本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る区画貫通構造100を示す概略断面図である。
本実施形態に係る区画貫通構造100は、区画体6と、キャップ30と、固定部材50とを有する。
区画体6は、建物の内部を上層階と下層階とに区画する水平なコンクリート壁である。この区画体6には、筒状のスリーブ10を用いて貫通孔16が形成されている。貫通孔16は、区画体6を上下に貫通するものであり、貫通孔16にはパイプ5が挿通される。パイプ5は、例えば、給水管、給湯管、冷媒管、熱媒管、ガス管、吸排気管である。パイプ5は、ポリ塩化ビニルやポリプロピレンから形成されたものであり、融点が200℃程度である。
図2は、スリーブ10、キャップ30、固定部材50、及びパイプ5を示す斜視図である。図2では、区画体6を構築すべく、型枠2や鉄筋Rを組み立てた状態が示されている(つまり図2では、区画体6を構築する以前の状態が示されている)。
スリーブ10は、ボイドとも称されるものであって、円筒状のスリーブ本体12を備えている。スリーブ本体12の開口19は、貫通孔16(図1参照)として機能するものであり、開口19の大きさ(スリーブ本体12の内径)は、パイプ5の外径よりも大きく、パイプ5を開口19に挿通することができる。
スリーブ本体12の下端13bには、1つまたは複数の取付部24が設けられている。取付部24はスリーブ本体12と一体成形されている。図2の例では、4つの取付部24がスリーブ本体12の下端13bに設けられており、これら4つの取付部24は、スリーブ10の軸A周りに約90°の角度で離間している。各取付部24は、床下地1に対してスリーブ10を固定するための孔26を有している。有底矩形の型枠2は、コンクリート3(後述の図4(b))を収容するためのものであり、型枠2内にはコンクリート3の補強用の鉄筋Rが収容される。コンクリート3および鉄筋Rは、床下地1を構成する。
孔26には、スリーブ10を型枠2、鉄筋R、またはコンクリート3等に固定するために、針金等の金属線、ボルト、ビス、釘等の固定用部材が通され得る。本実施形態では、スリーブ10は、金属線等を取付部24の孔26に通し、該金属線の両端を鉄筋Rに結び付けることにより、鉄筋Rに対して固定される 。なお任意選択で、固定用部材をスリーブ10から取り外せるように、孔26に固定用部材を外しやすくするためのグリースを付けておいたり、取付部24に作業者が手で力を加えると取付部24の部分が折れて取り外せるようになっていてもよい 。
またスリーブ10は、スリーブ本体12の外側面から突出して延びるリブを備える。図2の例では、このリブとして、スリーブ10の軸Aに対して略平行に延びる複数のリブ12a(図2では3つ)と、スリーブ10の軸Aを中心とした環状を呈する複数のリブ12b(図2では3つ)とがあり、これらリブ12a,12bはスリーブ本体12と一体成形されている。リブ12a,12bは、スリーブ10の周囲にコンクリート3を流し込んだときに、コンクリート3から受ける力に対してスリーブ10が耐えられるようスリーブ10を補強する役割を果たす。
図3は、図2に示すスリーブ10を底面から見た略斜視図である。図3を参照すると、本実施形態のスリーブ10では、複数のリブ12bのうち、最下部のリブ12bは、スリーブ本体12の下端13bよりもわずかに高い位置(例えば3mm〜20mm)に設けられており、最下部のリブ12bの下面よりも下方のスリーブ本体12の部分と、最下部のリブ12bと、(さらにはスリーブ本体12の下端13bから突出する取付部24と)の間には空間12cが形成される。
以上の構成を有するスリーブ10は、熱膨張性の耐火樹脂材料から形成される。耐火樹脂材料は、樹脂成分に熱膨張性層状無機物と無機充填材とを含む樹脂組成物である。スリーブ10は、樹脂組成物の各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練し、公知の成形方法で成形することにより得ることができる。
本実施形態では、スリーブ10のスリーブ本体12、リブ12a,12b、ならびに取付部24が同じ熱膨張性の耐火樹脂材料から一体成形されている。
樹脂成分としては、公知の樹脂成分を広く使用でき、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム物質、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。
ゴム物質としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
これらの合成樹脂および/またはゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
これらの合成樹脂および/またはゴム物質の中でも、柔軟でゴム的性質を有しているものが好ましい。この様な性質を有する樹脂成分は無機充填材を高充填することが可能であり、得られる樹脂組成物が柔軟で扱い易いものとなる。より柔軟で扱い易い樹脂組成物を得るためには、ブチル等の非加硫ゴムおよびポリエチレン系樹脂が好適に用いられる。代わりに、樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
熱膨張性層状無機物は加熱時に膨張するものである。かかる熱膨張性層状無機物に特に限定はなく、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等を挙げることができる。熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和してもよい。熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュより数値が大きいと、黒鉛の膨張度が膨張断熱層が得るのに十分であり、また粒度が20メッシュより小さいと、樹脂に配合する際の分散性が良く、物性が良好である。熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」、GRAFTECH社製「GRAFGUARD」等が挙げられる。
無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩等が挙げられる。
また、無機充填剤としては、これらの他に、硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いることができるし、2種以上を併用することもできる。
