JP6616693B2 - 防火材、防火材の成形方法 - Google Patents

防火材、防火材の成形方法 Download PDF

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Description

本発明は、防火材、及び当該防火材の成形方法に関する。
従来、建物の床や壁に貫通孔を形成して、当該貫通孔にケーブルや電線管や給排水管等を挿入させることが行われている。そして、貫通孔の内周面と挿通物との間の隙間を通じて火災が伝搬することを防止すべく、上記隙間をパテで埋める防火措置が行われていた。また特許文献1には、上記の隙間をシールする方法として、挿通物の外周にシート状の発泡体を巻き付ける方法が開示されている。発泡体は、その表面に塗布される接着剤によって、挿通物の外周に固定される。
特開2001−141129号
しかしながら、上述したパテで隙間を埋める方法は、施工に長い時間を要する。また特許文献1に開示されるシール方法では、図24に示すように、複数の挿通物4が貫通孔3に挿通される場合に、一の挿通物4に巻き付ける発泡体100の厚みが、他の挿通物4の存在によって制限される。このため、貫通孔3の内周面3aと挿通物4との間に、発泡体100で埋められない隙間Sが生じて、この隙間Sを通じて火災が伝搬する虞がある。
本発明は、上記事項に鑑みなされたものであり、その目的は、区画体に形成される貫通孔の内周面と、貫通孔に挿入される挿通物との間の隙間を埋めるために、貫通孔に設置される防火材であって、貫通孔に設置する施工に長い時間を要さず、貫通孔を通じて火災が伝搬することを防止可能な防火材、及び当該防火材の成形方法を提供することである。
本発明の第1観点に係る防火材は、区画体に形成される貫通孔の内周面と、前記貫通孔に挿通される挿通物との間の隙間を埋めるために、前記貫通孔に設置される防火材であって、環状に撓んだ状態で前記隙間に配置されるクッション体を備え、前記クッション体が前記隙間に配置された状態では、前記貫通孔の正面視において、前記クッション体が前記隙間の全周に延びる。
好ましくは、前記クッション体は、ウレタンから形成される。
好ましくは、前記クッション体は、反対向きの一方面及び他方面を有する本体と、前記本体の一方面から突出するヒダ片とを備え、前記クッション体は、前記本体の縦方向が環状に曲がるとともに前記本体の他方面が環状の外側面となるように撓んだ状態で、前記隙間に配置され、前記クッション体が前記隙間に配置された状態では、前記貫通孔の正面視において、前記本体が前記隙間の全周に延びるとともに、前記本体の内側の全周に前記ヒダ片が存在する。
好ましくは、前記ヒダ片は、前記本体の縦方向に延びる突条体であり、前記本体の一方面に複数形成されており、前記本体の横方向に延びる任意の線上にいずれかの前記ヒダ片が存在するように、各前記ヒダ片の位置や長さが調整されていることで、前記クッション体が前記隙間に配置された状態では、前記貫通孔の正面視において、前記本体の内側の全周に前記ヒダ片が存在する。
好ましくは、前記ヒダ片は、前記本体の縦方向に延びる突条体であり、前記ヒダ片が、前記本体の縦方向の全幅に延びていることで、前記クッション体が前記隙間に配置された状態では、前記貫通孔の正面視において、前記本体の内側の全周に前記ヒダ片が存在する。
好ましくは、前記ヒダ片は、錐状の突起であり、前記本体の一方面に複数形成されており、前記ヒダ片が前記本体の一方面の全体に分布していることで、前記クッション体が前記隙間に配置された状態では、前記貫通孔の正面視において、前記本体の内側の全周に前記ヒダ片が存在する。
好ましくは、シート材と、一対の第1鍔部と、一対の第2鍔部とが設けられる係合体をさらに備え、前記シート材は、反対向きの一方面と他方面を有し、前記一対の第1鍔部は、前記シート材の一方面の横方向両縁から突出するものであって、前記シート材の縦方向に延び、前記一対の第2鍔部は、前記シート材の他方面の幅方向両縁から突出するものであって、前記シート材の縦方向に延び、前記クッション体は、前記本体の縦方向を前記シート材の縦方向に一致させた状態で、前記本体の一部が前記一対の第1鍔部の間に配置されて、前記本体の他部や前記ヒダ片が前記一対の第1鍔部の間から延び出ており、前記シート材や前記本体の縦方向が環状に撓み、前記シート材の他方面が環状の外側面となるように、前記係合体や前記クッション体を曲げた状態で、前記一対の第2鍔部の間に前記貫通孔の周縁を挟み込んで、前記シート材の他方面を前記貫通孔の内周面に沿わせることで、前記係合体や前記クッション体が前記隙間に配置され、前記係合体や前記クッション体が前記隙間に配置された状態では、前記一対の第2鍔部の挟み込みによって前記係合体が前記貫通孔の周縁に係合し、前記隙間の外周側に前記シート材が位置し、前記隙間の内周側に前記クッション体が位置する。
好ましくは、耐火材料から形成されて、反対向きの一方面と他方面を有する耐火体をさらに備え、前記クッション体は、前記本体の他方面が前記耐火体の一方面に接合され、前記耐火体は、縦方向を前記シート材の縦方向に一致させた状態で、前記一対の第1鍔部の間に配置されて、他方面が前記シート材の一方面に接合されるものであって、前記耐火体の厚さが前記第1鍔部の高さよりも薄いことで、前記本体の一部が前記一対の第1鍔部の間に位置し、前記本体の他部や前記ヒダ片が前記一対の第1鍔部の間から延び出ており、前記シート材や前記耐火体や前記本体の縦方向が環状に曲がり、前記シート材の他方面が環状の外側面となるように、前記係合体や前記耐火体や前記クッション体を撓ませた状態で、前記一対の第2鍔部の間に前記貫通孔の周縁を挟み込んで、前記シート材の他方面を前記貫通孔の内周面に沿わせることで、前記係合体や前記耐火体や前記クッション体が前記隙間に配置され、前記係合体や前記耐火体や前記クッション体が前記隙間に配置された状態では、前記係合体が、前記一対の第2鍔部の挟み込みによって前記貫通孔の周縁に係合し、前記隙間の外周側に前記シート材が位置し、前記隙間の内周側に前記クッション体が位置し、前記シート材と前記クッション体との間に前記耐火体が位置する。
好ましくは、前記係合体は、熱膨張性黒鉛から形成される。
好ましくは、前記耐火体は、熱膨張性層状無機物を含む耐火材料から形成される。
