JP6778459B2 - 電解用電極、電解槽、電極積層体及び電極の更新方法 - Google Patents
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Description
電解電圧の内訳を詳細に解析すると、理論的に必要な電解電圧以外に、イオン交換膜の抵抗及び電解槽の構造抵抗に起因する電圧、電解用電極である陽極及び陰極の過電圧、陽極と陰極との間の距離に起因する電圧等が含まれることが明らかになっている。また、長期に亘って電解を継続すると、塩水中の不純物等の種々の原因に惹起される電圧上昇等が生じることもある。
例えば、特許文献2には、所定の厚み・孔径・多孔率を有する金属性の多孔板、又は所定の厚み・長径・短径・開口率を有するエクスパンデッドメタルを用いた陽極に対して、陽イオン交換膜の陽極面を可及的に近づけて電解する方法が提案されている。特許文献3には、実質上ダイヤモンド形状の金属メッシュから成り、メッシュのストランド及び開口部の割合、開口部の長手方向間隔LWD及び幅方向間隔SWDを所定の値とした陽極が提案されている。この特許文献3には、該形状を有する金属メッシュの表面上にコーティングとして、白金族金属酸化物、マグネタイト、フェライト、コバルトスピネル、または混合金属酸化物を用いることが出来ると開示されている。
また特許文献4では、陽極基材としてチタン製エクスパンデッドメタルまたはチタン製金網を用い、該陽極基材の開口率・厚みを所定の範囲とすること、及び該陽極基材への触媒塗布後の陽極表面上の凹凸高低差の最大値を所定の範囲とすることによって、電解性能を向上させる技術が提案されている。
さらに特許文献5においては、陽極の厚みを従来の約半分以下とし、かつ開口部の縦方向、横方向の孔開きの比率を調整することで、電解時のセル電圧を下げることができる旨が記載されており、この電極により、陰極室からイオン交換膜を介して拡散する水酸化物イオンが反応して発生する不純物ガス、すなわち、酸素ガス量を低減させる試みがなされている。
このように従来技術では、陽極の厚みを薄くし、陽極基材の開口率を大きくする方向で、電解時の電圧を下げる方策が採用されている。
また、特許文献2〜4では、エクスパンデッドメタルの開口率、メッシュの長手方向及び幅方向の各間隔等について検討されているが、陽極の形状と電解電圧との関係については充分に検討されたものではなく、更なる電解電圧の低減化が求められている。特に陽極メッシュ厚みが薄く、かつ開口率の高い陽極では、実用上の強度が不足する等の問題も生じる。
特許文献5では、陽極の厚みを従来の約半分以下とすることによって、陽極の低電圧化と酸素ガス発生量の低減を試みる手法が採られているが、工業レベルでのイオン交換膜電解槽では陰極室から加圧して運転されるため、陽極メッシュ厚みが薄すぎると強度が保てず、エクスパンドメタルを2枚重ねて使用する必要がある等、陽極の強度と電解電圧の低減を満足させるには、更なる改善が必要である。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
有孔金属製板からなる導電性基材と、
該導電性基材の表面上に形成された少なくとも一層の触媒層と、
を備える電解用電極であって、
前記電解用電極の厚みが0.5mm超1.2mm以下であり、
前記電解用電極の開口部の周辺長の総和Bを前記電解用電極の開口率Aで除した値Cが、2超5以下である、電解用電極。
[2]
前記開口率Aが、5%以上25%未満である、[1]に記載の電解用電極。
[3]
前記開口部のメッシュの短目方向中心間距離SWが1.5以上3以下であり、かつ、前記メッシュの長目方向中心間距離LWが2.5以上5以下である、[1]又は[2]に記載の電解用電極。
[4]
前記電解用電極の厚みが、0.5mm超0.9mm以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の電解用電極。
[5]
下記式(1)で表される値Eが、0.5以上である、[1]〜[4]のいずれかに記載の電解用電極:
E=B/(A×(SW2+LW2)1/2) (1)
[6]
[1]〜[5]のいずれかに記載の電解用電極を陽極として含む陽極室と、
陰極を含む陰極室と、
前記陽極室と前記陰極室とを隔離するイオン交換膜と、
を備える、電解槽。
[7]
前記イオン交換膜の陽極側表面において、当該イオン交換膜を構成するポリマーからなる突出部を有する、[6]に記載の電解槽。
[8]
[1]〜[3]のいずれかに記載の電解用電極と、
前記電解用電極とは異なる基材電極と、
を備える、電極積層体。
[9]
前記電解用電極の厚みが、0.5mm超0.65mm以下である、[8]に記載の電極積層体。
[10]
[1]〜[3]のいずれかに記載の電解用電極を、電解槽における既設の電極上に溶接する工程を含む、電極の更新方法。
[11]
有孔金属製板からなる導電性基材と、
該導電性基材の表面上に形成された少なくとも一層の触媒層と、
を備える電解用電極であって、
前記電解用電極の開口部の形状が、メッシュの短目方向に伸びる第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、メッシュの長目方向に伸びる第2の仮想中心線に対して上下非対称であり、
前記電解用電極の厚みが0.5mm超1.2mm以下である、電解用電極。
[12]
前記開口部を、前記第2の仮想中心線により一方の部分aと他方の部分bに区分したとき、前記部分aの面積Saを前記部分bの面積Sbで除した値が、1.15以上2.0以下である、[11]に記載の電解用電極。
[13]
