以下に添付図面を参照して、実施形態に係るインプリント装置およびインプリント方法を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るインプリント装置の構成を示す図である。図1では、インプリント装置101をY軸方向から見た場合の構成を示している。なお、本実施形態では、ウエハWxの載置される面がXY平面であり、ウエハWxの上面はZ軸と垂直に交わっている。
インプリント装置101は、光ナノインプリント処理などのインプリント処理を行う装置である。インプリント装置101は、ウエハWxなどの被転写基板(半導体基板)に、モールド基板であるテンプレートTxのテンプレートパターンを転写する。テンプレートは、主面が矩形状の板状部材を用いて形成された原版の型であり、テンプレートパターンは、回路パターンなどの凹凸パターンである。
インプリント装置101は、ウエハWx上にステップ&リピート方式でウエハWxの全面にレジストパターンを形成する。インプリント装置101は、インプリント処理の際に発生する異常(パターン欠陥など)をリアルタイムで検出する。
本実施形態のインプリント装置101では、テンプレートTxの側面などに後述するAEセンサ50Xが配置されている。そして、AEセンサ50Xが、インプリント中のAE信号を検出することによって、テンプレートTxと異物との接触、テンプレートTxの破損などを検出する。
インプリント装置101は、原版ステージ2X、試料ステージ5、基準マーク6、アライメントセンサ7、基板チャック8、ステージベース9、UV光源10、アクチュエータ31Xを備えている。また、本実施形態のインプリント装置101は、制御装置20を備えている。
試料ステージ5は、ウエハWxを載置するとともに、載置したウエハWxと平行な平面内(水平面内)を移動する。試料ステージ5は、転写材としてのレジスト40Xが全面または略全面(エッジ以外の全面)に塗布されたウエハWxを搬入して、テンプレートTxの下方側に移動させる。また、試料ステージ5は、ウエハWxへの押印処理を行う際には、ウエハWx上の各ショット位置を順番にテンプレートTxの下方側に移動させる。
試料ステージ5上には、基板チャック8が設けられている。基板チャック8は、ウエハWxを試料ステージ5上の所定位置に固定する。また、試料ステージ5上には、基準マーク6が設けられている。基準マーク6は、試料ステージ5の位置を検出するためのマークであり、ウエハWxを試料ステージ5上にロードする際の位置合わせに用いられる。
ステージベース9の底面側(ウエハWx側)には、原版ステージ2Xが設けられている。原版ステージ2Xは、テンプレートTxの裏面側(テンプレートパターンの形成されていない側の面)からテンプレートTxを真空吸着などによって所定位置に固定する。
また、原版ステージ2Xの底面側には、アクチュエータ31Xが設けられている。アクチュエータ31Xは、ピエゾアクチュエータである。アクチュエータ31Xは、マニュピレータの機能を有している。アクチュエータ31Xは、テンプレートTxの四方の側面側からテンプレートTxを押すことによって、テンプレートTxを所定のサイズに調整する。
ステージベース9は、原版ステージ2XによってテンプレートTxを支持するとともに、テンプレートTxのテンプレートパターンをウエハWx上のレジスト40Xに押し当てる。ステージベース9は、上下方向(鉛直方向)に移動することにより、テンプレートTxのレジスト40Xへの押し当てと、テンプレートTxのレジスト40Xからの引き離し(離型)と、を行う。
インプリントに用いるレジスト40Xは、例えば、光硬化性などの特性を有した樹脂(光硬化剤)である。また、ステージベース9上には、アライメントセンサ7が設けられている。アライメントセンサ7は、ウエハWxの位置検出やテンプレートTxの位置検出を行うセンサである。
UV光源10は、UV光などの光を照射する光源であり、ステージベース9の上方に設けられている。UV光源10は、テンプレートTxがレジスト40Xに押し当てられた状態で、透明なテンプレートTx上からUV光を照射する。
制御装置20は、インプリント装置101の各構成要素に接続され、各構成要素を制御する。図1では、制御装置20が、ステージベース9およびアクチュエータ31Xに接続されているところを図示しており、他の構成要素との接続は図示省略している。
本実施形態の制御装置20は、後述するセンサ情報とインプリント時に発生した力(AE波など)を用いて、インプリント工程において異常が発生したか否かを判断する。制御装置20は、インプリント工程において異常が発生したと判断すると、インプリント処理の停止制御や、異常に関する情報(判定情報)の出力などを行う。また、制御装置20は、後述する校正用テンプレートTpを用いて、インプリント工程での異常発生位置を校正するための情報(センサ情報)を生成する。
ウエハWxへのインプリントを行う際には、レジスト40Xが塗布または滴下されたウエハWxがテンプレートTxの直下まで移動させられる。そして、テンプレートTxがウエハWx上のレジスト40Xに押し当てられる。
なお、インプリント装置101は、テンプレートTxをレジスト40Xに押し当てる代わりに、レジスト40XをテンプレートTxに押し当ててもよい。この場合、試料ステージ5がウエハWx上のレジスト40XをテンプレートTxに押し当てる。このように、インプリント装置101は、テンプレートTx(テンプレートパターン)をレジスト40Xに押し当てる際には、テンプレートTxと、レジスト40Xの配置されたウエハWxとの間の距離を所定の距離に近づける。これにより、テンプレートパターンとレジスト40Xとが接触させられる。なお、図1および以下の図2では、テンプレートTxが有しているザグリの図示を省略している。
つぎに、インプリント工程の処理手順について説明する。図2は、インプリント工程の処理手順を説明するための図である。図2では、インプリント工程におけるウエハWxやテンプレートTxなどの断面図を示している。
図2の(a)に示すように、ウエハWxの上面には、インクジェット方式によってレジスト40Xが滴下される。レジスト40Xは、光硬化性樹脂材料などのインプリント材料である。レジスト40Xには、low-k(低誘電率)膜や有機材料などが用いられる。
レジスト40Xが滴下された後、図2の(b)に示すように、テンプレートTxがレジスト40X側に移動させられ、図2の(c)に示すように、テンプレートTxがレジスト40Xに押し当てられる。石英基板等を掘り込んで作られたテンプレートTxがレジスト40Xに接触させられると、毛細管現象によってテンプレートTxのテンプレートパターン内にレジスト40Xが流入する。テンプレートパターンは、プラズマエッチングなどで形成された凹凸パターンである。
テンプレートTxとレジスト40Xとは、所定時間だけ接触させられる。これにより、レジスト40Xがテンプレートパターンに充填させられる。この状態でUV光源10からのUV光がテンプレートTxを介してレジスト40Xに照射されると、レジスト40Xが硬化する。
