JP2004269668A - シリカ系組成物、樹脂成形品及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】予め鋳型の内面にシリカ系組成物からなる保護被膜を形成し、その後樹脂成形品原料を鋳型に注入し重合硬化した後離型して、耐摩耗性および基材との密着性に優れた保護被膜を有する樹脂成形品を得る方法に際して、良好な離型性にて外観の良い樹脂成形品を得ることのできる製造方法を提供すること。
【解決手段】(a)オルガノアルコキシシラン類の加水分解物、(b)分子内に二重結合基を有するシランカップリング剤の加水分解物、(c)フェニルアルコキシシラン類の加水分解物とアルキルアルコキシシラン類の加水分解物とのいずれか一方あるいは両方、(d)コロイド状シリカ、を含むシリカ系組成物を、鋳型の内面の少なくとも一部に塗布し、加熱硬化して保護被膜を形成した後、(メタ)アクリル系樹脂成形品原料を鋳型に注入し重合する。
【選択図】 なし
【解決手段】(a)オルガノアルコキシシラン類の加水分解物、(b)分子内に二重結合基を有するシランカップリング剤の加水分解物、(c)フェニルアルコキシシラン類の加水分解物とアルキルアルコキシシラン類の加水分解物とのいずれか一方あるいは両方、(d)コロイド状シリカ、を含むシリカ系組成物を、鋳型の内面の少なくとも一部に塗布し、加熱硬化して保護被膜を形成した後、(メタ)アクリル系樹脂成形品原料を鋳型に注入し重合する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性、樹脂基材との密着性に優れた保護被膜に適したシリカ系組成物、この保護被膜が少なくとも表面の一部に被覆されてなる樹脂成形品、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、透明ガラスの代替として耐破砕性の高い透明プラスチック材料を使用することが広く行なわれている。しかし透明プラスチック材料は、ガラスに比較して表面が柔らかいので、摩耗し易く、引っ掻き傷を受け易いという重大な欠点を有している。
【0003】
そこで従来、プラスチック材料の耐摩耗性を改良すべく多くの試みがなされてきた。これらのうち最も一般的な方法の一つに、分子中に複数のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する化合物からなる保護被膜形成用組成物を樹脂成形品の表面に塗布し、熱または紫外線等の活性エネルギー線で硬化させ、耐摩耗性に優れた保護被膜を形成させる方法がある。この従来法は、保護被膜形成用組成物が比較的安価であり、生産性にも優れている為多くの用途に利用されている。しかし、この保護被膜は有機物なので耐摩耗性には限界があるのが現状である(特許文献1、2、3参照)。
【0004】
一方、より高い耐摩耗性を樹脂成形品に付与するために、アルコキシシラン化合物からなるシリカ系組成物を樹脂成形品表面に塗布し熱により硬化させる方法がある(特許文献4、5参照)。しかし、これらの方法では保護被膜と樹脂成形品との密着性が十分に得られないために、曝露後に保護被膜の密着性が低下し易いといった問題があった。
【0005】
この問題を解決するための方法として、シランカップリング剤である(メタ)アクリロキシ基含有アルコキシシランの加水分解物およびコロイド状シリカを含有するシリカ系組成物を、金属やガラス製の鋳型に塗布し加熱・硬化して保護被膜を形成させ、その後二重結合基を有する樹脂成形品原料をその鋳型に注入して重合を行ない、保護被膜と樹脂成形品を一体化させる方法が提案されている。この方法によると、保護被膜と十分な密着性を有する樹脂成形品を得ることができる(特許文献6参照)。
【0006】
しかしながら、保護被膜形成用のシリカ系組成物中のシラノール基は、金属あるいはガラス製の鋳型と親和性が強いため、鋳型の表面状態や樹脂成形品の重合条件によっては、しばしば鋳型に密着し保護被膜と一体化した樹脂成形品を鋳型から離型する際に離型がうまくいかず、鋳型や樹脂成形品を破損するといった問題があった。面積が大きくかつ薄い樹脂成形品を成形する場合には、特に鋳型との良好な離型性が重要であり、密着性が強すぎると離型の際に樹脂成形品の破損が起こりやすい問題があった。
【0007】
また、ガラス製鋳型は樹脂成形品原料の注入具合や重合具合などを観察できる点で有用であるが、ガラス表面に存在するシラノール基と、保護被膜形成用のシリカ系組成物中のシラノール基とが強く結合しやすい傾向があるため、離型不良が発生し易く、かつ鋳型が破損しやすいので大面積の樹脂成形物の成形に際しては、特に良好な離型性が重要であった。
【0008】
【特許文献1】
特開昭53−102936号公報
【特許文献2】
特開昭53−104638号公報
【特許文献3】
特開昭54−97633号公報
【特許文献4】
特開昭48−26822号公報
【特許文献5】
特開昭59−64671号公報
【特許文献6】
特開昭62−231712号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述の従来技術における問題を解決するためになされたものである。すなわち本発明の目的は、予め鋳型の内面にシリカ系組成物からなる保護被膜を形成し、その後樹脂成形品原料を鋳型に注入し重合硬化した後離型して、耐摩耗性および基材との密着性に優れた保護被膜を有する樹脂成形品を得る方法に際して、保護被膜に適したシリカ系組成物、鋳型からの離型性良好な保護被膜を有する樹脂成形品および、その製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した各課題を解決する為に鋭意検討した結果、ポリシロキサンとコロイド状シリカを主成分とするシリカ系組成物からなる保護被膜において、オルガノアルコキシシラン類の加水分解物と、分子内に二重結合を有するシランカップリング剤の加水分解物と、分子内にフェニル基を含有するフェニルアルコキシシラン類の加水分解物と長鎖アルキルアルコキシシラン類の加水分解物とのいずれか一方あるいは両方と、の共縮合物からなるポリシロキサンを用いることにより、鋳型からの離型性(特にガラス製鋳型からの離型性)が良好になることを見出し本発明に至った。
【0011】
これは、保護被膜中のポリシロキサンにフェニル基または長鎖アルキル基の少なくとも一方が導入されることにより、保護被膜の疎水性が向上し鋳型からの離型性が向上することによると推定できる。
【0012】
すなわち、本発明は、(a)式(1)で表されるオルガノアルコキシシラン類の加水分解物、
R1Si(OR2)3 ・・(1)
(式中、R1は炭素数1〜5の有機基、R2は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す。)
(b)分子内に二重結合基を有するシランカップリング剤の加水分解物、
(c)式(2)で表されるフェニルアルコキシシラン類の加水分解物と式(3)で表されるアルキルアルコキシシラン類の加水分解物とのいずれか一方あるいは両方、
PhSi(OR3)3 ・・(2)
(式中、Phは置換基を有してもよいフェニル基、R3は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す。)
R4Si(OR5)3 ・・(3)
(式中、R4は炭素数6〜16のアルキル基、R5は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す。)
(d)コロイド状シリカ、
を含むシリカ系組成物である。
【0013】
また本発明は、そのシリカ系組成物を加熱硬化してなる保護被膜が表面の少なくとも一部に被覆されてなる(メタ)アクリル系樹脂成形品である。
【0014】
さらに本発明は、そのシリカ系組成物を、鋳型の内面の少なくとも一部に塗布し、加熱硬化して保護被膜を形成した後、(メタ)アクリル系樹脂成形品原料を鋳型に注入し重合することにより、表面の少なくとも一部が保護被膜により被覆されてなる樹脂成形品の製造方法である。また、本発明の製造方法では、ガラス製鋳型を使用したときにも鋳型からの良好な離型性が得られる特徴を有している。
【0015】
なお、本発明において「(メタ)アクリル」とは、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0017】
本発明の保護被膜に適したシリカ系組成物中に含まれる成分(a)は、式(1)で表されるオルガノアルコキシシラン類の加水分解物である。
【0018】
R1Si(OR2)3 ・・(1)
(式中、R1は炭素数1〜5の有機基、R2は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す。)
式(1)において、R1は炭素数1〜5の有機基である。その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、3−アミノプロピル基、3−クロロプロピル基、3−メルカプトプロピル基、トリフルオロプロピル基等が挙げられる。R2は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基である。なおR2は、3つ全て同一である必要はなく、異なっていても良い。その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、アセチル基等が挙げられる。
【0019】
