JP5138109B1 - オープンエンド精紡機のロータシャフト支持ディスク - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ロータ式オープンエンド精紡機のロータシャフトを支持するディスクであって、その周縁部表面に接着剤を介してゴム部材が接着被覆されており、該ゴム部材が結合アクリロニトリル18〜44重量%の水素化ニトリルゴム(HNBR)及び/又はその変性物を過酸化物加硫したゴム部材から形成されていることを特徴とするロータ式オープンエンド精紡機のロータシャフト支持ディスク。
【選択図】図10
Description
即ち、テンションプリー(21)により適度の張力に張られて高速で移動している駆動用ベルト(20)にロータシャフト(16)を接触させ、毎分10万回以上の超高速で回転させる。そのロータシャフト(16)を一対の表面に硬質ゴムを被覆した標準タイプ組ディスクのいわゆるワーキング組ディスク(13)と回転速度を測定する機能を備えたいわゆるリフレクタータイプ組ディスク(14)の2本で支える構造を持つものである。
実際には図9のように、2組の組ディスク(13)と(14)又は(15)は固定用組ディスクユニット(17)にセットされその上に更にロータシャフト(16)が図10のように組み込まれる。
度とゴム弾性が維持できるので高速振動の減衰特性があることがこの分野では知られていた。
この支持ディスクは毎分10万回以上という超高速回転するロータシャフトを数ヶ月間、連続して支えているため、その環境温度が70℃程度にもなるといわれており、一般のポリウレタンゴムは、高荷重下での使用では、90℃〜130℃で既に塑性流動状態になることも珍しくなく、150℃〜200℃では殆どのものが溶融する(非特許文献1)。
因みに、この特殊耐熱性高硬度ポリウレタンゴム部材を用いたロータ式オープンエンド精紡機の支持ディスクを製造するメーカーでは、自社の製品カタログ上で2年程度の耐久寿命があることを保証している。
このポリウレタンゴムの欠点に起因して、何らかの要因でロータシャフトの振れが発生したり、ロータシャフトと支持ディスクとの間でスリップが発生したりすると、お互いが超高速回転のため、瞬時に膨大な摩擦熱が発生してその界面が極めて高温となり、特殊耐熱性高硬度ポリウレタンゴム部材でさえも、被覆ゴム表面が部分的に溶融し、不良になるという不測の事故が頻繁に発生している。
さらに、このオープンエンド精紡機は、紡績工場で通常のリング精紡機と併用されることも多く、リング精紡の紡出で利用できなかった短繊維をこのオープンエンド精紡機で紡出することもあり、その結果、いわゆるハネジュウやコンタミネーションの多い原綿を使用することになり、言わば不可効力的に、支持ディスク又はロータシャフト表面にそれらが付着して、目標寿命前にポリウレタンゴム表面が破損したり、溶融したりしてしまう短寿命の支持ディスクも多く発生しているのが現状である。
以上述べた問題点以外にも、現在使用されているポリウレタンゴム部材にはその化学構造に起因する大きな問題点を有している。
すなわち、周知の如く、ポリウレタンゴムには、そのポリオール成分で分類するとエステル系ポリウレタンゴムとエーテル系ポリウレタンゴムの2種類があり、エーテル系ポリウレタンゴムは耐油性が悪く、紡出繊維中に含まれる油剤で膨潤して寿命が短くなるので、耐油性を有するエステル系ポリウレタンゴムのみが専ら使用されている。
しかし、そのエステル系ポリウレタンゴムは耐加水分解性に劣り、使用しなくても通常4、5年程度で加水分解を起こし、ゴム状態からチーズ状に変質し使用不可能となる。
したがって、たとえ未使用の支持ディスクであっても長期保管ができないという問題点も有しており、支持ディスクの使用者はこれらの不経済な特性があることも十分に知りながら、あえて使用しているのが現状である。
ルギーを熱に交換しないために、高硬度であると同時に高い弾性を持つゴムを使用してその表面を被覆することが必要になる。
このため、このロータ式オープンエンド精紡機の支持ディスクは開発初期からポリウレタンゴムを使用しており、各メーカーもポリウレタンゴムが耐熱性に問題があることを十分知った上で、試行錯誤の結果、現時点で最も優れた耐熱性ポリウレタンゴムを支持ディスクに採用しているメーカーが多いと言われている。
