JP6754197B2 - 害虫防除用エアゾール剤 - Google Patents
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Description
近年開発された新規ピレスロイド系化合物・モンフルオロトリンは、各種の害虫に対して顕著な速効性を奏するとともに、害虫の行動を停止させるというユニークな特長を備え、エアゾール剤をはじめ各種分野への適用が進められている。一方、モンフルオロトリンは従来のピレスロイド系化合物に較べると有機溶剤に溶けにくい等の物性上の特性を有するため、これを含有するエアゾール剤を開発するにあたり、例えば最適な溶剤の探索は多大な試験を要し、処方検討上の重要な課題となっている。
また、特許文献2(特許第5326319号公報)には、モンフルオロトリンと初留点が150℃以上であり95%留出温度が300℃以下である飽和炭化水素に加え、補助溶剤としてモノアルキレングリコールモノアルキルエーテル及びジアルキレングリコールモノアルキルエーテルからなる群より選ばれる1種又は2種以上のグリコールエーテルを含有する害虫防除用組成物が開示されている。ならびに、特許文献3(特許第5326320号公報)では、特定のカルボン酸エステルが、モンフルオロトリンと飽和炭化水素を含む害虫防除用組成物において、同様に補助溶剤の効果を奏するとしている。しかしながら、これらグリコールエーテルや特定のカルボン酸エステルの効果は必ずしも十分満足のいくものとは言えなかった。
更に、特許文献4(特開2014−31342号公報)は、モンフルオロトリンと噴射剤と主溶剤とともに、補助溶剤を含有させた殺虫エアゾール用組成物を開示し、補助溶剤として各種化合物を羅列する。ただし、ここで唯一具体的なものとして挙げられているエタノールにしても、実施例で明確に補助溶剤としての効果が確認されているわけではない。このように、モンフルオロトリンと飽和炭化水素系溶剤を含有するエアゾール剤の製剤化には、最適な補助溶剤の探索など、なお改良の余地が残されていた。
即ち、本発明者らは、以下の構成が上記目的を達成するために優れた効果を奏することを見出し、本発明の完成に至ったものである。
(1)(a)害虫防除成分としてのモンフルオロトリンを含む複数のピレスロイド系化合物と、(b)炭素数が10〜18の飽和炭化水素系溶剤と、更に(c)殺虫効力増強剤としてのイソプロピルアルコールを含有するエアゾール原液に、(d)噴射剤を加えてなる害虫防除用エアゾール剤であって、
前記(c)殺虫効力増強剤としてのイソプロピルアルコールの前記(b)炭素数が10〜18の飽和炭化水素系溶剤に対する質量比[(c)/(b)]が、1/0.3〜1/2.7である害虫防除用エアゾール剤。
(2)前記(c)殺虫効力増強剤としてのイソプロピルアルコールを、当該害虫防除用エアゾール剤全体量に対して7〜40質量%配合した(1)に記載の害虫防除用エアゾール剤。
(3)前記(c)殺虫効力増強剤としてのイソプロピルアルコールを、当該害虫防除用エアゾール剤全体量に対して8〜30質量%配合した(2)に記載の害虫防除用エアゾール剤。
(4)前記エアゾール原液と前記(d)噴射剤との質量比が、30/70〜70 /30であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか1に記載の害虫防除用エアゾール剤。
(5)ハチ類防除用エアゾール剤である(1)乃至(4)のいずれか1に記載の害虫防除用エアゾール剤。
モンフルオロトリンの配合量としては、使用目的や使用方法等を考慮して適宜決定すればよいが、当該害虫防除用エアゾール剤全体量に対して0.001〜3.0質量%、好ましくは0.01〜1.0質量%が適当である。配合量が0.001質量%未満では所望の防除効果が得られないし、一方、3.0質量%を超えるとエアゾール組成物の安定化の点て困難を伴い好ましくない。尚、モンフルオロトリンの酸部分において、不斉炭素に基づく光学異性体や幾何異性体が存在する場合、これらの各々や任意の混合物も本発明に包合されることは勿論である。
また、前記ピレスロイド系化合物以外の害虫防除成分としては、例えば、シラフルオフェン等のケイ素系化合物、ジクロルボス、フェニトロチオン等の有機リン系化合物、プロポクスル等のカーバメート系化合物、ジノテフラン、イミダクロプリド、クロチアニジン等のネオニコチノイド系化合物、その他のフィプロニル、インドキサカルブ等が挙げられる。
かかる飽和炭化水素系溶剤の配合量は、エアゾール組成物全体量に対し、5〜60質量%の範囲で設定できる。
ノルマルパラフィンとしては、炭素数が12〜14主体のものが代表的で、例えば、中央化成株式会社製のネオチオゾール、ジャパンエナジー社製のノルマルパラフィンN−12、ジャパンエナジー社製のノルマルパラフィンN−13、ジャパンエナジー社製のノルマルパラフィンN−14等が挙げられる。
