JP6894284B2 - 区画貫通構造 - Google Patents

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Description

本発明は、配管及び/又は配線を通すための区画貫通孔がスリーブによって構成された区画貫通構造に関する。
建築物の各階のコンクリート打設床において、配管及び/又は配線を階上から階下又はその逆に通すためには区画貫通構造を形成する必要がある。具体的には、配管及び/又は配線を通すための区画貫通孔をコンクリート等の床または壁体に形成するが、従来、例えば特許文献1に記載されているように、区画貫通孔を形成するために、スリーブと呼ばれる管が使用されていた。スリーブは、コンクリート打設前に型枠に垂直に立てて固定され、スリーブの周囲にコンクリートを打設することで、コンクリート床を造り、スリーブの中空部を区画貫通孔とし、配管及び/又は配線を通していた。
そして近年では、スリーブで構成される区画貫通孔の断熱を図るために、断熱材が使用されている。この断熱材は、ウレタンフォームやポリエチレンフォームから形成されたものである。この断熱材が使用される場合には、コンクリート打設前にスリーブの外周面を覆うように断熱材が配置される。そして、スリーブや断熱材の周囲にコンクリートが打設されることで、断熱材で囲まれた区画貫通孔を有するコンクリート床が形成される。
特開平6-257281号
ところで、コンクリート床に区画貫通孔を形成する場合には、区画貫通孔を通じて火災が伝播する虞がある。スリーブで区画貫通孔を構成する場合には、上記の火災の伝搬を防止するために、スリーブを熱膨張性の耐火樹脂材料から形成することが考えられる。これは、火災の発生後即座に、スリーブに熱膨張を生じさせて、区画貫通孔(スリーブの中空部)を閉塞することを目的とする。
しかしながら、仮に、上記熱膨張性のスリーブを断熱材で覆う場合には、コンクリート床の施工時や、火災の発生時に、スリーブが床から落下する虞がある。
つまりコンクリート床の施工時では、断熱材が脆く、スリーブを固定する断熱材の力が弱いため、型枠を取り外す際に、スリーブが型枠に引っ張られて、スリーブが落下する虞がある。この場合、スリーブが抜けた後のコンクリート床の孔に、スリーブを設置し直すなどの手間を要する。
また火災の発生時には、断熱材が熱変形することで断熱材が落下し、この断熱材と共にスリーブも落下する虞がある。この場合、スリーブの熱膨張で区画貫通孔を閉塞できないため、火災の伝播を防止できない。
本発明の目的は、断熱材と、当該断熱材以外の部材としてのコンクリート又は石膏系材料とから床又は壁体が構成されるとともに、床又は壁体に区画貫通孔が形成される区画貫通構造であって、区画貫通孔を構成する熱膨張性の筒体が落下することを防止可能な区画貫通構造を提供することである。
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
項1.断熱材と、当該断熱材以外の部材としてのコンクリート又は石膏系材料とから構成される床又は壁体と、
前記床又は壁体に区画貫通孔を形成するために前記床又は壁体に設置されるスリーブと、
前記スリーブ内に配置された配管又は配線と、
を備え、
前記スリーブは、
本体部と、当該本体部に連続する拡径部又は縮径部とを有する第1筒体と、
熱膨張性を有し、一方側部分が前記第1筒体の拡径部内に挿入される、或いは、一方側部分内に前記第1筒体の縮径部が挿入される第2筒体と、
前記第1筒体の一方側端、或いは、前記第2筒体の他方側端に連結される位置調整筒体とを備え、
前記区画貫通孔は、前記第1の筒体の内部と、前記第2筒体の内部と、前記位置調整筒体の内部とが連なることで構成され、
前記第2筒体は、外周表面の少なくとも一部の範囲が、前記コンクリート又は石膏系材料によって覆われることを特徴とする、区画貫通構造。
項2.断熱材と、当該断熱材以外の部材としてのコンクリート又は石膏系材料とから構成される床又は壁体と、
前記床又は壁体に区画貫通孔を形成するために前記床又は壁体に設置されるスリーブと、
前記スリーブ内に配置された配管又は配線と、
を備え、
前記スリーブは、
本体部と、当該本体部に連続する拡径部又は縮径部とを有する第1筒体と、
熱膨張性を有し、一方側部分が前記第1筒体の拡径部内に挿入される、或いは、一方側部分内に前記第1筒体の縮径部が挿入される第2筒体と、
本体部と、当該本体部に連続する拡径部又は縮径部とを有し、拡径部内に前記第2筒体の他方側部分が挿入される、或いは、縮径部が前記第2筒体の他方側部分内に挿入される第3筒体と、
前記第1筒体の一方側端、或いは、前記第3筒体の他方側端に連結される位置調整筒体とを備え、
前記区画貫通孔は、前記第1の筒体の内部と、前記第2筒体の内部と、前記第3筒体の内部と、前記位置調整筒体の内部とが連なることで構成され、
前記第2筒体は、外周表面の少なくとも一部の範囲が、前記コンクリート又は石膏系材料によって覆われることを特徴とする、区画貫通構造。
項3.前記位置調整筒体は、複数の単位筒が連結されたものである、項1又は2に記載の区画貫通構造。
項4.前記第2筒体は、外周表面の20%以上の範囲が、前記コンクリート又は石膏系材料によって覆われていることを特徴とする、項1乃至3のいずれかに記載の、区画貫通構造。
項5.前記第2筒体は、外周表面の50%以上の範囲が、前記コンクリート又は石膏系材料によって覆われていることを特徴とする、項1乃至3のいずれかに記載の、区画貫通構造。
項6.前記第2筒体は、外周表面の全体が、前記コンクリート又は石膏系材料によって覆われていることを特徴とする、項1乃至3のいずれかに記載の、区画貫通構造。
本発明によれば、火災が発生した場合、第2筒体が熱膨張して、区画貫通孔が閉塞される。これにより、火災が、区画貫通孔を通じて伝搬することが防止される。そしてさらに本発明によれば、第2筒体の外周表面の少なくとも一部の範囲が、コンクリート又は石膏系材料で覆われていることで、第2筒体の落下が防止されて、第2筒体は、常時、床又は壁体に設置されたものとなる。したがって火災の発生時に、第2筒体の熱膨張で区画貫通孔を確実に閉塞できる。このため、区画貫通孔を通じた火災の伝播を確実に防止できる。