この後、図2の(d)に示すように、テンプレートTxが、硬化したレジスト(レジストパターン)40Yから離型されることにより、テンプレートパターンを反転させたレジスト40YがウエハWx上に形成される。レジスト40Yは、接着層であるウエハWxと、凹凸パターンの凹部の底と、の間にわずかの残膜層を有している。残膜層は、例えば、10nmから数十nmの厚さである。インプリント装置101は、ウエハWx上の第1のショットへのインプリント処理を実行した後、ウエハWx上の第2のショットへのインプリント処理を実行する。
つぎに、第1の実施形態に係るアクチュエータ31Xの構成について説明する。図3は、第1の実施形態に係るアクチュエータの構成を示す上面図である。図3では、アクチュエータ31XおよびテンプレートTxをZ軸方向から見た場合の上面図を示している。
図3では、テンプレートTxを側面側から支持するアクチュエータ31Xが、アクチュエータ31R〜34R,31L〜34L,31T〜34T,31B〜34Bである場合について説明する。
テンプレートTxは、その中央領域に、テンプレートパターンが形成されたパターン領域71を有している。パターン領域71は、例えば矩形状の領域である。パターン領域71は、テンプレートTxのおもて面側に形成されている。テンプレートTxは、裏面側から原版ステージ2Xによって固定されている。
パターン領域71と、パターン領域71よりも外側の領域には、ザグリ(counter bore)72が設けられている。ザグリ72は、テンプレートTxの裏面側からテンプレートTxを所定の深さまで削りこんだものである。ザグリ72は、例えば、円柱状の穴形状を有している。これにより、パターン領域71とその周辺部は、テンプレートTxの他の領域よりも薄くなっている。
アクチュエータ31Xは、テンプレートTxの側面を押すことができるよう、テンプレートTxの側面側に配置されている。アクチュエータ31R〜34Rは、テンプレートTxの側面のうち、−X方向を向いた側面を押す。アクチュエータ31L〜34Lは、テンプレートTxの側面のうち、+X方向を向いた側面を押す。アクチュエータ31T〜34Tは、テンプレートTxの側面のうち、+Y方向を向いた側面を押す。アクチュエータ31B〜34Bは、テンプレートTxの側面のうち、−Y方向を向いた側面を押す。
図4は、第1の実施形態に係るアクチュエータの構成を示す断面図である。図4では、アクチュエータ31XをY軸方向から見た場合の断面図を示している。なお、アクチュエータ31R〜34R,31L〜34L,31T〜34T,31B〜34Bは、同様の構成を有しているので、ここではアクチュエータ31Rの構成について説明する。
アクチュエータ31Xの一例であるアクチュエータ31Rは、ピエゾ素子31,33、AE(アコースティックエミッション)センサ50Xを用いて構成されている。アクチュエータ31Rでは、ピエゾ素子31と、ピエゾ素子33とAEセンサ50Xとが直結されて、棒形状をなしている。
アクチュエータ31Rの長手方向の一方の端部には、AEセンサ50Xが配置されており、他方の端部には、ピエゾ素子31が配置されている。そして、AEセンサ50Xとピエゾ素子31との間にピエゾ素子33が配置されている。
アクチュエータ31Rは、例えば、一方の端部であるAEセンサ50XでテンプレートTxの側面を押すことができる位置に配置される。なお、ピエゾ素子31,33とAEセンサ50Xは、アクチュエータ31X内の何れの位置に配置されてもよい。
ピエゾ素子31は、d31モードのピエゾ素子であり、ピエゾ素子33は、d33モードのピエゾ素子である。ここでのピエゾ素子31は、X方向に伸縮可能なようアクチュエータ31X内に配置される。また、ピエゾ素子33は、Z方向に伸縮可能なようアクチュエータ31X内に配置される。
また、AEセンサ50Xは、ピエゾ素子などを用いて構成されたセンサである。AEセンサ50Xは、インプリント工程における異常を検出する。具体的には、AEセンサ50Xは、テンプレートTxと異物との接触、テンプレートTxの破損などによって発生するAE波を検出する。
アクチュエータ31XがテンプレートTxの側面を押す際には、ピエゾ素子33によってテンプレートTxのX方向およびY方向の歪みが調整される。具体的には、アクチュエータ31R〜34R,31L〜34LによってテンプレートTxのX方向の歪みが調整され、アクチュエータ31T〜34T,31B〜34BによってテンプレートTxのY方向の歪みが調整される。
ピエゾ素子31は、Z方向に伸縮することによってテンプレートTxをZ方向に振動させる。テンプレートTxは、レジスト40Xの充填の際に、ピエゾ素子31によってZ方向に振動させられる。これにより、レジスト40YからのテンプレートTxの離型が容易になる。
なお、AEセンサ50Xを備えたアクチュエータ31Xは、16個に限らず、いくつであってもよい。AEセンサ50Xを備えたアクチュエータ31Xが、少なくとも3つ配置されることによって、異常の発生した位置を正確に検出することが可能となる。
アクチュエータ31Xは、例えば、4個1組として配置される。この場合、テンプレートTxの4つの側面に1つずつのアクチュエータ31Xが配置される。アクチュエータ31Xは、テンプレートTxから見て、X方向で対向する位置に2つ配置され、Y方向で対向する位置に2つ配置される。
本実施形態では、アクチュエータ31R〜34Rは、それぞれアクチュエータ31L〜34Lに対してX方向の対向する位置に配置されている。アクチュエータ31T〜34Tは、それぞれアクチュエータ31B〜34Bに対してY方向の対向する位置に配置されている。なお、アクチュエータ31Xは、2個1組として配置されてもよい。
AEセンサ50Xは、テンプレートTxの側面と接触する面(周波数を検出する面)が小さいほど、接触面積に起因する測定誤差が小さくなる。したがって、AEセンサ50Xのうち、テンプレートTxの側面と接触する面(AE波を検出する面)は、小さく構成しておく方が望ましい。
なお、AEセンサ50Xは、AEセンサ50X毎に計測対象範囲(AE波の検知周波数)が異なっていてもよい。例えば、アクチュエータ31R,31L,31T,31BのAEセンサ50Xは、第1の周波数帯域を検知し、アクチュエータ32R,32L,32T,32BのAEセンサ50Xは、第2の周波数帯域を検知するよう構成しておいてもよい。また、アクチュエータ33R,33L,33T,33BのAEセンサ50Xは、第3の周波数帯域を検知し、アクチュエータ34R,34L,34T,34BのAEセンサ50Xは、第4の周波数帯域を検知するよう構成しておいてもよい。