無機充填剤の粒径としては、0.5〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜50μmである。無機充填剤は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、0.5μm以上であると、分散性が良好である。添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることで樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、粒径の大きいものが好ましいが、100μm以下の粒径が成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性の点で望ましい。
無機充填剤のうち、水酸化アルミニウムの具体例としては、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)、粒径25μmの「B325」(ALCOA社製)、炭酸カルシウムでは、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工業社製)等が挙げられる。
さらに、熱膨張性耐火材を構成する樹脂組成物は、膨張断熱層の強度を増加させ防火性能を向上させるために、前記の各成分に加えて、さらにリン化合物を含んでもよい。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、および、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コスト等の点においてポリリン酸アンモニウムがより好ましい。
化学式(1)中、R1およびR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、炭素数6〜16のアリール基を表す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、または、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。ポリリン酸アンモニウムとしては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取り扱い性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR CROS 484」、「FR CROS 487」等が挙げられる。
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、n−プロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。
前記樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂成分100重量部に対し、前記熱膨張性層状無機物を10〜350重量部および前記無機充填材を30〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。
また、前記熱膨張性層状無機物および前記無機充填材の合計は、樹脂成分100重量部に対し、50〜600重量部の範囲が好ましい。
かかる樹脂組成物は加熱によって膨張し耐火断熱層を形成する。この配合によれば、前記熱膨張性耐火材は火災等の加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する残渣を形成することもでき、安定した防火性能を達成することができる。
前記樹脂組成物における熱膨張性層状無機物および無機充填材の合計量は、50重量部以上では燃焼後の残渣量を満足して十分な耐火性能が得られ、600重量部以下であると機械的物性が維持される。
さらに本発明に使用する前記樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂、成型補助材等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
熱膨張性耐火材は市販品として入手可能であり、例えば、住友スリーエム社製のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーミキュライトとを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛とを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)、積水化学工業社製フィブロック等の熱膨張性耐火材等も挙げられる。
前記熱膨張性耐火材は、火災時などの高温にさらされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度があるものであれば特に限定されない。50kW/m2の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3〜50倍のものであれば好ましい。前記体積膨張率が3倍以上であると、膨張体積が前記樹脂成分の焼失部分を十分に埋めることができ、また50倍以下であると、膨張層の強度が維持され、火炎の貫通を防止する効果が保たれる。
図1や図2に示すように、キャップ30は、環状を呈して、その内側に開口31を有する。キャップ30の内径(開口31の径)は、パイプ5の外径と同等或いはそれよりも大きい。キャップ30は、内側の開口31にパイプ5が挿通されるように、スリーブ10の上端に設置される。
より具体的には、キャップ30は、キャップ本体32と、キャップ本体32よりも径が小さい脚部34とを有する。キャップ本体32の外径は、スリーブ10(およびスリーブ本体12)の外径よりも大きく、キャップ本体32は、スリーブ10の上端13aの上に設置される。脚部34の外径はスリーブ10(およびスリーブ本体12)の内径よりも小さく、脚部34は、スリーブ10の内面とパイプ5の外面との間に挟まれるように配置される。
キャップ30には、切れ目33が形成される。切れ目33は、キャップ本体32と脚部34とを厚さ方向に貫通して、キャップ30を分断するものである。この切れ目33は、パイプ5が既に貫通孔16に通されている状態でも、開口31にパイプ5を通すことを可能とすべく形成される。すなわち、切れ目33を介して相対するキャップ30の一端部及び他端部を把持して、キャップ30を拡径してパイプ5の周囲に巻き付ければ、パイプ5が貫通孔16に通されている状態でも、開口31にパイプ5を通すことができる。
上記のキャップ30は、融点が150℃以上250℃以下の素材から形成される。上記の融点の範囲(150℃以上250℃以下)は、パイプ5の融点(200℃)の±50℃以内の範囲である。具体的には、キャップ30は、融点が上記範囲内(150℃以上250℃以下)にある、塩化ビニル、ポリウレタン、ポリオレフィン、或いはゴムから形成される。より好ましくは、キャップ30は、発泡剤を含有するポリウレタンやポリオレフィンから形成される。このようにすれば、キャップ30が、火災の熱で熱溶融した際に、多孔質構造となって、吸音機能を有するものとなる。またキャップ30は、スリーブ10と視覚的に区別できるよう、スリーブ10とは異なる着色(例えば赤、黄、橙、青、緑などの色の着色等)が施されたものであってもよい。また、夜間でも視覚的に区別できるようにキャップ30の色が蛍光色とされてもよい。また美観を与えるようにキャップ30にはコーティング等の仕上層がさらに施されてもよい。
