以下、固定枠に具現化した本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1を参照すると、建築物の区画体の貫通孔に配設可能なスリーブ10が示されている。
明細書において、「建築物」には、一戸建住宅、集合住宅、高層住宅、高層ビル、商業施設、公共施設等の建材;客船、輸送船、連絡船等の船舶;車両;等の構造物が含まれるが、これらに限定されない。また「区画体」には壁、床、天井等が含まれるが、これらに限定されない。
スリーブ10は、中空かつ略円筒形のスリーブ本体12を備え、本実施形態では、スリーブ本体12の断面積はスリーブ本体12の長手方向に沿ってほぼ一定である。スリーブ本体12の内周面により開口部14が区画形成され、開口部14は区画貫通孔19(図3(b)参照)を構成する。開口部14の大きさ(スリーブ本体12の内径)は配管又は配線5の外径よりも大きく、1又は複数の配管又は配線5を挿通できる寸法である。配管には、水道管、冷媒管、熱媒管、ガス管、吸排気管等の各種配管が含まれる。配線には、電力用ケーブル、通信用ケーブル等の各種ケーブル等の各種配線が含まれる。
スリーブ10は熱膨張性の耐火性樹脂材料、非膨張性の耐火性樹脂材料、金属、又はそれらの組み合わせから形成することができる。好ましくは、スリーブ10(及びスリーブ本体12)は、非膨張性の耐火性樹脂材料から形成される。本実施形態では、スリーブ10のスリーブ本体12、リブ12a、ならびに取付部15が同じ非熱膨張性の耐火性樹脂材料から一体成形されている。
またスリーブ10は、スリーブ本体12の外側面にスリーブ本体12と一体成形されたリブ12aを備えており、リブ12aはスリーブ10の軸Aに対して略垂直な方向に環状(円周上)に延びている。リブ12aは、スリーブ10の周囲にコンクリートを流し込んだときにコンクリートから受ける力に対してスリーブ10が耐えられるようスリーブ10を補強する役割を果たす。なお、リブ12aは省略されてもよい。
スリーブ本体12の下端13bには、1つ又は複数(図では4つ)の取付部15が設けられている。取付部15はスリーブ本体12と一体成形されている。取付部15は、図1ではそれぞれスリーブ10の軸Aに関して約90°離間した4つの取付部で示され、各取付部15は、床下地1に対してスリーブ10を固定するための孔16を有する。通常有底矩形の型枠2は、コンクリート3(図3(b)参照)を収容するためのものであり、型枠2内にはコンクリート3の補強用の鉄筋Rが収容される。コンクリート3及び鉄筋Rは床下地1を構成する。
孔16にはスリーブ10を型枠2、鉄筋R、又はコンクリート3等に固定するために針金等の金属線、ボルト、ビス、釘等の固定用部材が通され、本実施形態では、スリーブ10は、金属線等を取付部15の孔16に通し、該金属線の両端を鉄筋R(図1参照)に結び付けることにより、鉄筋Rに対して固定される。なお、任意選択で、固定用部材をスリーブ10から取り外せるように、孔16に固定用部材を外しやすくするためのグリースを付けておいたり、取付部15に作業者が手で力を加えると取付部15の部分が折れて取り外せるようになっていてもよい。
本発明の第1実施形態の固定枠30は、略円筒状の基部31と、基部31と接続し基部31よりも径方向に拡径した略円板状のフランジ部32とを備えている。フランジ部32は、スリーブ本体12よりもスリーブ本体12の軸Aに対して外方に延出している。このため、スリーブ10の周囲に区画体としてのコンクリート3を打設したときに、フランジ部32は区画貫通孔19(図3(b)参照)よりも径方向外方に延出し、スリーブ10の床下への落下が防止される。基部31はコンクリート3内に配置される。
固定枠30は、スリーブ本体12の上端部からスリーブ本体12に嵌め込まれることにより開口部14を上から覆う。固定枠30が開口部14を覆うという場合、開口部14の全面を覆う必要はなく、少なくとも一部を覆っていればよい。
フランジ部32は、配管又は配線5の挿通用の孔36を中央に備えている。配管又は配線5をスリーブ10の孔36に挿通した状態では、配管又は配線5はスリーブ本体12から離間しており、孔36に挿入された配管又は配線5の位置は、孔36を区画形成するフランジ部32の壁により、位置が固定される。このように、固定枠30は、区画貫通孔19に配設される配管又は配線5の移動を防止するよう機能する。
また、固定枠30のフランジ部32が、スリーブ本体12の軸Aに沿って見た場合に、スリーブ本体12よりもスリーブ本体12の軸Aに向かって内方に開口部14の上に延出している。このため、固定枠30はスリーブ本体12の内部が見えないようにする目隠しとしても作用する。さらに、固定枠30でスリーブ10と配管又は配線5との間の隙間を閉塞することにより、火が区画貫通孔19を通り抜けるのを防止することができるとともに、床下からの光又は音の漏れを低減することもできる。
本実施形態では、スリーブ本体12の内周面に、固定枠30の基部33の外周面が対面するように、スリーブ本体12に固定枠30が嵌め込まれる。
