JP6029238B2 - 飛翔害虫防除効力増強剤及びこれを用いた飛翔害虫防除方法 - Google Patents

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本発明は、飛翔害虫防除効力増強剤及びこれを用いた飛翔害虫防除方法に関するものである。
家屋等に使用されている網戸や窓、玄関の扉などには室内の光に誘引されたりして種々の害虫が飛来し、窓や扉が開いている場合には網戸を通って室内に侵入してくることも多々あった。特に、網戸を対象とした対策は重要であり、網戸に殺虫剤や防虫剤を処理して害虫の侵入を防ぐ方法が、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されている。
特許文献1には、粉末状の蚊取線香を液状の接着剤に溶かしてこれを網戸の網に塗りつけるような方法が記載されているが、抽象的な提案に留まっている。一方、特許文献2は、施用時に薬剤が網戸に効率よく付着し、網戸の網目を通過する比率が減少するような組成物を提供することを目的としたものであるが、防除効果が必ずしも十分でなく、また、網戸に塗布された組成物が埃りなどの汚れの付着を招き、逆に不快感を与えたり、防除効果が低下してしまうという問題があった。
かかる状況から、本発明者らは、飛翔害虫防除用組成物の開発にあたっては、高い害虫防除効果を奏するとともに、優れた防汚作用も兼備すべきと結論し、特許文献3において、(a)害虫防除成分と、(b)好ましくはアニオン系界面活性剤である帯電防止成分を含有する網戸用害虫防除剤を開示した。しかしながら、害虫防除効果の更なる向上を図るうえでなお改良の余地が残されていた。
特開昭61−36487号公報 特開平11−315002号公報 特開2009−126805号公報
本発明は、家屋の防除対象物、特に網戸を処理する飛翔害虫防除用組成物に配合されるとともに、飛翔害虫防除効果を顕著に高め得る飛翔害虫防除効力増強剤、及びこれを用いた飛翔害虫防除方法を提供することを目的とする。
本発明者らの鋭意検討の結果、本発明は、以下の構成が上記目的を達成するために優れた効果を奏することを見出したものである。
(1) 一般式[化1]で表されるグリコールエーテル化合物であって、かつ、少なくともシフルトリンを含む1種以上のピレスロイド系化合物を害虫防除成分として0.01〜3.0w/v%、ノニオン系及び/又はアニオン系の界面活性剤を0.1〜10w/v%と、更に溶剤としての水を80〜99.5w/v%を含有する飛翔害虫防除用組成物に、前記グリコールエーテル化合物を0.1〜10w/v%配合する飛翔害虫防除効力増強剤。
[化1]
[式中、nは1〜2の整数を表わす。Rは炭素数が1〜7のアルキル基(但し、nが1の整数の場合、炭素数が3〜7のアルキル基)、アリル基、フェニル基及びベンジル基のいずれかを表わし、Rは水素原子又はメチル基を示す。]
(2) 前記一般式[化1]で表されるグリコールエーテル化合物が、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル及びジエチレングリコールモノベンジルエーテルから選ばれる1種以上である(1)に記載の飛翔害虫防除効力増強剤。
(3) 前記飛翔害虫防除用組成物が、網戸処理用である(1)又は(2)に記載の飛翔害虫防除効力増強剤。
(4) (1)ないし()のいずれか1に記載の飛翔害虫防除効力増強剤が配合された前記飛翔害虫防除用組成物を家屋の防除対象物に処理することを特徴とする飛翔害虫防除方法。
本発明の飛翔害虫防除効力増強剤は、家屋の防除対象物、特に網戸を処理する飛翔害虫防除用組成物に配合され、その飛翔害虫防除効果を顕著に高め得るので非常に有用性が高い。そして、これを用いた飛翔害虫防除方法も極めて実用的なものである。
本発明では、飛翔害虫防除用組成物に含有される害虫防除成分として、少なくともシフルトリンを含む1種以上のピレスロイド系化合物が用いられる。シフルトリン以外のピレスロイド系化合物としては、フタルスリン、フェノトリン、ぺルメトリン、シフェノトリン、シペルメトリン、トラロメトリン、レスメトリン、アレスリン、プラレトリン、フラメトリン、イミプロトリン、エムペントリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、エトフェンプロックス等があげられる。