前記開口部のメッシュの短目方向中心間距離SWから前記開口部のメッシュの短目方向最大目開きを減じた値Stを、前記SWで除した値が、0.4以上である、[11]又は[12]に記載の電解用電極。
以下、「本実施形態に係る電解用電極」と称するときは、第1の電解用電極及び第2の電解用電極を包含するものとする。
本実施形態に係る電解用電極において、導電性基材は、有孔金属製板からなり、飽和に近い高濃度の食塩水中で、塩素ガス発生雰囲気で用いられる。そのため、該導電性基材の材質としては、耐食性のあるバルブ金属が好ましい。バルブ金属としては、以下に限定されないが、例えば、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム等が挙げられる。該バルブ金属の中でも、経済性及び触媒層との親和性の観点からチタンが好ましい。
導電性基材の形状としては、金属製で孔を有する平坦状のものであれば特に限定されないが、例えば、エクスパンドメタル、多孔板、金網等の形状が挙げられ、本実施形態においてはエクスパンドメタルが好適に用いられる。エクスパンドメタルとは、一般的に、金属製平板や金属箔に対し、上刃と下刃でスリットを入れながら押し広げてメッシュを形成し、所望の厚みまで圧延ロール掛け等により平坦化加工したものである。連続フープ加工が可能なため生産効率が高く、元の板材の廃棄ロスもなく経済性に優れており、また一体構造のため、金網と異なり完全な電気伝導度が確保され、ほどけることがない。
ここでいう開口率Aとは、電解用電極のいずれか一方の表面の投影面積SAにおける開口部の総面積SBの割合(SB/SA)をいう。開口部の総面積SBとは、電解用電極において、陽イオンや電解液等が導電性基材(有孔金属製板)によって遮断されない領域の投影面積の総計ということができる。
また、ここでいう開口部の周辺長の総和Bとは、電解用電極の単位面積あたりにおける開口部の周辺の長さLiをそれぞれ計測し、該周辺長を単位面積当たりの個数nで積算した値(ΣLi、i=1〜n)をいう。
上記(I)について、開口率(%)は、開口部分を切り出す前の紙の重量w1と、開口部分を全て切り出した後の紙の重量w2から、100×(w1−w2)/w1により算出できる。また、周辺長の総和は、開口部分として切り出されたものの各周辺長の合計として求めることができる。
上記(II)について、画像データの解析方法としては、例えば、米国国立衛生研究所(NIH)が開発し公有の「Image J」を画像処理に用いること等が挙げられる。
電解用電極の開口部の周辺長の総和Bを電解用電極の開口率Aで除した値C(=B/A)が2以下であると、開口率が大きくなるか、あるいは少数の大きな開口部を有する電解用電極となり、電解用電極の比表面積が小さくなることで、見かけ上の電流密度が高くなり、電解電圧が上昇する。また上述のCの値が5超であると、開口率が低くなるか、あるいは小さな開口部を多数有する導電性基材となり、電解液の循環や電極で発生するガスの脱離性に悪影響を生じさせることで、電解電圧が上昇する恐れがある。
上記SW及びLWは図3のように特定できる。すなわち、SWは、メッシュの短目方向に隣接する2つの開口部の中心を結んだ距離として特定できる。また、LWはメッシュの長目方向に隣接する2つの開口部の中心を結んだ距離として特定できる。
上記SWが1.5mm以上であり、上記LWが2.5mm以上であると、本実施形態において好適な厚み及び開口率を確保しやすくなる。また、上記SWが3mm以下であり、かつ、上記LWが5mm以下であると、本実施形態において好適な開口率の範囲を確保しやすくなる、すなわち、電解用電極の比表面積を確保しやすくなる。
さらに、図3に示すように、開口部間の距離dも調整することが好ましい。距離dは、SWの二乗にLWの二乗を加えた値の平方根で算出され、この数値が小さいほどガス等の物質移動が促進される傾向にある。かかる観点から、dの値は、2.9〜5.8mmであることが好ましく、3.4〜5.1mmであることがより好ましい。
E=B/(A×(SW2+LW2)1/2) (1)
式(1)において、(SW2+LW2)1/2は前述のdに対応している。このように、A、B及びdの関係を適切な範囲に調整することにより、開口部の空間的な分散度合が好適となり、電解電圧を低減できる傾向にある。すなわち、電解用電極におけるEの値が0.5以上1.5以下であると、電解液の液循環に対して電解用電極の開口部の空間的な分散度合が好適となり、電解電圧を低減できる傾向にある。
第2の電解用電極における開口部形状の典型例を図4(A)に示す。図4(A)における開口部100は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称である。左右対称とは、第1の仮想中心線を基準として開口部を右部分と左部分に分けたとき、右部分の形状が左部分の形状に一致すること、すなわち第1の仮想中心線を基準として右部分と左部分とが線対称であることをいう。左右対称であることは、上述した画像解析により確認することができる。
さらに、開口部100は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下非対称である。上下非対称とは、第2の仮想中心線を基準として開口部を上部分と下部分に分けたとき、上部分の形状が下部分の形状と一致しないこと、すなわち第2の仮想中心線を基準として上部分と下部分とが線対称とならないことをいう。左右対称であることは、上述した画像解析により確認することができる。例えば、図4(B)に示す例において、開口部100はメッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102を基準としたとき、上側の部分aと下側の部分bに区分でき、部分aと部分bの形状を比較することで容易に確認することができる。