図1や図2に示すように、固定部材50は、環状を呈して、その内側に開口51を有する。固定部材50の内径は、パイプ5の外径と同等である。固定部材50は、内側の開口51にパイプ5が挿通されて、且つ、キャップ30における貫通孔16と反対側の表面30a(キャップ本体32の上面)と当接するように、パイプ5に締結される。
具体的には、固定部材50は、環状の金属部品52と、環状の樹脂部品53とが、中心が一致するよう上下に積層されたものである。金属部品52は、ステンレス鋼、鉄、又は亜鉛メッキ鋼など、重量の大きな金属から形成されるものであり、遮音性に優れる。樹脂部品53は、発砲ポリウレタン等から形成されるものであり、パイプ5との摩擦を高めるために設けられる。金属部品52と樹脂部品53とは、螺子・接着材等を用いることや、かしめ等により、一体に接続される。
固定部材50には、切れ目54が形成される。切れ目54は、金属部品52と樹脂部品53とを厚さ方向に貫通して、固定部材50を分断するものである。この切れ目54は、パイプ5が既に貫通孔16に通されている状態でも、開口51にパイプ5を挿通可能とすべく形成される。すなわち、切れ目54を介して相対する固定部材50の一端部及び他端部を把持して、固定部材50を拡径してパイプ5の周囲に巻き付ければ、パイプ5が貫通孔16(スリーブ10の開口19)に通されている状態でも、開口51にパイプ5を通すことができる。
金属部品52の一端部及び他端部にはフランジ55,56が形成される。これらフランジ55,56は、パイプ5が開口51に挿通された状態で付き合わされるものであり、当該付き合わせたフランジ55,56を螺子止めすることで、固定部材50がパイプ5に締結される。
次に、図4(a)〜図4(e)を参照しながら、本実施形態の区画貫通構造100の施工方法について説明する。
まず図4(a)に示すように、スリーブ10を床下地1に固定する。スリーブ10の床下地1への固定は、例えばボルト28をスリーブ10の下端13bの取付部24の孔26を通って床下地1の中までねじ込むことによりなされる。型枠2の底部のスリーブ10に対応する位置には、パイプ5(図4(c))を挿通するための穴を空けておく。
次に図4(b)に示すように、コンクリート3を床下地1へ流し込む。この図4(b)では、コンクリート3の厚みすなわち高さHは、スリーブ本体12の下端13bからスリーブ本体の上端13aまでの距離に等しい。このようにして、スリーブ10の内側の開口19を残し、スリーブ10の外側周囲にコンクリート3が打設される。スリーブ10の内側の開口19は、上層階と下層階とを連通する貫通孔16として機能する。ここで、スリーブ本体12に設けられた最下部のリブ12bは、スリーブ本体12の下端13bよりもわずかに高い位置に設けられているため、スリーブ10の周囲にコンクリート3を打設した時、最下部のリブ12bの下面よりも下方のスリーブ本体12の部分と、最下部のリブ12bと、(さらにはスリーブ本体12の下端13bから突出する取付部24と)により形成された空間12c(図3参照)にコンクリート3が進入し、スリーブ10は、コンクリート3中により堅固に固定される。
次に図4(c)に示すように、コンクリート3を貫通するように、貫通孔16にパイプ5を挿通する。
次に図4(d)に示すように、キャップ30の内側の開口31にパイプ5が通されるように、キャップ30を貫通孔16の上端(スリーブ10の上端)に設置する。これにより、貫通孔16の内面(スリーブ10の内面)とパイプ5の外面との間がキャップ30で被覆される。
次に図4(e)に示すように、固定部材50の内側の開口51にパイプ5が通され、且つ、固定部材50がキャップ30における貫通孔16と反対側の表面30aと当接するように、固定部材50がパイプ5に締結される。以上で、区画貫通構造100が完成する。
本実施形態によれば、キャップ30の内側の開口にパイプ5が通されることで、火災の発生時には、パイプ5の表面の熱がキャップ30に伝わる。そしてパイプ5の内面が融け始めた時、すなわち、パイプ5の内面温度が融点以上に到達した時には、パイプ5の表面温度は、「パイプ5の融点−50℃」の値以上になる。そしてこの時には、キャップ30の融点がパイプ5の融点±50℃以内の範囲であるため、図5や図6に示すように、パイプ5の表面の熱によって、キャップ30の一部が融け始めて、キャップ30がパイプ5と密着もしくは一体化する(図5や図6(a)は、キャップ30が熱溶融して、パイプ5の側面と一体化した状態を示す。図6(b)は、熱溶融したキャップ30を、スリーブ10から取り外した状態を示す)。これにより、火災の発生時では、キャップ30とパイプ5との間の隙間S(図1)が完全に埋まるため、煙が貫通孔16(スリーブ10の開口)を通過することが防止される。より具体的に説明すべく、パイプ5の融点が200℃とされ、キャップ30の融点が150℃以上250℃以下とされる場合を例にあげると、パイプ5の内面温度が200℃以上に到達して、パイプ5の内面が融け始めた時には、パイプ5の表面温度は、150℃以上になる。そしてこの時には、キャップ30の融点がパイプ5の表面温度と同等の150℃以上250℃以下であるため、パイプ5の表面の熱によってキャップ30の一部が融け始めて、キャップ30がパイプ5と密着もしくは一体化する。これにより、キャップ30とパイプ5との間の隙間Sが埋まるので、煙が貫通孔16(スリーブ10の開口)を通過することが防止される。なお本実施形態と異なり、キャップ30の融点がパイプ5の融点(200℃)よりも50℃以上高くされる場合には、火災の際に、パイプ5の表面の熱でキャップ30が融けないので、隙間Sが埋まらず、煙が貫通孔16を通過してしまう。またさらに本実施形態によれば貫通孔16を構成するスリーブ10が火災の熱で膨張することで、スリーブ10とパイプ5との間の隙間X(図1)も埋まる。このことによっても、煙が貫通孔16(スリーブ10の開口)を通過することが防止される。さらにキャップ30が発泡剤を含有するポリウレタンやポリオレフィンから形成される場合には、熱溶融したキャップ30が、多孔質構造となって、空気層がキャップ30に存在するようになるため、貫通孔16を介して熱が伝わりにくくなる。また多孔質構造の吸音効果によって、火災に伴う爆発等の衝撃音による建造物の崩壊を防ぐことが可能となる。
またキャップ30が、貫通孔16とパイプ5との間を被覆しているため目隠しの役割を果たし、貫通孔16の中が見えず、視覚的にも美観が保たれる。またキャップ30を塩化ビニル、ポリウレタン、ポリオレフィン、或いはゴムから形成する場合には、これらの材料の制震性が高いので、流体がパイプ5内を通過する際に生じるパイプ5の振動がキャップ30に吸収される。このため、パイプ5の振動でキャップ30の位置がずれることが小さく抑えられる。またキャップ30が非金属であることで、キャップ30との接触でパイプ5に損傷が生じることを防止できる。