しかし、この最高性能の耐熱性ポリウレタンゴムを使用したとしても、使用条件が悪い場合にはやはり耐熱性が不十分であり、ゴム表面が熱溶融するトラブルも多発していることも知られている。
この本発明ロータシャフト支持ディスクを採用すれば、支持ディスクの寿命としてはゴム表面の磨耗が一定の許容量に達するまで継続して使用できるので、現在のポリウレタンゴム製支持ディスクに比べ、安心して本来の設計上の寿命まで使用可能な製品を実現することができる。
また、水素添加率が90%以上の水素化ニトリルゴムは、耐熱性と耐老化性に優れ、それ未満の水素添加率の水素化ニトリルゴムは残存する二重結合により耐熱性と耐老化性が急速に低下するので本発明での使用には好ましい材料ではない。
くすることが難しく、10万回以上の高速回転するロータシャフトの振動を抑えきれない場合が発生する。
反対に結合アクリロニトリル量が18重量%未満の場合は、耐油性が低下することから紡出繊維中に含まれている油剤などによりゴムが膨潤する結果、ゴム強度やゴム硬度の低下を招くことがある。
さらに、本発明で使用する水素化ニトリルゴムは、メタクリル酸亜鉛及び/又はアクリル酸亜鉛を水素化ニトリルゴム100部に対し20部ないし120部を配合されてなる過酸化物加硫からなるゴム部材も、耐久性の観点から好ましく用いることができ、上記メタクリル酸亜鉛やアクリル酸亜鉛に代えて、ジメタクリル酸亜鉛やジアクリル酸亜鉛を同様に使用することも、メタクリル酸亜鉛やアクリル酸亜鉛とそれらを併用することもできる。
同様に、ニトリルゴム(以下、NBRと言うこともある。)の第三成分としてアクリル酸又はメタクリル酸を三元共重合し、側鎖又は末端にカルボキシル基を導入したカルボキシルNBR(以下、XNBRと言うこともある。)を水素添加したHXNBRも耐久性と芯金との接着力向上の観点から好ましく用いることができる。
なお、メタクリル酸亜鉛ないしアクリル酸亜鉛を配合した過酸化物加硫の水素化ニトリルゴムや水素添加したHXNBRは、たとえば、旭カーボン製カーボンブラック・シーストS(商品名)や日本シリカのニプシールVN3(商品名)ホワイトカーボンなど他の補強充填剤を配合した過酸化物加硫の水素化ニトリルゴムよりも強靭なだけでなく、ゴム弾性も良好な場合が多く、高速回転するロータシャフトの振動防止性とロータシャフト支持性が良いので長期間安定して使用できる。
タ硬さ(以下、単にタイプAデュロメータ硬さという。)が90度以上であり、タイプDデュロメータ硬さが68度以下である過酸化物加硫したゴム部材が好ましく、さらに、JIS K0064:化学製品の融点及び溶融範囲測定法(米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)の融点測定法)に準拠した融点測定方法で400℃でも溶融せず、且つ、タイプAデュロメータ硬さが90度以上でありタイプDデュロメータ硬さが68度以下であり、さらに、JIS K−7244−5(ISO6721−5)に準拠した曲げ振動試験方式における雰囲気温度80℃、周波数60Hzにて測定した時のtanδが0.15以下であることを特徴とするゴム部材を用いて被覆形成したロータシャフト支持ディスクも好ましく用いることができる。
また、本発明で使用するゴム部材は融点がなく、400℃以上の高温になってもゴム表面が溶融しないので、何らかの理由で摩擦による高熱が発生したとしてもそのまま使用に耐えることができ、ロータシャフトと支持ディスクとの間でのスリップ等のトラブルにも対処する時間的余裕を確保することができる。
本発明では、通常のゴム硬度の測定で行なわれているように、ディスクのゴム硬度をタイプAデュロメータ硬さとタイプDデュロメータ硬さの2種類の測定方法で規定している。
水素化ニトリルゴムの過酸化物加硫物が硫黄加硫物よりも弾性が高いことは従来から知られていたが、特定の水素化ニトリルゴムに着目し、該水素化ニトリルゴムが超高速回転での振動吸収性に特に優れた性能を示すことを見出したのは本発明者が初めてであり、この発見が本発明の端緒となったものである。
