JP6805475B2 - 液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子 - Google Patents

液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子 Download PDF

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Description

本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子に関する。
従来、液晶表示素子としては、電極構造や使用する液晶分子の物性、製造工程等が異なる種々の駆動方式のものが開発されており、例えばTN(Twisted Nematic)型やSTN(Super Twisted Nematic)型、VA(Vertical Alignment)型、IPS型(In-Plane Switching)、FFS(fringe field switching)型等の各種液晶表示素子が知られている。これら液晶表示素子は、液晶分子を配向させるための液晶配向膜を有する。液晶配向膜の材料としては、耐熱性や機械的強度、液晶との親和性などの各種特性が良好である点から、ポリアミック酸やポリイミドが一般に使用されている。
また近年、ポリアミック酸エステルを重合体成分の少なくとも一部に用いた液晶配向剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、重合体成分としてポリアミック酸エステルとポリアミック酸とを液晶配向剤に含有させるとともに、ポリアミック酸エステルの重量平均分子量をポリアミック酸よりも小さくすることが開示されている。この特許文献1に記載の液晶配向剤によれば、液晶配向膜における膜表面に生じる微細な凹凸が低減され、液晶表示素子における液晶配向性及び電気的特性が改善される旨が特許文献1には記載されている。
国際公開第2011/115078号
近年、大画面で高精細の液晶テレビが主体となり、またスマートフォンやタブレットPC等といった小型の表示端末の普及が進み、液晶パネルに対する高精細化の要求は更に高まりつつある。また、近年における液晶表示素子の多用途化に伴い、液晶表示素子は、より過酷な状況で使用されることが想定される。したがって、液晶表示素子としては、要求される各種特性をバランス良く好適に発現することが望ましい。
本発明は、各種特性をバランス良く好適に発現可能な液晶表示素子を得ることができる液晶配向剤を提供することを一つの目的とする。
本発明者は上記のような従来技術の課題を達成するべく鋭意検討し、アミック酸構造のカルボキシル基部分に機能性官能基を導入することにより、上記課題を解決可能であることを見出した。具体的には、以下の液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子が提供される。
本開示は一つの側面において、下記式(1)で表される部分構造を有する重合体(P)を含有する液晶配向剤を提供する。
Figure 0006805475
(式(1)中、Rは4価の有機基であり、Rは2価の有機基である。X及びXは、それぞれ独立に水酸基又は炭素数1〜40の1価の有機基である。ただし、X及びXの少なくともいずれかは、2個以上の芳香環が窒素原子に直結した芳香族アミン構造、複素環基、重合性基及び光転位性基よりなる群から選ばれる一種を有する1価の有機基である。)
また、別の一つの側面において、上記液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を提供する。また、上記液晶配向膜を備える液晶表示素子を提供する。
液晶配向剤の重合体成分の少なくとも一部に、特定の部分構造を有する重合体(P)を含有させることにより、各種特性をバランス良く発現可能な液晶表示素子を得ることができる。
FFS型液晶セルの概略構成図。 ラビング処理による液晶表示素子の製造に用いたトップ電極の平面模式図。(a)はトップ電極の上面図であり、(b)はトップ電極の部分拡大図である。 4系統の駆動電極を示す図。 光配向処理による液晶表示素子の製造に用いたトップ電極の平面模式図。(a)はトップ電極の上面図であり、(b)はトップ電極の部分拡大図である。
以下に、本開示の液晶配向剤に配合される成分、及び必要に応じて任意に配合されるその他の成分について説明する。
<重合体(P)>
本開示の液晶配向剤は、下記式(1)で表される部分構造を有する重合体(P)を含有する。
Figure 0006805475
(式(1)中、Rは4価の有機基であり、Rは2価の有機基である。X及びXは、それぞれ独立に水酸基又は炭素数1〜40の1価の有機基である。ただし、X及びXの少なくともいずれかは、2個以上の芳香環が窒素原子に直結した芳香族アミン構造、複素環基、重合性基及び光転位性基よりなる群から選ばれる一種を有する1価の有機基である。)
上記式(1)において、X及びXの炭素数1〜40の1価の有機基としては、例えば炭素数1〜40の1価の炭化水素基、炭化水素基のメチレン基を−O−、−S−、−CO−、−COO−、−COS−、−NR−、−CO−NR−、−Si(R−(ただし、Rは、水素原子又は炭素数1〜12の1価の炭化水素基である。)、−N=N−、−SO−等で置き換えてなる1価の基、該1価の基及び炭化水素基の炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1個をハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、水酸基、アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、メルカプト基、ニトロソ基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基、シラノール基、スルフィノ基、ホスフィノ基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、アシル基等で置換してなる1価の基、複素環を有する1価の基、などが挙げられる。ただし、X及びXの少なくともいずれかは、2個以上の芳香環が窒素原子に直結した芳香族アミン構造(以下、「特定芳香族アミン構造」とも称する。)、複素環基、重合性基及び光転位性基よりなる群から選ばれる一種の機能性官能基を有する1価の有機基である。
ここで、本明細書において「炭化水素基」は、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。
重合体(P)は、有機化学の定法を適宜組み合わせることによって合成することができる。合成方法の一例としては、例えばテトラカルボン酸二無水物を、上記機能性官能基を有する化合物(E)と反応させて、上記機能性官能基を有するテトラカルボン酸ジエステルを合成し、次いで、得られたテトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを反応させる方法などが挙げられる。
なお、本明細書において「テトラカルボン酸ジエステル」とは、テトラカルボン酸が有する4個のカルボキシル基のうちの2個がエステル化された化合物を意味する。「テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物」とは、テトラカルボン酸が有する4個のカルボキシル基のうちの2個がエステル化され、残りの2個がハロゲン化された化合物を意味する。
[テトラカルボン酸二無水物]
重合体(P)の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−3a,4,5,9b−テトラヒドロナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−8−メチル−3a,4,5,9b−テトラヒドロナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸2:4,6:8−二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、エチレンジアミン四酢酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、1,3−プロピレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)などを;それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。重合体(P)の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物は、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、上記式(1)におけるRは、テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の基、すなわち、テトラカルボン酸二無水物から2つの酸無水物基を取り除いた残基である。
テトラカルボン酸二無水物としては、これらのうち、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2:3,5:6−二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−3a,4,5,9b−テトラヒドロナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−8−メチル−3a,4,5,9b−テトラヒドロナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸2:4,6:8−二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。これらの好ましい化合物の使用量(2種以上使用する場合にはその合計量)は、重合体(P)の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の全量に対して、5モル%以上とすることが好ましく、10モル%以上とすることがより好ましく、20モル%以上とすることがより好ましい。
[化合物(E)]
(特定芳香族アミン構造を有する化合物)
化合物(E)が特定芳香族アミン構造を有する化合物(以下、「化合物(E−1)」ともいう。)である場合、特定芳香族アミン構造中の窒素原子に直結する芳香環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられる。好ましくはベンゼン環である。特定芳香族アミン構造の好ましい具体例としては、例えば下記式(2−1)で表される基、及び下記式(2−2)で表される基などが挙げられる。
Figure 0006805475
(式(2−1)及び式(2−2)中、Rは水素原子又は1価の炭化水素基である。R及びRは、それぞれ独立に1価の置換基である。dは0〜4の整数であり、e及びfはそれぞれ独立に0〜5の整数である。「*」は結合手を示す。)
上記式(2−1)において、Rの1価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐状のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メチルフェニル基等が挙げられる。Rは、液晶表示素子の残像特性(特に、直流電圧の印加によって蓄積した残留電荷に起因する「DC残像」と称する焼き付き特性)の改善効果が高い点で、水素原子、メチル基又はフェニル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
及びRの1価の置換基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のアリール基(フェニル基、トリル基等)、ニトロ基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、ニトロソ基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基、シラノール基、スルフィノ基、ホスフィノ基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、アシル基などが挙げられる。
d、e及びfは、0又は1であることが好ましい。
化合物(E−1)は、例えば下記式(3−1)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 0006805475
(式(3−1)中、Aは上記式(2−1)で表される基又は上記式(2−2)で表される基であり、R11は単結合又は2価の炭化水素基である。)