好ましくは、前記一対の第1鍔部又は前記一対の第2鍔部の先端には、スリットが形成される。
本発明の第2観点に係る防火材は、区画体に形成される貫通孔の内周面と、前記貫通孔に挿通される挿通物との間の隙間を埋めるために、前記貫通孔に設置される防火材であって、螺旋状に撓んだ状態で、前記隙間に配置されるクッション体を備え、前記クッション体が前記隙間に配置された状態では、前記貫通孔の正面視において、前記クッション体が前記隙間の全周に延びる。
好ましくは、前記クッション体は、反対向きの一方面及び他方面を有する本体と、前記本体の一方面から突出するヒダ片とを備え、前記クッション体は、前記本体の縦方向が螺旋状に曲がるとともに前記本体の他方面が螺旋状の外側面となるように撓んだ状態で、前記隙間に配置され、前記クッション体が前記隙間に配置された状態では、前記貫通孔の正面視において、前記本体が前記隙間の全周に延びるとともに、前記本体の内側の全周に前記ヒダ片が存在する。
好ましくは、熱膨張性層状無機物を含む耐火材料から形成されて、反対向きの一方面と他方面を有する耐火体をさらに備え、前記クッション体は、前記本体の他方面が前記耐火体の一方面に接合されており、前記耐火体や前記本体が環状に曲がり、前記耐火体の他方面が環状の外側面となるように、前記耐火体や前記クッション体を撓ませた状態で、前記耐火体や前記クッション体が前記隙間に配置され、前記耐火体や前記クッション体が前記隙間に配置された状態では、前記隙間の外周側に前記耐火体が位置し、前記隙間の内周側に前記クッション体が位置する。
本発明の第3観点に係る成形方法は、前記第1観点及び第2観点に係る防火材を、押し出し成形で成形する。
本発明の防火材によれば、簡易な作業で防火材を貫通孔に設置できるので、防火材を貫通孔に設置する施工に長い時間を要しない。また、貫通孔の内周面と挿通物との間の隙間を埋めることができるので、貫通孔を通じて火災が伝搬することを防止できる。また本発明の成形方法によれば、防火材が押し出し成形で成形されるので、防火材の長さを任意に調整できる。このため、あらゆる径の貫通孔に設置可能な防火材を製造できる。
本発明の第1実施形態に係る防火材を示す斜視図である。 図1のa−a線断面図である。 第1実施形態の防火材の底面図である。 図4(a)は、第1実施形態の防火材が設置される区画体の貫通孔を示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)のb−b線断面図である。 図5(a)は、第1実施形態の防火材を区画体の貫通孔に設置した状態を示す斜視図であり、図5(b)は、図5(a)のc−c線断面図である。 図5(a)のd−d線断面図である。 図7(a)は、係合体や耐火体やクッション体を撓ませる初期の段階を示す斜視図であり、図7(b)は、係合体や耐火体やクッション体を環状に撓ませた後の状態を示す斜視図である。 第1実施形態の防火材を区画体の貫通孔に設置する手順を示す斜視図である。 本発明の第2実施形態に係る防火材を示す斜視図である。 図9のe−e線断面図である。 第2実施形態の防火材の底面図である。 図12(a)は、第2実施形態の防火材を区画体の貫通孔に設置した状態を示す斜視図であり、図12(b)は、図12(a)のf−f線断面図である。 図12(a)のg−g線断面図である。 図14(a)は、係合体や耐火体やクッション体を撓ませる初期の段階を示す斜視図であり、図14(b)は、係合体や耐火体やクッション体を環状に撓ませた後の状態を示す斜視図である。 本発明の第3実施形態に係る防火材を示す斜視図である。 図15のh−h線断面図である。 第3実施形態の防火材の底面図である。 図18(a)は、第3実施形態の防火材を区画体の貫通孔に設置した状態を示す斜視図であり、図18(b)は、図18(a)のi−i線断面図である。 図18(a)のj−j線断面図である。 図20(a)は、係合体や耐火体やクッション体を撓ませる初期の段階を示す斜視図であり、図20(b)は、係合体や耐火体やクッション体を環状に撓ませた後の状態を示す斜視図である。 本発明の第4実施形態に係る防火材を示す斜視図である。 第4実施形態の防火材を区画体の貫通孔に設置した状態を示す斜視図である。 図22のk−k線断面図である。 貫通孔に挿通される挿通物の外周に、従来の発泡体が巻き付けられる状態を示す断面図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお本発明において、シート材や耐火材や本体の縦方向とは、シート材や耐火材や本体に沿う任意の一つの方向を意味する。また、シート材や耐火材や本体の横方向とは、シート材や耐火材や本体の縦方向と直交する方向であって、シート材や耐火材や本体に沿う方向を意味する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る防火材1を示す斜視図である。図2は、図1のa−a線断面図であり、防火材1の横断面を示す。図3は、第1実施形態の防火材1の底面図である。図4(a)は、第1実施形態の防火材1が設置される区画体2の貫通孔3を示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)のb−b線断面図である。図5(a)は、第1実施形態の防火材1を区画体2の貫通孔3に設置した状態を示す斜視図であり、図5(b)は、図5(a)のc−c線断面図である。図6は、図5(a)のd−d線断面図である。
第1実施形態の防火材1は、区画体2の貫通孔3の内周面3a(図4)と、貫通孔3に挿通される挿通物4(図5)との間の隙間を埋めるために、貫通孔3に設置されるものである。
図4や図5に示すように、区画体2は、上下方向に延びる壁であり、防火区画A,Aを区画する。区画体2は、例えば、石膏ボードや、軽量気泡コンクリート(ALC)や、モルタルから形成される。本実施形態では、区画体2には円形の貫通孔3が形成されており、貫通孔3には2つの挿通物4A,4Bが挿通される。挿通物4A,4Bは、例えば、ケーブルや電線管や給排水管や冷媒管等である。
図1や図2に示すように、防火材1は、係合体5と、耐火体6と、クッション体7とを備える。