さらにパイプ5に締結される固定部材50がキャップ30を押さえ付けることで、パイプ5の振動で、キャップ30が擦り上がることを防止できる。このため、貫通孔16とパイプ5との間をキャップ30で被覆した状態を維持できる。また固定部材50が重量の重い金属部品52を備えることで、キャップ30が擦れ上がることを確実に防止できる。さらに固定部材50が樹脂部品53を備えることで、固定部材50とパイプ5との間の摩擦を高めることができる。このため固定部材50が擦り上がることが防止されるので、固定部材50でキャップ30を押さえ付けた状態が維持される。
本発明は、上記の実施形態に限定されず、種々変形することが可能である。
例えば図2に示す切れ目33はキャップ30に形成されなくてもよい。切れ目33を形成せずとも、パイプ5を貫通孔16に通す前にキャップ30をスリーブ10の一端部に取り付けることはでき、また、パイプ5を貫通孔16に通した後でも、パイプ5の端部をキャップ30の開口31に通し、パイプ5に沿ってキャップ30をスリーブ10の位置まで移動させても取り付けることができる。
また図2に示すキャップ30の代わりに、図7(a)や図7(b)に示すキャップ35,40が使用されてもよい。キャップ35,40も、図2に示すキャップ30と同様、塩化ビニル、ポリウレタン、ポリオレフィン、或いはゴムから形成されて、融点が、パイプ5の融点の±50℃以内の範囲にあるものである(パイプ5の融点が200℃である場合には、キャップ35,40の融点は、150℃以上250℃以下とされる)。キャップ35,40は、一対の半割体を組み合わせたものであり、各半割体に形成される凹部によって、パイプ5に対応する開口が構成される。
具体的には、図7(a)に示すキャップ35は、一対の半割体36,36と、一対の半割体36,36を第一端部で接続する軸部材37とを有しており、半割体36,36には、それぞれ半円状の凹部39a,39aが形成されている。このキャップ35は、軸部材37を中心に一対の半割体36,36が開閉し、一対の半割体36,36が支持部材37とは反対側の第二端部で一対の嵌合部38を介して接続して閉じたときに、凹部39a,39aによって上記の開口が内側に構成されて、この開口にパイプ5を通すことができる。
図7(b)に示すキャップ40は、一対の半割体41および42を有しており、半割体41,42には、それぞれ半円状の凹部45a,45aが形成されている。半割体41および42の各々の両端部には互いに嵌合するための嵌合部43および44が設けられており、嵌合部43および44を介して半割体41および42が接続して閉じたときに、凹部45a,45aによって上記の開口が内側に構成されて、この開口にパイプ5を通すことができる。
また図2や図7に示すキャップ30,35,40を使用する場合には、キャップ30,35,40の内面とパイプ5の外面との間を、非耐火性または耐火性のパテや、綿等で充填することで、キャップ30,35,40を固定してもよい。このようにすることで、キャップ30,35,40によって、スリーブ10とパイプ5との間をより隙間なく被覆できるので、貫通孔16を通じた音漏れや臭気漏れも低減できる。
また非耐火性のパテや綿等を充填材に用いる場合には、火災の発生時に煙が貫通孔16を通過することをより確実に防止できる。
またキャップ30,35,40を破損から保護すること等のために、オレフィン樹脂または塩ビ樹脂等の樹脂、もしくは塗料等のコーティング材で、キャップ30,35,40がコーティングされてもよい。また、キャップ30,35,40とパイプ5の接触による摩擦を低減させるためにキャップ30,35,40の内面に丸みを持たせるか、潤滑性コーティングを施した滑り面としてもよい。
また図2に示す固定部材50の代わりに、図8や図9に示す固定部材120,130が使用されてもよい。これら固定部材120,130は、一対の半割体を組み合わせたものであり、各半割体に形成される凹部によって、パイプ5を通すための開口が構成される。
具体的には、図8に示す固定部材120は、一対の半割体121,121と、一対の半割体121,121を第一端部で接続する軸部材122とを有する。半割体121,121は、それぞれ半円弧状の金属部品
123と樹脂部品124とが上下に積層されたものであり、半割体121,121には、それぞれ半円状の凹部121a,121aが形成されている。この固定部材120は、軸部材122を中心に半割体121,121が開閉するものであり、軸部材122とは反対側の第二端部には、フランジ125,126が設けられている(フランジ125,126は、金属部品123の一部である)。固定部材120は、フランジ125,126が付き合うように閉じたときに、凹部121a,121aによって上記の開口が内側に構成され、この開口にパイプ5が通される。そして付きあわせたフランジ125,126を螺子止めすることで、固定部材120はパイプ5に締結される。
図9に示す固定部材130は、一対の半割体131,131を有する。半割体131,131は、それぞれ半円弧状の金属部品132と樹脂部品133が上下に積層されたものであり、半割体131,131には、それぞれ半円状の凹部131a,131aが形成されている。そして半割体131,131の一端部にはフランジ134,134が設けられ、半割体131,131の他端部にはフランジ135,135が設けられており、フランジ134,134同士を付き合わせ、フランジ135,135同士を付き合わせるように、半割体131,131を接続して閉じたときに、凹部131a,131aによって開口が内側に構成されて、この開口にパイプ5が挿通される。そして付き合わせたフランジ134,134やフランジ135,135を螺子止めすることで、固定部材130がパイプ5に締結される。
なお上述した金属部品123,132(図8,図9)は、ステンレス鋼、鉄、又は亜鉛メッキ鋼など、重量の大きな金属から形成されるものであり、遮音性に優れる。また樹脂部品124,133は、発砲ポリウレタン等から形成される。金属部品123と樹脂部品124、また金属部品132と樹脂部品133とは、螺子・接着材等を用いることや、かしめ等により、一体に接続される。
また図2、図8、図9に示す固定部材50,120,130が使用される場合には、固定部材50,120,130の内面とパイプ5の外面との間を、非耐火性または耐火性のパテや、綿等で充填してもよい。このようにすることで、貫通孔16を通じた音漏れや臭気漏れを低減できる。また非耐火性のパテや綿等を充填材に用いる場合には、火災の発生時に煙が貫通孔16を通過することをより確実に防止できる。