図2に示すように、固定枠30は、熱膨張性材料または非熱膨張性材料より形成された外装材33と、外装材33の内側に設けられた、熱膨張性材料より形成された内装材34とを備え、外装材33及び内装材34は射出成形により互いに一体化された一体成形物である。また、固定枠30の底部には配管又は配線5の挿通用の孔35が設けられている。好ましくは、外装材33は、内装材34よりも体積膨張率の低い熱膨張性の耐火性樹脂材料、非膨張性の耐火性樹脂材料、又はそれらの組み合わせから形成される。好ましくは、内装材34は、熱膨張性の耐火性樹脂材料から形成される。このように外装材33及び内装材34を構成することにより、外装材33によって内装材34の強度を保ちつつ、内装材34が火災等の熱により膨張して、固定枠32と配管又は配線5との間の火の通過を防止することができる。外装材33及び内装材34は2色成形により一体成形されているため、固定枠32の製造が容易かつ安価である。また、固定枠32の取り扱いも容易であるため、区画貫通部に簡便に耐火性を付与することができる。なお、体積膨張率とは、ある部材が膨脹して形成される膨張体の体積を、膨脹前の部材の体積で除した値をいう。
本実施形態では、固定枠30の外側、つまり基部31とフランジ部32の外周側が外装材33より構成され、固定枠30の内側、つまり基部31とフランジ部32の内周側が略円筒形の内装材34により構成されている。
外装材33及び内装材34を構成する材料がいずれも耐火性樹脂材料である場合、樹脂成分は同一の樹脂であってもよいし、別の樹脂であってもよい。
固定枠30、外装材33及び内装材34の寸法は、区画貫通孔19の寸法及び配管又は配線5の寸法に応じて適宜決定される。例えば、固定枠30の高さ(固定枠30の軸方向の長さ)は5mm〜150mm、軸方向に対して垂直な固定枠30の最大幅(固定枠30が円筒状部材の場合、最大の直径)は30mm〜300mmであるが、これに限定されない。
固定枠30の外装材33(外装材33が熱膨張性の耐火性樹脂材料から構成される場合)及び内装材34を構成する熱膨張性の耐火性樹脂材料は、樹脂成分に熱膨張性層状無機物と、任意選択で無機充填剤とを含む樹脂組成物である。好ましくは、内装材34は、樹脂成分に熱膨張性層状無機物として熱膨張性黒鉛を含む。この場合、スリーブ10及び/又は固定枠30は、樹脂組成物の各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練し、公知の成形方法で成形することにより得ることができる。
樹脂成分としては、公知の樹脂成分を広く使用でき、例えば、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂等の合成樹脂、ゴム物質、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。
ゴム物質としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
これらの合成樹脂及び/又はゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
これらの合成樹脂及び/又はゴム物質の中でも、難燃性の点ではポリ塩化ビニル又は塩素化ポリ塩化ビニルが好ましい。より柔軟で扱い易い樹脂組成物を得るためには、ブチル等の非加硫ゴム及びポリエチレン樹脂が好ましい。樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
熱膨張性層状無機物は加熱時に膨張する物質である。かかる熱膨張性層状無機物に特に限定はなく、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等を挙げることができる。熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。耐火性樹脂組成物の体積膨張率は、熱膨張性層状無機物の含有量を調整することにより当業者には変更可能である。
無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いることができるし、2種以上を併用することもできる。
さらに、上記樹脂組成物は、膨張断熱層の強度を増加させ防火性能を向上させるために、前記の各成分に加えて、リン化合物を含んでもよい。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。
化学式(1)中、R1及びR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、n−プロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。
上記樹脂組成物は、樹脂成分100重量部に対し、前記熱膨張性層状無機物を10〜350重量部及び前記無機充填剤を30〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。
また、前記熱膨張性層状無機物及び前記無機充填剤の合計は、樹脂成分100重量部に対し、50〜600重量部の範囲が好ましい。