係合体5には、シート材8と、一対の第1鍔部9,9と、一対の第2鍔部10,10とが設けられる。シート材8は、反対向きの一方面8aと他方面8bを有するものであり(図2)、シート材8の縦方向の長さは、貫通孔3の内周長と略一致する。第1鍔部9,9は、シート材8の一方面8aの横方向両側縁から突出するものであり、シート材8の縦方向に延びて、シート材8と略同一の長さを有する。第1鍔部9,9のそれぞれの先端には、複数のスリット20が縦方向に間隔をあけて形成される。第2鍔部10,10は、シート材8の他方面8bの横方向両縁から突出するものであり、シート材8の縦方向に延びて、シート材8と略同一の長さを有する。第2鍔部10,10の間隔Hは、貫通孔3の奥行き長さ(区画体2の厚さ)に略一致する。第2鍔部10,10のそれぞれの先端には、複数のスリット21が縦方向に間隔をあけて形成される。
係合体5を構成するシート材8や第1鍔部9,9や第2鍔部10,10は、可撓性を有するゴム、プラスチック、或いは熱膨張性黒鉛を材料とするものであり、一体に成形される。
熱膨張性黒鉛は、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたもので、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。このように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、さらにアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和したものを使用するのが好ましい。
熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュより小さくなると、黒鉛の膨張度が小さく、十分な膨張断熱層が得られず、また粒度が20メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいという利点はあるが、樹脂に配合する際に分散性が悪くなり、物性の低下が避けられない。熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」、GRAFTECH社製「GRAFGUARD」等が挙げられる。
図1や図2に示すように、耐火体6は、断面矩形状を呈するものであって、反対向きの一方面6aと他方面6bを有し(図2)、一方面6aにクッション体7が接合されている。耐火体6は、シート材8と略同一の長さを有しており、縦方向をシート材8の縦方向に一致させた状態で、第1鍔部9,9の間に配置されて、他方面6bがシート材8の一方面8aに接合されている。
耐火体6は、可撓性を有する金属や耐火樹脂、或いはそれらの複合材等の任意の耐火材料から形成される。
耐火樹脂は、樹脂成分や無機充填材や熱膨張性層状無機物(特には熱膨張性黒鉛)含むものである。
上記の樹脂成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム物質、およびそれらの組み合わせが挙げられる。ゴム物質は、貫通孔3に本発明の防火材1を弾装接続できるため好ましい。
上記の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂類が挙げられる。
上記の熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等が挙げられる。
上記のゴム物質としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
これらの合成樹脂類及び/又はゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。これらの合成樹脂類及び/又はゴム物質の中でも、柔軟でゴム的性質を持っているものが好ましい。この様な性質を持つものは無機充填材を高充填することが可能であり、得られる樹脂組成物が柔軟で扱い易いものとなる。より柔軟で扱い易い樹脂組成物を得るためには、ブチル等の非加硫ゴムやポリエチレン系樹脂が好適に用いられる。代わりに、樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
上記の熱膨張性層状無機物は、加熱時に膨張するものであるが、かかる熱膨張性層状無機物に特に限定はなく、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等を挙げることができる。熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和してもよい。熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュより大きいと、黒鉛の膨張度が膨張断熱層が得るのに十分であり、また粒度が20メッシュより小さいと、樹脂に配合する際の分散性が良く、物性が良好である。熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」、GRAFTECH社製「GRAFGUARD」等が挙げられる。
無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩等が挙げられる。
また、無機充填剤としては、これらの他に、硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」(商品名)、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
無機充填剤の粒径としては、0.5〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜50μmである。無機充填剤は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、0.5μm以上であると、分散性が良好である。添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることで樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、粒径の大きいものが好ましいが、100μm以下の粒径が成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性の点で望ましい。