また固定部材50,120,130を破損から保護すること等のために、オレフィン樹脂または塩ビ樹脂等の樹脂、もしくは塗料等のコーティング材で、固定部材50,120,130がコーティングされてもよい。また、固定部材50,120,130とパイプ5の接触による摩擦を低減させるために固定部材50,120,130の内面に丸みを持たせるか、潤滑性コーティングを施した滑り面としてもよい。
また図2、図8、図9に示す固定部材50,120,130では、樹脂部品53,124,133を省略してもよい。
また図2に示すフランジ55,56や、図8に示すフランジ125,126や、図9に示すフランジ134,134,135,135も省略されてもよい。この場合、例えば、固定部材50,120,130を径方向に貫通する螺子を設けて、この螺子の先端をパイプ5にねじ込むことで、固定部材50,120,130をパイプ5に締結できる。
またスリーブ10は、図10に示すように変形できる。図10に示すスリーブ10は、中空略円筒状のスリーブ本体12と、スリーブ本体12の上端に設けられた環状のフランジ14とを備えている。スリーブ本体12は一枚の矩形のシート状部材から形成され、フランジ14も一枚の環状のシート状部材から形成されている。フランジ14は、スリーブ本体12からスリーブ10の軸方向Aの外方へ延びている。後述の図11(a)に示すように、フランジ14の幅Wはスリーブ本体12の厚みTよりも大きい。
図10(a)に戻り、スリーブ本体12の下端には、スリーブ本体12を床下地1(図2参照)に固定するためのスリーブ固定部材としての環状の固定具20が装着される。固定具20は、スリーブ本体12の外径に適合した内径を有する金属製のリング22と、リング22上に離間配置された複数の取付部24(図10(a)では4つ)を有する。各取付部24はボルト28(図11(a))を通すための孔26を有する。
スリーブ本体12およびフランジ14は同じ熱膨張性の耐火樹脂材料から一体成形されている。耐火樹脂材料は、樹脂成分に熱膨張性層状無機物と無機充填材とを含む樹脂組成物である。この樹脂組成物の組成については上記の実施形態で説明した通りである。
次に、図11(a)〜図11(e)を参照しながら、図10に示すスリーブ10を用いて区画貫通構造100を施工する方法について説明する。
まず図11(a)に示すように、スリーブ10の下端部に固定具20を装着し、スリーブ10を床下地1に固定する。スリーブ10の床下地1への固定は、例えばボルト28を取付部24の孔26を通って床下地1の中までねじ込むことによりなされる。
次に図11(b)に示すように、コンクリート3を床下地1へ流し込む。この際には、コンクリート3の厚みすなわち高さHは、スリーブ本体12の下端13bからフランジ14の下面15までの距離に等しくされる。このようにして、スリーブ10の内側の開口19を残し、スリーブ10の外側周囲にコンクリート3が打設される。スリーブ10の内側の開口19は、上層階と下層階とを連通する貫通孔16として機能する。
次に図11(c)に示すように、コンクリート3を貫通するように、貫通孔16にパイプ5を挿通する。
次に図11(d)に示すように、キャップ30の内側の開口31にパイプ5が通されるように、キャップ30を貫通孔16の上端(スリーブ10の上端)に設置する。これにより、貫通孔16の内面(スリーブ10の内面)とパイプ5の外面との間がキャップ30で被覆される。なお図11(d)では、図2に示すキャップ30を貫通孔16の上端(スリーブ10の上端)に設置する例を示したが、図7に示すキャップ35,40がスリーブ10の上端に設置されてもよい。
次に図11(e)に示すように、固定部材50の内側の開口51にパイプ5が通され、且つ、固定部材50がキャップ30における貫通孔16と反対側の表面30aと当接するように、固定部材50がパイプ5に締結される。以上で、区画貫通構造100が完成する。なお図11(e)では、図2に示す固定部材50をパイプ5に締結する例を示したが、図8や図9に示す固定部材120,130がパイプ5に締結されてもよい。
火災が発生した場合には、図12に示すように、火災の熱で、キャップ30が熱溶融して、パイプ5の側面と一体化することで、キャップ30とパイプ5との間の隙間が埋まり、また、スリーブ10のスリーブ本体12およびフランジ14が火災の熱で膨張することで、スリーブ10とパイプ5との間の隙間が埋まる。これにより、煙が貫通孔16を通過することが防止される。
なお図10に示すように、スリーブ本体12とフランジ14には、スリーブ10の長手方向に沿ってスリーブ10の上端から下端までを通る連続する切れ目17が設けられていてもよい。スリーブ10をブチルゴム等の弾性を有する樹脂成分を含む耐火性樹脂組成物から形成し、スリーブ10の長手方向に沿ってスリーブ10の端から端まで延びる切れ目17を設ければ、スリーブ10のコンクリート3からの着脱や、スリーブ10のパイプ5からの着脱が容易となる。例えば 、パイプ5を先に施工し、その後でスリーブ10をパイプ5の周囲に施すことが可能となる。また、図10(a)の切れ目17はスリーブ12の軸方向に沿った直線状態の切れ目が示されているが、図10(b)に示すようにスリーブ12を斜めに走る切れ目(例えばスパイラル状)であってもよい。
またスリーブ本体12とフランジ14は、異なる熱膨張性の耐火樹脂材料から形成されてもよいし、またはスリーブ本体12が熱膨張性の耐火樹脂材料から形成され、フランジ部は金属から形成されてもよい。このような場合でも、火災時には少なくともスリーブ本体12が膨張し、スリーブ10を通じた火の延焼は防止される。
またフランジ14を省略してもよく、この場合に、図2や図7に示すキャップ30,35,40をスリーブ本体12の上に取り付けてもよい。
また固定具20の取付部24の数は4つに限定されず、スリーブ10を床下地1へ固定させるのに十分な任意の数であってもよい。
また固定具20は、金属以外の材料から構成されてもよい。例えば、固定部20は可燃性の樹脂材料から形成されてもよい。別の好ましい実施形態では、固定具20は硬質塩化ビニルを初めとする硬質樹脂から形成される。固定部20を硬質樹脂から構成すると、スリーブ10固定部20が装着されたスリーブ10の下端部には強度が付与され、コンクリート3の打設時の流し込まれたコンクリート3の圧力によるスリーブ10の変形を防止または抑制することができる。
また固定具20を省略してもよい。
また図10に示すスリーブ10にも、図2に示すリブ12aおよび/または12b等のスリーブ10の強度を補強するリブを設けてもよい。
またスリーブ10は、図13(a)及び図13(b)に示すようにも変形できる(図13では、キャップや固定部材や多孔質片の図示を省略している)。
