JP6769762B2 - 区画貫通部構造における配管システム - Google Patents

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Description

本発明は、区画貫通部構造における配管システムに関する。
建築物の床や壁等の区画に配管する際にはスリーブを設置し、貫通孔を形成する。通常貫通孔には配管し、必要に応じて貫通孔の耐火処理や配管の固定を行う。ところが従来は、特許文献1に記載されているように、スリーブと配管の間にはクリアランスがあるために、音漏れや水漏れが起こる可能性があり、対策として、クリアランスにウレタンや不燃材を詰める必要があり煩雑であった。
実開平6-7755
本発明の目的は、耐火性に優れ、かつ音漏れ及び/又は水漏れを防止する区画貫通部構造における配管システムを提供することである。
本発明によれば、以下の態様が提供される。
[1]貫通孔が設けられた区画を備えた区画貫通部構造における配管システムであって、
貫通孔を画成する熱膨張性スリーブと、
前記区画の両側で貫通孔の外に延びる、互いに離間した2つ以上の配管と、
前記配管に嵌合され、前記熱膨張性スリーブの両端と接続されて配管と熱膨張性スリーブとの間のクリアランスを閉塞する2つの環状の連結蓋と
を備えた配管システム。
[2]各連結蓋が、前記配管に嵌合される第1嵌合部を備えている[1]に記載の配管システム。
[3]各連結蓋が、前記熱膨張性スリーブにより画成された貫通孔内に嵌入される第2嵌合部を備えている[2]に記載の配管システム。
[4]前記配管と前記連結蓋、及び前記連結蓋と前記熱膨張性スリーブ又は前記床若しくは壁が液密に接続されている[1]〜[3]のいずれかに記載の配管システム。
[5]前記熱膨張性スリーブが、本体部と、本体部と連続する拡径部とを備えた中空の第1スリーブと、前記第1スリーブの拡径部と嵌合可能な熱膨張性の本体部を有する中空の第2スリーブとを備えたスリーブである[1]〜[4]のいずれかに記載の配管システム。
本発明によれば、建築物の隣りの区画への火炎の進路を防ぐと共に、音漏れ、及び/又は水漏れを防止することができる。
本発明の第一実施形態の配管システムの分解略斜視図である。 貫通孔が設けられたコンクリートに装着された配管システムの略断面図である。 加熱による膨張後の熱膨張性スリーブを示す略断面図である。 連結蓋の別例の側面図。 図4の連結蓋がスリーブに設けられた配管システムの略断面図である。 別例のスリーブの分解略斜視図。 図6の(A)第1スリーブの上面図、(B)側断面図、(C)底面図。 図6の(A)第2スリーブの上面図、(B)側断面図、(C)底面図。 図6のスリーブにおいて第2スリーブを第1スリーブに嵌合した状態の略側面図。 別例の配管システムの略断面図である。
以下、本発明を、貫通孔が設けられた区画を備えた建築物の区画貫通部構造における配管システムに具現化した実施の形態を図面を参照して説明する。なお、「建築物」には、一戸建住宅、集合住宅、高層住宅、高層ビル、商業施設、公共施設等の建材;客船、輸送船、連絡船等の船舶;車両;等の構造物が含まれるが、これらに限定されない。「区画」には壁及び床が含まれる。
本発明の第一実施形態の配管システムについて図1〜3を参照しながら説明する。
図1及び2を参照すると、貫通孔4が設けられた、区画としてのコンクリート2を備えた区画貫通部構造5における配管システム1は、貫通孔4を画成する熱膨張性スリーブ10と、コンクリート2の両側で貫通孔4の外に延びる、互いに離間して直列に配置された2つの配管20,21と、コンクリート2の両側面6で2つの配管20のそれぞれに嵌合され、かつ熱膨張性スリーブ10の両端と接続されて配管20,21と熱膨張性スリーブ10との間のクリアランスを閉塞する2つの環状の連結蓋30,31とを備えている。
熱膨張性スリーブ10と連結蓋30,31とを接続する構造としては、例えば熱膨張性スリーブ10と連結蓋30,31にそれぞれ切り欠きがあり、切り欠きを互いに引っ掛けることによる固定、一方が他方に対応する凸部と凹部を有し、それらを嵌合することによる固定、配管に沿って接続部に環状金具を設置し、ビス等で環状金具径を締めることによる固定、汎用支持固定具を介したコンクリート等の躯体への直接の固定が挙げられる。
スリーブ10は、本実施形態では、コンクリート2における貫通孔4の形成用にコンクリート2の打設前に配置される。中空略円筒形のスリーブ本体11を備えている。スリーブ本体11の内周面により開口部15が形成され、貫通孔4(図2参照)として作用する。開口部15の大きさ(スリーブ本体11の内径)は配管20の外径よりも大きく、配管20を挿通できる寸法である。
スリーブ本体11の下端12には、1つまたは複数(図では4つ)の取付部13が設けられている。取付部13はスリーブ本体11と一体成形されている。取付部13は、図1ではそれぞれスリーブ10の軸Aに関して約90°離間した4つの取付部で示され、コンクリート2の打設前に図示しない鉄筋等の床下地に対してスリーブ10を固定するための孔13aを有する。孔13aにはスリーブ10を型枠又は床下地に固定するために、コンクリート打設前に針金等の金属線、ボルト、ビス、釘等の固定用部材が通され得る。