無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウムでは、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)、粒径25μmの「B325」(ALCOA社製)、炭酸カルシウムでは、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工業社製)等が挙げられる。
なお、耐火体6を構成する樹脂組成物は、膨張断熱層の強度を増加させ防火性能を向上させるために、前記の各成分に加えて、さらにリン化合物や難燃剤(添加剤とも言う。耐火性樹脂に使用される公知の任意の難燃剤)等を含むものであってよい。
上記のリン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム類、及び、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コスト等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
Figure 0006616693
化学式(1)中、R1及びR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、または、炭素数6〜16のアリール基を表す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、または、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。ポリリン酸アンモニウム類としては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取り扱い性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR CROS 484」、「FR CROS 487」等が挙げられる。
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
難燃剤(添加剤)は、例えば、赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む。
また、耐火体6を構成する樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂成分100重量部に対し、前記熱膨張性層状無機物を10〜350重量部及び前記無機充填材を30〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。
また、前記熱膨張性層状無機物および前記無機充填材の合計は、樹脂成分100重量部に対し、50〜600重量部の範囲が好ましい。
かかる樹脂組成物は加熱によって膨張し耐火断熱層を形成する。この配合によれば、耐火体6は火災等の加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する残渣を形成することもでき、安定した防火性能を達成することができる。
前記樹脂組成物における熱膨張性層状無機物及び無機充填材の合計量は、50重量部以上では燃焼後の残渣量を満足して十分な耐火性能が得られ、600重量部以下であると機械的物性が維持される。
さらに耐火体6を構成する樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂、成型補助材等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
耐火体6は市販品として入手可能であり、例えば、住友スリーエム社製のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーミキュライトを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)、積水化学工業社製フィブロック等の熱膨張性耐火材等も挙げられる。
耐火体6は、火災時などの高温にさらされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度があるものであることが好ましく、50kW/mの加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3〜50倍のものであればさらに好ましい。前記体積膨張率が3倍以上であると、膨張体積が前記樹脂成分の焼失部分を十分に埋めることができ、また50倍以下であると、膨張層の強度が維持され、火炎の貫通を防止する効果が保たれる。
また、防火材1の成形を容易とするために、耐火体6を構成する樹脂組成物に、自己粘着性を有する熱膨張性黒鉛或いはブチルゴム等を含ませることが好ましい。このようにすれば、耐火体6の自己粘着性で、耐火体6を係合体5やクッション体7に接合できる。なお、耐火体6は自己粘着性を有しないものであってよい。この場合、シート材8やクッション体7に塗布した粘着層に耐火体6を重ね合わせることや、接着剤を用いることで、耐火体6に係合体5やクッション体7が接合される。
図1〜図3に示すように、クッション体7は、本体23と、ヒダ片24とを備える。本体23は、断面矩形状を呈しており、反対向きの一方面23a及び他方面23bを有し(図2)、一方面23aからヒダ片24が突出している。ヒダ片24は、本体23の一方面23aに複数形成されるものであり、本実施形態では、4つのヒダ片24A,24B,24C,24Dを一方面23aに形成する例を示している。
図1〜図3に示すように、ヒダ片24A,24B,24C,24Dは、本体23の縦方向に延びる突条体である。ヒダ片24A,24B,24C,24Dの位置や長さは、本体23の横方向に延びる任意の線上にいずれかのヒダ片24が存在するように、調整されている(例えば、図3に示すA−A線、B−B線、C−C線は、それぞれ上述した本体23の横方向に延びる線に該当し、A−A線の上にはヒダ片24Dが存在し、B−B線の上にはヒダ片24Cが存在し、C−C線の上にはヒダ片24Aが存在している)。