また、AEセンサ50Xが配置される位置は、テンプレートTxの底面側(アクチュエータ31X内)に限らず、何れの位置でもよい。例えば、AEセンサ50Xは、原版ステージ2Xの上面側、側面側、原版ステージ2X内などに配置されてもよい。また、AEセンサ50Xは、テンプレートTxの上面側や側面側などに配置されてもよい。また、AEセンサ50Xは、基板チャック8の側面側、底面側、基板チャック8内などに配置されてもよい。また、AEセンサ50Xは、ウエハWxの上面側や側面側などに配置されてもよい。
また、AEセンサ50Xは、配置される位置毎に異なる検知周波数を計測対象としてもよい。例えば、原版ステージ2Xの近傍に配置されるAEセンサ50Xは、テンプレートTxおよび原版ステージ2Xの部材や形状に応じた検知周波数が計測対象とされる。また、基板チャック8の近傍に配置されるAEセンサ50Xは、テンプレートTxおよび基板チャック8の部材や形状に応じた検知周波数が計測対象とされる。
図5は、AE計測系の構成を示す図である。AE計測系55は、AEセンサ50Xと、プリアンプ51と、BPF(Band Pass Filter)52と、メインアンプ53とが直列接続されて構成されている。
AEセンサ50Xは、検出したAE波をAE信号としてプリアンプ51に送る。プリアンプ51は、AE信号を増幅してBPF52に送る。BPF52は、フィルタ回路であり、AE信号のうちの所定範囲の周波数のみを通過させてメインアンプ53に送る。メインアンプ53は、BPF52から送られてきたAE信号を増幅させて、AD変換器(図示せず)側へ送る。AE信号は、AD変換器でAD変換された後、制御装置20に入力される。
図6は、第1の実施形態に係る制御装置の構成を示す図である。制御装置20は、AE信号入力部21、センサ情報生成部22、比較信号入力部23、センサ情報記憶部24、比較信号記憶部25を有している。また、制御装置20は、異常判定部27、指示出力部28、判定情報出力部29を有している。
AE信号入力部21へは、外部装置から送られてくるAE信号(波形)が入力される。AE信号入力部21は、AE信号を異常判定部27に送る。比較信号入力部23へは、テンプレートTxで異常が発生した場合に発生すると予測されるAE信号が入力される。比較信号入力部23へ入力されるAE信号は、異常の発生や異常の種類などを判定する際に比較対象として用いられる比較用のAE信号である。比較用のAE信号には、テンプレートTxと異物とが接触した際のAE信号、テンプレートTxが破損した際のAE信号などがある。なお、比較信号入力部23へは、比較用のAE信号の代わりに、比較用の基準値などが入力されてもよい。
比較信号入力部23へは、比較用のAE信号が外部入力される。比較信号入力部23は、比較用のAE信号を比較信号記憶部25に記憶させる。比較信号記憶部25は、比較用のAE信号を記憶するメモリなどである。
センサ情報生成部22へは、指示出力部28から送られてくる第1の位置情報が入力される。第1の位置情報は、校正用テンプレートTpに対して意図的に異常を発生させる位置の情報(座標)である。また、センサ情報生成部22へは、異常判定部27から送られてくる第2の位置情報が入力される。第2の位置情報は、異常判定部27で解析された実際の異常の発生位置を示す情報である。
センサ情報生成部22は、第1および第2の位置情報に基づいて、センサ情報を生成する。センサ情報は、異常発生位置の校正に用いられる。センサ情報は、AEセンサ50Xを用いて検出された異常発生位置と、実際の異常発生位置との差分を示す情報である。
第1の位置情報は、意図的に校正用テンプレートTpで異常を発生させた際の異常発生位置を示している。換言すると、第1の位置情報は、実際に異常が発生した位置を示している。また、第2の位置情報は、AEセンサ50Xを用いて特定された異常の発生位置を示している。したがって、第1の位置情報と第2の位置情報との差が、AEセンサ50Xの配置面積などに起因する検出の位置誤差である。センサ情報生成部22は、センサ情報をセンサ情報記憶部24に記憶させる。センサ情報記憶部24は、センサ情報を記憶するメモリなどである。
異常判定部27は、AE信号入力部21から送られてくるAE信号を解析する。異常判定部27は、センサ情報が生成される際には、校正用テンプレートTpで発生させたAE信号を解析し、異常の発生した位置を特定する。異常判定部27は、校正用テンプレートTpでの異常発生位置を第2の位置情報として、センサ情報生成部22に送る。
また、異常判定部27は、インプリント処理の際には、インプリント処理の際に発生したAE信号を解析して異常発生位置を特定する。そして、異常判定部27は、特定した異常発生位置を、センサ情報に基づいて校正する。さらに、異常判定部27は、校正後のAE信号と、比較用のAE信号と、を比較することによって、テンプレートTxで異常が発生したか否かを判定する。
異常判定部27は、比較用のAE信号に対する校正後のAE信号の類似度が所定の範囲内である場合に、異常が発生したと判定する。なお、異常判定部27は、校正後のAE信号の波形要素(振幅など)が、比較用の基準値よりも大きい場合に、異常が発生したと判断してもよい。
本実施形態の異常判定部27は、テンプレートTx、レジスト40X,40YおよびウエハWxの少なくとも1つから発生するAE波に基づいて、インプリント工程の異常判定を行う。なお、異常判定部27は、レジスト40XへのテンプレートTxの押印工程時、UV光の照射によるレジスト40Xの硬化工程時、離型工程時などのインプリント工程時の何れの工程において異常を検出してもよい。これにより、テンプレートTxの損傷具合、レジスト40X,40Yの損傷具合、ウエハWxの損傷具合などを判定することが可能となる。
異常判定部27は、異常が発生したと判定した場合には、発生した異常に応じた制御指示をステージベース9などに送る。異常判定部27は、例えば、テンプレートTxの修復が困難な異常に近づいていると判定した場合、インプリント処理の停止指示などを指示出力部28に送る。
また、異常判定部27は、判定結果を判定情報出力部29に送る。判定情報出力部29は、判定結果を表示装置(図示せず)などの外部装置に送る。これにより、判定結果が表示装置などで表示される。ここでの判定結果は、テンプレートTxでの異常の発生位置、異常の種類などである。
指示出力部28は、インプリント装置101内の各構成要素に種々の指示情報を送信する。指示出力部28は、テンプレートTxを搬入する際には、原版ステージ2X、試料ステージ5、アライメントセンサ7、基板チャック8、ステージベース9、アクチュエータ31XなどにテンプレートTxの搬入や固定に関する指示情報を送信する。
また、指示出力部28は、インプリント処理の際には、原版ステージ2X、試料ステージ5、アライメントセンサ7、ステージベース9、UV光源10、アクチュエータ31Xなどに、インプリント位置に関する指示やテンプレートTxの位置補正に関する指示などを送信する。
また、指示出力部28は、センサ情報が生成される際には、校正用テンプレートTpに電流を流す指示を後述する端子に送信するとともに、電流を流させる位置の情報を第1の位置情報としてセンサ情報生成部22に送る。
