JP6615831B2 - 差異荷電粒子移動度によるリポ蛋白質の分析 - Google Patents

差異荷電粒子移動度によるリポ蛋白質の分析 Download PDF

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Description

本発明は一般に,イオン移動度測定装置および方法を利用した,診断目的での粒子サイズの分析およびリポ蛋白質等の生物学的粒子の分析の分野に関連する。本発明はさらに,生物分子,例えば,限定されないが,リポ蛋白質,およびリポ蛋白質を含有する生物学的複合体を精製および単離するための方法および装置を提供する。
以下の説明は,本発明の理解を助けるためにのみ提供される。引用される参考文献または提供される情報のいずれも,本発明に対する従来技術であると認めるものではない。
心臓血管疾患は米国の死亡原因の1位である。将来の心臓疾患のリスクを判定するために最も一般的に用いられ受け入れられている方法は,患者の個人データおよび現在の健康状態に加えて,コレステロールおよびリポ蛋白質の血清レベルを測定することを含む。生化学マーカー,例えば,限定されないが,コレステロールおよびリポ蛋白質レベルについて,リスクを判定するためによく確立されたカットオフ値の推奨値がある。しかし,コレステロールおよびリポ蛋白質の測定は,明らかに,そのすべてではない。これは,早期心臓疾患のリスクを有するヒトの50%もが,現在のところ,ATPIIIガイドライン(すなわち,Adult Treatment Pane lIIIガイドライン,the
National Cholesterol Education Programおよびthe National Heart,Lung and Blood Instituteから発行)には包含されていないためである。
血液中のリポ蛋白質および他の脂質を測定する方法としては,例えば,限定されないが,空腹時総コレステロール,トリグリセリド,HDL(高密度リポ蛋白質)および/またはLDL(低密度リポ蛋白質)コレステロール濃度の評価が挙げられる。現在,LDLコレステロールを測定するために最も広く用いられている方法は,間接的フリードワルド(Friedewald)法(Friedewald,et al.,Clin.Chem.,1972,18:499−502)である。フリードワルドアッセイ法は,次の3段階を必要とする:1)血漿トリグリセリド(TG)および総コレステロール(TC)の測定,2)VLDL(超低密度リポ蛋白質)およびLDL(低密度リポ蛋白質)の沈殿,および3)HDLコレステロール(HDLC)の定量。VLDLCを血漿トリグリセリドの5分の1と見積もって,LDLコレステロール濃度(LDLC)は次式で計算される:
LDLC=TC−(HDLC+VLDLC)
フリードワルド法は一般的に有用であるが,場合によっては正確性が限定される。例えば,3段階のいずれかにおいて誤差が生じうる。これは,部分的には,この方法が各段階において異なる手順を用いることを必要とするためである。さらに,フリードワルド法は,VLDLC濃度が血漿トリグリセリドの濃度の5分の1であると仮定するため,ある程度間接的である。したがって,ある患者のVLDLがこの比率から外れている場合,さらなる誤差が生ずる。
血液中リポ蛋白質を評価する別の方法は,リポ蛋白質のサイズおよび密度を測定することを含む。リポ蛋白質のサイズ分布は,遺伝的および非遺伝的影響の両方のため,個体により様々である。リポ蛋白質の直径は,典型的には約7nmから約120nmの範囲である。この直径サイズ範囲内に,心臓血管疾患の重要な予測因子である粒子のサブ画分が存在する。例えば,VLDLは血流中でトリグリセリドを輸送する。したがって,血流中の高VLDLレベルは,高トリグリセリド血症の指標である。これらのサブ画分は,これらの物質の量をリポ蛋白質サイズまたは密度の関数として示す分析手法により同定すること
ができる。
リポ蛋白質密度分析に関しては,超遠心分離により単離されたリポ蛋白質を,種々の塩密度のバックグラウンドで分析用超遠心分離を行うことにより浮遊特性について分析し,このことにより,水和したLDL密度を決定することができる。これはLindgrenら(Blood Lipid and Lipoproteins:Quantitation Composition and Metabolism,Ed.G.L.Nelson,Wiley,1992,p.181−274(本明細書に参照として組み込まれる))に記載されている。例えば,LDLクラスは,平衡密度勾配超遠心分離として知られる調製用分離技術を用いることにより,密度または直径に基づいてさらに7個のサブクラスに分けることができる。特定のLDLサブクラスである,LDL−IIIa,IIIb,IVaおよびIVbのレベルの上昇は,CHD(すなわち冠動脈性心疾患),例えば,アテローム性動脈硬化症のリスクの増大と密接に関連していることが知られている。さらに,総血清コレステロールレベルおよびLDLおよびHDL画分中のコレステロールレベルの決定は,冠動脈性心疾患のリスクの診断試験として日常的に用いられている。リポ蛋白質のクラスおよびサブクラス分布はより予測性の高い試験であるが,これは高価であり時間がかかるため,典型的には限定された数の患者についてのみ,医師によって依頼される。
リポ蛋白質のサイズの測定に関しては,現在のところ,単一の許容された方法はない。臨床の設定においてリポ蛋白質のサイズを測定するための既知の方法としては,垂直自動プロファイル(VAP)(例えば,Kulkarni,etal.,J.Lip.Res.,1994,35:159−168を参照)が挙げられ,これは,ショートスピン単一垂直超遠心分離により分離したリポ蛋白質の各クラス中のコレステロールを,フロー分析装置を用いて酵素的に,次に分光学的に分析し,そして,得られたデータを分析する。
別の方法(例えば,Jeyarajah,E.J.et al.,Clin Lab Med.,2006,26:847−70を参照)は,核磁気共鳴(NMR)を用いて,リポ蛋白質サブクラスの濃度を決定する。この方法においては,血液,血漿または血清サンプルのNMR化学シフトスペクトルを取得する。次に,観察された全血漿サンプルのスペクトルを,コンピュータ手段により,リポ蛋白質サブクラスの予め得られたNMRスペクトルの既知の重み付けされた和とマッチさせる。次に,サンプルのスペクトルと計算されたスペクトルとの間のベストフィットを与える重み付け因子を用いて,血液サンプル中の構成リポ蛋白質サブクラスの濃度を見積もる。
