JP6665464B2 - 薄膜熱電素子 - Google Patents

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Description

本発明は、薄膜熱電素子の技術分野に関する。
p型熱電半導体薄膜とn型熱電半導体薄膜とが一端部(第1端部)において電気的接合層(内部電極)を介し、残部において絶縁層を介して積層されてなる複数の薄膜熱電対と、これらの薄膜熱電対の上記一端部と反対の他端部(第2端部)に配置された導体(外部電極)を有する薄膜熱電素子が特許文献1には記載されている。
特許文献1記載の薄膜熱電素子では、p型熱電半導体薄膜とn型熱電半導体薄膜とが薄膜とされている。このため、薄膜熱電素子を少ない材料で構成でき、且つ、小型化することが可能である。
特開2002−335021号公報
しかしながら、薄膜熱電素子の小型化が進むと、p型熱電半導体薄膜とn型熱電半導体薄膜(総称して熱電半導体薄膜とも称する)の端部にそれぞれ接続された内部電極と内部電極の間、又は内部電極と外部電極の間の熱電半導体薄膜の長さ(以降、素子の脚長と称する)が短くなる。すると、内部電極若しくは外部電極と熱電半導体薄膜とを電気的に接続した際に生じる抵抗(接合抵抗と称する)が熱電半導体薄膜の膜抵抗に対して無視できない大きさになってくる。その場合には、薄膜熱電素子の効率は、熱電半導体薄膜で得られる性能指数で算出される効率から大きく低下することになる。
これに対して、熱電半導体薄膜(の第1端部と第2端部)上に内部電極及び外部電極(総称して電極とも称する)が重なる領域(電極領域と称する)を、第1端部から第2端部への方向において広く取ることで、電極と熱電半導体薄膜との接合抵抗を小さくすることが可能となるとも考えられる。しかし、電極領域を広く取るためには、第1端部から第2端部への方向における電極の長さを十分に長くする必要があり、薄膜熱電素子で期待される小型化が阻害されるおそれが出てくる。
それでも、接合抵抗を小さくするために、素子の脚長に対して電極の長さを更に長くしていくことも考えられる。しかし、熱電半導体薄膜の電極領域の拡大に伴い、電極領域における熱電半導体薄膜の膜抵抗が増大するので、結果的には薄膜熱電素子の小型化を損ない、且つ、効率も望めないというおそれが出てくる。
即ち、単に電極領域を第1端部から第2端部への方向に広くとることで接合抵抗の改善を図ることには問題点があった。
本発明は、前記問題点を解決するべくなされたもので、小型化が可能でありながら、外部電極または内部電極とp型熱電半導体薄膜またはn型熱電半導体薄膜との接合抵抗を小さくして、高い効率を実現可能な薄膜熱電素子を提供することを目的とする。
本発明の薄膜熱電素子は、一対以上のp型熱電半導体薄膜及びn型熱電半導体薄膜と、前記p型熱電半導体薄膜及び前記n型熱電半導体薄膜のそれぞれの両端である第1端部と第2端部のうちの第1端部側に設けられると共に前記p型熱電半導体薄膜と前記n型熱電半導体薄膜とを電気的に接続する内部電極と、第2端部側に設けられると共に前記p型熱電半導体薄膜及び前記n型熱電半導体薄膜のそれぞれと外部との電気的な接続をする外部電極と、を有し、前記p型熱電半導体薄膜及び前記n型熱電半導体薄膜のそれぞれには、第1の接合領域と第2の接合領域とが設けられ、前記p型熱電半導体薄膜及び前記n型熱電半導体薄膜の膜面と平行な平面に前記第1の接合領域を投影した第1の投影領域は、前記膜面と平行な平面への投影図で前記p型熱電半導体薄膜または前記n型熱電半導体薄膜が前記内部電極と重なる領域であり、前記膜面と平行な平面に前記第2の接合領域を投影した第2の投影領域は、前記膜面と平行な平面への投影図で前記p型熱電半導体薄膜または前記n型熱電半導体薄膜が前記外部電極と重なる領域であり、前記p型熱電半導体薄膜及び前記n型熱電半導体薄膜のそれぞれが前記第1の接合領域の少なくとも一部で前記内部電極と接合され、前記p型熱電半導体薄膜及び前記n型熱電半導体薄膜のそれぞれが前記第2の接合領域の少なくとも一部で前記外部電極と接合され、前記第1および第2の接合領域のうちの1つ以上の接合領域において、前記第1または第2の投影領域の面積である投影領域面積よりも、前記第1または第2の接合領域で前記p型熱電半導体薄膜または前記n型熱電半導体薄膜が前記内部電極または前記外部電極と接合する接合面積が大きいことを特徴とする。
これによれば、p型熱電半導体薄膜とn型熱電半導体薄膜とが薄膜であるので、薄膜熱電素子を少ない材料で構成でき、且つ、小型化することが可能である。加えて、第1の接合領域または第2の接合領域においては、投影領域の拡大をすることなく、p型熱電半導体薄膜またはn型熱電半導体薄膜が内部電極または外部電極と接合する接合面積を増加させることができ、これらの接合の接合抵抗を小さくすることができる。したがって、高い効率を実現可能な薄膜熱電素子を提供することができる。
さらに、本発明の薄膜熱電素子は、前記投影領域面積よりも前記接合面積が大きい前記第1または第2の接合領域の前記p型熱電半導体薄膜または前記n型熱電半導体薄膜には凹部が形成されており、前記凹部内において前記p型熱電半導体薄膜または前記n型熱電半導体薄膜と前記内部電極または前記外部電極とが接合していることを特徴とする。
さらに、本発明の薄膜熱電素子は、前記投影領域面積よりも前記接合面積が大きい前記第1または第2の接合領域において、前記第1端部から前記第2端部への方向において他方の端部に近い領域部分よりも該他方の端部から遠い領域部分で前記投影領域面積当たりの前記接合面積が大きいことを特徴とする。
さらに、本発明の薄膜熱電素子は、前記凹部が穴であることを特徴とする。
さらに、本発明の薄膜熱電素子は、前記投影領域面積よりも前記接合面積が大きい前記第1または第2の接合領域において前記穴が複数形成され、前記膜面と平行であり前記第1端部から前記第2端部への方向と直交する第1の方向の前記穴のピッチが、前記穴の前記第1の方向の外形寸法の1.1から4倍であることを特徴とする。
さらに、本発明の薄膜熱電素子は、前記投影領域面積よりも前記接合面積が大きい前記第1または第2の接合領域で前記穴が複数形成され、前記膜面と平行であり前記第1端部から前記第2端部への方向と直交する第1の方向の前記穴のピッチが、前記第1端部から前記第2端部への方向において、他方の端部から遠い領域部分よりも該他方の端部に近い領域部分で大きいことを特徴とする。
さらに、本発明の薄膜熱電素子は、前記穴の外形寸法は、該穴の深さよりも小さいことを特徴とする。
さらに、本発明の薄膜熱電素子は、前記穴の深さは、前記穴が形成されている前記p型熱電半導体薄膜若しくは前記n型熱電半導体薄膜の膜厚に相当することを特徴とする。
さらに、本発明の薄膜熱電素子は、前記p型熱電半導体薄膜と前記n型熱電半導体薄膜とが膜厚方向に積層され、前記第1の接合領域に形成された前記穴が、前記p型熱電半導体薄膜を貫通し前記n型熱電半導体薄膜にまで連続して形成されている、若しくは、前記n型熱電半導体薄膜を貫通し前記p型熱電半導体薄膜にまで連続して形成されていることを特徴とする。
さらに、本発明の薄膜熱電素子は、前記投影領域面積よりも前記接合面積が大きい前記第1または第2の接合領域において前記n型熱電半導体薄膜と接合される前記内部電極または前記外部電極は、前記接合面積を構成する接合表面に、希土類金属、イットリウム、希土類金属とシリコンとの合金、イットリウムとシリコンとの合金、高濃度不純物ドープされたn型シリコン及び、高濃度不純物ドープされたn型のシリコンとゲルマニウムの合金のうちの少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする。
さらに、本発明の薄膜熱電素子は、前記投影領域面積よりも前記接合面積が大きい前記第1または第2の接合領域において前記p型熱電半導体薄膜と接合される前記内部電極または前記外部電極は、前記接合面積を構成する接合表面に、白金、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、それらのうちの少なくとも2つを含む合金、それらのうちの少なくとも1つとシリコンとの合金、高濃度不純物ドープされたp型シリコン及び、高濃度不純物ドープされたp型のシリコンとゲルマニウムの合金のうちの少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする。
さらに、本発明の薄膜熱電素子は、前記投影領域面積よりも前記接合面積が大きい前記第1または第2の接合領域において前記p型熱電半導体薄膜または前記n型熱電半導体薄膜と接合される前記内部電極または前記外部電極は、前記接合面積を構成する接合表面に、モリブデン、チタン、モリブデンとシリコンとの合金及びチタンとシリコンとの合金のうちの少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする。