かかる樹脂組成物は加熱によって膨張し耐火断熱層を形成する。この配合によれば、前記熱膨張性耐火材は火災等の加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する残渣を形成することもでき、安定した防火性能を達成することができる。耐火性樹脂材料は、火災時などの高温にさらされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度がある材料である。
上記樹脂組成物における熱膨張性層状無機物及び無機充填剤の合計量は、50重量部以上では燃焼後の残渣量を満足して十分な耐火性能が得られ、600重量部以下であると機械的物性が維持される。
上記樹脂組成物はさらに可塑剤を含有してもよい。可塑剤は、一般にポリ塩化ビニル樹脂成形体を製造する際に使用されている可塑剤であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、
ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、
ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル可塑剤、
エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、
アジピン酸エステル、アジピン酸ポリエステル等のポリエステル可塑剤、
トリー2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤、
トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、リン酸と陸レジル(TCP)等の燐酸エステル可塑剤、
鉱油等のプロセスオイルなどが挙げられる。なお、可塑剤には上記のリン化合物は含まれない。前記可塑剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
前記可塑剤の添加量は、少なくなると押出成形性が低下する傾向があり、多くなると得られた成形体が柔らかくなり過ぎる傾向がある。このため可塑剤の添加量は、限定されないが、前記樹脂成分100重量部に対して、可塑剤の添加量は20〜200重量部の範囲であることが好ましい。
さらに本発明に使用する上記樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂、成型補助材等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
スリーブ10(スリーブ10が非膨張性の耐火性樹脂材料から構成される場合)及び/又は固定枠30の外装材33(外装材33が非膨張性の耐火性樹脂材料から構成される場合)を構成する非膨張性の耐火性樹脂材料は、樹脂成分に、任意選択で無機充填剤を含む樹脂組成物である。好ましくは、スリーブ10は塩化ビニル樹脂、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリエチレン樹脂、又はゴムを含む樹脂組成物から構成され、外装材33はスリーブ10と同一又は異なる塩化ビニル樹脂、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリエチレン樹脂、又はゴムを含む樹脂組成物から構成される。この場合、スリーブ10及び/又は固定枠30は、樹脂組成物の各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練し、公知の成形方法で成形することにより得ることができる。
樹脂成分としては、公知の樹脂成分を広く使用でき、例えば、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂等の合成樹脂、ゴム物質、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。
ゴム物質としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
これらの合成樹脂及び/又はゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
これらの合成樹脂及び/又はゴム物質の中でも、難燃性の点ではポリ塩化ビニル又は塩素化ポリ塩化ビニルが好ましい。より柔軟で扱い易い樹脂組成物を得るためには、ブチル等の非加硫ゴム及びポリエチレン系樹脂が好ましい。樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルーン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルーン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いることができるし、2種以上を併用することもできる。
樹脂組成物は、樹脂成分100重量部に対し、無機充填剤を30〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。
スリーブ10が金属により構成される場合、そのような金属は特に限定されないが、例えば鋼等が挙げられる。