これに対し、現在のほとんどのロータ式オープンエンド精紡機で使用されている耐熱性ポリウレタンゴム製支持ディスクでは、ベアリングに嵌入時の不手際による芯振れがあった場合には、発生する摩擦熱によりゴム表面が直ちに溶融してしまい、その支持ディスクは使用不能になり、新しい製品と交換する以外には対応手段がないことからも、本発明の
優れた効果を確認することができる。
これに対し、本発明の支持ディスクは抜群に耐熱性が良くゴム表面が溶融することがないので、ロータシャフト及び支持ディスクをユニットから取り外して綺麗に清掃しさえすれば、再度使用できるので安心して操業することができる。
本発明でいうロータシャフト支持ディスクとは、図8のようにロータ式オープンエンド
精紡機に使用される(13)及び(14)或いは(15)のように使用される2個の単品支持ディスク(10)及び(11)(図7参照)を言い、図1、図2、図3、図4、図5、図6のようにそれぞれの芯金(1)、(5)或いは(7)の周縁部に本発明の請求項1〜5で規定する高硬度ゴム部材(2)を接着剤を介して被覆後、一定寸法に精密加工仕上げした円盤状の単品のディスクを言う。
標準タイプ単品ディスク(10)は図1及び図2のように中央部にベアリング(9)を固定するための穴を持つアルミニュウム製芯金(1)の周縁部に接着剤を介して請求項1〜5で規定する高硬度ゴム部材(2)を接着被覆し、一定寸法に精密加工仕上げたディスク、又はその後にゴム部材表面中央部に幅0.5〜1.0mm、深さ0.5〜1.0mm程度の溝を加工して仕上げる。
本発明のロータシャフト支持ディスクにおいて、被覆する硬質ゴム(2)は、特定の水素化ニトリルゴム成分に高硬度・高弾性配合を付与できるように一定量の配合剤を使用した過酸化物加硫水素化ニトリルゴムを使用する。
また、水素化ニトリルゴム製造メーカー自身が自社の水素化ニトリルゴムにメタクリル酸亜鉛類又はアクリル酸亜鉛類を分散させた市販のいわゆるメタクリル酸/アクリル酸入りHNBR製品も使用でき、その例としてテルバンXQ536(商品名)などを例示できる。
まず、カーボンブラックとしてはあらゆる種類の補強性カーボンブラックが使用でき、即ちカーボンブラックの旧分類でいうSAF,SAF−HS、ISAF,N−339、ISAF−LS、I−ISAF−HS,HAF、HAF−HS、B−351、HAF−LS,MAF,FEF,FEF−HS,SRFなどの全ての各メーカ品が使用できる。
無機補強剤としては、一般的な高活性や中活性の乾式及び湿式のホワイトカーボン類、例えばニプシールVN3、ウルトラジールVN3(日本シリカ製)、ゼオシール500V(多木化学製)、ウルトラジールVN2(デグサ・エボニック製)やアエロジルR972
やアエロジルR974(東新化成株式会社製)などが例示できる。
本発明における過酸化物加硫に使用する有機過酸化物加硫剤としては、日本油脂のパークミルD、D40、パーヘキサ3M、3M−40、パーブチルP、ペロキシモンF40、パーヘキサ25B、パーヘキサ25B−40(商品名)や化薬アクゾのカヤクミルD−40K、トリゴノックス29、トリゴノックス29/40、パーカドックス14、パーカドックス14/40、カヤヘキサAD、カヤヘキサAD/40(商品名)、三建化工のサンペロックDCP、サンペロックスCY−1・1、サンペロックスTY−1・3、サンペロックスAHTO(商品名)、ルドール吉富のルペロック500T、500−40C、ルパゾール231、ルパゾール231−XL、ルペロック802、ルパーコ802XL、ルパゾール101、ルパーコ101−XL(商品名)などが例示できる。
また、本特許で例示した融点測定装置としては日本ビュヒ株式会社製のM−560やM565、ヤマト科学株式会社製MP−21や柴田科学社製のB−540やB−545を例示できる。
本発明のロータシャフト支持ディスクは、例えば、以下のようにして得ることが出来る。
まず、適量の前記水素化ニトリルゴムをゴム練り用ロール等を使用してロールに巻き付け、ついで加硫促進剤、充填剤、ステアリン酸などの加工助剤、及び適量のホワイトカーボン類やメタクリル酸亜鉛又はアクリル酸亜鉛などを練り込む。これらを良く練り込んだ後、練りロールから切り離しダンプアウトする。再び、ダンプアウトした練り生地を最後に適量の過酸化物加硫剤を練り込み生ゴム生地を完成させる。ついで、あらかじめ製造しておいた図1、図2、図3、図4、図5及び図6のアルミニュウム製芯金を溶剤にて脱脂