本発明の実施形態に係る区画貫通構造を示す概略断面図である。 配管やスリーブを示す斜視図である。 (a)は第1筒体の上面図であり、(b)は第1筒体の断面図であり、(c)は第1筒体の下面図である。 (a)は単位筒の上面図であり、(b)は単位筒の断面図であり、(c)は単位筒の下面図である。 (a)は第2筒体の上面図であり、(b)は第2筒体の断面図であり、(c)は第2筒体の下面図である。 本発明の実施形態に係る区画貫通構造の施工方法を示す略断面図である。 第2筒体が熱膨張した状態を示す略断面図である。 本発明の変形例に係る区画貫通構造を示す概略断面図である。 本発明の変形例に係る区画貫通構造を示す概略断面図である。 本発明の変形例に係る区画貫通構造を示す概略断面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る区画貫通構造1を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る区画貫通構造1を示す概略断面図である。図2は、後述するスリーブ3を示す分解斜視図であり、区画貫通構造1の施工時の状況を示している。
本実施形態に係る区画貫通構造1は、建築物の床2と、床2に区画貫通孔Tを形成するために床2に設置されるスリーブ3と、スリーブ3内(すなわち区画貫通孔T)に配置された配管13又は配線とを備えている。上記の「建築物」は、例えば、一戸建住宅、集合住宅、高層住宅、高層ビル、商業施設、公共施設等の建材、客船、輸送船、連絡船等の船舶、車両等の構造物であるが、本発明の区画貫通構造1が適用可能な建築物は、上記の例に限定されない。
床2は、水平方向に延びて、上層階と下層階とを区切るものである。床2は、断熱材Dと、断熱材D以外の部材としてのコンクリートCとから構成される。断熱材Dは、例えば、ウレタンフォーム又はポリエチレンフォームである。
スリーブ3は、ボイドとも称されるものであって、第1筒体6と、第2筒体7と、位置調整筒体8とを備えている。スリーブ3は、鉄筋12と共に型枠K内に配置されるものであり(図2)、スリーブ3の下端部を構成する位置調整筒体8は、その周囲が断熱材Dに覆われる(図1)。そして、位置調整筒体8が第1筒体6や第2筒体7を持ち上げる土台として機能することで第1筒体6や第2筒体7は断熱材Dよりも上側に位置しており、第1筒体6は、外周表面の全体がコンクリートCで覆われ、第2筒体7は、外周表面の一部の範囲7aがコンクリートCで覆われる(範囲7aは、第1筒体6から延び出た第2筒体7の外周表面の範囲に相当する)。
上記のスリーブ3では、第1筒体6の内部と第2筒体7の内部と位置調整筒体8の内部とが連なることで、中空部Eが構成される。この中空部Eは、床2の区画貫通孔Tとして機能するものであり、当該区画貫通孔T(中空部E)に配管13又は配線が挿通される。配管13には、水道管、冷媒管、熱媒管、ガス管、吸排気管等の各種配管13が含まれる。配線には、電力用ケーブル、通信用ケーブル等の各種ケーブルが含まれる。
スリーブ3は、火災の発生時に第2筒体7が熱膨張するものであり、この熱膨張によって区画貫通孔T(中空部E)が閉塞されて、区画貫通孔T(中空部E)を通じた火災の伝搬が防止される。以下、スリーブ3が備える構成(第1筒体6・第2筒体7・位置調整筒体8)について詳細に説明する。なお以下では、図1及び図2における上側を一方側と記し、図1及び図2における下側を他方側と記す。
図3(a)は第1筒体6の上面図であり、図3(b)は第1筒体6の断面図であり、図3(c)は第1筒体6の下面図である。
第1筒体6は、非熱膨張性の材料の射出成形品である。第1筒体6は、略円筒状の本体部20と、本体部20と段差部21を介して連続する略円筒状の拡径部22とを備えている(拡径部22は、本体部20よりも内径が大きなものである)。本体部20、段差部21、及び拡径部22は、例えば、同じ非熱膨張性の材料から形成される。上記の非熱膨張性の材料は、例えば、鋼、銅、ステンレス等の金属や、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル等の非熱膨張性の耐火樹脂材料である。なお、第1筒体6を金属等の非熱膨張性材料で形成することで、外部衝撃に対する強度を増大させることができる。
図4(a)は第2筒体7の上面図であり、図4(b)は第2筒体7の断面図であり、図4(c)は第2筒体7の下面図である。
第2筒体7は、略円筒状を呈している。第2筒体7の一方側部分40(上側部分)は、第1筒体6の拡径部22(図1〜図3)に嵌合される。第2筒体7の他方側端(下端)は、位置調整筒体8の一方側端(上端)に連結される。この第2筒体7は、熱膨張性の耐火樹脂材料で形成されている。
上記熱膨張性の耐火樹脂材料は、樹脂成分に熱膨張性層状無機物を含む樹脂組成物である。当該耐火樹脂材料からなる第2筒体7は、樹脂組成物の各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練し、公知の成形方法(射出成形や押出成形など)で成形することにより得ることができる。
樹脂成分としては、公知の樹脂成分を広く使用でき、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム物質、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。
ゴム物質としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
これらの合成樹脂および/またはゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
これらの合成樹脂および/またはゴム物質の中でも、耐寒性、耐熱性、耐油性等の特性を柔軟に調整できる性質を有しているものが好ましい。より柔軟特性で扱い易い樹脂組成物を得るためには、塩ビ系樹脂に可塑剤を加えたものが好適に用いられる。代わりに、樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