従来の電解用電極における開口部の典型的な形状としては、上記第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、上記第2の仮想中心線に対して上下対称であるものが挙げられる。例えば、図4(C)に示す例において、開口部100’は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称である。また、開口部100’において、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102を基準としたとき、仮想中心線102を基準として上側の部分aと下側の部分bとは線対称となっている。このような形状である場合、典型的には、開口部は菱形形状であり、当該開口部を構成する4辺は、当該開口部の中心点から略等距離に位置することとなる。このような従来の電解用電極において、発生するガス(典型的には球状である。)が開口部を通過しようとするとき、当該ガスが開口部を構成する4辺(すなわち4点)と接触することで通過抵抗が増加する傾向にあると推測される。すなわち、電解時に電極で発生するガスが開口部に内接して滞留し易い傾向にあり、電解液の液循環に悪影響を与えて電解電圧が上昇するといった問題が生じうる。
これに対して、第2の電解用電極は、第1の仮想中心線に対して左右対称であり、かつ、第2の仮想中心線に対して上下非対称であることにより、電極で発生するガス(典型的には球状である。)が開口部を通過しようとするときの通過抵抗が低減される傾向にあると推測される。すなわち、電解時に電極で発生するガスと開口部を構成する各辺との接触点が少なくなる傾向にあるため、ガスを効果的に脱離させることができる傾向にあり、電解液の液循環に悪影響を与えることなく、電解電圧を低減できるものとなる。
本実施形態に係る電解用電極における導電性基材の表面上に、好ましくは上述の処理を施した導電性基材の表面上に形成される触媒層は、電解電圧を下げるために、白金族金属酸化物、マグネタイト、フェライト、コバルトスピネル、または混合金属酸化物等の電極触媒物質を含むことが好ましい。電解時の電圧をより低く抑える観点から、上述した電極触媒物質の中でも、ルテニウム元素、イリジウム元素及びチタン元素が、それぞれ、酸化物の形態にあることがより好ましい。
ルテニウム酸化物としては、以下に限定されないが、例えばRuO2等が挙げられる。
イリジウム酸化物としては、以下に限定されないが、例えばIrO2等が挙げられる。
チタン酸化物としては、以下に限定されないが、例えばTiO2等が挙げられる。
固溶体とは、一般的に、2種類以上の物質が互いに溶け合い、全体が均一の固相となっているものをいう。固溶体を形成する物質としては、金属単体、金属酸化物等が挙げられる。特に本実施形態に好適な金属酸化物の固溶体の場合には、酸化物結晶構造における単位格子中の等価な格子点上に、2種類以上の金属原子が不規則に配列している。具体的には、ルテニウム酸化物とイリジウム酸化物とチタン酸化物とが相互に混合し、ルテニウム酸化物の側から見れば、ルテニウム原子がイリジウム原子若しくはチタン原子又はこれらの双方によって置換された置換型固溶体であることが好ましい。その固溶状態は特に限定されず、部分固溶の領域が存在していてもよい。
固溶によって、結晶構造における単位格子の大きさがわずかに変化する。この変化の度合いは、例えば、粉末X線回折の測定において、結晶構造に起因する回折パターンは変化せず、単位格子の大きさに起因するピーク位置が変化すること等から確認することができる。
本実施形態における触媒層が、他の金属元素を含んでいる場合、その含有割合は、触媒層に含まれる金属元素の全部に対する他の金属元素のモル比として、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
本実施形態における触媒層の厚さは、0.1〜5μmであることが好ましく、0.5〜3μmであることがより好ましい。触媒層の厚さを上述の下限値以上とすることにより、初期電解性能を十分に維持できる傾向にある。また触媒層の厚みを上述の上限値以下とすることにより、経済性に優れた電解用電極が得られる傾向にある。触媒層の厚みは、基材断面を切断し、光学顕微鏡や電子顕微鏡により計測することができる。
触媒層が二層以上である場合には、そのうちの少なくとも一層が本実施形態における触媒層であればよい。触媒層が二層以上である場合には、少なくとも最内層が本実施形態における触媒層であることが好ましい。少なくとも最内層が、ルテニウム酸化物、イリジウム酸化物、及びチタン酸化物から形成される固溶体であることにより、触媒層の耐久性が一層向上する傾向にある。本実施形態における触媒層を、同じ組成又は異なる組成で二層以上有している態様も好ましい。
触媒層が二層以上である場合であっても、本実施形態における触媒層の厚さは、上記のとおり、0.1〜5μmであることが好ましく、0.5〜3μmであることがより好ましい。
次に、本実施形態に係る電解用電極の製造方法について、導電性基材としてエクスパンドメタルを用いる場合を例にして詳細に説明する。
本実施形態に係る電解用電極は、導電性基材として、バルブ金属製平板に上刃と下刃でスリットを入れながら押し広げてメッシュを形成し、所望の厚みまで圧延ロール掛け等により圧延して平坦化加工したエクスパンドメタルを用い、該導電性基材に、上述の表面積増大化処理を施した後、該導電性基材上に、ルテニウム元素、イリジウム元素、及びチタン元素を含む触媒層を形成することにより、製造することができる。