さらに、本発明の薄膜熱電素子は、前記p型熱電半導体薄膜と前記n型熱電半導体薄膜のうちの少なくともいずれか一方の膜が、超格子構造を有する多層膜であることを特徴とする。
さらに、本発明の薄膜熱電素子は、前記多層膜は、不純物を添加したシリコンとゲルマニウムとの合金からなる膜と、該膜と交互に積層されるシリコンからなる膜とを備えることを特徴とする。
さらに、本発明の薄膜熱電素子は、前記第1端部と前記第2端部のうちのより低温とされる一方の端部側に前記内部電極が設けられていることを特徴とする。
この発明は、薄膜熱電素子の小型化が可能でありながら、内部電極または外部電極とp型熱電半導体薄膜またはn型熱電半導体薄膜との接合抵抗を小さくして、高い効率が実現可能となるという効果を奏する。
本発明の実施形態1に係わる薄膜熱電素子の一例を示す断面模式図 同じく薄膜熱電素子の一対のp型熱電半導体薄膜とn型熱電半導体薄膜の積層部分の一例を示す側面模式図 図1の薄膜熱電素子の一部を示す投影模式図 図1の薄膜熱電素子の一部を示す断面模式図 薄膜熱電素子の製造工程の一部の一例を示す断面模式図 薄膜熱電素子の製造工程の一部の一例を示す断面模式図 薄膜熱電素子の製造工程の一部の一例を示す断面模式図 薄膜熱電素子の製造工程の一部の一例を示す断面模式図 薄膜熱電素子の製造工程の一部の一例を示す断面模式図 薄膜熱電素子の製造工程の一部の一例を示す断面模式図 薄膜熱電素子の製造工程の一部の一例を示す断面模式図 薄膜熱電素子の製造工程の一部の一例を示す断面模式図 薄膜熱電素子の製造工程の一部の一例を示す断面模式図 本発明の実施形態2に係わる薄膜熱電素子の一部を示す投影模式図 本発明の実施形態2に係わる薄膜熱電素子の一部を示す断面模式図 本発明の実施形態3に係わる薄膜熱電素子の一部を示す投影模式図 本発明の実施形態3に係わる薄膜熱電素子の一部を示す断面模式図 本発明の接合領域のバリエーションの一例を示す投影模式図 本発明の接合領域のバリエーションの他の一例を示す投影模式図 本発明の内部電極または外部電極のバリエーションの一例を示す断面模式図 熱電半導体薄膜の膜面に平行な面による断面図 熱電半導体薄膜と電極との接合領域のコンダクタンスを示すグラフ
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(実施形態1)
最初に、本発明の実施形態1に係わる薄膜熱電素子の構成について、図1を用いて説明する。
実施形態1の薄膜熱電素子10は、図1に示す如く、一対のp型熱電半導体薄膜14及びn型熱電半導体薄膜20と、p型熱電半導体薄膜14及びn型熱電半導体薄膜20のそれぞれの両端である第1端部16、22と第2端部18、24のうちの第1端部16、22側に設けられると共にp型熱電半導体薄膜14とn型熱電半導体薄膜20とを電気的に接続する内部電極26と、第2端部18、24側に設けられると共にp型熱電半導体薄膜14及びn型熱電半導体薄膜20のそれぞれと外部との電気的な接続をする外部電極28、30と、を有する。ここで、p型熱電半導体薄膜14及びn型熱電半導体薄膜20のそれぞれの両端は、p型熱電半導体薄膜14及びn型熱電半導体薄膜20の長尺方向(図1に示すX方向)の両端である。
以下、詳細に説明する。薄膜熱電素子10は、図1に示す如く、p型熱電半導体薄膜14とn型熱電半導体薄膜20と内部電極26と外部電極28、30と第1伝熱部材32と第2伝熱部材34とを有する。図1に示す如く、p型熱電半導体薄膜14はn型熱電半導体薄膜20と対を成している。p型熱電半導体薄膜14とn型熱電半導体薄膜20と(総称して熱電半導体薄膜)はそれぞれ、積層時にエピタキシャル成長された超格子構造を有する(量子井戸)多層膜である。
具体的には、図2に示す如く、p型熱電半導体薄膜14は、エピタキシャル成長された、ボロン(B)を1015cm−3の濃度でドープしたシリコン(Si)膜(膜厚10nm、抵抗率10Ω・cm。以下では単に膜14m1と称する。)と、エピタキシャル成長された、高濃度(1018〜1019cm−3)のボロン(B)をドープしたシリコンとゲルマニウム(Ge)との合金(SiGe)膜(膜厚10nm、ゲルマニウムの組成比率は10〜35atomic%。以下では単に膜14m2と称する。)と、を交互に複数積層した多層膜である。
n型熱電半導体薄膜20は、エピタキシャル成長された、アンチモン(Sb)を1014cm−3の濃度でドープしたn型のシリコン(Sin型)膜(膜厚10nm、抵抗率10Ω・cm。以下では単に膜20m1と称する。)と、エピタキシャル成長された、高濃度(1018〜1019cm−3)のアンチモン(Sb)をドープしたシリコンとゲルマニウムとの合金(SiGe)膜(膜厚10nm、ゲルマニウムの組成比率は10〜35atomic%。以下では単に膜20m2と称する。)と、を交互に複数対積層した多層膜である。
すなわち、熱電半導体薄膜における多層膜は、不純物を添加したシリコンとゲルマニウムとの合金からなる膜と、この膜と交互に積層されるシリコンを母材とする膜とを備えている。なお、本明細書では、上記ドープされる材料や、ゲルマニウムなどの組成比率が50atomic%未満の材料以外の材料を母材と称する。この例では、膜14m1、14m2、20m1、20m2はシリコンが母材である。
図2に示す如く、シリコンの単結晶から切り出された基板12に、最初にn型熱電半導体薄膜20の膜20m2が形成されている。そして、n型熱電半導体薄膜20の最上層にも、膜20m2が形成されている。そして、境界膜20Aが形成されている。境界膜20Aはエピタキシャル成長された抵抗率10Ω・cm以上のシリコン(Si)膜(膜厚10nm以上)(高抵抗シリコン薄膜)、またはエピタキシャル成長された抵抗率10Ω・cm以上のシリコン(Si)膜(膜厚10nm程度)(高抵抗シリコン薄膜)上にさらにエピタキシャル成長された抵抗率10Ω・cm以上のシリコンとゲルマニウムの合金(SiGe)膜(膜厚10nm以上、ゲルマニウムの組成比率は10〜35atomic%。)(高抵抗シリコンゲルマニウム合金薄膜)を積層し、更にその上にエピタキシャル成長された抵抗率10Ω・cm以上のシリコン(Si)膜(膜厚10nm程度)(高抵抗シリコン薄膜)を積層した3層構造の積層膜とされている。
そして、p型熱電半導体薄膜14の膜14m2が形成されている。そして、p型熱電半導体薄膜14の最上層には、膜14m2が形成されている。境界膜20Aは、p型熱電半導体薄膜14を積層時にエピタキシャル成長可能とされている。
図1に示す如く、p型熱電半導体薄膜14とn型熱電半導体薄膜20にはそれぞれ、X方向の両端に第1端部16、22と第2端部18、24とが形成されている(このため、X方向を第1端部から第2端部への方向とも称する)。p型熱電半導体薄膜14の第1端部16は、X方向においてn型熱電半導体薄膜20の第1端部22と同一位置とされている。p型熱電半導体薄膜14の第2端部18は、X方向においてn型熱電半導体薄膜20の第2端部24よりも第1端部側に形成されている。
内部電極26はp型熱電半導体薄膜14の第1端部16側及びn型熱電半導体薄膜20の第1端部22側に設けられ、外部電極28はp型熱電半導体薄膜14の第2端部18側に設けられ、外部電極30はn型熱電半導体薄膜20の第2端部24側に設けられている。内部電極26は、p型熱電半導体薄膜14とn型熱電半導体薄膜20との電気的な接続を行う。外部電極28、30はそれぞれ、p型熱電半導体薄膜14及びn型熱電半導体薄膜20のそれぞれと外部との電気的な接続を行う。内部電極26及び外部電極28、30とp型熱電半導体薄膜14及びn型熱電半導体薄膜20との接合状態を、図3A及び図3Bを用いて具体的に説明する。
図3Aは、薄膜熱電素子10の、p型熱電半導体薄膜14及びn型熱電半導体薄膜20の膜面と平行な平面(膜面と平行な平面と称する)への投影図である。図3Bは、図1に示す薄膜熱電素子10の一部拡大図である。図1、図3A及び図3Bに示す如く、p型熱電半導体薄膜14の第1端部16側には、第1の接合領域17が設けられている。また、n型熱電半導体薄膜20の第1端部22側には、第1の接合領域23が設けられている。また、p型熱電半導体薄膜14の第2端部18側には、第2の接合領域19が設けられている。また、n型熱電半導体薄膜20の第2端部24側には、第2の接合領域25が設けられている。膜面と平行な平面に第1の接合領域17を投影した第1の投影領域17Aは、膜面と平行な平面への投影図でp型熱電半導体薄膜14が内部電極26と重なる領域となっており、膜面と平行な平面に第1の接合領域23を投影した第1の投影領域23Aは、膜面と平行な平面への投影図でn型熱電半導体薄膜20が内部電極26と重なる領域となっている。また、膜面と平行な平面に第2の接合領域19を投影した第2の投影領域19Aは、膜面と平行な平面への投影図でp型熱電半導体薄膜14が外部電極28と重なる領域となっており、膜面と平行な平面に第2の接合領域25を投影した第2の投影領域25Aは、膜面と平行な平面への投影図でn型熱電半導体薄膜20が外部電極30と重なる領域となっている。