熱膨張性層状無機物は加熱時に膨張するものである。かかる熱膨張性層状無機物に特に限定はなく、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等を挙げることができる。熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和してもよい。熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」、ADT社製「ADT−351」「ADT−501」、GRAFTECH社製「GRAFGUARD」等が挙げられる。
前記樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂成分100重量部に対し、前記熱膨張性層状無機物を10〜350重量部の範囲で含むことが好ましい。
熱膨張性耐火材を構成する樹脂組成物は、さらに無機充填剤を含んでもよい。無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩等が挙げられる。また、無機充填剤としては、これらの他に、硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いることができるし、2種以上を併用することもできる。
無機充填剤のうち、水酸化アルミニウムの具体例としては、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)、粒径25μmの「B325」(ALCOA社製)、炭酸カルシウムでは、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工業社製)等が挙げられる。
前記樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂成分100重量部に対し、無機充填材を30〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。
また、前記熱膨張性層状無機物および前記無機充填材の合計は、樹脂成分100重量部に対し、50〜600重量部の範囲が好ましい。
さらに、熱膨張性耐火材を構成する樹脂組成物は、膨張断熱層の強度を増加させ防火性能を向上させるために、前記の各成分に加えて、さらにリン化合物を含んでもよい。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、および、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コスト等の点においてポリリン酸アンモニウムがより好ましい。
Figure 0006894284
化学式(1)中、R1およびR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、炭素数6〜16のアリール基を表す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、または、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。ポリリン酸アンモニウムとしては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取り扱い性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR CROS 484」、「FR CROS 487」等が挙げられる。
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、n−プロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。
かかる樹脂組成物は加熱によって膨張し耐火断熱層を形成する。この配合によれば、前記熱膨張性耐火材は火災等の加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に燃焼残渣を形成することもでき、安定した耐火性能を達成することができる。
さらに前記樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂、成型補助材等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
熱膨張性の耐火樹脂材料は市販品として入手可能であり、例えば、住友スリーエム社製のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーミキュライトとを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛とを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)、積水化学工業社製フィブロック等の熱膨張性耐火材等も挙げられる。
前記熱膨張性耐火材は、火災時などの高温にさらされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度があるものであれば特に限定されない。50kW/m2の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3〜50倍のものであれば好ましい。前記体積膨張率が3倍以上であると、膨張体積が前記樹脂成分の焼失部分を十分に埋めることができ、また50倍以下であると、膨張層の強度が維持され、火炎の貫通を防止する効果が保たれる。
第2筒体7を上述した熱膨張性の耐火樹脂材料から形成することにより、第2筒体7とコンクリートCとの密着性が向上し(火災の発生時には第2筒体7と燃焼残渣のコンクリートCとの密着性が向上し)、断熱層が崩壊しにくくなる。
第2筒体7の中間部の外周面には、第2筒体7の周回りに延びる環状突部41が形成されている。上述した第2筒体7の一方側部分40は、環状突部41よりも一方側(上側)にある部分である。当該第2筒体7の一方側部分40(上側部分)を第1筒体6の拡径部22に嵌合させる際には、環状突部41が第1筒体6の他方側端(下端)に当接することで、第1筒体6への第2筒体7の嵌入が停止する。第2筒体7の他方側端(下端)の外周面には、第2筒体7の周回りに延びる環状突部42が形成されている。上記の環状突部41,43は、上述した熱膨張性の耐火樹脂材料から形成されてもよいし、鋼等の金属や、硬質塩化ビニル等の非熱膨張性の耐火樹脂材料から形成されてもよい。
