JP6996940B2 - 匍匐害虫防除用エアゾール剤、及びこれを用いた匍匐害虫防除方法 - Google Patents
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Description
その後、本発明者らは更に検討を続けた結果、先の出願特許とは逆に、(a)トランスフルトリンの含有量が(b)シフルトリンやビフェントリン等の難揮散性ピレスロイドの含有量より小さい場合においても、特に多足類やハサミムシ類のような匍匐害虫に対しては、速効性の一つの指標であるノックダウン効果の前段階として行動を停止させる作用が際立つようになり、しかもこの行動停止効果が特定の化合物を添加することによって相乗的に増強することを認め、結果として先の出願特許と同様、これら害虫の効率的な防除を実現できることを知見して本発明を達成するに至ったものである。
(1)エアゾール原液と噴射剤とからなる匍匐害虫防除用エアゾール剤であって、
前記エアゾール原液は、エアゾール原液量に対して、(a)トランスフルトリンを0.01~2.0w/v%、並びに(b)難揮散性ピレスロイド系化合物を0.05~5.0w/v%含む害虫防除成分と、(c)常温液状で沸点が180℃以上である高級脂肪酸エステルを10w/v%以下と、(d)飽和炭化水素系溶剤とを含有し、
前記エアゾール原液が30~70v/v%と、前記噴射剤が70~30v/v%とからなる匍匐害虫防除用エアゾール剤。
(2)前記(b)難揮散性ピレスロイド系化合物は、シフルトリン、ビフェントリン及びフタルスリンから選ばれる少なくとも1種である(1)に記載の匍匐害虫防除用エアゾール剤。
(3)前記(b)難揮散性ピレスロイド系化合物は、シフルトリン及びフタルスリンである(2)に記載の匍匐害虫防除用エアゾール剤。
(4)前記(a)成分の前記(b)成分に対する含量比[(a)/(b)]は、1.0~10倍量であって、かつ、前記(c)成分の前記(a)成分に対する含量比[(c)/(a)]は、5.0倍量以下である(1)ないし(3)のいずれか1に記載の匍匐害虫防除用エアゾール剤。
(5)前記(a)成分の前記(b)成分に対する含量比[(a)/(b)]は、0.1~1.0倍量であって、かつ、前記(c)成分の前記(a)成分に対する含量比[(c)/(a)]は、1.0~100倍量である(1)ないし(4)のいずれか1に記載の匍匐害虫防除用エアゾール剤。
(6)前記(c)成分は、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、及びパルミチン酸イソプロピルから選ばれる少なくとも1種である(1)ないし(5)のいずれか1に記載の匍匐害虫防除用エアゾール剤。
(7)前記(c)成分は、ミリスチン酸イソプロピルである(6)に記載の匍匐害虫防除用エアゾール剤。
(8)前記匍匐害虫は、多足類及び/又はハサミムシ類である(1)ないし(7)のいずれか1に記載の匍匐害虫防除用エアゾール剤。
(9)(1)ないし(8)のいずれか1に記載の匍匐害虫防除用エアゾール剤を施用して匍匐害虫の行動を停止せしめ、その防除効率を増強させる匍匐害虫防除方法。
(10)前記匍匐害虫は、多足類及び/又はハサミムシ類である(9)に記載の匍匐害虫防除方法。
(a)トランスフルトリンは常温揮散性ピレスロイドに該当し、そのエアゾール噴霧液が害虫に対して直接的なノックダウン効果や殺虫効果を奏することに加え、噴射後、処理表面から揮散して処理面周囲に害虫防除空間を形成し得るという効果を期待できる。更に、今般、匍匐害虫のなかでも特に多足類やハサミムシ類に対し、ノックダウン効果を発現する前段階としてその行動を停止せしめる作用を惹起し多足類やハサミムシ類の効率的な防除に寄与しうることが明らかとなった。
(a)トランスフルトリンの含有量は、エアゾール原液量に対して0.01~2.0w/v%の範囲が適当である。0.01w/v%未満であると防除効果が不足するし、一方、2.0w/v%を超えて配合しても含有量に相応する防除効果は得られない。