また、指示出力部28は、異常判定部27からインプリント処理の停止指示などが送られてきた場合には、インプリント装置101内の各構成要素にインプリント処理の停止指示を送信する。
図7は、インプリント工程における検査処理手順を示すフローチャートである。インプリント装置101の制御装置20へは、予め比較用のAE信号または比較用の基準値を入力しておく。また、インプリント処理が開始される前に、校正用テンプレートTpが作製される(ステップS10)。校正用テンプレートTpは、センサ情報の取得に用いられるテンプレートである。
図8は、校正用テンプレートの構成例を示す図である。図8では、校正用テンプレートTpをXY平面で切断した場合の断面図を示している。なお、図8では、アクチュエータ31Xの図示を省略している。また、8つのAEセンサ50Xが校正用テンプレートTpの側面側に配置されている場合を示している。
校正用テンプレートTpは、テンプレートTxと同様の部材で形成されており、テンプレートTxと同様の形状を有している。校正用テンプレートTpの裏面側には、導電性の配線36が形成されている。この配線36は、X方向とY方向とに所定間隔で配置されている。換言すると、配線36は、ラインパターンであり、X方向およびY方向にメッシュ状に配置されている。X方向の配線36とY方向の配線36とは、校正用テンプレートTpの裏面上で交差している。この交差している点(交差点)が、所定の周期でX方向およびY方向に並ぶよう、配線36は配置されている。
各配線36は、校正用テンプレートTpよりも外側の領域で端子に接続されている。この端子は、外部との接続用端子である。X方向の配線36は、+X方向に配置された端子35Rと−X方向に配置された端子35Lとに接続されている。例えば、X方向の配線36がN本(Nは自然数)である場合、端子35R,35Lは、N個ずつ配置される。そして、1本の配線36に対して1つの端子35Rと、1つの端子35Lとが接続される。
同様に、Y方向の配線36は、+Y方向に配置された端子35Tと−Y方向に配置された端子35Bとに接続されている。例えば、Y方向の配線36がM本(Mは自然数)である場合、端子35T,35Bは、M個ずつ配置される。そして、1本の配線36に対して1つの端子35Tと、1つの端子35Bとが接続される。
端子35R,35L,35T,35Bは、原版ステージ2Xの底面側に配置されている。なお、以下の説明では、端子35R,35L,35T,35Bを端子35Xという場合がある。
センサ情報が取得される際には、上述した端子35Xのうちの何れかの端子に対して選択的に電流が流される。例えば、X方向の端子として、端子35R内の1つの端子と、この端子に配線36を介して接続されている端子35Lと、が選択される。また、Y方向の端子として、端子35T内の1つの端子と、この端子に配線36を介して接続されている端子35Bと、が選択される。
そして、選択されたX方向の端子間と、Y方向の端子間とに、電流が流される。これにより、選択されたX方向の端子間の配線36と、選択されたY方向の端子間の配線36と、の交点がショートする。この結果、ショートした交点の位置でテンプレートTxからAE波が発生する。このAE波が、AEセンサ50Xによって検出される。
なお、校正用テンプレートTpは、図8に示した構成に限らず他の構成であってもよい。例えば、疑似欠陥などを配置しておいたテンプレートを校正用テンプレートTpとしてもよい。この場合、FIB(Focused Ion Beam)などによって、テンプレートTp上に異物を形成しておく。
作製された校正用テンプレートTpは、インプリント装置101に搬入される(ステップS20)。原版ステージ2Xは、搬入された校正用テンプレートTpを、裏面側から真空吸着して固定する。また、アクチュエータ31Xは、校正用テンプレートTpの側面を押す。これにより、校正用テンプレートTpが、底面側および側面側で固定される。
この後、制御装置20は、校正用テンプレートTpの端子35Xに対して順番に電流を流す。指示出力部28は、例えば、配線36によってL個の交差点が形成されている場合、L個の交差点が順番にショートするよう電流を流させる。交差点でショートが発生すると、AEセンサ50Xが、ショートによって発生したAE波を検出する。このAE波に対応するAE信号は、異常判定部27に送られる。
そして、異常判定部27は、AE信号に基づいて、異常発生位置を特定する。異常判定部27は、特定した異常発生位置を第2の位置情報としてセンサ情報生成部22に送る。また、ショートを発生させた交差点の位置を示す情報が、第1の位置情報として指示出力部28からセンサ情報生成部22に送られる。
センサ情報生成部22は、第1および第2の位置情報に基づいて、センサ情報を生成する。そして、センサ情報生成部22は、生成したセンサ情報をセンサ情報記憶部24に送る。これにより、制御装置20は、センサ情報を取得する(ステップS30)。
欠陥などの異常が発生する際には、物理的な破壊現象を起こした際にAE信号が発生する事が判っている。ここで、AEセンサ50Xを用いた異常発生位置の特定方法について説明する。図9は、AE信号の縦波および横波を用いて異常発生位置を特定する方法を説明するための図である。
テンプレートTxで亀裂などの異常が発生した際のAE信号には、縦波(P波)65と横波(S波)66とが含まれている。縦波65は、例えば、テンプレートTxや校正用テンプレートTp内を、5770m/secで伝播する。また、横波66は、例えば、テンプレートTxや校正用テンプレートTp内を、3462m/secで伝播する。
異常判定部27へは、比較用のAE信号の一例として、信号波形に対する閾値(基準値)V0を設定しておく。この閾値V0は、所定の振幅を示している。異常判定部27は、縦波65の信号波形が閾値V0に到達した時刻Taを、縦波65の到達タイミングであると判断する。また、異常判定部27は、横波66の信号波形が閾値V0に到達した時刻Tbを、横波66の到達タイミングであると判断する。
異常判定部27は、時刻Taから時刻Tbまでの経過時間T1(T1=Tb−Ta)を算出する。経過時間T1は、縦波65が到達してから横波66が到達するまでの時間(P波/S波到達時間差)である。異常判定部27は、経過時間T1、縦波65の伝播速度、横波66の伝播速度を用いて、AEセンサ50Xから異常発生位置までの距離を算出する。
なお、異常判定部27は、縦波65および横波66に加えて、表面波(R波)の到達速度および伝播速度を用いて、AEセンサ50Xから異常発生位置までの距離を算出してもよい。また、異常判定部27は、縦波65、横波66および表面波の少なくとも2つの波を選択し、選択した波の到達速度および伝播速度を用いて、AEセンサ50Xから異常発生位置までの距離を算出してもよい。