位置調整筒体8は、第1筒体6や第2筒体7の位置(高さ)を調整するために設けられる。図1や図2に示すように、位置調整筒体8は、単位筒30Aと単位筒30Bとが連結されたものである。単位筒30A,30Bは、非熱膨張性の材料の射出成形品である。当該非熱膨張性の材料は、第1筒体6を構成する材料と同様、例えば、鋼、銅、ステンレス等の金属や、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル等の非熱膨張性の耐火樹脂材料である。位置調整筒体8を金属等の非熱膨張性材料で形成することで、外部衝撃に対する強度を増大させることができる。
単位筒30A,30Bは、略同一の構造を有する。このため、図5に単位筒30A,30Bの構造をまとめて示し、以下では、単位筒30A,30Bの総称として単位筒30と適宜記す。図5(a)は単位筒30A,30Bの上面図であり、図5(b)は単位筒30A,30Bの断面図であり、図5(c)は単位筒30A,30Bの下面図である。
単位筒30A,30Bは、略円筒状を呈している。単位筒30A,30Bの一方側端(上端)の外周面には、それぞれ単位筒30の周回りに延びる環状突部31が形成されている。単位筒30A,30Bの他方側端(下端)の外周面には、それぞれ単位筒30の周回りに延びる環状突部32が形成されている。図1に示すように、単位筒30Aの環状突部32と単位筒30Bの環状突部31とが突き合わされて、これら環状突部32,31が金属線・ボルト等で締結されることで、単位筒30Aと単位筒30Bとが連結される。なお、上記突き合わされた環状突部32,31が接着されることで、単位筒30Aと単位筒30Bとが連結されてもよい。
図1に示すように、単位筒30Aの環状突部31は、位置調整筒体8の一方側端(上端)を構成するものであり、第2筒体7の他方側端(下端)を構成する環状突部42と突き合わされる。そしてこれら環状突部31,42が金属線・ボルト等で締結されること、或いは環状突部31,42が接着されることで、位置調整筒体8の一方側端(上端)と第2筒体7の他方側端(下端)とが連結される。
図1に示すように、単位筒30Bの環状突部32は、位置調整筒体8の他方側端(下端)を構成するものであり、当該環状突部32には、孔33が形成される(図5では孔33の図示を省略している)。この孔33は、単位筒30Bの周方向に間隔をあけて複数形成されるものであり、各孔33には、針金等の金属線・ボルト・ビス・釘等の固定部材Bを通すことができる。そして、孔33に通した金属線を鉄筋12に結び付けること、或いは、孔33に通したボルト・ビス・釘を型枠Kにねじ込むことで、スリーブ3を鉄筋12や型枠Kに固定できる。
なお位置調整筒体8を構成する単位筒30の数は、図示例の2つに限定されない。すなわち本発明では、位置調整筒体8の高さを調整すべく、単位筒30A,30Bと同様の構造を有する単位筒30が複数準備される。そして、位置調整筒体8を構成する単位筒30の数が、断熱材Dの高さに応じて1又は任意の複数に設定されることで、位置調整筒体8の高さが、断熱材Dの高さに応じて調整される(図示例では、位置調整筒体8を、2つの単位筒30A,30Bから構成することで、位置調整筒体8が、断熱材Dよりも高くされている)。
なお、位置調整筒体8を1つの単位筒30から構成する場合には、この単位筒30の環状突部31が、第2筒体7の環状突部42と突き合わされて、これら環状突部31,43が締結・接着されることで、単位筒30の一方側端(上端)と第2筒体7の他方側端(下端)とが連結される。また、単位筒30の環状突部32に孔33が形成されて、この孔33に通した固定部材Bによって、スリーブ3が鉄筋12或いは型枠Kに固定される。
また、位置調整筒体8を複数の単位筒30から構成する場合には、隣り合う2つの単位筒30,30で、一方の環状突部31と他方の環状突部32とを突き合わし、これら環状突部31,32を締結・接着することが行われる。そして、この環状突部31,32の締結・接着が、隣り合う2つの単位筒30,30の各組で行われることで、複数の単位筒30が連結されて、位置調整筒体8が構成される。そして、位置調整筒体8が型枠K内に配置された状態で、最も一方側(上側)に位置する単位筒30は、その環状突部31が第2筒体7の環状突部42と突き合わされる。そしてこれら環状突部31,42が締結・接着されることで、位置調整筒体8の一方側端(上端)と第2筒体7の他方側端(下端)とが連結される。また位置調整筒体8が型枠K内に配置された状態で、最も他方側(下側)に位置する単位筒30は、その環状突部32に孔33が形成されて、この孔33に通した固定部材Bによってスリーブ3が鉄筋12或いは型枠Kに固定される。
また本実施形態では、上述したスリーブ3に固定枠9や非膨張性材10が設けられる(図1参照)。固定枠9や非膨張性材10は、スリーブ3の中空部Eにおける、第2筒体7の内部以外の範囲で、配管13又は配線とスリーブ3との間に配置されるものである。
固定枠9は、環状を呈し、その中央の孔15に配管13又は配線が挿通されるものであり、第1筒体6の内部の一方側端(上端)に配置される。固定枠9は、金属から形成されてもよいし、或いは、非耐火性又は耐火性の樹脂組成物から形成されてもよい。好ましくは、固定枠9は、不燃性又は難燃性の非膨張性物質から形成される。不燃性又は難燃性の非膨張性物質は、例えば、鋼、銅、ステンレス等の金属や、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル、ブチルゴム等の非熱膨張性の耐火樹脂材料や、臭素化合物、リン化合物、塩素化合物、アンチモン化合物、金属水酸化物、窒素化合物、ホウ素化合物等の難燃剤を含む非耐火性の樹脂組成物である。固定枠9には、美観を与えるように、コーティング等の仕上層、着色がさらに施されてもよい。
非膨張性材10は、第1筒体6の本体部20の内部や、位置調整筒体8の内部に配置される。非膨張性材10は、不燃性又は難燃性の非膨張性物質から形成される。当該不燃性又は難燃性の非膨張性物質は、例えば、グラスウール、ロックウール、などの無機材料や不燃性ウレタン、PTFE系、ポリ塩化ビニル系、フェノール樹脂系化合物である。
図6は、本実施形態に係る区画貫通構造1の施工方法を示す略断面図である。以下、図6を参照しながら、区画貫通構造1の施工方法について説明する。