別の方法である,電気泳動勾配ゲル分離(例えば,米国特許5,925,229を参照;本明細書に参照として組み込まれる)は,LDLサブクラスを分離するための勾配ゲル塩基泳動法である。LDL画分を勾配ゲル電気泳動により分離すると,超遠心分離により得られるものと匹敵する結果が得られる。この方法は,LDLサブクラスの細かい分解が可能であり,主として実験室で用いられている。しかし,ゲル分離法は,すべての成分についての均一な染色および続く光学的な測定に依存しており,非均一的な発色性に悩まされる。すなわち,すべてのリポ蛋白質が同等によく染色されるわけではない。したがって,差異染色取り込みは誤差のある定量的結果を与えうる。したがって,非均一的な発色性のため,測定されたピークがリポ蛋白質の1つのクラスまたはサブクラスと別のものとの混同が引き起こされるのに十分な程度偏りうるという,誤差のある定性的な結果が生ずる場合がある。さらに,勾配ゲル電気泳動は完了するまでに長い時間がかかる。
実際,生物学的サンプルからのリポ蛋白質を定量的および定性的に測定するより最近の方法が,Bennerら(米国特許7,259,018;本明細書に参照として組み込まれる)によって記載され,この方法は,粒子サイズおよび/またはイオン移動度装置を利
用する。
本発明によれば,気相電気泳動移動度分子分析装置を利用したリポ蛋白質の差異荷電粒子移動度分析(本明細書において“イオン移動度分析”とも称される)用のサンプルを調製する方法,およびかかる方法に有用な装置が提供される。
第1の観点においては,本発明は,リポ蛋白質のクラスおよびサブクラスの差異荷電粒子移動度分析に適した,リポ蛋白質を精製する方法を提供する。この方法は以下の工程を含む:(a)サンプルの下に第1の溶液を含む遠心チューブを用意し,該サンプルは,1またはそれ以上のリポ蛋白質および非リポ蛋白質成分を有しており,該第1の溶液は1.00g/mLより高く約1.21g/mL以下の第1の密度を有しており;そして(b)非リポ蛋白質成分がリポ蛋白質から離れてチューブの底に向かって移動するのに十分な条件でチューブを遠心分離に供し,このことにより精製されたリポ蛋白質を得る。ある態様においては,第1の密度は約1.15g/mLから約1.21g/mLの範囲内である。ある態様においては,第1の溶液は好ましくは水性溶液であり,より好ましくは水またはその重水素形である。
本発明のこの観点の文脈においては,リポ蛋白質を含むサンプルは,本明細書に記載されるようにして,哺乳動物からの血液標本を加工処理することにより得る。この加工処理は,任意に,塩,例えば,限定されないが,Na,K,および/またはCsのCl,Br,および/またはI塩を添加することにより密度を調節することを含む。
さらに本発明のこの観点においては,ある態様において,遠心チューブ中のサンプルの上に隣接した第2の溶液が提供され,該第2の溶液は,好ましくは第1の溶液より低密度である。したがって,第2の溶液の密度は1.00g/mL以上であり,第1の溶液の密度より低い。ある態様においては,第2の溶液は水性溶液である。驚くべきことに,遠心チューブ内でリポ蛋白質含有サンプルに低密度を有する溶液を重層することにより,遠心分離による分離の後にリポ蛋白質の回収が増大することが見いだされた。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが,より高密度のリポ蛋白質含有溶液からより低密度の溶液への,好ましくは水性の重層した第2の溶液へのイオン流が,その中の脂質の浮力を変化させ,その結果リポ蛋白質の回収が増大すると考えられる。
本明細書において用いる場合,“遠心分離”とは,溶液を適当な装置中での高速回転により生ずる遠心分離力に供することにより,密度および密度に関連する分子量の関数として,溶液中の物質を分離しまたは分析することを表す。
本明細書において用いる場合,“精製する”および同様の用語は,特定の成分の他の成分に対する相対的濃度の増加を表す。例えば,限定されないが,リポ蛋白質溶液から脂質を取り除くことは,脂質画分を犠牲にしてリポ蛋白質画分を精製することを構成する。遠心分離の文脈において,“精製する”および同様の用語は,遠心分離後に,当該技術分野においてよく知られる方法により,例えば,限定されないが,吸引および/または分画により,分離した成分の抽出を可能とするのに十分な遠心チューブ中での分離を表すことが理解される。驚くべきことに,遠心分離前に,例えば,限定されないが,溶液の塩濃度を低下させることによりリポ蛋白質含有溶液の密度を低下させると,リポ蛋白質のある種の画分,例えばLDLおよびHDL画分の回収が増大することが見いだされた。
本明細書において用いる場合,“リポ蛋白質”および“リポ蛋白質粒子”との用語は,哺乳動物血液から得られる粒子を表し,これは,例えば,限定されないが,コレステロー
ルおよび他の脂質との非共有結合によりパッケージされて生物学的に組み立てられているアポリポ蛋白質を含む。リポ蛋白質は,好ましくは,約7−120nmのサイズ範囲を有する生物学的粒子を表し,本明細書に定義されるVLDL(超低密度リポ蛋白質),IDL(中間密度リポ蛋白質),LDL(低密度リポ蛋白質),Lp(a)[リポ蛋白質(a)],HDL(高密度リポ蛋白質)およびカイロミクロンを含む。
本明細書において用いる場合,“アポリポ蛋白質”との用語は,リポ蛋白質を構成する脂質結合蛋白質を表す。当該技術分野において知られるように,アポリポ蛋白質は,5つの主要なクラスに分類される:ApoA,ApoB,ApoC,ApoD,およびApoE。
本明細書において用いる場合,“生物学的粒子”との用語は,生きた起源に由来する,非共有結合的に結合した分子の集合を有する物質を表す。生物学的粒子の非限定的例としては,アポリポ蛋白質および脂質から組み立てられているリポ蛋白質;非共有結合的に結合したコート蛋白質と糖蛋白質から組み立てられているウイルス成分;抗体とその対応する抗原から組み立てられている免疫複合体等が挙げられる。
本明細書において用いる場合,“マーカー”,“生化学マーカー”との用語,および同様の用語は,疾病または状態との相関が知られている天然に生ずる生物分子(またはこれらの誘導体)を表す。
本明細書において数値の文脈で用いる場合,“約”との用語は,その+/−10%の値を表す。