上記式(3−1)において、R11の2価の炭化水素基としては、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられる。これらの具体例としては、2価の鎖状炭化水素基として、例えばメチレン基、エチレン基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、ヘプタンジイル基、オクタンジイル基、ノナンジイル基、デカンジイル基等が挙げられ、これらは直鎖状でも分岐状でもよい。また、R11の2価の脂環式炭化水素基としては、シクロへキシレン基、−R−(CH−(ただし、Rはシクロヘキシレン基、nは1〜5の整数である。)などが挙げられ、2価の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニレン基、ビフェニレン基、−Ph−(CH−(ただし、Phはフェニレン基、nは1〜5の整数である。)などが挙げられる。
上記式(3−1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(3−1−1)〜式(3−1−5)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。なお、化合物(E−1)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
Figure 0006805475
化合物(E−1)を用いた場合、上記式(1)中のX及びXの少なくともいずれかに、特定芳香族アミン構造を有する重合体(P)を得ることができる。こうした重合体(P)を含有する液晶配向剤によれば、残留DCが少なく、電気特性及び信頼性が良好な液晶表示素子が得られる点で好ましい。
(複素環基を有する化合物)
化合物(E)が複素環基を有する化合物(以下、「化合物(E−2)」ともいう。)である場合、該複素環基は、液晶表示素子の信頼性の改善効果が高い点で、窒素含有複素環基であることが好ましく、例えば、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、インドール、ベンゾイミダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、キノキサリン、フタラジン、トリアジン、チアゾール、イソチアゾール、ベンゾチアゾール、5,6,7,8−テトラヒドロキノリン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、デカヒドロキノリン等の窒素含有複素環からn個の水素原子を取り除いたn価の基などが挙げられる。複素環基が有する複素環は、これらの中でも、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアゾール、ピラジン又はベンズイミダゾールであることが好ましい。
複素環基は、環部分に置換基が導入された基であってもよい。当該置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、塩素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基、などが挙げられる。
化合物(E−2)は、例えば下記式(3−2)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 0006805475
(式(3−2)中、Aは窒素含有複素環基であり、R12は単結合又は2価の炭化水素基である。)
上記式(3−2)において、R12の2価の炭化水素基の説明は上記式(3−1)のR11の説明を適用することができる。
上記式(3−2)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(3−2−1)〜式(3−2−22)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。なお、化合物(E−2)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
Figure 0006805475
Figure 0006805475
化合物(E−2)を用いた場合、上記式(1)中のX及びXの少なくともいずれかに複素環基を有する重合体(P)を得ることができる。こうした重合体(P)を含有する液晶配向剤によれば、信頼性及び電気特性が良好な液晶表示素子が得られる点で好ましい。
(重合性基を有する化合物)
化合物(E)が重合性基を有する化合物(以下、「化合物(E−3)」ともいう。)である場合について、重合性基としては、光又は熱により重合を開始する基が挙げられる。重合性基としては、例えば重合性不飽和結合を有する基などが挙げられ、それらの具体例としては、例えば(メタ)アクリロイルオキシ基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルオキシ基(CH=CH−O−)、下記式(p−1)及び式(p−2)
Figure 0006805475
(式(p−1)中、Xは酸素原子又は−NH−である。「*」は結合手を示す。)
で表される基などが挙げられる。なお、(メタ)アクリロイルオキシ基は「アクリロイルオキシ基」及び「メタクリロイルオキシ基」を含む意味である。(メタ)アクリルアミド基は「アクリルアミド基」及び「メタクリルアミド基」を含む意味である。重合性基は、光や熱に対する反応性が高い点で、中でも(メタ)アクリロイルオキシ基であることが好ましい。
化合物(E−3)は、例えば下記式(3−3)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 0006805475
(式(3−3)中、Aは重合性基であり、R13は単結合又は2価の炭化水素基である。)
上記式(3−3)において、R13の2価の炭化水素基の説明は上記式(3−1)のR11の説明を適用することができる。
上記式(3−3)で表される化合物の具体例としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−ビニルオキシエタノール、2−(4−ビニルベンジルオキシ)エタノール、N−(ヒドロキシメチル)マレイミド、N−ヒドロキシマレイミド等が挙げられる。化合物(E−3)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
化合物(E−3)を用いた場合、上記式(1)中のX及びXの少なくともいずれかに重合性基を有する重合体(P)を得ることができる。こうした重合体(P)を含有する液晶配向剤によれば、光照射により配向性を付与した場合のプレチルト角特性を良好にできる点、電気特性及び信頼性が良好な液晶表示素子が得られる点で好ましい。
(光転位性基を有する化合物)
化合物(E)の一例としては、光転位性基を有する化合物(以下、「化合物(E−4)」ともいう。)が挙げられる。化合物(E−4)が有する光転位性基は、光照射により転位反応が誘起される構造を有する官能基であり、例えば下記式(p−3)で表される構造(以下、「芳香族エステル含有構造」とも称する。)を有する基などが挙げられる。
Figure 0006805475
(式(p−3)中、Xは、硫黄原子、酸素原子又は−NH−である。「*」はそれぞれ結合手を示す。但し、2つの「*」のうち少なくとも1つは芳香環に結合している。)
上記式(p−3)において、「*」が結合している芳香環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。2つの「*」は、少なくとも1つが芳香環に結合していればよいが、光応答性の観点から、2つの「*」がそれぞれ芳香環に結合していることが好ましい。
光転位性基を有する化合物(E−4)は、例えば下記式(3−4)で表される。
Figure 0006805475
(式(3−4)中、Aは光転位性基であり、R14は単結合又は2価の炭化水素基である。)
上記式(3−4)において、R14の2価の炭化水素基の説明は上記式(3−1)のR11の説明を適用することができる。
上記式(3−4)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(3−4−1)〜式(3−4−13)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。なお、化合物(E−4)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
Figure 0006805475
化合物(E−4)を用いた場合、上記式(1)中のX及びXの少なくともいずれかに光転位性基を有する重合体(P)を得ることができる。こうした重合体(P)を含有する液晶配向剤によれば、AC残像が少なく、電気特性及び信頼性が良好な液晶表示素子が得られる点で好ましい。
(テトラカルボン酸二無水物と化合物(E)との反応)
テトラカルボン酸二無水物と化合物(E)の反応は、必要に応じて有機溶媒中で行うことができる。使用する有機溶媒は、テトラカルボン酸二無水物及び化合物(E)に対して不活性であれば特に限定されないが、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン;ヘキサン、ヘプタン、トルエン等の炭化水素;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル化合物、などが挙げられる。なお、これらの有機溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
化合物(E)の使用割合は、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、通常2〜100モルであり、2〜40モルとすることが好ましい。このときの反応温度は、使用する化合物(E)の種類に応じて適宜設定することができるが、−20℃〜150℃とすることが好ましく、0〜100℃とすることがより好ましい。反応時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。また、反応後、必要に応じて再沈殿を行ってもよい。得られた沈殿物は、その後、必要に応じて洗浄及び乾燥することにより、目的とするテトラカルボン酸ジエステルを得ることができる。
(ジアミン)
テトラカルボン酸ジエステルとの反応(縮重合)に使用するジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどが挙げられる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えばm−キシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などを;
芳香族ジアミンとして、例えばドデカノキシジアミノベンゼン、テトラデカノキシジアミノベンゼン、ペンタデカノキシジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシジアミノベンゼン、オクタデカノキシジアミノベンゼン、コレスタニルオキシジアミノベンゼン、コレステリルオキシジアミノベンゼン、ジアミノ安息香酸コレスタニル、ジアミノ安息香酸コレステリル、ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、N−(2,4−ジアミノフェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)ベンズアミド、下記式(D−1)
Figure 0006805475
(式(D−1)中、XI及びXIIは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−であり、Rは炭素数1〜3のアルカンジイル基であり、RIIは単結合又は炭素数1〜3のアルカンジイル基であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜20の整数であり、dは0又は1である。但し、a及びbが同時に0になることはない。)
で表される化合物などの配向性基含有ジアミン:
4,4’−ジアミノジフェニルアミン、N,N−ビス(4−アミノフェニル)メチルアミン、N−(3,5−ジアミノフェニル)ベンゼンアミン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、下記式(d−1)
Figure 0006805475
で表される化合物等の特定芳香族アミン構造を有するジアミン;
2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、下記式(d−2)〜式(d−5)
Figure 0006805475
のそれぞれで表される化合物等の複素環基含有ジアミン;
下記式(d−6)
Figure 0006805475
(式(d−6)中、Rは水素原子又はメチル基である。)
で表される化合物等の重合性基含有ジアミン;