まず図6(a)に示すように、スリーブ3を床下地となる型枠Kの底部に固定する。この際には、位置調整筒体8の孔33に通した固定用部材Bによって、スリーブ3を鉄筋12或いは型枠Kに固定する(図6(a)は、固定用部材Bとしてのボルトで、スリーブ3を型枠Kに固定する例を示している)。
次に図6(b)に示すように、位置調整筒体8の外周面を覆うように断熱材Dを配置する。この際には、位置調整筒体8に断熱材Dを密着させて環状突部31,32を断熱材Dに食い込ませるとともに、断熱材Dの外周に金属線を巻き付けるなどして、断熱材Dを位置調整筒体8に固定する。
次に図6(c)に示すように、コンクリートCを型枠Kに流し込んで、スリーブ3や断熱材Dの周囲にコンクリートCを打設する。この際には、位置調整筒体8の下端から第1筒体6の上端まで、コンクリートCが打設されることで、第1筒体6の外周表面の全体や、第2筒体7の外周表面の範囲7aが、コンクリートCによって覆われる。なお第1筒体6の上端などのスリーブ3の一部がコンクリートCから出るように、コンクリートCが打設高さが調整されてもよい。
そして、型枠K内のコンクリートCが硬化することで、床2が形成される。この床2は、スリーブ3の中空部Eによって区画貫通孔Tが構成されたものである。この後、図6(d)に示すように、型枠Kを床2から取り外す。
次に図6(e)に示すように、区画貫通孔T(スリーブ3の中空部E)に1または複数の配管13又は配線を挿通する。
次に図6(f)に示すように、中空部Eにおける、第2筒体7の内部以外の範囲に、固定枠9や非膨張性材10を配置する。以上で、区画貫通構造1が完成する
区画貫通構造1が区切る下層階で図6(f)の矢印方向から火災が発生した場合には、図7に示すように、第2筒体7が熱膨張して、区画貫通孔Tが閉塞される。これにより、火災が、区画貫通孔Tを通じて上層階に伝搬することが防止される。
本実施形態の区画貫通構造1によれば、第2筒体7の外周表面の範囲7aが、スリーブ3と密着しやすい性質を有するコンクリートCで覆われることで、図6(d)に示した型枠Kを取り外す際などに、第2筒体7が床2から落下することが防止される。このため、第2筒体7やスリーブ3を床2に設置し直すなど、床2を修復する手間を要しない。また第2筒体7が床2に設置された状態が安定して維持されるので、火災の発生時に第2筒体7が床2に存在しない事態を回避できる。
そしてさらに、耐熱性が高く熱変形の生じにくいコンクリートCで第2筒体7の範囲7aが覆われているため、火災が生じている間でも第2筒体7が床2から落下することが防止される。このため、第2筒体7の熱膨張で区画貫通孔T(スリーブ3の中空部E)を確実に閉塞できるので、区画貫通孔Tを通じた火災の伝搬を確実に防止できる。
さらに本実施形態によれば、以下の(1)〜(3)に示す理由から、第2筒体7の熱膨張で、区画貫通孔Tを隙間なく閉塞できる。
(1)第1筒体6の拡径部22が第2筒体7の一方側部分40を囲んでいることで、第2筒体7の熱膨張が、スリーブ3の内側(配管13又は配線に接近する側)に向かうものとなる。
(2)非膨張性材10が、第1筒体6の本体部20の内部や、位置調整筒体8の内部に配置されることで、スリーブ3の軸方向(配管13又は配線側)に向かう第2筒体7の膨張が規制され、スリーブ3の内側(配管13又は配線側)に向かう第2筒体7の膨張が促進される。
(3)スリーブ3の中空部Eにおける、第2筒体7の内部以外の範囲に、非膨張性材10や固定枠9が配置されることで、非膨張性材10や固定枠9が、第2筒体7の熱膨張の妨げにならない。
さらに本実施形態によれば、固定枠9や非膨張性材10によってスリーブ3と配管13又は配線との間の隙間が埋められることで、火災の非発生時では、ユーザの心理面に不安を与えることがなく、区画貫通孔T(中空部E)を通じた音漏れや水漏れや煙漏れを防止できる。なお上記のユーザは、スリーブ3が使用されている建築物内にいる者を意味する。例えば、建築物としての住宅に居住する住民は、上記のユーザに該当する。
さらに本実施形態によれば、位置調整筒体8を構成する単位筒30の数を断熱材Dの高さに応じて適宜設定することで、断熱材Dを所望の高さとしたままで、断熱材Dを低くすることを要せず、第2筒体7をコンクリートCで覆うことができる。このため本実施形態によれば、第2筒体7の落下を防止することと、区画貫通孔Tの断熱を十分図ることとを両立できる。
なお本発明は上記実施形態に限定されず、種々改変できる。
例えば、本発明の区画貫通構造は、図8に示すように変形され得る。図8に示す区画貫通構造50は、図1に示す区画貫通構造1と同様、断熱材Dと、断熱材D以外の部材としてのコンクリートCとから床2が構成され、この床2に区画貫通孔Tを形成すべく、スリーブ51が床2に設置される。スリーブ51は、図1に示した第1筒体6や第2筒体7や位置調整筒体8の他に、第3筒体52を備えている。
第3筒体52は、非熱膨張性の材料の射出成形品である。非熱膨張性の材料は、例えば、鋼、銅、ステンレス等の金属や、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル等の非熱膨張性の耐火樹脂材料である。第3筒体52は、本体部53と、本体部53に段差部54を介して連続する拡径部55とを有している。第3筒体52は、本体部53を下側にして配置されるものであり、本体部53の下端の外周面には、環状突部56が形成されている。
第2筒体7の外周面には、環状突部60,61が上下に間隔をあけて形成されている。そして、環状突部60よりも一方側(上側)の第2筒体7の部分62が第1筒体6の拡径部22に挿入される。また、環状突部61よりも他方側(下側)の第2筒体7の部分63が第3筒体52の拡径部55に挿入される。
位置調整筒体8は、図1の例と同様、単位筒30A,30Bが連なったものである。位置調整筒体8の一方側端(上端)は、第3筒体52の他方側端(下端)と連結されている。この連結は、単位筒30Aの環状突部31と第3筒体52の環状突部56とを突き合わせて、金属線・ボルト・ビス・釘等で環状突部31,56を締結すること、或いは、環状突部31,56を接着することで行われる。
