次に、図面を参照して、本発明の第1〜第4の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
更に、以下に示す第1〜第4の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、ゲート電極等の構成部品の材質や、それらの形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
また、本発明において「第1導電型」とは、p型又はn型のいずれか一方を意味し、「第2導電型」とは、第1導電型の反対導電型を意味する。このため、以下の第1〜第4の実施形態に係る半導体装置では、第1導電型がn型、第2導電型がp型のnチャネル型HEMTの場合について主に説明するが、導電型の選択の問題に過ぎない。逆に、第1導電型をp型、第2導電型をn型とするpチャネル型HEMT等の場合であっても、以下の説明における極性を逆にすることで、同様に本発明の技術的思想や効果が適用可能であり、以下の説明に用いた導電型の選択に限定される必要はない。
また、本発明において、「2次元キャリアガス」、「キャリア供給領域」及び「キャリア走行領域」とは、以下において主に説明するnチャネル型HEMTの場合にはそれぞれ、「2次元電子ガス(2DEG)」、「電子供給領域」及び「電子走行領域」となるが、逆にpチャネル型HEMTの場合にはそれぞれ、「2次元正孔ガス(2DHG)」、「正孔供給領域」及び「正孔走行領域」となる。
なお、本明細書において「上面」「下面」等の「上」「下」の定義は、図示した断面図上の単なる表現上の問題であって、例えば、半導体装置の方位を90°変えて観察すれば「上」「下」の称呼は、「左」「右」になり、180°変えて観察すれば「上」「下」の称呼の関係は逆になることは勿論である。ここで、「裏面」とは、図示した断面図上の表現の問題であって、「上」「下」の選択の場合と同様に、具体的な半導体装置の方位を変えれば、その称呼や定義は変わり得ることは勿論である。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置は、図1(a)に示すように、第1導電型(n型)の第1主電極領域(ドレイン領域)11と、ドレイン領域11の上面に対して垂直な側壁面を互いに対向してドレイン領域11上に離間して配置された、ドレイン領域11と禁制帯幅の等しい半導体からなる複数のキャリア走行領域(電子走行領域)3a,3bと、電子走行領域3a,3bの側壁面をヘテロ接合界面として電子走行領域3a,3bに接した電子走行領域3a,3bよりも禁制帯幅の広い半導体からなるキャリア供給領域(電子供給領域)4a,4bと、複数の電子走行領域3a,3bの頂部で、電子供給領域4a,4bに接した第2主電極(ソース電極)9と、電子供給領域4a,4bの主面の一部を介して電子走行領域3a,3bの電位を制御する制御電極(ゲート電極)8と、ドレイン領域11の裏面に配置された第1主電極(ドレイン電極)12とを備える縦型の半導体装置である。
電子走行領域3a,3bは、図1(a)の断面図上では互いに異なる領域のように示されているが、特定の断面図上の表現であって、実際には紙面の奥又は手前で連続した一体の領域でもよい。また、電子供給領域4a,4bも同様に、図1(a)の断面図上では互いに異なる領域のように示されているが、特定の断面図上の表現であって、実際には紙面の奥又は手前で連続した一体の領域でもよい。
ドレイン領域11は、n+型(n型で高不純物密度の領域を「n+型」と表示する。)のシリコン(Si)等からなる半導体基板(基板領域)1と、半導体基板1上に電子走行領域3a,3bに接して配置されたバッファ領域2とを備える2層構造である。バッファ領域2は、例えばn型GaN等の、電子走行領域3a,3bと等しい禁制帯幅を有し、半導体基板1よりも低不純物密度の半導体基板1とは異なる材料からなる。バッファ領域2の上には電子走行領域3a,3b及び電子供給領域4a,4bがバッファ領域2に端部を接してバッファ領域2の主面に垂直となる主面(側壁面)を有して配置されている。
電子走行領域3a,3bは、例えば不純物を意図的に添加していないGaNからなり、電子供給領域4a,4bは、例えば不純物を意図的に添加していない組成x=0.2〜0.5程度のAlxGa1−xNからなる。電子供給領域4a,4bは、互いの主面を対向して離間して配置されている。
ゲート電極8は、電子供給領域4a,4bの主面間に挟まれて配置されている。ゲート電極8は、例えばp型GaN等の、第2導電型(p型)で電子供給領域4a,4bよりも禁制帯幅の狭い半導体からなる。p型のGaNからなるゲート電極8と、不純物を意図的に添加していないAlxGa1−xNからなる電子供給領域4a,4bとによりヘテロ接合が形成される。
なお、図示を省略するが、ゲート電極8には、上面側から絶縁膜7bを貫通する貫通電極がゲート取り出しプラグとして電気的に接続され、トランジスタの動作時には上面に設けられたゲート表面配線から貫通電極を介してゲート電極8にゲート電圧が印加される。
ゲート電極8とドレイン領域11との間には、例えばシリコン窒化膜(Si3N4膜)からなる絶縁膜7aが配置されている。ゲート電極8とソース電極9の間には、例えばSi3N4膜からなる絶縁膜7bが配置されている。ソース電極9は、複数の電子供給領域4a,4bの頂部に接している。
第1の実施形態に係る半導体装置は、電子走行領域3a,3bがドレイン領域11の上面に対して垂直な側壁面を互いに対向して離間して配置しているので、電子走行領域3aと電子供給領域4aとがなすヘテロ接合界面及び電子走行領域3bと電子供給領域4bとがなすヘテロ接合界面は、それぞれドレイン領域11の上面に対して垂直方向に形成される。電子走行領域3aと電子供給領域4aとがなすヘテロ接合界面及び電子走行領域3bと電子供給領域4bとがなすヘテロ接合界面のそれぞれの一端(下端)はドレイン領域11に接し、他端(上端)はソース電極9に接している。
第1の実施形態に係る半導体装置の動作時には、電子走行領域3aと電子供給領域4aとがなすヘテロ接合界面及び電子走行領域3bと電子供給領域4bとがなすヘテロ接合界面には、仕事関数差によるバンド曲がりによって2次元電子ガス層6a,6bがドレイン領域11の上面に対して垂直方向にそれぞれ形成される。
図1(b)は、図1(a)に示した第1の実施形態に係る半導体装置のA−A方向からみた水平断面図を示す。なお、図1(b)に示すB−B方向からみた縦方向の断面図が図1(a)に対応する。図1(b)に示すように平面的なレイアウトとしてみた場合、ゲート電極8は例えば直線状のパターンを有して図1(b)の紙面の上下方向に延伸し、ゲート電極8を挟む電子供給領域4a,4bも直線状のパターンを有して延伸する。ゲート電極8及び電子供給領域4a,4bを挟む電子走行領域3a,3bの側壁面は、電子供給領域4a,4bの直線状のパターンに沿った連続した平面となる。なお、第1の実施形態に係る半導体装置の平面レイアウトは図1(b)に示したものに特に限定されない。
<第1の実施形態の半導体装置の動作>
第1の実施形態に係る半導体装置のターン・オンとターン・オフの動作については、ソース電極9の電位を基準として、ドレイン電極12に所定の正の電位を印加した状態でゲート電極8の電位を制御することで、縦型のHEMTとして機能する。
不純物を意図的に添加していないAlxGa1−xN層及びGaN層をそれぞれi層のAlxGa1−xN層及びGaN層と考えると、ゲート電極8とバッファ領域2との間には、ヘテロpin接合が形成される。そして、ゲート電極8とソース電極9との間の電圧を所定の閾値電圧以上の順バイアスにすると、ゲート電極8から電子供給領域4a,4bを介して電子走行領域3a,3bに広がるヘテロpin接合の空乏層が消滅し、電子供給領域4a,4bと電子走行領域3a,3bとがなすヘテロ接合界面に2次元電子ガス層6a,6bが形成されて導通状態となる。導通状態では、電子がソース電極9から2次元電子ガス層6a,6bを介してドレイン電極12へ、縦方向(ドレイン領域11の上面に対して垂直方向)に走行する。したがって、一般的な横型のHEMTと比較して、電極部分の電流密度が低減され、エレクトロマイグレーション(電極の断線)が発生することを抑制でき、信頼性が向上する。
一方、ゲート電圧を下げてゲート電極8とソース電極9との間の電圧を所定の閾値電圧未満にすると、ゲート電極8から電子供給領域4a,4bを介してi層の電子走行領域3a,3bに空乏層が広がり、2次元電子ガス層6a,6bが消滅して遮断状態に遷移し、電流経路が遮断される。遮断状態への遷移に際しては、ドレイン−ソース間に高電圧が瞬間的に印加され、ゲート電極8からドレイン領域11に向かってヘテロpin接合の空乏層が広がる。この空乏層の幅はゲート電極8とドレイン領域11の距離に依存し、高耐圧を得るためにはゲート電極8とドレイン領域11の距離、即ちヘテロpin接合のi層となる電子走行領域3a,3bを厚くすればよい。即ち、素子の面積を横方向に増大させずに、縦方向に電子走行領域3a,3bを厚くすればよいため、面積効率がよく、大電流化及び高集積化を実現可能となる。
<第1の比較例>
ここで、図32を用いて、第1の比較例に係る半導体装置を説明する。第1の比較例に係る半導体装置は、下地層101上に、GaNからなる電子走行層102と、AlxGa1−xNからなる電子供給層103とが順次に積層され、電子走行層102と電子供給層103とによりヘテロ接合をなす横型のHEMTである。電子供給層103上には、ソース電極105及びドレイン電極106がオーミック接合を形成するようにそれぞれ配置され、金属のゲート電極104がショットキー接合を形成するように配置されている。第1の比較例に係る半導体装置は、電子走行層102と電子供給層103に不純物が注入されて形成された素子分離領域108により他の素子と分離される。電子供給層103上には、表面保護膜107が形成されている。