し、接着剤を塗布した後、接着剤中の溶剤を揮発させ安定化させるため一定時間自然放置しておく。その後、プレス成型機の上下熱板中に、一定温度に加熱保温してあるプレス成型用金型にそれらの芯金を挿入し、次に、これに前記練り生地を流し込み温度、圧力および加硫時間を一定条件で加圧加熱してプレス成型する。その後、この成型物をプレス型から取り出し、表面、特にロータシャフトと接触する表面及び側面を一定寸法に仕上げてから、ゴム部材表面の中央部に幅1mm、深さ1mm程度の溝をバイト等で加工する。
以下に、図面を参照して本発明品の実施の形態を説明する。
[実施例1]
結合アクリル二トリルが36%で水素化率96%の水素化ニトリルゴム1000重量部を8インチゴム練りロールに巻き付けて素練りし、これに亜鉛華を50重量部、ステアリン酸を10重量部、老化防止剤と補強性カーボンブラック及びその他の補強剤を適量重量部とアクターZMA(川口化学工業製メタクリル酸亜鉛)を300重量部を良く練り込み後、ロールから切り離して自然放置する。
続いてこのゴム練り生地を再度、練りロールに巻き付け、パークミルD40(日本油脂株式会社製過酸化物加硫剤)を60重量部練り込み、練り生地・Aを作成した。このゴム生地・Aを8インチゴム練りロールを使用して、厚さ5mm程度の未加硫シートを準備した。
この未加硫ゴムシートを適量、秤量してゴム用60トンプレスの熱板に保温してある平板の型に置き165℃にて25分プレス加硫して2mm厚さのシートを作成した。このシートを室温23度の部屋で6時間以上放置した後にJIS K−6253に準拠した測定方法でのゴム硬度を測定するとタイプAデュロメータ硬さが97度、タイプDデュロメータ硬さは56度であった。
[弾性測定]
次に、このシートをJIS K7244−5に準拠して粘弾性試験機を使用して曲げ振動方式で測定すると、80℃での周波数60Hzでのtanδは0.090であった。
続いて、あらかじめ製作しておいた外径70mm、厚さ10mmでベアリング嵌入用穴10.0mmがある標準タイプ用アルミ製芯金8枚と同一寸法で図3の(5)のようにレーザー測定用の直径8mmの左右対称な2個の貫通穴のある芯金2枚の合計10枚をプレス作業の前日にそれぞれ脱脂肪し、接着剤を塗布し一晩、自然放置しておいた。
次に、これらの芯金を、上下熱板が165℃に制御された60トンゴム用プレス装置にあらかじめ保温された2個取り用プレス成型用金型中に2個づつセットし、これに前記の厚さ5mmに分出しした練り生地Aを適量を流し込み30分間加熱し一定圧力で加圧して10個のプレス成型品を作成した。
次に、このプレス成型済みのゴム生地Aを接着被覆した1個の標準単品ディスクから幅4mm、厚さ1.5mmのゴムリングを切削加工で切り出し、前記と同様な方法で80℃、60Hzのtanδを測定すると0.085だった。
次に、これらのプレス成型ディスクを専用冶具と検査装置を使用して6個の標準ディスクと2個のレーザータイプディスクを外径78mm、幅10mmの寸法で表面及び側面の振れ精度5/1000以下に仕上げた。
これらのディスクを嵌入専用冶具を使用して、以下のように4本の専用ベアリングに嵌
入しNo.1〜No.4の4本の組ディスクを製作した。
No.1:図11の[C]のように、ベアリングの両側に左右のそれぞれの側面振れ(23)が0.01mm以下になるように2個の標準単品ディスクを嵌入した。
No.3:図11の[D]のように、ベアリングの両側に左右のどちらかが側面振れ(2
3)が0.05mm程度になるように2個の標準単品ディスクを嵌入した。
No.4:図11の[D]のように、ベアリングの両側に左右のどちらかの側面振れ(2
3)が0.05mm程度になるように標準タイプ単品ディスクとレーザータイプ単品ディスクを嵌入した。
第1回目として側面振れが大きく嵌入されたNo.3とNo.4の2本の組ディスクをロータ式オープンエンド精紡機の組ディスク固定ユニット(17)に取り付け数分間、外径40mmのロータシャフト(16)を取付けて11万回で回転させた。その結果、ユニットの振動が大きく、ゴム表面はかなり高温になっていたが、実施例1の組ディスクは2本とも、ゴム表面が溶融したりゴム破損もせず何の変化もなかった。