またスリーブ10は、スリーブ本体11の外側面に、スリーブ本体11から突出して延びるリブ14を備えており、リブ14は、スリーブ10の軸Aに対して略平行に延びる複数の(図1では3つ)リブ14aと、スリーブ10の軸Aに対して略垂直な方向に環状(円周上)に延びる複数(図1では3つ)のリブ14bとを備えている。リブ14a,14bはスリーブ本体11と一体成形されている。リブ14a,14bは、スリーブ10の周囲にコンクリートを流し込んだときにコンクリートから受ける力に対してスリーブ10が耐えられるようスリーブ10を補強する役割を果たす。
熱膨張性の耐火樹脂材料から形成されているスリーブ10は、耐火樹脂材料を構成する樹脂組成物の各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練し、公知の成形方法で成形することにより得ることができる。
本実施形態では、スリーブ10のスリーブ本体11、リブ14a,14b、ならびに取付部13が同じ熱膨張性の耐火樹脂材料から一体成形されている。スリーブ10の構成材料については後で詳しく説明する。
配管20,21には、水道管、冷媒管、熱媒管、ガス管、吸排気管等の各種配管が含まれる。配管20,21は金属から形成されることが好ましいが、限定されない。
連結蓋30,31の各々は、環状のフランジ部分32,33と、フランジ部分32,33から略垂直に延びる第1嵌合部34,35とを備え、貫通孔4の外で第1嵌合部34,35のそれぞれは配管20,21に嵌合される。本実施形態では、配管20,21の内径は第1嵌合部34,35の外径よりも大きく、第1嵌合部34,35が配管20,21内に挿入され、連結蓋30,31の配管20,21内への移動は環状のフランジ部分32,33にて停止する。
連結蓋30,31は金属から形成されてもよいし、非耐火性または耐火性の耐火性樹脂組成物から形成されてもよいが、好ましくは耐火性の耐火性樹脂組成物から形成された成形体である。例えば、連結蓋30,31は可塑剤を含むかまたは含まない塩化ビニル樹脂か、またはゴム等の樹脂組成物から形成され得る。
連結蓋30,31と配管20,21とスリーブ10との間のクリアランスが閉塞されるため、床下又は床上からの音を抑制することができる。
また好ましくは、配管20,21と連結蓋30,31、及び連結蓋30,31と熱膨張性スリーブ10が液密に接続されている。具体的には、配管20と連結蓋30、配管21と連結蓋31、連結蓋30と熱膨張性スリーブ10、連結蓋31と熱膨張性スリーブ10は水が漏れないように密着して接続している。図2に示すように、配管20の中を通って矢印の方向に液体、特には水を流したときに、液体は配管システム1の外へ漏出せずに、液体は配管システム1内を配管20、スリーブ10、配管21を通って流れる。つまり、本実施形態では、スリーブ10も液体の通路として機能する。
次に、火災が起こり、区画貫通部構造5に火又は火災による熱が伝わると、図3に示すように、熱膨張性スリーブ10が貫通孔4の一部又は全部を埋めるように膨張する。このため、コンクリート2の貫通孔4を通じた火の進路を防ぐことができる。
このように、本実施形態の配管システムは、区画貫通部構造5の貫通孔に耐火性を付与するだけでなく、音漏れ及び/又は水漏れも防止することができる。
ここで、熱膨張性スリーブ10を構成する熱膨張性の耐火樹脂材料についてより詳しく説明する。耐火樹脂材料は、樹脂成分に熱膨張性層状無機物と無機充填材とを含む樹脂組成物である。
樹脂成分としては、公知の樹脂成分を広く使用でき、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム物質、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。
ゴム物質としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
これらの合成樹脂および/またはゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
これらの合成樹脂および/またはゴム物質の中でも、柔軟でゴム的性質を有しているものが好ましい。この様な性質を有する樹脂成分は無機充填材を高充填することが可能であり、得られる樹脂組成物が柔軟で扱い易いものとなる。より柔軟で扱い易い樹脂組成物を得るためには、ブチル等の非加硫ゴムおよびポリエチレン系樹脂が好適に用いられる。代わりに、樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