式(1)で表されるオルガノアルコキシシラン類の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリプロポキシシラン、n−プロピルトリブトキシシラン、n−プロピルトリアセトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリブトキシシラン、イソプロピルトリアセトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリプロポキシシラン、n−ブチルトリブトキシシラン、n−ブチルトリアセトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリプロポキシシラン、イソブチルトリブトキシシラン、イソブチルトリアセトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリプロポキシシラン、n−ペンチルトリブトキシシラン、n−ペンチルトリアセトキシシラン等が挙げられる。中でも、加水分解や縮合の速度、および得られる保護被膜の硬度、強度、耐摩耗性の点から、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシランが好ましい。特に、メチルトリメトキシシランが最も好ましい。
【0020】
式(1)で表されるオルガノアルコキシシラン類の加水分解物(a)は、アルコキシ基の一部または全部が水酸基に置換されたものである。また、(a)成分の分子間で、置換された水酸基同志が一部結合していてもよい。
【0021】
これらの加水分解物の製造方法としては、例えば式(1)で表されるオルガノアルコキシシラン類に、水(オルガノアルコキシシラン類1モルに対して、例えば1〜10モル)、および塩酸や酢酸などを加え溶液を酸性(例えばpH2.0〜5.0)とし、攪拌することによって製造することができる。式(1)で表されるオルガノアルコキシシラン類は、単独で用いても良いし、あるいは2種以上を組合せて用いてもよい。
【0022】
本発明の(b)成分は、分子内に二重結合基を有するシランカップリング剤の加水分解物である。本発明で用いることのできるシランカップリング剤は、分子内に加水分解可能なアルコキシシラン基と、有機官能基として二重結合基を有する化合物である。この(b)成分は、シリカ系組成物からなる保護被膜と(メタ)アクリル系樹脂成形品原料を重合して得られる樹脂成形品との密着性を付与する成分である。
【0023】
シランカップリング剤分子中の二重結合基と(メタ)アクリル系樹脂成形品原料が重合することにより強い結合が得られ、アルコキシシラン基が加水分解して得られるシラノール基とシリカ系組成物から得られる保護被膜中のシラノール基が強く結合することにより、保護被膜と樹脂成形品の強い密着性が得られる。
【0024】
本発明で使用されるシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−ビニルフェニルトリメトキシシラン、p−ビニルフェニルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0025】
中でも、その加水分解物が保護被膜と樹脂成形品の強い密着性を与える点で、p−ビニルフェニルトリメトキシシラン、p−ビニルフェニルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0026】
さらに、加水分解速度の速い点、二重結合基の安定性に優れている点でp−ビニルフェニルトリメトキシシラン、p−ビニルフェニルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0027】
これら(b)成分であるシランカップリング剤の加水分解物は、シランカップリング剤のアルコキシ基の一部または全部が水酸基に置換されたものである。また、(b)成分の分子間で置換された水酸基同志が一部結合していてもよい。
【0028】
これらの加水分解物の製造方法としては、これらシランカップリング剤に、水(シランカップリング剤1モルに対して、例えば1〜10モル)、および塩酸や酢酸などを加え溶液を酸性(例えばpH2.0〜5.0)とし、攪拌することによって製造することができる。シランカップリング剤は、単独で用いても良いし、あるいは2種以上を組合せて用いてもよい。
【0029】
本発明の(c)成分は、式(2)で表されるフェニルアルコキシシラン類の加水分解物と式(3)で表されるアルキルアルコキシシラン類の加水分解物とのいずれか一方あるいは両方である。
【0030】
PhSi(OR3)3 ・・(2)
(式中、Phは置換基を有してもよいフェニル基、R3は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す。)
R4Si(OR5)3 ・・(3)
(式中、R4は炭素数6〜16のアルキル基、R5は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す。)
(c)成分は、保護被膜を与えるシリカ系組成物に配合することにより、得られる保護被膜付き樹脂成形品の鋳型離型性を向上させる成分である。(c)成分中の置換基を有してもよいフェニル基、あるいは、炭素数6〜16の長鎖アルキル基が保護被膜へ導入されることにより、鋳型からの離型性の向上に効果的である。
【0031】
式(2)において、Phは置換基を有してもよいフェニル基である。その置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ハロゲン基等が挙げられる。R3は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基である。なおR3は、3つ全て同一である必要はなく、異なっていても良い。その具体例としては、先に挙げた式(1)のR2と同様のものが挙げられる。
【0032】
式(2)で表されるフェニルアルコキシシラン類の具体例としては、フェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン、m−クロロフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン等が挙げられる。中でも、加水分解速度が速い点から、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランが好ましい。
【0033】
式(3)において、R4は炭素数6〜16のアルキル基である。その置換基の具体例としては、n−ヘキシル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2−メチルペンチル基、n−オクチル基、2,2−ジメチルヘキシル基、2,3−ジメチルヘキシル基、2,4−ジメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、等が挙げられる。R5は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基である。なおR5は、3つ全て同一である必要はなく、異なっていても良い。その具体例としては、先に挙げた式(1)のR2と同様のものが挙げられる。
【0034】
式(3)で表されるアルキルアルコキシシラン類の具体例としては、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0035】
中でも、加水分解や縮合の速度が速い点、得られる保護被膜の硬さが良好な点からn−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシランが好ましい。
【0036】
本発明の(c)成分の加水分解物は、式(2)、(3)のいずれかで表される化合物のアルコキシ基の一部または全部が水酸基に置換されたものである。また、(c)成分の分子間で、置換された水酸基同志が一部結合していてもよい。
【0037】
これらの加水分解物の製造方法としては、例えば式(2)で表されるフェニルアルコキシシラン類、式(3)で表されるアルキルアルコキシシラン類に、水((c)成分1モルに対して、例えば1〜10モル)、および塩酸や酢酸などを加え溶液を酸性(例えばpH2.0〜5.0)とし、攪拌することによって製造することができる。
【0038】
式(2)で表されるフェニルアルコキシシラン類、式(3)で表されるアルキルアルコキシシラン類は、単独で用いても良いし、あるいは2種以上を組合せて用いてもよい。
【0039】
本発明の(d)成分のコロイド状シリカは、得られる保護被膜に耐摩耗性を付与する成分である。シリカ微粒子が水に均一に分散したシリカゾル、または親水性溶剤に均一に分散したオルガノシリカゾルを用いることが好ましい。分散液中のシリカ微粒子含有率(固形分濃度)は、10〜50質量%が好ましく、20〜40質量%がより好ましい。
【0040】
コロイド状シリカの粒子径は、保護被膜としたときの透明性の点から、100nm以下が好ましい。また、保護被膜としたときの耐クラック性の点から、5nm以上が好ましい。コロイド状シリカの溶剤は、シリカ系組成物中で(a)成分、(b)成分、(c)成分を凝集、沈殿させることなく均一に分散させ、かつ加水分解、縮合等の反応を進行させるという点から、水、メタノール、エタノール、イソブタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等の親水性溶剤であることが好ましい。