その後、この2本の組ディスクを装置から取り外し、検査装置を使用して再度、左右の触れを5/1000に微調整してから再度、組ディスク固定ユニット(17)に取り付け前記と同様に第2回目の回転試験を行った。その結果、この組ローラは振動もなく順調に回転したので、そのまま3ケ月以上、問題なく使用できた。
側面振れが殆どなく嵌入したNo.1とNo.2の2本の組ディスクを実施例1の第1回目と同様にロータ方式固定ユニット(17)に取り付けてから外径40mmのロータシャフトを取付けて11万回で回転させた。その結果、実施例1のNo.1とNo.2の組ディスクも実施第1回目及び実施例1の第1回目と同様に固定ユニット(17)の振動は殆どなく順調に使用できた。このため、そのまま3ケ月以上、問題なく使用できた。
実施例1の加硫ゴムの融点を測定するために、JIS K0064:化学製品の融点及び溶融範囲測定法(米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)の融点測定法)に準拠した測定方法で比較例1及び比較例2と同時に融点を測定した。
具体的には実施例1及び後記する比較例1及び比較例2で作成した2mm厚さのゴムシートから約1cm四方の破片を作成しそれを鋭利な刃物で粉末状になるまで出来る限り細かく切断し、太さ約1.0mm、長さ約80mm、厚さ約0.2mmのガラス製毛細管に適量を詰め込み、その3本の試料を融点測定装置にセットし毎分2分の速度で昇温させて目視で各融点を測定した。その結果、比較例1と比較例2の2種類の微粉砕したウレタンゴムはそれぞれ190℃、285℃で溶融したが、実施例1のゴム材料はこの融点測定装置の限界温度の400℃になっても溶融しないことが確認できた。
しかし、実施例1の融点を確認することが本来の目的であったにも関わらす、既存の各メーカーの融点測定装置では400℃までの融点しか測定できないので、更に、本発明者は図12のような本発明者が考案した簡易測定方法を用いて実施例1と比較例1及び比較例2を同時に大まかな融点を測定してみた。
レタンゴム製の比較例1のゴム片(31)及び耐熱性ポリウレタンゴム製の比較例2のゴム片(32)を各2個づつ、合計6個を図12のように交互に均等配置して置き、このアルミニュウム製丸棒が毎分1℃〜2℃の範囲に昇温するようにアルコールランプ(24)の炎(25)を調整しながら加熱して、アルミニュウム製丸棒(27)の中央上部に設けた穴に熱電対測定部(28)を差し込んで各ゴム部材片の大凡の溶融温度をデジタル温度計(29)で読み取り測定した。
その結果、最も耐熱性の言われているこの耐熱性ポリウレタンゴムであっても、JIS
K0064:化学製品の融点及び溶融範囲測定法に準拠した測定で285℃で溶融するのに比べ、実施例1のゴム部材は耐熱性ポリウレタンゴムに比べ、少なくとも100℃以上、簡易測定では150℃以上も耐熱性が良く、まったく溶融しないことが判明した。
さらに、実施例1のゴム材料の耐熱老化性を確認するために、作成済の165℃にて25分プレス加硫で作成した2mm厚さの実施例1の加硫ゴムシートと後述する比較例1及び比較例2で準備した2種類のウレタンゴムシートの合計3種類のゴムシートを150℃にセットしてある電気炉に4週間放置後、取り出し、それぞれの未老化シートと150℃・4週間熱老化シートを同時にJIS K6253及びJIS K6251に準拠して硬度及び引張強さの比較を行なった。
しかし、比較例1及び比較例2は、共に老化が激しく、硬度及び引張強さとも測定不能なほど軟化劣化していた。
以上の結果より、実施例1のゴム部材を使用した支持ディスクは、万一操業上でロータシャフトに風綿が付着するなどの予期しないトラブルが発生しても、従来のウレタン製ディスクと異なり、被覆されたゴム表面が全く溶解しないだけでなく驚異的な耐熱老化性があり、安全に操業できることが確認できた。
結合アクリル二トリル36重量%、水素化率96%の水素化ニトリルゴム1000重量部を8インチゴム練りロールに巻き付けて素練りし、これに亜鉛華を50重量部、ステアリン酸を10重量部、老化防止剤、補強性カーボンブラックを適量重量部とプレス成型時のムーニー粘度を調整するために耐熱可塑剤・アデカサイザーCN9(旭電化工業製)を250重量部を良く練り込んだ後、ロールから切り離して自然放置する。
