ヘアドライヤー、煙突、自動車のマフラー、温水、熱水、熱油等の配管部材表面等。
(3)食器類
茶碗、湯のみ、コップ、どんぶり、箸、鍋、フライパン、やかん等。
【0081】
図2を用いて、テーブルコンロのうち、本発明の架橋ポリシロキサンにより撥水撥油性を付与することのできる好ましい部位を説明する。すなわち、本発明の架橋ポリシロキサンによると、テーブルコンロ1の天板(トッププレート)11、外板12、バーナー用汁受け皿13、器具栓つまみ14、グリルとびら取っ手15、グリルとびら用窓材ガラス16、グリル焼き網17、グリル水入れ皿18、グリル内壁19、グリル排気口内壁20、グリル排気口カバー21等に撥水撥油性被膜を形成することができる。換言すれば、本発明によると、かかる耐熱性/撥水撥油性被膜を有する上記天板等の部材や、そのような部材を含む調理器具等を製造し、提供することができる。
【0082】
本発明の架橋ポリシロキサンを用いてこれら物品(被処理物品)の表面に撥水撥油性を付与した撥水撥油性被膜付物品を製造する代表的な方法としては、下記(I)および(II)の方法が挙げられる。
(I)本発明の架橋ポリシロキサンを媒体に分散させた液状組成物(材料)を調製し、この組成物を被処理物品に塗布した後、塗布物を硬化させて耐熱性/撥水撥油性被膜を形成する方法。
(II)上記モノマー類を被処理物品の表面に塗布し、この被処理物品表面において上記モノマー類の加水分解縮合反応を進行させて、本発明の架橋ポリシロキサンを主成分とする被膜を形成させる方法。
【0083】
上記(I)の方法についてさらに詳しく説明する。
上記架橋ポリシロキサンを分散させる「媒体」としては、従来公知の各種コーティング剤組成物等を用いることができる。例えば、有機溶媒に樹脂成分を溶解させた溶剤型コーティング剤組成物、樹脂成分からなる粒子を水性溶媒に分散させたエマルジョン型コーティング剤組成物等が挙げられる。上記樹脂成分としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれも使用可能であるが、耐熱性に優れるという本発明の架橋ポリシロキサンの特性を生かすためには熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。また、高エネルギー線(可視光、紫外線、電子線等)、熱または水分等により硬化可能な樹脂前駆体(モノマー、オリゴマー、中間反応物等)等からなる無溶媒型コーティング剤組成物を媒体に用いてもよい。
このような媒体に本発明の架橋ポリシロキサンを添加混合することにより上記液状組成物を調製することができる。通常は、本発明の架橋ポリシロキサンを粉状(好ましくは微粉末状)として用いることが好ましい。被加工物品の表面に液状組成物を塗布する方法としては、従来公知のスプレー法、刷毛塗り法、ディッピング法、バーコート法等を用いればよい。その後、必要に応じて塗布物から有機溶媒または水性溶媒を除去する(乾燥等)ことにより、あるいは塗布物に高エネルギー線、熱または水分等を供給することにより、この塗布物を硬化させて撥水撥油性被膜を形成することができる。
【0084】
上記媒体に本発明の架橋ポリシロキサンを添加した液状組成物(材料)によると、優れた撥水撥油性を有する被膜を形成することができる。また、単独使用によっても撥水撥油性被膜を形成し得る媒体に対して本発明の架橋ポリシロキサンを添加した場合には、この媒体のみを用いた場合に比べて、さらに撥水撥油性の高い被膜を形成することができる。
本発明の架橋ポリシロキサンは、最終的に形成される被膜の5wt%以上を占める割合で使用されることが好ましく、より好ましくは10〜95wt%、さらに好ましくは20〜90wt%である。被膜重量に占める架橋ポリシロキサンの割合が5wt%よりも少なすぎる場合には、この被膜に撥水撥油性を付与する効果、あるいは撥水撥油性を向上させる効果が少なくなる。一方、被膜に含まれる架橋ポリシロキサンの割合が多すぎると、被膜の成膜性や被処理物品への密着性等が低下する場合がある。
【0085】
上記(I)の方法により、撥水撥油性被膜を備えたテーブルコンロ天板を製造する方法の一例を以下に示す。
(1a)熱硬化性樹脂(メラミン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等)を主体とする溶剤型コーティング剤組成物に架橋ポリシロキサン粉末を添加混合して液状組成物を調製する。
(1b)上記(1a)で得られた液状組成物をテーブルコンロのトッププレートに塗布し、加熱乾燥等により溶剤を除去して、本発明の架橋ポリシロキサンを含む撥水撥油性被膜を形成する。このようにしてテーブルコンロ天板が製造される。
【0086】
次に、上記(II)の方法についてさらに詳しく説明する。