かかる害虫防除成分は処理後網戸等の防除対象物に残存し、飛来した害虫が触れると殺虫効果を奏するが、エムペントリン、トランスフルトリン、メトフルトリンやプロフルトリン等の揮散性の高い成分を配合すれば、処理面から徐々に揮散して環境空間に殺虫成分バリヤーを形成し、害虫の予防的防除を期待することも可能である。
少なくともシフルトリンを含む1種以上のピレスロイド系化合物の飛翔害虫防除用組成物中における配合量は、0.01〜3.0w/v%程度が好ましい。0.01w/v%未満であると所望の効果が得られないことがあるし、一方、3.0w/v%を超えると製剤の安定性の点で困難を伴う場合がある。
特にシフルトリンは、0.01〜1.0w/v%程度用いることで、本発明の飛翔害虫防除効力増強剤との効力増強が顕著に認められ、より好ましいことが判った。
また、必要ならば、他の種類の害虫防除成分、例えば、シラフルオフェン等の有機ケイ素系殺虫成分、ジクロルボス、フェニトロチオン等の有機リン系殺虫成分、プロポクスル等のカーバメート系殺虫成分、イミダクロプリド、ジノテフラン、クロチアニジン等のネオニコチノイド系殺虫成分等を適宜加えてもよい。
なお、上記害虫防除成分のなかには、その不斉炭素や二重結合に基づく光学異性体や幾何異性体が存在するが、これらの各々やそれらの任意の混合物の使用も本発明に含まれるのは勿論である。
本発明は、飛翔害虫防除用組成物に配合される飛翔害虫防除効力増強剤として、上記一般式[化1]で表されるグリコールエーテル化合物を特定したことに特徴を有する。
ここで、グリコールエーテル化合物としては、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル(フェニルグリコール)、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(フェニルジグリコール)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(PGMP)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(ベンジルグリコール)及びジエチレングリコールモノベンジルエーテル(ベンジルジグリコール)から選ばれる1種以上があげられるが、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル及びジエチレングリコールモノベンジルエーテルが性能的に好ましく、なかんずくジエチレングリコールモノフェニルエーテルが好適である。
本発明者らの検討結果によれば、上記グリコールエーテル化合物は、害虫防除成分による飛翔害虫防除効果を顕著に向上させることに加え、当該組成物の製剤安定化にも寄与することが認められた。この効果は、ピレスロイド系化合物の中では、シフルトリンを用いた場合に顕著であることが認められた。
この場合のグリコールエーテル系化合物の配合量は0.1〜10w/v%程度が好ましい。0.1w/v%未満であると所望の防除効力増強効果が得られないことがある一方、10w/v%を超えると、上述の製剤安定化効果が相殺されるばかりか、問題を生じかねず好ましくない。
飛翔害虫防除用組成物の剤型としては、スプレーの形態で用いられる乳剤、水溶剤、マイクロエマルジョン等が一般的であるが、もちろん噴射剤を配合してエアゾール形態に適用してもよい。なお、エアゾール形態の場合、各成分の含有量はエアゾール原液中の濃度で示す。
本発明では、飛翔害虫防除用組成物中に、上記害虫防除成分やグリコールエーテル化合物に加えて、ノニオン系及び/又はアニオン系の界面活性剤、ならびに溶剤としての水などが配合される。
ノニオン系及び/又はアニオン系の界面活性剤は、害虫防除成分を水に可溶化するために配合され、その配合量は、害虫防除成分の物理化学的性状によっても左右されるが0.1〜10w/v%程度が好ましい。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル類などのエーテル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類などの脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンスチレン化フェノール、脂肪酸のポリアルカロールアミドなどがあげられる。
一方、アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン(POE)スチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン(POE)アルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼン硫酸塩などがあげられる。上記POEのモル数は5〜30程度、アルキル基の炭素数は10〜20程度が適当であり、硫酸塩としてはナトリウム塩やカリウム塩が一般的である。