第1の比較例に係る半導体装置によれば、電子走行層102と電子供給層103とがなすヘテロ接合界面に形成される2DEGが高濃度であり且つ電子移動度も高いので、横型のHEMTとして良好な特性を示す。
第1の比較例に係る半導体装置を動作させる際に、オフ時にドレイン電極106に高電圧を印加すると、電子走行層102と電子供給層103とがなすヘテロ接合界面に空乏層が広がり、この空乏層の幅で耐圧を確保する。空乏層は、ゲート電極104のドレイン電極106に近いエッジから広がるので、電界はゲート電極104のドレイン電極106に近いエッジの一点に集中的にかかる。したがって、耐圧が低下し、リーク電流も増大する。
また、高耐圧を得るためには、ゲート電極104とドレイン電極106の距離を長くする必要がある。しかしながら、ゲート電極104とドレイン電極106の距離を長くすると面積が大きくなり、特に大電流用途ではトランジスタが多数配列されるため、大面積が必要となる。
また、上述したようにドレイン電圧が大きい時にゲート電極104のドレイン電極106に近いエッジに電界集中が起こることにより、ゲート電極104直下の電子供給層103に電荷が蓄積される。この蓄積された電荷によって、トランジスタのオン抵抗増加及び耐圧低下等の不具合(電流コラプス現象)が引き起こされる。
<第2の比較例>
次に、図33を用いて、第2の比較例に係る半導体装置を説明する。第2の比較例に係る半導体装置は、支持基板201と、支持基板201上に配置された、角柱状又は角錐台状の、オン状態のときに軸方向に電流が流れる半導体部203と、半導体部203の周囲に、第1絶縁層209、制御電極層206及び第2絶縁層210が、半導体部203の軸方向に沿って順に積層された周辺部とを備える縦型のHEMTである。半導体部203は、角柱状又は角錐台状の電子走行部204と、電子走行部204の側面上に形成された電子供給部205とを備える。
電子走行部204及び電子供給部205上にはドレイン電極207が形成されている。支持基板201の裏面にはソース電極208が配置されている。制御電極層206上には、制御用パターン電極211及び貫通電極212が配置されている。
第2の比較例に係る半導体装置によれば、縦型のHEMTであるので、素子の小型化及び高集積化を達成することはできる。しかしながら、第1の比較例と同様に、耐圧の低下、リーク電流の増大及び電流コラプス現象の発生は抑制できていない。また、制御電極層206を第1絶縁層209及び第2絶縁層210中に埋め込んでいるため、製造時に工数がかかる。また、支持基板201上に絶縁膜マスク202が形成されているため、電子走行部204の下部の絶縁膜マスク202に接する側面には2次元電子ガス層を形成することができず、非常に高抵抗の領域となり、トランジスタのオン抵抗の増加が考えられる。
<第1の実施形態の半導体装置の効果>
一方、第1の実施形態に係る半導体装置によれば、電子走行領域3a,3bの垂直な側壁面をヘテロ接合界面として電子走行領域3a,3bに接するように電子供給領域4a,4bを配置することにより、縦方向(ドレイン領域11の上面に対して垂直方向)に2次元電子ガス層6a,6bを形成することができる。そして、電子走行領域3a,3bと電子供給領域4a,4bとのそれぞれのヘテロ接合界面の一端(下端)がドレイン領域11に接し、ヘテロ接合界面の他端(上端)がソース電極9に接するので、半導体装置の動作時には電子を2次元電子ガス層6a,6bを通じて縦方向に走行させることができ、低抵抗化を図ることができる。
また、ゲート電極8を、電子供給領域4a,4bの主面間に挟むことができるので、面積をとらずに高集積化を実現可能となる。また、必要とする耐圧に応じて電子走行領域3a,3bの厚さを設定することによりゲート電極8とドレイン領域11の距離を調整できるので、素子の高集積化を図ることができる。また、ソース電極9やドレイン電極12をそれぞれ対向する異なる主面に配置された面電極とすることもできるため、実装しやすく、配線抵抗の影響が低く、エレクトロマイグレーションも改善できる効果もある。更に、一方の主面にソース電極とドレイン電極の両方を配置する横型のHEMTより、一つのトランジスタに対して電極の面積の割合が大きいため、熱の低減効果もある。
また、ドレイン領域11が半導体基板1と半導体基板1上に配置されたバッファ領域2とを有することにより、バッファ領域2を利用して半導体基板1と電子走行領域3a,3bとの格子定数の差を調整可能になる。したがって、高品質な電子走行領域3a,3bを形成でき、結晶欠陥による耐圧低下を防止することができる。
また、ゲート電極8がp型で電子走行領域3a,3bよりも禁制帯幅の狭い半導体(例えばp型GaN)からなるヘテロ接合ゲート型HEMTの構造の場合、トランジスタのオン時に、ソース電極9が基準電位として、ゲート電極8に正バイアスを印加するときに、ゲート電極8、絶縁膜7b及びソース電極9によりMOSキャパシタが形成される。ゲート電極8と絶縁膜7bの界面には蓄積層が形成されて、高濃度のp型領域が形成できる。この高濃度のp型領域によってゲート電極8下部の電子走行領域3a,3bに形成する空乏層が深くなり、ショットキーゲート型HEMTよりゲートの閾値電圧を高める効果がある。これによって、HEMTの耐ノイズ性が良好となる。また、高濃度のp型領域により、ゲート電極8の抵抗成分も低減でき、スイッチング損失の低減に繋がる。
また、ドレイン領域11の半導体基板1がSiからなる場合には低抵抗となり且つ安価である。また、ドレイン領域11の半導体基板1がSiからなり、半導体基板1上のバッファ領域2がGaNからなる場合には、n型Siとn型GaNの仕事関数は同程度であり、オーミック接合を形成するので、トランジスタのオン時には低抵抗となる。また、ドレイン領域11がSiからなる半導体基板1の単層構造であり、ドレイン領域11に接する電子走行領域3a,3bがGaNからなる場合にも同様に、n型Siとn型GaNの仕事関数は同程度であり、オーミック接合を形成するので、トランジスタのオン時には低抵抗となる。
また、電子走行領域3a,3bがGaNからなる場合にはバンドギャップが大きく、絶縁破壊電界強度が高い。更には、電子供給領域4a,4bとのヘテロ接合界面に2次元電子ガス層6a,6bを形成できるため、低抵抗化及び高耐圧化を実現可能となる。
<第1の実施形態の半導体装置の製造方法>
次に、図2〜図9を用いて、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を説明する。なお、以下に述べる半導体装置の製造方法は、一例であり、特許請求の範囲に記載した趣旨の範囲であれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
(a)先ず、有機金属化学気相成長(MOCVD)法等を用いて、n+型Siからなる半導体基板1上にn型GaNからなるバッファ領域2を形成する。具体的には、n型Siからなる半導体基板1をMOCVD装置内に導入し、半導体基板1を所定温度(例えば600℃)に昇温する。温度が安定したら、半導体基板1を回転させ、キャリアガスの水素(H2)と共に原料となるアンモニア(NH3)ガスとトリメチルガリウム(TMG)を所定の流量で半導体基板1の表面に導入することにより、半導体基板1上にn型のGaN層をバッファ領域2として成長させる。GaN層の膜厚は50nm程度である。一般にGaN結晶では窒素(N)の空孔がn型のキャリアの起源となるので、n型のドーピングガスを用いなくても1018cm−3〜1019cm−3のキャリア濃度のn型のGaN層が形成できる。しかしながら必要に応じてシラン(SiH4)やジシラン(Si2H6)、ゲルマン(GeH4)等をドーピングガスとして用いてもよい。この結果、半導体基板1及びバッファ領域2からなる2層構造のドレイン領域11が形成される。
(b)次に、図2に示すように、バッファ領域2を形成した手順と同じ方法により、TMG、NH3ガス等によるMOCVD法等を用いて、ドレイン領域11上に、ドレイン領域11と禁制帯幅の等しい電子走行領域3として、例えば不純物密度5×1012cm−3〜1×1015cm−3程度のノンドープのGaN層を形成する。電子走行領域3の膜厚は例えば5μmであり、要求される耐圧等に応じて適宜設計可能である。
(c)次に、熱CVD法やプラズマCVD法を用いて、電子走行領域3上にシリコン酸化膜(SiO2膜)を形成する。SiO2膜の厚さは、数μmが好ましい。次に、スピンナー等を用いてSiO2膜上にフォトレジスト膜を塗布し、このフォトレジスト膜に対してフォトリソグラフィー法を用いてパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をマスクとして用いて、反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチング等により、SiO2膜をパターニングする。その後、フォトレジスト膜を酸素(O2)プラズマ等で除去する。パターニングされたSiO2膜をマスク材10として用いて、ドライエッチング等により、ドライエッチング等により、図3に示すように、電子走行領域3を貫通してドレイン領域11の上面に到達するU溝5を形成する。この結果、U溝5の垂直な側壁を側壁面として互いに対向して離間して配置された電子走行領域3a,3bが形成される。