なお、信号波形に対する閾値は、AE信号の弾性波の周波数、振幅、波形形状、発生時間および発生間隔に対して設定されてもよい。この場合、異常判定部27は、検出された信号波形の周波数、振幅、波形、発生時間および発生間隔の少なくとも1つと、予め設定しておいた少なくとも1つの閾値と、を比較することによって異常判定を行う。また、信号波形に対する閾値は、異常の種類毎に設定されてもよいし、異常の度合い毎に設定されてもよい。
異常判定部27は、複数のAEセンサ50Xに対して、AEセンサ50Xから異常発生位置までの距離を算出する。そして、異常判定部27は、算出した複数の距離に基づいて、異常発生位置を特定する。なお、異常判定部27は、複数のAEセンサ50Xで検出されたAE信号の検出タイミグの時間差に基づいて、異常発生位置を特定してもよい。
異常判定部27は、特定した異常発生位置を第2の位置情報としてセンサ情報生成部22へ送る。異常判定部27は、交差点の位置である実際の異常発生位置(第1の位置情報)と、第2の位置情報と、に基づいて、センサ情報を生成する。センサ情報は、センサ情報記憶部24で記憶される。
第2の位置情報が特定された後、校正用テンプレートTpは、インプリント装置101から搬出される(ステップS40)。この後、インプリントに用いられるテンプレートTxがインプリント装置101に搬入される(ステップS50)。
原版ステージ2Xは、搬入されたテンプレートTxを、裏面側から真空吸着して固定する。また、アクチュエータ31Xは、テンプレートTxの側面を押す。これにより、テンプレートTxが、底面側および側面側で固定される。そして、インプリント処理が開始される(ステップS60)。
インプリント装置101は、レジスト40Xが配置されたウエハWxに対して、テンプレートTxを押し当てる。そして、インプリント装置101は、硬化したレジスト40YからテンプレートTxを引き離す。インプリント装置101では、インプリント処理の間、AEセンサ50XがAE波形の検出を行う。
AEセンサ50XがAE波形を検出すると(ステップS70)、AE波形に対応するAE信号が制御装置20のAE信号入力部21に送られる。このAE信号は、異常判定部27に送られる。異常判定部27は、AE信号に基づいて、異常発生位置を算出する(ステップS75)。
さらに、異常判定部27は、センサ情報を用いて、異常発生位置を校正する(ステップS80)。また、異常判定部27は、AEセンサ50XからのAE信号と、比較用のAE信号と、を比較することによって、テンプレートTxなどで異常が発生したか否かを判定する(ステップS90)。異常判定部27は、比較用のAE信号に対する、AEセンサ50XからのAE信号の類似度が所定の範囲内である場合に、異常が発生したと判定する。
異常判定部27は、異常が発生したと判定した場合には、発生した異常がテンプレートTxの修復が困難な状態に近づいているか否かを判定する(ステップS100)。異常判定部27は、テンプレートTxの修復が困難な状態に近づいていると判定した場合(ステップS100、Yes)、インプリント処理の停止指示(中断指示)などを指示出力部28に送る。
指示出力部28は、インプリント処理の停止指示を、インプリント装置101内の各構成要素に送信する。これにより、インプリント処理が停止する(ステップS110)。さらに、異常判定部27は、判定結果を判定情報出力部29に送る。
また、異常判定部27は、テンプレートTxの修復が困難な状態には近づいていないと判定した場合(ステップS100、No)、インプリント処理を停止させることなく、判定結果を判定情報出力部29に送る。判定情報出力部29は、判定結果を表示装置などに送信する(ステップS120)。
なお、異常判定部27は、異常状態に応じた処理を実行してもよい。例えば、異常判定部27は、AE信号の所定要素が第1の基準値を超えた場合に第1の処理を実行し、AE信号の所定要素が第P(Pは自然数)の基準値を超えた場合に第Pの処理を実行してもよい。第1の処理は、例えば、異常の予兆報告を判定情報出力部29に送る処理である。また、第Pの処理は、例えば、ウエハWxをリワークさせる通知を判定情報出力部29に送る処理である。また、インプリント装置101は、インプリント工程にて、異常の度合いなどを学習し、異常の度合いに応じた処理を実行してもよい。
このように、本実施形態では、インプリント工程時の異常をインプリント工程の中(IN-SITU)で検出する。そして、異常検出のリアルタイム性を生かして、欠陥が発生する前に、その予兆を捉えて未然に欠陥発生などを防止する。インプリント工程では、何らかの原因でレジスト40Yに欠陥が発生する場合がある。欠陥の原因には、例えば、(1)レジスト40Xの充填不良がある。この充填不良は、ダストや、離型時のレジスト剥がれなどが原因で発生する。
また、欠陥の原因には、(2)気泡、微小泡、インクジェットバブル、(3)テンプレートパターンの凹部での異物の詰まり、(4)ウエハWx上の異物、(5)大きな欠陥などがある。このような原因によってレジスト40Yの残膜部分が剥がれるなどしてウエハWxの表面がむき出しになる場合がある。
また、インプリントショット毎に共通した位置に発生する欠陥(共通欠陥)がある。このような欠陥は、テンプレートTxの破損(ひび割れ、破壊)、レジスト40Xのごみ噛み、レジスト40Xのひび割れ、レジスト40Xの破壊などが原因となっている。
また、微小で欠陥にはならないサイズのレジストごみ噛みが欠陥の種となる場合がある。この場合、インプリントショットが繰り返し継続される際に欠陥が成長して欠陥サイズが大きくなり、成長欠陥となる。このような成長欠陥は、異常判定部27が、AE信号に所定の処理を実行することによって、欠陥サイズが所定値に達する前に予兆として、捉えることができる。この場合、異常判定部27は、AE信号のショット毎の変化に基づいて異常の予兆を判定する。このように、インプリント装置101は、加工工程におけるAE信号の発生を識別することによって、通常と違った異常状態に至る予兆システムとして動作することができる。
また、ウエハWxの全面にテンプレートパターンがインプリントされるfullフィールドのインプリント処理と、ウエハWxの周辺へのインプリント処理とでは、インプリント面積が異なる。このため、テンプレートTxが離型される際に、テンプレートTxとレジスト40Yとの間に生じる離型力(摩擦力)も異なる。異常判定部27は、この離型力の変化を判定してもよい。これにより、離型力の変化をインプリントの離型力制御にフィードバックさせることが可能となる。
また、インプリント装置101は、インクジェット方式のレジスト滴下装置を備えている。このレジスト滴下装置は、1ショットずつライン状に配置されたスキャンノズル(ピエゾ素子)で、レジスト40Xを塗布する。この構成に対し、AEセンサ50Xをスキャンノズルの近傍に設置しておくことで、レジスト40Xの流量、流動に関しても間接的にモニターすることが可能となる。
また、レジスト材料の素材の安定化管理や、インプリント装置101を使い始める際に事前にレジスト40Xの流し試験をする場合がある。このような管理や試験の際に、AEセンサ50Xを用いて、レジスト40Xの流れ状態を確認してもよい。