図13(a)及び図13(b)に示すスリーブ10では、スリーブ本体12の内周面から内方に突出する1つまたは複数の位置決め部10aが設けられている。図13(a)に示すように、位置決め部10aはスリーブ10の長手方向に沿って、スリーブ10の長手方向中心の上下の2か所、具体的にはスリーブ10の上端と下端付近の2か所に設けられている。そして図13(b)に示すように端面図で見た場合、位置決め部10a(図では4つ)は、等間隔に離間した状態で配置されている。位置決め部10aとパイプ5との間には隙間が存在する。このような構成とすることで、図11(c)に対応する作業で、パイプ5をスリーブ10内に配置する場合に、位置決め部10aがスリーブ10内における少ないズレでのパイプ5の位置決めを支援する。位置決め部10aの内方への突出が長いと、パイプ5はほぼズレたり傾いたりすることなくスリーブ10内の軸中心位置に配置(センタリング)される。
なお位置決め部10aは、図13(c)に示すようにさらに変更してもよい。具体的には、スリーブ10(スリーブ本体12)の長手方向に沿って、位置決め部10aよりも中心側に位置決め部10bを設け、位置決め部10bよりも中心側に位置決め部10cを設け、位置決め部10bの突出する長さは位置決め部10aよりも大きく、位置決め部10cの突出する長さは位置決め部10bよりも大きくする。ただし、パイプ5が位置決め部10cと接触して損傷しないよう、パイプ5をスリーブ10内に配置したときに、位置決め部10cとパイプ5の間には隙間が存在することが好ましい。このような構成とすることで、スリーブ10内にパイプ5を配置する場合に、上から配置した場合でも下から配置した場合でも、パイプ5はスリーブ10内の軸中心位置に配置されるよう誘導される。位置決め部10a,10bおよび10cのスリーブ10の径方向における位置は整列させることが好ましいが、位置決め部10a,10bおよび10cのスリーブ10の長手方向および径方向における数は限定されない。さらには、位置決め部10a,10bおよび10cのいずれか一つが省略されてもよい。
なお図13では図示を省略したが、図13に示すスリーブ10が使用される場合でも、上述したキャップ(キャップ30,35,40)の開口にパイプ5が通されるように、キャップが貫通孔16の上端(スリーブ10の上端)に設置されて、貫通孔16の内面(スリーブ10の内面)とパイプ5の外面との間がキャップで被覆される。また上述した固定部材(固定部材50,120,130)の開口にパイプ5が通され、且つ、固定部材がキャップにおける貫通孔16と反対側の表面と当接するように、固定部材がパイプ5に締結される。
また図14(a)および図14(b)に示すように、スリーブ10は、コンクリート打設時に床下地(鉄筋コンクリートからなる建物の梁または壁)にスリーブ10を固定するための、スリーブ本体12に一体形成されたスリーブ固定部60をさらに備えていてもよい。スリーブ固定部材としてのスリーブ固定部60はスリーブホルダとも称される。
スリーブ固定部60は合成樹脂からなり、射出成形によってスリーブ本体12と一体に形成されている。好ましい一つの実施形態では、スリーブ固定部60は例えばポリプロピレンをはじめとする熱可塑性樹脂からなり、適度な柔軟性を有する。別の好ましい実施形態では、スリーブ固定部60はスリーブ本体12と同じ熱膨張性の耐火樹脂材料から形成される。この態様によると製造コストを抑制できる。別の好ましい実施形態では、スリーブ固定部60はスリーブ本体12から熱膨張性黒鉛を除いた同じ耐火樹脂材料から形成され、2色形成によりスリーブ本体12と一体的に形成される。この態様によるとスリーブ固定部60の部分の外観が良くなり、強度も向上する。
別の好ましい実施形態では、図15に示すように、スリーブ固定部60はスリーブ本体12とは別体で形成される。スリーブ固定部60は、スリーブ10の外側に装着される寸法の環状(図15では円環状)の部材64を備えている。この態様によるとスリーブ本体12が筒状でよいため、スリーブ本体12を押出成形により製造することができ製造が容易となる。好ましい一つの実施形態では、スリーブ固定部60は可燃性の樹脂材料からなり、火災等の熱により燃焼する。このため、スリーブ固定部60はコンクリートの敷設後もスリーブ10に装着したままでよい。別の好ましい実施形態では、スリーブ固定部60は硬質塩化ビニルを初めとする硬質樹脂から形成される。スリーブ固定部60を硬質樹脂から構成すると、スリーブ固定部60が装着されたスリーブ10の下端部には強度が付与され、コンクリート3の打設時の流し込まれたコンクリート3の圧力によるスリーブ10の変形を防止または抑制することができる。
図14ならびに図15に示した例において、このスリーブ固定部60の一端には、鉄筋Rが嵌め込まれるように形成されたクリップ部61が設けられている。クリップ部61は、略円筒の周面の一部を開口した略C字状の断面を有し、その内径が、嵌め込まれる鉄筋Rの外径よりもやや小さくなるように形成されている。なお、この実施形態ではクリップ部61の軸線C1はスリーブ10(スリーブ本体12)の軸線C2に対して垂直であるが、クリップ部61の軸線C1はスリーブ10(スリーブ本体12)の軸線C2に対して鋭角(例えば45°)をなしてもよい。クリップ部61の相対する開口端縁部には、鉄筋Rの嵌め込みを容易にするため、互いに拡幅方向に折り返された一対のガイドリップ部62が形成されている。クリップ部61にはアーム部63が連続して形成され、クリップ部61の側方に張り出している。アーム部63の断面は略十字状に形成されて、クリップ部61の剛性を強化する。アーム部63の先端は、スリーブ本体12と接続している。
スリーブ固定部60のスリーブ10の長手方向に沿った位置は特に限定されないが、スリーブ固定部60をクリップ部61を介して鉄筋Rの任意の位置に装着することができる位置とする。スリーブ10の管長が長くなる場合には、スリーブ10の管長方向に離間して取り付けた2個以上のスリーブ固定部60によってスリーブ10を保持することも可能である。追加的にまたは代わりに、スリーブ10の周方向に2個以上のスリーブ固定部60が配置されていてもよい。本発明のスリーブ固定部60は、水平に配筋される鉄筋Rにも、垂直に配筋される鉄筋R(例えば梁のスターラップ)にも装着することができ、また不要な場合にはスリーブ固定部60をスリーブ本体12から切断することもできる。
スリーブ固定部60を使用した貫通孔16の施工方法は、以下の通りである。まず、梁または壁の型枠内に鉄筋を組み上げ、少なくとも一つの鉄筋Rにこのスリーブ10固定具60のクリップ部61を装着し、スリーブ10の位置決めを行う。次いで、この型枠内にコンクリートを打設して、スリーブ固定部60を備えたままスリーブ10をコンクリート内に埋設固定する。コンクリートの硬化を待って脱型すれば、スリーブ10内に貫通孔16が形成される。このようにスリーブ固定部60を利用することにより、特に工具を使用する必要もなく、簡単かつ精度良くスリーブ10を位置決めすることができる。