この方法において、被処理物品の表面にモノマー類を塗布するにあたっては、上記モノマー類を含有する液状組成物を調製し、この液状組成物を被処理物品に塗布すればよい。例えば、上記モノマー類および触媒を含み、さらにこれらを溶解可能な有機溶媒を含む液状組成物(材料)を調製し、この液状組成物を被処理物品に塗布する。塗布後、必要に応じて塗布物から有機溶媒等を除去するための加熱乾燥を行った後、好ましくは加熱条件下において塗布物中のモノマー類を加水分解縮合させることにより、被処理物品の表面に本発明の架橋ポリシロキサンからなる撥水撥油性被膜を形成することができる。なお、モノマー類の加水分解縮合に必要な水は、上記液状組成物に含有させておくことができる。また、液状組成物には水を(少なくとも意図的には)含有させず、大気中から塗膜に供給される水分等を利用してモノマー類の加水分解縮合反応を進行させることも可能である。
【0087】
また、上記(II)の方法は、被処理物品にモノマー類を塗布した後、被処理物品上のモノマー類に触媒(好ましくは酸触媒)を接触させることによっても好ましく実施することができる。例えば、モノマー類を有機溶媒に溶解させた液状組成物を調製し、この液状組成物を被処理物品に塗布する。この塗布物から加熱乾燥等により有機溶媒を除去した後、これを酸触媒の水溶液に浸漬して塗布物中のモノマー類の加水分解反応を進行させる。あるいは、塗布物から有機溶媒を除去した後に酸触媒の水溶液を塗布(例えばスプレー塗布)するか、または水分および揮発性酸を含む雰囲気に曝露することにより加水分解反応を進行させてもよい。これらの方法により加水分解反応を進行させた後、生成した重縮合物(架橋ポリシロキサン)を加熱する(例えば200〜300℃で0.5〜3時間)工程をさらに実施してもよい。
【0088】
ここで、被処理物品に塗布される液状組成物(少なくともモノマー類および有機溶媒を含有する)に用いられる有機溶媒としては、(1).炭素原子数1〜4の一価アルコール40〜95wt%(より好ましくは50〜85wt%)と、(2).分子量当たり0.02個以上(分子量50当たり1個以上)の水酸基を有するとともに沸点が150℃以上である多価アルコール5〜60wt%(より好ましくは15〜50wt%)とを含有する有機溶媒が好ましい。特に、被処理物品の材質がガラスである場合(例えばグリルとびら用窓材ガラス)にはこのような有機溶媒が好ましく用いられる。
【0089】
有機溶媒として前記(1).成分および前記(2).成分を含有する液状組成物(コーティング用組成物)を用いることにより、有機溶媒として前記(1).成分のみを含有する液状組成物等に比べて被処理物品(特にガラス)表面への塗布性が向上する。例えば、塗布物が被処理物品に対してはじかれたり、塗布物の膜厚がバラついたりすること(塗布ムラ)が抑制される。前記(2).成分は、一分子当たりの水酸基数および分子量当たりの水酸基数が多く、被処理物品(特にガラス)に対する濡れ性が良好である。また、有機溶媒として前記(1).成分に加えて前記(2).成分を用いることにより、液状組成物の粘度(粘性率)が高くなる。このことによって塗布物の保形性が向上する。例えば、振動等に対する抵抗が大きくなることから、塗布物が不均一になりにくくなる。さらに、前記(2).成分は前記(1).成分に比べて蒸発速度が遅いので、この(2).成分を添加することにより、被処理物品上に塗布された液状組成物をゆっくりと(例えば室温で)乾燥させることができる。このことによって塗布物の乾燥ムラが抑制される。これらの要因によって均一な塗膜を形成しやすくなる。
【0090】
前記(1).成分の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールが挙げられる。これらのうち一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。エタノール、n−プロピルアルコールおよびイソプロピルアルコールから選択される一種または二種以上を用いることが特に好ましい。
前記(2).成分の具体例としては、エチレングリコール、グリセリン、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等が挙げられる。これらのうち一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。エチレングリコールおよび/またはグリセリンが特に好ましく使用される。
なお、各種有機溶媒の分子量当たりの水酸基数および沸点等の特性値を、多価アルコールについては下記表1に、一価アルコールについては下記表2に示す。
【0091】
【表1】
Figure 0003683524
【0092】
【表2】
Figure 0003683524
【0093】