また、レジスト40Xが押印される際には、レジスト40Xが泡を噛む場合や、レジスト40Xが充填不良となる場合がある。これらの場合不特定形状の巨大欠陥が形成されることとなるが、このような状態をAEセンサ50Xを用いて検出してもよい。
また、レジスト40Xの粘度が周辺環境が原因で変動した場合、テンプレートパターンの凹凸部分に沿って毛細管現象で隣の領域までレジスト40Xが流れてUV硬化することがある。この場合も、AEセンサ50Xを用いて、異常発生位置であるAE発生源や欠陥サイズなどを特定してもよい。なお、上述した異常判定の処理例は一例であり、インプリント装置101による異常判定処理は上述した例に限定されるものではない。
ここで、AE波について説明する。アコースティックエミッション(AE)は、個体材料内部の微小な破壊、あるいは、それと同様なエネルギー解放過程によって発生する弾性波動現象である。例えば、AEは、テンプレートTxやウエハWxなどの部材が変形したり、部材に亀裂が発生したりする際に、部材が内部に蓄えていた歪みエネルギーを弾性波として放出する現象である。
また、テンプレートTxとレジスト40Yとの間、レジスト40YとウエハWxとの間、テンプレートTxとウエハWxとの間などに異物が入り込む場合がある。このような場合、テンプレートTxと異物との接触、レジスト40Yと異物との接触、ウエハWxと異物との接触などによって、個体材料内部に微小な破壊が発生する。この場合にも、AE波が発生する。
本実施形態では、このAE波をテンプレートTxの側面などに設置した変換子すなわちAEセンサ50Xで検出し、信号処理を行うことによって破壊過程を評価する。検出されるAE信号は通常、数kHz〜数MHzの周波数帯域を持っている。例えば、石英の場合、AE信号は、15kHz〜20kHzの周波数領域に成分をもつ信号であり、金属材料では100〜1000kHzの周波数領域に成分をもつ信号である。
AEセンサ50Xには、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)などの圧電素子(ピエゾ素子)が用いられる。AEセンサ50Xは、接着剤やシリコングリースなどの音響カップラを介してテンプレートTxの側面などに密着させてAE信号を検出する。
AE波には大きく分けて連続型と突発型の2つがある。主として塑性変形の際に出る連続型AEの発生と特性に関しては、その計測においてAEの計数率と計数総数を得ることを目的とすることが多い。一方、突発型AEは、構造材の微小な割れの進行に伴って発生するものであり、異常発生源の位置を知ることが計測の重要な目的の一つとなる。
突発型AEの信号レベルは、連続型AEの信号レベルに比較してはるかに大きいが、位置標定のためには、複数個のAEセンサ50Xでの信号到達時間差の正確な測定を行う必要がある。また、突発型AEは、発生数も少ないので、たとえ計数率のみを測定するとしても雑音の除去を厳重に行うことが重要となってくる。なお、連続型AEと突発型AEを検出するセンサや増幅器などは、共通点が多い。
AE波は、極めて短時間に起こる割れの進行或いは塑性変形に伴うエネルギーが解放されるときに発生する弾性波である。このため、AEの原波形は、鋭いインパルス状のものと考えられ、広い範囲の周波数成分を含んでいる。これらのAE信号は、AEセンサ50Xによって検出される。ここで注意しなければならないことは、電気的信号として観測されるAE信号は、原波形そのままではなく伝播(伝播媒体材料の材質や形状)ならびにAEセンサ50Xの特性を経たものであり、複雑な性状を示すということである。したがって、AE信号とはAE波を受信したAEセンサ50Xの出力あるいは増幅された電気信号をさす。また、AE計測におけるAE波の伝播特性は、伝播体形状、減衰、界面の違いで変化する。
例えば、固体中の弾性波には縦波(L)と横波(S)の2種類がある。横波の伝播速度は、縦波の速度の約60%である。これらの波が境界面にあたると、一般に表面波(R)とよばれる表面に沿って伝播する波が生じる。表面波の速度は、横波の速度の約90%である。
図10は、弾性波を説明するための図である。図10の(a)に示すように、固体中の1点(AE源60)でAEが生じた場合、表面に設置されたAEセンサ50Xには、縦波L、横波S、表面波Rが時間的に相前後して到着し、互いに干渉し合って複雑な様相を呈する。この事情は地震観測と同じである。
実際にAE技術を応用する場合、弾性波が半無限体とみなせるように大きい被験物の中を伝播することは少なく、図10の(b)に示すように、むしろ高圧容器のように広い板の中を伝播することが多いと言われている。
AE波は、境界面(板の表裏面)の間で多重反射を繰り返しながら伝播する。しかも、反射のたびに横波と縦波の相互間にモード変換がある。この場合、板厚が有限なため純粋な表面波は存在していない。このようにして伝播する波は、一般に被導波(guided wave)とよばれ、単一周波数の連続に対してさえ複雑な特性を有している。さらに、物体の変形や破壊の過渡的現象を扱うAE波は非常に複雑になる。
板の中の波は、ラム波(Lamb)あるいは板波と呼ばれる。テンプレートTxなどの石英の中の音速は、縦波が約5000m/s、横波が約3000m/s、表面波は約2,500m/s近辺である。このため、AE計数率、計数総数、振幅分布などの計測には、音速はあまり問題にならないが、位置標定を行う場合、受信波の速度の選択は直接標定精度に関係するので重要である。
一般には、板の厚い場合(鋼で数cm以上)は、横波と表面波の中間の速度を選び、比較的薄い厚さの場合は板波の速度を参照して選べば良いとされる。テンプレートTxは、石英であり構造が単純であるので、事前に弾性波のシミュレーションができる。
AE信号の立ち上がりおよび立ち下りが一様ではなく、いくつかのピークを持つことは計数率、計数総数および振幅などの測定に際し注意する必要がある。さらに、減衰には弾性波が四方に広がっていくための広がり損失と固体の内部の摩擦による損失とがある。前者は周波数に関係せず大きな固体では球面波に、板状部材では円筒波の減衰になる。前者の振幅は距離に反比例し、後者の振幅は距離の平方根に反比例する。また、棒状部材の被導波では広がり損失はない。
図11は、複数のAEセンサによるAE波形の検出処理を説明するための図である。インプリント装置101では、AEセンサ50X毎に異なるタイミングでAE信号を受信する。これは、AE源60とAEセンサ50Xとの間の距離が、AEセンサ50X毎に異なるからである。
例えば、図11に示すように、第1のAEセンサ50X−1は、テンプレートTxのAE源60で異常が発生してから時間t1の経過後にAE信号を受信する。また、第2のAEセンサ50X−2は、テンプレートTxのAE源60で異常が発生してから時間t2の経過後にAE信号を受信する。