【0041】
親水性溶剤分散コロイド状シリカの具体例としては、水分散コロイド状シリカ、メタノール分散コロイド状シリカ、エタノール分散コロイド状シリカ、イソプロパノール分散コロイド状シリカ、エチレングリコール分散コロイド状シリカ、イソブタノール分散コロイド状シリカ等が挙げられる。中でも、他成分と混合した際の安定性の点から、イソプロパノール分散コロイド状シリカが好ましい。市販品としては、日産化学工業(株)製 スノーテックスIPA−ST、触媒化成工業(株)製 OSCAL1432などが挙げられる。
【0042】
また、コロイド状シリカにコロイド状のアルミナやチタニアを混合して用いることもできる。
【0043】
シリカ系組成物の調製方法としては、例えば、式(1)で表されるオルガノアルコキシシラン類、分子内に二重結合を有するシランカップリング剤、式(2)で表されるフェニルアルコキシシラン類と式(3)で表されるアルキルアルコキシシラン類とのいずれか一方または両方、コロイド状シリカと、水(全シラン化合物の合計1モルに対して、例えば1〜10モル)とを混合し、さらに塩酸、酢酸等を加えて混合液を酸性(例えばpH2.0〜5.0)にして数時間から数日間攪拌し続け加水分解を充分に進行させる方法がある。このとき、エタノール、イソプロパノール等の親水性の有機溶剤を加えても良い。
【0044】
また、通常加水分解反応に続いて、縮合反応も進行するが、加水分解が充分に進行した後、縮合の反応を速めるために水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム等を添加してpHを中性付近(例えばpH6.0〜7.0)に制御しても良い。
【0045】
ここで、(A)オルガノアルコキシシラン類、(B)シランカップリング剤、(C)フェニルアルコキシシラン類とアルキルアルコキシシラン類とのいずれか一方または両方、(d)コロイド状シリカの配合比は特に制限されず、所望の保護被膜の性能に応じて適宜決定すれば良い。通常は、(A)成分100モルに対して、(B)成分1〜20モル、(C)成分2〜30モル、(d)成分25〜300モルとするのが好ましい。
【0046】
シランカップリング剤(B)の配合比が、オルガノアルコキシシラン類(A)100モルに対して1モル以上であれば、保護被膜と樹脂成形品の密着性が向上する。また、20モル以下であれば得られる保護被膜の耐摩耗性低下の不具合が発生し難くなる。また、鋳型からの離型性を悪化させることなく、保護被膜と樹脂成形品との密着性を向上させることができる。特に好ましいシランカップリング剤(B)の配合比は、オルガノアルコキシシラン類(A)100モルに対して、2〜10モルである。
【0047】
フェニルアルコキシシラン類、アルキルアルコキシシラン類のいずれか一方または両方(C)の配合比が、オルガノアルコキシシラン類(A)100モルに対して、2モル以上であれば、得られる保護被膜を有する樹脂成形品の鋳型からの離型性が良好になる。また、30モル以下であれば得られる保護被膜の耐摩耗性低下の不具合が発生し難くなる。特に好ましい(C)成分の配合比は、オルガノアルコキシシラン類(A)100モルに対して、5〜20モルである。
【0048】
コロイド状シリカ(d)の配合比が、オルガノアルコキシシラン類(A)100モルに対して、25モル以上であれば、得られる保護被膜の耐摩耗性を向上させることができる。300モル以下であれば、得られる保護被膜のクラック発生を抑えることができる。特に好ましい(d)成分の配合比は、オルガノアルコキシシラン類(A)100モルに対して、50〜200モルである。
【0049】
なお、上述した仕込みモル数において、(A)、(B)、(C)、(d)成分のモル数は、以下の式で示されるものである。
(A)成分のモル数=(オルガノアルコキシシラン類の仕込み質量)/(オルガノアルコキシシラン類の分子量)
(B)成分のモル数=(シランカップリング剤の仕込み質量)/(シランカップリング剤の分子量)
(C)成分のモル数=(フェニルアルコキシラン類の仕込み質量)/(フェニルアルコキシシラン類の分子量)+(アルキルアルコキシシラン類の仕込み質量)/(アルキルアルコキシシラン類の分子量)
(d)成分のモル数=(コロイド状シリカ溶液中の仕込みシリカ(固形分)質量)/(シリカの分子量;60.1(SiO2として))。
【0050】
本発明の保護被膜に適したシリカ系組成物を硬化させるためには、硬化促進剤の併用が効果的である。この硬化促進剤としては、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、スルホン酸、パラトルエンスルホン酸、三フッ化ホウ素及びその電子供与体との錯体、SnCl4、ZnCl3、FeCl3、AlCl3、SbCl5、TiCl4などのルイス酸およびその錯体、酢酸ナトリウム、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ等の有機酸金属塩、ホウフッ化亜鉛、ホウフッ化スズ等のホウフッ化金属塩類、ホウ酸エチル、ホウ酸メチル等のホウ酸有機エステル類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物、テトラブトキシチタン、テトライソプロポキシチタン等のチタネートエステル類、クロムアセチルアセトネート、チタニルアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセトネート、コバルトアセチルアセトネート、ニッケルアセチルアセトネート等の金属アセチルアセトネート類、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、グアニジン、ピグアニド、イミダゾール等のアミン類などが挙げられる。
【0051】
これらの硬化促進剤の使用割合は、(A)、(B)、(C)、(d)成分を合計した固形分100質量部に対し0.01〜10質量部用いることが好ましい。0.01質量部以上使用することで硬化を促進性することができる。10質量部以下で使用することにより保存安定性を悪化させることなく硬化を促進することができる。
【0052】
本発明のシリカ系組成物は、成分(a)、(b)、(c)および(d)成分を均一に混合させ、固形分濃度を調整し、固形分の分散安定性、保存安定性を向上させるために有機溶媒を含有することが好ましい。有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、セロソルブ類、エステル類、芳香族化合物類、エステル類などを挙げることができる。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどを挙げることができる。これらは1種あるいは2種以上を混合して使用することもできる。本発明のシリカ系組成物は、その全固形分濃度は50質量%以下であることが好ましい。全固形分濃度を50質量%以下で使用することにより保存安定性を保つことができる。
【0053】
さらに本発明のシリカ系組成物には、必要に応じて表面平滑剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、貯蔵安定剤、硬化剤、レベリング剤などの各種添加剤を適宜添加して使用することができる。
【0054】
保護被膜に適したシリカ系組成物を調製する方法の好適な一例を説明する。まず、式(1)で表されるオルガノアルコキシシラン類と、分子内に二重結合を有するシランカップリング剤と、式(2)で表されるフェニルアルコキシシラン類と式(3)で表されるアルキルアルコキシシラン類とのいずれか一方または両方、をよく混合する。この混合液を攪拌しながら、適量の水を入れ十分に加水分解する。その際、加水分解を促進するために塩酸、酢酸などによりpH2〜5に調整する。さらに親水性溶剤分散コロイド状シリカを加え攪拌を続ける。3〜5時間程度攪拌を続け、NMR法により充分に加水分解されているのを確認した後、アンモニウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム水溶液などを添加しpHを6〜7程度に調整し約20時間程度攪拌を続け縮合を行う。その後、有機溶媒、紫外線吸収剤、必要に応じ硬化剤、レベリング剤などを添加し均一に混合して、シリカ系組成物を得ることができる。
【0055】
この方法において、式(1)で表されるオルガノアルコキシシラン類、分子内に二重結合を有するシランカップリング剤、式(2)で表されるフェニルアルコキシシラン類、式(3)で表されるアルキルアルコキシシラン類は、それぞれに適量の水で加水分解した後、混合してもよいし、予め全てを混合した後、適量の水を加え加水分解しても良い。さらには、コロイド状シリカを予め混合し、その後加水分解を行っても良い。
【0056】
本発明において、保護被膜を有する樹脂成形品を得る方法としては、金属あるいはガラス等からなる鋳型の内面の少なくとも一部に保護被膜形成用のシリカ系組成物を塗布し、加熱硬化して保護被膜膜を形成した後、樹脂成形品原料を鋳型に注入し重合することにより、表面の少なくとも一部を保護被膜で被覆された樹脂成形品を得る方法がある。
【0057】
鋳型の内面の少なくとも一部にシリカ系組成物を塗布する方法としては、刷毛塗り法、流延法、ローラーコート法、バーコート法、噴霧コート法、エアーナイフコート法、ディッピング法等を挙げることができるが特に限定されない。シリカ系組成物の塗布量としては、得られる保護被膜の膜厚が1〜20μmとなるように塗布するのがよい。保護被膜の膜厚を1μm以上とすることにより、耐摩耗性を得ることができる。また、膜厚を20μm以下とすることで硬化時のクラック発生を抑制することができる。より好ましい膜厚は、2〜10μmである。