熱膨張性層状無機物は加熱時に膨張するものである。かかる熱膨張性層状無機物に特に限定はなく、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等を挙げることができる。熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和してもよい。熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュより数値が大きいと、黒鉛の膨張度が膨張断熱層が得るのに十分であり、また粒度が20メッシュより小さいと、樹脂に配合する際の分散性が良く、物性が良好である。熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」、GRAFTECH社製「GRAFGUARD」等が挙げられる。
無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩等が挙げられる。
また、無機充填剤としては、これらの他に、硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いることができるし、2種以上を併用することもできる。
無機充填剤の粒径としては、0.5〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜50μmである。無機充填剤は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、0.5μm以上であると、分散性が良好である。添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることで樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、粒径の大きいものが好ましいが、100μm以下の粒径が成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性の点で望ましい。
無機充填剤のうち、水酸化アルミニウムの具体例としては、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)、粒径25μmの「B325」(ALCOA社製)、炭酸カルシウムでは、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工業社製)等が挙げられる。
さらに、熱膨張性耐火材を構成する樹脂組成物は、膨張断熱層の強度を増加させ防火性能を向上させるために、前記の各成分に加えて、さらにリン化合物を含んでもよい。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、および、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コスト等の点においてポリリン酸アンモニウムがより好ましい。
化学式(1)中、R1およびR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、炭素数6〜16のアリール基を表す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、または、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。ポリリン酸アンモニウムとしては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取り扱い性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR CROS 484」、「FR CROS 487」等が挙げられる。
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、n−プロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。
前記樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂成分100重量部に対し、前記熱膨張性層状無機物を10〜350重量部および前記無機充填材を30〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。
また、前記熱膨張性層状無機物および前記無機充填材の合計は、樹脂成分100重量部に対し、50〜600重量部の範囲が好ましい。樹脂組成物における熱膨張性層状無機物および無機充填材の合計量は、50重量部以上では燃焼後の残渣量を満足して十分な耐火性能が得られ、600重量部以下であると機械的物性が維持される。
かかる樹脂組成物は加熱によって膨張し耐火断熱層を形成する。この配合によれば、前記熱膨張性耐火材は火災等の加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する残渣を形成することもでき、安定した防火性能を達成することができる。