クッション体7は、本体23の縦方向をシート材8や耐火体6の縦方向に一致させた状態で、第1鍔部9,9の間に差し込まれており(図1,図2)、本体23の他方面23bが耐火体6の一方面6aに接合されている(図2)。そして、耐火体6の厚さが第1鍔部9,9の高さよりも薄いことで、本体23の一部(図2では本体23の上側部分)が、第1鍔部9,9の間に位置し、本体23の他部(図2では本体23の下側部分)やヒダ片24A,24B,24C,24Dが、第1鍔部9,9の間から延び出ている。
上記のクッション体7は、ウレタンフォームから形成される。このウレタンフォームは、例えばポリオールとポリイソシアネートとを主成分とし、触媒、整泡剤、発泡剤等などを混合し樹脂化させながら発泡させたものであって、連続気泡があることで柔らかく、復元力を有するものである。発泡倍率は、通常約5〜約100倍であるが、これに限定されない。なお、ウレタンフォームに公知の難燃剤を含ませることで、クッション体7を不燃性としてもよい。
上述した係合体5や耐火体6やクッション体7から構成される防火材1は、鋳造や押し出し成形で成形できる。
鋳造は、上述した係合体5や耐火体6やクッション体7を形成する材料の溶融物を、金型のキャビティ内に投入して冷却固化させることで、防火材1を成形するものである。
押し出し成形は、上述した係合体5や耐火体6やクッション体7を形成する材料の溶融物を、押し出し成型機に投入して、係合体5や耐火体6やクッション体7を成形するものである。押し出し成型機は、係合体5や耐火体6やクッション体7の断面形状に対応する孔を備えており、係合体5や耐火体6やクッション体7の材料の溶融物を、前記孔から押し出すことで、係合体5や耐火体6やクッション体7を成形する。耐火体6を形成する材料に、自己粘着性を有する熱膨張性黒鉛或いはブチルゴム等が含まれる場合には、押し出し成形の際に、耐火体6を、係合体5のシート材8やクッション体7の本体23に密着させることで、係合体5と耐火体6とクッション体7とを一体成形できる。
なお上記の鋳造や押し出し成形で防火材1が成形される場合には、成形された第1鍔部9,9や第2鍔部10,10の先端にカッターの刃を押し当てること等により、スリット20やスリット21が形成される。また、本体23とヒダ片24A,24B,24C,24Dとを一体に鋳造することや、本体23を成形した後に本体23の一方面23aにヒダ片24A,24B,24C,24Dを貼り付けることにより、本体23とヒダ片24A,24B,24C,24Dとを備えるクッション体7が形成される。
そして本実施形態の防火材1は、上述した係合体5や耐火体6やクッション体7の材料が可撓性を有することで、図7に示すように、シート材8や耐火体6や本体23の縦方向が環状に曲がり、且つ、シート材8の他方面8bが環状の外側面となるように、係合体5や耐火体6やクッション体7を撓ませることができる(図7(a)は、係合体5や耐火体6やクッション体7を撓ませる初期の段階を示し、図7(b)は、係合体5や耐火体6やクッション体7を環状に撓ませた後の状態を示す)。
図8は、第1実施形態の防火材1を区画体2の貫通孔3に設置する手順を示す斜視図である。防火材1を貫通孔3に設置する際には、まず、図8(a)に示すように貫通孔3に挿通物4A,4Bを挿通する。ついで、図7(b)に示したように防火材1(係合体5や耐火体6やクッション体7)を環状に撓ませた状態で、第2鍔部10,10の間に貫通孔3の周縁を挟み込んで、シート材8の他方面8bを貫通孔3の内周面3aに沿わせる作業が行われる(図8(b)→図8(c))。
或いは上記とは逆に、防火材1を環状に撓ませて貫通孔3に設置する作業(係合体5や耐火体6やクッション体7を環状に撓ませた状態で、第2鍔部10,10の間に貫通孔3の周縁を挟み込み、シート材8の他方面8aを貫通孔3の内周面3aに沿わせる作業)を行った後、防火材1の環の内側に挿通物4A,4Bを挿通させてもよい。
以上の作業が行われることで、図5や図6に示すように、係合体5や耐火体6やクッション体7が、貫通孔3の内周面3aと挿通物4A,4Bとの間の隙間に配置された状態になる。この状態では、第2鍔部10,10の挟み込みにより係合体5が貫通孔3の周縁に係合している。また、貫通孔3の内周面3aと挿通物4A,4Bとの間の隙間の外周側にシート材8が位置し、前記隙間の内周側にクッション体7が位置し、シート材8とクッション体7との間に耐火体6が位置する。また図6に示すように、貫通孔3の正面視では、係合体5のシート材8や、耐火体6や、クッション体7の本体23が、貫通孔3の内周面と挿通物4A,4Bとの間の隙間の全周に延びている。これは、シート材8や耐火体6や本体23の縦方向の長さが、貫通孔3の内周長と一致することによる。また、貫通孔3の正面視では、本体23の内側の全周にヒダ片24が存在している。これは、図3に示したように、本体23の横方向に延びる任意の線上にいずれかのヒダ片24A,24B,24C,24Dが存在するよう、各ヒダ片24A,24B,24C,24Dの位置や長さが調整されていることによる。なお貫通孔3に設置された防火材1は、係合体5・耐火体6・クッション体7が環状に撓むことで生じる外向きの拡張力によって固定される。
本実施形態の防火材1によれば、係合体5や耐火体6やクッション体7を環状に撓ませた状態で、第2鍔部10,10の間に貫通孔3の周縁を挟み込み、シート材8の他方面8bを貫通孔3の内周面3aに沿わせる簡易な作業を行うことで、貫通孔3に設置できる。このため、貫通孔3に設置する施工に長い時間を要しない。
また第1鍔部9,9や第2鍔部10,10にスリット20やスリット21が形成されていることで、容易に係合体5を環状に撓ませることができる。これにより、防火材1を貫通孔3に設置する作業を円滑に行うことができる。
また、防火材1(係合体5や耐火体6やクッション体7)の縦方向の長さを適宜調整することで、あらゆる径の貫通孔3に設置できる。また、防火材1を押し出し成形で成形する場合には、防火材1の縦方向の長さを任意に調整できるので、あらゆる径の貫通孔3に設置可能な防火材1を製造できる。
また、第2鍔部10,10の間隔H(図2)を調整することで、あらゆる奥行き長さの貫通孔3に防火材1を設置できる。