本発明の飛翔害虫防除用組成物には、水のほか、必要に応じて、有機溶剤、例えば、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコールなどの炭素数3〜6のグリコール、これらのグリコールエーテル、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、灯油などの炭化水素系溶剤などを配合することができる。
また、本発明の効果に支障を来たさない限りにおいて、帯電防止成分やpH調整剤等の他の成分を配合することもできる。
帯電防止成分としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤などがあげられるが、アニオン系界面活性剤が好ましく、なかでもポリオキシエチレン(POE)アルキルエーテルリン酸塩が本発明の趣旨に好適に合致する。POEのモル数は5〜30程度、アルキル基の炭素数は10〜20程度が適当であり、リン酸塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩があげられる。
帯電防止成分の配合は、埃などの汚れが網戸に付着するのを低減し、防除効果の低下防止に効果的であるとともに、当然のことながら、汚れによる不快感を軽減し、網戸の清掃の省力化にも役立つものである。
加えて、トリエタノールアミン等のpH調整剤を配合し、液剤中のpHを5〜7に調整することもできる。pHがこの範囲を外れると害虫防除成分の安定性に影響を及ぼす懸念を生じる。
更に、本発明の飛翔害虫防除用組成物には、殺ダニ剤、カビ類、菌類等を対象とした防カビ剤、抗菌剤や殺菌剤、あるいは、安定剤、消臭剤、消泡剤、香料、賦形剤等を適宜配合してもよい。殺ダニ剤としては、5−クロロ−2−トリフルオロメタンスルホンアミド安息香酸メチル、サリチル酸フェニル、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート等があり、一方、防カビ剤、抗菌剤や殺菌剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(4−チアゾリル)ベンツイミダゾール、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、トリホリン、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、オルト−フェニルフェノール等を例示できる。
本発明の飛翔害虫防除用組成物をエアゾール形態に適用する場合、噴射剤が配合される。噴射剤としては、ジメチルエーテル、液化石油ガス(LPG)、圧縮ガス(窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素、圧縮空気等)があげられる。
飛翔害虫防除用組成物が充填される容器は、その用途、使用目的、対象害虫等に応じて、適宜バルブ、噴口、ノズル等の形状を選択すればよい。
例えば、広角ノズル付きのトリガースプレータイプを用いれば、一度の操作で網戸の広い範囲を処理することが可能となり便利である。
こうして得られた本発明の飛翔害虫防除用組成物は、所定量を所望の網戸等の防除対象物に処理すればよく、目安として5〜50mL/m2程度が適当である。そして、本発明によれば、飛翔害虫防除効果増強剤の作用によって残効性が著しく向上し害虫防除効果は数ケ月にわたって持続する。更に、本発明で用いる飛翔害虫防除効果増強剤は、当該組成物の製剤安定化にも寄与するので極めて実用的である。
本発明の対象となる害虫としては、飛来して網戸等に集まり、人に被害や不快感を与える昆虫全てがあげられる。例えば、アカイエカ、ネッタイシマカ、ユスリカ類、イエバエ類、チョウバエ、ショウジョウバエ等のコバエ類、ブユ類、アブ類等の双翅目、ハチ類、アリ類等の膜翅目、ハムシ、カナブン等の鞘翅目、ガ類等の鱗翅目、ウンカ、アブラムシ等の半翅目等があげられるが、これらの害虫に限定されるものではない。
次に具体的な実施例に基づき、本発明の飛翔害虫防除効果増強剤、及びこれを用いた飛翔害虫防除方法について更に詳細に説明する。