また図16(a)〜図16(d)に示すように、熱膨張性の耐火樹脂材料を含有するスリーブ本体12を備えたスリーブ10に対し、スリーブ10の軸方向に沿って、非熱膨張性材料を含有するスリーブ70がさらに積み重ねられていてもよい。スリーブ70はスリーブ10の上、下、または上下両方のいずれに配置されてもよい。スリーブ70はスリーブ10と同様の構成をとり得るが、スリーブ10のスリーブ本体12が熱膨張性の耐火樹脂材料から形成されているのに対し、スリーブ70の中空のスリーブ本体72はスリーブ本体12とは異種材料の硬質塩化ビニル、金属を初めとする非熱膨張性材料から形成されている。好ましくは、スリーブ70は硬質塩化ビニル等の非熱膨張性の耐火樹脂材料から形成される。
このタワー型の構成によれば、コンクリートの床の厚みが大きくなった場合でも、スリーブ10で足りない厚みの分をスリーブ70の積み重ねで調節することができる。硬質塩化ビニルから形成されたスリーブ70は熱膨張性材料から形成されたスリーブ10よりも安価であるため、一種類のスリーブ10を用いてスリーブ70で厚みを調節することによりスリーブ構造全体の厚みを調節し、コストを抑制しつつ、150mm,180mm, 210mmのように異なる厚みのコンクリートの打設にスリーブ10を適用することができる。
図16(a)はスリーブ10の下にスリーブ70を積み重ねたスリーブ構造の実施形態である。下半分が非熱膨張性の耐火樹脂材料を含有するスリーブ70であることにより、スリーブ本体12の下側の開口部の強度を高めることができる。スリーブ70は環状の固定具20を備えていてもよい。
図16(b)はスリーブ10の上にスリーブ70を積み重ねたスリーブ構造の実施形態である。上半分が非熱膨張性の耐火樹脂材料を含有するスリーブ70であることにより、スリーブ本体12の上側の開口部の強度を高めることができる。任意選択で、スリーブ10とスリーブ70との間にはスリーブ10およびスリーブ70を固定するための金属などから形成された1または複数の接続具73が架設されていてもよい。非熱膨張性の耐火樹脂材料を含有するスリーブ70の開口部には、開口部の形状を円形に保つ環状補強具79が装着されていてもよい。この実施形態では、環状補強具79はスリーブ10の内周面に嵌合する寸法を有する環状本体79aと、環状本体79aの内部に、環状本体79aの中心を通って径方向外側に延びる4つの部分からなる補強部材79bとを備えている。
なお、環状補強具79は図16(a)のように下半分にあるスリーブ70の開口部に設けられてもよく、この場合は、環状補強具79に取付部24が設けられていてもよい。環状補強具79はスリーブ10に設けてもよい。スリーブ10および/またはスリーブ70の上側の開口部または下側の開口部に環状補強具79を形成することで、開口部の強度を高め、搬送時や施工時の損傷または変形を防ぐことができる。開口部が円形の場合、環状補強具によって開口部が楕円形に変形することを防止できる。さらに、図16(b)に示すように、スリーブ10の下端部には熱膨張性または非熱膨張性の耐火樹脂材料から形成された固定具20が外挿、装着される。固定具20は図2で説明したのと同様の1または複数(図では4つ)の取付部24を有し、各取付部24にはスリーブ10を型枠2、鉄筋R、またはコンクリート3等に固定するために針金等の金属線、ボルト、ビス、釘等の固定用部材を通すための孔26が設けられている。好ましくは、固定具20全体を硬質塩化ビニル等の硬質樹脂から形成すると、搬送時やコンクリート打設時のスリーブ10の損傷または変形を防ぐことができる。さらには、固定具20を火災による熱により燃焼させることもできる。
接続具73の代わりに、図16(c)に示すように、上側のスリーブ10は、下側のスリーブ70に嵌合するための縮径された嵌挿部74を備えていてもよい。スリーブ10の嵌挿部74の外径は、スリーブ70の本体の内径よりも小さいかまたはほぼ同一である。図16(c)において、スリーブ10とスリーブ70は上下が逆の配置でもよい。代わりに、図16(d)に示すように、下側のスリーブ70は、上側のスリーブ10に嵌合するための縮径された嵌挿部75を備えていてもよい。スリーブ70の嵌挿部75の外径は、スリーブ10の本体の内径よりも小さいかまたはほぼ同一である。図16(d)において、スリーブ10とスリーブ70は上下が逆の配置でもよい。
図17に示すように、スリーブ10は軸方向において上下対称であってもよい。つまり、スリーブ10は上端と下端の同じ位置に同じ数の取付部24を備えている。このような構成にすれば、作業者がスリーブ10の上下を誤って使用することが防止でき、スリーブ10を効率良く施工できる。
図18に示すように、スリーブ10の本体12には目盛り76が設けられていてもよい。目盛は1mm間隔、1cm間隔等、任意の間隔で付けられていてもよい。目盛り76は本体12に設けられた刻み目、凹み、凸部、マーカー、シール等の任意の表示であってよい。目盛り76の横にはさらに数値が付されていてもよい。また、本体12の代わりに、スリーブ10の縦方向に延びるリブ12aに目盛り76が設けられていてもよい。目盛り76を設けることで、コンクリート3を流し込む高さを確認、調整することができる。
また図18に示すように、コンクリート3の打設作業前、最中、または後に、スリーブ10の開口19にゴミ等が入るのを防ぐために、開口19を覆う紙製等のカバー材77を被せてもよい。カバー材77を紙で製造すれば、燃やして破棄することができる。カバー材77は、本実施形態では、スリーブ10の開口部に適合する略円形の形をしているが、矩形、不定形等の任意の形状であってもよい。
スリーブ10の複数の取付部24の代わりに、図19に示すように、固定具として、スリーブ10の一端に設けられた矩形の取付部24としてもよい。このような構成とすることで、作業者には視覚的に取付部24および孔26の確認が容易となり、固定箇所の位置合わせが容易となる。
図20に示すように、スリーブ10の開口19に、スリーブ本体12の内周面に沿って紙製の芯78をさらに設けてもよい。このように環状、具体的には実施形態では中空円筒形の紙製の芯78を設けることで、コンクリート3の打設時のスリーブ10(特にはスリーブ本体12)の変形を防止することができる。芯78はコンクリート3の打設後に回収してもよいし、そのまま設置しておいて燃焼時に燃やして処分してもよい。また、芯78の高さをスリーブ10の高さよりも大きくすれば、芯78が設置されているかどうかを作業者が確認することができる。
図21に示すように、スリーブ10(スリーブ本体12)は、分解可能な複数の部品110a〜110dから構成されていてもよい。図21に示された実施形態では部品110a〜110dは同じ形状の4つの部品であり、各部材には接続部材のうちの突出部110eとスロット110fとが設けられ、使用時には、隣り合う部品110a〜dの突出部110eとスロット110fとが嵌合することにより組み立てられる。このような構成とすることで、スリーブ10の運搬または保管中には、スリーブ10は分解した状態で複数の部品10a〜10dにコンパクトに収納できるので場所をとらず、運搬や保管の効率が増大する。