(d)次に、バッファ領域2を形成した手順と同じ方法により、トリメチルアルミニウム(TMA)、TMG、NH3ガス等によるMOCVD法等を用いて、不純物密度5×1012cm−3〜1×1015cm−3程度であり、Alの組成x=0.2〜0.5程度のAlxGa1−xN層を数nm〜十数nm程度で形成する。そして、マスクを使用しない指向性ドライエッチング等により、マスク材10の上面側のAlxGa1−xN層を全面的に除去する。この結果、図4に示すように、電子走行領域3a,3bの垂直な側壁面(U溝5の側壁面)上に、電子走行領域3a,3bよりも禁制帯幅の広いAlxGa1−xNからなる電子供給領域4a,4bが形成される。即ち、電子供給領域4aと電子走行領域3aとがなすヘテロ接合及び電子供給領域4bと電子走行領域3bがなすヘテロ接合が形成される。U溝5の上部においては、電子供給領域4a,4bはマスク材10の開口部側の端部の上に形成されている。
(e)次に、減圧CVD(LPCVD)法により全面的にSi3N4膜を成膜する。この際、Si3N4膜の膜厚を電子供給領域4a,4bの間隔の1/2以上とすることにより、電子供給領域4a,4bで挟まれたU溝5の空間にSi3N4膜を埋め込むことができる。引き続き、マスクを使用しない指向性ドライエッチング等により、U溝5の中央部及び上部のSi3N4膜を選択的に除去する。この結果、図5に示すように、電子供給領域4a,4bで挟まれたU溝5の底部のドレイン領域11上に絶縁膜(Si3N4膜)7aが残留する。
(f)次に、バッファ領域2を形成した手順と同じ方法により、MOCVD法等を用いて、p型のGaN層を成膜する。この際、GaN層の膜厚を電子供給領域4a,4bの間隔の1/2以上とすることにより、電子供給領域4a,4bで挟まれたU溝5の空間にGaN層を埋め込むことができる。また、GaN層の堆積中に、ビスシクロペンタディエニルマグネシウム(Cp2Mg)、ビスメチルシクロペンタディエニルマグネシウム(MCp2Mg)等のマグネシウム(Mg)を含むガスを投入することにより、図6に示すように、不純物密度1018〜2×1020cm−3程度のp型GaNからなるゲート電極8をU溝5の内部に埋め込むことができる。なお、p型GaN層は、MOCVD後に窒素(N2)ガス中のアニールをすることが好ましい。更に、ノンドープのGaN層を堆積後にMgイオンを注入し、900〜1000℃で加熱して活性化することでも形成可能であるが、Mgイオンの加速電圧を高くする必要がある。その後、ドライエッチング等により、図7に示すようにp型GaN層がU溝5の底部側に所定の厚さで残るようにエッチバックすることにより、絶縁膜7a上に電子供給領域4a,4bで挟まれるようにゲート電極8を形成する。
(g)次に、LPCVD法によりチップ全面に絶縁膜(Si3N4膜)を成膜する。この際、Si3N4膜の膜厚を電子供給領域4a,4bの間隔の1/2以上とすることにより、電子供給領域4a,4bで挟まれたU溝5の空間にSi3N4膜を埋め込むことができる。引き続き、マスクを使用しない指向性ドライエッチング等により、U溝5の上部のSi3N4膜の一部が選択的に除去されるまでエッチバックする。この結果、図8に示すように、ゲート電極8上に電子供給領域4a,4bに挟まれるように絶縁膜(Si3N4膜)7bが形成され、絶縁膜7bの上部に低いU溝が発生する。
(h)次に、フッ酸を用いたウェットエッチング等により、マスク材10としてのSiO2膜を除去する。その後、超音波洗浄を行うことにより、電子供給領域4a,4bのマスク材10の内壁に堆積されていた部分を図9に示すように機械的に除去する。必要に応じて、化学的機械研磨(CMP)により平坦化してもよく、CMPによってマスク材10の内壁の部分の電子供給領域4a,4bを除去してもよい。
(i)次に、全面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー法によりゲート電極8に到達する貫通電極形成用マスクをパターニングする。このマスクを用いてドライエッチングすることにより、ゲート電極8の上の絶縁膜7bの一部を選択的に除去し、絶縁膜7bにゲート電極8に到達する貫通孔を開孔する。この貫通孔に蒸着法、スパッタ法又はCVD法等によりタングステン(W)、モリブデン(Mo)等の高融点金属を堆積し、CMPにより高融点金属を貫通孔に埋め込み、ゲート電極取り出しプラグを形成する。更に、LPCVD法等により全面に絶縁膜を堆積する。引き続き、絶縁膜上にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー法によりコンタクトホール形成用マスクをパターニングする。このマスクを用いたドライエッチングにより絶縁膜の一部を選択的に除去して、ゲート電極8と、電子走行領域3a,3b及び電子供給領域4a,4bとに導通するためのコンタクトホールをそれぞれ開孔する。なお、ゲート電極8、電子走行領域3a,3b及び電子供給領域4a,4bがGaN系半導体からなり高抵抗であるため、絶縁膜の堆積工程と、その後のコンタクトホールの開孔工程は省略することもできる。
(j)次に、蒸着法、スパッタ法又はCVD法等により、電子走行領域3a,3b及び電子供給領域4a,4bに接するように金属膜を堆積する。この金属膜の上にフォトレジスト膜を塗布して、フォトリソグラフィー技術によりフォトレジスト膜をパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をマスクとして用いたエッチングにより金属膜の一部を選択的に除去して、ソース電極9及びゲート表面配線を形成する。一方、蒸着法、スパッタ法又はCVD法等により、ドレイン領域11の裏面にドレイン電極12を堆積する。ソース電極9及びドレイン電極12は、チタン(Ti)やアルミニウム(Al)を単層で堆積してもよく、Ti及びAl等を積層した積層構造としても構わない。以上の工程を経て、図1に示した半導体装置が完成する。
第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、素子の小型化及び高集積化を図りつつ、耐圧の低下、リーク電流の増大及び電流コラプス現象の発生を防止することができる半導体装置を容易に実現可能となる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る半導体装置は、図10に示すように、n型のドレイン領域11と、ドレイン領域11の上面に対して垂直な側壁面をドレイン領域11上に互いに対向して離間して配置された、ドレイン領域11と禁制帯幅の等しい半導体からなる複数の電子走行領域3a,3bと、電子走行領域3a,3bの側壁面をヘテロ接合界面として電子走行領域3a,3bに接した電子走行領域3a,3bよりも禁制帯幅の広い半導体からなる電子供給領域4と、複数の電子走行領域3a,3bの頂部で電子供給領域4に接したソース電極9と、電子供給領域4の主面の一部を介して電子走行領域3a,3bの電位を制御するゲート電極8と、ドレイン領域11の裏面に配置されたドレイン電極12とを備える縦型の半導体装置である。
ドレイン領域11は、n+型Si等からなる半導体基板(基板領域)1と、半導体基板1上に電子走行領域3a,3bに接して配置されたバッファ領域2とを備える2層構造である。バッファ領域2は、例えばn型のGaN等の、電子走行領域3a,3bと等しい禁制帯幅を有し、半導体基板1とは異なる材料からなる。バッファ領域2の上には電子走行領域3a,3b及び電子供給領域4a,4bがバッファ領域2に端部を接してバッファ領域2の主面に垂直となる主面(側壁面)を有して配置されている。
電子走行領域3a,3bは、例えば不純物を意図的に添加していないGaNからなり、電子供給領域4は、例えば不純物を意図的に添加していない組成x=0.2〜0.5程度のAlxGa1−xNからなる。電子供給領域4は、電子走行領域3a,3bの側壁面に挟まれ、且つ電子走行領域3a,3bの頂部の一部にまで延長されている。
ゲート電極8は、電子走行領域3a,3bの頂部の上面上に位置する電子供給領域4上に配置されている。ゲート電極8は、例えばp型で電子供給領域4よりも禁制帯幅の狭い半導体(例えばGaN)からなる。p型のGaNからなるゲート電極8と、不純物を意図的に添加していないAlxGa1−xNからなる電子供給領域4とによりヘテロ接合が形成される。
ゲート電極8とソース電極9との間には、例えば、Si3N4膜からなる絶縁膜7及びSiO2膜からなる絶縁膜10が配置されている。ソース電極9は、電子走行領域3a,3bの頂部上にまで延長された電子供給領域4の端部に接している。
第2の実施形態に係る半導体装置は、電子走行領域3a,3bがドレイン領域11の上面に対して垂直な側壁面を互いに対向して離間して配置しているので、電子走行領域3aと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面及び電子走行領域3bと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面は、それぞれドレイン領域11の上面に対して垂直方向に形成されるとともに、ドレイン領域11の上面に平行な方向にも形成される。即ち、電子走行領域3aと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面及び電子走行領域3bと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面のそれぞれは、電子走行領域3a,3bの頂部上面に平行な面上にまで延長される。電子走行領域3aと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面及び電子走行領域3bと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面のそれぞれの一端(下端)はドレイン領域11に接し、他端(延長された端部)はソース電極9に接している。