そして、p型熱電半導体薄膜14が第1の接合領域17の少なくとも一部で内部電極26と接合され、n型熱電半導体薄膜20が第1の接合領域23の少なくとも一部で内部電極26と接合されている。また、p型熱電半導体薄膜14が第2の接合領域19の少なくとも一部で外部電極28と接合され、n型熱電半導体薄膜20が第2の接合領域25の少なくとも一部で外部電極30と接合されている。
より具体的には、各接合領域17、19、23、25のp型熱電半導体薄膜14とn型熱電半導体薄膜20とにはそれぞれ、図3A及び図3Bに示すように穴Hf12、Hs1、Hs2が複数形成され、穴Hf12、Hs1、Hs2の内部において、p型熱電半導体薄膜14またはn型熱電半導体薄膜20と内部電極26、外部電極28または外部電極30とが接合している。このため、第1の接合領域17、19及び第2の接合領域23、25のそれぞれにおいて、第1の投影領域17A、19Aまたは第2の投影領域23A、25Aのそれぞれの面積(投影領域面積と称する)よりも、第1の接合領域17、19及び第2の接合領域23、25のそれぞれでp型熱電半導体薄膜14またはn型熱電半導体薄膜20が内部電極26または外部電極28、30と接合する接合面積が大きくなっている。
本実施形態では、図3Aに示す如く、穴Hf12、Hs1、Hs2は、すべての接合領域17、19、23、25で、X方向と、膜面と平行でありX方向と直交する方向(Y方向)でそれぞれピッチPX1、PY1で配列されており、同一の径方向の外形寸法D1とされている。外形寸法D1は、膜面に平行な方向の寸法である。本実施形態では、穴Hf12、Hs1、Hs2は、ほぼ円形とされているので、穴Hf12、Hs1、Hs2の径方向の外形寸法D1は穴Hf12、Hs1、Hs2のほぼ直径となる。ただし、必ずしも穴は円形である必要はなく、(角の丸い)多角形形状とされていてもよい。本実施形態の例では、ピッチPX1及びピッチPY1は、穴Hf12、Hs1、Hs2の径方向の外形寸法D1の2倍となっている。穴Hf12、Hs1、Hs2のY方向のピッチPY1は、穴Hf12、Hs1、Hs2の径方向の外形寸法D1の1.1から4倍であることが好ましく、1.2から2.2倍であることがより好ましい。これについて、図10および図11を用いて以下に説明する。
図10は、p型熱電半導体薄膜熱電薄膜またはn型熱電半導体薄膜熱電薄膜を一般的に表した熱電半導体薄膜90の膜面に平行な面による断面図である。図10において熱電半導体薄膜90の膜抵抗をRとして、熱電半導体薄膜90の膜面に平行な面による断面図で見た単位長さ当たりの界面コンダクタンスの逆数で定義される接触抵抗率をrとする。ここで、界面コンダクタンスとは、電極(内部電極または外部電極)の界面に接する部分の電位が一定とみなせる場合に、界面を通過する電流を、界面に生じる電位差で割ったものであり、上記単位長さとは、熱電半導体薄膜90の膜面に平行な面による断面図で見たときの界面の長さである。穴Hf12、Hs1、Hs2が円形である場合、穴Hf12、Hs1、Hs2の直径をd(d=D1)として、Y方向の穴の間隔をd×g (PY1=d(1+g))、X方向の穴の間隔をd×g(PX1=d(1+g))とすれば、熱電半導体薄膜90と電極(内部電極または外部電極)との接合領域の単位幅当たりのコンダクタンス(抵抗の逆数)fは、式(1)で与えられる。ここでLは、図10に示されるように、穴が形成されている領域のX方向の長さである。
Figure 0006665464
式(1)において、Lが無限大のときには、これは、式(2)となり、gが1のときに最大となる。つまり、gは1のときに電極部分の接合抵抗は最小となる。gが1ならPY=2×dとなる。
Figure 0006665464
しかし、実用的にはLは有限の値であり、コストを考えれば小さい方が良く、fの性質から、Lを、式(3)で表される値より大きくした場合のコンダクタンスの伸びは小さく、Lを式(3)で与えられる長さとするのが適当と考えられる。
Figure 0006665464
しかしながら、式(3)ではgが大きい場合にLが大きくなってしまう。そこで式(3)でg=1とした式(4)とする。
Figure 0006665464
Lを式(4)の長さにすれば、コンダクタンス値fは式(5)で表され、式(2)と式(5)を用いて、コンダクタンス値fのgに対するグラフを書くと、図11のようになる。図11において、コンダクタンス値fをグラフ化するうえでは、Lが無限大である場合と、Lが有限でgの値によらずに一定である場合の例を表示した。
Figure 0006665464
このことから、電極のY方向の長さが長くなっても構わないのであればgは0.1から10程度までの間で良いが、電極のY方向の長さを実用的な範囲にするならば、gは0.1から3までの範囲であるべきであり、より好ましくはgは0.2から1.2の範囲が望ましい。つまり、穴Hf12、Hs1、Hs2のY方向のピッチPY1は、穴Hf12、Hs1、Hs2の径方向の外形寸法D1の1.1から4倍であることが好ましく、1.2から2.2倍であることがより好ましい。
尚、穴の形状が円形でない場合はfの数式は修正を受けるが、fの数式そのものではなく、好ましいgの範囲はほとんど影響を受けない。
なお、後述するように、穴Hf12、Hs1、Hs2の径方向の外形寸法D1は穴Hf12、Hs1、Hs2の深さより小さいので、複数の穴Hf12、Hs1、Hs2を接合領域17、19、23、25に高密度に形成できる。なお、現状では、穴Hf12、Hs1、Hs2は、穴の径方向の寸法で下限の大きさは大体70nmで、その深さはアスペクト比で1:70ぐらいまで(穴の径方向の外形寸法の70倍くらいまで)可能である。
図3Bに示す如く、第1の接合領域17、23では、穴Hf12が、p型熱電半導体薄膜14及び境界膜20Aを貫通し、n型熱電半導体薄膜20にまで連続して形成されている。第2の接合領域19では、穴Hs1がp型熱電半導体薄膜14をほとんど貫通して、境界膜20Aの表面が穴Hs1の底となっている。第2の接合領域25では、穴Hs2がn型熱電半導体薄膜20をほとんど貫通している。なお、p型熱電半導体薄膜14の膜厚Tp1とn型熱電半導体薄膜20の膜厚Tn1とは、ほぼ同一である。即ち、第2の接合領域19、25では、穴Hs1(Hs2)の深さは、穴Hs1(Hs2)が形成されているp型熱電半導体薄膜14の膜厚Tp1(n型熱電半導体薄膜20の膜厚Tn1)に相当している。そして、図3Bに示す如く、穴Hf12、Hs1、Hs2の径方向の外形寸法D1は、穴Hf12、Hs1、Hs2の深さよりも小さくなっている。
なお、内部電極26、外部電極28、30の材料には、モリブデン、チタン、モリブデンとシリコンとの合金、及びチタンとシリコンとの合金のうちの少なくともいずれか1つが含まれている。このため、内部電極26及び外部電極28、30は、p型熱電半導体薄膜14またはn型熱電半導体薄膜20が内部電極26または外部電極28、30と接合する接合面積を構成する接合表面に、モリブデン、チタン、モリブデンとシリコンとの合金、及びチタンとシリコンとの合金のうちの少なくともいずれか1つを含んでいる。
図1に示す如く、第1伝熱部材32と第2伝熱部材34はそれぞれ、p型熱電半導体薄膜14及びn型熱電半導体薄膜20の膜厚方向(Z方向)外側に、p型熱電半導体薄膜14及びn型熱電半導体薄膜20を挟むように配置されている。
同時に、第1伝熱部材32は、内部電極26に直接的に当接している。また、第2伝熱部材34は、第2端部18、24の下方に、n型熱電半導体薄膜20に直接的に当接して配置されている。即ち、第1伝熱部材32は第1端部16、22と熱的に接続されており、第2伝熱部材34は第2端部18、24に熱的に接続されている。なお、第1伝熱部材32は、内部電極26以外からの熱伝導を低減するために、内部電極26に当接する部分32Aのみを凸形状とされている。また、熱電半導体薄膜のX方向での温度差が生じやすいように、第2端部18、24付近のみのn型熱電半導体薄膜20に第2伝熱部材34が当接されている。つまり、熱電半導体薄膜のX方向は温度勾配の方向である。また、第1伝熱部材32を機械的に支持するとともに、第2伝熱部材34からの熱の流入を最低限に抑制可能な、熱抵抗が大きい支持部材33が第2伝熱部材34と第1伝熱部材32との間に設けられている。