【0058】
本発明により、その表面に保護被膜が形成される樹脂成形品は、公知の方法である(メタ)アクリル系樹脂成形品原料を鋳型に注入し重合することにより得られる。(メタ)アクリル系樹脂成形品原料とは、(メタ)アクリル系単量体を主成分とするものである。(メタ)アクリル系単量体と共重合可能な単量体を含んでも良い。また、鋳型注入に支障のない範囲で、予め重合したものでも良い。
【0059】
(メタ)アクリル系単量体とは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルメタクリレート、プロピルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート等を挙げることができる。特に、得られる樹脂成形品の耐熱性、弾性率に優れる点でメチルメタクリレートが好ましい。
【0060】
また、(メタ)アクリル系単量体と共重合可能な単量体としては、スチレン、アクリロニトリル、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ジアリルフタレート等を挙げることができる。
【0061】
本発明で使用できる鋳型は、容易に入手できる点でステンレスなどの金属製またはガラス製が好ましい。特に、樹脂成形品原料の注型の状態、重合の状態が目視確認できる点で透明なガラス製が好ましい。ガラスの素材としては特に制限はないが、ソーダガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスなどが使用可能である。
【0062】
本発明で得られる保護被膜を有する樹脂成形品は、外観、耐擦傷性、耐摩耗性に優れたものであるから、例えば窓ガラス、看板、照明器具用カバー、光学用部品、自動車関連部品等の用途に非常に有用である。
【0063】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明は実施例に限定されるものではない。また、実施例中の各種物性の測定および評価は、以下に示す方法で行った。
1)鋳型離型性
鋳型から樹脂成形品を離型する際、樹脂成形品の破損、鋳型の破損がなく良好に離型できたものを良好(○)とした。樹脂成形品が破損、あるいは鋳型が破損したものを不良(×)とした。
2)外観
目視にて樹脂成形品の透明性、クラック、白化の有無を観察し、透明でクラック、白化の欠陥がないものを良好(○)とした。不透明な部分のあったもの、クラック、白化の欠陥があったものを不良(×)とした。
3)耐摩耗性
樹脂成形品の表面を、#000のスチールウールにて、1kg/cm2の圧力を加え10往復擦り、1×3cmの範囲に発生した傷の程度を観察し、以下の基準で評価した。
A … ほとんどキズがつかない。光沢面あり。
B … 1〜10本のキズがつく。光沢面あり。
C … 10〜100本のキズがつく。光沢面あり。
D … 無数(100本より多い)のキズがつく。光沢面あり。
E … 光沢面がなくなる。
4)被膜密着性
樹脂成形品の保護被膜層へ、カミソリの刃で1mm間隔に縦横11本ずつの切り目を入れて100個の碁盤目をつくり、セロハンテープをよく密着させた後、45゜手前方向に急激に剥した時、保護被膜層が剥離せずに残存したときのマス目の数により以下の基準で評価した。
○ … 剥離したマス目が無い(密着性良好)。
△ … 剥離したマス目が1/100以上5/100以下(密着性中程度)。
× … 剥離したマス目が6/100以上(密着性不良)。
[実施例1]
(A)成分としてメチルトリメトキシシラン13.6g(0.100mol)、(B)成分としてp−ビニルフェニルトリメトキシシラン1.12g(0.005mol)、(C)成分としてフェニルトリメトキシシラン1.98g(0.010mol)、(d)成分としてイソプロピルアルコール分散コロイド状シリカ(粒子径10〜20nm、固形分30質量%、日産化学工業(株)製、商品名スノーテックスIPA−ST)20.0g(0.100mol)、水20.0gを混合し、均一溶液とした。この溶液を攪拌しつつ、さらに溶液がpH2.0となるように0.05N塩酸を加えた。溶液が発熱するので、水浴で冷却しつつ、液温を約10℃に維持しながら4時間攪拌を続け充分に加水分解を行った。
【0064】
次いで、溶液のpHが6.8となるように酢酸ナトリウムを加え、さらに20時間攪拌した。
【0065】
有機溶剤としてジアセトンアルコール12.0gおよびイソプロピルアルコール12.0gを加え攪拌し均一溶液とした。さらに、日本ユニカー(株)製シリコーン系界面活性剤L−7001を0.01g添加し、約1時間室温で攪拌し、保護被膜形成用のシリカ系組成物を得た。
【0066】
得られたシリカ系組成物を、バーコーターで縦600mm、横400mm、厚さ5mmのソーダガラス製フロートガラス板に塗布し、120℃の熱風乾燥機中で20分間加熱乾燥して厚み約4μmの保護被膜層を形成した。
【0067】
このように処理した2枚のガラス板を保護被膜が内側になるように対向させ、周囲を軟質塩化ビニルガスケットで封じ鋳型とした。
【0068】
鋳型のガラス板間隔が約1.3mmとなるように、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.05質量%を添加したメチルメタクリレートを注入し鋳型の周囲を万力で固定した。この鋳型を熱風乾燥機に入れ、50℃で4時間、次いで130℃で2時間加熱重合させた。冷却後、ガラス製鋳型より厚み約1mmの樹脂板を剥離し、保護被膜を有する樹脂板を得た。
【0069】
この樹脂板は優れた鋳型離型性、外観、耐摩耗性、被膜密着性を有していた。評価結果を表1に示した。
[実施例2〜11]
表1に示す各種組成の保護被膜形成用のシリカ系組成物を実施例1と同様の方法で調製し、実施例1と同様の方法にて保護被膜を有する樹脂板を作製した。これらの樹脂板について、実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。実施例2〜11で得た樹脂板は、実施例1と同様に優れた鋳型離型性、外観、被膜密着性、耐摩耗性を有していた。
【0070】
【表1】
表中の略号
MTMS:メチルトリメトキシシラン
ETMS:エチルトリメトキシシラン
MTES:メチルトリエトキシシラン
VPTMS:p−ビニルフェニルトリメトキシシラン
MPTMS:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
PhTMS:フェニルトリメトキシシラン
C6TMS:n−ヘキシルトリメトキシシラン
C10TMS:n−デシルトリメトキシシラン
CS:イソプロピルアルコール分散コロイダルシリカ(固形分30質量%、日産化学工業(株)製、商品名スノーテックスIPA−ST)
[比較例1]
(C)成分であるフェニルトリメトキシシランを使用しないこと以外は、実施例1と同様の方法で保護被膜形成用のシリカ系組成物を調製し、実施例1と同様の方法にて保護被膜を有する樹脂板の作製を試みた。その結果、鋳型のガラス板と樹脂板との密着力が強く、部分的にガラス板が破損し樹脂板に接着したり、部分的に樹脂板が破損しガラスに接着したりして、良好な樹脂板を得ることはできなかった。
[比較例2]
(B)成分であるp−ビニルフェニルトリメトキシシランを使用しないこと以外は、実施例1と同様の方法で保護被膜形成用のシリカ系組成物を調製し、実施例1と同様の方法にて保護被膜を有する樹脂板の作製を試みた。その結果、樹脂板は得られたものの、保護被膜はガラス板表面に残ったままで樹脂板に移行されなかった。得られた樹脂板は、実施例1と同様に評価し、その結果を表2に示した。外観は良好であったものの、樹脂板の耐摩耗性は低いものであった。
[比較例3、4]
表2に示す各種組成の保護被膜形成用のシリカ系組成物について実施例1と同様の方法で調製し、実施例1と同様の方法にて保護被膜を有する樹脂板の作製を実施した。得られた樹脂板は、実施例1と同様に評価し、その結果を表2に示した。鋳型から離型性がよく、外観が良好な樹脂板が得られ、保護皮膜の密着性も良好であったが、樹脂板の耐摩耗性は低いものであった。
[比較例5]
保護被膜を形成しないガラス板を鋳型として使用する以外は、実施例1と同様の方法で樹脂板の作製を試みた。鋳型から離型性よく、外観良好な樹脂板が得られたものの、樹脂板の耐摩耗性は低いものであった。実施例1と同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0071】
【表2】
表中の略号
MTMS:メチルトリメトキシシラン
VPTMS:p−ビニルフェニルトリメトキシシラン
PhTMS:フェニルトリメトキシシラン
CS:イソプロピルアルコール分散コロイダルシリカ(固形分30質量%、日産化学工業(株)製、商品名スノーテックスIPA−ST)
【0072】
【発明の効果】