液状組成物(コーティング用組成物)に含有される前記(1).成分と前記(2).成分との割合は、(1).成分/(2).成分=40/60〜95/5(より好ましくは50/50〜85/15)の範囲が好ましい。前記(2).成分の割合が少なすぎると十分な添加効果が得られない場合がある。一方、前記(2).成分の割合が多すぎると組成物および/または得られる架橋ポリシロキサンが白濁する場合がある。前記(1).成分と前記(2).成分との含有割合の好ましい範囲は前記(2).成分の種類によっても異なる。例えば、前記(2).成分がエチレングリコールである場合には(1).成分/(2).成分=75/25〜50/50の範囲が特に好ましい。前記(2).成分がグリセリンである場合には(1).成分/(2).成分=85/15〜70/30の範囲が特に好ましい。
【0094】
特に限定するものではないが、この液状組成物におけるモノマー類の濃度は例えば50wt%以下とすることができ、好ましくは25wt%以下、より好ましくは10wt%以下である。また、被処理物品への塗布性の観点からは、この液状組成物の20℃における粘度が2.5〜15mPa・s(より好ましくは3〜7.5mPa・s)程度であることが好ましい。特に、被処理物品に液状組成物をディッピングにより塗布する場合には上記範囲の粘度とすることが好ましい。この粘度は、例えば振動式粘度計(山一電機工業株式会社製の振動式粘度計、型式「VM−1A−L」等)により測定することができる。
この液状組成物(コーティング用組成物)は、加水分解縮合反応を促進する触媒(酸触媒または塩基触媒)を実質的に含有しないことが好ましい。このような液状組成物は保存安定性に優れる。
【0095】
なお、モノマー類を被処理物品に塗布するための液状組成物に用いられる他の好ましい有機溶媒としては、(3).テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサン、アセトン、塩化メチレン、クロロホルム、CF3CF2CHCl2とCClF2CF2CHClFの混合物(旭硝子株式会社製の商標「アサヒクリンAK225」等)から選択される一種または二種以上が挙げられる。また、前記(3).成分と前記(2).成分との混合溶媒(前記(1).成分に代えて前記(3).成分を用いた混合溶媒)や、前記(1).成分と前記(3).成分との混合溶媒を用いることもできる。
【0096】
上記(II)の方法により、撥水撥油性被膜を備えたテーブルコンロのグリルとびら用窓材ガラスを製造する方法の一例を以下に示す。
(2a)モノマー類の有機溶媒溶液に酸触媒および水を添加混合した液状組成物を調製する。この液状組成物を直ちにグリルとびら用窓材ガラスに塗布し、加熱乾燥等により溶剤を除去する。
(2b)その後、加水分解反応が十分に進行するまで(例えば5日間以上)40℃程度の雰囲気下に静置する。このようにしてテーブルコンロのグリルとびら用窓材ガラスが製造される。
【0097】
上記(II)の方法により、撥水撥油性被膜を備えたテーブルコンロのグリルとびら用窓材ガラスを製造する方法の他の例を以下に示す。
(3a)モノマー類を有機溶媒に溶解させた液状組成物を調製する。この液状組成物をグリルとびら用窓材ガラスに塗布し、加熱乾燥等により有機溶媒を除去する。
(3b)その後、モノマー類が塗布されたグリルとびら用窓材ガラスを酸触媒の水溶液に浸漬し、加水分解反応が十分に進行するまで(例えば60℃で2日間以上)静置する。このようにしてテーブルコンロのグリルとびら用窓材ガラスが製造される。
【0098】
上記(I)の方法によると、従来のコーティング剤組成物等(媒体)に本発明の架橋ポリシロキサンを添加するという簡単な方法により耐熱性/撥水撥油性被膜形成用の組成物を調製し、この組成物を用いて耐熱性/撥水撥油性被膜の付与された各種物品を製造することができる。また、媒体の選択によって、得られる耐熱性/撥水撥油性被膜の性質(例えば成膜性、被処理物品への密着性、可撓性)等を調整することができる。
【0099】
一方、上記(II)の方法によると、実質的に本発明の架橋ポリシロキサンのみからなる被膜が形成されるので、耐熱性および撥水撥油性に優れた被膜およびこの被膜を備えた物品を製造することができる。この方法によると、例えば、300℃以上(より好ましくは350℃以上)の高温に1時間曝された後においても、下記方法により測定される転落角が45°以下(より好ましくは30°以下)である被膜を形成することができる。
[転落角測定方法]
基板上に形成された被膜上の一箇所に0.05mlの水滴を垂らし、基板を傾けてその水滴が転落し始める角度(転落角)を測定する。測定は5回以上繰り返して行い、その平均値を算出する。
【0100】