別の観点においては,本発明はリポ蛋白質を精製する方法を提供し,この方法は以下の工程を含む:(a)サンプルおよびサンプルの下に隣接して位置する第1の溶液を含む遠心チューブを用意し,サンプルは1またはそれ以上のリポ蛋白質および非リポ蛋白質成分を含み,サンプルはさらにReactive Greenデキストランおよび硫酸デキストラン(DS)を含み,第1の溶液は重水(DO)を含み;そして(b)非リポ蛋白質成分がリポ蛋白質から離れてチューブの底に向かって移動するのに十分な条件で遠心チューブを遠心分離に供する。ある態様においては,次にこのようにして分離した精製リポ蛋白質を取り出して,差異荷電粒子移動度分析に供する。ある態様においては,第1の溶液の密度は1.0g/mLから約1.21g/mLである。ある態様においては,第1の溶液の密度は1.00g/mLから約1.10g/mLである。ある態様においては,第1の溶液は実質的にDOである。
別の観点においては,本発明は差異荷電粒子移動度分析用にリポ蛋白質を精製する方法を提供し,この方法は遠心分離を含まず,下記の工程を含む:a)リポ蛋白質および非リポ蛋白質を含む溶液を1またはそれ以上のポリアニオン化合物および1またはそれ以上の二価カチオンと混合し;b)混合溶液中でリポ蛋白質を含む沈殿物を形成させ;そしてc)工程b)の後に,沈殿したリポ蛋白質を回収し,沈殿したリポ蛋白質を再溶解した後に差異荷電粒子分析に供する。
別の観点においては,本発明は,差異荷電粒子移動度分析用にリポ蛋白質を精製する方法を提供し,この方法は遠心分離を含まず,以下の工程を含む:a)リポ蛋白質および非リポ蛋白質を含む溶液を,リポ蛋白質に結合してリポ蛋白質/リポ蛋白質捕捉リガンド複合体を形成しうる1またはそれ以上のリポ蛋白質捕捉リガンドと混合し;b)リポ蛋白質/リポ蛋白質捕捉リガンド複合体を単離し;そしてc)リポ蛋白質をリポ蛋白質/リポ蛋白質捕捉リガンド複合体から放出し,リポ蛋白質を差異荷電粒子移動度分析に供する。ある態様においては,リポ蛋白質は,HDL,LDL,Lp(a),IDLおよびVLDL
からなる群より選択される。ある態様においては,リポ蛋白質捕捉リガンドは,アプタマーおよび抗体の群より選択される。ある態様においては,リポ蛋白質捕捉リガンドは抗体である。
本明細書に記載されるリポ蛋白質の単離および/または精製を企図する観点のある態様においては,本発明は,リポ蛋白質のサイズ分布を分析する方法を提供し,この方法は以下の工程を含む:(a)本明細書に記載される任意の方法にしたがって1またはそれ以上のリポ蛋白質を用意し;そして(b)1またはそれ以上のリポ蛋白質を荷電粒子移動度分析に供し,このことによりリポ蛋白質のサイズ分布を決定する。上述の観点のある態様においては,この方法は,患者サンプル中で,HDL,LDL,IDL,およびVLDL,より好ましくはHDL,LDL,IDL,VLDLおよびLp(a)の濃度を決定するために用いられる。患者サンプルは,好ましくは血漿または血清である。本明細書に記載される方法はまた,測定すべき出発サンプル中のリポ蛋白質濃度のより正確な判定を得るために,内部標準,例えば1またはそれ以上の標識したリポ蛋白質(例えば蛍光標識)を用いて,加工処理中のサンプルの減少をモニターすることを含んでいてもよい。
別の観点においては,本発明は,リポ蛋白質のサイズ分布を分析する方法を提供し,この方法は以下の工程を含む:(a)差異荷電粒子移動度分析に供した1またはそれ以上のリポ蛋白質について,粒子サイズの1またはそれ以上の領域における差異移動度粒子サイズ分布を決定し;(b)非リポ蛋白質試薬または非リポ蛋白質サンプル材料の粒子サイズ分布に対する寄与を減算して,リポ蛋白質の粒子サイズ分布を求め;そして(c)リポ蛋白質粒子サイズ分布をディスプレイ,プリンタまたはメモリに出力する。
別の観点においては,本発明は,コンピュータコードが保存されているコンピュータ読み取り可能な媒体を提供する。リポ蛋白質のサイズ分布を分析するためのコンピュータコードは,(a)差異荷電粒子移動度分析に供した1またはそれ以上のリポ蛋白質について,粒子サイズの1またはそれ以上の領域における差異移動度粒子サイズ分布を決定し;(b)非リポ蛋白質試薬または非リポ蛋白質サンプル材料の粒子サイズ分布に対する寄与を減算して,リポ蛋白質粒子サイズ分布を求め;そして(c)リポ蛋白質サイズ分布をディスプレイ,プリンタまたはメモリに出力することを含む。
別の観点においては,本発明は,差異荷電粒子移動度分析用の装置を提供し,この装置は,(a)サンプルをキャピラリーを通して運搬する1またはそれ以上のポンプ,(b)サンプルがキャピラリー中を流れる間にサンプルの粒子を荷電するイオン化装置,および(c)サンプルについて荷電粒子の差異荷電粒子移動度分析を行うイオン移動度分析装置を含む。イオン化装置は,キャピラリーの周りに導電ユニオンを含んでいてもよい。1つの態様においては,導電ユニオンはキャピラリーの一部にマイクロタイト領域を形成し,ここを通過するサンプルに電荷を与え,このことによりサンプルの粒子を荷電する。
ある態様では,装置はさらに,差異荷電粒子移動度分析用のサンプルを1またはそれ以上のポンプに提供するオートサンプラーを含む。
ある態様においては,1またはそれ以上のポンプは,サンプルをナノフローポンプに提供する高フローポンプ,およびサンプルをキャピラリーに提供するナノフローポンプを含むことができる。高フローポンプは,1分間に約15−25マイクロリットルの速度でサンプルを送出することができ,ナノフローポンプは1分間に約100−200ナノリットルの速度でサンプルを送出することができる。