なお、第1伝熱部材32、第2伝熱部材34は、例えばシリコン基板などを用いることができる。第1伝熱部材32については、内部電極26との密着性だけを考慮すればよいので、熱伝導率の高いセラミック材料(アルミナや窒化アルミなど)や内部電極26との導通を回避するための絶縁処理を施した金属などを用いることもできる。第2伝熱部材34は、例えば部分的にエッチングした基板12をそのまま用いることができる。
次に、薄膜熱電素子10の製造方法について、図4、図5を用いて説明する。
最初に、基板12上に上述した超格子構造を有する多層膜のn型熱電半導体薄膜20をエピタキシャル成長させて形成する。即ち、n型熱電半導体薄膜20は、(シリコン)基板12の原子面間隔に倣い、エピタキシャル成長する。
次に、大気に曝露することなく、連続して、境界膜20A(高抵抗シリコン薄膜または高抵抗シリコンゲルマニウム合金薄膜)をエピタキシャル成長させて形成する。
次に、大気に曝露することなく、連続して、同様に上述した超格子構造を有する多層膜のp型熱電半導体薄膜14を境界膜20A上にエピタキシャル成長させて形成し、一対のp型熱電半導体薄膜14とn型熱電半導体薄膜20とを膜厚方向(Z方向)で積層する(図4A)。
なお、境界膜20Aが高抵抗シリコン薄膜の場合、及び、エピタキシャル成長された抵抗率10Ω・cm以上のシリコン(Si)膜(膜厚10nm程度)(高抵抗シリコン薄膜)上にさらにエピタキシャル成長された抵抗率10Ω・cm以上のシリコンとゲルマニウムの合金(SiGe)膜(膜厚10nm以上、ゲルマニウムの組成比率は10〜35atomic%。)(高抵抗シリコンゲルマニウム合金薄膜)を積層し、更にその上にエピタキシャル成長された抵抗率10Ω・cm以上のシリコン(Si)膜(膜厚10nm程度)(高抵抗シリコン薄膜)を積層した3層構造の積層膜の場合のいずれの場合であっても、p型熱電半導体薄膜14m1及びp型熱電半導体薄膜14m2は境界膜20Aの上にエピタキシャル成長が可能である。このため、p型熱電半導体薄膜14は境界膜20Aの原子面間隔に倣い、エピタキシャル成長する。
次に、フォトレジストを塗布、露光、現像することでエッチングマスクを形成する。このエッチングマスクにより、図示されていないが、同一基板上に複数の素子を同時に形成する。そして、RIE(リアクティブイオンエッチング)などを用いてp型熱電半導体薄膜14と境界膜20Aをエッチングし、第1端部16と第2端部18とを形成する。なお、境界膜20AもX方向で、第1端部16と第2端部18の位置に対応して端部が形成される。エッチング後、フォトレジストを除去する(図4B)。なお、エッチングによりp型熱電半導体薄膜14の結晶性が劣化すると、接合領域17、19おけるp型熱電半導体薄膜14と内部電極26または外部電極28との接合抵抗の増加につながる。このため、RIEではp型熱電半導体薄膜14の結晶性にダメージが少ない低バイアス条件や、パルス変調プラズマなどの方法をとることが望ましい(n型熱電半導体薄膜20に対しても同様)。なお、エッチング完了後にアニール工程を挿入し、エッチングにより劣化した熱電半導体薄膜の結晶性の回復を図ってもよい。
次に、フォトレジストを塗布、露光、現像することでエッチングマスクを形成する。そして、RIEなどを用いてn型熱電半導体薄膜20をエッチングし、第1端部22と第2端部24を形成する。エッチング後、フォトレジストを除去する(図4C)。
次に、フォトレジストを塗布、露光、現像することでエッチングマスクを形成する。そしてRIEなどを用いて、第1の接合領域17、23において、p型熱電半導体薄膜14とn型熱電半導体薄膜20とを電気的に接続するための穴Hf12を複数形成する。エッチング後、フォトレジストを除去する(図4D)。なお、穴Hf12はp型熱電半導体薄膜14を貫通し、n型熱電半導体薄膜20にまで連続して形成される。穴Hf12はn型熱電半導体薄膜20をほとんど貫通している。このため、穴Hf12の深さは、p型熱電半導体薄膜14の膜厚Tp1と境界膜20Aの膜厚とn型熱電半導体薄膜20の膜厚Tn1との和に相当している。
次に、フォトレジストを塗布、露光、現像することでエッチングマスクを形成する。そしてRIEなどを用いて、第2の接合領域19において、p型熱電半導体薄膜14と外部電極28とを電気的に接続するための穴Hs1を形成する(接合面積を増大させる工程)。エッチング後、フォトレジストを除去する(図4E)。なお、本実施形態では、エッチングは、穴Hs1がp型熱電半導体薄膜14を殆ど貫通する深さまで行われるが、境界膜20Aを貫通しないようにする。なお、外部電極28の材料が、p型熱電半導体薄膜14の接合表面とn型熱電半導体薄膜20の接合表面で接合抵抗が異なるものである場合(例えば、p型熱電半導体薄膜14に対して接合される外部電極28の材料がPtや、高濃度不純物ドープされたp型シリコン若しくは高濃度不純物ドープされたp型のシリコンとゲルマニウムの合金などのように、p型熱電半導体薄膜14に対して接合抵抗が低く、n型熱電半導体薄膜20に対して接合抵抗が高い材料の場合)には、穴Hs1が境界膜20Aを貫通する深さまで、場合によってはn型熱電半導体薄膜20をエッチングするがn型熱電半導体薄膜20を完全に貫通しない深さまで、エッチングを行っても良い。
次に、フォトレジストを塗布、露光、現像することでエッチングマスクを形成する。そしてRIEなどを用いて、第2の接合領域25において、n型熱電半導体薄膜20と外部電極30とを電気的に接続するための穴Hs2を形成する。エッチング後、フォトレジストを除去する(図5A)。
次に、フォトレジストを塗布、露光、現像することでリフトオフ用のマスクを形成する。そして、内部電極26及び外部電極28、30の材料がスパッタ法により各接合領域17、19、23、25に堆積される。そして、リフトオフ用のマスクを除去することで所定の形状とされた内部電極26、外部電極28、30が形成される(設けられる)(図5B)。なお、図5Bでは、内部電極26及び外部電極28、30は、内部電極26及び外部電極28、30が同一の材料で構成されている場合を想定して、同時に同一のマスクを用いて形成されているが、内部電極26及び外部電極28、30を別々の工程、別々の材料を用いて順次形成してもよい。内部電極26及び外部電極28、30の材料には、モリブデン、チタン、モリブデンとシリコンとの合金、及びチタンとシリコンとの合金のうちの少なくともいずれか1つが含まれる。
穴Hf12、Hs1、Hs2の中には、モリブデン、チタン、モリブデンとシリコンとの合金、及びチタンとシリコンとの合金のうちの少なくともいずれか1つが堆積されている。このため、内部電極26及び外部電極28、30は、p型熱電半導体薄膜14またはn型熱電半導体薄膜20が内部電極26または外部電極28、30と接合する接合面積を構成する接合表面に、モリブデン、チタン、モリブデンとシリコンとの合金、及びチタンとシリコンとの合金のうちの少なくともいずれか1つを含むこととなる。なお、モリブデン、チタン、モリブデンとシリコンとの合金とチタン、及びシリコンとの合金のうちの少なくともいずれか1つを含む材料が、ある程度の膜厚を有する状態となったところで、別の電気抵抗のより低い材料を配線材料としてスパッタする。このようにして、内部電極26及び外部電極28、30を形成することが望ましい。
次に、第1伝熱部材32を内部電極26に接合する(図5C)。第1伝熱部材32は、内部電極26との効果的な伝熱を可能とするために、内部電極26に接続される部分32Aが凸形状とされている。また、第1伝熱部材32を機械的に支持するとともに、基板12からの熱の流入を最低限に抑制可能な、熱抵抗が大きい支持部材33を基板12と第1伝熱部材32との間に設ける。
次に、熱電半導体薄膜のX方向に温度差が生じやすいように、第1端部16、22付近の基板12をエッチングして、基板12が第2端部18、24付近のみのn型熱電半導体薄膜20に配置されるようにする(図5D)。そして、基板12を図示せぬベース基板と接合した後、ベース基板ごと切断することで、個々の素子が切り出される。そして、基板12は第2伝熱部材34として機能する。
次に、薄膜熱電素子10の動作について説明する。