第2の実施形態に係る半導体装置の動作時には、電子走行領域3aと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面及び電子走行領域3bと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面には、仕事関数差によるバンド曲がりによって2次元電子ガス層6a,6bがドレイン領域11の上面に対して垂直方向にそれぞれ形成されるとともに、ドレイン領域11の上面に平行な方向にも形成される。
第2の実施の形態に係る半導体装置の平面レイアウトは、図1(b)に示した平面レイアウトのゲート電極8及び電子供給領域4a,4bの直線状のパターンを、電子供給領域4の直線状のパターンに置き換えればよい。第2の実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1の実施形態に係る半導体装置の構成と同様であるので、重複した説明を省略する。
<第2の実施形態の半導体装置の動作>
次に、図10に示す構成の半導体装置のターン・オンとターン・オフの動作については、ソース電極9の電位を基準として、ドレイン電極12に所定の正の電位を印加した状態でゲート電極8の電位を制御することで、縦型のHEMTとして機能する。
不純物を意図的に添加していないAlxGa1−xN層及びGaN層をそれぞれi層のAlxGa1−xN層及びGaN層と考えると、ゲート電極8とバッファ領域2の間には、ヘテロpin接合が形成される。そして、ゲート電極8とソース電極9との間の電圧を所定の閾値電圧以上の順バイアスにするとゲート電極8から電子供給領域4を介して電子走行領域3a,3bに広がるヘテロpin接合の空乏層が消滅し、電子供給領域4と電子走行領域3a,3bとがなすヘテロ接合界面に2次元電子ガス層6a,6bが形成されて導通状態となる。導通状態では、電子がソース電極9から2次元電子ガス層6a,6bを通ってドレイン電極12へ、横方向及び縦方向に走行する。したがって、横型のHEMTよりも電極部分の電流密度が低減され、エレクトロマイグレーション(電極の断線)が発生するのを抑制でき、信頼性が向上する。
また、ゲート電極8、絶縁膜7,10及びソース電極9によりMOSキャパシタが形成され、ソース電極9の電位を基準としてゲート電極8に正電圧を印加した場合、ゲート電極8と絶縁膜7,10との界面には蓄積層が形成されて、高濃度のp型領域が形成される。この高濃度のp型領域によってゲート電極8下部の電子走行領域3a,3bに形成されるヘテロpin接合の空乏層が深くなり、この空乏層を消滅させて2次元電子ガス層6a,6bを導通させるためにはより高電圧が必要になる。したがって、トランジスタの閾値電圧を高める効果があり、耐ノイズ性を向上させることができる。また、高濃度のp型領域により、ゲート電極8の抵抗成分も低減することができる。したがって、トランジスタのオン・オフ時に発生するRC遅延を低減することができ、スイッチング損失の低減に繋がる。
一方、ゲート電圧を下げてゲート電極8とソース電極9間の電圧を所定の閾値電圧未満にすると、ゲート電極8から電子供給領域4を介して電子走行領域3a,3bに空乏層が広がり、2次元電子ガス層6a,6bが消滅し、トランジスタが遮断状態となり、電流経路が遮断される。この際、ドレイン−ソース間に高電圧が瞬間的に印加されて、ゲート電極8からドレイン領域11に向かってヘテロpin接合の空乏層が広がる。この空乏層の幅はゲート電極8とドレイン領域11の距離に依存するので、高耐圧を求める場合はゲート電極8とドレイン領域11の距離、即ちヘテロpin接合のi層となる電子走行領域3a,3bを厚く成膜すればよい。したがって、素子の横方向の面積を増大させずに高耐圧が得られるため、面積効率がよく、大電流化及び高集積化を実現可能となる。
また、ゲート電極8が、電子走行領域3a,3bの頂部の上面上に位置する電子供給領域4上に配置されているので、ドレイン電極12に高電圧を印加するときに、ゲート電極8の電子供給領域4に接する全面から、ドレイン電極12に向かって空乏層を広げ、耐圧を確保する。したがって、比較例1に係る横型のHEMTのようにゲートエッジから空乏層を広げる場合よりも電界集中が緩和され、耐圧向上とリーク電流低減の効果を奏する。また、比較例1に係る横型のHEMTのようなゲートエッジの電界集中がないため、電流コラプス現象を抑制・改善する効果も得られる。
<第2の実施形態の半導体装置の効果>
以上説明したように、第2の実施形態に係る半導体装置によれば、第1の実施形態と同様に、電子走行領域3a,3bの垂直な側壁面をヘテロ接合面として電子走行領域3a,3bに接するように電子供給領域4を配置することにより、主として縦方向(ドレイン領域11の上面に対して垂直方向)に2次元電子ガス層6a,6bを形成することができる。そして、電子走行領域3a,3bと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面の一端がドレイン領域11に接し、ヘテロ接合界面の他端がソース電極9に接するので、半導体装置の動作時には電子を2次元電子ガス層6a,6bを通じて主として縦方向に走行させることができ、低抵抗化を図ることができる。
また、ゲート電極8を電子走行領域3a,3bの近傍に配置することができるので、面積をとらずに高集積化を実現可能となる。また、必要とする耐圧に応じて電子走行領域3a,3bの厚さを設定することによりゲート電極8とドレイン領域11の距離を調整できるので、素子の高集積化を図ることができる。また、ソース電極9及びドレイン電極12をそれぞれ対向する異なる主面に配置された面電極とすることもできるため、実装しやすく、配線抵抗の影響が低く、エレクトロマイグレーションも改善できる効果もある。更に、一方の主面にソース電極とドレイン電極の両方を配置する横型のHEMTより、一つのトランジスタに対して電極の面積の割合が大きいため、熱の低減効果もある。
また、ドレイン領域11が半導体基板1と半導体基板1上に配置されたバッファ領域2を有することにより、バッファ領域2を利用して半導体基板1と電子走行領域3a,3bとの格子定数の差を調整可能になる。したがって、高品質な電子走行領域3a,3bを形成でき、結晶欠陥による耐圧低下を防止することができる。
また、電子走行領域3a,3bと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面の少なくとも一部がドレイン領域11の上面に平行となることで、2次元電子ガス層6a,6bが縦方向(ドレイン領域11の上面に対して垂直方向)に形成されるとともに横方向(ドレイン領域11の上面に平行な方向)にも形成される。ゲート電極8は、横方向部分の2次元電子ガス層6a,6bの電荷濃度を制御できる。更に、ゲート電極8の下面からドレイン電極12に向かってヘテロpin接合の空乏層を広げることで、高耐圧を確保することができる。したがって、比較例1に係る横型のHEMTのようにゲートエッジから空乏層が広がる構造よりも電界集中が緩和され、耐圧向上とリーク電流低減の効果を奏する。
また、ゲート電極8が電子走行領域3a,3bの頂部の上面上に位置する電子供給領域4上に配置されているので、ドレイン電極12に高電圧を印加するときに、ゲート電極8の電子供給領域4に接する全面から、ドレイン電極12に向かってヘテロpin接合の空乏層を広げ、耐圧を確保する。したがって、比較例1に係る横型のHEMTのようにゲートエッジから空乏層を広げる場合よりも電界集中が緩和され、耐圧向上とリーク電流低減の効果及び電流コラプス現象を抑制する効果を奏することができる。
また、ゲート電極8がp型で電子走行領域3a,3bよりも禁制帯幅の狭い半導体(例えばp型GaN)からなるヘテロ接合ゲート型HEMTの構造の場合、トランジスタのオン時に、ソース電極9が基準電位として、ゲート電極8に正バイアスを印加するときに、ゲート電極8、絶縁膜7及びソース電極9によりMOSキャパシタが形成される。ゲート電極8と絶縁膜7の界面には蓄積層が形成されて、高濃度のp型領域が形成できる。この高濃度のp型領域によってゲート電極8下部の電子走行領域3a,3bに形成されるヘテロpin接合の空乏層が深くなり、ショットキーゲート型HEMTよりゲートの閾値電圧を高める効果がある。これによって、HEMTの耐ノイズ性が良好となる。また、高濃度のp型領域により、ゲート電極8の抵抗成分も低減でき、スイッチング損失の低減に繋がる。
また、ドレイン領域11の半導体基板1がSiからなる場合には低抵抗となり且つ安価である。更に、半導体基板1上のバッファ領域2又は電子走行領域3a,3bがGaNからなる場合には、n型Siとn型GaNの仕事関数は同程度であり、オーミック接合を形成するので、トランジスタのオン時には低抵抗となる。また、電子走行領域3a,3bがGaNからなる場合にはバンドギャップが大きく、絶縁破壊電界強度が高い。更には、電子供給領域4とのヘテロ接合界面に2次元電子ガス層6a,6bを形成できるため、低抵抗化及び高耐圧化を実現可能となる。
<第2の実施形態の半導体装置の製造方法>
次に、図11〜図15を用いて、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を説明する。