また、電解用電極の開口率と、開口部のメッシュ短目方向中心間距離である短径SWは、バルブ金属製平板に上刃と下刃でスリットを入れながら押し広げてメッシュを形成する一連の工程において、上刃の上下運動に連動して送りローラーによって連続的に前方へ送る刻み幅を調整することによって、本実施形態に好適な範囲に調整することができる。すなわち、本実施形態の開口部の分散の程度を調整する観点から、バルブ金属製平板に上刃と下刃でスリットを入れる際の刻み幅を0.8mm以下に調整することが好ましい。また、本実施形態の開口部の形状を維持する観点から0.5mm以上が好ましい。
さらに、開口部のメッシュ長目方向中心間距離である長径LWは、バルブ金属製平板にスリットを入れる上刃と下刃の型を適切に選択することにより、本実施形態に好適な範囲に調整することができる。
さらにまた、電解用電極の開口部の周辺長の総和は、開口部の数の増減に依存して増減することから、スリットを入れる上刃と下刃の数等により調整できる。
一方、パンチングメタル等の多孔版を導電性基材として採用する場合は、金属の平板に対して、パンチングプレスの金型で穴あけ加工を施して得ることができ、その際に、例えば、当該金型の形状や配置を適切に選択することにより、開口率、開口部の周辺長の総和、SW及びLWを本実施形態の好適な範囲に調整することができる。
さらに、金網を導電性基材として採用する場合は、種々公知の方法により得られた金網製造用の金属線を複数使用して織り込むことによって得ることができ、その際に、例えば、金網製造用の金属線の単位長さ当たりの重量(デニール、金属線の太さに相当)や、金網の単位面積当たりに織り込む金属線の本数(メッシュ数)を適切に選択することにより、開口率、開口部の周辺長の総和、SW及びLWを本実施形態の好適な範囲に調整することができる。また、上記同様の制御により、第2の電解用電極に係る形状が得られやすくなる傾向にある。
熱分解法による製造方法では、導電性基材上に、上記元素を含有する化合物(前駆体)の混合物を含む塗工液を塗工した後、酸素含有雰囲気下で焼成し、塗工液中の成分を熱分解させることにより、触媒層を形成することができる。この方法によると、従来の製造方法よりも少ない工程数で、高い生産性で、電解用電極を製造することができる。
ルテニウム化合物の金属塩としては、以下に限定されないが、例えば、塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム等が挙げられる。
イリジウム化合物の金属塩としては、以下に限定されないが、例えば、塩化イリジウム、硝酸イリジウム等が挙げられる。
チタン化合物の金属塩としては、以下に限定されないが、例えば、四塩化チタン等が挙げられる。
塗工液には、上記化合物に含まれる化合物以外の他の化合物を、更に含んでいてもよい。他の化合物としては、以下に限定されないが、例えば、タンタル、ニオブ、スズ、白金、ロジウム、バナジウム等の金属元素を含有する金属化合物;タンタル、ニオブ、スズ、白金、ロジウム、バナジウム等の金属元素を含有する有機化合物等が挙げられる。
塗工液は、上記の化合物群が適当な溶媒に溶解又は分散されて成る液体状の組成物であることが好ましい。ここで使用される塗工液の溶媒としては、上記化合物の種類に応じて選択できる。例えば、水;ブタノール等のアルコール類等を用いることができる。塗工液中の総化合物濃度は、特に限定されないが、触媒層の厚さを適正に制御するとの観点から、10〜150g/Lであることが好ましい。
導電性基材に塗工液を塗工した後、必要に応じて、塗膜を乾燥させる工程を行うことが好ましい。この乾燥工程により、塗膜をより強固に導電性基材の表面に形成することができる。乾燥条件は、塗工液の組成、溶媒種等によって適宜選択することができる。乾燥工程は、10〜90℃の温度において1〜20分間行うことが好ましい。
焼成時間は、長い方が好ましい。一方、電極の生産性の観点からは、焼成時間が過度に長くなりすぎないように調整することが好ましい。これらを勘案すると、1回の焼成時間は、5〜60分間であることが好ましい。
本実施形態の電解槽は、本実施形態に係る電解用電極を備えるものである。すなわち、本実施形態の電解槽は、本実施形態に係る電解用電極を陽極として含む陽極室と、陰極を含む陰極室と、前記陽極室と前記陰極室とを隔離するイオン交換膜と、を備える。この電解槽は、電解する際の初期電圧が低減されたものである。本実施形態の電解槽の断面の一例を図6に模式的に示す。
本実施形態の電解槽に供給する電解液210としては、例えば、陽極室には、2.5〜5.5規定(N)の塩化ナトリウム水溶液(食塩水)、塩化カリウム水溶液等の塩化アルカリ水溶液を、陰極室には、希釈した水酸化アルカリ水溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等)又は水を、それぞれ使用することができる。
イオン交換膜250としては、例えば、イオン交換基を有するフッ素樹脂膜等を使用できる。イオン交換膜の中でも、イオン交換膜の陽極側表面にイオン交換膜を形成するポリマーからなる突出部(微小突起:デルタ形状)を形成させてなるイオン交換膜を、本実施形態に係る電解用電極と組み合わせて、電解槽として用いることが好ましい。その具体例として、例えば「Aciplex」(登録商標)F6801(旭化成株式会社製)等を挙げることができる。