例えば、第2伝熱部材34の温度を上昇させて、第1伝熱部材32との間に温度差を設ける。すると、第1伝熱部材32、第2伝熱部材34の熱抵抗に従い、第1伝熱部材32の温度が第1端部16、22に伝わり、第2伝熱部材34の温度が第2端部18、24に伝わる。即ち、第1端部16、22が第2端部18、24よりも低温とされて、X方向において、p型熱電半導体薄膜14及びn型熱電半導体薄膜20に温度差が生じる。このため、p型熱電半導体薄膜14及びn型熱電半導体薄膜20で、セーベック効果により起電力が生じる。本実施形態では、例えば、温度差として数百度を想定したときに、1Vに近い起電力を得ることができる。
このように、本実施形態は、p型熱電半導体薄膜14とn型熱電半導体薄膜20とが薄膜である。このため、薄膜熱電素子10を少ない材料で構成でき、且つ、小型化することが可能である。加えて、p型熱電半導体薄膜14及びn型熱電半導体薄膜20のそれぞれには、第1の接合領域17、23が設けられ、p型熱電半導体薄膜14及びn型熱電半導体薄膜20の膜面と平行な平面に第1の接合領域17を投影した第1の投影領域17Aは、膜面と平行な平面への投影図でp型熱電半導体薄膜14が内部電極26と重なる領域であり、膜面と平行な平面に第1の接合領域23を投影した第1の投影領域23Aは、膜面と平行な平面への投影図でn型熱電半導体薄膜20が内部電極26と重なる領域であり、p型熱電半導体薄膜14が第1の接合領域17の少なくとも一部で内部電極26と接合され、n型熱電半導体薄膜20が第1の接合領域23の少なくとも一部で内部電極26と接合されている。
また、p型熱電半導体薄膜14及びn型熱電半導体薄膜20のそれぞれには、第2の接合領域19、25が設けられ、p型熱電半導体薄膜14及びn型熱電半導体薄膜20の膜面と平行な平面に第2の接合領域19を投影した第2の投影領域19Aは、膜面と平行な平面への投影図でp型熱電半導体薄膜14が外部電極28と重なる領域であり、膜面と平行な平面に第2の接合領域25を投影した第2の投影領域25Aは、膜面と平行な平面への投影図でn型熱電半導体薄膜20が外部電極30と重なる領域であり、p型熱電半導体薄膜14が第2の接合領域19の少なくとも一部で外部電極28と接合され、n型熱電半導体薄膜20が第2の接合領域25の少なくとも一部で外部電極30と接合されている。
そして、第1の接合領域17、19及び第2の接合領域23、25のそれぞれにおいて、第1の投影領域17A、19Aまたは第2の投影領域23、25のそれぞれの面積である投影領域面積よりも、第1の接合領域17、19及び第2の接合領域23、25のそれぞれでp型熱電半導体薄膜14またはn型熱電半導体薄膜20が内部電極26または外部電極28、30と接合する接合面積が大きくなっている。このため、第1の接合領域17、19及び第2の接合領域23、25のそれぞれにおいては、第1の投影領域17A、19Aまたは第2の投影領域23、25の拡大をすることなく、接合面積を増加させることができ、これらの接合の接合抵抗を小さくすることができる。
なお、原理的には、穴Hf12、Hs1、Hs2の径方向の外形寸法D1を可能な限り小さくし、できるだけ多くの穴Hf12、Hs1、Hs2を形成することで、接合面積を増大させることができる。しかし、穴Hf12、Hs1、Hs2の径方向の外形寸法D1を極端に小さくしていくと、電極の材料を穴Hf12、Hs1、Hs2に十分堆積できず電極と熱電半導体薄膜との接合を十分取れなくなるおそれが出てくる。
この問題は穴Hf12、Hs1、Hs2の外形寸法D1が70nm以下で、穴Hf12、Hs1、Hs2の深さが、穴Hf12、Hs1、Hs2の外形寸法D1の70倍以上になると顕著になると考えられる(なお、ここで70倍以上と表したのは、穴の外形寸法が70nmで、穴の深さが外形寸法の70倍程度までの穴であれば、シリコン基板に対しては、穴あけ、電極材料の穴内部への堆積が可能であるからである。熱電材料としてシリコン系の材料を用いる場合、同様の技術で対応可能である。)。
同時に、熱電半導体薄膜に穴Hf12、Hs1、Hs2の径方向の外形寸法D1よりも穴同士の間隔を小さくして出来るだけ多数の穴Hf12、Hs1、Hs2を形成するならば、穴を開けた領域の熱電半導体薄膜の実効的な膜抵抗が増大していくこととなる。つまり、穴Hf12、Hs1、Hs2の径方向の外形寸法D1を可能な限り小さくし、できるだけ多くの穴Hf12、Hs1、Hs2を形成しても、十分に接合抵抗を低減することができないと考えられる。
これに対して、本実施形態では、穴Hf12、Hs1、Hs2が、接合領域17、19、23、25内で複数形成されている。そして、穴Hf12、Hs1、Hs2のピッチPY1は、穴Hf12、Hs1、Hs2の径方向の外形寸法D1の1.1から4倍である。そして、穴Hf12、Hs1、Hs2の径方向の外形寸法D1は、穴Hf12、Hs1、Hs2の深さよりも小さいが、穴Hf12、Hs1、Hs2の深さの70分の1よりも大きくされている。更に、穴Hf12の深さは、穴Hf12が形成されているp型熱電半導体薄膜14、境界膜20A及びn型熱電半導体薄膜20の膜厚の和に相当しており、穴Hs1の深さは、穴Hs1が形成されているp型熱電半導体薄膜14の膜厚Tp1に相当しており、穴Hs2の深さは、穴Hs2が形成されているn型熱電半導体薄膜20の膜厚Tn1に相当している。このため、本実施形態では、これらの相乗効果で、穴Hf12、Hs1、Hs2が容易に形成可能であるとともに、実際的に電極と熱電半導体薄膜との接合抵抗を最小とすることができる。
また、本実施形態では、p型熱電半導体薄膜14とn型熱電半導体薄膜20とが膜厚方向(Z方向)に積層され、穴Hf12が、p型熱電半導体薄膜14を貫通し、n型熱電半導体薄膜20にまで連続して形成されている。このため、熱電半導体薄膜の占める面積を、p型熱電半導体薄膜とn型熱電半導体薄膜とを平面的に並べて配置させるよりも少なくすることができる。
同時に、p型熱電半導体薄膜14とn型熱電半導体薄膜20との距離を、p型熱電半導体薄膜とn型熱電半導体薄膜とを平面的に並べて配置させるよりも短くできる。また、少なくとも内部電極26とp型熱電半導体薄膜14との接合面積を増大させることができる。従って、薄膜熱電素子10の小型化が促進されると共に、内部電極26を介したp型熱電半導体薄膜14とn型熱電半導体薄膜20との間の接合抵抗を低減することができる。
また、本実施形態では、接合領域17、19、23、25に形成されているのは穴Hf12、Hs1、Hs2である。即ち、穴Hf12、Hs1、Hs2は、p型熱電半導体薄膜14とn型熱電半導体薄膜20の断面を側壁に露出させており、その側壁表面に電極が接合することで接合面積の増大を図ることができる。
ここで、熱電半導体薄膜は、超格子構造を有する多層膜とされており、このため、穴Hf12、Hs1、Hs2は当該多層膜を構成する複数の膜を貫通した状態としている。即ち、穴Hf12、Hs1、Hs2に電極の材料が充填されることで、多層膜を構成する複数の膜界面にできる導通チャネルに電極が直接的に接続される。このため、本実施形態では、接合面積の増大との相乗効果で、ショットキー抵抗を含む接合抵抗を効果的に低減することができる。
なお、熱電半導体薄膜が超格子構造を有する多層膜とされており、その多層膜は、不純物を添加したシリコンとゲルマニウムとの合金からなる膜と、該膜と交互に積層されるシリコンからなる膜、とを備えている。この構造は、フォノンの各積層界面での散乱と、2次元的に閉じ込められたキャリアによって、熱電半導体薄膜の性能指数を極めて高くすることができるので、高効率な薄膜熱電素子10を実現することができる。同時に、薄膜熱電素子10の小型化に更に有利となり、膜形成のための材料を極めて少なくすることができる。
また、本実施形態では、接合領域17、19、23、25において熱電半導体薄膜と接合される電極は、接合面積を構成する接合表面に、モリブデン、チタン、モリブデンとシリコンとの合金、及びチタンとシリコンとの合金のうちの少なくともいずれか1つを含んでいる。このため、接合する熱電半導体薄膜がp型とn型のいずれであっても、接合表面の材料を共通にでき相応に抵抗を低減できる。すなわち、電極形成にかかわる工数を少なくでき、薄膜熱電素子10の低コスト化の促進と高効率化を行うことができる。
また、本実施形態では、薄膜熱電素子10は、p型熱電半導体薄膜14とn型熱電半導体薄膜20の一対で構成され、第1端部16、22と第2端部18、24のうちのより低温とされる第1端部16、22側に、内部電極26が設けられている。このため、p型熱電半導体薄膜14とn型熱電半導体薄膜20との間に形成されるpn接合に印加される電圧がpn接合の逆方向バイアスであるため、pn接合を介して流れるリーク電流を低減出来、リーク電流による熱電変換効率ロスを低減することができる。