次に、この練り生地Bを使用して実施例1と同様の方法で加硫シート及び4個の標準単品ディスクと2個のレーザータイプ単品ディスクを製作して実施例1と同様に振れを5/
1000以下に仕上げた。その後、各種項目を測定すると以下のような試験結果を得られた。
実施例1と同様の方法でゴム硬度を測定すると、タイプAデュロメータでの硬度が91度、タイプDデュロメータ硬さは50度だった。
[弾性測定]
さらに、この1個のディスクから幅5mm、厚さ1.5mmのゴムリングを切削加工で切り出し粘弾性測定器を使用して80℃、60Hzにおける曲げ振動方式のtanδを測定すると0.14であった。
次に、これらのプレス成型ディスクを実施例1と同様に振れを5/1000以下に仕上げた単品ディスクを実施例1のNo.1及びNo.2の2本の組ディスクと同様に嵌入専用冶具を使用して、図11の[D]のように、どちらか一方の側面振れ(23)が5/100以下になるようにそれぞれの組ディスクを嵌入してから、組ディスク固定ユニット(17)に置き、外径40mmのロータシャフトを取り付けて11万回で回転させた。
この試験結果より、tanδが0.15以下であれば、支持ディスクとしてより好ましく使用できることが判明した。
分子中に5重量%程度のカルボキシル基を含み、アクリルニトリルが約33%のカルボキシル変性三元水素化ニトリルゴム1000重量を8インチゴム練りロールに巻き付けて素練りし、これに亜鉛華を50重量部、ステアリン酸を10重量部、老化防止剤と補強性カーボンブラック及びその他の補強剤を適量重量部配合し、更に分子中のカルボキシル基に起因する永久歪の増加とゴム弾性の低下を防ぎ、同時に硬度を調整するために適量のトリアリルイソシアヌレート(商品名・TAIC,日本化成製)を添加後ロールから練り生地を切り放した。続いてこのゴム練り生地を再度、練りロールに巻き付け、適量のパークミルD40(日本油脂株式会社製過酸化物加硫剤)を練り込み、練り生地Dを作成した。
その結果、ゴム硬度を測定するとタイプAデュロメータでの硬度が97度、タイプDデュロメータ硬さは56度であり、振動吸収特性、耐熱性、耐熱老化特性においても、実施例1とほぼ同等の性能を確認することができ、比較例1及び比較例2の従来品に比べ優れた性能を有することを確認することができた。
実施例1と同一仕様で製作しておいた標準タイプ用アルミ製芯金(1)8枚とレーザー反射式回転数測定タイプ用アルミ製芯金(5)2枚をそれぞれ脱脂肪し、ポリウレタンゴム用専用接着剤を塗布して一晩、自然放置しておいた。
次に、120℃に加熱してあるポリウレタンゴム注入用熱板上に注入型を置き、芯金を型に入れ保温しておいた。
適正な容器に1000重量部を秤量し、80℃に加熱後、真空中で攪拌しながら5分間脱泡した。次に架橋剤として適正な金属容器で158重量部のMOCA(メチレンビスオルトクロロアニリン・イハラケミカル製)を秤量し電熱器で加熱溶解したあと110℃の電気炉にアルミホイルで蓋をして保温しておいた。次に、この脱泡済みプレポリマーに溶解したMOCAを全量加え、空気を抱き込まないように撹拌棒で1分間攪拌してから熱板上にセットしてある支持ディスク用注入型と2mm平板用注入型に混合物を注入し、熱板上で1時間、保温放置した。ウレタンゴムが硬化後、注入型からそれぞれの注入素材を脱型し110℃の電気炉で12時間加熱熟成した。その後、更に2週間、室温で自然放置し熟成させた。
このポリウレタンゴム製シートの硬度を実施例1と同様の方法で測定すると タイプAデュロメータでの硬度が95度、タイプDデュロメータ硬さは54度だった。
[融点測定]
この比較例1の融点は前記の実施例1で記載したようにJIS K0064:化学製品の融点及び溶融範囲測定法(米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)の融点測定法)に準拠して測定した結果、190℃と判り耐熱性がかなり悪いことが判った。
このため、もしポリウレタンゴム部品製造メーカーが、この一般的なポリウレタンゴムを使用してロータシャフト支持ディスクを作成したとしても、何らかの要因でゴム表面が高温になると比較的簡単に溶け、品質的に低い支持ディスク製品しか得られないことが判った。