また防火材1が貫通孔3に設置された状態では、シート材8や耐火体6が、貫通孔3の内周面と挿通物4A,4Bとの間の隙間の全周に延びることで、火災の発生時には、シート材8や耐火体6の熱膨張が、前記隙間の全周に生じる。さらに防火材1を貫通孔3に設置した際にクッション体7がつぶれるようにクッション体7の厚さを調整しておけば、前記隙間の全周に延びるクッション体7が挿通物4A,4Bの外周に強く密着して、ヒダ片24A,24B,24C,24Dが挿通物4A,4Bの近傍の隙間を埋める。以上のことから第1実施形態の防火材1によれば、貫通孔3の内周面3aと挿通物4A,4Bとの間の隙間を埋めることができるので、貫通孔3を通じて、防火区画A,A(図4(b))の一方から他方に火災が伝搬することを防止できる。
また、第2鍔部10,10の挟み込みで係合体5が貫通孔3の周縁に係合することで、防火材1が貫通孔3から外れることが防止される。
また耐火体6やクッション体7の一部(図2に示す本体23の上側部分)が第1鍔部9,9の間に配置されていることで、耐火体6やクッション体7に外力が加えられることで、耐火体6やクッション体7が防火材1から分離して貫通孔3から抜け出ることを防止できる。これにより、耐火体6やクッション体7により貫通孔3の閉塞性を高めることを維持できる。
次に、本発明の他の実施形態を説明する。なお以下では、説明の重複を避けるため、以下に示す実施形態では、上述した第1実施形態との相違点を説明し、共通点については図面に同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
<第2実施形態>
図9は、本発明の第2実施形態に係る防火材1を示す斜視図である。図10は、図9のe−e線断面図であり、防火材30の横断面を示す。図11は、第2実施形態の防火材30の底面図である。図12(a)は、第2実施形態の防火材30を区画体2の貫通孔3に設置した状態を示す斜視図であり、図12(b)は、図12(a)のf−f線断面図である。図13は、図12(a)のg−g線断面図である。
第2実施形態の防火材30は、ヒダ片24が第1実施形態と相違するものであり、ヒダ片24が、本体23の縦方向の全幅に延びるものとされている(図9〜図11)。
第2実施形態の防火材30を貫通孔3に設置する際には、第1実施形態の防火材1と同様、シート材8や耐火体6や本体23の縦方向が環状に曲がり、且つ、シート材8の他方面8bが環状の外側面となるように、係合体5や耐火体6やクッション体7を撓ませた状態で、第2鍔部10,10の間に貫通孔3の周縁を挟み込んで、シート材8の他方面8bを貫通孔3の内周面に沿わせる作業が行われる(図14(a)は、係合体5や耐火体6やクッション体7を撓ませる初期の段階を示し、図14(b)は、係合体5や耐火体6やクッション体7を環状に撓ませた後の状態を示す)。
そして防火材30が貫通孔3に設置された状態では、図13に示すように、貫通孔3の正面視において、本体23の内側の全周にヒダ片24が存在している。これは、ヒダ片24が本体23の縦方向の全幅に延びていることによる。
第2実施形態の防火材30によれば、本体23の内側の全周に延びる一連のヒダ片24が、挿通物4A,4Bの外周回りを囲んで、挿通物4A,4Bの近傍の隙間を埋める。これにより、貫通孔3を通じて火災が伝搬することを確実に防止できる。
<第3実施形態>
図15は、本発明の第3実施形態に係る防火材40を示す斜視図である。図16は、図15のh−h線断面図であり、防火材40の横断面を示す。図17は、第3実施形態の防火材40の底面図である。図18(a)は、第3実施形態の防火材40を区画体2の貫通孔3に設置した状態を示す斜視図であり、図18(b)は、図18(a)のi−i線断面図である。図19は、図18(a)のj−j線断面図である。
第3実施形態の防火材40も、ヒダ片24が第1実施形態と相違するものであり、ヒダ片24の形状が錐状とされている。ヒダ片24は、本体23の一方面23aに複数形成されており、本体23の一方面23aの全体に分布している。これらのヒダ片24は、本体23と一体に鋳造されたり、本体23の成形後に本体23の一方面23aに貼り付けられるものである。
第3実施形態の防火材40を貫通孔3に設置する際には、第1実施形態の防火材1と同様、シート材8や耐火体6や本体23の縦方向が環状に曲がり、且つ、シート材8の他方面8bが環状の外側面となるように、係合体5や耐火体6やクッション体7を撓ませた状態で、第2鍔部10,10の間に貫通孔3の周縁を挟み込んで、シート材8の他方面8bを貫通孔3の内周面3aに沿わせる作業が行われる(図20(a)は、係合体5や耐火体6やクッション体7を撓ませる初期の段階を示し、図20(b)は、係合体5や耐火体6やクッション体7を環状に撓ませた後の状態を示す)。
クッション体7が隙間に配置された状態では、図19に示すように、貫通孔3の正面視において、本体23の内周の全周にヒダ片24が存在している。これは、ヒダ片24が本体23の一方面23aの全体に分布していることによる。
第3実施形態の防火材40によれば、上述のように錐状のヒダ片24を本体23の内周の全周に存在させることができるので、挿通物4Aと挿通物4Bとの間にある狭い隙間(凹み)にヒダ片24を入り込ませることができる。これにより、貫通孔3の閉塞性を高めることができるので、貫通孔3を通じて防火区画A,Aの一方から他方に火災が伝搬することを確実に防止できる。
<第4実施形態>
図21は、本発明の第4実施形態に係る防火材50を示す斜視図である。図22は、第4実施形態の防火材50を区画体2の貫通孔3に設置した状態を示す斜視図である。図23は、図22のk−k線断面図である。
第4実施形態の防火材50では、図1,図9,図15に示した係合体5が省略されており、防火材50が、耐火体6と、クッション体7とを備えるものとされている。
耐火体6は、第1実施形態に示す樹脂成分や無機充填材や熱膨張性層状無機物を含む耐火材料から形成されるものであり、シート状を呈しており、反対向きの一方面6a及び他方面6bを有する。
クッション体7は、第1実施形態のクッション体と同様の材料から成形されるものである。このクッション体7は、シート状を呈しており、反対向きの一方面7a及び他方面7bを有する。クッション体7は、耐火体6と略同一の長さを有するものであり、耐火体6の一方面6aにクッション体の他方面7bが接合される。