本発明の樹脂成形品の製造方法によれば、外観、耐摩耗性、被膜密着性にすぐれた保護被膜を有する樹脂成形品を鋳型離型性よく得ることができる。また、特にガラス鋳型を使用した際にも鋳型離型性よく樹脂成形品を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性、樹脂基材との密着性に優れた保護被膜に適したシリカ系組成物、この保護被膜が少なくとも表面の一部に被覆されてなる樹脂成形品、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、透明ガラスの代替として耐破砕性の高い透明プラスチック材料を使用することが広く行なわれている。しかし透明プラスチック材料は、ガラスに比較して表面が柔らかいので、摩耗し易く、引っ掻き傷を受け易いという重大な欠点を有している。
【0003】
そこで従来、プラスチック材料の耐摩耗性を改良すべく多くの試みがなされてきた。これらのうち最も一般的な方法の一つに、分子中に複数のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する化合物からなる保護被膜形成用組成物を樹脂成形品の表面に塗布し、熱または紫外線等の活性エネルギー線で硬化させ、耐摩耗性に優れた保護被膜を形成させる方法がある。この従来法は、保護被膜形成用組成物が比較的安価であり、生産性にも優れている為多くの用途に利用されている。しかし、この保護被膜は有機物なので耐摩耗性には限界があるのが現状である(特許文献1、2、3参照)。
【0004】
一方、より高い耐摩耗性を樹脂成形品に付与するために、アルコキシシラン化合物からなるシリカ系組成物を樹脂成形品表面に塗布し熱により硬化させる方法がある(特許文献4、5参照)。しかし、これらの方法では保護被膜と樹脂成形品との密着性が十分に得られないために、曝露後に保護被膜の密着性が低下し易いといった問題があった。
【0005】
この問題を解決するための方法として、シランカップリング剤である(メタ)アクリロキシ基含有アルコキシシランの加水分解物およびコロイド状シリカを含有するシリカ系組成物を、金属やガラス製の鋳型に塗布し加熱・硬化して保護被膜を形成させ、その後二重結合基を有する樹脂成形品原料をその鋳型に注入して重合を行ない、保護被膜と樹脂成形品を一体化させる方法が提案されている。この方法によると、保護被膜と十分な密着性を有する樹脂成形品を得ることができる(特許文献6参照)。
【0006】
しかしながら、保護被膜形成用のシリカ系組成物中のシラノール基は、金属あるいはガラス製の鋳型と親和性が強いため、鋳型の表面状態や樹脂成形品の重合条件によっては、しばしば鋳型に密着し保護被膜と一体化した樹脂成形品を鋳型から離型する際に離型がうまくいかず、鋳型や樹脂成形品を破損するといった問題があった。面積が大きくかつ薄い樹脂成形品を成形する場合には、特に鋳型との良好な離型性が重要であり、密着性が強すぎると離型の際に樹脂成形品の破損が起こりやすい問題があった。
【0007】
また、ガラス製鋳型は樹脂成形品原料の注入具合や重合具合などを観察できる点で有用であるが、ガラス表面に存在するシラノール基と、保護被膜形成用のシリカ系組成物中のシラノール基とが強く結合しやすい傾向があるため、離型不良が発生し易く、かつ鋳型が破損しやすいので大面積の樹脂成形物の成形に際しては、特に良好な離型性が重要であった。
【0008】
【特許文献1】
特開昭53−102936号公報
【特許文献2】
特開昭53−104638号公報
【特許文献3】
特開昭54−97633号公報
【特許文献4】
特開昭48−26822号公報
【特許文献5】
特開昭59−64671号公報
【特許文献6】
特開昭62−231712号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述の従来技術における問題を解決するためになされたものである。すなわち本発明の目的は、予め鋳型の内面にシリカ系組成物からなる保護被膜を形成し、その後樹脂成形品原料を鋳型に注入し重合硬化した後離型して、耐摩耗性および基材との密着性に優れた保護被膜を有する樹脂成形品を得る方法に際して、保護被膜に適したシリカ系組成物、鋳型からの離型性良好な保護被膜を有する樹脂成形品および、その製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した各課題を解決する為に鋭意検討した結果、ポリシロキサンとコロイド状シリカを主成分とするシリカ系組成物からなる保護被膜において、オルガノアルコキシシラン類の加水分解物と、分子内に二重結合を有するシランカップリング剤の加水分解物と、分子内にフェニル基を含有するフェニルアルコキシシラン類の加水分解物と長鎖アルキルアルコキシシラン類の加水分解物とのいずれか一方あるいは両方と、の共縮合物からなるポリシロキサンを用いることにより、鋳型からの離型性(特にガラス製鋳型からの離型性)が良好になることを見出し本発明に至った。
【0011】
これは、保護被膜中のポリシロキサンにフェニル基または長鎖アルキル基の少なくとも一方が導入されることにより、保護被膜の疎水性が向上し鋳型からの離型性が向上することによると推定できる。
【0012】
すなわち、本発明は、(a)式(1)で表されるオルガノアルコキシシラン類の加水分解物、
R1Si(OR2)3 ・・(1)
(式中、R1は炭素数1〜5の有機基、R2は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す。)
(b)分子内に二重結合基を有するシランカップリング剤の加水分解物、
(c)式(2)で表されるフェニルアルコキシシラン類の加水分解物と式(3)で表されるアルキルアルコキシシラン類の加水分解物とのいずれか一方あるいは両方、
PhSi(OR3)3 ・・(2)
(式中、Phは置換基を有してもよいフェニル基、R3は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す。)
R4Si(OR5)3 ・・(3)
(式中、R4は炭素数6〜16のアルキル基、R5は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す。)
(d)コロイド状シリカ、
を含むシリカ系組成物である。
【0013】
また本発明は、そのシリカ系組成物を加熱硬化してなる保護被膜が表面の少なくとも一部に被覆されてなる(メタ)アクリル系樹脂成形品である。
【0014】
さらに本発明は、そのシリカ系組成物を、鋳型の内面の少なくとも一部に塗布し、加熱硬化して保護被膜を形成した後、(メタ)アクリル系樹脂成形品原料を鋳型に注入し重合することにより、表面の少なくとも一部が保護被膜により被覆されてなる樹脂成形品の製造方法である。また、本発明の製造方法では、ガラス製鋳型を使用したときにも鋳型からの良好な離型性が得られる特徴を有している。
【0015】
なお、本発明において「(メタ)アクリル」とは、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0017】
本発明の保護被膜に適したシリカ系組成物中に含まれる成分(a)は、式(1)で表されるオルガノアルコキシシラン類の加水分解物である。
【0018】
R1Si(OR2)3 ・・(1)
(式中、R1は炭素数1〜5の有機基、R2は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す。)
式(1)において、R1は炭素数1〜5の有機基である。その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、3−アミノプロピル基、3−クロロプロピル基、3−メルカプトプロピル基、トリフルオロプロピル基等が挙げられる。R2は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基である。なおR2は、3つ全て同一である必要はなく、異なっていても良い。その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、アセチル基等が挙げられる。
【0019】
式(1)で表されるオルガノアルコキシシラン類の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリプロポキシシラン、n−プロピルトリブトキシシラン、n−プロピルトリアセトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリブトキシシラン、イソプロピルトリアセトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリプロポキシシラン、n−ブチルトリブトキシシラン、n−ブチルトリアセトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリプロポキシシラン、イソブチルトリブトキシシラン、イソブチルトリアセトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリプロポキシシラン、n−ペンチルトリブトキシシラン、n−ペンチルトリアセトキシシラン等が挙げられる。中でも、加水分解や縮合の速度、および得られる保護被膜の硬度、強度、耐摩耗性の点から、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシランが好ましい。特に、メチルトリメトキシシランが最も好ましい。
【0020】
式(1)で表されるオルガノアルコキシシラン類の加水分解物(a)は、アルコキシ基の一部または全部が水酸基に置換されたものである。また、(a)成分の分子間で、置換された水酸基同志が一部結合していてもよい。
【0021】