異常判定部27は、例えば、図11に示した第1のAEセンサ50X−1および第2のAEセンサ50X−2からのAE信号に基づいて、異常発生位置を特定する。なお、異常判定部27は、以下の図12に示す第3のAEセンサ50X−3および第4のAEセンサ50X−4からのAE信号に基づいて、異常発生位置を特定してもよい。
図12は、異常発生位置の特定方法を説明するための図である。図12の(a)は、AE信号の波形例を示し、図12の(b)は、第3のAEセンサ50X−3および第4のAEセンサ50X−4の位置関係を示している。
第3のAEセンサ50X−3は、異常の発生から時間t3後にAE信号を検出するとする。また、第4のAEセンサ50X−4は、異常の発生から時間t4後にAE信号を検出するとする。この場合、第3のAEセンサ50X−3で検出されるAE信号と、第4のAEセンサ50X−4で検出されるAE信号とは、(t4−t3)の時間だけ検出タイミングがずれている。
AE源60の位置が、第3のAEセンサ50X−3と第4のAEセンサ50X−4との中間位置から距離Lだけ第3のAEセンサ50X−3に近いとする。この場合、音速をCとすると、AE源60の位置(距離L)は、L=(1/2)×C×(t4−t3)によって表すことができる。異常判定部27は、例えば、この式を用いて異常発生位置を特定する。
インプリント装置101が、AEセンサ50Xを2つ備えている場合には、異常判定部27は、異常発生位置を平面的(2次元的)に特定することができる。また、インプリント装置101が、AEセンサ50Xを3つ備えている場合には、異常判定部27は、異常発生位置を立体的(3次元的)に特定することができる。
半導体装置の製造工程では、加工工程において物質的な接触、破壊、こすりなどが原因でAE信号が発生する。したがって、インプリント装置101などの半導体装置の製造装置は、AE信号を欠陥の予兆として検出してもよいし、欠陥発生の起点として検出してもよい。また、これら一連の欠陥検出機能は、欠陥予兆システム、もしくはリアルタイムで欠陥を検出する欠陥検査装置に適用してもよい。
図13は、異常検査装置を有したインプリント装置の構成例を示す図である。インプリント装置101は、ウエハ温調(WTC)ステージ41、SCH42、プリアライメント(PA)ステージ43、メンテナンスキャリア44、加工ステージ102などを備えている。ウエハWxは、ウエハ温調ステージ41、SCH42、プリアライメントステージ43、メンテナンスキャリア44を介して、加工ステージ102に搬送される。
加工ステージ102は、インライン検査ステージ45と、インプリントステージ46−1〜46−n(nは自然数)を備えている。ここでの、インライン検査ステージ45と、インプリントステージ46−1〜46−nとが、異常検査装置である。なお、以下では、インプリントステージ46−1〜46−nをインプリントステージ46xという。
インライン検査ステージ45は、テンプレートTxをインラインで異常検査するステージである。インライン検査ステージ45は、AEセンサ50Xを備えている。インライン検査ステージ45では、テンプレートTxの欠陥検査、修復処理などが行われる。
インライン検査ステージ45は、例えば、テンプレートTxに数十nmのテンプレートパターンを形成することによって、テンプレートTxを修復する。インライン検査ステージ45は、テンプレートパターンの欠損前であれば、レーザ光の照射などによってひび割れ箇所などを修正してもよい。また、インライン検査ステージ45は、特定された異常発生位置と、設計データ(GDS:(Graphic Data System))とを比較することによって、細かな修正を自動的に実行してもよい。これらのテンプレートTxの修復処理は、テンプレートTxの長寿命化に繋がる。インプリントステージ46xは、前述したように、AEセンサ50Xを用いてインプリント中にテンプレートTxの欠陥(発生した欠陥や欠陥発生の予兆)などを検出する。
本実施形態では、AEセンサ50XによってAE信号を検出する。インプリント装置101は、ナノインプリント工程中の所定の加工工程中(例えば、押印時、レジストパターンのUV硬化処理時、テンプレートTxの離型時など)に、テンプレートTxから伝わってくるAE信号をAEセンサ50Xにてモニターする。そして、インプリント装置101は、AE信号の挙動を計測および解析することで、レジスト40YおよびテンプレートTxの破壊、もしくは破壊前の予兆(ひび割れなど)をリアルタイムで検出できる。
したがって、欠陥が発生する前に予兆を捉えることができ、未然に欠陥の発生を防止することが可能となる。また、ウエハWx上に形成されたレジスト40Yが離型の際に、ウエハWxの表面上から剥がれる現象(巨大欠陥)、上述した(1)〜(5)による不良、成長欠陥などに関しても未然に発生を防止することが可能となる。
すなわち、AEセンサ50Xが検出したAE波形をリアルタイムにモニターし解析することで、欠陥が発生しそうな予兆、もしくは欠陥が発生した時点でインプリント装置101を停止することができる。また、ウエハWxは、リワークに移し、テンプレートTxを洗浄工程などに移すといった処置も可能となる。
このように、本実施形態では、インプリント工程などのパターン加工工程において、ダイナミックかつリアルタイムに、パターン欠陥の予兆もしくは欠陥を検出し、適正な処理(例えば、テンプレートTxの洗浄、インプリント処理の停止、テンプレートTxの交換、テンプレートTxの破棄、ウエハWxのリワークなど)が実行される。
インプリント装置101によるインプリント処理は、例えばウエハプロセスのレイヤ毎に行われる。そして、AEセンサ50Xを用いたAE信号の検出に基づいて、テンプレートTxの修正や、レジスト40Yの再形成などが行われる。
具体的には、ウエハWxに被加工膜が形成され、この被加工膜の上層側にレジスト40Xが塗布される。そして、レジスト40Xの塗布されたウエハWxに対して、インプリント処理が行われる。このとき、AEセンサ50Xを用いてAE信号が検出され、AE信号に基づいて異常が発生したか否かが判定される。
異常が発生していなければ、レジスト40Yをマスクとして被加工膜がエッチングされる。これにより、レジスト40Yに対応する基板上パターンがウエハWx上に形成される。異常が発生していれば、レジスト40Yが除去されたうえで、再度、インプリント処理によるレジスト40Yの形成処理が行われる。
半導体装置(半導体集積回路)を製造する際には、上述した被加工膜の形成処理、インプリント処理、異常判定処理、パターン修正処理、エッチング処理などがレイヤ毎に繰り返される。
なお、インプリント装置101が異常を検出するテンプレートTxは、親テンプレート、子テンプレート、実験用テンプレート、製品用テンプレートなど何れのテンプレートであってもよい。親テンプレートは、子テンプレートにテンプレートパターンを転写するためのテンプレートである。