4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート、3,3’−ジメチル−4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート、3−メチル−4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート、下記式(d−7)〜(d−14)
Figure 0006805475
のそれぞれで表される化合物等の光転位性基含有ジアミン;
p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,7−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、ビス[2−(4−アミノフェニル)エチル]ヘキサン二酸、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,5−ジアミノ安息香酸などのその他のジアミン、などを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを;それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。
上記式(D−1)における「−X−(R−XII−」で表される2価の基としては、炭素数1〜3のアルカンジイル基、*−O−、*−COO−又は*−O−C−O−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。基「−C2c+1」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基などを挙げることができ、これらは直鎖状であることが好ましい。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位又は3,5−位にあることが好ましい。
上記式(D−1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(D−1−1)〜式(D−1−4)のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。
Figure 0006805475
なお、反応に使用するジアミンとしては、これらの化合物の1種を単独で又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
TN型、STN型又は垂直配向型の液晶表示素子用の液晶配向剤に適用する場合、重合体(P)の合成に使用するジアミンの少なくとも一部として配向性基含有ジアミンを使用することが好ましい。配向性基含有ジアミンが有する配向性基としては、例えば炭素数4〜20のアルキル基、炭素数4〜20のフルオロアルキル基、炭素数4〜20のアルコキシ基、炭素数17〜51のステロイド骨格を有する基、多環構造を有する基などが挙げられる。配向性基含有ジアミンを使用する場合、その使用割合は、液晶配向性を良好にする観点から、合成に使用する全ジアミンに対して、3モル%以上とすることが好ましく、5〜70モル%とすることがより好ましい。
上記式(1)におけるRは、ジアミンに由来する2価の基、すなわち、ジアミンから2つの1級アミノ基を取り除いた残基である。ここで、重合体(P)の合成に使用するジアミンの少なくとも一部に、上記機能性官能基を有するジアミンを用いた場合、上記式(1)のX及びXの少なくともいずれかと、Rとに上記機能性官能基を導入することができる。この場合、重合体1分子当たりの上記機能性官能基の数を多くでき、該機能性官能基が有する各種特性が十分に発現される点で好ましい。
上記機能性官能基を有するジアミンを使用する場合、その使用割合は、合成に使用する全ジアミンに対して、5モル%以上とすることが好ましく、10モル%以上とすることがより好ましい。
液晶配向剤により形成した塗膜に対して光配向法により液晶配向能を付与する場合、反応に使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの少なくとも一部を、光配向性構造を有する化合物としてもよい。光配向性構造としては、光異性化や光二量化、光分解等によって光配向性を示す基を採用することができる。具体的には、例えばアゾ化合物又はその誘導体を基本骨格として含有するアゾ含有基、桂皮酸又はその誘導体を基本骨格として含有する桂皮酸含有基、カルコン又はその誘導体を基本骨格として含有するカルコン含有基、ベンゾフェノン又はその誘導体を基本骨格として含有するベンゾフェノン含有基、クマリン又はその誘導体を基本骨格として含有するクマリン含有基、シクロブタン又はその誘導体を基本骨格として含有するシクロブタン含有構造、ビシクロ[2.2.2]オクテン又はその誘導体を基本骨格として含有するビシクロ[2.2.2]オクテン含有構造、上記式(p−3)で表される部分構造を基本骨格として含有する芳香族エステル含有構造などが挙げられる。
光配向性構造を有するモノマーを使用する場合、その使用割合は、光反応性の観点から、重合体の合成に使用するモノマーの全体量に対して20モル%以上とすることが好ましく、30〜80モル%とすることがより好ましい。
(テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとの反応)
テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとの反応は、好ましくは脱水触媒及び塩基の存在下、有機溶媒中において行われる。反応に供されるテトラカルボン酸ジエステルとジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸ジエステルのカルボキシル基が、0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.3〜1.2当量となる割合がより好ましい。
なお、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとの反応に際し、テトラカルボン酸二無水物及び機能性官能基を有さないテトラカルボン酸ジエステルよりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を併用してもよい。その場合、テトラカルボン酸二無水物及び機能性官能基を有さないテトラカルボン酸ジエステルの使用割合(2種以上使用する場合はその合計量)は、重合体(P)の合成に使用するテトラカルボン酸ジエステル及びテトラカルボン酸二無水物の合計に対して、50モル%以下とすることが好ましく、40モル%以下とすることがより好ましく、30モル%以下とすることがさらに好ましい。
反応に使用する有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒及びフェノール系溶媒よりなる群(第一群の有機溶媒)から選択される1種以上、又は、第一群の有機溶媒から選択される1種以上と、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素及び炭化水素よりなる群(第二群の有機溶媒)から選択される1種以上との混合物を使用することが好ましい。後者の場合、第二群の有機溶媒の使用割合は、第一群の有機溶媒及び第二群の有機溶媒の合計量に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、更に好ましくは30重量%以下である。
特に好ましい有機溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、m−クレゾール、キシレノール及びハロゲン化フェノールよりなる群から選択される1種以上を溶媒として使用するか、あるいはこれらの1種以上と他の有機溶媒との混合物を、上記割合の範囲で使用することが好ましい。有機溶媒の使用量(a)は、反応に使用するモノマーの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して、0.1〜50重量%になる量とすることが好ましい。
反応に使用する脱水触媒としては、例えば4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムハライド、カルボニルイミダゾール、ジシクロヘキシルカルボジイミド、リン系縮合剤などが挙げられる。これら脱水触媒の使用割合は、テトラカルボン酸ジエステル1モルに対して、2〜3モルとすることが好ましく、2〜2.5モルとすることがより好ましい。
塩基としては、例えばピリジン、トリエチルアミン等の3級アミンを好ましく使用することができる。塩基の使用割合は、ジアミン1モルに対して、2〜4モルとすることが好ましく、2〜3モルとすることがより好ましい。なお、上記反応は、反応の進行を促進させる目的でルイス酸の存在下で行ってもよい。ルイス酸としては、例えば塩化リチウム等のハロゲン化リチウムなどが挙げられる。
反応温度は、−20℃〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。反応時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
以上のようにして、重合体(P)を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれる重合体(P)を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離した重合体(P)を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。重合体(P)の単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
なお、重合体(P)は、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを反応させる方法のほか、例えば、[A]ポリアミック酸と化合物(E)とを反応させる方法、[B]上記機能性官能基を有するテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物と、ジアミンとを反応させる方法、などによって得ることができる。重合体(P)は、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。
ここで、方法[A]の場合、ポリアミック酸との反応に使用する化合物(E)としては、上記機能性官能基を有していれば特に制限されず、例えば上記化合物(E−1)〜化合物(E−4)や、上記機能性官能基を有するエポキシ化合物、チオール化合物及びアミン化合物などが挙げられる。また、ポリアミック酸と化合物(E)との反応に際しては、化合物(E)と共に、必要に応じて、機能性官能基を有さないその他のエステル化剤を併用してもよい。その他のエステル化剤としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類;フェノール、クレゾール等のフェノール類;N,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N−ジエチルホルムアミドジエチルアセタール等のアセタール系化合物、などが挙げられる。その他のエステル化剤を使用する場合、その使用割合は、反応に使用するエステル化剤の全体量に対して、30モル%以下とすることが好ましく、20モル%以下とすることがより好ましい。
ポリアミック酸と化合物(E)との反応は、好ましくは有機溶媒の存在下で行う。このとき、化合物(E)の使用割合は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.002〜10モルとすることが好ましく、0.02〜6モルとすることがより好ましい。使用する有機溶媒としては、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとの反応に使用する有機溶媒の説明を適用することができる。有機溶媒の使用量は、ポリアミック酸が、反応溶液の全量に対して0.1〜50重量%になる量とすることが好ましい。反応温度は、−20℃〜200℃が好ましく、0〜120℃がより好ましい。反応時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
方法[B]で使用するテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物は、上記の如くして得たテトラカルボン酸ジエステルを、塩化チオニル等の適当な塩素化剤と反応させることにより得ることができる。なお、ジアミンとの反応に使用する酸誘導体は、テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物のみであってもよいが、テトラカルボン酸二無水物を併用してもよい。反応に使用するジアミンとしては、テトラカルボン酸ジエステルとの反応に使用することができるジアミンとして例示した化合物等が挙げられる。重合体(P)の合成反応に供されるテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物の基「−COX(Xはハロゲン原子)」が0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.3〜1.2当量となる割合がより好ましい。
テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミンとの反応は、好ましくは塩基の存在下、有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は、−30℃〜150℃が好ましく、−10〜100℃がより好ましい。また、反応時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。反応に使用する有機溶媒としては、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとの反応に使用することができる有機溶媒の説明を適用することができる。有機溶媒の使用量は、テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物及びジアミンの合計量が、反応溶液の全量に対して0.1〜50重量%になる量とすることが好ましい。上記反応に使用する塩基としては、例えばピリジン、トリエチルアミン等の3級アミン;水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類などを好ましく使用することができる。塩基の使用量は、ジアミン1モルに対して、2〜4モルとすることが好ましく、2〜3モルとすることがより好ましい。
以上のようにして得られる重合体(P)は、これを濃度15重量%の溶液としたときに、20〜1,800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、50〜1,500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、重合体(P)の溶液粘度(mPa・s)は、重合体(P)の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度15重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
重合体(P)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜500,000であり、より好ましくは2,000〜300,000である。また、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは7以下であり、より好ましくは5以下である。このような分子量範囲にあることで、液晶表示素子の良好な配向性及び安定性を確保することができる。
<重合体(Q)>
本開示の液晶配向剤は、重合体成分として重合体(P)のみを含有していてもよいが、重合体(P)とともに、ポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(Q)を含有していてもよい。なお、重合体(P)と重合体(Q)とを含有する液晶配向剤を用いて基板上に塗膜を形成した場合、表面エネルギーの相違により、重合体(P)を塗膜の外層に偏在させることが可能となり、これにより上記の効果が得られたものと推測される。
(ポリアミック酸)
重合体(Q)としてのポリアミック酸は、例えばテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることによって得ることができる。反応に使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンとしては、重合体(P)の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの例示を適用することができる。
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が、0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.3〜1.2当量となる割合がより好ましい。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は、−20℃〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。また、反応時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。反応に使用する有機溶媒としては、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとの反応に使用する有機溶媒の例示を適用することができる。反応温度は、−20℃〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。また、反応時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリアミック酸を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸を脱水閉環してポリイミドとする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、又は単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。ポリアミック酸の単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。重合体(Q)としてポリアミック酸を含有させた場合、重合体(P)の配合による効果を得つつ、印刷性をさらに改善できる点で好ましい。
(ポリイミド)
重合体(Q)としてのポリイミドは、例えば上記の如くして合成されたポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存する部分イミド化物であってもよい。反応に使用するポリイミドは、そのイミド化率が20%以上であることが好ましく、30〜99%であることがより好ましく、40〜99%であることが更に好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、又はポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
ポリアミック酸の溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとの反応に使用する化合物として例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は、好ましくは1.0〜120時間、より好ましくは2.0〜30時間である。
このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。重合体(Q)としてポリイミドを含有させた場合、重合体(P)の配合による効果を得つつ、電気特性を改善することが可能となる点で好ましい。
重合体(Q)は、これを濃度15重量%の溶液としたときに、20〜1,800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、50〜1,500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、重合体(Q)の溶液粘度(mPa・s)は、重合体(Q)の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度15重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
重合体(Q)のGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜500,000であり、より好ましくは2,000〜300,000である。また、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは7以下であり、より好ましくは5以下である。
本開示の液晶配向剤が重合体(Q)を含有する場合において、重合体(P)の含有割合は、重合体(P)が有する上記機能性官能基の種類に応じて適宜設定することが好ましい。具体的には、重合体(P)が上記式(1)中のX及びXの少なくともいずれかに特定芳香族アミン構造又は複素環基を有する場合、重合体(P)及び重合体(Q)の合計100重量部に対して、重合体(P)の含有割合を40重量部以上とすることが好ましい。重合体(P)の含有割合が40重量部未満であると、液晶表示素子の信頼性が劣る傾向にある。より好ましくは、45〜99重量部であり、更に好ましくは50〜97重量部であり、特に好ましくは60〜95重量部である。
重合体(P)が上記式(1)中のX及びXの少なくともいずれかに重合性基を有する場合、適度な高さのプレチルト角を塗膜に付与する観点から、重合体(P)の含有割合を、重合体(P)及び重合体(Q)の合計100重量部に対して3重量部以上とすることが好ましく、5〜95重量部とすることがより好ましく、10〜90重量部とすることがさらに好ましく、15〜85重量部とすることが特に好ましい。
重合体(P)が上記式(1)中のX及びXの少なくともいずれかに光転位性基を有する場合には、液晶表示素子の残像特性(特に、交流電圧に起因する「AC残像」と称する焼き付き特性)の改善効果を十分に得る観点から、重合体(P)の含有割合を、重合体(P)及び重合体(Q)の合計100重量部に対して3重量部以上とすることが好ましく、5〜95重量部とすることがより好ましく、10〜90重量部とすることがさらに好ましく、15〜85重量部とすることが特に好ましい。
<その他の成分>
本開示の液晶配向剤は、必要に応じて、重合体(P)及び重合体(Q)以外の成分(その他の成分)を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば重合体(P)及び重合体(Q)以外のその他の重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ基含有化合物」という。)、官能性シラン化合物等が挙げられる。
[その他の重合体]
上記その他の重合体は、溶液特性や電気特性の改善のために使用することができる。かかるその他の重合体としては、例えばアミック酸構造のカルボキシル基部分に上記機能性官能基を有さないポリアミック酸エステル、ポリオルガノシロキサン、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを主骨格に有する重合体等が挙げられる。その他の重合体を液晶配向剤に配合する場合、その配合割合は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100重量部に対して、50重量部以下とすることが好ましく、0.1〜40重量部とすることがより好ましく、0.1〜30重量部以下とすることが更に好ましい。
[エポキシ基含有化合物]
エポキシ基含有化合物は、液晶配向膜における基板表面との接着性や電気特性を向上させるために使用することができる。このようなエポキシ基含有化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、エチルグリシジルエーテル等を好ましいものとして挙げることができる。その他、エポキシ基含有化合物の例としては、国際公開第2009/096598号記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを用いることができる。
エポキシ基含有化合物を液晶配向剤に配合する場合、その配合割合は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100重量部に対して、40重量部以下とすることが好ましく、0.1〜30重量部とすることがより好ましい。
[官能性シラン化合物]
官能性シラン化合物は、液晶配向剤の印刷性の向上を目的として使用することができる。このような官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
その他の官能性シラン化合物を液晶配向剤に配合する場合、その配合割合は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100重量部に対して、2重量部以下とすることが好ましく、0.02〜0.2重量部とすることがより好ましい。
なお、その他の成分としては、上記のほか、分子内に少なくとも一つのオキセタニル基を有する化合物や酸化防止剤、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、充填剤、分散剤、増感剤などを挙げることができる。