(b)難揮散性ピレスロイド系化合物は、(a)トランスフルトリンと同様、そのエアゾール噴霧液が害虫に対して直接的なノックダウン効果や殺虫効果を示すほか、残留噴霧処理を施用することによって長期間にわたり害虫侵入防止効果を付与することも可能である。これらのなかでは、シフルトリン、ビフェントリン及びフタルスリンから選ばれる少なくとも一種であるのが好ましく、なかんずく、総合的にみてシフルトリン及びフタルスリンの併用が好ましい。
なお、(a)成分や(b)成分のようなピレスロイド系化合物の酸部分やアルコール部分において、不斉炭素に基づく光学異性体や幾何異性体が存在する場合、これらの各々や任意の混合物も本発明に包合されることは勿論である。
ここで、先に出願した特許(特願2017-060360)の内容を踏まえて考察するに、(a)トランスフルトリンと(b)シフルトリン及び/又はビフェントリンの含量比[(a)/(b)]が1.0~10倍量であれば、多足類やハサミムシ類に対して速効的なノックダウン効果が殺虫駆除効果に寄与するのに対し、他方、[(a)/(b)]の含量比が1.0倍量より小さい場合、これらの害虫に対し、ノックダウン効果が発現する前段階としての行動停止作用が際立つようになり、効率的な防除を実現させ得るものと推察される。
(c)成分は、前記(a)成分や(b)成分、特に(a)成分と協働して匍匐害虫、特に多足類やハサミムシ類に対する行動停止効果を増強し、また(a)成分や(b)成分の防除効果の持続性アップにも貢献する。
(c)成分のエアゾール原液量に対する含有量は10w/v%以下であり、10w/v%を超えて配合してもその効果が含有量に相応して増強するわけではない。
具体的な飽和炭化水素系溶剤を例示すると、ノルマルパラフィンとして、中央化成株式会社製のネオチオゾール[沸点:219℃]、新日本石油株式会社製のソルベントM[沸点:219℃]及びソルベントH[沸点:244℃]、ジャパンエナジー株式会社製のN12[沸点:209℃]、N13[沸点:226℃]及びN14[沸点:243℃]等があげられる。
また、イソパラフィンとしては、出光興産株式会社製のIPソルベント1620[沸点:166℃]、IPソルベント2028[沸点:213℃]及びIPソルベント2835[沸点:277℃]、エクソンモービル株式会社製のアイソパーL[沸点:184℃]、アイソパーM[沸点:229℃]及びアイソパーH[沸点:276℃]、新日本石油株式会社製のアイソゾール300[沸点:173℃]及びアイソゾール400[沸点:210℃]等があげられるが、これらに限定されない。
更に、本発明の匍匐害虫防除用エアゾール剤は、他の種類の害虫、例えば、フタモンアシナガバチ、セグロアシナガバチ、コガタスズメバチ、モンスズメバチ、ヒメスズメバチ、オオスズメバチ、キイロスズメバチ等のハチ類、アカイエカ、ヒトスジシマカ等の蚊類、イエバエ、ヒメイエバエ、センチニクバエ、クロバエ、キンバエ、キイロショウジョウバエ、チョウバエ、ノミバエ等のハエ類等の飛翔害虫に対しても有効であり、多目的防除剤としても有用性が高い。
(1)直撃噴射によるムカデの防除効果
アクリル容器(縦:50cm、横:70cm、高さ:9cm)の中央付近にトビズムカデ1匹を置き、上方約20cmの位置から各供試エアゾール剤を1秒間噴射し、トビズムカデの移動距離(cm)及びトビズムカデがノックダウンするまでの時間を測定した。試験は2回行いその平均値を求めた。
(2)残留噴霧処理によるヤスデ及びハサミムシの侵入阻止効果
直径9cmのガラスシャーレの右半分を各供試エアゾールで処理し、一方左半分を無処理区とした。所定期間経過後、シャーレ内にアカヤスデ又はハサミムシ3匹を放ち、エアゾール処理区に侵入するかどうかを観察した。1日後のアカヤスデ又はハサミムシの状態に基づき、下記の評価結果で示した。試験は、処理直後と、処理後30日目の時点で行った。
○:3匹とも無処理区に移動、 ×:3匹とも明らかに処理区、無処理区の区別なく行動、△:前記○及び×の間の評価。