図8に示す区画貫通構造50では、第1筒体6の内部と、第2筒体7の内部と、第3筒体52の内部と、位置調整筒体8の内部とが連なることで、スリーブ51の中空部Eが構成される。スリーブ51の下端部を構成する位置調整筒体8は、その周囲が断熱材Dに覆われている。そして、位置調整筒体8が第1筒体6や第2筒体7や第3筒体52を持ち上げる土台として機能することで、第1筒体6や第2筒体7や第3筒体52は、断熱材Dよりも上側に位置し、第1筒体6や第3筒体52の外周面の全体や、第2筒体7の外周面の一部の範囲7aは、コンクリートCで覆われる(範囲7aは、第1筒体6や第3筒体52から延び出た第2筒体7の外周面の範囲に相当する)。スリーブ51の中空部Eは、床2の区画貫通孔Tとして機能するものであり、当該区画貫通孔T(中空部E)に配管13又は配線が挿通される。
また、スリーブ51の中空部Eにおける、第2筒体7の内部以外の範囲では、固定枠9や非膨張性材10が、配管13又は配線とスリーブ51との間に配置される。固定枠9は、第1筒体6の内部の上端に配置されている。非膨張性材10は、第1筒体6の本体部53の内部や、第3筒体52の本体部53の内部や、位置調整筒体8の内部に配置されている。
上記の区画貫通構造50は、図6と同様の方法で施工できる。そして区画貫通構造50の下層階で火災が発生した場合には、上記実施形態と同様、第2筒体7の熱膨張で区画貫通孔Tが閉塞されることで、区画貫通孔Tを通じて火災が上層階に伝搬することが防止される。また上記実施形態と同様、スリーブ51の外周面を構成する第2筒体7の範囲7aがコンクリートCで覆われることで、第2筒体7が落下せず、第2筒体7が床2に設置された状態が維持される。このため、第2筒体7の熱膨張で、区画貫通孔Tを通じた火災の伝播を防止できる。
さらに図8に示す区画貫通構造50では、以下の(1)〜(3)に示す理由から、第2筒体7の熱膨張で、区画貫通孔Tを隙間無く閉塞できる。
(1)第1筒体6の拡径部22が第2筒体7の一方側部分62(上側部分)を囲み、第3筒体52の拡径部55が第2筒体7の他方側部分63(下側部分)を囲んでいることで、第2筒体7の熱膨張が、スリーブ51の内側(配管13又は配線に接近する側)に向かうものとなる。
(2)非膨張性材10が、第1筒体6の本体部20の内部や、第3筒体52の本体部53の内部や、位置調整筒体8の内部に配置されることで、火災の発生時には、スリーブ51の軸方向(配管13又は配線側)に向かう第2筒体7の膨張が規制され、スリーブ51の内側(配管13又は配線側)に向かう第2筒体7の膨張が促進される。
(3)スリーブ51の中空部Eにおける、第2筒体7の内部以外の範囲に、非膨張性材10や固定枠9が配置されることで、非膨張性材10や固定枠9が、第2筒体7の熱膨張の妨げにならない。
なお図8の例でも、上記実施形態と同様、位置調整筒体8を構成する単位筒30の数は、2に限定されない。すなわち図8の例でも、位置調整筒体8の高さを断熱材Dの高さに応じて調整すべく、位置調整筒体8を1つの単位筒30から構成したり、位置調整筒体8を任意の複数の単位筒30が連結されたものとすることができる。
また本発明の区画貫通構造は、図9や図10に示すようにも変形され得る。図9や図10に示す区画貫通構造70,80も、図1に示す区画貫通構造1と同様、断熱材Dと、断熱材D以外の部材としてのコンクリートCとから床2が構成されて、図6と同様の方法で施工可能なものである。
図9に示す区画貫通構造70では、区画貫通孔Tを床2に形成するために、スリーブ71が床2に設置される。このスリーブ71は、図1に示すスリーブ3と同様、第1筒体6、第2筒体7、位置調整筒体8を使用するものであるが、第1筒体6よりも一方側(上側)に位置調整筒体8を配置する点で、図1に示すスリーブ3と異なる。図9に示すスリーブ71では、第1筒体6の一方側端(上端)に、第1筒体6の周回りに延びる環状突部72が形成される。そして、この環状突部72と、位置調整筒体8の他方側端(下端)にある環状突部32とが突き合わされて、これら環状突部72,32が締結或いは接着されることで、第1筒体6の一方側端(上端)と位置調整筒体8の他方側端(下端)とが連結される。スリーブ71の上端部を構成する位置調整筒体8は、その周囲が断熱材Dに覆われており、位置調整筒体8の下側において、第1筒体6の外周表面の全体や、第2筒体7の外周表面の範囲7aが、コンクリートCによって覆われている(範囲7aは、第1筒体6から延び出た第2筒体7の外周面の範囲に相当する)。第2筒体7の他方側端(下端)にある環状突部42には、孔73が形成されており、区画貫通構造70の施工時には、孔73に通される固定部材(金属線・ボルト・ビス・釘等)によって、スリーブ3が鉄筋や型枠に固定される。
図10に示す区画貫通構造80では、区画貫通孔Tを床2に形成するために、スリーブ81が床2に設置される。このスリーブ81は、図8に示すスリーブ51と同様、第1筒体6、第2筒体7、第2筒体52、位置調整筒体8を使用するものであるが、第1筒体6よりも一方側(上側)に位置調整筒体8を配置して、第1筒体6の一方側端(上端)と位置調整筒体8の他方側端(下端)とを連結する点で、図8に示すスリーブ51と異なる。第1筒体6の一方側端(上端)と位置調整筒体8の他方側端(下端)との連結方法は、図9のスリーブ71と同様である。したがって詳細な説明を省略する。
そして図10に示すスリーブ81では、その上端部を構成する位置調整筒体8の周囲が断熱材Dに覆われており、位置調整筒体8の下側において、第1筒体6や第3筒体52の外周表面の全体や、第2筒体7の外周表面の範囲7aが、コンクリートCによって覆われている(範囲7aは、第1筒体6や第3筒体52から延び出た第2筒体7の外周面の範囲に相当する)。また第3筒体52の他方側端(下端)にある環状突部56には孔82が形成されており、区画貫通構造70の施工時には、孔82に通される固定部材Bによって、スリーブ81が鉄筋や型枠に固定される。
図9や図10に示す区画貫通構造70,80でも、上記実施形態と同様、第2筒体7の外周面の範囲7aがコンクリートCで覆われることで、第2筒体7が落下しない。このため、第2筒体7の熱膨張で区画貫通孔Tを通じた火災の伝播を確実に防止できる。