さらに本発明に使用する前記樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂、成型補助材等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
熱膨張性耐火材は市販品として入手可能であり、例えば、住友スリーエム社製のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーミキュライトとを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛とを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)、積水化学工業社製フィブロック等の熱膨張性耐火材等も挙げられる。
前記熱膨張性耐火材は、火災時などの高温にさらされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度があるものであれば特に限定されない。50kW/m2の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3〜50倍のものであれば好ましい。前記体積膨張率が3倍以上であると、膨張体積が前記樹脂成分の焼失部分を十分に埋めることができ、また50倍以下であると、膨張層の強度が維持され、火炎の貫通を防止する効果が保たれる。
ここまで、本発明を第1実施形態を例にとって説明してきたが、本発明はこれに限られず、以下のような種々の変形が可能である。
・スリーブ10のリブ14a,14bは省略してもよい。
・スリーブ10の取付部13及び孔13aは省略してもよい。
・スリーブ10がコンクリート5の打設前に配置されるタイプのスリーブの代わりに、床や壁等の区画に予め設けた貫通孔4に装着するタイプのスリーブであってもよい。
・図4に示すように、各連結蓋30,31が、熱膨張性スリーブ10により画成された貫通孔4内に嵌入される第2嵌合部36,37を備えていてもよい。
このような構成によれば、図5に示すように第2嵌合部36,37が熱膨張性スリーブ10に対してよりしっかり固定されるので、耐火性と、防音性及び/又は防水性とが一層向上する。
・第1実施形態の熱膨張性の耐火樹脂材料から形成されたスリーブ本体11を有するスリーブ10の代わりに、スリーブ10は2つ以上のスリーブ部分のアセンブリ(組立体)であってもよい。
例えば、図6に示すように、熱膨張性スリーブ10が、本体部41と、本体部41と連続する拡径部16とを備えた中空の第1スリーブ40と、第1スリーブ40の拡径部16と嵌合可能な熱膨張性の本体部51を有する中空の第2スリーブ50とを備えたスリーブであってもよい。
図6及び図7(B)に示すように、第1スリーブ40は、中空略円筒形の本体部41と、本体部41と段差部45を介して連続する中空略円筒形の拡径部46とを備えている。好ましくは本体部41、段差部45、及び拡径部46は熱膨張性の耐火樹脂材料から形成されていてもよいし、非熱膨張性材料から形成されていてもよいが、好ましくは同じ非熱膨張性の材料から連続的に形成され、第1スリーブ40は上端42から下端48まで連続している。熱膨張性の耐火樹脂材料については第1実施形態のスリーブ10に関して説明した通りである。非熱膨張性材料としては、鋼、銅、ステンレス等の金属であってもよいし、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル等の非熱膨張性の耐火樹脂材料であってもよい。
図6及び図8(B)に示すように、第2スリーブ50は、第1スリーブ40の拡径部46内に嵌合可能な熱膨張性の中空略円筒形の本体部51と、本体部51の周囲に装着された環状部材56及び環状突部58とを備え、環状部材56は本体部51の側面の一端(図では下端53)から突出し、環状突部58は本体部51の端部から離間した位置に設けられ、本体部51の側面から突出する。本体部51は熱膨張性の耐火樹脂材料から形成されている。熱膨張性の耐火樹脂材料については第1実施形態のスリーブ10に関して説明した通りである。
環状部材56及び環状突部58は本体部51と同じ熱膨張性の耐火樹脂材料から形成されてもよいし、鋼等の金属、硬質塩化ビニル等の非熱膨張性の耐火樹脂材料から形成されてもよい。環状部材56及び環状突部58は好ましくは金属より形成される。環状部材56は環状部材56から第2スリーブ50の軸に対し垂直外方に延びる1つ又は複数の取付部57(図では4つ)を備えている。各取付部57は床を構成する床下地に対して第2スリーブ50を固定するための孔57aを有する。
図9に示すように、第2スリーブ50を第1スリーブ40に嵌合した状態において、第1スリーブ40と第2スリーブ50はスリーブ10の軸Aの方向(及び第1スリーブ40と第2スリーブ50の軸方向)に沿って整列される。第1スリーブ40の本体部41の内周面44と第2スリーブ50の本体部51の外周面54が嵌合部で接している。また、第2スリーブ50を第1スリーブ40に嵌合した状態において、第2スリーブ50の本体部51の外周面の一部が露出している。