<溶剤>
本開示の液晶配向剤は、重合体(P)、及び必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは適当な溶媒中に分散又は溶解してなる液状の組成物として調製される。
使用する有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより、液晶配向膜である塗膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。このとき、固形分濃度が1重量%未満である場合には、塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜が得にくくなる。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜が得にくく、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布性が低下する傾向にある。
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンナー法により基板に塗布する場合には、固形分濃度(液晶配向剤中の溶媒以外の全成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)が1.5〜4.5重量%の範囲であることが特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは10〜50℃であり、より好ましくは20〜30℃である。
<液晶表示素子>
本開示の液晶表示素子は、上記で説明した液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する。液晶表示素子の動作モードは特に限定せず、例えばTN型、STN型、VA型(VA−MVA型、VA−PVA型などを含む。)、IPS型、FFS型、OCB(Optically Compensated Bend)型など種々の動作モードに適用することができる。
液晶表示素子は、例えば以下の工程(1)〜(3)を含む工程により製造することができる。工程(1)は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程(2)及び工程(3)は各動作モード共通である。
[工程(1):塗膜の形成]
先ず、基板上に液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
(1−1)例えばTN型、STN型又はVA型の液晶表示素子を製造する場合、まず、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布する。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができる。パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後、フォト・エッチングによりパターンを形成する方法;透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法;などによることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性を更に良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成する面に、官能性シラン化合物や官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
液晶配向剤を塗布した後、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは40〜100℃である。プレベーク時間は、好ましくは0.25〜10分であり、より好ましくは0.5〜5分である。その後、溶剤を完全に除去し、必要に応じて重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。ポストベーク時間は、好ましくは5〜200分であり、より好ましくは10〜100分である。このようにして形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
(1−2)IPS型又はFFS型の液晶表示素子を製造する場合、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜又は金属膜からなる電極が設けられている基板の電極形成面と、電極が設けられていない対向基板の一面とに液晶配向剤をそれぞれ塗布し、次いで各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。このとき使用される基板及び透明導電膜の材質、塗布方法、塗布後の加熱条件、透明導電膜又は金属膜のパターニング方法、基板の前処理、並びに形成される塗膜の好ましい膜厚については上記(1−1)と同様である。金属膜としては、例えばクロムなどの金属からなる膜を使用することができる。
上記(1−1)及び(1−2)のいずれの場合も、基板上に液晶配向剤を塗布した後、有機溶媒を除去することによって液晶配向膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。このとき、塗膜形成後に更に加熱することによって、液晶配向剤に配合されているポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドの脱水閉環反応を進行させ、よりイミド化された塗膜としてもよい。
[工程(2):配向能付与処理]
TN型、STN型、IPS型又はFFS型の液晶表示素子を製造する場合、上記工程(1)で形成した塗膜に液晶配向能を付与する処理を実施する。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。配向能付与処理としては、塗膜を例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理、塗膜に対して偏光又は非偏光の放射線を照射する光配向処理などが挙げられる。一方、VA型液晶表示素子を製造する場合には、上記工程(1)で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対し配向能付与処理を施してもよい。
光配向処理において、塗膜に照射する放射線としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。放射線が偏光である場合、直線偏光であっても部分偏光であってもよい。また、用いる放射線が直線偏光又は部分偏光である場合には、照射は基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向とする。
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーなどを使用することができる。好ましい波長領域の紫外線は、光源を、例えばフィルター、回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。放射線の照射量は、好ましくは100〜50,000J/mであり、より好ましくは300〜20,000J/mである。また、塗膜に対する光照射は、反応性を高めるために塗膜を加温しながら行ってもよい。加温の際の温度は、通常30〜250℃であり、好ましくは40〜200℃であり、より好ましくは50〜150℃である。
なお、ラビング処理後の液晶配向膜に対して更に、液晶配向膜の一部に紫外線を照射することによって液晶配向膜の一部の領域のプレチルト角を変化させる処理や、液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成した上で先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにしてもよい。この場合、得られる液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。
PSA(Polymer sustained alignment)型の液晶表示素子を製造する場合には、上記工程(1)で形成した塗膜をそのまま用いて以下の工程(3)を実施してもよいが、液晶分子の倒れ込みを制御し、配向分割を簡易な方法で行う目的で弱いラビング処理等の配向処理を行ってもよい。VA型の液晶表示素子に好適な液晶配向膜はPSA型液晶表示素子にも好適に用いることができる。また、重合性基含有成分を含む液晶配向剤を用いて塗膜を形成した場合には、上記(1)で形成した塗膜をそのまま用いて以下の工程(3)を実施する。
[工程(3):液晶セルの構築]
(3−1)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。まず、第一の方法は、従来から知られている方法である。この方法では、先ずそれぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより液晶セルを製造する。また、第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。この手法では、液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、さらに液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせる。そして、液晶を基板の全面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより液晶セルを製造する。いずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、用いた液晶が等方相をとる温度まで更に加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。また、液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶;商品名「C−15」、「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、添加して使用してもよい。
(3−2)PSA型液晶表示素子を製造する場合には、液晶と共に光重合性化合物を注入又は滴下する点以外は上記(3−1)と同様にして液晶セルを構築する。その後、一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する。ここで印加する電圧は、例えば5〜50Vの直流又は交流とすることができる。また、照射する光としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができるが、300〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーなどを使用することができる。なお、上記の好ましい波長領域の紫外線は、光源を、例えばフィルター回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。光の照射量としては、好ましくは1,000J/m以上200,000J/m未満であり、より好ましくは1,000〜100,000J/mである。
(3−3)重合体(P)として光重合性基を有する重合体を含む液晶配向剤を用いて基板上に塗膜を形成した場合、一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する工程を経ることによって液晶表示素子を製造するものとしてもよい。印加する電圧や、照射する光の条件は上記(3−2)の説明を適用することができる。
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより液晶表示素子を得ることができる。液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
本開示の液晶表示素子は、種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイなどの各種表示装置に用いることができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
以下の例において、重合体の重量平均分子量Mw及び重合体溶液の溶液粘度は以下の方法により測定した。なお、以下では、式Xで表される化合物を単に「化合物X」と記すことがある。
[重合体の重量平均分子量Mw]
Mwは、以下の条件におけるGPCにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGRCXLII
溶剤:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm
[重合体溶液の溶液粘度]
重合体溶液の溶液粘度(mPa・s)は、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
<重合体の合成[1]>
[合成例1−1;重合体(A−1−1)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物100モル部、及び化合物(E)として4−ヒドロキシジフェニルアミン(上記式(3−1−1)で表される化合物)200モル部をテトラヒドロフラン中に添加し撹拌した。得られた沈殿物を濾別し、アセトンで洗浄した後に減圧乾燥することにより、テトラカルボン酸ジエステルとして化合物(AE−1−1)を粉末状で得た。次いで、化合物(AE−1−1)100モル部をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させた後、ここにジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルアミン100モル部を加えて溶解させた。この溶液に、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM、15±2重量%水和物)300モル部を添加し、室温で4時間反応を行い、ポリアミック酸エステルとして重合体(A−1−1)を含有する溶液を得た。得られた重合体(A−1−1)の重量平均分子量Mwは91,000、重合体粘度は400mPa・sであった。重合体溶液につき、20℃で3日間静置したところゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
[合成例1−2〜合成例1−4]
反応に使用するテトラカルボン酸ジエステル及びジアミンの種類及び量を下記表1の通り変更した以外は合成例1−1と同様にしてポリアミック酸エステルを合成した。なお、化合物(E)によるテトラカルボン酸二無水物の開環反応は、使用するテトラカルボン酸二無水物及び化合物(E)の種類を変更した以外は合成例1−1と同様の操作により行った。合成例1−2〜合成例1−4で得た重合体溶液のそれぞれにつき、20℃で3日間静置したところ、いずれもゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
Figure 0006805475
表1中の数値は、テトラカルボン酸二無水物については、反応に使用したテトラカルボン酸二無水物の全体量に対する使用割合(モル%)を示し、ジアミンについては、反応に使用したジアミンの全体量に対する使用割合(モル%)を示す(以下の表4、表7及び表10についても同じ)。
表1中の酸誘導体及びジアミンの略称は以下の通りである。
(酸誘導体)
AE−1−1; 1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物と、4−ヒドロキシジフェニルアミン(上記式(3−1−1)で表される化合物)との反応生成物
AE−1−2; ピロメリット酸二無水物と、4−ヒドロキシジフェニルアミン(上記式(3−1−1)で表される化合物)との反応生成物
AE−1−3; 1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジエチル(1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物とエタノールとの反応生成物)
AN−1; 1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
(ジアミン)
DA−1; 4,4’−ジアミノジフェニルアミン
DA−2; 4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
[合成例1−5;重合体(B−1−1)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物20gをエタノール200mL中に添加した。得られた沈殿物を濾別し、エタノールで洗浄した後に減圧乾燥することにより、テトラカルボン酸ジエステルとして化合物(AE−1−3)を粉末状で得た。次いで、化合物(AE−1−3)100モル部をNMPに溶解させた後、ここにジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルアミン100モル部を加えて溶解させた。この溶液に、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM、15±2重量%水和物)300モル部を添加し、室温で4時間反応を行い、ポリアミック酸エステルとして重合体(B−1−1)を含有する溶液を得た。得られた重合体(B−1−1)の重量平均分子量Mwは118,000、重合体粘度は520mPa・sであった。
[合成例1−6;重合体(B−1−2)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物100モル部、及びジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルアミン100モル部をNMPに溶解し、30℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸として重合体(B−1−2)を含有する溶液を得た。得られた重合体溶液をNMPにて15重量%となるように調製し、この溶液の重合体粘度を測定したところ420mPa・sであった。
[合成例1−7;重合体(B−1−3)の合成]
テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物100モル部、及びジアミンとして1,5−ビス(アミノフェノキシ)ペンタン100モル部をNMPに溶解し、30℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸として重合体(B−1−3)を含有する溶液を得た。得られた重合体溶液をNMPにて15重量%となるように調製し、この溶液の重合体粘度を測定したところ380mPa・sであった。
<液晶配向剤の調製及び評価[1]>
[実施例1−1]
(1)液晶配向剤の調製
重合体として合成例1−1で得た重合体(A−1−1)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びブチルセロソルブ(BC)からなる混合溶媒(NMP:BC=50:50(重量比))に溶解し、固形分濃度が3.5重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(R1−1)を調製した。
(2)塗布膜の表面凹凸性の評価
上記で調製した液晶配向剤(R1−1)を、ガラス基板上にスピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、庫内を窒素置換した200℃のオーブンで1時間加熱(ポストベーク)することにより、平均膜厚0.1μmの塗膜を形成した。得られた塗膜の表面を原子間力顕微鏡(AFM)にて観察し、中心平均粗さ(Ra)を測定した。評価は、Raが5nm未満の場合を表面凹凸性「良好」、5nm以上10nm未満であった場合を「可」、10nm以上の場合を「不良」として行った。本実施例ではRa=7nmであり、表面凹凸性は「可」であった。
(3)ラビング処理によるFFS型液晶表示素子の製造
図1に示すFFS型液晶表示素子10を作製した。先ず、パターンを有さないボトム電極15、絶縁層14としての窒化ケイ素膜、及び櫛歯状にパターニングされたトップ電極13がこの順で形成された電極対を片面に有するガラス基板11aと、電極が設けられていない対向ガラス基板11bとを一対とし、ガラス基板11aの透明電極を有する面と対向ガラス基板11bの一面とに、それぞれ上記(1)で調製した液晶配向剤(R1−1)を、スピンナーを用いて塗布して塗膜を形成した。次いで、この塗膜を80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、庫内を窒素置換したオーブン中で230℃にて15分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚0.1μmの塗膜を形成した。ここで使用したトップ電極13の平面模式図を図2に示した。なお、図2(a)は、トップ電極13の上面図であり、図2(b)は、図2(a)の破線で囲った部分C1の拡大図である。本実施例では、電極の線幅d1を4μm、電極間の距離d2を6μmとした。また、トップ電極13としては、電極A、電極B、電極C及び電極Dの4系統の駆動電極を用いた。図3に、用いた駆動電極の構成を示した。この場合、ボトム電極15は、4系統の駆動電極のすべてに作用する共通電極として働き、4系統の駆動電極の領域のそれぞれが画素領域となる。
次いで、ガラス基板11a,11b上に形成した塗膜の各表面にコットンにてラビング処理を実施し、液晶配向膜12とした。図2(b)に、ガラス基板11a上に形成した塗膜に対するラビング方向を矢印で示す。次に、一対の基板のうちの一方の基板における液晶配向膜を有する面の外縁にシール剤を塗布した後、これらの基板を、互いの基板11a,11bのラビング方向が逆平行となるように直径3.5μmのスペーサーを介して貼り合わせ、シール剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間に液晶MLC−6221(メルク社製)を注入し、液晶層16を形成した。さらに、基板11a,11bの外側両面に、偏光板(図示略)を、2枚の偏光板の偏光方向が互いに直交するように貼り合わせることにより液晶表示素子10を作製した。
(4)DC残像特性の評価(過酷条件)
上記で製造したFFS型液晶表示素子につき、100℃の環境温度において直流20Vの電圧を500時間印加し、直流電圧を切った直後の液晶セル内に残留した電圧(残留DC電圧)をフリッカー消去法により求めた。評価は、残留DC電圧の値が300mV未満であった場合「良好」、300mV以上500mV未満であった場合「可」、500mV以上であった場合「不良」とした。その結果、実施例1−1では、液晶表示素子の残留DC電圧の値は50mVであり、「良好」の評価であった。
(5)DC残像特性の評価(通常条件)
上記で製造したFFS型液晶表示素子につき、25℃の環境温度において直流10Vの電圧を20時間印加し、直流電圧を切った直後の液晶セル内に残留した電圧(残留DC電圧)をフリッカー消去法により求めた。評価は、残留DC電圧の値が300mV未満であった場合「良好」、300mV以上500mV未満であった場合「可」、500mV以上であった場合「不良」とした。その結果、実施例1−1では、液晶表示素子の残留DC電圧の値は10mVであり、「良好」の評価であった。
(6)電圧保持率の測定
上記で製造したFFS型液晶表示素子につき、23℃において1Vの電圧を0.5マイクロ秒の印加時間、2000ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から2000ミリ秒後の電圧保持率(VHR)を測定した。なお、測定装置としては、(株)東陽テクニカ製、VHR−1を使用した。評価は、電圧保持率が95%以上の場合を「良好」、90%以上95%未満の場合を「可」、90%未満の場合を「不良」とした。その結果、実施例1−1では電圧保持率が98%であり、「良好」の結果であった。
(7)信頼性の評価
上記で製造したFFS型液晶表示素子につき、上記(6)と同様に電圧保持率を測定し、その値を初期VHR(VHRBF)とした。次いで、初期VHR測定後の液晶表示素子につき、LEDランプ照射下、60℃のオーブン中に1000時間静置した。その後、この液晶表示素子を室温下に静置して室温まで自然冷却させた後、上記(6)と同様にして電圧保持率(VHRAF)を測定した。また、下記数式(EX−1)により、ストレス付与前後の電圧保持率の変化率(△VHR(%))を求めた。
△VHR=((VHRBF−VHRAF)÷VHRBF)×100…(EX−1)
信頼性の評価は、変化率ΔVHRが10%未満であった場合を「良好」、10%以上20%未満であった場合を「可」、20%以上であった場合を「不良」とした。その結果、本実施例の液晶表示素子ではΔVHR=4%であり、信頼性「良好」であった。
[実施例1−2〜実施例1−6、及び比較例1−1〜比較例1−2]
使用する重合体の種類及び量を下記表2に示す通りに変更したほかは実施例1−1と同様にして液晶配向剤を調製した。また、調製した液晶配向剤を用いて実施例1−1と同様にして塗膜及び液晶表示素子を製造し、各種評価を行った。評価結果は下記表3に示した。
Figure 0006805475
Figure 0006805475
表3に示すように、実施例1−1〜実施例1−6では、塗膜の表面凹凸性、並びに液晶表示素子の電圧保持率、DC残像特性及び信頼性についていずれも「良好」又は「可」の結果であり、各種特性のバランスが取れていた。これに対し、比較例では、DC残像特性が実施例よりも劣っていた。