図1は,3.7時間の超遠心分離の間に血漿サンプルからのリポ蛋白質の回収に及ぼす密度の影響を示す。サンプルは,異なる密度溶液を用いて二重に調製し,3.7時間遠心分離した。リポ蛋白質画分を回収し,これを透析した後,差異荷電粒子移動度により分析した。各パネルは,それぞれの二重の実験のプロファイルを示す。溶液密度:A=1.23g/mL;B=1.181g/mL;C=1.170g/mL;D=1.165g/mL。横軸はリポ蛋白質直径(nm)であり,縦軸は任意スケールの質量座標であり,この質量座標はサイズ(例えば直径)の関数として計数した粒子の実際の数に対して直線性を有する。 図2は,DOまたは低塩プロトコル(DOなし)のいずれかを用いる遠心分離分離実験における,血漿からのリポ蛋白質の回収の比較を示す。濃色のプロファイルはDOを高密度の溶液(1.107g/mL)として用いたときの2時間の遠心分離を反映する。淡色のプロファイルは,KBrを高密度の溶液(1.151g/mL)として用いたときの3.7時間の遠心分離を反映する。A−2時間遠心分離のアルブミンのピーク高さを示す;B−3.7時間遠心分離のアルブミンのピーク高さを示す。横軸はリポ蛋白質直径(nm)であり,縦軸は任意スケールの質量座標であり,これらは図1の凡例で説明したとおりである。 図3は,遠心分離分離実験においてDOをRGD/DS[RGD:デキストランとコンジュゲート化したReactive Green 19(RG19);RGD/DS:RGDとDSの組み合わせ]と組み合わせて用いた,血漿からのApoA1,ApoBおよび総コレステロール(TC)の回収の結果を示す。横軸は測定した分析物を示す。各ボックスに付けられた数字は,個々の患者のID番号系を表す。 図4は,RGDを用いる遠心分離による精製の後の,血漿からのリポ蛋白質の回収の結果を示す。RGDを種々の濃度でサンプルに添加し,DOを高密度溶液として用いて2時間15分間遠心分離した。用いた4種の異なる濃度のRGDについて,アルブミンのピーク高さが示される;A,10mg/mL RGD;B,15mg/mL RGD;C,20mg/mL RGD;およびD,25mg/mL RGD。横軸はリポ蛋白質直径(nm)であり,縦軸は任意スケールの質量座標であり,これらは図1の凡例で説明したとおりである。 図5は,RGDおよびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはRGD/DSおよびEDTA,および任意に酢酸アンモニウム(AA)を用いる遠心分離による精製後の,血漿からのリポ蛋白質の回収の結果を示す。凡例:(A)7.5mg/mL RGDおよび2.5mg/mL DSで抽出,25mM酢酸アンモニウムおよび5ug/mLのDSで希釈;(B)7.5mg/mL RGDおよび2.5mg/mL DSで抽出,25mM酢酸アンモニウムで希釈;(C)7.5mg/mL RGDで抽出,25mM酢酸アンモニウムおよび5ug/mL DSで希釈;(D)7.5mg/mL RGDで抽出,25mM酢酸アンモニウムで希釈。横軸はリポ蛋白質直径(nm)であり,縦軸は任意スケールの質量座標であり,これらは図1の凡例で説明したとおりである。 図6は,DSを希釈バッファに加えて伝統的密度分離および透析を行った結果を示す。AおよびB:酢酸アンモニウム希釈バッファ中に5ug/mL DSを含む。CおよびD:酢酸アンモニウム希釈バッファ中にDSを含まない。横軸はリポ蛋白質直径(nm)であり,縦軸は任意スケールの質量座標であり,これらは図1の凡例で説明したとおりである。 図7は,得られたリポ蛋白質プロファイルを,差異荷電粒子移動度分析によるリポ蛋白質分画の典型的な結果とともに示す。横軸はリポ蛋白質直径(nm)であり,縦軸は差異荷電粒子移動度データおよび当該技術分野において知られるパラメータから計算した質量である。ハッチングで示される領域は相対的リスクを表し,斜線の領域は中程度のリスクを,縦線の領域は低リスクを,網掛けの領域は高リスクを,影付きの領域は不確定のリスクを示す。 図8は,本発明のある態様にしたがう差異荷電粒子移動度分析用の装置を示す。 図9は,図8の装置とともに用いるための接続ユニオンの態様を示す。
“VLDL,IDL,LDL,およびHDL”は,表1において示されるような,リポ蛋白質の分類を表す。表1においてサイズについて用いた値は,当該技術分野において知られるように,ゲル電気泳動法により決定されることが理解される。本明細書に記載される差異荷電粒子移動度分析方法を用いることにより,差異荷電粒子移動度分析を用いて得られたリポ蛋白質直径の測定はすべて,ゲル電気泳動を用いて得られたデータと比べてより小さい直径にシフトしていることが認められた。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが,この相違は,ゲルのキャリブレーションによるものと考えられる。このシフトは直線性があるように見え,下記の式:
0.86xゲル直径=IM 直径
により概算される。
表1は,伝統的なゲル電気泳動測定を用いて種々のリポ蛋白質画分に割り当てられた標準的なクラスおよびサブクラスの意味を記載する:超低密度リポ蛋白質(VLDL),そのサブクラスVLDL IおよびII;中間密度リポ蛋白質(IDL),そのサブクラスIDL IおよびII,;低密度リポ蛋白質(LDL),そのサブクラスI,IIa,IIb,IIIa,IIIb,IVaおよびIVb;および高密度リポ蛋白質(HDL),これは典型的にはいくつかのサブクラス,例えば,HDL IIa,IIb,IIIa,IIIb,およびIIIcを含む。
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが,差異荷電粒子移動度分析の直径とゲル電気泳動の直径との間に認められる相違は,電気泳動ゲルに加えられた固有の電界の影響下においてゲルマトリクスと相互作用したリポ蛋白質のゆがみにも起因すると考
えられる。サイズの相違はまた,粒子密度(分析用超遠心分離による分離から得られた)を電子顕微鏡から得られた粒子サイズに変換するために用いた歴史的データによるものであるかもしれない。
本明細書において用いる場合,“カイロミクロン”とは,70−120nmのサイズであり,対応する密度が1.006g/mL未満である生物学的粒子を意味する。カイロミクロンは,心臓疾患,例えばCHDの予測において臨床的意義を有するとは見いだされていない。
“ApoA”は,当該技術分野において知られるように,HDLの蛋白質成分である。“ApoB”はLDL,IDL,Lp(a),およびVLDLの蛋白質成分であり,実際に低密度リポ蛋白質の主要なアポリポ蛋白質であり,当該技術分野において知られるようにヒト遺伝子座2p24−p23を有する。
本明細書において用いる場合,“アルブミン”とは,当該技術分野において知られるように,血漿の約60%を構成し,約1.35g/mLの密度を有する偏在蛋白質を表す。