具体的には、(a)成分の(b)成分に対する含量比[(a)/(b)]が0.1~1.0倍量の場合、前記移動停止効果は(c)成分の配合によって顕著に増強し高い防除効果に繋がり、(c)成分の(a)成分に対する含量比[(c)/(a)]としては1.0~100倍量の範囲が好ましかった。
一方、(a)成分の(b)成分に対する含量比[(a)/(b)]が1.0~10倍量の場合、高い防除効果は主に(a)成分と(b)成分の相乗的な速効的作用に依拠し、(c)成分の配合は移動停止効果よりむしろ防除効果の持続性アップの点でメリットがあり、その含量比[(c)/(a)]が5.0倍量以下の範囲で十分効果的であった。
(3)直撃噴射によるヤスデ又はハサミムシの駆除効果
アクリルリング(直径:9cm、高さ:9cm)の中央付近にアカヤスデ又はハサミムシ1匹を置き、上方約20cmの位置から各供試エアゾール剤を1秒間噴射し、アカヤスデ又はハサミムシがノックダウンするまでの時間を測定した。試験は2回行いその平均値を求めた。
また、理論値は、試験番号8及び11、又は試験番号8及び12の測定値に基づく相加計算値として算出した。更に、相乗指数は、[測定値/理論値]の逆数として求めた。
Claims (10)
- エアゾール原液と噴射剤とからなる匍匐害虫防除用エアゾール剤であって、
前記エアゾール原液は、エアゾール原液量に対して、(a)トランスフルトリンを0.01~2.0w/v%、並びに(b)難揮散性ピレスロイド系化合物を0.05~5.0w/v%含む害虫防除成分と、(c)常温液状で沸点が180℃以上である高級脂肪酸エステルを10w/v以下%と、(d)飽和炭化水素系溶剤とを含有し、
前記エアゾール原液が30~70v/v%と、前記噴射剤が70~30v/v%とからなる匍匐害虫防除用エアゾール剤。 - 前記(b)難揮散性ピレスロイド系化合物は、シフルトリン、ビフェントリン及びフタルスリンから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の匍匐害虫防除用エアゾール剤。
- 前記(b)難揮散性ピレスロイド系化合物は、シフルトリン及びフタルスリンである請求項2に記載の匍匐害虫防除用エアゾール剤。
- 前記(a)成分の前記(b)成分に対する含量比[(a)/(b)]は、1.0~10倍量であって、かつ、前記(c)成分の前記(a)成分に対する含量比[(c)/(a)]は、5.0倍量以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の匍匐害虫防除用エアゾール剤。
- 前記(a)成分の前記(b)成分に対する含量比[(a)/(b)]は、0.1~1.0倍量であって、かつ、前記(c)成分の前記(a)成分に対する含量比[(c)/(a)]は、1.0~100倍量である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の匍匐害虫防除用エアゾール剤。
- 前記(c)成分は、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、及びパルミチン酸イソプロピルから選ばれる少なくとも1種である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の匍匐害虫防除用エアゾール剤。
- 前記(c)成分は、ミリスチン酸イソプロピルである請求項6に記載の匍匐害虫防除用エアゾール剤。
- 前記匍匐害虫は、多足類及び/又はハサミムシ類である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の匍匐害虫防除用エアゾール剤。
- 請求項1ないし8のいずれか1項に記載の匍匐害虫防除用エアゾール剤を施用して匍匐害虫の行動を停止せしめ、その防除効率を増強させる匍匐害虫防除方法。
- 前記匍匐害虫は、多足類及び/又はハサミムシ類である請求項9に記載の匍匐害虫防除方法。
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