害虫防除成分としてのシフルトリンを0.03w/v%、飛翔害虫防除効果増強剤としてのフェニルジグリコールを1.5w/v%、ノニオン系界面活性剤としてのポリオキシエチレン(POE:16モル)オレイルエーテルを5.0w/v%、アニオン系界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1.0w/v%、帯電防止成分としてのポリオキシエチレン(POE:5モル)アルキル(C15)エーテルリン酸ナトリウムを0.5w/v%、防腐剤としての5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを0.02w/v%、及び水91.95w/v%からなる飛翔害虫防除用組成物(120mL)を調製し、これをトリガー付きボトルに充填して本発明に係るスプレー式の飛翔害虫防除製品を得た。
この組成物は製剤の性状安定性に優れ、室温保存6ケ月後にても白濁や結晶析出を認めなかった。また、得られた飛翔害虫防除製品の20mLを、一戸建て家屋の網戸2mに処理したところ、2ケ月にわたり網戸に止まっている虫は観察されず、高い害虫駆除効果を示した。
表1に示すとおり、実施例1の害虫防除成分と飛翔害虫防除効果増強剤を変更して各種飛翔害虫防除用組成物を調製し、下記に示す試験を行った。なお、他の成分は、特記しない限り、実施例1と同様とした。
(1)害虫の防除効果
25×25cmに裁断した網戸用ネットに供試飛翔害虫防除用組成物を10mL/m2の割合で処理し、巾着状のカゴにして埃がたつ屋外に並べ、試験開始時、1ヵ月後、及び2ヵ月後に、カゴ内にアカイエカ雌成虫20匹を放虫した。放虫してから60分後に供試虫をカゴから清潔なプラスチック製容器に移し、24時間後の致死虫数を観察して致死率を算出した。
(2)製剤の性状安定性
組成物を室温で6ケ月間保存し、白濁や結晶析出の有無を調べた。結果は、全く変化のないもの(◎)、ごく僅かに認められるもの(○)、僅かに認められるもの(△)、かなり認められるもの(×)で示した。
試験の結果、害虫防除成分として少なくともシフルトリンを含む1種以上のピレスロイド系化合物を含有するとともに、本発明が特定する飛翔害虫防除効果増強剤としてのグリコールエーテル化合物を配合した飛翔害虫防除用組成物は、長期間にわたり顕著な害虫防除効果を示し、製剤の性状安定性にも優れた。
これに対し、グリコールエーテル化合物を配合しない比較例1、並びに本発明の範囲にあたらないグリコールエーテル化合物やピロリドン系溶剤を用いた比較例2〜5の場合、害虫防除効果が劣り、製剤の性状安定性も不良であった。また、害虫防除成分としてシフルトリンではなくシフェノトリンを用いた場合には、本発明が特定するグリコールエーテル化合物を配合したとしても害虫防除効果の増強はほとんど認められず、本発明の有用性は明らかである。
本発明の飛翔害虫防除効果増強剤は、広範な害虫駆除を目的として利用することが可能である。

Claims (4)

  1. 一般式[化1]で表されるグリコールエーテル化合物であって、かつ、少なくともシフルトリンを含む1種以上のピレスロイド系化合物を害虫防除成分として0.01〜3.0w/v%、ノニオン系及び/又はアニオン系の界面活性剤を0.1〜10w/v%と、更に溶剤としての水を80〜99.5w/v%を含有する飛翔害虫防除用組成物に、前記グリコールエーテル化合物を0.1〜10w/v%配合することを特徴とする飛翔害虫防除効力増強剤。
    [化1]
    [式中、nは1〜2の整数を表わす。Rは炭素数が1〜7のアルキル基(但し、nが1の整数の場合、炭素数が3〜7のアルキル基)、アリル基、フェニル基及びベンジル基のいずれかを表わし、Rは水素原子又はメチル基を示す。]
  2. 前記一般式[化1]で表されるグリコールエーテル化合物が、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル及びジエチレングリコールモノベンジルエーテルから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の飛翔害虫防除効力増強剤。
  3. 前記飛翔害虫防除用組成物が、網戸処理用であることを特徴とする請求項1又は2に記載の飛翔害虫防除効力増強剤。
  4. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の飛翔害虫防除効力増強剤が配合された前記飛翔害虫防除用組成物を家屋の防除対象物に処理することを特徴とする飛翔害虫防除方法。
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