これらの加水分解物の製造方法としては、例えば式(1)で表されるオルガノアルコキシシラン類に、水(オルガノアルコキシシラン類1モルに対して、例えば1〜10モル)、および塩酸や酢酸などを加え溶液を酸性(例えばpH2.0〜5.0)とし、攪拌することによって製造することができる。式(1)で表されるオルガノアルコキシシラン類は、単独で用いても良いし、あるいは2種以上を組合せて用いてもよい。
【0022】
本発明の(b)成分は、分子内に二重結合基を有するシランカップリング剤の加水分解物である。本発明で用いることのできるシランカップリング剤は、分子内に加水分解可能なアルコキシシラン基と、有機官能基として二重結合基を有する化合物である。この(b)成分は、シリカ系組成物からなる保護被膜と(メタ)アクリル系樹脂成形品原料を重合して得られる樹脂成形品との密着性を付与する成分である。
【0023】
シランカップリング剤分子中の二重結合基と(メタ)アクリル系樹脂成形品原料が重合することにより強い結合が得られ、アルコキシシラン基が加水分解して得られるシラノール基とシリカ系組成物から得られる保護被膜中のシラノール基が強く結合することにより、保護被膜と樹脂成形品の強い密着性が得られる。
【0024】
本発明で使用されるシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−ビニルフェニルトリメトキシシラン、p−ビニルフェニルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0025】
中でも、その加水分解物が保護被膜と樹脂成形品の強い密着性を与える点で、p−ビニルフェニルトリメトキシシラン、p−ビニルフェニルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0026】
さらに、加水分解速度の速い点、二重結合基の安定性に優れている点でp−ビニルフェニルトリメトキシシラン、p−ビニルフェニルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0027】
これら(b)成分であるシランカップリング剤の加水分解物は、シランカップリング剤のアルコキシ基の一部または全部が水酸基に置換されたものである。また、(b)成分の分子間で置換された水酸基同志が一部結合していてもよい。
【0028】
これらの加水分解物の製造方法としては、これらシランカップリング剤に、水(シランカップリング剤1モルに対して、例えば1〜10モル)、および塩酸や酢酸などを加え溶液を酸性(例えばpH2.0〜5.0)とし、攪拌することによって製造することができる。シランカップリング剤は、単独で用いても良いし、あるいは2種以上を組合せて用いてもよい。
【0029】
本発明の(c)成分は、式(2)で表されるフェニルアルコキシシラン類の加水分解物と式(3)で表されるアルキルアルコキシシラン類の加水分解物とのいずれか一方あるいは両方である。
【0030】
PhSi(OR3)3 ・・(2)
(式中、Phは置換基を有してもよいフェニル基、R3は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す。)
R4Si(OR5)3 ・・(3)
(式中、R4は炭素数6〜16のアルキル基、R5は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す。)
(c)成分は、保護被膜を与えるシリカ系組成物に配合することにより、得られる保護被膜付き樹脂成形品の鋳型離型性を向上させる成分である。(c)成分中の置換基を有してもよいフェニル基、あるいは、炭素数6〜16の長鎖アルキル基が保護被膜へ導入されることにより、鋳型からの離型性の向上に効果的である。
【0031】
式(2)において、Phは置換基を有してもよいフェニル基である。その置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ハロゲン基等が挙げられる。R3は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基である。なおR3は、3つ全て同一である必要はなく、異なっていても良い。その具体例としては、先に挙げた式(1)のR2と同様のものが挙げられる。
【0032】
式(2)で表されるフェニルアルコキシシラン類の具体例としては、フェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン、m−クロロフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン等が挙げられる。中でも、加水分解速度が速い点から、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランが好ましい。
【0033】
式(3)において、R4は炭素数6〜16のアルキル基である。その置換基の具体例としては、n−ヘキシル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2−メチルペンチル基、n−オクチル基、2,2−ジメチルヘキシル基、2,3−ジメチルヘキシル基、2,4−ジメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、等が挙げられる。R5は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基である。なおR5は、3つ全て同一である必要はなく、異なっていても良い。その具体例としては、先に挙げた式(1)のR2と同様のものが挙げられる。
【0034】
式(3)で表されるアルキルアルコキシシラン類の具体例としては、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0035】
中でも、加水分解や縮合の速度が速い点、得られる保護被膜の硬さが良好な点からn−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシランが好ましい。
【0036】
本発明の(c)成分の加水分解物は、式(2)、(3)のいずれかで表される化合物のアルコキシ基の一部または全部が水酸基に置換されたものである。また、(c)成分の分子間で、置換された水酸基同志が一部結合していてもよい。
【0037】
これらの加水分解物の製造方法としては、例えば式(2)で表されるフェニルアルコキシシラン類、式(3)で表されるアルキルアルコキシシラン類に、水((c)成分1モルに対して、例えば1〜10モル)、および塩酸や酢酸などを加え溶液を酸性(例えばpH2.0〜5.0)とし、攪拌することによって製造することができる。
【0038】
式(2)で表されるフェニルアルコキシシラン類、式(3)で表されるアルキルアルコキシシラン類は、単独で用いても良いし、あるいは2種以上を組合せて用いてもよい。
【0039】
本発明の(d)成分のコロイド状シリカは、得られる保護被膜に耐摩耗性を付与する成分である。シリカ微粒子が水に均一に分散したシリカゾル、または親水性溶剤に均一に分散したオルガノシリカゾルを用いることが好ましい。分散液中のシリカ微粒子含有率(固形分濃度)は、10〜50質量%が好ましく、20〜40質量%がより好ましい。
【0040】
コロイド状シリカの粒子径は、保護被膜としたときの透明性の点から、100nm以下が好ましい。また、保護被膜としたときの耐クラック性の点から、5nm以上が好ましい。コロイド状シリカの溶剤は、シリカ系組成物中で(a)成分、(b)成分、(c)成分を凝集、沈殿させることなく均一に分散させ、かつ加水分解、縮合等の反応を進行させるという点から、水、メタノール、エタノール、イソブタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等の親水性溶剤であることが好ましい。
【0041】
親水性溶剤分散コロイド状シリカの具体例としては、水分散コロイド状シリカ、メタノール分散コロイド状シリカ、エタノール分散コロイド状シリカ、イソプロパノール分散コロイド状シリカ、エチレングリコール分散コロイド状シリカ、イソブタノール分散コロイド状シリカ等が挙げられる。中でも、他成分と混合した際の安定性の点から、イソプロパノール分散コロイド状シリカが好ましい。市販品としては、日産化学工業(株)製 スノーテックスIPA−ST、触媒化成工業(株)製 OSCAL1432などが挙げられる。
【0042】
また、コロイド状シリカにコロイド状のアルミナやチタニアを混合して用いることもできる。
【0043】
シリカ系組成物の調製方法としては、例えば、式(1)で表されるオルガノアルコキシシラン類、分子内に二重結合を有するシランカップリング剤、式(2)で表されるフェニルアルコキシシラン類と式(3)で表されるアルキルアルコキシシラン類とのいずれか一方または両方、コロイド状シリカと、水(全シラン化合物の合計1モルに対して、例えば1〜10モル)とを混合し、さらに塩酸、酢酸等を加えて混合液を酸性(例えばpH2.0〜5.0)にして数時間から数日間攪拌し続け加水分解を充分に進行させる方法がある。このとき、エタノール、イソプロパノール等の親水性の有機溶剤を加えても良い。
【0044】
また、通常加水分解反応に続いて、縮合反応も進行するが、加水分解が充分に進行した後、縮合の反応を速めるために水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム等を添加してpHを中性付近(例えばpH6.0〜7.0)に制御しても良い。