また、本実施形態では、p型熱電半導体薄膜14の膜14m2及び境界膜20Aの母材が共通(シリコン)で、p型熱電半導体薄膜14の膜質を良好にすることができる。境界膜の膜厚を大きくすれば、境界膜を介したキャリアのトンネル伝導を抑制することが可能なため、境界膜20Aの抵抗値を大きくできるので、境界膜20Aを介したp型熱電半導体薄膜14とn型熱電半導体薄膜20との間の境界抵抗を大きくすることができる。このため、高効率な薄膜熱電素子10を実現することができる。
また、本実施形態においては、p型熱電半導体薄膜14及びn型熱電半導体薄膜20の膜厚方向(Z方向)外側にそれぞれ配置されるとともに、第1端部16、22に熱的に接続された第1伝熱部材32と第2端部18、24に熱的に接続された第2伝熱部材34とを備えている。これにより、薄膜熱電素子10の上下方向の(熱源による)温度差を、膜面内方向の温度差へと変換することが出来る。
即ち、本実施形態は、薄膜熱電素子10の小型化が可能でありながら、内部電極26または外部電極28、30とp型熱電半導体薄膜14またはn型熱電半導体薄膜20との接合抵抗を小さくして、高い効率が実現可能となるという効果を奏する。
本発明について本実施形態を挙げて説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。即ち本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでも無い。
例えば、実施形態1においては、接合領域17、19、23、25で穴Hf12、Hs1、Hs2が複数形成され、穴Hf12、Hs1、Hs2のピッチが穴Hf12、Hs1、Hs2の径方向の外形寸法の2倍に相当していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、穴Hf12、Hs1、Hs2のピッチが、実施形態2で示す如く、接合領域の領域部分ごとに異なっていてもよい。
(実施形態2)
次に、実施形態2の薄膜熱電素子35について説明する。実施形態2の薄膜熱電素子35について、実施形態1の薄膜熱電素子10と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。実施形態1の薄膜熱電素子10と共通している要素は同じ符号を用いている。図6Aは、実施形態2の薄膜熱電素子35の、p型熱電半導体薄膜14及びn型熱電半導体薄膜20の膜面と平行な平面への投影図(膜面と平行な平面への投影図と称する)である。図6Bは、薄膜熱電素子35の、熱電半導体薄膜の膜厚方向に平行な平面(XZ平面)による断面の一部拡大図である。薄膜熱電素子35は、実施形態1の薄膜熱電素子10に対し、穴Hf12、Hs1、Hs2の配置のされ方が異なる。薄膜熱電素子35は、実施形態1の薄膜熱電素子10の内部電極26、外部電極28、外部電極30、第1の接合領域17、第1の接合領域23、第2の接合領域19及び第2の接合領域25にかえて、内部電極48、外部電極50、外部電極52、第1の接合領域39、第1の接合領域45、第2の接合領域41及び第2の接合領域47をこの順に対応して有している。また、実施形態2においては、第1の投影領域39A、第1の投影領域45A、第2の投影領域41A及び第2の投影領域47Aが、実施形態1における第1の投影領域17A、第1の投影領域23A、第2の投影領域19A及び第2の投影領域25Aにこの順に対応している。薄膜熱電素子35は、図6Aおよび図6Bに示す如く、第1の接合領域39、45及び第2の接合領域41、47の各接合領域において、第1端部16、22から第2端部18、24への方向(X方向)において他方の端部に近い領域部分よりも他方の端部から遠い領域部分で、(第1の投影領域39A、第1の投影領域45A、第2の投影領域41Aまたは第2の投影領域47Aの面積である)投影領域面積当たりの接合面積(接合領域39、41、45、47の各接合領域でp型熱電半導体薄膜14またはn型熱電半導体薄膜20が内部電極48、外部電極50または外部電極52と接合する接合面積)が大きくなっている。
本実施形態における他方の端部に近い領域部分と遠い領域部分について、図6Aの第2の接合領域47で説明する。例えば、第2の接合領域47のX方向の中心を基準にすると、他方の端部に近い領域部分とは符号Fhで示される部分となり、他方の端部から遠い領域部分とは符号Shで示される部分となる。実際に、符号Shで示される部分ではY方向で穴Hs2のピッチがPY1とされているのに対して、符号Fhで示される部分ではY方向で穴Hs2のピッチがPY2(=2×PY1)となり、PY1よりも大きくされている。即ち、接合領域39、41、45、47で、Y方向に複数形成された穴Hf12、Hs1、Hs2のY方向のピッチが、X方向において、他方の端部から遠い領域部分よりも該他方の端部に近い領域部分で広くされている。
このため、薄膜熱電素子35の電気抵抗に占める接合領域39、41、45、47における熱電半導体薄膜の膜抵抗の寄与について考えると、他方の端部から遠い領域部分から膜内を流れる電流経路に挿入される熱電半導体薄膜の実効的な膜抵抗の増大を防止できる。即ち、接合領域39、41、45、47の全域で電流を流すことが可能となる。すなわち、実施形態1のような穴Hf12、Hs1、Hs2の配置では、他方の端部から遠い領域部分から流れる電流は膜に穴が開いて実効的な膜抵抗が大きくなった領域を長く通過する。
このため、電流が流れにくくなり、他方の端部に近い領域部分を主に電流が通ることで結果的に接合抵抗を増加させるおそれがあった。それに対して、本実施形態のような穴Hf12、Hs1、Hs2の配置とすることで、接合領域全域を有効に機能させることができ、接合抵抗を更に低減することが可能となる。
なお、本実施形態は、各接合領域39、41、45、47内で、X方向において他方の端部に近い領域部分よりも該他方の端部から遠い領域部分で投影領域面積当たりの接合面積が大きくされていることを、複数の穴Hf12、Hs1、Hs2によって具体化したものであって、本発明はこれに限定されない。例えば上記の如く穴を使うにしても、1つの穴若しくはY方向に一列に並んだ穴を他方の端部から遠い領域部分に形成することで、本実施形態の相応の効果を得るようにしてもよい。
あるいは複数の穴が等ピッチで形成されていても、穴の深さを他方の端部に近い領域部分よりも該他方の端部から遠い領域部分で深くするといったことで、本実施形態の相応の効果を得るようにしてもよい。
なお、ここでは、理解を容易とするために、接合領域47のX方向の中心を基準として説明したが、これに限られず基準を設けることができる。
また、上記実施形態では、n型熱電半導体薄膜上にp型熱電半導体薄膜が積層されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、実施形態3で示す如く、p型熱電半導体薄膜とn型熱電半導体薄膜とが平面的に並べて配置されていてもよい。
(実施形態3)
次に、実施形態3の薄膜熱電素子55について説明する。実施形態3の薄膜熱電素子55について、実施形態1の薄膜熱電素子10と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。実施形態1の薄膜熱電素子10と共通している要素は同じ符号を用いている。図7Aは、実施形態3の薄膜熱電素子55の、p型熱電半導体薄膜14及びn型熱電半導体薄膜20の膜面と平行な平面への投影図(膜面と平行な平面への投影図と称する)である。図7Bは、薄膜熱電素子55の、熱電半導体薄膜の膜厚方向に平行な平面(XZ平面)による断面の一部拡大図である。実施形態3の薄膜熱電素子55は、図7A及び図7Bに示す如く、p型熱電半導体薄膜14とn型熱電半導体薄膜20とが平面的に並べて配置されていている。
薄膜熱電素子55では、p型熱電半導体薄膜14が、第1端部16、22側に設けられた内部電極68と第1の接合領域59の少なくとも一部で接合され、n型熱電半導体薄膜20が、内部電極68と第1の接合領域65の少なくとも一部で接合されている。
また、p型熱電半導体薄膜14が、第2端部18側に設けられた外部電極70と第2の接合領域61の少なくとも一部で接合され、n型熱電半導体薄膜20が、第2端部24側に設けられた外部電極72と第2の接合領域67の少なくとも一部で接合されている。第1の接合領域59には穴Hf1が形成され、第1の接合領域65には穴Hf2が形成され、第2の接合領域61には穴Hs1が形成され、第2の接合領域67には穴Hs2が形成されている。ここで、第1の接合領域59、65及び第2の接合領域61、67のいずれにおいても、穴Hf1、Hf2、Hs1、Hs2の深さは熱電半導体薄膜の膜厚Tn1(=Tp1)とされている。