(a)先ず、第1の実施の形態の図2〜図3に示した手順と同様の手順で、電子走行領域3にU溝5を形成することにより垂直な側壁面を互いに対向して配置した電子走行領域3a,3bを形成する。その後、バッファ領域2を形成する手順と同様に、TMA、TMG、NH3ガス等によるMOCVD法等により、U溝5を埋めるようにAlの組成x=0.2〜0.5程度のAlxGa1−xN層を形成する。この際、U溝5が完全に埋まるように、AlxGa1−xN層の膜厚をU溝5の幅の1/2以上とすることが好適である。引き続き、マスクを使用しない指向性ドライエッチング等により、AlxGa1−xN層を全面的にエッチバックすることにより、図11に示すようにAlxGa1−xN層からなる電子供給領域4が形成される。この際、電子供給領域4を電子走行領域3a,3bの頂部に数nm〜十数nmの厚さで残留させる。
(b)次に、バッファ領域2を形成する手順と同様に、MOCVD法等により、p型のGaN層を成膜する。膜厚は特に性能に影響しないが一般的には数百nmが好適である。この際、GaN層の堆積中にCp2Mg、MCp2Mg等のMgを含むガスを投入することにより、図12に示すように、不純物密度1018〜2×1020cm−3程度のp型GaNからなるゲート電極8を形成することができる。なお、p型GaN層は、MOCVD後にN2ガス中のアニールをすることが好ましい。更に、ノンドープのGaN層を堆積後にMgイオンを注入し、900〜1000℃で加熱して活性化することでも形成可能であるが、Mgイオンの加速電圧を高くする必要がある。
(c)次に、熱CVD法やプラズマCVD法等により、ゲート電極8上にSiO2膜を形成する。SiO2膜の厚さとしては数μmが好ましい。そして、スピンナー等を用いてSiO2膜上にフォトレジスト膜を塗布し、このフォトレジスト膜に対してフォトリソグラフィー法を用いてパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をマスクとして用いて、ドライエッチング等により、SiO2膜をパターニングする。その後、フォトレジスト膜をO2プラズマ等で除去する。そして、パターニングされたSiO2膜をマスク材10として用いて、ドライエッチング等により、図13に示すようにゲート電極8の一部を選択的に除去することにより、電子走行領域3a,3bの頂部の電子供給領域4を露出させる。
(d)次に、図14に示すように、LPCVD法等により、電子供給領域4、ゲート電極8、マスク材10を覆うように絶縁膜(Si3N4膜)7を数百nm程度の膜厚で成膜する。引き続き、ドライエッチング等により、図15に示すように、電子走行領域3a,3bの一部が露出するまで絶縁膜7及び電子供給領域4の一部をエッチバックする。この際、マスク材10上の絶縁膜7も除去されるが、マスク材10はSiO2膜であるため、除去されずに残存する。
(e)その後、蒸着法、スパッタ法又はCVD法等により、電子走行領域3a,3bの頂部及び電子走行領域3a,3bの頂部の一部にまで延長された電子供給領域4の端部に接するように金属膜を堆積する。この金属膜の上にフォトレジスト膜を塗布して、フォトリソグラフィー技術によりフォトレジスト膜をパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をマスクとして用いたエッチングにより金属膜の一部を選択的に除去して、ソース電極9を形成する。一方、蒸着法、スパッタ法又はCVD法等により、ドレイン領域11の裏面にドレイン電極12を堆積する。この結果、図10に示した半導体装置が完成する。
第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、素子の小型化及び高集積化を図りつつ、耐圧の低下、リーク電流の増大及び電流コラプス現象の発生を防止することができる半導体装置を容易に実現可能となる。
<第2の実施形態の変形例>
第2の実施形態の変形例に係る半導体装置は、図16に示すように、電子供給領域4上に配置されたゲート電極8の裏面に、電子走行領域3a,3bの互いに対向する垂直な側壁面に挟まれる深さまで下側に突出する凸部8aが設けられている点が、図10に示した第2の実施形態に係る半導体装置の構成と異なる。
図10に示した第2の実施形態に係る半導体装置では、電子走行領域3a,3bの垂直な側壁面及び上面がなす角部では、電子走行領域3a,3bの頂部に接する電子供給領域4と、電子走行領域3a,3bの垂直な側壁面に接する電子供給領域4との両方から受けるバンド曲がりが、角部以外の他の箇所より大きくなる。したがって、電子走行領域3a,3bの角部は、電子濃度が相対的に高くなり、ゲート電極8の電界を受けにくくなる。
これに対して、第2の実施形態の変形例に係る半導体装置によれば、図16に示すように、ゲート電極8の裏面に設けられた凸部8aが電子走行領域3a,3bに挟まれる深さまで突出することにより、電子走行領域3a,3bの角部において、電子走行領域3a,3bの頂部上方のゲート電極8から縦方向に電界を受けることに加えて、凸部8aから横方向に電界を受ける。このため、電子走行領域3a,3bの角部で発生する空乏層が角部以外の領域よりも深くなり、角部の電荷集中を改善できる。
第2の実施形態の変形例に係る半導体装置を製造する際には、図11に示すように電子供給領域4を形成した後、ドライエッチング等により電子供給領域4の一部を除去して凸部8aに対応する凹部を形成してから、電子供給領域4の凹部を埋めて凸部8aを形成するようにゲート電極8を成膜すればよい。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る半導体装置は、図17に示すように、n型のドレイン領域11と、ドレイン領域11の上面に対して垂直な側壁面をドレイン領域11上に互いに対向して離間して配置された、ドレイン領域11と禁制帯幅の等しい半導体からなる複数の電子走行領域3a,3bと、電子走行領域3a,3bの側壁面をヘテロ接合界面として電子走行領域3a,3bに接した電子走行領域3a,3bよりも禁制帯幅の広い半導体からなる電子供給領域4と、複数の電子走行領域3a,3bの頂部で電子供給領域4に接したソース電極9と、電子供給領域4の主面の一部を介して電子走行領域3a,3bの電位を制御するゲート電極8と、ドレイン領域11の裏面に配置されたドレイン電極12とを備える縦型の半導体装置である。
ドレイン領域11は、n+型Si等からなる半導体基板(基板領域)1と、半導体基板1上に電子走行領域3a,3bに接して配置されたバッファ領域2とを備える2層構造である。バッファ領域2は、例えばn型のGaN等の、電子走行領域3a,3bと等しい禁制帯幅を有し、半導体基板1とは異なる材料からなる。バッファ領域2の上には電子走行領域3a,3b及び電子供給領域4a,4bがバッファ領域2に端部を接してバッファ領域2の主面に垂直となる主面(側壁面)を有して配置されている。
電子走行領域3a,3bは、例えば不純物を意図的に添加していないGaNからなり、電子供給領域4は、例えば不純物を意図的に添加していない組成x=0.2〜0.5程度のAlxGa1−xNからなる。電子供給領域4は、電子走行領域3a,3bの側壁面に挟まれ、且つ電子走行領域3a,3bの頂部の一部にまで延長されている。
ゲート電極8は、電子走行領域3a,3bの頂部の上面上に位置する電子供給領域4上に、Si3N4膜等からなるゲート絶縁膜7xを介して配置されており、絶縁ゲート型構造となる。ゲート電極8は、例えばp型で電子供給領域4よりも禁制帯幅の狭い半導体(例えばGaN)からなる。
ゲート電極8とソース電極9との間には、例えば、Si3N4膜からなる絶縁膜7及びSiO2膜からなる絶縁膜10が配置されている。ソース電極9は、電子走行領域3a,3bの頂部上にまで延長された電子供給領域4の端部に接している。
第3の実施形態に係る半導体装置は、電子走行領域3a,3bがドレイン領域11の上面に対して垂直な側壁面を互いに対向して離間して配置しているので、電子走行領域3aと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面及び電子走行領域3bと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面は、それぞれドレイン領域11の上面に対して垂直方向に形成されるとともに、ドレイン領域11の上面に平行な方向にも形成される。即ち、電子走行領域3aと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面及び電子走行領域3bと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面のそれぞれは、電子走行領域3a,3bの頂部上面に平行な面上にまで延長される。電子走行領域3aと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面及び電子走行領域3bと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面のそれぞれの一端(下端)はドレイン領域11に接し、他端(延長された端部)はソース電極9に接している。
第3の実施形態に係る半導体装置の動作時には、電子走行領域3aと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面及び電子走行領域3bと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面には、仕事関数差によるバンド曲がりによって2次元電子ガス層6a,6bがドレイン領域11の上面に対して垂直方向にそれぞれ形成されるとともに、ドレイン領域11の上面に平行な方向にも形成される。