<重合体の合成[2]>
[合成例2−1〜合成例2−4]
反応に使用するテトラカルボン酸ジエステル及びジアミンの種類及び量を下記表4の通り変更した以外は合成例1−1と同様にしてポリアミック酸エステルを合成した。なお、化合物(E)によるテトラカルボン酸二無水物の開環反応は、使用するテトラカルボン酸二無水物及び化合物(E)の種類を変更した以外は合成例1−1と同様の操作により行った。合成例2−1〜合成例2−4で得た重合体溶液のそれぞれにつき、20℃で3日間静置したところ、いずれもゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
Figure 0006805475
表4中の酸誘導体及びジアミンの略称は以下の通りである。
(酸誘導体)
AE−2−1; 1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物と、4−ヒドロキシピリジン(上記式(3−2−1)で表される化合物)との反応生成物
AE−2−2; ピロメリット酸二無水物と、4−ヒドロキシピリジン(上記式(3−2−1)で表される化合物)との反応生成物
AE−2−3; 1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジエチル(1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物とエタノールとの反応生成物)
AN−1; 1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
(ジアミン)
DA−2; 4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
DA−3; 2−(4−アミノフェニル)−5−アミノピリジン(上記式(d−5)で表される化合物)
[合成例2−5;重合体(B−2−1)の合成]
合成例1−5と同様の操作により1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジエチル(化合物(AE−2−3))を合成した。次いで、化合物(AE−2−3)100モル部をNMPに溶解させた後、ここにジアミンとして2−(4−アミノフェニル)−5−アミノピリジン100モル部を加えて溶解させた。この溶液に、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM、15±2重量%水和物)300モル部を添加し、室温で4時間反応を行い、ポリアミック酸エステルとして重合体(B−2−1)を含有する溶液を得た。得られた重合体(B−2−1)の重量平均分子量Mwは80,000、重合体粘度は320mPa・sであった。
[合成例2−6;重合体(B−2−2)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物100モル部、及びジアミンとして2−(4−アミノフェニル)−5−アミノピリジン100モル部をNMPに溶解し、30℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸として重合体(B−2−2)を含有する溶液を得た。得られた重合体溶液をNMPにて15重量%となるように調製し、この溶液の重合体粘度を測定したところ300mPa・sであった。
[合成例2−7;重合体(B−2−3)の合成]
上記合成例1−7と同様の操作を行うことにより、ピロメリット酸二無水物及び1,5−ビス(アミノフェノキシ)ペンタンを原料とするポリアミック酸として重合体(B−2−3)を含有する溶液を得た。
<液晶配向剤の調製及び評価[2]>
[実施例2−1]
(1)液晶配向剤の調製
重合体として合成例2−1で得た重合体(A−2−1)をNMP及びブチルセロソルブ(BC)からなる混合溶媒(NMP:BC=50:50(重量比))に溶解し、固形分濃度が3.5重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(R2−1)を調製した。
(2)塗布膜の表面凹凸性の評価
使用する液晶配向剤を上記(1)で得た液晶配向剤(R2−1)に変更した点以外は実施例1−1の(2)と同様の操作を行うことにより塗布膜の表面凹凸性を評価した。その結果、本実施例ではRa=9nmであり、表面凹凸性は「可」であった。
(3)FFS型液晶表示素子の製造
使用する液晶配向剤を上記(1)で得た液晶配向剤(R2−1)に変更した点以外は実施例1−1の(3)と同様の操作を行うことによりFFS型液晶表示素子を製造した。
(4)電圧保持率の測定
上記(3)で製造したFFS型液晶表示素子につき、上記実施例1−1の(6)と同様にして電圧保持率(VHR)を測定した。その結果、VHRは99%であり、「良好」の結果であった。
(5)信頼性の評価
上記(3)で製造したFFS型液晶表示素子につき、上記実施例1−1の(7)と同様にして電圧保持率(VHRBF及びVHRAF)を測定した。また、ストレス付与前後の電圧保持率の変化率ΔVHRにより液晶表示素子の信頼性を評価した。その結果、ΔVHRは6%であり、信頼性「良好」と判断された。
[実施例2−2〜実施2−6、及び比較例2−1〜比較例2−2]
重合体の種類及び量を下記表5に示す通りに変更したほかは実施例2−1と同様にして液晶配向剤を調製した。また、調製した液晶配向剤を用いて実施例2−1と同様にして塗膜及び液晶表示素子を製造し、各種評価を行った。評価結果は下記表6に示した。
Figure 0006805475
Figure 0006805475
表6に示すように、実施例2−1〜実施例2−6では、塗膜の表面凹凸性、並びに液晶表示素子の電圧保持率及び信頼性についていずれも「良好」又は「可」の結果であり、各種特性のバランスが取れていた。これに対し、比較例では、信頼性の評価が実施例よりも劣っていた。
<重合体の合成[3]>
[合成例3−1〜合成例3−5]
反応に使用するテトラカルボン酸ジエステル及びジアミンの種類及び量を下記表7の通り変更した以外は合成例1−1と同様にしてポリアミック酸エステルを合成した。なお、化合物(E)によるテトラカルボン酸二無水物の開環反応は、使用するテトラカルボン酸二無水物及び化合物(E)の種類を変更した以外は合成例1−1と同様の操作により行った。合成例3−1〜合成例3−5で得た重合体溶液のそれぞれにつき、20℃で3日間静置したところ、いずれもゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
Figure 0006805475
表7中の酸誘導体及びジアミンの略称は以下の通りである。
(酸誘導体)
AE−3−1; 2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとの反応生成物
AE−3−2; ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとの反応生成物
AE−3−3; ピロメリット酸二無水物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとの反応生成物
AE−3−4; 2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物とエタノールとの反応生成物
AN−2; 2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
(ジアミン)
DA−4; 上記式(d−6)中のRがメチル基である化合物
DA−5; コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン
DA−6; p−フェニレンジアミン
[合成例3−6;重合体(B−3−1)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物20gをエタノール200mL中に添加した。得られた沈殿物を濾別し、エタノールで洗浄した後に減圧乾燥し、テトラカルボン酸ジエステルとして化合物(AE−3−4)を粉末状で得た。次いで、化合物(AE−3−4)100モル部をNMPに溶解させた後、ここにジアミンとして化合物(DA−4)100モル部を加えて溶解させた。この溶液に、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM、15±2重量%水和物)300モル部を添加し、室温で4時間反応を行い、ポリアミック酸エステルとして重合体(B−3−1)を含有する溶液を得た。得られた重合体(B−3−1)の重量平均分子量Mwは103,000、重合体粘度は450mPa・sであった。
[合成例3−7;重合体(B−3−2)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物100モル部、及びジアミンとして化合物(DA−4)100モル部をNMPに溶解し、30℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸として重合体(B−3−2)を含有する溶液を得た。得られた重合体溶液をNMPにて15重量%となるように調製し、この溶液の重合体粘度を測定したところ280mPa・sであった。
[合成例3−8;重合体(B−3−3)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ジアミンとしてp−フェニレンジアミンを用いた点以外は上記合成例1−7と同様の操作を行うことにより、ポリアミック酸として重合体(B−3−3)を含有する溶液を得た。得られた重合体溶液をNMPにて15重量%となるように調製し、この溶液の重合体粘度を測定したところ320mPa・sであった。
<液晶配向剤の調製及び評価[3]>
[実施例3−1]
(1)液晶配向剤の調製
重合体として合成例3−1で得た重合体(A−3−1)をNMP及びブチルセロソルブ(BC)からなる混合溶媒(NMP:BC=50:50(重量比))に溶解し、固形分濃度が3.5重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(R3−1)を調製した。
(2)塗布膜の表面凹凸性の評価
使用する液晶配向剤を上記(1)で得た液晶配向剤(R3−1)に変更した点以外は実施例1−1の(2)と同様の操作を行うことにより塗布膜の表面凹凸性を評価した。その結果、本実施例ではRa=8nmであり、表面凹凸性は「可」であった。
(3)VA型液晶セルの製造
上記(1)で調製した液晶配向剤(R3−1)を、スリット状にパターニングされ、複数の領域に区画されたITO電極をそれぞれ有するガラス基板2枚の各電極面上に、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いて塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、150℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚600Åの塗膜を形成した。この塗膜につき、超純水中で1分間超音波洗浄を行った後、100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜となる塗膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、塗膜を有する基板を一対(2枚)得た。なお、使用した電極のパターンは、PSAモードにおける電極パターンと同種のパターンである。
次いで、上記一対の基板の塗膜を有するそれぞれの外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、塗膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間にネマチック液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止した。その後、得られた液晶セルの電極間に周波数60Hzの交流10Vを印加し、液晶が駆動している状態で、光源にメタルハライドランプを使用した紫外線照射装置を用いて紫外線を100,000J/mの照射量にて液晶セルの外側から照射した。なお、この照射量は、波長365nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。
(4)プレチルト角の測定
上記で製造した液晶セルを用いプレチルト角を測定した。ここでは、非特許文献(T. J. Scheffer et.al. J.Appl.Phys. vo.19, p.2013(1980))に記載の方法に準拠して、He−Neレーザー光を用いる結晶回転法により測定した液晶分子の基板面からの傾き角の値をプレチルト角とした。評価は、プレチルト角の測定値が88.0°未満であった場合を「良好」、88.0°以上89.0°未満であった場合を「可」、89.0%以上であった場合を「不良」とした。その結果、本実施例では87.0°であり、プレチルト角特性「良好」の評価であった。