次に、図3(a)〜(d)を参照しながら、固定枠30を用いた建築物の区画貫通部の耐火構造の施工方法について説明する。
図3(a)に示すように、スリーブ10を床下地1に固定する。スリーブ10の床下地1への固定は、例えばボルト18をスリーブ10の下端13bの取付部15の孔16を通って床下地1の中までねじ込むことによりなされる。型枠2の底部のスリーブ10に対応する位置には、配管又は配線5(図3(c)参照)を挿通するための穴を空けておく。
次に、図3(b)に示すように、コンクリート3を床下地1へ流し込み、固定枠30をスリーブ10に嵌め込む。固定枠30はスリーブ10に対して着脱可能とすることもできるし、図示しないねじ等の固定部材によりスリーブ10又はコンクリート3に固定することもできる。この図ではコンクリート3の厚みすなわち高さHは、スリーブ本体12の下端13bからスリーブ本体の上端13aまでの距離に等しい。このようにして、スリーブ10の内側の開口部14を残し、スリーブ10の外側周囲にコンクリート3が打設され、区画貫通部の耐火構造100が完成する。スリーブ10の内側の開口部14は区画貫通孔19として機能する。
次に、図3(c)に示すように、スリーブ10の中及び固定枠30の孔35を通りコンクリート3を貫通するように、区画貫通孔19を通って1又は複数の配管又は配線5を施す。固定枠30は、スリーブ10と配管又は配線5の間の空間20を覆っている。例えば図3(c)において、区画貫通部の耐火構造100の階下において矢印の方向から火災が発生した場合、図3(d)に示すように、固定枠30の内装材32が火災の熱により膨張して固定枠30と配管又は配線5との間の隙間を埋め、火の進路を塞ぐ。このようにして、スリーブ10は、コンクリート3の打設を容易にするのみならず、耐火性を発揮し、区画貫通部の耐火構造100に耐火性を付与する。
このように、本実施形態の一体成形の固定枠30を用いて、安価かつ簡便に区画貫通部の耐火構造100を施工することができる。
次に、本発明の第2実施形態の固定枠について説明する。なお、第1実施形態と同じ符号については説明を省略する。
図4を参照すると、第2実施形態の固定枠30では、固定枠30の全長にわたって固定枠30の軸Bに沿ってスリット37が設けられている。このため、スリット37の両側を把持して固定枠30を弾性的に開くことができる。第2実施形態の固定枠30を用いた場合、図3(b),(c)において、区画貫通孔19を通って1又は複数の配管又は配線5を施した後で、固定枠30をスリット37の位置で開いて配管又は配線5の周囲に配置し、スリーブ10に嵌め込むこともできる。
次に、本発明の第3実施形態の固定枠30について説明する。なお、第1実施形態と同じ符号については説明を省略する。
図5を参照すると、第3実施形態の固定枠30では、第1実施形態の固定枠30の基部31とフランジ部32の構成の代わりに、基部31が一端(上端)から他端(下端)に向かってテーパ状となっており、基部31が外装材33及び内装材34を備えている。内装材34における外装材33と接触する面は外装材33の形状に適合して傾斜しているが、内装材34における内周面は、配管又は配線5を支持すべく、固定枠30の軸Bと略平行である。固定枠30の径が大きい方の端(上端)の直径又は長さLは、スリーブ10のスリーブ本体12の内径と通常同じであるか、又はそれよりも大きい。このような固定枠30によっても区画貫通孔19に耐火性の機能を付与することができる。
次に、本発明の第4実施形態の固定枠30について説明する。
図6を参照すると、第4実施形態の固定枠30は、基部31とフランジ部32とを有し、基部31が一端(上端)から他端(下端)に向かってテーパ状となっている。固定枠30の外周側には非熱膨張性材料より形成された外装材33が設けられ、内周側には熱膨張性材料より形成された内装材34が設けられている。外装材33及び内装材34は基部31とフランジ部32に跨り、いずれも固定枠30の高さ方向(上下方向)の全長に延びている。内装材34における内周面は、配管又は配線5を支持すべく、固定枠30の軸B(図5参照)と略平行である。基部31の下端の長さ(すなわち固定枠30の軸に対し垂直な方向における厚み)をL1とし、基部31の上端の長さをL2とし、内装材34の長さ(すなわち固定枠30の軸に対し垂直な方向における厚み)をL3とし、固定枠30の高さをH1、基部31の高さをH2、内装材34の高さをH3とすると、本実施形態では、H1、外装材33の高さ、H3が等しく、L2>L1である。
L3はL1よりも小さく、例えばL3はL1の半分以下である。このような構成によれば、非熱膨張性材料より形成された外装材33により固定枠30の機械的強度を保持しつつ、内装材34が固定枠30の高さ方向の全長にわたって配管又は配線を支持し、火災等の加熱時には固定枠30の高さ方向の全長にわたって膨張して固定枠30内での火の通り抜けを防止することができる。
次に、本発明の第5実施形態の固定枠30について説明する。