なお、本発明の架橋ポリシロキサンを用いて耐熱性/撥水撥油性被膜およびこの被膜を備えた耐熱性/撥水撥油性被膜付物品を製造する方法の他の例としては、無機化合物粉末(例えば低融点ガラス等からなる粉末)を主体とするペーストに、本発明の架橋ポリシロキサンからなる粉末を添加して混練し、この混練物(材料)を被処理物品の表面に塗布し、必要に応じて乾燥させた後に焼成する方法が挙げられる。
【0101】
【実施例】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0102】
<実施例1:本発明の架橋ポリシロキサンの作製および評価(1)>
di−Rf化合物として下記式(23)に示す化合物を、シランモノマーとしてテトラエトキシシランを、有機溶媒としてエタノールを、酸触媒として硫酸を用いて本発明の架橋ポリシロキサンを作製した。di−Rf化合物とシランモノマーとの使用割合は、モル比にして約20/80である。
すなわち、テトラエトキシシラン0.5gをエタノール40gに溶解させた溶液を、di−Rf化合物0.5gに添加してマグネチックスターラーにて約5分間攪拌した。その後、50%硫酸水溶液10g(酸/水の重量比=0.5)を加え、40℃で7日間攪拌を続けることにより加水分解縮合反応を進行させた。この間、反応容器の壁面に析出した重縮合物は剥ぎ取って反応液中に戻した。反応終了後、反応液中に浮遊したゲル(重縮合物)を濾過して水洗した。さらに10-2torrで真空乾燥を行った後、120℃の乾燥機にて乾燥させ、これを乳鉢で粉砕して粉末状の架橋ポリシロキサンを得た。
【0103】
【化31】
Figure 0003683524
【0104】
【化32】
Figure 0003683524
【0105】
得られた架橋ポリシロキサン粉末につき、理学電機株式会社製、型式名「TG8101D」を用いてTG−DTA測定を実施した。この測定は、空気中において試料を室温(約25℃)から10℃/分の速度で昇温することにより行った。TG−DTA測定結果を図3に示す。なお、図3において左側の縦軸(試料重量)は、試料の初期重量を100%としたときの重量変化率を表す。
図3によれば、DTAにおいて450℃付近に非常に大きな発熱ピークが現れている。したがって、この温度域までは架橋ポリシロキサンの分解が実質的に起こらず、撥水撥油性能が維持されるものと推察される。また、TGにおいて300℃までの重量減少率(初期重量からの減少率)が7%程度と少ないことからも、この架橋ポリシロキサンが耐熱性に優れることが判る。さらに、DTAにおける主要な発熱ピークが上記の一本のみであることは、加水分解縮合反応がほぼ完結しており、十分にネットワークの発達した架橋ポリシロキサンが形成されていることを示すものと考えられる。
なお、TGにおいて試料の最終的な到達重量は初期重量の35%程度であった。後述する実施例7の到達重量(15%程度)に比べて到達重量の割合が高いのは、得られた架橋ポリシロキサンにおける無機系固体生成物(シリカ成分)の比率が実施例7により得られたものに比べて高いためと考えられる。
【0106】
本実施例により得られた架橋ポリシロキサンにつき、日本分光株式会社製、型式名「FT/IR−300」を用いてKBr錠剤法により測定したIRチャートおよびその吸収ピークの帰属を図4に示す。
さらに、この架橋ポリシロキサン粉末を圧縮成形した試料につき、理学電機株式会社製、型式名「RIX3100」を用いて蛍光X線分析を行った。この蛍光X線分析結果によれば、本実施例により得られた架橋ポリシロキサンは、C:18.5wt%、O:37.2wt%,F:22.7wt%、およびSi:21.5w%を含有するものであった。
【0107】
<実施例2:本発明の架橋ポリシロキサンの作製および評価(2)>
di−Rf化合物として下記式(24)に示す化合物を同重量(0.5g)用いた点以外は実施例1と同様に加水分解縮合反応、精製および粉砕を行って架橋ポリシロキサン粉末を得た。なお、di−Rf化合物とシランモノマーとの使用割合は、モル比にして約15/85である。
【0108】
【化33】
Figure 0003683524
【0109】
【化34】
Figure 0003683524
【0110】
得られた架橋ポリシロキサン粉末につき、実施例1と同様にTG−DTA測定を実施した。その結果、DTAにおいて450℃付近に非常に大きな発熱ピークが一本のみ現れていた。また、TGにおいて300℃までの重量減少率は6%程度と少なかった。以上より、実施例2により得られた架橋ポリシロキサンは、実施例1により得られたものと同様に加水分解縮合反応が十分に進行しており、耐熱性に優れるものであることが判る。なお、TGにおいて試料の最終的な到達重量は初期重量の35%程度であった。
【0111】
<実施例3:本発明の架橋ポリシロキサンの作製および評価(3)>