このため、穴Hf1、Hf2、Hs1、Hs2のエッチングは一度で済ませることができる。すなわち、実施形態1の穴Hf1、Hf2、Hs1、Hs2の形成のために行われていた複数回のエッチングに比べて、エッチングの工数を少なくできる。同時に、エッチングによる熱電半導体薄膜へのダメージを低減できる。即ち、本実施形態により、実施形態1とは異なる観点から薄膜熱電素子の低コスト化と高効率化が可能である。
また、上記実施形態1〜3においては、穴Hf12(Hf1、Hf2)、Hs1、Hs2が、接合領域で複数形成されて、穴Hf12(Hf1、Hf2)、Hs1、Hs2の径方向の外形寸法が、それぞれ穴Hf12(Hf1、Hf2)、Hs1、Hs2の深さよりも小さくされて、更に、穴Hf12(Hf1、Hf2)、Hs1、Hs2の深さは、穴Hf12(Hf1、Hf2)、Hs1、Hs2がそれぞれ形成されている熱電半導体薄膜の膜厚に相当していたが、本発明はこれに限定されない。
輪郭の長さが長い穴が1つであってよいし、穴が複数であってもその深さが熱電半導体薄膜の膜厚の途中までであってもよい。また、穴の径方向の外形寸法がその深さよりも大きくてもよい。いずれであっても、相応に接合面積を増大させて、接合抵抗を低減させることが可能である。
あるいは、接合面積を増加させるのに、4方が側壁とされる穴ではなく、凹部が形成されていてもよい。凹部には、穴も含まれるが3方若しくは2方が側壁とされるスリット形状なども含まれる。
図8Aは、p型熱電半導体薄膜14にスリットSt1が形成されている例を示す図であり、図8Bは、p型熱電半導体薄膜14にスリットSt2が形成されている例を示す図である。図8A及び図8Bは、p型熱電半導体薄膜14の膜面と平行な平面への投影図である。凹部である場合には、相応に接合抵抗を低減でき、穴よりも形状許容度が大きく、容易に加工することが可能である。或いは、1方のみに側壁がある段差(上記図8A及び図8Bに示すほどではないぎざぎざの波形なども含む)などであってよい。
また、熱電半導体薄膜の表面のみを若干うねらせた形状であってもよい。更に言えば、熱電半導体薄膜の表面に逆に凸部を設けるといったことであってもよい。少なくとも人為的に接合面積を増大させる処理が接合領域になされていればよい。なお、図8Aの例は、X方向で幅が一定のスリットSt1が接合領域75に形成されている例で、図8Bの例は、X方向で幅が変化したスリットSt2が接合領域77に形成されている例である。図8BのスリットSt2であれば、実施形態2で得られる効果を相応に奏することができる。
また、上記実施形態1〜3においては、接合領域においてp型熱電半導体薄膜またはn型熱電半導体薄膜と接合される内部電極または外部電極は、接合面積を構成する接合表面に、モリブデン、チタン、モリブデンとシリコンとの合金、及びチタンとシリコンとの合金のうちの少なくともいずれか1つを含んでいるが、本発明はこれに限定されない。
例えば、接合領域においてn型熱電半導体薄膜と接合される内部電極または外部電極は、接合面積を構成する接合表面に、希土類金属、イットリウム、希土類金属とシリコンとの合金、及びイットリウムとシリコンとの合金のうちの少なくともいずれか1つを含んでいてもよい。また、接合領域においてp型熱電半導体薄膜と接合される内部電極または外部電極は、接合面積を構成する接合表面に、白金、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、それらのうちの少なくとも2つを含む合金、及びそれらのうちの少なくとも1つとシリコンとの合金のうちの少なくともいずれか1つを含んでいてもよい。
これらの電極材料の場合には、p型熱電半導体薄膜とn型熱電半導体薄膜に対してショットキー障壁が比較的低く、接合抵抗を低減することができる。なお、この場合の電極は、p型熱電半導体薄膜及びn型熱電半導体薄膜における接合領域の接合表面に対して、それぞれ上記最適な材料が形成され、それらを更に電気伝導率のよい金属で接続して形成することとなる。
例えば、図9に示す如く、内部電極または外部電極を第1電極部材80と第2電極部材82とから構成して、熱電半導体薄膜78(p型熱電半導体薄膜またはn型熱電半導体薄膜)と接する層を第1電極部材80とすることができる。この場合には、p型熱電半導体薄膜及びn型熱電半導体薄膜に別々に最適な金属を選択して電気的な接続を行うので、接合抵抗をより効果的に低減することが可能となる。
若しくは、接合領域においてp型熱電半導体薄膜またはn型熱電半導体薄膜と接合される内部電極または外部電極は、接合面積を構成する接合表面に、高濃度不純物ドープされたシリコン若しくは高濃度不純物ドープされたシリコンとゲルマニウムとの合金を含んでいてもよい。ここで、高濃度不純物とは、1019cm−3の以上の濃度の不純物をさす。この高濃度不純物の濃度は、1020cm−3から1022cm−3の範囲であることが好ましい。
この場合には、p型熱電半導体薄膜の接合領域に対しては、電極をp型半導体とするように不純物をドープし、n型熱電半導体薄膜の接合領域に対しては、電極をn型半導体とするように不純物をドープする。即ち、この場合の電極も、p型熱電半導体薄膜及びn型熱電半導体薄膜における接合領域の接合表面に対して、それぞれp型半導体及びn型半導体を形成し、それらを更に電気伝導率のよい金属で接続して形成することとなる(図9)。
なお、電気伝導率のよい金属とp型半導体との界面には、p型半導体とのショットキー障壁が低くなる白金、イリジウムなどの金属、もしくはチタン、モリブデンなどのバリアメタルを挿入し、電気伝導率のよい金属とn型半導体との界面には、n型半導体とのショットキー障壁が低くなるイットリウム、希土類などの金属、もしくはチタン、モリブデンなどのバリアメタルを挿入することが望ましい。この場合においては、電極材料が半導体であるので、熱電半導体薄膜との材料整合を良好とすることができ、接合抵抗を更に低減することができる。
また、上記実施形態1〜3においては、p型熱電半導体薄膜とn型熱電半導体薄膜とが、超格子構造を有する多層膜とされていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、p型熱電半導体薄膜とn型熱電半導体薄膜のいずれかだけが超格子構造を有する多層膜とされていてもよい。上記実施形態1〜3では、良好な熱電半導体薄膜の特性を備える薄膜の一例が、超格子構造を有する多層膜であって、相応に良好な熱電半導体薄膜の特性を備えるその他の薄膜を排除するものではない。
また、上記実施形態1〜3においては、薄膜熱電素子は、p型熱電半導体薄膜とn型熱電半導体薄膜の一対で構成され、第1端部と第2端部のうちのより低温とされる第1端部側でp型熱電半導体薄膜とn型熱電半導体薄膜との電気的な接続がなされていたが、本発明ではこれに限定されず、第2端部のほうがより低温とされてもよい。なお、上記実施形態1〜3の場合には、p型熱電半導体薄膜とn型熱電半導体薄膜との間に形成されるpn接合に印加される電圧の方向がpn接合の逆接合方向であるため、pn接合を通して流れる電流が低減され、p型熱電半導体薄膜とn型熱電半導体薄膜との間に形成されるpn接合を通したリーク電流による熱電変換効率のロスを低減することができる。
また、上記実施形態1〜3においては、一対のp型熱電半導体薄膜とn型熱電半導体薄膜とで、薄膜熱電素子が構成されていたが、本発明はこれに限定されず、一対以上のp型熱電半導体薄膜とn型熱電半導体薄膜とを備えていればよい。その際に、p型熱電半導体薄膜とn型熱電半導体薄膜のいずれから積層がなされてもよい。なお、複数対のp型熱電半導体薄膜とn型熱電半導体薄膜とを備えていれば、その対数に応じて(ゼーベック効果を用いる場合には)起電力を増加させることが可能となる。また、薄膜熱電素子を複数個同時に形成し、外部電極同士を直列または並列に接続することで出力電圧または出力電流を増大することも当然可能である。
本発明の薄膜熱電素子は、熱電半導体薄膜で小型の熱電素子を構成した際に、内部電極と外部電極での効率低下を防止できる熱電素子であって、ゼーベック効果により生じた起電力を利用した発電素子やセンサーなどに好適であるが、ペルチェ効果を用いた冷却用途にも利用可能である。
10、35、55…薄膜熱電素子
12…基板
14…p型熱電半導体薄膜
16、22…第1端部
17、19、23、25、39、41、45、47、59、61、65、67、75、77…接合領域
17A、19A、23A、25A、39A、41A、45A、47A…投影領域
18、24…第2端部
20…n型熱電半導体薄膜
20A…境界膜
26、48、68…内部電極
28、30、50、52、70、72…外部電極
32…第1伝熱部材
33…支持部材
34…第2伝熱部材
80…第1電極部材
82…第2電極部材