防火材50を貫通孔3に設置する際には、耐火体6やクッション体7の縦方向が螺旋状に曲がり、且つ、耐火体6の他方面6bが螺旋状の外側面となるように、耐火体6やクッション体7を撓ませた状態で、耐火体6の他方面6bを貫通孔3の内周面3aに沿わせる作業が行われる。貫通孔3に設置された防火材50は、耐火体6やクッション体7が螺旋状に撓むことで生じる外向きの拡張力によって固定される。
防火材50が貫通孔3に設置された状態では、図21や図22に示すように、貫通孔3の内周面3aと挿通物4A,4Bとの間の隙間の外周側に耐火体6が位置し、前記隙間の内周側にクッション体7が位置する。また、貫通孔3の正面視では、耐火体6やクッション体7が前記隙間の全周に延びている。これは、耐火体6やクッション体7が螺旋状に撓んで貫通孔3の奥行き方向に延びていることによる。
第4実施形態の防火材50によれば、耐火体6やクッション体7を螺旋状に撓ませた状態で、耐火体6の他方面6bを貫通孔3の内周面3aに沿わせる簡易な作業を行うことで、貫通孔3に設置できる。このため、貫通孔3に設置する施工に長い時間を要しない。
そして防火材50が貫通孔3に設置された状態では、貫通孔3の正面視において、耐火体6やクッション体7が、貫通孔3の内周面3aと挿通物4A,4Bとの間の隙間の全周に延びていることで、防火区画A,Aの一方で火災が生じた場合、耐火体6が熱膨張することや、クッション体7が挿通物4A,4Bに密着することで、貫通孔3の内周面3aと挿通物4A,4Bとの間の隙間を埋めることができる。これにより、貫通孔3を通じて防火区画A,Aの他方に火災が伝搬することが防止される。
また、防火材50の縦方向(耐火体6やクッション体7の縦方向)を螺旋状に撓ませた状態で、防火材50を貫通孔3に設置することで、防火材50の横方向の幅(耐火体6やクッション体7の横方向の幅)が、貫通孔3の奥行き長さよりも短くても、貫通孔3の奥行き方向の閉塞性を高めることができる。
なお図示を省略するが、第4実施形態の防火材50では、クッション体7に、反対向きの一方面及び他方面を有する本体と、本体の一方面から突出するヒダ片とが設けられていてもよい。ヒダ片は、第1実〜第3施形態と同様の形態で、本体の一方面に形成されるものである。以上のようにする場合には、クッション体7の本体の他方面が、耐火体6の一方面に接合される。そして防火材50を貫通孔3に設置する際には、耐火体6や本体が環状に曲がり、耐火体6の他方面が環状の外側面となるように、耐火体6やクッション体7を撓ませた状態で、耐火体6の他方面を貫通孔3の内周面3aに沿わせる作業が行われる。
そして上記の作業により、防火材50が貫通孔3に設置された状態では、貫通孔3の内周面3aと挿通物4A,4Bとの間の隙間の外周側に耐火体6が位置し、前記隙間の内周側にクッション体7が位置する。また貫通孔3の正面視において、耐火体6やクッション体7が、前記隙間の全周に延びており、クッション体7の内側の全周にヒダ片が存在する。
以上のようにすれば、ヒダ片によって挿通物4A,4Bの近傍の隙間を埋めることができるので、貫通孔3を通じて火災が伝搬することをより確実に防止できる。
本発明は、上記の実施形態に限定されず、特許請求の範囲において種々改変することができる。
例えば第1〜第3実施形態の防火材1,30,40(図1,図9,図15)において、係合体5や耐火体6は、いずれか一方が熱膨張性を有していればよい。例えば、係合体5が熱膨張性黒鉛から形成される場合には、耐火体6を形成する耐火材料に、熱膨張性黒鉛等からなる熱膨張性層状無機物は含まれなくてもよい。また、耐火体6を形成する耐火材料に前記熱膨張性層状無機物が含まれる場合には、係合体5は、熱膨張性黒鉛を含まないゴムやプラスチックから形成されてもよい。
また、第1〜第3実施形態の防火材1,30,40において、係合体5に形成されるスリット20,21の数や形状は、係合体5の長さや材料等に応じて任意に設定され得る。
また、第1〜第3実施形態の防火材1,30,40において、係合体5が延び性の高いゴム等から形成される場合には、係合体5を容易に環状に撓ませることができるので、スリット20,21は係合体5に形成されなくてもよい。
また、図1,図9,図15に示す防火材1,30,40では、縦方向の長さが、横方向の長さよりも長くなっているが、これは、貫通孔3の周長が、貫通孔3の奥行き長さ(区画体2の厚さ)よりも長いことによる。貫通孔3の周長が、貫通孔3の奥行き長さ(区画体2の厚さ)よりも短い場合には、防火材1,30,40は、縦方向の長さが、横方向の長さよりも短く設定される。
また第1〜第4実施形態の防火材1,30,40,50(図1,図9,図15,図21)では、係合体5や耐火体6を省略して、クッション体7のみから防火材1,30,40,50が構成されてもよい。この場合、クッション体7を環状或いは螺旋状に撓ませた状態で、クッション体7の外側面を貫通孔3の内周面に沿わせる簡易な作業を行うことで、クッション体7が貫通孔3の内周面3aと挿通物4A,4Bとの間の隙間に配置できる(防火材1,30,40,50を貫通孔3に設置できる)。そして、クッション体7の長さや厚さを適宜調整することで、貫通孔3の正面視において、クッション体7が前記隙間の全周に延びて、挿通物4A,4Bの外周回りに密着した状態とされる。以上のようにしても、防火材1を貫通孔3に設置する施工に長い時間を要しない。また、クッション体7によって貫通孔3の内周面と挿通物4A,4Bとの間の隙間を埋めることができるので、貫通孔3を通じて火災が伝搬することを防止できる。
また第1〜第4実施形態の防火材1,30,40,50が備えるクッション体7は、上述のウレタンフォームに限らず、その他のクッション性を有する材料から形成され得る。また、クッション体7を形成する材料は、不燃性であっても、可燃性であってもよい。係合体5や耐火体6の厚み調整により、クッション体7が挿通物4A,4Bに密着する強さを調整可能である。
また第1〜第4実施形態では、貫通孔3に挿通される挿通物4の本数が2本である例を示したが、挿通物4の本数は、貫通孔3に挿通可能な任意の数とすることができる。
また第1〜第4実施形態では、防火材1,30,40,50を、上下方向に延びる区画体2の貫通孔3に設置する例を示したが(図5,図12,図18,図22)、防火材1,30,40,50は、水平方向に延びる区画体の貫通孔に設置されてもよい。このようにすれば、区画体によって区画される上層階と下層階とのいずれか一方で火災が生じた場合に、他方の階に火災が伝搬することを防止できる。