“Lp(a),”および“リポ蛋白質(a)”とは,血清中に見いだされ,IDLおよびLDLとは異なる分子組成を有するある種のリポ蛋白質を表し,アポリポ蛋白質a[apo(a)]との複合体として見いだされる。Lp(a)は,LDLおよびIDLと重複する粒子サイズを有しており,したがって,Lp(a)粒子がサンプル中に存在すると,粒子サイズ分析が干渉されうる。ある患者は,天然に生ずる低いLp(a)濃度を有しているが,LDLサイズ測定の前にLp(a)を除去して,さもなくば有意なLp(a)濃度を有する患者について不正確な測定値を与えることを回避することは,優れた実務であると考えられる。このようにして,Lp(a)によるサイズ干渉問題の可能性を回避することができる。
本発明は,差異荷電粒子移動度分析において用いるための装置および方法,および差異荷電粒子移動度分析用のサンプルの調製を企図する。差異荷電粒子移動度分析は,電界を通る空気の層流中で行うと,所定のサイズおよび電荷状態をもつ粒子は予測可能な様式で振る舞うという原理を利用している。したがって,差異荷電粒子移動度分析は,荷電粒子を電界に暴露したときに,分析すべき荷電粒子のサイズを判定する手法である。
電気的移動度はイオンの物理学的な特性であり,イオンに電界を与えたときにイオンが獲得する速度に関連する。電気移動度Zは次のように定義される:
(V=終端速度,E=粒子運動を引き起こす電界)
粒子直径は次式から得られる:
(n=粒子上の電荷の数(この場合には1個の電荷),e=1.6×10−19クーロン/電荷,C=粒子サイズ依存性スリップ補正係数,η=気体粘度,d=粒子直径)
したがって,dについて解くと,以下の関係が得られる:
すなわち,既知のパラメータの関数として粒子直径について明確な相関が得られる。パラメータを異なる値に設定することにより,異なる粒子直径の荷電粒子を選択することができ,これは以下に詳細に説明され,当該技術分野において知られている。差異荷電粒子移動度分析の好ましい方法においては,分析の間に荷電粒子に作用する電界強度Eを変化させる。
差異荷電粒子移動度分析においては,粒子(例えばリポ蛋白質等)は,一連の空気の層流を用いてシステム中を運ばれる。揮発性溶液中のリポ蛋白質を約5%のCOを含むエレクトロスプレーチャンバに導入し,ここでリポ蛋白質を脱溶媒和させる。エレクトロスプレーチャンバにおいては,脱溶媒和され,荷電したリポ蛋白質を,例えば,限定されないが,チャンバ中のα粒子エミッタにより導入されるイオン化空気で中和する。Fuchの式にしたがって,予測可能な割合の粒子が単一の電荷をもってチャンバから現れ,チャンバから差異移動度分析装置(DMA)に運搬される。Fuchの式の詳細については,Fuchs,N.A.:The Mechanics of Aerosols,Macmillan,1964を参照。“差異移動度分析装置,”“DMA”および同様の用語は,荷電粒子をイオン電気移動度に基づいて分類するための装置を表し,これは当該技術分野において知られており,下記に説明される。差異荷電粒子移動度分析においては,粒子が既知の均一な電荷をもつ場合,分類された粒子のサイズはその移動度から決定することができる。DMA中では,粒子はチャンバの上部外表面から入り,早く流れる空気の層流(すなわち“シースフロー”)中を運ばれる。シースフローはフィルターを通した空気(粒子を除去するため)であり,20L/分間の一定速度でDMAを通って連続的に循環する。粒子がDMA(シースフローにより運ばれる)を通過するにつれて,チャンバを横切る電位は既知の速度で急速に上昇する。電位が変化するにつれて,異なる直径の粒子は,チャンバの底の内表面においてスリットを通して回収される。粒子は,その電荷および直径に依存して,DMAを通る非線形経路を進む。任意の所定の電位において,既知のサイズの粒子は回収スリットを通過することを可能とする経路をたどる。回収スリットを通過した粒子は,別の層流の空気流により捕らえられ,粒子カウンターに運ばれる。粒子カウンターは,例えばレーザー検出システムにより検出し計数することができるサイズに圧縮することにより粒子を拡大する。粒子が回収されたときにDMAに適用された電位がわかれば,粒子直径およびそのサイズで存在する粒子の数を正確に決定することができる。異なる粒子サイズについて,このデータを時間の関数としてビンとして集積し記憶する。このようにして,任意の所定のサイズ範囲の粒子の数を測定し,データを集めるのに必要な時間,エレクトロスプレー装置に導入されるサンプルの流速,およびそのサイズでの荷電粒子の数に基づいて,粒子の濃度に変換することができる。
リポ蛋白質の単離および/または精製を企図する本発明の方法においては,最初のサンプル収集および調製は,当該技術分野においてよく知られる方法により行うことができる。典型的には,まず2−5mlの空腹時血液標本を採取する。典型的には,少なくとも12時間絶食した被検者にはカイロミクロンは存在しない。したがって,VLDLサイズとカイロミクロンサイズの重複は絶食により回避される。次に,標本をまず遠心分離器(例えば,臨床遠心分離器)で,好ましくは約10分間,約2000xGで分離する。この遠心分離は標本から細胞成分を除去するのに十分である。この過程の間に,より高密度の細胞成分はサンプルの底に階層化する。次に,上部にリポ蛋白質を含む残部のより低密度の血漿標本を,当該技術分野においてよく知られる方法,例えば吸引により取り出す。
歴史的には,遠心分離用の調製においては,血漿標本を,塩化ナトリウム(NaCl),臭化ナトリウム(NaBr)等の無機塩の高純度溶液または固体を用いて,特定の密度に調節することができる。以前のプロトコルのいくつかにおいては,特定の密度は,密度階層が形成されたときにリポ蛋白質材料が浮遊するよう,分析すべきリポ蛋白質材料の最も高い密度と等しいかまたはそれより高いように選択される。“密度階層が形成される”との用語および同様の用語は,遠心分離に供される溶液における成分の階層化を表す。これらの密度は表1に示される。次に,密度調節したサンプルを例えば,約18時間,100,000xGで超遠心分離して,非リポ蛋白質性の蛋白質をリポ蛋白質から分離する。非リポ蛋白質性の蛋白質,特にアルブミンは,血漿標本から,好ましくは超遠心分離により除去することができる。リポ蛋白質は超遠心分離の間にサンプルに最上部に浮遊するであろう。したがって,最低密度から最高密度まで順番に密度調節して遠心分離することにより,リポ蛋白質の種々のクラスおよびサブクラスを順番に抽出することができる。典型的には,遠心分離したサンプルの抽出後に,密度の調節用に加えられた塩を除去するために透析工程が必要であろう。この透析工程は,典型的には,当該技術分野においてよく知られる条件下で,4−12時間を要する。