di−Rf化合物として下記式(25)に示す化合物を同重量(0.5g)用いた点以外は実施例1と同様に加水分解縮合反応、精製および粉砕を行って架橋ポリシロキサン粉末を得た。なお、di−Rf化合物とシランモノマーとの使用割合は、モル比にして約12/88である。
【0112】
【化35】
Figure 0003683524
【0113】
【化36】
Figure 0003683524
【0114】
得られた架橋ポリシロキサン粉末につき、実施例1と同様にTG−DTA測定を実施した。その結果、DTAにおいて450℃付近に非常に大きな発熱ピークが一本のみ現れていた。また、TGにおいて300℃までの重量減少率は6%程度と少なかった。以上より、実施例3により得られた架橋ポリシロキサンは、実施例1により得られたものと同様に加水分解縮合反応が十分に進行しており、耐熱性に優れるものであることが判る。なお、TGにおいて試料の最終的な到達重量は初期重量の35%程度であった。
【0115】
<実施例4:本発明の架橋ポリシロキサンの作製および評価(4)>
di−Rf化合物として下記式(26)に示す化合物を同重量(0.5g)用いた点以外は実施例1と同様に加水分解縮合反応、精製および粉砕を行って架橋ポリシロキサン粉末を得た。なお、di−Rf化合物とシランモノマーとの使用割合は、モル比にして約25/75である。
【0116】
【化37】
Figure 0003683524
【0117】
得られた架橋ポリシロキサン粉末につき、実施例1と同様にTG−DTA測定を実施した。その結果を図5に示す。
図5によれば、DTAにおいて380℃付近に非常に大きな発熱ピークが一本のみ現れている。また、TGにおいて300℃までの重量減少率は13%程度である。以上より、実施例4により得られた架橋ポリシロキサンは、実施例1により得られたものと同様に加水分解縮合反応が十分に進行していること、耐熱性が良好であることが判る。なお、TGにおいて試料の最終的な到達重量は初期重量の35%程度であった。
【0118】
<実施例5:本発明の架橋ポリシロキサンの作製および評価(5)>
di−Rf化合物として下記式(27)に示す化合物を同重量(0.5g)用いた点以外は実施例1と同様に加水分解縮合反応、精製および粉砕を行って架橋ポリシロキサン粉末を得た。なお、di−Rf化合物とシランモノマーとの使用割合は、モル比にして約18/82である。
【0119】
【化38】
Figure 0003683524
【0120】
得られた架橋ポリシロキサン粉末につき、実施例1と同様にTG−DTA測定を実施した。その結果、DTAにおいて380℃付近に非常に大きな発熱ピークが一本のみ現れていた。また、TGにおいて300℃までの重量減少率は7%程度であった。以上より、実施例5により得られた架橋ポリシロキサンは、実施例1により得られたものと同様に加水分解縮合反応が十分に進行していること、耐熱性が良好であることが判る。なお、TGにおいて試料の最終的な到達重量は初期重量の35%程度であった。
【0121】
<実施例6:本発明の架橋ポリシロキサンの作製および評価(6)>
酸触媒として、硫酸に代えて硝酸を用いた点以外は、実施例1と同様に加水分解縮合反応、精製および粉砕を行って架橋ポリシロキサン粉末を得た。なお、硝酸/水の重量比は0.5とした。
得られた架橋ポリシロキサン粉末につき、実施例1と同様にTG−DTA測定を実施した。その結果を図6に示す。
図6によれば、DTAにおいて450℃付近に非常に大きな発熱ピークが一本のみ現れている。実施例1と比較すると多少ブロードではあるが、加水分解縮合反応が十分に進行していることを示すものと考えられる。また、TGにおいて300℃までの重量減少率は10%程度と少なかった。以上より、実施例6により得られた架橋ポリシロキサンは耐熱性に優れるものであることが判る。なお、TGにおいて試料の最終的な到達重量は初期重量の35%程度であった。
【0122】
<実施例7:本発明の架橋ポリシロキサンの作製および評価(7)>
本実施例は、モノマー類としてdi−Rf化合物のみを用いて(シランモノマーを用いずに)架橋ポリシロキサンを作製した例である。すなわち、テトラエトキシシランのエタノール溶液に代えてエタノール40gを添加した点以外は、実施例1と同様に加水分解縮合反応、精製および粉砕を行って架橋ポリシロキサン粉末を得た。
得られた架橋ポリシロキサン粉末につき、実施例1と同様にTG−DTA測定を実施した。その結果を図7に示す。
図7によれば、DTAにおいて410℃付近および450℃付近に発熱ピークが現れている。この結果から、本実施例の架橋ポリシロキサンは、実施例1ほどには加水分解縮合反応が進行していないものと推察される。しかし、低温側の発熱ピークも400℃以上にあること、TGにおいて300℃までの重量減少率が5%程度と少ないことから、この架橋ポリシロキサンも実用上十分な耐熱性を示すことが判る。