1,30,40,50 防火材
2 区画体
3 貫通孔
3a 内周面
4A,4B 挿通物
5 係合体
6 耐火体
6a 耐火体の一方面
6b 耐火体の他方面
7 クッション体
8 シート材
8a シート材の一方面
8b シート材の他方面
9 第1鍔部
10 第2鍔部
20,21 スリット
23 本体
23a 本体の一方面
23b 本体の他方面
24,24A,24B,24C,24D ヒダ片

Claims (8)

  1. 区画体に形成される貫通孔の内周面と、前記貫通孔に挿通される挿通物との間の隙間を埋めるために、前記貫通孔に設置される防火材であって、
    環状に撓んだ状態で前記隙間に配置されるクッション体を備え、
    前記クッション体が前記隙間に配置された状態では、前記貫通孔の正面視において、前記クッション体が前記隙間の全周に延び
    前記クッション体は、
    反対向きの一方面及び他方面を有する本体と、
    前記本体の一方面から突出するヒダ片と、
    を有し、
    前記クッション体は、前記本体の縦方向が環状に曲がるとともに前記本体の他方面が環状の外側面となるように撓んだ状態で、前記隙間に配置され、
    前記ヒダ片は、前記本体の縦方向に延びる突条体であり、前記本体の一方面に複数形成されており、
    前記本体の横方向に延びる任意の線上にいずれかの前記ヒダ片が存在するように、各前記ヒダ片の位置や長さが調整されていることで、前記クッション体が前記隙間に配置された状態では、前記貫通孔の正面視において、前記本体の内側の全周に前記ヒダ片が存在する、
    防火材。
  2. 区画体に形成される貫通孔の内周面と、前記貫通孔に挿通される挿通物との間の隙間を埋めるために、前記貫通孔に設置される防火材であって、
    環状に撓んだ状態で前記隙間に配置されるクッション体を備え、
    前記クッション体が前記隙間に配置された状態では、前記貫通孔の正面視において、前記クッション体が前記隙間の全周に延び、
    前記クッション体は、
    反対向きの一方面及び他方面を有する本体と、
    前記本体の一方面から突出するヒダ片と、
    を有し、
    前記クッション体は、前記本体の縦方向が環状に曲がるとともに前記本体の他方面が環状の外側面となるように撓んだ状態で、前記隙間に配置され、
    前記ヒダ片は、前記本体の縦方向に延びる突条体であり、
    前記ヒダ片が、前記本体の縦方向の全幅に延びていることで、前記クッション体が前記隙間に配置された状態では、前記貫通孔の正面視において、前記本体の内側の全周に前記ヒダ片が存在する、
    防火材。
  3. 前記クッション体は、ウレタンフォームから形成される、
    請求項1又は請求項2に記載の防火材。
  4. シート材と、一対の第1鍔部と、一対の第2鍔部とが設けられる係合体をさらに備え、
    前記シート材は、反対向きの一方面と他方面を有し、
    前記一対の第1鍔部は、前記シート材の一方面の横方向両縁から突出するものであって、前記シート材の縦方向に延び、
    前記一対の第2鍔部は、前記シート材の他方面の幅方向両縁から突出するものであって、前記シート材の縦方向に延び、
    前記クッション体は、前記本体の縦方向を前記シート材の縦方向に一致させた状態で、前記本体の一部が前記一対の第1鍔部の間に配置されて、前記本体の他部や前記ヒダ片が前記一対の第1鍔部の間から延び出ており、
    前記シート材や前記本体の縦方向が環状に撓み、前記シート材の他方面が環状の外側面となるように、前記係合体や前記クッション体を曲げた状態で、前記一対の第2鍔部の間に前記貫通孔の周縁を挟み込んで、前記シート材の他方面を前記貫通孔の内周面に沿わせることで、前記係合体や前記クッション体が前記隙間に配置され、
    前記係合体や前記クッション体が前記隙間に配置された状態では、前記一対の第2鍔部の挟み込みによって前記係合体が前記貫通孔の周縁に係合し、前記隙間の外周側に前記シート材が位置し、前記隙間の内周側に前記クッション体が位置する、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の防火材。
  5. 耐火材料から形成されて、反対向きの一方面と他方面を有する耐火体をさらに備え、
    前記クッション体は、前記本体の他方面が前記耐火体の一方面に接合され、
    前記耐火体は、縦方向を前記シート材の縦方向に一致させた状態で、前記一対の第1鍔部の間に配置されて、他方面が前記シート材の一方面に接合されるものであって、
    前記耐火体の厚さが前記第1鍔部の高さよりも薄いことで、前記本体の一部が前記一対の第1鍔部の間に位置し、前記本体の他部や前記ヒダ片が前記一対の第1鍔部の間から延び出ており、
    前記シート材や前記耐火体や前記本体の縦方向が環状に曲がり、前記シート材の他方面が環状の外側面となるように、前記係合体や前記耐火体や前記クッション体を撓ませた状態で、前記一対の第2鍔部の間に前記貫通孔の周縁を挟み込んで、前記シート材の他方面を前記貫通孔の内周面に沿わせることで、前記係合体や前記耐火体や前記クッション体が前記隙間に配置され、
    前記係合体や前記耐火体や前記クッション体が前記隙間に配置された状態では、前記係合体が、前記一対の第2鍔部の挟み込みによって前記貫通孔の周縁に係合し、前記隙間の外周側に前記シート材が位置し、前記隙間の内周側に前記クッション体が位置し、前記シート材と前記クッション体との間に前記耐火体が位置する、
    請求項に記載の防火材。
  6. 前記係合体は、熱膨張性黒鉛から形成される、
    請求項4又は5に記載の防火材。
  7. 前記耐火体は、熱膨張性層状無機物を含む耐火材料から形成される、
    請求項に記載の防火材。
  8. 前記一対の第1鍔部又は前記一対の第2鍔部の先端には、スリットが形成される、
    請求項4〜7のいずれか一項に記載の防火材
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