本実施形態に係る電解用電極(陽極230)は、イオン交換膜250との間に適当な間隔を設けて配置してもよいし、イオン交換膜250と接触して配置されていても、何ら問題なく使用できる。陰極240は、イオン交換膜250と適当な間隔を設けて配置してもよいし、イオン交換膜250との間に間隔がない接触型の電解槽(ゼロギャップ式電解槽)であっても、何ら問題なく使用できる。
本実施形態の電解槽の電解条件については特に限定されず、公知の条件で運転することができる。例えば、電解温度を50〜120℃、電流密度を0.5〜10kA/m2に調整して、電解を実施することが好ましい。
本実施形態に係る電解用電極は、電解槽に既設の触媒被覆電極の活性が低下した際に、電極を更新する用途に好適に用いることができる。すなわち、本実施形態における電極の更新方法は、本実施形態に係る電解用電極を、電解槽における既設の電極上に溶接する工程を含む。このように、本実施形態に係る電解用電極を既存の電極上に新たに溶接するだけで、活性が低下した既設電極における電解性能を劣化前の水準に戻す、またはさらに向上させる、すなわち、容易に再活性化させることが可能である。そのため、従来は、活性の低下した既存の電極を更新する際に、既存の電極を電解槽から剥ぎ取る工程、さらに新たな電極を溶接する工程、の2つの工程を経ていた電極更新時の負荷を軽減できる。
上記のようにして、溶接された本実施形態に係る電解用電極と、電解槽における既設の電極とは、積層体とみなすことができる。すなわち、本実施形態の電極積層体は、本実施形態に係る電解用電極と、前記電解用電極とは異なる基材電極と、を備えるものである。ここでいう基材電極は特に限定されないが、典型的には、上述した電解槽における既設の電極であって、活性が低下した電極を挙げることができる。
なお、電解用電極の再活性化に好適な、本実施形態に係る電解用電極としては、厚みが0.5mm超0.65mm以下であり、かつ開口部の周辺長の総和Bを開口率Aで除した値C(=B/A)が2より大きく5以下であることが好ましい。厚みが上述の範囲であると、既存の電極上に新たに溶接する際に溶接し易く、既存の電解槽の内部構造・使用部品等を特に変更することなく、電解性能を劣化前の水準に戻す、またはさらに向上させる、すなわち、再活性化させることが可能である。すなわち、本実施形態の電極積層体において、電解用電極の厚みが0.5mm超0.65mm以下であることが好ましい。
更に本実施形態に係る電解用電極は、化学的、物理的、及び熱的に極めて安定な触媒層を有するため、長期の耐久性に優れる。よって、該電解用電極を備える本実施形態の電解槽によれば、長時間に亘って電極の触媒活性が高く維持され、高純度の塩素を安定して製造することが可能となる。
先ず、実施例及び比較例における各評価方法について、以下に示す。
電解セルとして、陽極室を有する陽極セルと、陰極室を有する陰極セルと、を具備する電解セルを用意した。
各実施例及び比較例で準備した電解用電極を所定のサイズ(95×110mm=0.01045m2)に切り出したものを試験用電極とし、該試験用電極を溶接によって陽極セルの陽極室のリブに装着して、陽極として用いた。
陰極としては、ニッケル製の金網基材の上に酸化ルテニウムの触媒被覆を行ったものを用いた。先ず、陰極セルの陰極室のリブ上に、集電体として金属ニッケル製のエキスパンド基材を、陽極と同じサイズで切り出して溶接した後、ニッケル製ワイヤーを編んだクッションマットを乗せ、その上に陰極を配置した。
ガスケットとしては、EPDM(エチレンプロピレンジエン)製のゴムガスケットを用い、陽極セルと陰極セルとの間にイオン交換膜を挟んだ。このイオン交換膜としては、食塩電解用の陽イオン交換膜「Aciplex」(登録商標)F6801(旭化成株式会社製)を用いた。
導電性基材として、メッシュの短目方向中心間距離(SW)が2.1mm、メッシュの長目方向中心間距離(LW)が3mm、板厚0.81mmのチタン製エクスパンドメタルを用いた。上記板厚は厚み計で測定した。また、SW、LW、St、開口率、及び開口部の周辺長の総和の値は、導電性基材の表面の所定範囲をマイクロスコープ等の画像観察機器で観察し、投影面を撮影した画像データを解析することにより求めた。画像データの解析方法として、米国国立衛生研究所(NIH)が開発し公有の「Image J」を画像処理に用いた。画像処理に用いた画像サイズは、導電性基材の8.0×5.3mmの範囲とした。すなわち、この範囲に存在する開口部を対象として、隣接する開口部の各々に対して特定されるメッシュの短目方向中心間距離、メッシュの長目方向中心間距離、及び、開口部のメッシュの短目方向中心間距離から前記開口部のメッシュの短目方向最大目開きを減じた値を測定し、これらの平均値を算出して、それぞれSW、LW及びStとした。以下、各実施例及び比較例における導電性基材及び電解用電極についても、上記と同様にSW、LW、St、開口率A、開口部の周辺長の総和B、開口部1つの周辺長、E(=B/(A×(SW2+LW2)1/2))及び厚みの値を求めることとした。このエクスパンドメタルを、大気中540℃で4時間焼成し、表面に酸化被膜を形成させた後、25質量%硫酸中において85℃で4時間酸処理を行い、導電性基材の表面に細かい凹凸を設ける前処理を施した。
次に、ルテニウムとイリジウムとチタンとの元素比(モル比)が25:25:50になるように、塩化ルテニウム水溶液(田中貴金属社製、ルテニウム濃度100g/L)をドライアイスで5℃以下に冷却及び撹拌しながら、四塩化チタン(キシダ化学社製)を少量ずつ加えた後、更に塩化イリジウム水溶液(田中貴金属社製、イリジウム濃度100g/L)を少量ずつ加えて、総金属濃度が100g/Lの水溶液である塗工液CL1を得た。一方で、ルテニウムとチタンとの元素比(モル比)が35:65になるように、上述の塩化ルテニウム水溶液と四塩化チタンを、上述と同様の混合方法によって、総金属濃度が100g/Lの水溶液である塗工液CL2を得た。