第2スリーブ50の本体部51を熱膨張性の耐火樹脂材料から形成することにより、第2スリーブ50とコンクリートの密着性が向上し、第2スリーブ50の燃焼残渣のコンクリートとの密着性が向上し、断熱層が崩壊しにくくなる。また、熱膨張性の耐火樹脂材料の出代が多いとスリーブ10が外部衝撃に対して変形しやすくなるが、第1スリーブ40を金属等の非熱膨張性材料で形成することにより、外部衝撃に対する強度を増大させることができる。また膨張材使用量を必要最小限に抑えることができる。このように、非熱膨張性の第1スリーブ40と、熱膨張性の本体部を有する第2スリーブ50とを組み合わせてスリーブ1を構成することで、区画貫通構造に耐火性を付与し、さらには外部衝撃に対する強度とコンクリートに対する密着性とを兼ね備え、適正な価格で提供することができる。
本例では、第1スリーブ40の本体部41の内径X(図7(B))は、第2スリーブ50の本体部51の内径Y(図8(B))と等しいかそれより小さい。この構成により、第2スリーブ50の第1スリーブ40内への移動(図9にて上方向への移動)は段差部45の周面、すなわち内周面45aにて規制される。また、第2スリーブ50を第1スリーブ40に嵌合した状態で第2スリーブ50が加熱により膨張したとき、第2スリーブ50の本体部51の上端52が膨張して段差部45の内周面45aに接することにより第2スリーブ50の上方向への膨張が規制される。その結果、第2スリーブ50の露出部における第2スリーブ50の軸方向に対して垂直な方向、特に軸方向に対して垂直かつ第2スリーブ50の内方への膨張が促進され、区画貫通孔をより効果的に閉塞することができる。
また、第2スリーブ50の本体部51の外径Z(図8(B))は第1スリーブ40の本体部41の内径Xよりも大きい。この構成により、第2スリーブ50の上端52が第1スリーブ40の段差部45に当接するため、第2スリーブ50の第1スリーブ40内への移動(図8にて上方向への移動)は段差部45にてより確実に規制される。また、第2スリーブ50を第1スリーブ40に嵌合した状態で第2スリーブ50が加熱により膨張したとき、第2スリーブ50の上端52が膨張して段差部45に当接することにより第2スリーブ50の上方向への膨張が規制される。その結果、第2スリーブ50の露出部における第2スリーブ50の軸方向に対して垂直な方向、特に軸方向に対して垂直かつ第2スリーブ50の内方への膨張が促進され、区画貫通孔をより効果的に閉塞することができる。
・第1実施形態では配管を2つの配管20,21としたが、図10に示すように、3つ以上の互いに離間した配管が連結蓋及び熱膨張性スリーブを介して接続される構造としてもよい。
・第1実施形態では連結蓋30と熱膨張性スリーブ10、連結蓋31と熱膨張性スリーブ10を水が漏れないように密着して接続したが、連結蓋30及び/又は連結蓋31は、床若しくは壁と液密に接続されていてもよい。
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
1・・・配管システム、2・・・区画としてのコンクリート、4・・・貫通孔、5・・・区画貫通部構造、10・・・熱膨張性スリーブ、20,21・・・配管、30,31・・・連結蓋、34,35・・・第1嵌合部、36,37・・・第2嵌合部、40・・・第1スリーブ、41・・・第1スリーブの本体部、46・・・拡径部、50・・・第2スリーブ、51・・・第2スリーブの本体部。

Claims (5)

  1. 貫通孔が設けられた区画を備えた区画貫通部構造であって、
    前記区画貫通部構造は配管システムを備え、前記配管システムは、
    貫通孔を画成する熱膨張性スリーブと、
    前記区画の両側で貫通孔の外に延びる、互いに離間した2つ以上の配管と、
    前記配管に嵌合され、前記熱膨張性スリーブの両端と接続されて配管と熱膨張性スリーブとの間のクリアランスを閉塞する2つの環状の連結蓋と、を備え、
    前記熱膨張性スリーブの全長と、前記貫通孔の全長とが略同じ長さであり、前記熱膨張性スリーブの全長にわたって前記区画と接し、
    前記環状の連結蓋がフランジ部を備え、前記フランジ部が前記区画の表面と接している、
    区画貫通部構造。
  2. 各連結蓋が、前記配管に嵌合される第1嵌合部を備えている請求項1に記載の区画貫通部構造
  3. 各連結蓋が、前記熱膨張性スリーブにより画成された貫通孔内に嵌入される第2嵌合部を備えている請求項2に記載の区画貫通部構造
  4. 前記配管と前記連結蓋、及び前記連結蓋と前記熱膨張性スリーブ又は前記床若しくは壁が液密に接続されている請求項1〜3のいずれかに記載の区画貫通部構造
  5. 前記熱膨張性スリーブが、
    本体部と、本体部と連続する拡径部とを備えた中空の第1スリーブと、
    前記第1スリーブの拡径部と嵌合可能な熱膨張性の本体部を有する中空の第2スリーブとを備えたスリーブである請求項1〜4のいずれかに記載の区画貫通部構造
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