第3の実施の形態に係る半導体装置の平面レイアウトは、図1(b)に示した平面レイアウトのゲート電極8及び電子供給領域4a,4bの直線状のパターンを、電子供給領域4の直線状のパターンに置き換えればよい。第3の実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1及び第2の実施形態に係る半導体装置の構成と同様であるので、重複した説明を省略する。
<第3の実施形態の半導体装置の動作>
次に、第3の実施形態に係る半導体装置の動作は、第2の実施形態に係る半導体の動作と基本的には同様である。第2の実施形態に係る半導体の動作と相違する点としては、ゲート電極8と電子供給領域4との間にゲート絶縁膜(Si3N4膜)7xを配置していることにより、オン動作時には、第2の実施形態に係る半導体装置のようにゲート電極8が電子供給領域4と直接接する場合と比較して、ゲート電圧を高く印加してもリーク電流が小さいため、大電流動作を実現できる。
一方、オフ動作時には、ゲート電極8と電子供給領域4の間にゲート絶縁膜(Si3N4膜)7xが配置されているので、ゲート電極8とドレイン領域11間の耐圧の一部はゲート絶縁膜7xが分担する。したがって、ゲート絶縁膜7xを配置しない場合と比較して耐圧を向上させることができる。
<第3の実施形態の半導体装置の効果>
以上説明したように、第3の実施形態に係る半導体装置によれば、第1及び第2の実施形態と同様に、電子走行領域3a,3bの垂直な側壁面をヘテロ接合面として電子走行領域3a,3bに接するように電子供給領域4を配置することにより、主として縦方向(ドレイン領域11の上面に対して垂直方向)に2次元電子ガス層6a,6bを形成することができる。そして、電子走行領域3a,3bと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面の一端がドレイン領域11に接し、ヘテロ接合界面の他端がソース電極9に接するので、半導体装置の動作時には電子を2次元電子ガス層6a,6bを通じて主として縦方向に走行させることができ、低抵抗化を図ることができる。
また、ゲート電極8を電子走行領域3a,3bの周辺に配置することができるので、面積をとらずに高集積化を実現可能となる。また、必要とする耐圧に応じて電子走行領域3a,3bの厚さを設定することによりゲート電極8とドレイン領域11の距離を調整できるので、素子の高集積化を図ることができる。また、ソース電極9及びドレイン電極12をそれぞれ対向する異なる主面に配置された面電極とすることもできるため、実装しやすく、配線抵抗の影響が低く、エレクトロマイグレーションも改善できる効果もある。更に、一方の主面にソース電極とドレイン電極の両方を配置する横型のHEMTより、一つのトランジスタに対して電極の面積の割合が大きいため、熱の低減効果もある。
また、ドレイン領域11が半導体基板1と半導体基板1上に配置されたバッファ領域2を有することにより、バッファ領域2を利用して半導体基板1と電子走行領域3a,3bとの格子定数の差を調整可能になる。したがって、高品質な電子走行領域3a,3bを形成でき、結晶欠陥による耐圧低下を防止することができる。
また、電子走行領域3a,3bと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面が電子走行領域3a,3bの頂部上面に平行な面上にまで延長されることで、2次元電子ガス層6a,6bが縦方向(ドレイン領域11の上面に対して垂直方向)だけでなく、横方向(ドレイン領域11の上面に平行な方向)にも形成される。ゲート電極8は、横方向に形成された2次元電子ガス層6a,6bの電荷濃度を制御できる。更に、ゲート電極8の下面からドレイン電極12に向かってヘテロpin接合の空乏層を広げることで、高耐圧を確保することができる。したがって、比較例1に係る横型のHEMTのようにゲートエッジから空乏層が広がる構造よりも、電界集中が緩和され、耐圧向上とリーク電流低減の効果を奏する。
また、ゲート電極8が電子走行領域3a,3bの頂部の上面上に位置する電子供給領域4上に配置されているので、ドレイン領域11に高電圧を印加するときに、ゲート電極8の電子供給領域4に接する全面から、ドレイン電極12に向かってヘテロpin接合の空乏層を広げ、耐圧を確保する。したがって、比較例1に係る横型のHEMTのようにゲートエッジから空乏層を広げる場合よりも電界集中が緩和され、耐圧向上とリーク電流低減の効果及び電流コラプス現象を抑制する効果を奏することができる。
また、ゲート電極8がp型で電子走行領域3a,3bよりも禁制帯幅の狭い半導体(例えばp型GaN)からなる場合、トランジスタのオン時に、ソース電極9が基準電位として、ゲート電極8に正バイアスを印加するときに、ゲート電極8、絶縁膜7,10及びソース電極9によりMOSキャパシタが形成される。ゲート電極8と絶縁膜7bの界面には蓄積層が形成されて、高濃度のp型領域が形成できる。この高濃度のp型領域によってゲート電極8下部の電子走行領域3a,3bに形成する空乏層が深くなり、ショットキーゲート型HEMTよりゲートの閾値電圧を高める効果がある。これによって、HEMTの耐ノイズ性が良好となる。また、高濃度のp型領域により、ゲート電極8の抵抗成分も低減でき、スイッチング損失の低減に繋がる。
また、ゲート電極8がゲート絶縁膜7xを介して電子供給領域4に接するので、高いゲート電圧を印加でき、オン抵抗を低減することができる。また、縦型のHEMTは一般の横型のHEMTとは異なり、オン動作時にゲート電界と同じ方向で電流が流れるため、ゲートのリーク電流が大きいと考えられる。そこで、ゲート絶縁膜7xを設けることにより、リーク電流を低減することができる。
また、ドレイン領域11の半導体基板1がSiからなる場合には低抵抗となり且つ安価である。また、半導体基板1上のバッファ領域2又は電子走行領域3a,3bがGaNからなる場合には、n型Siとn型GaNの仕事関数は同程度であり、オーミック接合を形成するので、トランジスタのオン時には低抵抗となる。また、電子走行領域3a,3bがGaNからなる場合にはバンドギャップが大きく、絶縁破壊電界強度が高い。更には、電子供給領域4とのヘテロ接合界面に2次元電子ガス層6a,6bを形成できるため、低抵抗化及び高耐圧化を実現可能となる。
<第3の実施形態の半導体装置の製造方法>
次に、図17〜図21を用いて、第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を説明する。
(a)第2の実施形態と同様の手順で、図11に示した電子供給領域4を形成する。次に、図18に示すように、LPCVD法等により、電子供給領域4上にゲート絶縁膜(Si3N4膜)7xを数十nm程度の膜厚で成膜する。
(b)次に、バッファ領域2を形成する手順と同様に、MOCVD法等により、ゲート絶縁膜(Si3N4膜)7x上にp型のGaN層を成膜する。膜厚は特に性能に影響しないが一般的には数百nmが好適である。この際、GaN層の堆積中に、Cp2Mg、MCp2Mg等のMgを含むガスを投入することにより、不純物密度1018〜2×1020cm−3程度のp型GaNからなるゲート電極8を形成することができる。なお、p型GaN層は、MOCVD後、N2ガス中のアニールをすることが好ましい。更に、ノンドープのGaN層を堆積後にMgイオンを注入し、900〜1000℃で加熱して活性化することでも形成可能であるが、Mgイオンの加速電圧を高くする必要がある。
(c)次に、熱CVD法やプラズマCVD法を用いて、ゲート電極8上に、SiO2膜を数μm程度の厚さで形成する。次に、スピンナー等を用いてSiO2膜上にフォトレジスト膜を塗布し、このフォトレジスト膜に対してフォトリソグラフィー法を用いてパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をマスクとして用いて、ドライエッチング等により、SiO2膜をパターニングする。その後、フォトレジスト膜をO2プラズマ等で除去する。そして、パターニングされたSiO2膜をマスク材10として用いて、ドライエッチング等により、図19に示すようにゲート絶縁膜7xの上面が露出するまでゲート電極8の一部を選択的に除去する。
(d)次に、図20に示すように、LPCVD法等により、電子供給領域4、ゲート電極8及びマスク材10を覆うように、絶縁膜(Si3N4膜)7を数百nm程度の厚さで成膜する。引き続き、図21に示すように、熱リン酸を用いたウェットエッチング等により、電子走行領域3a,3bの頂部上のゲート絶縁膜7x及び電子供給領域4を除去し、電子走行領域3a,3bの頂部と、電子走行領域3a,3bの頂部の一部にまで延長された電子供給領域4の端部を露出させる。この際、マスク材10上の絶縁膜(Si3N4膜)7も除去されるが、マスク材10はSiO2膜であるため除去されずに残存する。
(e)その後、図17に示すように、蒸着法、スパッタ法又はCVD法等により、電子走行領域3a,3bの頂部及び電子走行領域3a,3bの頂部の一部にまで延長された電子供給領域4の端部に接するように金属膜を堆積する。この金属膜の上にフォトレジスト膜を塗布して、フォトリソグラフィー技術によりフォトレジスト膜をパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をマスクとして用いたエッチングにより金属膜の一部を選択的に除去して、ソース電極9を形成する。一方、蒸着法、スパッタ法又はCVD法等により、ドレイン領域11の裏面にドレイン電極12を堆積する。この結果、図16に示した半導体装置が完成する。