上記のロール塗工、乾燥、及び焼成から成るサイクルを合計7回繰り返し行い、次いで520℃における1時間の焼成を更に行うことにより、導電性基材上に黒褐色の第一触媒層を形成した。この第一触媒層を形成した基材に対して、塗工液をCL2に代える以外は、塗工液CL1を用いて塗工した時と同様にロール塗工、次いで乾燥を実施し、大気中、440℃において10分間、焼成を行った。最後に大気中、440℃において60分間焼成し、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み0.81mm、開口率7.4%、電極の投影面積当たりの開口部数は20個/cm2超、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は4.54であった。また、開口部の形状は図4(A)と同様の形状が観察され、開口部100は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称であった。さらに、開口部100は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下非対称であった。さらにまた、部分aの面積Saを部分bの面積Sbで除した値は1.28、StをSWで除した値は0.76であった。
実施例1における導電性基材を、メッシュの短目方向中心間距離(SW)が3mm、メッシュの長目方向中心間距離(LW)が6mm、板厚1.0mmのチタン製エクスパンドメタルとした以外は、実施例1と同様の方法により、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み1.0mm、開口率37.8%、電極の投影面積当たりの開口部数は13個/cm2、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は1.06であった。また、開口部の形状は図4(C)と同様の形状が観察され、開口部100’は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称であった。さらに、開口部100’は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下対称であった。さらにまた、部分aの面積Saを部分bの面積Sbで除した値は1.03、StをSWで除した値は0.667であった。
実施例1における導電性基材を、メッシュの短目方向中心間距離(SW)が2.2mm、メッシュの長目方向中心間距離(LW)が4.2mm、板厚0.8mmのチタン製エクスパンドメタルとした以外は、実施例1と同様の方法により、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み0.80mm、開口率10.9%、電極の投影面積当たりの開口部数は20個/cm2、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は3.26であった。また 、開口部の形状は図4(A)と同様の形状が観察され、開口部100は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称であった。さらに、開口部100は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下非対称であった。さらにまた、部分aの面積Saを部分bの面積Sbで除した値は1.64、StをSWで除した値は0.73であった。
実施例1における導電性基材を、メッシュの短目方向中心間距離(SW)が2.3mm、メッシュの長目方向中心間距離(LW)が3.3mm、板厚0.83mmのチタン製エクスパンドメタルとした以外は、実施例1と同様の方法により、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み0.83mm、開口率9.25%、電極の投影面積当たりの開口部数は20個/cm2超、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は3.65であった。また、開口部の形状は図4(A)と同様の形状が観察され、開口部100は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称であった。さらに、開口部100は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下非対称であった。さらにまた、部分aの面積Saを部分bの面積Sbで除した値は1.27、StをSWで除した値は0.70であった。
実施例1における導電性基材を、メッシュの短目方向中心間距離(SW)が2.3mm、メッシュの長目方向中心間距離(LW)が3.3mm、板厚0.81mmのチタン製エクスパンドメタルとした以外は、実施例1と同様の方法により、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み0.81mm、開口率22.1%、電極の投影面積当たりの開口部数は20個/cm2超、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は2.05であった。また、開口部の形状は図4(A)と同様の形状が観察され、開口部100は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称であった。さらに、開口部100は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下非対称であった。さらにまた、部分aの面積Saを部分bの面積Sbで除した値は1.28、StをSWで除した値は0.43であった。