なお、TGにおいて試料の最終的な到達重量は初期重量の15%程度であった。得られた架橋ポリシロキサンに占める無機系固体生成物(シリカ成分)の比率が、実施例1〜6により得られたものに比べて低いことが判る。
【0123】
<比較例1:Rf基をもたない架橋ポリシロキサンの作製および評価>
di−Rf化合物を使用しない点を除いては、実施例1と同様に加水分解縮合反応、精製および粉砕を行って架橋ポリシロキサン粉末を得た。すなわち、この架橋ポリシロキサンはテトラエトキシシランの加水分解縮合物であって、フルオロアルキル基をもたない。
得られた架橋ポリシロキサン粉末につき、実施例1と同様にTG−DTA測定を実施した。その結果を図8に示す。
図8によれば、DTAにおいて260℃付近および560℃付近に非常に小さな発熱ピークが現れている。これらは、この架橋ポリシロキサンに残留したアルキル基(エトキシ基を構成するエチル基)の分解に起因するものと考えられる。
一方、TGにおいて試料の最終的な到達重量は初期重量の93%程度であった。この架橋ポリシロキサンのほとんどがシリカ成分からなることが判る。
また、本比較例により得られた架橋ポリシロキサンにつき、実施例1と同様に測定したIRチャートを図9に示す。図4とは異なり図9ではフルオロアルキル基に基づく吸収がみられず、この架橋ポリシロキサンが実質的に非晶質シリカの構造を有することを裏付けている。
【0124】
なお、前述のように、従来の典型的なポリテトラフルオロシランの耐熱温度(撥水撥油性が失われる温度)は270℃程度以下である。また、特開2000−290287号公報の実施例に記載されたペルフルオロアルキル基を有する有機ケイ素化合物は、いずれもTG−DTA測定において275℃以下で急激な、あるいは段階的な重量減少を示している。すなわち、本発明の架橋ポリシロキサンは、これらの従来技術に比べて明らかに高い耐熱性を有するものである。
【0125】
<実施例8:架橋ポリシロキサン膜の作製(1)>
モノマー類として上記式(23)に示すdi−Rf化合物およびテトラエトキシシランを、有機溶媒としてイソプロピルアルコール(前記(1).成分に相当する。)とエチレングリコール(上記(2).成分に相当する)との混合溶媒を用いて、被処理物品としてのガラス基板(スライドガラス)上に本発明の架橋ポリシロキサン膜を作製した。
すなわち、上記式(23)に示すdi−Rf化合物1gおよびテトラエトキシシラン1gを、イソプロピルアルコール/エチレングリコール=60/40(重量比)の混合溶媒40mlに溶解させてコーティング用組成物を調製した。この組成物の粘度(山一電機工業株式会社製の振動式粘度計、型式「VM−1A−L」を用いて測定した。以下同じ。)は20℃において5mPa・sであった。この組成物にガラス基板をディップし、室温で乾燥させたところ、ガラス基板の表面に無色透明な膜が形成された。この膜が形成されたガラス基板を60℃に保持した50%硫酸水溶液に72時間浸漬した。硫酸水溶液からガラス基板を引き上げて水洗し、120℃の乾燥機で乾燥させた。その後、250℃の乾燥機にて0.5時間加熱した。これによりガラス基板に膜を焼き付けた。このようにして、ガラス基板上に架橋ポリシロキサン膜を作製した。得られた架橋ポリシロキサン膜は無色透明であり、ガラス基板の全体に均一に形成されていた。
【0126】
<実施例9:架橋ポリシロキサン膜の作製(2)>
有機溶媒としてイソプロピルアルコール/グリセリン=75/25(重量比)の混合溶媒を用いた点以外は実施例8と同様にしてコーティング用組成物を調製した。この組成物の粘度は20℃において5mPa・sであった。このコーティング組成物を用いて、実施例8と同様にガラス基板上に架橋ポリシロキサン膜を形成した。得られた架橋ポリシロキサン膜は無色透明であり、ガラス基板の全体に均一に形成されていた。
【0127】
<実施例10:架橋ポリシロキサン膜の作製(3)>
有機溶媒としてイソプロピルアルコール/エチレングリコール=90/10(重量比)の混合溶媒を用いた点以外は実施例8と同様にしてコーティング用組成物を調製した。この組成物の粘度は20℃において2.5mPa・sであった。この組成物にガラス基板をディップし、室温で乾燥させたところ、ガラス基板の表面に無色透明な膜が形成された。ただし、この膜は経時によりはじかれて基板上の一箇所に集まった。その後、実施例8と同様に加水分解縮合反応を進行させて架橋ポリシロキサン膜を形成した。得られた架橋ポリシロキサン膜は無色透明であり、ガラス基板の一箇所に集中して形成されていた。
なお、上記式(23)に示すdi−Rf化合物1gおよびテトラエトキシシラン1gをイソプロピルアルコールと多価アルコール(ここではエチレングリコールまたはグリセリン)との混合溶媒40mlに溶解させたコーティング組成物につき、その混合溶媒の組成比とコーティング組成物の粘度(20℃)との関係を図10に示す。