第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、素子の小型化及び高集積化を図りつつ、耐圧の低下、リーク電流の増大及び電流コラプス現象の発生を防止することができる半導体装置を容易に実現可能となる。
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る半導体装置は、図22に示すように、n型のドレイン領域11と、ドレイン領域11の上面に対して垂直な側壁面をドレイン領域11上に互いに対向して離間して配置された、ドレイン領域11と禁制帯幅の等しい半導体からなる複数の電子走行領域3a,3bと、電子走行領域3a,3bの側壁面をヘテロ接合界面として電子走行領域3a,3bに接した電子走行領域3a,3bよりも禁制帯幅の広い半導体からなる電子供給領域4と、複数の電子走行領域3a,3bの頂部で電子供給領域4に接したソース電極9と、電子供給領域4の主面の一部を介して電子走行領域3a,3bの電位を制御するゲート電極8と、ドレイン領域11の裏面に配置されたドレイン電極12とを備える縦型の半導体装置である。
ドレイン領域11は、n+型Siからなる半導体基板(基板領域)1と半導体基板1上に配置されたn型GaNからなるバッファ領域2とを備える2層構造である。第4の実施形態においては、バッファ領域2が、半導体基板1上の一部に配置されている点が、第1〜第3の実施形態と異なる。このため、バッファ領域2の側面及び上面が電子供給領域4に接する。また、半導体基板1上のバッファ領域2が配置されていない部分は、電子供給領域4及び電子走行領域3a,3bの端部と接する。
電子走行領域3a,3bは、例えば不純物を意図的に添加していないGaNからなり、電子供給領域4は、例えば不純物を意図的に添加していない組成x=0.2〜0.5程度のAlxGa1−xNからなる。電子供給領域4は、電子走行領域3a,3bの側壁面に挟まれ、且つ電子走行領域3a,3bの頂部の一部にまで延長されている。
電子供給領域4全体としての形状は、第2及び第3の実施形態と同様であるが、第4の実施形態においては、電子供給領域4は、バッファ領域2の上面に接する第1の電子供給領域4aと、電子走行領域3a,3bの垂直な側壁面及びバッファ領域2の側面に接する第2及び第3の電子供給領域4b,4cと、第1〜第3の電子供給領域4a,4b,4c上に配置された第4の電子供給領域4dとが順次形成されることで構成されている。
ゲート電極8は、電子走行領域3a,3bの頂部の上面上に位置する電子供給領域4上に配置されている。ゲート電極8は、例えばp型で電子供給領域4よりも禁制帯幅の狭い半導体(例えばGaN)からなる。p型のGaNからなるゲート電極8と、不純物を意図的に添加していないAlxGa1−xNからなる電子供給領域4とによりヘテロ接合が形成される。
ゲート電極8とソース電極9との間には、例えば、Si3N4膜からなる絶縁膜7及びSiO2膜からなる絶縁膜10が配置されている。ソース電極9は、電子走行領域3a,3bの頂部上にまで延長された電子供給領域4の端部に接している。
第4の実施形態に係る半導体装置は、電子走行領域3a,3bがドレイン領域11の上面に対して垂直な側壁面を互いに対向して離間して配置しているので、電子走行領域3aと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面及び電子走行領域3bと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面は、それぞれドレイン領域11の上面に対して垂直方向に形成されるとともに、ドレイン領域11の上面に平行な方向にも形成される。即ち、電子走行領域3aと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面及び電子走行領域3bと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面のそれぞれの一部は、電子走行領域3a,3bの頂部上面(ドレイン領域11の上面)に平行な面を有する。電子走行領域3aと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面及び電子走行領域3bと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面のそれぞれの一端(下端)はドレイン領域11に接し、他端(延長された端部)はソース電極9に接している。
第4の実施形態に係る半導体装置の動作時には、電子走行領域3aと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面及び電子走行領域3bと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面には、仕事関数差によるバンド曲がりによって2次元電子ガス層6a,6bがドレイン領域11の上面に対して垂直方向にそれぞれ形成されるとともに、ドレイン領域11の上面に平行な方向にも形成される。
第4の実施の形態に係る半導体装置の平面レイアウトは、図1(b)に示した平面レイアウトのゲート電極8及び電子供給領域4a,4bの直線状のパターンを、電子供給領域4の直線状のパターンに置き換えればよい。第4の実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第2の実施形態に係る半導体装置の構成と同様であるので、重複した説明を省略する。
<第4の実施形態の半導体装置の動作>
第4の実施形態に係る半導体装置の動作は、第2の実施形態に係る半導体装置の動作と基本的には同様である。第2の実施形態に係る半導体装置の動作との相違点としては、半導体基板1のバッファ領域2が配置されていない部分が、電子供給領域4及び電子走行領域3a,3bと直接接しており、オン動作時に流れる電流がバッファ領域2を通る必要がないため、バッファ領域2の抵抗成分がなくなり、オン抵抗を低減することができる。
<第4の実施形態の半導体装置の効果>
以上説明したように、第4の実施形態に係る半導体装置によれば、第1〜第3の実施形態と同様に、電子走行領域3a,3bの垂直な側壁面をヘテロ接合面として電子走行領域3a,3bに接するように電子供給領域4を配置することにより、縦方向(ドレイン領域11の上面に対して垂直方向)に2次元電子ガス層6a,6bを形成することができる。そして、電子走行領域3a,3bと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面の一端がドレイン領域11に接し、ヘテロ接合界面の他端がソース電極9に接するので、半導体装置の動作時には電子を2次元電子ガス層6a,6bを通じて主として縦方向に走行させることができ、低抵抗化を図ることができる。
また、ゲート電極8を電子走行領域3a,3bの周辺に配置することができるので、面積をとらずに高集積化を実現可能となる。また、必要とする耐圧に応じて電子走行領域3a,3bの厚さを設定することによりゲート電極8とドレイン領域11の距離を調整できるので、素子の高集積化を図ることができる。また、ソース電極9及びドレイン電極12をそれぞれ対向する異なる主面に配置された面電極とすることもできるため、実装しやすく、配線抵抗の影響が低く、エレクトロマイグレーションも改善できる効果もある。更に、一方の主面にソース電極とドレイン電極の両方を配置する横型のHEMTより、一つのトランジスタに対して電極の面積の割合が大きいため、熱の低減効果もある。
また、ドレイン領域11が半導体基板1と、半導体基板1上の一部に配置されたバッファ領域2を有することにより、バッファ領域2を利用して半導体基板1と電子走行領域3a,3bとの格子定数の差を調整可能になる。したがって、高品質な電子走行領域3a,3bを形成でき、結晶欠陥による耐圧低下を防止することができる。
また、電子走行領域3a,3bと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面が電子走行領域3a,3bの頂部上面に平行な面上にまで延長されることで、電子走行領域3a,3bと電子供給領域4とがなすヘテロ接合界面で発生する2次元電子ガスは縦方向(ドレイン領域11の上面に対して垂直方向)だけでなく、横方向(ドレイン領域11の上面に平行な方向)にも形成される。ゲート電極8は、横方向に形成される2次元電子ガス層6a,6bの電荷濃度を制御できる。更に、ゲート電極8の下面からドレイン電極12に向かってヘテロpin接合の空乏層を広げることで、高耐圧を確保することができる。したがって、比較例1に係る横型のHEMTのようにゲートエッジから空乏層が広がる構造よりも、電界集中が緩和され、耐圧向上とリーク電流低減の効果を奏する。
また、ゲート電極8が電子走行領域3a,3bの頂部の上面上に位置する電子供給領域4上に配置されているので、ドレイン領域11に高電圧を印加するときに、ゲート電極8の電子供給領域4に接する全面から、ドレイン電極12に向かってヘテロpin接合の空乏層を広げ、耐圧を確保する。したがって、比較例1に係る横型のHEMTのようにゲートエッジから空乏層を広げる場合よりも電界集中が緩和され、耐圧向上とリーク電流低減の効果及び電流コラプス現象を抑制する効果を奏することができる。