また図22(a),図22(b)に示すように、スリーブ10は、その軸方向に沿って伸縮可能な蛇腹部分82を備えた構成としてもよい。この例では、スリーブ10のスリーブ本体12が非伸縮性の端部80と、それに隣接する蛇腹部分82とを備え、図22(a)の状態からスリーブ10の端部80に図面左方向に力を加えることで、蛇腹部分82が拡張し、図22(b)の状態へスリーブ10を伸長させることができる。端部80を図面右方向に押し戻せばスリーブ10を収縮することができ、スリーブ10の全長を所望の床の厚みに応じて変更することができる。さらには、図22(c)に示すように蛇腹部分82の一部または全部の周囲に、蛇腹部分82の外形に適合するねじ部83を備えた、樹脂等から形成された成形体84を設ければ、成形体84の周囲にコンクリート3が打設された後でも、成形体84に周囲を覆われた蛇腹部分4は図22(d)に示される状態へとなお伸長可能であり、コンクリート3の打設後でもスリーブ10を伸縮させて、スリーブ10の全長を所望の床の厚みに応じて変更することができる。
スリーブ10の少なくともスリーブ本体12の外周に、補強用の金属板等をさらに施してもよい。このようにすることで、コンクリート3の打設時のスリーブ10(特にはスリーブ本体12)の変形を防いだり、火災時にスリーブ10が熱膨張してもスリーブ10の強度を補強することができる。
スリーブ10と梁または壁の型枠との密着性を高めるために、スリーブ10の下端部を柔軟性のある材料より構成してもよい。または、スリーブ10と梁または壁の型枠との間に接着剤を用いてもよい。また、同様の理由からスリーブ10の上端部を柔軟性のある材料より構成してもよい。
スリーブ10の外面を摩耗またはアルカリ溶液等の薬剤から保護するために、オレフィン樹脂または塩ビ樹脂等の樹脂、もしくは塗料等のコーティング材でコーティングしてもよい。また、スリーブ10の内面をパイプ5との接触による破損から保護するために、オレフィン樹脂または塩ビ樹脂等の樹脂、もしくは塗料等のコーティング材でコーティングしてもよい。
図23に示すように、スリーブ10を補強するためにスリーブ10の外側に、オレフィン樹脂または塩ビ樹脂等の可燃性の樹脂からなる外筒85を設けてもよい。また、スリーブ10を補強するためにスリーブ10の内側に、オレフィン樹脂または塩ビ樹脂等の樹脂からなる内筒86を設けてもよい。外筒85および内筒86は一体成型によりスリーブ10に設けてもよいし、別途作成した後、スリーブ10に差し込んでもよい。なお、外筒85および内筒86の両方が設けられていてもよいし、いずれか一方のみ設けられていてもよい。外筒85および内筒86の長さ(高さ)は特に限定されず、スリーブ10の長さの一部であってもよいし、スリーブ10と同じ長さであってもよい。なお、外筒85および内筒86を構成する素材は非膨張性かつ可燃性の樹脂であることが好ましい。より好ましくは、外筒85および内筒86を構成する素材は硬質塩化ビニルなどの硬質樹脂である。外筒85および内筒86の少なくとも一方を設けることで、スリーブ10の強度が増大し、スリーブ10の搬送時またはコンクリート3の打設時のスリーブ10の変形を防止または抑制することができる。また、外筒85および内筒86を火災等の熱により燃焼する樹脂で構成することにより、火災等の熱により外筒85および/または内筒86は燃焼するためスリーブ10の膨張を妨げない点でも有利である。
図24(a),図24(b)に示すように、熱膨張性の耐火樹脂材料から形成されたスリーブ10の上下に、オレフィン樹脂または塩ビ樹脂等の樹脂からなるスリーブ87およびスリーブ88を取り付けてもよい。スリーブ87および88を構成する素材は硬質塩化ビニルなどの硬質樹脂が好ましい。スリーブ88の長さは床の厚さに応じて調節できる。スリーブ87および88の形状および寸法は同一であっても異なっていてもよいが、同一とするとスリーブ87および88の製造コストが低減されると共に、スリーブ10ならびにスリーブ87およびスリーブ88からなるスタック構造の製造が容易である。
図24(b)に示すように、スリーブ87の下端部がスリーブ10の上端部に設けられた凹部に嵌合し、スリーブ88の上端部がスリーブ10の下端部に設けられた凹部に嵌合することによりスリーブ87および88がスリーブ10に対して取り付けられているが、代わりに、スリーブ87および88がスリーブ10に対して接着剤などの他の取付手段により取り付けられてもよい。パイプ5をスタック構造に通す前に、スリーブ87の上端にはスリーブ87の上端の開口部を覆うように紙製のカバー材77を被せてもよい。上側のスリーブ87を設けることにより、搬送時や施工時のスリーブ10の変形を防ぐことができる。また、紙製のカバー材77により、スリーブ87内へ埃または塵等の侵入を防ぐと共に、スリーブ87の上端の開口部の変形を防ぐことができる。パイプ5をスタック構造に通すときには紙製のカバー材77を外し、パイプ5のスタック構造への挿通後、キャップ30を上側のスリーブ87の開口部に装着することができる。
また、スリーブ87をスリーブ10とは視覚的に区別できるよう(例えば赤、黄、橙、青、緑などの色または蛍光等により)に構成すれば、防火区画処理を施してあることが確認できる。
また上記の実施形態では、貫通孔16の断面が円形である場合を想定し、スリーブ10、キャップ30,35,40、固定部材50,120,130が、断面円形である環状部材である実施形態を示したが、貫通孔16の形状に適合させればよく、スリーブ10、キャップ30,35,40、固定部材50,120,130は、断面略楕円形の環状又は筒状としてもよいし、断面矩形の環状又は筒状となるよう形成してもよい。
またスリーブ10、キャップ30,35,40、固定部材50,120,130を構成する材料には、防カビ性、防虫性、断熱性、耐湿性等をさらに付与するために、公知の防カビ剤、防虫剤、断熱剤、耐湿剤等を配合してもよい。
また上記実施形態では、区画体6が、水平方向に延びる壁である例を示したが、区画体6は、上下方向に延びる壁であってもよい。この場合、上述したスリーブ10を用いて、水平方向に延びる貫通孔が区画体に形成される。そして、スリーブ10の内部(貫通孔の内部)にパイプ5が通される。そして上述したキャップ(キャップ30,35,40に相当)の開口にパイプ5が通されるように、キャップが貫通孔の一端に設置されることで、スリーブ10の内面とパイプ5の外面との間が被覆される。さらに上述した固定部材(固定部材50,120,130に相当)の開口にパイプ5が通され、且つ、固定部材がキャップにおける貫通孔と反対側の表面と当接するように、固定部材がパイプ5に締結される。これによりキャップが固定部材によって押さえ付けられる。また上記実施形態では、1本のパイプ5を貫通孔16に通す例を示したが、貫通孔16に通されるパイプ5の本数は、複数であってもよい。