実施例1における導電性基材を、メッシュの短目方向中心間距離(SW)が1.6mm、メッシュの長目方向中心間距離(LW)が3.0mm、板厚0.56mmのチタン製エクスパンドメタルとした以外は、実施例1と同様の方法により、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み0.56mm、開口率17.5%、電極の投影面積当たりの開口部数は43個/cm2、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は3.30であった。また、開口部の形状は図4(A)と同様の形状が観察され、開口部100は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称であった。さらに、開口部100は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下非対称であった。さらにまた、部分aの面積Saを部分bの面積Sbで除した値は1.88、StをSWで除した値は0.65であった。
実施例1における導電性基材を、メッシュの短目方向中心間距離(SW)が2.1mm、メッシュの長目方向中心間距離(LW)が3.1mm、板厚0.81mmのチタン製エクスパンドメタルとした以外は、実施例1と同様の方法により、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み0.81mm、開口率15.5%、電極の投影面積当たりの開口部数は20個/cm2超、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は2.72であった。また、開口部の形状は図4(A)と同様の形状が観察され、開口部100は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称であった。さらに、開口部100は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下非対称であった。さらにまた、部分aの面積Saを部分bの面積Sbで除した値は1.42、StをSWで除した値は0.67であった。
実施例6と同様に作製したチタン製エクスパンドメタル(SW:2.2mm、LW:3.2mm、板厚0.82mm)に対し、実施例1における塗工液CL1を実施例1と同様の方法で塗工し、上記導電性基材上に第一触媒層を形成した。
次に、ルテニウムとイリジウムとチタンとバナジウムとの元素比(モル比)が21.25:21.25:42.5:15になるように、硝酸ルテニウム水溶液(フルヤ金属社製、ルテニウム濃度100g/L)をドライアイスで5℃以下に冷却及び撹拌しながら、四塩化チタン(和光純薬社製)を少量ずつ加えた後、更に塩化イリジウム水溶液(田中貴金属社製、イリジウム濃度100g/L)及び塩化バナジウム(III)(キシダ化学社製)を少量ずつ加えて、総金属濃度が100g/Lの水溶液である塗工液CL3を得た。上記第一触媒層を形成した基材に対して、塗工液CL3を用いて実施例1と同様にロール塗工、乾燥、及び焼成から成るサイクルを、1回目の焼成温度を400℃とし、次いで450℃に昇温して更に3回繰り返し行い、最後に520℃における1時間の焼成を更に行うことにより、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み0.82mm、開口率16.1%、電極の投影面積当たりの開口部数は20個/cm2超、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は2.73であった。また、開口部の形状は図4(A)と同様の形状が観察され、開口部100は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称であった。さらに、開口部100は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下非対称であった。さらにまた、部分aの面積Saを部分bの面積Sbで除した値は1.38、StをSWで除した値は0.63であった。
実施例1における導電性基材を、メッシュの短目方向中心間距離(SW)が2.3mm、メッシュの長目方向中心間距離(LW)が3.0mm、板厚0.6mmで、圧延ロールによる平坦化を実施していないチタン製エクスパンドメタルとした以外は、実施例1と同様の方法により、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み0.6mm、開口率43.3%、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は1.07であった。また、開口部の形状は図4(C)と同様の形状が観察され、開口部100’は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称であった。さらに、開口部100’は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下対称であった。さらにまた、部分aの面積Saを部分bの面積Sbで除した値は0.90、StをSWで除した値は0.45であった。