(5)電圧保持率の測定
上記(3)で製造した液晶セルにつき、上記実施例1−1の(6)と同様にして電圧保持率(VHR)を測定した。その結果、VHRは97%であり、「良好」の結果であった。
(6)信頼性の評価
上記(3)で製造した液晶セルにつき、上記実施例1−1の(7)と同様にして電圧保持率(VHRBF及びVHRAF)を測定した。また、ストレス付与前後の電圧保持率の変化率ΔVHRにより液晶表示素子の信頼性を評価した。その結果、ΔVHRは5%であり、信頼性「良好」と判断された。
[実施例3−2〜実施3−7、及び比較例3−1〜比較例3−2]
重合体の種類及び量を下記表8に示す通りに変更したほかは実施例3−1と同様にして液晶配向剤を調製した。また、調製した液晶配向剤を用いて実施例3−1と同様にして塗膜及び液晶セルを製造し、各種評価を行った。評価結果は下記表9に示した。
Figure 0006805475
Figure 0006805475
表9に示すように、実施例3−1〜実施例3−7では、塗膜の表面凹凸性、並びに液晶表示素子のプレチルト角特性、電圧保持率及び信頼性についていずれも「良好」又は「可」の結果であった。これに対し、比較例ではプレチルト角が付与されにくかった。
<重合体の合成[4]>
[合成例4−1〜合成例4−4]
反応に使用するテトラカルボン酸ジエステル及びジアミンの種類及び量を下記表10の通り変更した以外は合成例1−1と同様にしてポリアミック酸エステルを合成した。なお、化合物(E)によるテトラカルボン酸二無水物の開環反応は、使用するテトラカルボン酸二無水物及び化合物(E)の種類を変更した以外は合成例1−1と同様の操作により行った。合成例4−1〜合成例4−4で得た重合体溶液のそれぞれにつき、20℃で3日間静置したところ、いずれもゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
Figure 0006805475
表10中の酸誘導体及びジアミンの略称は以下の通りである。
(酸誘導体)
AE−4−1; ピロメリット酸二無水物と、安息香酸4−ヒドロキシフェニル(上記式(3−4−1)で表される化合物)との反応生成物
AE−4−2; 2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物と、安息香酸4−ヒドロキシフェニル(上記式(3−4−1)で表される化合物)との反応生成物
AE−4−3; ピロメリット酸二無水物とエタノールとの反応生成物
AN−3; ピロメリット酸二無水物
(ジアミン)
DA−6; p−フェニレンジアミン
DA−7; 4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート
[合成例4−5;重合体(B−4−1)の合成]
テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物20gをエタノール200mL中に添加した。得られた沈殿物を濾別し、エタノールで洗浄した後に減圧乾燥し、テトラカルボン酸ジエステルとして化合物(AE−4−3)を粉末状で得た。次いで、化合物(AE−4−3)100モル部をNMPに溶解させた後、ここにジアミンとして4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート100モル部を加えて溶解させた。この溶液に、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM、15±2重量%水和物)300モル部を添加し、室温で4時間反応を行い、ポリアミック酸エステルとして重合体(B−4−1)を含有する溶液を得た。得られた重合体(B−4−1)の重量平均分子量Mwは97,000、重合体粘度は420mPa・sであった。
[合成例4−6;重合体(B−4−2)の合成]
テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物100モル部、及びジアミンとして4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート100モル部をNMPに溶解し、30℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸として重合体(B−4−2)を含有する溶液を得た。得られた重合体溶液をNMPにて15重量%となるように調製し、この溶液の重合体粘度を測定したところ350mPa・sであった。
[合成例4−7;重合体(B−4−3)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ジアミンとしてp−フェニレンジアミンを用いた点以外は上記合成例1−7と同様の操作を行うことにより、ポリアミック酸として重合体(B−4−3)を含有する溶液を得た。
<液晶配向剤の調製及び評価[4]>
[実施例4−1]
(1)液晶配向剤の調製
重合体として合成例4−1で得た重合体(A−4−1)をNMP及びブチルセロソルブ(BC)からなる混合溶媒(NMP:BC=50:50(重量比))に溶解し、固形分濃度が3.5重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(R4−1)を調製した。
(2)塗布膜の表面凹凸性の評価
使用する液晶配向剤を上記(1)で得た液晶配向剤(R4−1)に変更した点以外は実施例1−1の(2)と同様の操作を行うことにより塗布膜の表面凹凸性を評価した。その結果、本実施例ではRa=9nmであり、表面凹凸性は「可」であった。
(3)光配向法によるFFS型液晶表示素子の製造
上記実施例1−1の(3)と同様の一対のガラス基板11a,11bの各表面に、それぞれ上記(1)で調製した液晶配向剤(R4−1)を、スピンナーを用いて塗布して塗膜を形成した。次いで、この塗膜を80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、庫内を窒素置換したオーブン中で230℃にて15分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚1,000Åの塗膜を形成した。ここで使用したトップ電極13の平面模式図を図4に示す。なお、図4(a)は、トップ電極13の上面図であり、図4(b)は、図4(a)の破線で囲った部分C1の拡大図である。本実施例では、電極の線幅d1が4μm、電極間の距離d2が6μmのトップ電極を有する基板を使用した。なお、トップ電極13としては、上記実施例1−1の(3)と同様、電極A、電極B、電極C及び電極Dの4系統の駆動電極を用いた(図3参照)。
次いで、これら塗膜の各表面に、それぞれ、Hg−Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて、313nmの輝線を含む偏光紫外線300J/mを基板法線方向から照射して、液晶配向膜を有する一対の基板を得た。このとき、偏光紫外線の照射方向は基板法線方向からとし、偏光紫外線の偏光面を基板に投影した線分の方向が図4中の両頭矢印の方向となるように偏光面方向を設定したうえで光照射処理を行った。
次いで、上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を対向させ、偏光紫外線の偏光面を基板へ投影した方向が平行となるように重ね合わせて圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化した。次いで、液晶注入口から基板間隙に、メルク社製液晶「MLC−6221」を充填した後、エポキシ樹脂接着剤で液晶注入口を封止した。その後、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃まで加熱してから室温まで徐冷した。さらに、基板11a,11bの外側両面に偏光板を貼り合わせることにより液晶表示素子を作製した。このとき、偏光板のうちの1枚は、その偏光方向が液晶配向膜の偏光紫外線の偏光面の基板面への射影方向と平行となるように貼付し、もう1枚はその偏光方向が先の偏光板の偏光方向と直交するように貼付した。
(4)AC残像特性の評価
上記(3)で製造したFFS型液晶表示素子を25℃、1気圧の環境下においた。ボトム電極を4系統の駆動電極すべての共通電極として、ボトム電極の電位を0V電位(グランド電位)に設定した。電極B及び電極Dを共通電極と短絡して0V印加状態としつつ、電極A及び電極Cに交流電圧5Vからなる合成電圧を100時間印加した。100時間経過後、直ちに電極A〜電極Dのすべてに交流1.5Vの電圧を印加した。そして、電極A〜電極Dのすべてに交流1.5Vの電圧を印加し始めた時点から、駆動ストレス印加領域(電極A及び電極Cの画素領域)と駆動ストレス非印加領域(電極B及び電極Dの画素領域)との輝度差が目視で確認できなくなるまでの時間を測定し、これを残像消去時間Tsとした。なお、この時間が短いほど、残像が生じ難いこととなる。残像消去時間Tsが30秒未満であった場合を「良好」、30秒以上120秒未満であった場合を「可」、120秒以上であった場合を「不良」として評価したところ、本実施例の液晶表示素子の残像消去時間Tsは10秒であり、残像特性「良好」と評価された。
(5)電圧保持率の測定
上記(3)で製造したFFS型液晶表示素子につき、上記実施例1−1の(6)と同様にして電圧保持率(VHR)を測定した。その結果、VHRは96%であり、「良好」の結果であった。
(6)信頼性の評価
上記(3)で製造した液晶表示素子を用い、上記実施例1−1の(7)と同様にして電圧保持率(VHRBF及びVHRAF)を測定した。また、ストレス付与前後の電圧保持率の変化率ΔVHRにより液晶表示素子の信頼性を評価した。その結果、ΔVHRは12%であり、信頼性「可」と判断された。
[実施例4−2〜実施4−6、及び比較例4−1〜比較例4−2]
重合体の種類及び量を下記表11に示す通りに変更したほかは実施例4−1と同様にして液晶配向剤を調製した。また、調製した液晶配向剤を用いて実施例4−1と同様にして塗膜及び液晶セルを製造し、各種評価を行った。評価結果は下記表12に示した。
Figure 0006805475
Figure 0006805475
表12に示すように、実施例4−1〜実施例4−6では、塗膜の表面凹凸性、並びに液晶表示素子のAC残像特性、電圧保持率及び信頼性についていずれも「良好」又は「可」の結果であった。これに対し、比較例では、AC残像特性が「不良」の評価であり、実施例よりも劣っていた。
10…液晶表示素子、11a,11b…ガラス基板、12…液晶配向膜、13…トップ電極、14…絶縁層、15…ボトム電極、16…液晶層

Claims (3)

  1. 下記式(1)で表される部分構造を有する重合体(P)と、
    ポリアミック酸である重合体(Q)と、を含有し、
    Figure 0006805475
    (式(1)中、Rは4価の有機基であり、Rは2価の有機基である。X及びXは、それぞれ独立に水酸基又は炭素数1〜40の1価の有機基である。ただし、X及びXの少なくともいずれかは、2個以上の芳香環が窒素原子に直結した芳香族アミン構造を有する1価の有機基である複素環としてピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアゾール、ピラジン若しくはベンズイミダゾールを含む窒素含有複素環基を有する1価の有機基である又は、(メタ)アクリロイルオキシ基、スチリル基、ビニルベンジルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルオキシ基、下記式(p−1)で表される基及び下記式(p−2)で表される基よりなる群から選ばれる一種の重合性基を有する1価の有機基である。)
    Figure 0006805475
    (式(p−1)中、Xは酸素原子又は−NH−である。「*」は結合手を示す。)
    上記式(1)中のX 及びX の少なくともいずれかが、前記芳香族アミン構造を有する1価の有機基であるか又は前記窒素含有複素環基を有する1価の有機基である場合、前記重合体(P)及び前記重合体(Q)の合計100重量部に対する前記重合体(P)の含有割合が40重量部以上99重量部以下であり、
    上記式(1)中のX 及びX の少なくともいずれかが前記重合性基を有する1価の有機基である場合、前記重合体(P)及び前記重合体(Q)の合計100重量部に対する前記重合体(P)の含有割合が3重量部以上95重量部以下である、液晶配向剤。
  2. 請求項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
  3. 請求項に記載の液晶配向膜を備える液晶表示素子。
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