【0128】
<実施例11:架橋ポリシロキサン膜の作製(4)>
有機溶媒としてイソプロピルアルコール/エチレングリコール=40/60(重量比)の混合溶媒を用いた点以外は実施例8と同様にしてコーティング用組成物を調製した。得られた組成物は淡い白色を帯びており、その粘度は20℃において8mPa・sであった。この組成物にガラス基板をディップし、室温で乾燥させたところ、ガラス基板の表面に不透明白色の膜が形成された。その後、実施例8と同様に加水分解縮合反応を進行させてガラス基板の全体に架橋ポリシロキサン膜を形成した。得られた架橋ポリシロキサン膜は白色であり、その表面には粉末状の凹凸が観察された。
【0129】
<実施例12:架橋ポリシロキサン膜の評価>
実施例8、実施例9および実施例11で作製された架橋ポリシロキサン膜につき、その撥水性能の耐熱性を以下のようにして評価した。
ガラス基板上に形成された架橋ポリシロキサン膜に対して350℃で1時間の熱処理を行った。冷却後、0.05mlの水滴を架橋ポリシロキサン膜上の一箇所に垂らし、ガラス基板を傾けてその水滴が転落し始める角度(転落角)を測定した。測定は5回以上繰り返して行い、その平均値を算出した。測定結果を下記表3に示す。
【0130】
【表3】
Figure 0003683524
【0131】
表3に示すように、実施例8および実施例9で作製された架橋ポリシロキサン膜は、いずれも350℃で1時間の熱処理を行った後にも優れた撥水性能を示した。すなわち、これらの架橋ポリシロキサン膜は、その撥水性能の耐熱性が良好であった。
【0132】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の架橋ポリシロキサンは、フルオロアルキル基を有することから撥水撥油性を備え、また所定の高温域に至るまで実質的な分解が起こらないので、高温下あるいは高温耐久後においても安定した撥水撥油性を発揮することができる。すなわち耐熱性が良好である。このような架橋ポリシロキサンのうち上記一般式(1)に示す構造部分を有するものは、さらに撥水撥油性および/または耐熱性に優れる。
また、上記一般式(2)に示す化合物の加水分解縮合により得られた構造部分を有する本発明の架橋ポリシロキサンは、上記一般式(1)に示す構造部分を有することから優れた撥水撥油性および/または耐熱性を有する。上記一般式(2)に示す化合物と上記一般式(3)に示す化合物との加水分解共縮合により形成された本発明の架橋ポリシロキサンは、架橋密度および/または分子量が高いことから、さらに優れた耐熱性を示す。
本発明の架橋ポリシロキサンは、フルオロアルキル基を有することから撥水撥油性に優れるので、例えば各種物品に撥水撥油性を付与する目的等に利用することができる。特に、撥水撥油性とともに耐熱性をも要求される用途において好適に用いられる。すなわち本発明によると、上記架橋ポリシロキサンを含む耐熱性/撥水撥油性被膜、このような被膜を備えた調理器具やその構成部材、上記耐熱性/撥水撥油性被膜を形成するための材料、およびこの材料により加工された調理器具やその構成部材等を製造することができる。
【0133】
さらに、本発明の架橋ポリシロキサンは、上記耐熱性/撥水撥油性に加えて、一般にフルオロアルキル基が導入された有機ケイ素化合物においてみられる低屈折性、耐寒性、耐油性、電気絶縁性、離型性、耐薬品性等の優れた特性を発揮し得る。また前述のように、通常この架橋ポリシロキサンは透明性を有する。したがって本発明の架橋ポリシロキサンは、透明性を有しかつ低屈折性であるという特性を利用して、プラスチックファイバーのコーティング材もしくはクラッド材、TVのブラウン管や各種ディスプレイ装置(CRT、液晶、EL、プラズマ等)の表面に形成されて画質を向上させる低反射膜、窓材ガラスその他の各種基材の表面に形成される反射防止膜等の分野に対しても有用である。すなわち本発明によると、上述した本発明の架橋ポリシロキサンのいずれかを含むことを特徴とする低屈折性部材(被膜、成形品等)、このような部材を形成するための材料、およびこの材料により加工された低屈折性を備える物品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の架橋ポリシロキサンの構造の一例を示す模式図である。
【図2】 テーブルコンロのうち、本発明の架橋ポリシロキサンを利用して撥水撥油性を付与することのできる部位を示す斜視図である。
【図3】 実施例1により作製された架橋ポリシロキサンのTG−DTA測定結果を示すチャートである。
【図4】 実施例1により作製された架橋ポリシロキサンのIR測定結果を示すチャートである。
【図5】 実施例4により作製された架橋ポリシロキサンのTG−DTA測定結果を示すチャートである。