本明細書に記載されるリポ蛋白質含有サンプルの遠心分離の条件は,生化学的分離の技術分野においてよく知られている。例えば,限定されないが,サンプルは,典型的には,10℃で,1−4時間,223,000xGで遠心分離する。ある態様においては,遠心分離は,50,000−100,000,100,000−120,000,120,000−150,000,150,000−200,000,200,000−230,000,230,000−250,000xG,またはさらに高い力の遠心分離力を用いる。ある態様においては,遠心分離の時間は,1,2,2.2,2.4,2.6,2.8,3.0,3.1,3.2,3.3,3.4,3.5,3.6,3.7,3.8,3.9,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18時間,またはそれより長い。差異荷電粒子移動度による分析の前に,遠心チューブの最上部から脂質画分のアリコートを取り出し(例えば10−200μL),25mM酢酸アンモニウム(AA),0.5mM水酸化アンモニウム(pH7.4)で希釈する(例えば1:800)。有利には,本明細書に記載されるある態様においては,本発明の方法と組み合わせた透析工程は不要であり,このことにより分析に要する時間が短くなる。
リポ蛋白質を企図する本発明の態様においては,リポ蛋白質は,HDL,LDL,IDL,Lp(a),およびVLDLからなる群より選択される。ある態様においては,リポ蛋白質はHDLである。
本明細書に提供されるリポ蛋白質を企図する観点のある態様においては,リポ蛋白質は,当該技術分野においてよく知られる方法により,または本明細書に記載されるようにして得られる血漿標本に由来するものであることができる。“生物学的標本,”“生物学的サンプル”との用語および同様の用語は,外植された,採取された,または他の方法により回収された生物学的組織または液体を表し,例えば,限定されないが,全血,血清および血漿が挙げられる。血液の文脈において“血漿”との用語は,全血を固体と液体成分とに分離したときに得られる液体を表す。血液の文脈において“血清”との用語は,全血を凝固させた後に固体と液体成分とに分離したときに得られる液体を表す。本発明の観点のいずれかのある態様においては,生物学的標本はヒト起源のものである。本明細書に記載される観点のいずれかのある態様においては,生物学的標本は血清である。本明細書に記載される観点のいずれかのある態様においては,生物学的標本は血漿である。
遠心分離を企図する本発明のある態様においては,遠心分離は平衡に到達しない。“遠心分離平衡”および同様の用語は,当該技術分野においてよく知られるように,遠心分離された溶液の成分が中性密度浮力に達するよう十分な時間,十分な遠心分離力で行われる
遠心分離を表す。驚くべきことに,本明細書に記載される遠心分離平衡に到達しないような短縮化した遠心分離プロトコルが,それにもかかわらずリポ蛋白質の有意な精製を与えうることが見いだされた。
リポ蛋白質および非リポ蛋白質成分を含有するサンプルの遠心分離を企図する本発明のある態様においては,遠心分離の後に精製したリポ蛋白質を遠心チューブの最上部から回収する。“遠心チューブの最上部”および同様の用語は,遠心分離ローターの外側から見たときに,遠心チューブの上部に存在する液体を表し,これは最も上部の液体を含んでいてもよいが,必ずしもそうでなくてもよい。
リポ蛋白質の精製に関する本発明のいずれかの方法に加えて,驚くべきことに,溶液の密度を約1.21g/mL以下に低下させ,平衡に達しないよう遠心分離することにより,LDLおよびHDLの回収,すなわち精製が実際に向上することが見いだされた。
リポ蛋白質密度は,当該技術分野においてよく知られる様々な物理学的,生化学的方法,例えば,限定されないが,平衡密度超遠心分離および分析用超遠心分離により直接決定することができる。リポ蛋白質密度はまた粒子サイズおよび粒子サイズと密度との既知の関係に基づいて間接的に決定してもよい。リポ蛋白質サイズは,当該技術分野においてよく知られる種々の生化学的方法,例えば,限定されないが,本明細書に記載される方法により決定することができる。
イオン移動度分析は,イオン電気移動度分析または荷電粒子移動度分析としても知られており,本明細書に記載される他の方法と比較して,物理学的原理に基づいて粒子サイズを正確に測定するのみならず,それぞれのサイズに存在する粒子の数を直接計数し,このことにより各リポ蛋白質についてリポ蛋白質のサイズおよび濃度を直接測定することができるという点において利点を有する。イオン移動度分析は,エアロゾル中の粒子の分析に日常的に用いられており,イオン移動度分析に適した分析装置は,大きな生物学的高分子を分析するよう適合されている。イオン移動度分析は非常に感度が高くかつ正確な方法論であるが,それにもかかわらず,イオン移動度分析は系に導入されたすべての粒子を測定するという欠点を有する。したがって,分析の前に目的とする化合物を単離および/または精製することがきわめて重要である。リポ蛋白質はこの方法の候補である。これは,リポ蛋白質は密度および本明細書に記載される他の特徴に基づいて他の血清蛋白質から単離することができるためである。
種々の密度の溶液を用いて遠心分離することにより精製した,血漿サンプルからのリポ蛋白質の差異荷電粒子移動度の結果の例を図1に示す。これらの実験においては,血清サンプル(25uL)を,4つの異なる密度の塩(KBr)溶液のクッション(200uL)上に重層した。溶液の密度は,1.165,1.170,1.181,および1.23g/mLであった。各サンプルを223,000xGで3.7時間超遠心分離した。遠心分離後に最上部の100μLを取り出した。各密度から分画したリポ蛋白質サンプルを,酢酸アンモニウム(25mM),水酸化アンモニウム(0.5mM)(pH7.4)に対して一晩透析した。透析の後,各サンプルを差異荷電粒子移動度により分析した。得られたプロファイルを図1に示す。1.23g/mLより低い密度において見られるHDL領域におけるリポ蛋白質プロファイルにおいて減少が明らかである。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが,この知見は,より低い塩溶液を用いると血漿蛋白質がより効率よく除去できるためであると考えられる。