図7を参照すると、第5実施形態の固定枠30は、第4実施形態の固定枠30と同じ基部31及びフランジ部32の外形を有するが、固定枠30の外周側には非熱膨張性材料より形成された外装材33が設けられ、熱膨張性材料より形成された内装材34は、固定枠30の内周側であって、基部31の下端から、基部31の上端よりも低い位置まで設けられている。内装材34の耐火性の点からは、内装材34の長さL3は基部31の下端の長さL1の半分以上の長さであることが好ましいが、半分未満でもよい。内装材34の高さH3は基部31の高さH2の半分以上であることが好ましいが、半分未満でもよい。このような構成によれば、非熱膨張性材料より形成された外装材33により固定枠30の機械的強度を保持しつつ、外装材33と内装材34が固定枠30の高さ方向に沿って配管又は配線を支持し、火災等の加熱時には内装材34が膨張して固定枠30内での火の通り抜けを防止することができる。
次に、本発明の第6実施形態のスリーブについて説明する。なお、第1実施形態と同じ符号については説明を省略する。
図8を参照すると、第6実施形態の固定枠30は、第4実施形態の固定枠30と同じ基部31及びフランジ部32の外形を有するが、固定枠30の外周側及び上側には非熱膨張性材料より形成された外装材33が設けられ、固定枠30の内周側の一部及び下側に、熱膨張性材料より形成された内装材34が設けられている。内装材34の長さL3は基部31の下端の長さL1と等しい。また、内装材34の高さH3は基部31の高さH2の半分未満であることが好ましいが、半分以上であってもよい。このような構成によれば、非熱膨張性材料より形成された外装材33により固定枠30の機械的強度を保持しつつ、外装材33と内装材34が固定枠30の高さ方向に沿って配管又は配線を支持し、火災等の加熱時には内装材34が膨張して固定枠30内での火の通り抜けを防止することができる。
次に、本発明の第7実施形態のスリーブについて説明する。なお、第1実施形態と同じ符号については説明を省略する。
図9を参照すると、第7実施形態の固定枠30は、第4実施形態の固定枠30と同じ基部31及びフランジ部32の外形を有し、非熱膨張性材料より形成された外装材33と、熱膨張性材料より形成された内装材34とから構成されている。図8に示した第6実施形態と比較して、内装材34の下端が基部31の下端よりも上方にあり、内装材34は固定枠30の内周面において露出した状態で、外装材33内に埋め込まれている。内装材34の長さL3は好ましくは基部31の下端の長さL1とほぼ等しいが、それより短くても長くてもよく、通常、基部31の下端の長さL1の0.5〜1.5倍である。また、内装材34の高さH3は基部31の高さH2の半分未満であることが好ましいが、半分以上であってもよい。このような構成によれば、非熱膨張性材料より形成された外装材33により固定枠30の機械的強度を保持しつつ、外装材33と内装材34が固定枠30の高さ方向に沿って配管又は配線を支持し、火災等の加熱時には内装材34が膨張して固定枠30内での火の通り抜けを防止することができる。
次に、本発明の第8実施形態のスリーブについて説明する。なお、第1実施形態と同じ符号については説明を省略する。
図10を参照すると、第8施形態の固定枠30は、第4実施形態の固定枠30と同じ基部31及びフランジ部32の外形を有し、非熱膨張性材料より形成された外装材33と、熱膨張性材料より形成された内装材34とから構成されており、内装材34の全体が外装材33内に埋め込まれている。内装材34の長さL3は通常、基部31の下端の長さL1の0.5〜1.5倍であり、内装材34の高さH3は基部31の高さH2の半分未満であることが好ましいが、半分以上であってもよい。この構成では、内装材34が外から見えないため、固定枠30の外観が良好である。このような構成によっても、非熱膨張性材料より形成された外装材33により固定枠30の機械的強度を保持しつつ、外装材33が高さ方向に沿って配管又は配線を支持し、火災等の加熱時には内装材34が膨張して固定枠30内での火の通り抜けを防止することができる。
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
・固定枠30の形状は、第1〜3実施形態の形状に限られない。例えば、区画貫通孔19の断面が略矩形の場合、基部31は断面矩形の筒状部材とし、フランジ32も略矩形の板状部材としてもよい。
・スリーブ本体12の形状も略円筒形に限定されない。例えば、区画貫通孔19の断面が略矩形である場合は、スリーブ本体12は断面略矩形の筒状部材であればよい。
・スリーブ10内におけるスリーブ10と配管又は配線5との間の空間、及び固定枠30と配管又は配線5との間の空間のうちの少なくとも一方には、耐火性を高めるために、充填パテ及び耐火性樹脂からなる充填材料等の公知の耐火充填材料を充填してもよい。
・図3の例では、スリーブ10を設けてから、スリーブ10の周囲にコンクリート3を打設しているが、先に打設されたコンクリート3の区画貫通孔19に、スリーブ10を配置してもよい。
・図6〜10に示した第4〜8実施形態において、固定枠30の基部31の、固定枠30の軸に対し垂直な方向における長さ(厚み)は固定枠30の固定枠30の軸方向に沿って一定としてもよい。
・図6〜10に示した第4〜8実施形態において、外装材33は、非熱膨張性材料より形成する代わりに、内装材34よりも体積膨張率の低い熱膨張性の耐火性樹脂材料より形成してもよい。