さらに、比較例1からなるポリウレタンゴム製注入成型ディスクからなる標準単品ディスク4個とレーザー反射タイプ単品ディスク2個の合計6個を表面及び側面の振れ精度をともに5/1000以下に仕上げた後に専用冶具を使用して実施例1のNo.3及びNo.4と同様に、図11の[D]のように、どちらか一方の側面振れ(23)が大きい状態に嵌入してから組ディスク固定ユニット(17)に設置し、実施例1と同一のロータシャフトを取り付け11万回で数分間回転させた。
その結果、比較例1の汎用のポリエステル系ポリウレタンゴム部材を使用した支持ディスクは常に円周振れがないような状態で注意して使用しないと直ぐに使用不能になり、管理の良い工場でしか各メーカーが保証している数年間という期間迄は使用できないと判った。
実施例1と同一仕様で製作しておいた標準タイプ用アルミ製芯金(1)8枚とレーザー反射式回転数測定タイプ用アルミ製芯金(5)2枚をそれぞれ脱脂肪し、ポリウレタンゴム用専用接着剤を塗布して一晩、自然放置しておき、この芯金を120℃に保温された熱板上に保温してある専用型にセットしておいた。
次にOH価が55.0で分子量2000の両末端OH基を持つポリエステルポリオールを適正な容量の金属製容器を使用して1000重量部を秤量後、135度まで加熱し、耐熱性ポリウレタンゴム専用の反応器中で真空下で攪拌しながら3時間脱水した。
ートからなるプレポリマーを作成した。
このプレポリマーに適量の1,4ブタンジオールを混合し、すばやく空気を抱き込まないように均一に攪拌しながら熱板上にセットしてある支持ディスク用型と2mm平板用注入型に注入し、熱板上でそのまま20分保温した。
その後、注入型からそれぞれの注入素材を脱型し110℃に保温してある電気炉で24時間、加熱熟成し、その後、常温で2週間、自然放置し熟成した。
その後、この耐熱性ポリウレタンゴム製シートの硬度を実施例1と同様の方法で測定すると、タイプAデュロメータ硬さが96度、タイプDデュロメータ硬さは57度であった。
[融点測定]
この耐熱性ポリウレタンゴムを用いた比較例2の融点は、前記の実施例1で記載したようにJIS K0064:化学製品の融点及び溶融範囲測定法(米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)の融点測定法)に準拠して測定した結果は285℃であり、簡易測定方法での融点でも300℃前後と判り、ポリウレタンゴムとしては非常に耐熱性が良いことが判ったが、超高速回転するロータシャフトの回転不良による振動やスリップによる摩擦熱が発生するなどの何らかの要因でゴム表面が300℃前後の高温になる場合には、汎用ポリウレタンゴムを用いた比較例1と同様に、残念ながら容易に溶けてしまい、メーカー保証の最長保証寿命まで使用出来ない事態も発生することが判った。
さらに、上記で作成した耐熱性ポリウレタンゴム製注入成型ディスク素材を比較例1と同様に表面を仕上げた後、比較例1の場合と同様に図11の[D]のようにどちらか一方の側面振れ(23)が大きい状態に嵌入してから、組ディスク固定ユニット(17)に取り付けて回転試験を実施すると、比較例1よりも若干長い時間回転した後に、ユニットの振れが急に増えたので、組ユニットからこの支持組ディスクを取り外して観察した。
その結果、比較例1と同様に支持ディスクの耐熱性ポリウレタンゴム表面の一部が溶融していた。
また、これらの結果から、各支持ディスクを製造するメーカーが、その製品カタログにて図11の[D]のようでなく、[C]のように嵌入後の各支持単品ディスクの側面振れ(23)が限りなくゼロになるよう正しく嵌入することが長期保証寿命を維持するために最重要と説明しているとおり、ポリウレタンゴム製支持ディスクでは本発明品と異なり極めて正確な嵌入が要求されることも理解できる。
2 ロータシャフト支持単品ディスクのゴム部材
3 被覆ゴム部材表面の加工した溝部分
4 ロータシャフト支持単品ディスクの芯金のベアリング固定用穴
5 レーザー測定タイプ用ロータシャフト支持用単品ディスクの芯金
6 レーザーによる回転数計測用貫通穴