【0045】
ここで、(A)オルガノアルコキシシラン類、(B)シランカップリング剤、(C)フェニルアルコキシシラン類とアルキルアルコキシシラン類とのいずれか一方または両方、(d)コロイド状シリカの配合比は特に制限されず、所望の保護被膜の性能に応じて適宜決定すれば良い。通常は、(A)成分100モルに対して、(B)成分1〜20モル、(C)成分2〜30モル、(d)成分25〜300モルとするのが好ましい。
【0046】
シランカップリング剤(B)の配合比が、オルガノアルコキシシラン類(A)100モルに対して1モル以上であれば、保護被膜と樹脂成形品の密着性が向上する。また、20モル以下であれば得られる保護被膜の耐摩耗性低下の不具合が発生し難くなる。また、鋳型からの離型性を悪化させることなく、保護被膜と樹脂成形品との密着性を向上させることができる。特に好ましいシランカップリング剤(B)の配合比は、オルガノアルコキシシラン類(A)100モルに対して、2〜10モルである。
【0047】
フェニルアルコキシシラン類、アルキルアルコキシシラン類のいずれか一方または両方(C)の配合比が、オルガノアルコキシシラン類(A)100モルに対して、2モル以上であれば、得られる保護被膜を有する樹脂成形品の鋳型からの離型性が良好になる。また、30モル以下であれば得られる保護被膜の耐摩耗性低下の不具合が発生し難くなる。特に好ましい(C)成分の配合比は、オルガノアルコキシシラン類(A)100モルに対して、5〜20モルである。
【0048】
コロイド状シリカ(d)の配合比が、オルガノアルコキシシラン類(A)100モルに対して、25モル以上であれば、得られる保護被膜の耐摩耗性を向上させることができる。300モル以下であれば、得られる保護被膜のクラック発生を抑えることができる。特に好ましい(d)成分の配合比は、オルガノアルコキシシラン類(A)100モルに対して、50〜200モルである。
【0049】
なお、上述した仕込みモル数において、(A)、(B)、(C)、(d)成分のモル数は、以下の式で示されるものである。
(A)成分のモル数=(オルガノアルコキシシラン類の仕込み質量)/(オルガノアルコキシシラン類の分子量)
(B)成分のモル数=(シランカップリング剤の仕込み質量)/(シランカップリング剤の分子量)
(C)成分のモル数=(フェニルアルコキシラン類の仕込み質量)/(フェニルアルコキシシラン類の分子量)+(アルキルアルコキシシラン類の仕込み質量)/(アルキルアルコキシシラン類の分子量)
(d)成分のモル数=(コロイド状シリカ溶液中の仕込みシリカ(固形分)質量)/(シリカの分子量;60.1(SiO2として))。
【0050】
本発明の保護被膜に適したシリカ系組成物を硬化させるためには、硬化促進剤の併用が効果的である。この硬化促進剤としては、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、スルホン酸、パラトルエンスルホン酸、三フッ化ホウ素及びその電子供与体との錯体、SnCl4、ZnCl3、FeCl3、AlCl3、SbCl5、TiCl4などのルイス酸およびその錯体、酢酸ナトリウム、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ等の有機酸金属塩、ホウフッ化亜鉛、ホウフッ化スズ等のホウフッ化金属塩類、ホウ酸エチル、ホウ酸メチル等のホウ酸有機エステル類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物、テトラブトキシチタン、テトライソプロポキシチタン等のチタネートエステル類、クロムアセチルアセトネート、チタニルアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセトネート、コバルトアセチルアセトネート、ニッケルアセチルアセトネート等の金属アセチルアセトネート類、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、グアニジン、ピグアニド、イミダゾール等のアミン類などが挙げられる。
【0051】
これらの硬化促進剤の使用割合は、(A)、(B)、(C)、(d)成分を合計した固形分100質量部に対し0.01〜10質量部用いることが好ましい。0.01質量部以上使用することで硬化を促進性することができる。10質量部以下で使用することにより保存安定性を悪化させることなく硬化を促進することができる。
【0052】
本発明のシリカ系組成物は、成分(a)、(b)、(c)および(d)成分を均一に混合させ、固形分濃度を調整し、固形分の分散安定性、保存安定性を向上させるために有機溶媒を含有することが好ましい。有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、セロソルブ類、エステル類、芳香族化合物類、エステル類などを挙げることができる。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどを挙げることができる。これらは1種あるいは2種以上を混合して使用することもできる。本発明のシリカ系組成物は、その全固形分濃度は50質量%以下であることが好ましい。全固形分濃度を50質量%以下で使用することにより保存安定性を保つことができる。
【0053】
さらに本発明のシリカ系組成物には、必要に応じて表面平滑剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、貯蔵安定剤、硬化剤、レベリング剤などの各種添加剤を適宜添加して使用することができる。
【0054】
保護被膜に適したシリカ系組成物を調製する方法の好適な一例を説明する。まず、式(1)で表されるオルガノアルコキシシラン類と、分子内に二重結合を有するシランカップリング剤と、式(2)で表されるフェニルアルコキシシラン類と式(3)で表されるアルキルアルコキシシラン類とのいずれか一方または両方、をよく混合する。この混合液を攪拌しながら、適量の水を入れ十分に加水分解する。その際、加水分解を促進するために塩酸、酢酸などによりpH2〜5に調整する。さらに親水性溶剤分散コロイド状シリカを加え攪拌を続ける。3〜5時間程度攪拌を続け、NMR法により充分に加水分解されているのを確認した後、アンモニウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム水溶液などを添加しpHを6〜7程度に調整し約20時間程度攪拌を続け縮合を行う。その後、有機溶媒、紫外線吸収剤、必要に応じ硬化剤、レベリング剤などを添加し均一に混合して、シリカ系組成物を得ることができる。
【0055】
この方法において、式(1)で表されるオルガノアルコキシシラン類、分子内に二重結合を有するシランカップリング剤、式(2)で表されるフェニルアルコキシシラン類、式(3)で表されるアルキルアルコキシシラン類は、それぞれに適量の水で加水分解した後、混合してもよいし、予め全てを混合した後、適量の水を加え加水分解しても良い。さらには、コロイド状シリカを予め混合し、その後加水分解を行っても良い。
【0056】
本発明において、保護被膜を有する樹脂成形品を得る方法としては、金属あるいはガラス等からなる鋳型の内面の少なくとも一部に保護被膜形成用のシリカ系組成物を塗布し、加熱硬化して保護被膜膜を形成した後、樹脂成形品原料を鋳型に注入し重合することにより、表面の少なくとも一部を保護被膜で被覆された樹脂成形品を得る方法がある。
【0057】
鋳型の内面の少なくとも一部にシリカ系組成物を塗布する方法としては、刷毛塗り法、流延法、ローラーコート法、バーコート法、噴霧コート法、エアーナイフコート法、ディッピング法等を挙げることができるが特に限定されない。シリカ系組成物の塗布量としては、得られる保護被膜の膜厚が1〜20μmとなるように塗布するのがよい。保護被膜の膜厚を1μm以上とすることにより、耐摩耗性を得ることができる。また、膜厚を20μm以下とすることで硬化時のクラック発生を抑制することができる。より好ましい膜厚は、2〜10μmである。
【0058】
本発明により、その表面に保護被膜が形成される樹脂成形品は、公知の方法である(メタ)アクリル系樹脂成形品原料を鋳型に注入し重合することにより得られる。(メタ)アクリル系樹脂成形品原料とは、(メタ)アクリル系単量体を主成分とするものである。(メタ)アクリル系単量体と共重合可能な単量体を含んでも良い。また、鋳型注入に支障のない範囲で、予め重合したものでも良い。
【0059】
(メタ)アクリル系単量体とは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルメタクリレート、プロピルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート等を挙げることができる。特に、得られる樹脂成形品の耐熱性、弾性率に優れる点でメチルメタクリレートが好ましい。
【0060】
また、(メタ)アクリル系単量体と共重合可能な単量体としては、スチレン、アクリロニトリル、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ジアリルフタレート等を挙げることができる。
【0061】