さらに図1を参照すると,横軸は粒子サイズ(すなわち直径)であり,縦軸は任意スケールの質量である。粒子質量対独立変数(例えば,サイズ,密度,移動度等)分布における曲線の下の面積は,リポ蛋白質粒子質量を直接代表する。測定手法は,個々の粒子をサ
イズ(直径)の関数として計数することに依存している。したがって,粒子の体積および密度を用いて,特定のサイズをもつ粒子の数を質量の値に変換することが可能である。リポ蛋白質の密度は,よく知られるように粒子サイズの関数であり,例えば,文献から入手可能である。図に示される質量の値は,相対値を示すよう単純に拡大/縮小されているが,希釈係数ならびにイオン移動度分光光度計を通過するサンプルおよび空気の流速を用いて,血漿中のリポ蛋白質の実際の質量に変換することができる。したがって,ある態様においては,非平衡遠心分離の前に,リポ蛋白質含有溶液の密度をより高い密度のリポ蛋白質(例えばHDL)を分離することが予測されるよりも低い値に調節することにより,実際にHDLおよびLDLを分離することができる。有益なことに,リポ蛋白質含有サンプルの密度を低下させる方法は,アルブミンからの分離も増加させる。
本明細書に提供されるリポ蛋白質および非リポ蛋白質成分を含むサンプルの遠心分離を企図する観点のある態様においては,第1の溶液はDOを含む。ある態様においては,第1の溶液の密度は,DOの含有量により実質的に決定され,ここで,第1の溶液は1.00−約1.10g/mLの密度を有する。DOの密度は25℃で約1.107gm/mLである。したがって,本発明のある態様においては,水性成分は0−99%またはそれより多いDOを含む。ある態様においては,DOの量は,例えば,限定されないが,10−99,20−99,30−99,40−99,50−99,10−90,20−90,30−90,40−90,50−90%等の範囲内である。ある態様においては,DOの含有量は特定の値,例えば,限定されないが,約1,2,5,10,20,30,40,50,60,70,80,90,95,96,97,98,99%のDOであり,100%であってもよい。ある態様においては,第1の溶液は実質的にDOである。“本質的にDO”との用語は,さらに加えられたHOを含まない水性成分を含むDOを表す。“実質的にDO”との用語および同様の用語は,DOの含有量が50%より高い範囲,例えば,限定されないが,55%,60%,65%,70%,75%,80%,85%,90%,95%,99%のDOであり,100%であってもよいことを表す。
この観点のある態様においては,リポ蛋白質含有サンプルは塩を含まないか,あってもほとんど含まない。図2(実験条件は実施例1に示される)を参照すると,DOを用い,密度調節用の追加の塩なしで,およびDOなしの低密度塩溶液で行った遠心分離手順の結果が示される。2時間(DO)および3.7時間(低密度塩溶液)後に,LDLおよびある種のHDL画分(例えば,HDL−IIbおよびHDL−IIa)のほぼ同等の回収が認められた。さらに図2を参照すると,DOおよび低密度塩遠心分離法についてのプロファイルは,同様のプロファイルが得られるが,それにもかかわらず,DOサンプルについては遠心分離時間が短いために,アルブミン(HDL3領域の開始点のピーク)の増加が認められる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが,塩含有量の低下と,DOを用いる密度の増加が同時に生ずると,リポ蛋白質含有サンプルからのリポ蛋白質の遠心分離および精製に要する時間が短縮されるようである。
図3を参照すると,図3について用いられた条件(実施例2の実験条件)では,遠心分離後にApoA1およびApoBのほぼ同等の回収が認められた。このことは,DOを用いて得られる低密度によっては,より大きく密度の低い粒子が選択的に回収されないことを示す。
遠心分離前にリポ蛋白質含有サンプル溶液の上に隣接してより密度の低い溶液を配置することによりリポ蛋白質を精製する本発明の方法のある態様においては,無機塩,好ましくはNaClおよび/またはNaBrを用いてリポ蛋白質含有溶液の密度を1回調節する。例えば,遠心チューブ中のこのサンプルの上に,リポ蛋白質含有サンプル溶液の密度より低い密度を有する第2の溶液を重層することができる。あるいは,リポ蛋白質含有サン
プル溶液を遠心チューブ中の第2の溶液の下に導入してもよい。リポ蛋白質含有サンプルの密度調節は,表1の密度にしたがって1.00−約1.21g/mLの範囲内で選択して,同じまたはより低い密度を有するリポ蛋白質のクラスを分離することができる。第2の溶液の密度は,1.00g/mLからリポ蛋白質含有サンプル溶液の密度のちょうど下までの範囲で,好ましくは1.00から約1.15g/mLの範囲で,より好ましくは1.00g/mLとして選択することができる。このようにして,リポ蛋白質含有サンプル溶液より低い密度を有するHDL,IDL,LDL,Lp(a)およびVLDLリポ蛋白質を同時に抽出することができる。驚くべきことに,遠心チューブ中のリポ蛋白質含有溶液に,リポ蛋白質含有溶液の上に隣接して低い密度を有する溶液を提供することにより,遠心分離による分離を用いるリポ蛋白質の回収が増加することが見いだされた。好ましい態様においては,リポ蛋白質含有画分は,チューブの最も上部のメニスカスから下方向にほぼ所望の容量で取り出す。
これらの方法に加えて,低密度サンプルでは,より高い密度のサンプルについて必要な対応する時間と比較して,リポ蛋白質含有サンプルの遠心分離による分離に要する時間が短くなることが見いだされた。遠心分離による分離の文脈において,“対応する時間”および同様の用語は,遠心分離の間の遠心分離力が同等であるときに,特定のレベルの分離を達成するのに必要な遠心分離の時間の長さを表す。例えば,限定されないが,典型的なリポ蛋白質含有サンプルから十分なアルブミンを除去するのに少なくとも2時間の遠心分離(例えば,230,000xG)が必要であり,遠心分離時間がより短いと,アルブミンの除去が少なくなることが見いだされた。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが,サンプルの密度を低くすることにより,アルブミン,および実際に他の非リポ蛋白質の血漿蛋白質はより容易に階層化され,したがってリポ蛋白質から分離されるようである。したがって,リポ蛋白質の精製を最適化するうえで鍵となる因子は,遠心分離の時間を短くして,HDLを保持しながらアルブミンおよび他の血漿蛋白質の損失を最大にすることである。