7 反射板タイプロータシャフト支持単品ディスクの芯金
8 回転数計測用反射板
9 ロータシャフト支持単品ディスク固定用ベアリング
10 標準タイプロータシャフト支持単品ディスクの完成品
11 レーザータイプロータシャフト支持単品ディスク完成品
12 ロータシャフト支持単品ディスクを固定するベアリングのシャフト部
13 標準タイプロータシャフト支持組ディスク(標準タイプ単品ディスク2枚をそれぞれベアリングの左右のシャフトに固定したもの)
14 レーザー反射タイプロータシャフト支持組ディスク(レーザータイプ単品ディスク1枚と標準タイプ単品ディスク1枚をそれぞれベアリングの左右のシャフトに固定したもの)
15 反射板タイプロータシャフト支持組ディスク(反射板タイプ単品ディスク1枚と標準タイプ単品ディスク1枚をそれぞれベアリングの左右のシャフトに固定したもの)
16 繊維束紡出用ロータシャフト
17 組ディスク固定用ユニット
18 ロータシャフトの繊維束吐き出し口
19 ロータシャフトの繊維束入口
20 ロータシャフト駆動用ベルト
21 駆動用ベルト用テンションプリー
22 紡出繊維束
23 嵌入済みロータシャフト支持組ディスクの側面の振れ
24 アルコールランプ
25 アルコールランプの炎
26 アルミニュウムブロック固定用台
27 アルミニュウムブロック
28 温度測定用熱電対センサー部
29 デジタル温度計
30 簡易方式で融点を測定するための実施例1のゴム部材片
31 簡易方式で融点を測定するための比較例1のゴム部材片
32 簡易方式で融点を測定するための比較例2のゴム部材片
33 ロータシャフト支持単品ディスクのゴム表面が使用中に溶けた部分の模式図
34 ロータシャフト支持単品ディスクの芯金とゴムの境界面
A ロータシャフトを含めた反射板タイプロータシャフト支持組ディスク一式(旧タイプ)
B ロータシャフトを含めたレーザー反射ロータシャフト支持組ディスク一式(新タイプ)
C ベアリングに正常に嵌入したロータシャフト支持組ディスクの完成正面図
D ベアリングにやや悪く嵌入したロータシャフト支持組ディスクの完成正面図
E ゴム表面が一部溶融したロータシャフト支持単品ディスクの正面模式図
F ゴム表面が一部溶融したロータシャフト支持単品ディスクの斜面模式図
Claims (4)
- ロータ式オープンエンド精紡機のロータシャフトを支持するディスクであって、その周縁部に接着剤を介してゴム部材が接着被覆されており、該ゴム部材が結合アクリロニトリル18〜44重量%の水素化ニトリルゴム(HNBR)及び/又はその変性物を過酸化物加硫したゴム部材であって、JIS K0064:化学製品の融点及び溶融範囲測定法(米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)の融点測定法)に準拠した融点測定方法で400℃でも溶融せず、且つ、JIS K7244−5(ISO 6721−5)に準拠した曲げ振動試験方式における雰囲気温度80℃、周波数60Hzにて測定した時のtanδが0.15以下であるゴム部材から形成されていることを特徴とするロータ式オープンエンド精紡機のロータシャフト支持ディスク。
- 前記変性物が、水素化ニトリルゴム100重量部に対してメタクリル酸亜鉛及び/又はアクリル酸亜鉛を20重量部以上ないし120重量部配合したゴムであることを特徴とする請求項1記載のロータシャフト支持ディスク。
- 前記変性物が、メタクリル酸及び/又はアクリル酸の1〜10重量%を三元共重合したニトリルゴムを水素添加したカルボキシル基導入水素化ニトリルゴム(HXNBR)であることを特徴とする請求項1記載のロータシャフト支持ディスク。
- 前記過酸化物加硫ゴム部材の25℃におけるJIS K6253(ISO 48, ISO
7619)に準拠したスプリング式(デュロメータ硬さ)硬さ測定方法でのタイプAデュロメータ硬さが90度以上であり、タイプDデュロメータ硬さが68度以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のロータ式オープンエンド精紡機のロータシャフト支持ディスク。
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