本発明で使用できる鋳型は、容易に入手できる点でステンレスなどの金属製またはガラス製が好ましい。特に、樹脂成形品原料の注型の状態、重合の状態が目視確認できる点で透明なガラス製が好ましい。ガラスの素材としては特に制限はないが、ソーダガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスなどが使用可能である。
【0062】
本発明で得られる保護被膜を有する樹脂成形品は、外観、耐擦傷性、耐摩耗性に優れたものであるから、例えば窓ガラス、看板、照明器具用カバー、光学用部品、自動車関連部品等の用途に非常に有用である。
【0063】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明は実施例に限定されるものではない。また、実施例中の各種物性の測定および評価は、以下に示す方法で行った。
1)鋳型離型性
鋳型から樹脂成形品を離型する際、樹脂成形品の破損、鋳型の破損がなく良好に離型できたものを良好(○)とした。樹脂成形品が破損、あるいは鋳型が破損したものを不良(×)とした。
2)外観
目視にて樹脂成形品の透明性、クラック、白化の有無を観察し、透明でクラック、白化の欠陥がないものを良好(○)とした。不透明な部分のあったもの、クラック、白化の欠陥があったものを不良(×)とした。
3)耐摩耗性
樹脂成形品の表面を、#000のスチールウールにて、1kg/cm2の圧力を加え10往復擦り、1×3cmの範囲に発生した傷の程度を観察し、以下の基準で評価した。
A … ほとんどキズがつかない。光沢面あり。
B … 1〜10本のキズがつく。光沢面あり。
C … 10〜100本のキズがつく。光沢面あり。
D … 無数(100本より多い)のキズがつく。光沢面あり。
E … 光沢面がなくなる。
4)被膜密着性
樹脂成形品の保護被膜層へ、カミソリの刃で1mm間隔に縦横11本ずつの切り目を入れて100個の碁盤目をつくり、セロハンテープをよく密着させた後、45゜手前方向に急激に剥した時、保護被膜層が剥離せずに残存したときのマス目の数により以下の基準で評価した。
○ … 剥離したマス目が無い(密着性良好)。
△ … 剥離したマス目が1/100以上5/100以下(密着性中程度)。
× … 剥離したマス目が6/100以上(密着性不良)。
[実施例1]
(A)成分としてメチルトリメトキシシラン13.6g(0.100mol)、(B)成分としてp−ビニルフェニルトリメトキシシラン1.12g(0.005mol)、(C)成分としてフェニルトリメトキシシラン1.98g(0.010mol)、(d)成分としてイソプロピルアルコール分散コロイド状シリカ(粒子径10〜20nm、固形分30質量%、日産化学工業(株)製、商品名スノーテックスIPA−ST)20.0g(0.100mol)、水20.0gを混合し、均一溶液とした。この溶液を攪拌しつつ、さらに溶液がpH2.0となるように0.05N塩酸を加えた。溶液が発熱するので、水浴で冷却しつつ、液温を約10℃に維持しながら4時間攪拌を続け充分に加水分解を行った。
【0064】
次いで、溶液のpHが6.8となるように酢酸ナトリウムを加え、さらに20時間攪拌した。
【0065】
有機溶剤としてジアセトンアルコール12.0gおよびイソプロピルアルコール12.0gを加え攪拌し均一溶液とした。さらに、日本ユニカー(株)製シリコーン系界面活性剤L−7001を0.01g添加し、約1時間室温で攪拌し、保護被膜形成用のシリカ系組成物を得た。
【0066】
得られたシリカ系組成物を、バーコーターで縦600mm、横400mm、厚さ5mmのソーダガラス製フロートガラス板に塗布し、120℃の熱風乾燥機中で20分間加熱乾燥して厚み約4μmの保護被膜層を形成した。
【0067】
このように処理した2枚のガラス板を保護被膜が内側になるように対向させ、周囲を軟質塩化ビニルガスケットで封じ鋳型とした。
【0068】
鋳型のガラス板間隔が約1.3mmとなるように、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.05質量%を添加したメチルメタクリレートを注入し鋳型の周囲を万力で固定した。この鋳型を熱風乾燥機に入れ、50℃で4時間、次いで130℃で2時間加熱重合させた。冷却後、ガラス製鋳型より厚み約1mmの樹脂板を剥離し、保護被膜を有する樹脂板を得た。
【0069】
この樹脂板は優れた鋳型離型性、外観、耐摩耗性、被膜密着性を有していた。評価結果を表1に示した。
[実施例2〜11]
表1に示す各種組成の保護被膜形成用のシリカ系組成物を実施例1と同様の方法で調製し、実施例1と同様の方法にて保護被膜を有する樹脂板を作製した。これらの樹脂板について、実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。実施例2〜11で得た樹脂板は、実施例1と同様に優れた鋳型離型性、外観、被膜密着性、耐摩耗性を有していた。
【0070】
【表1】
表中の略号
MTMS:メチルトリメトキシシラン
ETMS:エチルトリメトキシシラン
MTES:メチルトリエトキシシラン
VPTMS:p−ビニルフェニルトリメトキシシラン
MPTMS:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
PhTMS:フェニルトリメトキシシラン
C6TMS:n−ヘキシルトリメトキシシラン
C10TMS:n−デシルトリメトキシシラン
CS:イソプロピルアルコール分散コロイダルシリカ(固形分30質量%、日産化学工業(株)製、商品名スノーテックスIPA−ST)
[比較例1]
(C)成分であるフェニルトリメトキシシランを使用しないこと以外は、実施例1と同様の方法で保護被膜形成用のシリカ系組成物を調製し、実施例1と同様の方法にて保護被膜を有する樹脂板の作製を試みた。その結果、鋳型のガラス板と樹脂板との密着力が強く、部分的にガラス板が破損し樹脂板に接着したり、部分的に樹脂板が破損しガラスに接着したりして、良好な樹脂板を得ることはできなかった。
[比較例2]
(B)成分であるp−ビニルフェニルトリメトキシシランを使用しないこと以外は、実施例1と同様の方法で保護被膜形成用のシリカ系組成物を調製し、実施例1と同様の方法にて保護被膜を有する樹脂板の作製を試みた。その結果、樹脂板は得られたものの、保護被膜はガラス板表面に残ったままで樹脂板に移行されなかった。得られた樹脂板は、実施例1と同様に評価し、その結果を表2に示した。外観は良好であったものの、樹脂板の耐摩耗性は低いものであった。
[比較例3、4]
表2に示す各種組成の保護被膜形成用のシリカ系組成物について実施例1と同様の方法で調製し、実施例1と同様の方法にて保護被膜を有する樹脂板の作製を実施した。得られた樹脂板は、実施例1と同様に評価し、その結果を表2に示した。鋳型から離型性がよく、外観が良好な樹脂板が得られ、保護皮膜の密着性も良好であったが、樹脂板の耐摩耗性は低いものであった。
[比較例5]
保護被膜を形成しないガラス板を鋳型として使用する以外は、実施例1と同様の方法で樹脂板の作製を試みた。鋳型から離型性よく、外観良好な樹脂板が得られたものの、樹脂板の耐摩耗性は低いものであった。実施例1と同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0071】
【表2】
表中の略号
MTMS:メチルトリメトキシシラン
VPTMS:p−ビニルフェニルトリメトキシシラン
PhTMS:フェニルトリメトキシシラン
CS:イソプロピルアルコール分散コロイダルシリカ(固形分30質量%、日産化学工業(株)製、商品名スノーテックスIPA−ST)
【0072】
【発明の効果】
本発明の樹脂成形品の製造方法によれば、外観、耐摩耗性、被膜密着性にすぐれた保護被膜を有する樹脂成形品を鋳型離型性よく得ることができる。また、特にガラス鋳型を使用した際にも鋳型離型性よく樹脂成形品を得ることができる。
Claims (4)
- (a)式(1)で表されるオルガノアルコキシシラン類の加水分解物、
R1Si(OR2)3 ・・(1)
(式中、R1は炭素数1〜5の有機基、R2は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す。)
(b)分子内に二重結合基を有するシランカップリング剤の加水分解物、
(c)式(2)で表されるフェニルアルコキシシラン類の加水分解物と式(3)で表されるアルキルアルコキシシラン類の加水分解物とのいずれか一方あるいは両方、
PhSi(OR3)3 ・・(2)
(式中、Phは置換基を有してもよいフェニル基、R3は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す。)
R4Si(OR5)3 ・・(3)
(式中、R4は炭素数6〜16のアルキル基、R5は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す。)
(d)コロイド状シリカ、
を含むシリカ系組成物。 - 請求項1記載のシリカ系組成物を加熱硬化してなる保護被膜が表面の少なくとも一部に被覆されてなる(メタ)アクリル系樹脂成形品。
- 請求項1記載のシリカ系組成物を、鋳型の内面の少なくとも一部に塗布し、加熱硬化して保護被膜を形成した後、(メタ)アクリル系樹脂成形品原料を鋳型に注入し重合することにより、表面の少なくとも一部が保護被膜により被覆されてなる樹脂成形品の製造方法。
- 前記鋳型が、ガラス製である請求項3記載の樹脂成形品の製造方法。
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