なお図1、図8、図9、図10に示す区画貫通構造1,50,70,80では、第2筒体7の落下を防止可能な限りにおいて、第2筒体7の外周面の少なくとも一部の範囲がコンクリートCで覆われればよい(つまりコンクリートCで覆われる第2筒体7の外周表面の範囲7aは適宜調整され得る)。なお位置調整筒体8の高さや断熱材Dの高さが調整されることで、第2筒体7の外周表面の20%以上の範囲がコンクリートCで覆われることが好ましく、第2筒体7の外周表面の50%以上の範囲がコンクリートCで覆われることがより好ましい。このようにすれば、コンクリートCで覆われる第2筒体7の範囲が大きいことから、第2筒体7の落下を確実に防止できる。
また、図1、図8、図9、図10に示す区画貫通構造1,50,70,80では、第2筒体7の一方側部分40を第1筒体6の拡径部22内に挿入することで、第1筒体6と第2筒体7とを接続していたが、第1筒体6と第2筒体7とを接続する方法はこれに限定されない。例えば、第1筒体6が、本体部と、本体部に段差部を介して連続する縮径部とを有するものとされて、第1筒体6の縮径部が第2筒体の一方側部分内に挿入されることで、第1筒体6と第2筒体7とが接続されてもよい(第1筒体6の縮径部は、第1筒体6の本体部よりも内径が小さなものである)。さらに図8、図10に示す区画貫通構造50,80では、第2筒体7の他方側部分63を第3筒体52の拡径部55内に挿入することで、第2筒体7と第3筒体52とを接続していたが、第2筒体7と第3筒体52とを接続する方法もこれに限定されない。例えば、第3筒体52が、本体部と、本体部に段差部を介して連続する縮径部とを有するものとされ、第3筒体52の縮径部が第2筒体7の他方側部分内に挿入されることで、第2筒体7と第3筒体52とが接続されてもよい(第3筒体52の縮径部は、第3筒体52の本体部よりも内径が小さなものである)。以上のようにに第1筒体6や第3筒体52の縮径部を第2筒体7内に挿入する場合には、第2筒体7の外周表面の全体がコンクリートCで覆われることになるので、第2筒体7の落下をより確実に防止できる。なお上記のように第1筒体6や第3筒体52の縮径部を第2筒体7内に挿入する場合には、例えば、第2筒体7は、本体部と、当該本体部に段差部を介して連続する拡径部とを有するものとされて、当該第2筒体7の拡径部に第1筒体6や第3筒体52の縮径部が挿入される(第2筒体7の拡径部は、第2筒体7の本体部よりも内径が大きなものである)。このようにすることで、第2筒体7の本体部の熱膨張によって区画貫通孔Tを通じた火災の伝搬を防止できる。なお第1筒体6及び第3筒体52の双方を第2筒体7に接続する場合には、例えば、第2筒体7には、本体部の一方側端に連続する第1拡径部と、本体部の他方側端に連続する第2拡径部とが設けられて、第1拡径部に第1筒体の縮径部が挿入され、第2拡径部に第3筒体の縮径部が挿入される。
また、第1筒体6や第3筒体52では、必ずしも、段差部が形成される必要はない。例えば、第1筒体6や第3筒体52は、内径が漸次変化するテーパー部を介して、本体部と、拡径部或いは縮径部とが連続するものであってもよい。なお上記例のように、第1筒体6や第3筒体52が、段差部を介して、本体部と拡径部或いは縮径部とが連続するものとすれば、拡径部或いは縮径部に第2筒体7を接続する際に、第2筒体7の端を段差部に当接させることで、第2筒体7を確実に位置決めできる。
また図1、図8、図9、図10に示す区画貫通構造1,50,70,80では、第1筒体6や第3筒体7が断熱材Dで覆われてもよい。この場合でも、スリーブ3,51,71,81を構成する第2筒体7がコンクリートCで覆われることで、第2筒体7が落下しないので、第2筒体7の熱膨張で区画貫通孔Tを通じた火災の伝播を確実に防止できる。
さらに図1、図8、図9、図10に示す区画貫通構造1,50,70,80では、第1筒体6や第3筒体52における、本体部、段差部、及び拡径部又は縮径部のうち少なくとも一つが、熱膨張性の材料から形成されてもよい。特に、第1筒体6の本体部20や第3筒体52の本体部53は、第2筒体7よりも加熱時の膨張倍率が低い材料から形成されてもよい。この場合には、下記式(2)に示すように、第1及び第3筒体6,52の本体部20,53の膨張倍率と、第2筒体7の膨張倍率との比が、0以上1未満とされることが好ましい。
0≦(第1及び第3筒体6,52の本体部20,53の膨張倍率/第2筒体7の膨張倍率)<1 ・・・式(2)
なお上記のように第1筒体6や第3筒体52の一部を、熱膨張性の材料から形成する場合には、当該第1筒体6や第3筒体52の一部をコンクリートCで覆うことが好ましい。このようにすることで、第1筒体6や第3筒体52の落下を防止できる。
また図1、図8、図9、図10に示す区画貫通構造1,50,70,80では、上述したスリーブ3,51,71,81以外にも、耐火性を向上させるために、任意の公知の耐火性充填材、耐火性樹脂組成物、耐火性シート、または耐火性金属板等がさらに用いられてもよい。
また図1、図8、図9、図10に示す区画貫通構造1,50,70,80で、単位筒同士30,30を連結する方法や、位置調整筒体8と他の筒体とを連結する方法は、上述した環状突部の締結・接着による方法に限定されない。例えば、連結対象となる2つの筒体に、それぞれ放射状に突出する突部を形成し、この突部を突き合わせて締結・接着することで、単位筒同士30,30の連結や、位置調整筒体8と他の筒体との連結が行われてもよい。或いは、第2筒体7と第1筒体6との連結方法や、第2筒体7と第3筒体52との連結方法のように、一方の筒体の一部を、他方の筒体の拡径部内に嵌合させることで、単位筒30,30同士の連結や、位置調整筒体8と他の筒体との連結が行われてもよい。
また図1、図8、図9、図10では、区画貫通孔Tの断面が円形である場合を想定し、スリーブ3,51,71,81を構成する筒体を略円筒状にする例を示したが、スリーブ3,51,71,81を構成する筒体の形状は、所望される区画貫通孔Tの形状に適合させればよい。例えば所望される区画貫通孔Tが断面略楕円形である場合には、スリーブ3,51,71,81を構成する筒体は、断面略楕円形の内部を有するものとされる。