【図6】 実施例6により作製された架橋ポリシロキサンのTG−DTA測定結果を示すチャートである。
【図7】 実施例7により作製された架橋ポリシロキサンのTG−DTA測定結果を示すチャートである。
【図8】 比較例1により作製された架橋ポリシロキサンのTG−DTA測定結果を示すチャートである。
【図9】 比較例1により作製された架橋ポリシロキサンのIR測定結果を示すチャートである。
【図10】 有機溶媒の組成とコーティング組成物の粘度との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
1:テーブルコンロ
11:天板
16:グリルとびら用窓材ガラス

Claims (13)

  1. 以下の条件:
    TG−DTA測定における主発熱ピークが350℃以上にある;
    TG−DTA測定における到達重量(室温から10℃/分の速度で800℃まで昇温した後に残存した試料重量をいう。)が初期重量の10〜70%の範囲にある;および、
    下記一般式(1)で示される構造部分を有する;
    を満たす、フルオロアルキル基を有する架橋ポリシロキサン。
    Figure 0003683524
  2. 以下の条件:
    TG−DTA測定における主発熱ピークが350℃以上にある;
    TG−DTA測定における到達重量(室温から10℃/分の速度で800℃まで昇温した後に残存した試料重量をいう。)が初期重量の10〜70%の範囲にある;および、
    下記一般式(2)で示される化合物の加水分解縮合反応により得られた構造部分を有する;
    を満たす、フルオロアルキル基を有する架橋ポリシロキサン。
    Figure 0003683524
  3. 前記一般式(2)中のaが2〜4の整数である、請求項2に記載の架橋ポリシロキサン。
  4. 下記一般式(3)で示される化合物の加水分解縮合反応により得られた構造部分をさらに有する、請求項2または3に記載の架橋ポリシロキサン。
    Figure 0003683524
  5. 前記一般式(3)中のbが0である、請求項4に記載の架橋ポリシロキサン。
  6. 前記一般式(2)で表される化合物と前記一般式(3)で表される化合物とを酸触媒の 存在下に加水分解縮合させて成る、請求項4または5に記載の架橋ポリシロキサン。
  7. TG−DTA測定における主発熱ピークが350℃以上にあり、かつTG−DTA測定における到達重量(室温から10℃/分の速度で800℃まで昇温した後に残存した試料重量をいう。)が初期重量の10〜70%の範囲にある架橋ポリシロキサンを製造する方法であって、
    ポリシロキサンを生成させるための加水分解縮合反応を行う工程において、少なくとも下記一般式(2)で示される化合物および一般式SiY 4 (Yは加水分解性基である。)で示される化合物を含むモノマー類を、酸触媒の存在下で加水分解縮合させることを特徴とする、フルオロアルキル基を有する架橋ポリシロキサンの製造方法。
    Figure 0003683524
  8. 前記モノマー類は、前記一般式(2)で示される化合物と前記一般式SiY4で示される化合物とを50/50〜5/95のモル比で含有する、請求項に記載の方法。
  9. フルオロアルキル基を有する架橋ポリシロキサンを主成分とする架橋ポリシロキサン膜を作製するためのコーティング用組成物であって、
    下記一般式(2):
    Figure 0003683524
    で示される化合物;および、
    一般式SiY 4 (Yは加水分解性基である。)で示される化合物;
    を含むモノマー類と、
    有機溶媒とを含有するコーティング用組成物。
  10. 前記有機溶媒は、
    (1).炭素原子数1〜4の一価アルコール40〜95wt%と、
    (2).分子量当たり0.02個以上の水酸基を有するとともに沸点が150℃以上である多価アルコール5〜60wt%とを含有する請求項に記載のコーティング用組成物。
  11. 加水分解縮合反応を促進する触媒を実質的に含有しない、請求項9または10に記載のコーティング用組成物。
  12. 前記一般式(2)で示される化合物と前記一般式SiY 4 で示される化合物とを50/50〜5/95のモル比で含有する、請求項9〜11のいずれか一項に記載のコーティング用組成物。
  13. 請求項9〜12のいずれか一項に記載のコーティング用組成物を被処理物品に塗布し、この塗布物から前記有機溶媒を除去した後、これを酸性水溶液に浸漬して該被処理物品上で前記モノマー類の加水分解縮合反応を進行させることを特徴とする、撥水撥油性被膜付物品の製造方法。
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