実施例1における導電性基材を、メッシュの短目方向中心間距離(SW)が2.1mm、メッシュの長目方向中心間距離(LW)が4.0mm、板厚0.5mmのチタン製エクスパンドメタルとした以外は、実施例1と同様の方法により、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み0.5mm、開口率35.7%、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は1.78であった。また、開口部の形状は図4(C)と同様の形状が観察され、開口部100’は、メッシュの短目方向αに伸びる第1の仮想中心線101に対して左右対称であった。さらに、開口部100’は、メッシュの長目方向βに伸びる第2の仮想中心線102に対して上下対称であった。さらにまた、部分aの面積Saを部分bの面積Sbで除した値は1.10、StをSWで除した値は0.48であった。
実施例1〜6及び比較例1〜3でそれぞれ作製した電解用電極を用いて、イオン交換膜法食塩電解試験を実施した。その結果を表1に示す。
なお表1において、導電性基材として用いるエクスパンドメタルに対し、圧延ロールによる平坦化を実施したものを「FR化○」、実施していないものを「FR化×」と記した。また、比較例1を基準とした電解電圧の低減分を「効果:ΔV」の正の値とした。
一方、比較例2、3においては、比較例1に対してそれぞれ、23mV、19mV、電解電圧が増大した。
実施例5の電解用電極を、活性の低下した電極の再活性化に用いた。活性の低下した電極として、セミコマーシャルプラントの電解槽で6.9年通電した比較例1と同様に作製した電解用電極を、所定のサイズ(95×110mm=0.01045m2)に切り出したものを基材電極とし、この基材電極を溶接によって陽極セルの陽極室のリブに装着した。この基材電極の電流密度6kA/m2における電解電圧は、比較例1を基準として32mV上昇していた。この基材電極の上に、実施例5の電解用電極を更新用電極として溶接し、電極積層体を含む電解槽とした。
実施例1における導電性基材を、メッシュの短目方向中心間距離(SW)が2.2mm、メッシュの長目方向中心間距離(LW)が3.0mm、板厚0.52mmのチタン製エクスパンドメタルとした以外は、実施例1と同様の方法により、電解用電極を作製した。
得られた電解用電極は、厚み0.52mm、開口率23.3%、開口部の周辺長の総和を開口率で除した値は2.36であった。
上述の電解用電極を、活性の低下した電極の再活性化に用いた。活性の低下した電極として、製造プラントの電解槽で7.1年通電した比較例1と同様に作製した電解用電極を所定のサイズ(95×110mm=0.01045m2)に切り出したものを基材電極とし、この基材電極を溶接によって陽極セルの陽極室のリブに装着した。この基材電極の電流密度6kA/m2における電解電圧は、比較例1を基準として35mV上昇していた。この基材電極の上に、上記の電解用電極を更新用電極として溶接し、電極積層体を含む電解槽とした。
2,3 開口部
10 電解用電極
20 開口部
100 開口部
100’ 開口部
101 第1の仮想中心線
102 第2の仮想中心線
a 部分a
b 部分b
200 電気分解用電解槽
210 電解液
220 容器
230 陽極(電解用電極)
240 陰極
250 イオン交換膜
260 配線
300 電解用電極
310 開口部のメッシュの短目方向中心間距離(短径SW)
320 開口部のメッシュの長目方向中心間距離(長径LW)
330 第2の仮想中心線
340 部分a
350 部分b
360 開口部のメッシュの短目方向の開口部と開口部との間の距離
Claims (10)
- 有孔金属製板からなる導電性基材と、
該導電性基材の表面上に形成された少なくとも一層の触媒層と、
を備える電解用電極であって、
前記電解用電極の厚みが0.5mm超1.2mm以下であり、
前記電解用電極の開口部の周辺長の総和Bを前記電解用電極の開口率Aで除した値Cが、2超5以下である、電解用電極。 - 前記開口率Aが、5%以上25%未満である、請求項1に記載の電解用電極。
- 前記開口部のメッシュの短目方向中心間距離SWが1.5以上3以下であり、かつ、前記メッシュの長目方向中心間距離LWが2.5以上5以下である、請求項1又は2に記載の電解用電極。
- 前記電解用電極の厚みが、0.5mm超0.9mm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電解用電極。
- 下記式(1)で表される値Eが、0.5以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電解用電極:
E=B/(A×(SW2+LW2)1/2) (1) - 請求項1〜5のいずれか一項に記載の電解用電極を陽極として含む陽極室と、
陰極を含む陰極室と、
前記陽極室と前記陰極室とを隔離するイオン交換膜と、
を備える、電解槽。 - 前記イオン交換膜の陽極側表面において、当該イオン交換膜を構成するポリマーからなる突出部を有する、請求項6に記載の電解槽。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の電解用電極と、
前記電解用電極とは異なる基材電極と、
を備える、電極積層体。 - 前記電解用電極の厚みが、0.5mm超0.65mm以下である、請求項8に記載の電極積層体。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の電解用電極を、電解槽における既設の電極上に溶接する工程を含む、電極の更新方法。
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