また図1、図8、図9、図10に示す区画貫通構造1,50,70,80では、コンクリートCの代わりに、石膏系材料が使用されてもよい。この場合、第2筒体7の外周表面の少なくとも一部の範囲が石膏系材料で覆われることで、第2筒体7の落下を防止できる。つまり、第2筒体7が、スリーブ3と密着しやすい性質を有する石膏系材料で覆われることで、床2から型枠Kを取り外す際などに、第2筒体7が床2から落下することが防止される。また、耐熱性が高く熱変形の生じにくい石膏系材料で第2筒体7が覆われているため、火災が生じている間でも第2筒体7が床2から落下することが防止される。以上のことから、第2筒体7の熱膨張で区画貫通孔T(スリーブ3の中空部E)を確実に閉塞できるので、区画貫通孔Tを通じた火災の伝搬を確実に防止できる。なお第2筒体7を強固に固定すべく、第2筒体7の外周表面の20%以上の範囲を石膏系材料で覆うことが好ましく、さらには、第2筒体7の外周表面の20%以上の範囲を石膏系材料で覆うことがより好ましく、またさらには、第2筒体7の外周表面の全体を石膏系材料で覆うことがより好ましい。
また図1、図8、図9、図10では、区画貫通構造1,50,70,80が水平な床2を備える例を示したが、区画貫通構造1,50,70,80は、上下方向に延びる壁体を備えるものであってもよい。この場合、壁体は、床2と同様、断熱材Dや、当該断熱材D以外の部材としてのコンクリート又は石膏系材料から構成される。そして当該壁体に区画貫通孔Tを形成すべく、図1、図8、図9、図10に示したスリーブ3,51,71,81が壁体に設置される。
図1や図9に示すスリーブ3,71が上記壁体に設置される場合には、第1筒体6・第2筒体7・位置調整筒体8が水平方向に延びるものとされる。これにより水平方向に延びる区画貫通孔Tが構成されて、当該区画貫通孔(スリーブの中空部)に配管又は配線が通される。
また図8や図10に示すスリーブ51,81が上記壁体に設けられる場合には、第1筒体6・第2筒体7・第3筒体52・位置調整筒体8が水平方向に延びるものとされる。これにより水平方向に延びる区画貫通孔Tが構成されて、当該区画貫通孔(スリーブの中空部)に配管又は配線が通される。
そして上記のようにスリーブ3,51,71,81が壁体に設置される場合には、第2筒体7の外周表面の少なくとも一部の範囲がコンクリート又は石膏系材料で覆われることで、第2筒体7が壁体の前後に落下することが防止される。これにより、第2筒体7の熱膨張で、区画貫通孔Tを通じた火災の伝播を確実に防止できる。
1,50,70,80 区画貫通構造
2 床
3,51,71,81 スリーブ
6 第1筒体
7 第2筒体
7a スリーブの外周面を構成する第2筒体の範囲
8 位置調整筒体、
13 配管、
20 第1筒体の本体部
21 第1筒体の段差部
22 第1筒体の拡径部
30,30A,30B 単位筒
40,62 第2筒体の一方側部分、
52 第3筒体、
53 第3筒体の本体部
54 第3筒体の段差部
55 第3筒体の拡径部
63 第2筒体の他方側部分
C コンクリート
D 断熱材
E 中空部

Claims (6)

  1. 断熱材と、当該断熱材以外の部材としてのコンクリート又は石膏系材料とから構成される床又は壁体と、
    前記床又は壁体に区画貫通孔を形成するために前記床又は壁体に設置されるスリーブと、
    前記スリーブ内に配置された配管又は配線と、
    を備え、
    前記スリーブは、
    本体部と、当該本体部に連続する拡径部又は縮径部とを有する第1筒体と、
    熱膨張性を有し、一方側部分が前記第1筒体の拡径部内に挿入される、或いは、一方側部分内に前記第1筒体の縮径部が挿入される第2筒体と、
    非熱膨張性を有し、前記第1筒体の一方側端、或いは、前記第2筒体の他方側端に連結される位置調整筒体とを備え、
    前記区画貫通孔は、前記第1筒体の内部と、前記第2筒体の内部と、前記位置調整筒体の内部とが連なることで構成され、
    前記断熱材は、前記位置調整筒体の外周表面を覆うように配置され、
    前記第2筒体は、外周表面の少なくとも一部の範囲が、前記コンクリート又は石膏系材料によって覆われることを特徴とする、区画貫通構造。
  2. 断熱材と、当該断熱材以外の部材としてのコンクリート又は石膏系材料とから構成される床又は壁体と、
    前記床又は壁体に区画貫通孔を形成するために前記床又は壁体に設置されるスリーブと、
    前記スリーブ内に配置された配管又は配線と、
    を備え、
    前記スリーブは、
    本体部と、当該本体部に連続する拡径部又は縮径部とを有する第1筒体と、
    熱膨張性を有し、一方側部分が前記第1筒体の拡径部内に挿入される、或いは、一方側部分内に前記第1筒体の縮径部が挿入される第2筒体と、
    本体部と、当該本体部に連続する拡径部又は縮径部とを有し、拡径部内に前記第2筒体の他方側部分が挿入される、或いは、縮径部が前記第2筒体の他方側部分内に挿入される第3筒体と、
    非熱膨張性を有し、前記第1筒体の一方側端、或いは、前記第3筒体の他方側端に連結される位置調整筒体とを備え、
    前記区画貫通孔は、前記第1筒体の内部と、前記第2筒体の内部と、前記第3筒体の内部と、前記位置調整筒体の内部とが連なることで構成され、
    前記断熱材は、前記位置調整筒体の外周表面を覆うように配置され、
    前記第2筒体は、外周表面の少なくとも一部の範囲が、前記コンクリート又は石膏系材料によって覆われることを特徴とする、区画貫通構造。
  3. 前記位置調整筒体は、複数の単位筒が連結されたものである、請求項1又は2に記載の区画貫通構造。
  4. 前記第2筒体は、外周表面の20%以上の範囲が、前記コンクリート又は石膏系材料によって覆われていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の、区画貫通構造。
  5. 前記第2筒体は、外周表面の50%以上の範囲が、前記コンクリート又は石膏系材料によって覆われていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の、区画貫通構造。
  6. 前記第2筒体は、外周表面の全体が、前記コンクリート又は石膏系材料によって覆われていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の、区画貫通構造。
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