78、90・・・熱電半導体薄膜

Claims (13)

  1. 一対以上のp型熱電半導体薄膜及びn型熱電半導体薄膜と、前記p型熱電半導体薄膜及び前記n型熱電半導体薄膜のそれぞれの両端である第1端部と第2端部のうちの第1端部側に設けられると共に前記p型熱電半導体薄膜と前記n型熱電半導体薄膜とを電気的に接続する内部電極と、第2端部側に設けられると共に前記p型熱電半導体薄膜及び前記n型熱電半導体薄膜のそれぞれと外部との電気的な接続をする外部電極と、を有し、
    前記p型熱電半導体薄膜及び前記n型熱電半導体薄膜のそれぞれには、第1の接合領域と第2の接合領域とが設けられ、
    前記p型熱電半導体薄膜及び前記n型熱電半導体薄膜の膜面と平行な平面に前記第1の接合領域を投影した第1の投影領域は、前記膜面と平行な平面への投影図で前記p型熱電半導体薄膜または前記n型熱電半導体薄膜が前記内部電極と重なる領域であり、
    前記膜面と平行な平面に前記第2の接合領域を投影した第2の投影領域は、前記膜面と平行な平面への投影図で前記p型熱電半導体薄膜または前記n型熱電半導体薄膜が前記外部電極と重なる領域であり、
    前記p型熱電半導体薄膜及び前記n型熱電半導体薄膜のそれぞれが前記第1の接合領域の少なくとも一部で前記内部電極と接合され、
    前記p型熱電半導体薄膜及び前記n型熱電半導体薄膜のそれぞれが前記第2の接合領域の少なくとも一部で前記外部電極と接合され、
    前記第1および第2の接合領域のうちの1つ以上の接合領域において、前記第1または第2の投影領域の面積である投影領域面積よりも、前記第1または第2の接合領域で前記p型熱電半導体薄膜または前記n型熱電半導体薄膜が前記内部電極または前記外部電極と接合する接合面積が大きく、
    前記投影領域面積よりも前記接合面積が大きい前記第1または第2の接合領域において、前記第1端部から前記第2端部への方向において他方の端部に近い領域部分よりも該他方の端部から遠い領域部分で前記投影領域面積当たりの前記接合面積が大きいことを特徴とする薄膜熱電素子。
  2. 請求項1において、
    前記投影領域面積よりも前記接合面積が大きい前記第1または第2の接合領域の前記p型熱電半導体薄膜または前記n型熱電半導体薄膜には凹部が形成されており、前記凹部内において前記p型熱電半導体薄膜または前記n型熱電半導体薄膜と前記内部電極または前記外部電極とが接合していることを特徴とする薄膜熱電素子。
  3. 請求項2において、
    前記凹部が穴であることを特徴とする薄膜熱電素子。
  4. 請求項において、
    前記投影領域面積よりも前記接合面積が大きい前記第1または第2の接合領域において前記穴が複数形成され、前記膜面と平行であり前記第1端部から前記第2端部への方向と直交する第1の方向の前記穴のピッチが、前記第1端部から前記第2端部への方向において、他方の端部から遠い領域部分よりも該他方の端部に近い領域部分で大きいことを特徴
    とする薄膜熱電素子。
  5. 一対以上のp型熱電半導体薄膜及びn型熱電半導体薄膜と、前記p型熱電半導体薄膜及び前記n型熱電半導体薄膜のそれぞれの両端である第1端部と第2端部のうちの第1端部側に設けられると共に前記p型熱電半導体薄膜と前記n型熱電半導体薄膜とを電気的に接続する内部電極と、第2端部側に設けられると共に前記p型熱電半導体薄膜及び前記n型熱電半導体薄膜のそれぞれと外部との電気的な接続をする外部電極と、を有し、
    前記p型熱電半導体薄膜及び前記n型熱電半導体薄膜のそれぞれには、第1の接合領域と第2の接合領域とが設けられ、
    前記p型熱電半導体薄膜及び前記n型熱電半導体薄膜の膜面と平行な平面に前記第1の接合領域を投影した第1の投影領域は、前記膜面と平行な平面への投影図で前記p型熱電半導体薄膜または前記n型熱電半導体薄膜が前記内部電極と重なる領域であり、
    前記膜面と平行な平面に前記第2の接合領域を投影した第2の投影領域は、前記膜面と平行な平面への投影図で前記p型熱電半導体薄膜または前記n型熱電半導体薄膜が前記外部電極と重なる領域であり、
    前記p型熱電半導体薄膜及び前記n型熱電半導体薄膜のそれぞれが前記第1の接合領域の少なくとも一部で前記内部電極と接合され、
    前記p型熱電半導体薄膜及び前記n型熱電半導体薄膜のそれぞれが前記第2の接合領域の少なくとも一部で前記外部電極と接合され、
    前記第1および第2の接合領域のうちの1つ以上の接合領域において、前記第1または第2の投影領域の面積である投影領域面積よりも、前記第1または第2の接合領域で前記p型熱電半導体薄膜または前記n型熱電半導体薄膜が前記内部電極または前記外部電極と接合する接合面積が大きく、
    前記投影領域面積よりも前記接合面積が大きい前記第1または第2の接合領域の前記p型熱電半導体薄膜または前記n型熱電半導体薄膜には穴が複数形成されており、前記穴内において前記p型熱電半導体薄膜または前記n型熱電半導体薄膜と前記内部電極または前記外部電極とが接合し、
    前記膜面と平行であり前記第1端部から前記第2端部への方向と直交する第1の方向の前記穴のピッチが、前記第1端部から前記第2端部への方向において、他方の端部から遠い領域部分よりも該他方の端部に近い領域部分で大きいことを特徴とする薄膜熱電素子。
  6. 請求項乃至のいずれかにおいて、
    前記穴の深さは、前記穴が形成されている前記p型熱電半導体薄膜若しくは前記n型熱電半導体薄膜の膜厚に相当することを特徴とする薄膜熱電素子。
  7. 請求項乃至のいずれかにおいて、
    前記p型熱電半導体薄膜と前記n型熱電半導体薄膜とが膜厚方向に積層され、
    前記第1の接合領域に形成された前記穴が、前記p型熱電半導体薄膜を貫通し前記n型熱電半導体薄膜にまで連続して形成されている、若しくは、前記n型熱電半導体薄膜を貫通し前記p型熱電半導体薄膜にまで連続して形成されていることを特徴とする薄膜熱電素子。
  8. 請求項1乃至のいずれかにおいて、
    前記投影領域面積よりも前記接合面積が大きい前記第1または第2の接合領域において、前記n型熱電半導体薄膜と接合される前記内部電極または前記外部電極は、前記接合面積を構成する接合表面に、希土類金属、イットリウム、希土類金属とシリコンとの合金、イットリウムとシリコンとの合金、高濃度不純物ドープされたn型シリコン及び、高濃度不純物ドープされたn型のシリコンとゲルマニウムの合金のうちの少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする薄膜熱電素子。
  9. 請求項1乃至のいずれかにおいて、
    前記投影領域面積よりも前記接合面積が大きい前記第1または第2の接合領域において前記p型熱電半導体薄膜と接合される前記内部電極または前記外部電極は、前記接合面積を構成する接合表面に、白金、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、それらのうちの少なくとも2つを含む合金、それらのうちの少なくとも1つとシリコンとの合金、高濃度不純物ドープされたp型シリコン及び、高濃度不純物ドープされたp型のシリコンとゲルマニウムの合金のうちの少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする薄膜熱電素子。
  10. 請求項1乃至のいずれかにおいて、
    前記投影領域面積よりも前記接合面積が大きい前記第1または第2の接合領域において前記p型熱電半導体薄膜または前記n型熱電半導体薄膜と接合される前記内部電極または前記外部電極は、前記接合面積を構成する接合表面に、モリブデン、チタン、モリブデンとシリコンとの合金及びチタンとシリコンとの合金のうちの少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする薄膜熱電素子。
  11. 請求項1乃至10のいずれかにおいて、
    前記p型熱電半導体薄膜と前記n型熱電半導体薄膜のうちの少なくともいずれか一方の膜が、超格子構造を有する多層膜であることを特徴とする薄膜熱電素子。
  12. 請求項11において、
    前記多層膜は、不純物を添加したシリコンとゲルマニウムとの合金からなる膜と、該膜と交互に積層されるシリコンからなる膜とを備えることを特徴とする薄膜熱電素子。
  13. 請求項1乃至12のいずれかにおいて、
    前記第1端部と前記第2端部のうちのより低温とされる一方の端部側に前記内部電極が設けられていることを特徴とする薄膜熱電素子。
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