一方、イソパラフィンとしては、炭素数が12〜16主体のものが使いやすく、例えば、出光石油株式会社製のIPソルベント1620及びIPソルベント2028、エクソン化学株式会社製のアイソパーM、シェル化学株式会社製のシェルゾールTK等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、ナフテン系炭化水素としては、ジャパンエナジー社製のナフテゾール160及びナフテゾール200等が代表的である。
前述したように、本発明者らは、モンフルオロトリンの物性上の特性を鑑み、モンフルオロトリンと飽和炭化水素系溶剤を含有するエアゾール剤について、イソプロピルアルコールの配合を鋭意検討したところ、驚くべきことに、イソプロピルアルコールがモンフルオロトリンの補助溶剤として作用するだけでなく、エアゾール組成物の相溶性の安定化に寄与するとともに、殺虫効果を増強させ得ることを知見し、本発明を完成させるに至ったものである。
7質量%未満であると、殺虫効力増強剤としての効果が得られず、特にエアゾール組成物の相溶性の安定化効果を期待できない。一方、40質量%を超えると、飽和炭化水素系溶剤の配合量が減り、その結果、飽和炭化水素系溶剤による害虫防除成分の害虫体内浸透を妨げる可能性を有するので好ましくない。
上記エアゾール原液と噴射剤との配合比率については、噴射性状、モンフルオロトリンを含むエアゾール組成物の相溶性等はもちろん、害虫防除効果への影響等をも考慮し、エアゾール原液と噴射剤との質量比を、30/70〜70/30に設定するのが適当である。
本エアゾール剤は、スズメバチ類を含む各種のハチ類に5〜10秒間直撃噴射して効果的に駆除できる。また、既に造られている巣に対しては直接噴射処理して巣内のハチを駆除せしめるとともに、駆除を逃れたハチについても巣に回帰するのを防止可能である。更にこれだけでなく、ハチが出入りする周辺や営巣しそうな場所、例えば、屋根裏、軒下、屋根瓦の下、木の枝、樹木の空隙などに噴霧塗布(目安として50〜250mL/m2程度)することによって、生活環境周りでのハチの営巣行動を抑えることも期待できるので極めて実用的である。
なお、本エアゾール剤の(c)/(b)比率[(c)イソプロピルアルコールの(b)飽和炭化水素系溶剤に対する質量比]は、1/2.7で、エアゾール原液/噴射剤比率は、56/44であった。
(1)直撃噴射によるイエバエに対する殺虫効力
直径20cmで高さが43cmのアクリル製円筒を重ね、約2m先の先端部分に金網で仕切った区画を設けて全体の長さが約230cmの円筒装置を作製し、これを横置きした。前記区画に供試昆虫のイエバエ雌成虫20匹を入れ、円筒装置末端から供試エアゾール剤を0.5秒間噴射した。供試昆虫の時間の経過に伴うノックダウン状態を観察し、プロビット法によりKT50値を算出した。また、ノックダウン後の行動停止効果についても観察を加え、明瞭に認められるものから認められないものまでを、○、△、×で評価した。更に、10分後に供試昆虫を清潔なプラスチック容器に移し、24時間後の致死率を求めた。
(2)エアゾール剤の相溶性
透明のエアゾール容器に各供試エアゾール剤を入れ、1日後にエアゾール組成物の相溶性及び分離状態の有無を調べた。結果は、液性の良好な状態から不良な状態(例えば、液性の分離)までを、◎、○、△、×で評価した。
Claims (5)
- (a)害虫防除成分としてのモンフルオロトリンを含む複数のピレスロイド系化合物と、(b)炭素数が10〜18の飽和炭化水素系溶剤と、更に(c)殺虫効力増強剤としてのイソプロピルアルコールを含有するエアゾール原液に、(d)噴射剤を加えてなる害虫防除用エアゾール剤であって、
前記(c)殺虫効力増強剤としてのイソプロピルアルコールの前記(b)炭素数が10〜18の飽和炭化水素系溶剤に対する質量比[(c)/(b)]が、1/0.3〜1/2.7である害虫防除用エアゾール剤。 - 前記(c)殺虫効力増強剤としてのイソプロピルアルコールを、当該害虫防除用エアゾール剤全体量に対して7〜40質量%配合したことを特徴とする請求項1に記載の害虫防除用エアゾール剤。
- 前記(c)殺虫効力増強剤としてのイソプロピルアルコールを、当該害虫防除用エアゾール剤全体量に対して8〜30質量% 配合したことを特徴とする請求項2に記載の害虫防除用エアゾール剤。
- 前記エアゾール原液と前記(d)噴射剤との質量比が、30/70〜70/30であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の害虫防除用エアゾール剤。
- ハチ類防除用エアゾール剤であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の害虫防除用エアゾール剤。
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