また、ゲート電極8がp型で電子走行領域3a,3bよりも禁制帯幅の狭い半導体(例えばp型GaN)からなるヘテロ接合ゲート型HEMTの構造の場合、トランジスタのオン時に、ソース電極9が基準電位として、ゲート電極8に正バイアスを印加するときに、ゲート電極8、絶縁膜7b及びソース電極9によりMOSキャパシタが形成される。ゲート電極8と絶縁膜7bの界面には蓄積層が形成されて、高濃度のp型領域が形成できる。この高濃度のp型領域によってゲート電極8下部の電子走行領域3a,3bに形成されるヘテロpin接合の空乏層が深くなり、ショットキーゲート型HEMTよりゲートの閾値電圧を高める効果がある。これによって、HEMTの耐ノイズ性が良好となる。また、高濃度のp型領域により、ゲート電極8の抵抗成分も低減でき、スイッチング損失の低減に繋がる。
また、半導体基板1の上面のバッファ領域2が配置されていない部分が電子走行領域3a,3bと接することにより、バッファ領域2の抵抗分を低減でき、トランジスタのオン抵抗を低減することができる。
また、ドレイン領域11の半導体基板1がSiからなる場合には低抵抗となり且つ安価である。また、半導体基板1上のバッファ領域2又は電子走行領域3a,3bがGaNからなる場合には、n型Siとn型GaNの仕事関数は同程度であり、オーミック接合を形成するので、トランジスタのオン時には低抵抗となる。また、電子走行領域3a,3bがGaNからなる場合にはバンドギャップが大きく、絶縁破壊電界強度が高い。更には、電子供給領域4とのヘテロ接合界面に2次元電子ガス層6a,6bを形成できるため、低抵抗化及び高耐圧化を実現可能となる。
<第4の実施形態の半導体装置の製造方法>
次に、図23〜図27を用いて、第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を説明する。
(a)先ず、第1の実施形態と同様の手順で、TMG、NH3ガス等によるMOCVD法等を用いて、半導体基板1上にバッファ領域2を形成する。次に、バッファ領域2を形成する手順と同様に、TMA、TMG、NH3ガス等によるMOCVD法等を用いて、図23に示すように、バッファ領域2上にAlの組成x=0.2〜0.5程度のAlxGa1−xN層からなる第1の電子供給領域4aを50nm程度の膜厚で成膜する。
(b)次に、熱CVD法やプラズマCVD法等により、第1の電子供給領域4a上にSiO2膜を数μm程度の厚さで形成する。引き続き、スピンナー等を用いてSiO2膜上にフォトレジスト膜を塗布し、このフォトレジスト膜に対してフォトリソグラフィー法を用いてパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をマスクとして用いて、ドライエッチング等により、SiO2膜をパターニングする。その後、フォトレジスト膜をO2プラズマ等で除去する。そして、パターニングされたSiO2膜をマスク材13として用いて、ドライエッチング等により、図24に示すように、半導体基板1が露出するように第1の電子供給領域4a及びバッファ領域2の一部を選択的に除去する。マスク材13はフッ酸を用いたウェットエッチング等により除去される。
(c)引き続き、図25に示すように、TMA、TMG、NH3ガス等によるMOCVD法等を用いて、第1の電子供給領域4a及びバッファ領域2を覆うように、AlxGa1−xN層4を50nm程度の膜厚で成膜する。そして、図26に示すように、AlxGa1−xN層4を50nm程度エッチバックして、バッファ領域2の両側面に第2及び第3の電子供給領域4b,4cをそれぞれ形成するとともに、半導体基板1を露出させる。
(d)次に、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の図11に示した工程と同様に、TMA、TMG、NH3ガス等によるMOCVD法等を用いて、U溝5を埋めるようにAlxGa1−xN層からなる第4の電子供給領域4dを堆積した後、第4の電子供給領域4dをエッチバックして、電子走行領域3a,3bの頂部に数nm〜十数nmの厚さで残留させる。以降は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の図12〜図15に示した工程と同様であるので、重複した説明を省略する。
第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、素子の小型化及び高集積化を図りつつ、耐圧の低下、リーク電流の増大及び電流コラプス現象の発生を防止することができる半導体装置を容易に実現可能となる。
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1〜第4の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、第1〜第4の実施形態に係る半導体装置の平面レイアウトとしては、図1(b)に示したものに限定されない。図28〜図31は、図1(b)のB−B方向から見た場合に対応する平面レイアウトの変形例をそれぞれ示す。例えば、図28に示すように、ゲート電極8が折れ曲がるように紙面の上下方向に延伸しており、ゲート電極8を挟む電子走行領域3a,3bの側壁面が折れ面を有していてもよい。電子供給領域4a,4bは電子走行領域3a,3bの側壁面に沿って形成されるため、電子供給領域4a,4bも折れ面を有する。ここで、電子走行領域3a,3bの折れ曲がった部分は角部になり、角部をなす二つの面から電子供給領域4の仕事関数差によるバンド曲がりを受け、角部以外の領域よりもバンドの曲りが大きい。したがって、2次元電子ガス層6a,6bの電子濃度が高くなり、低抵抗となる。
また、図29に示すように、ゲート電極8が曲線部分を有して延伸しており、電子走行領域3a,3bの側壁面が曲面を有していてもよい。また、図30に示すように、電子走行領域3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,3h,3i,…及び電子供給領域4a,4b,4c,4d,4e,4f,4g,4h,4i,…が正方形等の矩形パターンで区画されるようにゲート電極8が折れ面を有して延伸していてもよい。電子走行領域3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,3h,3i,…と電子供給領域4a,4b,4c,4d,4e,4f,4g,4h,4i,…とのヘテロ接合界面には2次元電子ガス層6a,6b,6c,6d,6e,6f,6g,6h,6i,…が形成される。
また、図31に示すように、電子走行領域3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,3h,3i,…及び電子供給領域4a,4b,4c,4d,4e,4f,4g,4h,4i,…が六角形パターンで区画されるようにゲート電極8が折れ面を有して延伸していてもよい。電子走行領域3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,3h,3i,…と電子供給領域4a,4b,4c,4d,4e,4f,4g,4h,4i,…とのヘテロ接合界面には2次元電子ガス層6a,6b,6c,6d,6e,6f,6g,6h,6i,…が形成される。
図28〜図31に示すように、電子走行領域3a,3bの側壁面が平面パターンとして見た場合に曲面又は折れ面を有することにより、曲面又は折れ面の角部(コーナー部)をなす2つの面から電子供給領域4によるバンド曲がりを受けることになるため、角部(コーナー部)以外の場所より高い電子濃度となり、トランジスタがオン動作時に低抵抗となる。なお、図28〜図31に示したレイアウトは、図28〜図31に示したゲート電極8及び電子供給領域4a,4b,4c,4d,4e,4f,4g,4h,4i,…のパターンを有するマスクを用いて、電子走行領域3の一部を選択的に除去してU溝5を形成することにより実現できる。
また、第1〜第4の実施形態に係る半導体装置として、GaN/AlxGa1−xNのヘテロ接合を用いたGaN系HEMTを一例として説明したが、GaN系HEMT以外の半導体装置であってもよい。例えば、GaAs基板を用いてGaAs/AlxGa1−xAs等のヘテロ接合を形成するGaAs系HEMTであってもよく、InP基板を用いてInxAl1−xAs/InyGa1−yAs等のヘテロ接合を形成するInP系HEMTであってもよく、SixGe1−x/Siのヘテロ接合を用いたSiGe系HEMTであってもよい。
また、第1〜第4の実施形態においては、半導体基板1としてSi基板を用いた場合を説明したが、Si基板の代わりに炭化珪素(SiC)基板やサファイヤ基板を用い、その上にバッファ領域2又は電子走行領域3a,3bを形成してもよい。また、ゲート電極8に接する絶縁膜7a,7bとしてSi3N4膜を説明したが、SiO2膜を用いてもよい。また、電子走行領域3a,3bの垂直な側壁は、ドレイン領域11の上面に対して厳密に垂直である場合の他、ドレイン領域11の上面に対して斜め方向に延伸するものも包含するものとする。
また、第1〜第4の実施形態の説明において、便宜上、ゲート電極8がp型ドープド・ポリシリコン膜である場合について例示的に説明したが、ゲート電極8はn型ドープド・ポリシリコン膜で構成してもよい。また、ゲート電極8は低抵抗の導電性材料であれば、他の半導体材料で構成してもよい。例えば、p型又はn型不純物を添加した多結晶SiC、多結晶シリコンゲルマニウム(SiGe)等でもよい。更に、ゲート電極8にはAl、銅(Cu)、金(Au)、Al合金の合金材料、高融点金属、高融点金属のシリサイド等を用いることが可能で、ポリサイド等の高融点金属のシリサイド層と多結晶半導体層の複合構造をゲート電極8に用いてもよい。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。