また、本実施形態では、AEセンサ50Xを用いてインプリント工程の異常判定を行う場合について説明したが、他のセンサを用いてインプリント工程の異常判定を行ってもよい。例えば、インプリント工程の際に発生する力としては、AE波に限らず、レジスト40X,40YおよびウエハWxの少なくとも一方の、ねじれ、応力、振動、加速度、角速度の少なくとも1つに起因するものがある。したがって、インプリント工程の異常判定を行なうピエゾ素子センサ(圧電素子センサ)としては、AE、ねじれ、曲がり、応力、振動、加速度、ジャイロ(角速度)地震計などを測定するセンサを用いてもよい。そして、異常判定部27は、テンプレートTx、レジスト40X,40Y、およびウエハWxの少なくとも1つから発生する力に基づいて、インプリント工程の異常判定を行う。
このように第1の実施形態では、テンプレートTx、レジスト40X,40Y、およびウエハWxの少なくとも1つからインプリント工程の際に発生する力(AE波など)に基づいて、インプリント工程の異常判定を行っている。したがって、インプリント工程における異常を容易かつ短時間で検出することが可能となる。
また、AE波などに基づいて異常判定を行っているので、異常管理に必要な検査数を少なくすることができる。また、異常発見までの時間ロスを防止できるので、製品不良品を作り込んでしまう(生産ロス)を抑制できる。
(第2の実施形態)
つぎに、図14を用いて第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、AEセンサをテンプレートに直接配置しておく。そして、テンプレートに配置されたAEセンサからのAE信号に基づいて、インプリント工程の異常判定が行われる。
図14は、AEセンサが配置されたテンプレートの構成例を示す図である。図14の(a)は、テンプレートTyの上面図を示し、図14の(b)は、テンプレートTyおよび原版ステージ2Yの断面図を示している。図14の各構成要素のうち図3に示す第1の実施形態のテンプレートTxと同一機能を達成する構成要素については同一符号を付しており、重複する説明は省略する。
テンプレートTyは、テンプレートTxと同様の基板構成を有している。テンプレートTyの表面側の中央領域には、パターン領域71が配置されている。テンプレートTyは、裏面側から原版ステージ2Yによって固定されている。パターン領域71と、パターン領域71よりも外側の領域には、ザグリ72が設けられている。
テンプレートTyの表面側には、AEセンサ50AとAEセンサ50Bが配置されている。具体的には、パターン領域71に、1〜複数のAEセンサ50Aが配置されている。また、パターン領域71よりも外側の領域に、1〜複数のAEセンサ50Bが配置されている。
そして、各AEセンサ50A,50Bは、信号取り出し配線群73に接続され、この信号取り出し配線群73が、制御装置20に接続される。この構成により、AEセンサ50AとAEセンサ50Bとで、インプリント時の異常などを検出することが可能となる。
このように第2の実施形態では、テンプレートTyにAEセンサ50A,50Bが配置されている。このため、インプリント工程の際に発生する力(AE波など)を正確に検出することが可能となる。したがって、インプリント工程における異常を容易かつ短時間で検出することが可能となる。
(第3の実施形態)
つぎに、図15を用いて第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、テンプレートの歪みを側面側から補正する側面静電チャックに、AEセンサを配置しておく。また、第3の実施形態では、テンプレートの歪みを上面側から補正する上面静電チャックにAEセンサを配置しておいてもよい。
図15は、AEセンサが配置された側面静電チャックの構成例を示す図である。図15の(a)は、側面静電チャック62の斜視図を示し、図15の(b)は、側面静電チャック62およびテンプレートTxの断面図を示している。
テンプレートTxは、アクチュエータ31Xと側面静電チャック62と後述する上面静電チャック64とによって、固定されたうえで、レジスト40Xに押し当てられる。側面静電チャック62は、テンプレートTxの外周部側からテンプレートTxの側面を固定するテンプレートチャックである。インプリント装置101には、4つの側面静電チャック62が配置されており、それぞれがテンプレートTxの四方の側面を固定する。
側面静電チャック62は、MAG(倍率)補正用の静電チャックである。なお、側面静電チャック62は、圧電センサを用いたチャック力制御によってMAG調整してもよい。側面静電チャック62は、テンプレートTxのXY平面内の歪みを補正する。
側面静電チャック62には、格子状に複数のチャック部61が配置されている。側面静電チャック62では、各チャック部61に対して、上側(Z軸方向のプラス側)の電圧と下側(Z軸方向のマイナス側)の電圧とが調整される。これにより、テンプレートTxの側面に静電チャック力が働く。テンプレートTxへの静電チャック力は、各チャック部61の位置毎に種々の大きさに調整される。この結果、テンプレートTxの曲がり、歪み、撓みなどが補正される。
本実施形態では、各チャック部61の中にAEセンサ50XなどのAEセンサが取り付けられる。これにより、テンプレートTxの曲がりなどが細かく補正されるとともに、テンプレートTxからのAE信号を細かく検出することが可能となる。
図16は、AEセンサが配置された上面静電チャックの構成例を示す図である。図16の(a)は、上面静電チャック64の斜視図を示し、図16の(b)は、上面静電チャック64およびテンプレートTxの断面図を示している。
上面静電チャック64は、テンプレートTxの上部側からテンプレートTxの上面(裏面)を固定するテンプレートチャックである。上面静電チャック64は、テンプレート面(Z軸方向の撓みなど)を補正する。なお、上面静電チャック64は、圧電センサを用いたチャック力制御によってテンプレート面の歪みなどを調整してもよい。
上面静電チャック64には、格子状に複数のチャック部63が配置されている。上面静電チャック64では、各チャック部63に対して印加電圧が調整される。これにより、テンプレートTxの上面に静電チャック力が働く。テンプレートTxへの静電チャック力は、各チャック部63の位置毎に種々の大きさに調整される。この結果、テンプレートTxのZ軸方向の曲がり、歪み、撓みなどが補正される。
本実施形態では、各チャック部63の中にAEセンサ50XなどのAEセンサが取り付けられる。これにより、テンプレートTxの曲がりなどが細かく補正されるとともに、テンプレートTxからのAE信号を細かく検出することが可能となる。
このように第3の実施形態によれば、側面静電チャック62や上面静電チャック64のチャック部61,63にAEセンサ50Xが配置されている。このため、インプリント工程の際に発生する力(AE波など)を正確に検出することが可能となる。したがって、インプリント工程における異常を容易かつ短時間で検出することが可能となる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。