本明細書に提供される,リポ蛋白質および非リポ蛋白質成分を含むサンプルの遠心分離を企図する観点のある態様においては,サンプルはさらに,当該技術分野において知られるように,その中にある選択されたリポ蛋白質成分用の沈殿剤として作用することができる化合物を含む。“沈殿剤”とは,生物分子の溶液に加えたときに生物分子の沈殿を引き起こすかこれを促進することができる化合物を表す。沈殿剤は,沈殿を生じさせるために追加の試薬を必要とする場合がある。“沈殿を生じさせるための追加の試薬”および同様の用語は,沈殿剤とともに作用して,沈殿剤による沈殿を生じさせるために必要な化合物を表す。沈殿剤の例としては,限定されないが,荷電無機イオンの塩,好ましくは硫酸アンモニウム,抗体,荷電ポリマー(例えばDS等)(任意にイオン種(例えば二価カチオン)の存在下で),レクチン等が挙げられる。ある態様においては,沈殿剤は,リポ蛋白質が沈殿しない条件下(例えば,pH,濃度,必要な追加の試薬の欠失等)であっても存在する。ある態様においては,沈殿剤はDSである。ある態様においては,沈殿物剤はDSであり,必要な追加の薬剤は二価カチオンである。ある態様においては,リポ蛋白質含有サンプルはDSを含むが二価カチオンを含まない。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが,DSは二価カチオンの存在下で脂質を含む粒子に結合し,DSの結合は非特異的結合相互作用を妨害し,このことによりある種のリポ蛋白質の回収が促進されると考えられる。例えば,限定されないが,DSを含めることにより,本明細書に記載されるいくつかの調製物からのLDLの回収が著しく改善される。
リポ蛋白質および非リポ蛋白質成分を含むサンプルの遠心分離を企図する本明細書に提供される観点のある態様においては,サンプルはさらに,アルブミンとアルブミン結合化合物との複合体が形成するのに適した条件下で,アルブミン結合化合物を含む。代表的なアルブミン結合化合物としては,限定されないが,芳香族性アルブミン結合染料が挙げら
れる。芳香族性アルブミン結合染料としては,ジアゾ染料;前記ジアゾ染料のアルカリ金属塩,アルカリ土類金属塩,またはアミン塩;スルホン酸染料;前記スルホン酸染料の生理学的に許容しうるアルカリ金属塩,アルカリ土類金属塩,またはアミン塩;またはこれらの混合物が挙げられる。本発明において特に有用な芳香族性アルブミン結合染料としては,Reactive Blue2,Evans Blue,Trypan Blue,Bromcresol Green,Bromcresol Purple,Methyl Orange,Procionred HE3B等が挙げられる。ある態様においては,アルブミン結合化合物は,ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の類似体である。アルブミン結合化合物として用いるのに適した代表的なNAD類似体としては,限定されないが,RG19,およびCibacrom Blue 3GA(CB3GA)が挙げられる。
アルブミン結合化合物の使用を企図する方法の態様においては,アルブミン結合化合物とリポ蛋白質含有サンプルを混合した後,サンプルを本明細書に記載されるようにして遠心分離する。ある態様においては,アルブミン結合化合物はクロマトグラフィー媒体とコンジュゲートさせ,このコンジュゲートは,アルブミン結合化合物と複合体化したアルブミンを,例えば,限定されないが,濾過により除去することを容易にする。ある態様においては,コンジュゲートしたアルブミン結合化合物は,遠心チューブの底に階層化して観察され,このことによりリポ蛋白質含有画分の除去(例えば吸引等により)が容易になる。アルブミン結合化合物をクロマトグラフィー媒体とコンジュゲートさせたある態様においては,クロマトグラフィー媒体は,常磁性体粒子,デキストラン,アガロースまたはSephadex(登録商標)であることができ,好ましくは,当該技術分野において知られるデキストラン“常磁性体粒子”は,リガンド,例えば,限定されないが,ストレプトアビジンでコーティングされたマグネタイトコアを有する粒子を表す。ビオチンのストレプトアビジンに対する親和性(K=10−15M)は,生物学において,最も強くかつ安定な相互作用の1つである。すなわち,常磁性体粒子は,慣用の磁気分離技術と,汎用の高親和性の相互作用,例えばビオチン−ストレプトアビジン相互作用とを組み合わせたものである。デキストランコンジュゲート化アルブミン結合化合物は,本明細書に記載される他のコンジュゲート化クロマトグラフィー媒体より長い間溶解したままである傾向があることが観察されている。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが,アルブミン結合化合物がリポ蛋白質含有サンプル中のアルブミンと長い時間相互作用できればできるほど,より多くのアルブミン含有複合体が形成され,このことによりリポ蛋白質の純度および回収率が増加すると考えられる。
アルブミン結合化合物の使用を企図する方法のさらに別の態様においては,アルブミン結合化合物は,遠心分離の間に,血漿サンプルから回収されるリポ蛋白質の量および相対比を有意に変更することなく,50mg/mLまで,またはさらにそれより高い濃度で存在する。例えば,図4を参照すると,遠心分離前に種々の量のRG19を含むリポ蛋白質含有サンプルの差異荷電粒子移動度分析は,デキストラン(RGD)とコンジュゲートさせたRG19を含めることにより,リポ蛋白質の分布にはほとんど影響を与えることなく,リポ蛋白質が回収される。図1と図4を比較されたい。実施例3および図4を参照すると,HDLおよびLDLの差異荷電粒子移動度プロファイルは類似しているが,RGD濃度が増加するにつれて,HDL3ピークの開始点におけるピーク(アルブミン)のサイズが低下している。さらに,より高い濃度におけるピークの高さは,低密度塩から3.7時間遠心分離した調製物において見られるものと同様である。別の態様においては,アルブミン結合化合物の濃度は,例えば,限定されないが,1,2,5,10,15,20,25,30,35,40,45mg/mLであり,50mg/mLであってもよい。
ある態様においては,本発明は,DSとの組み合わせでのアルブミン結合化合物の使用を提供する。図5を参照すると,RGD,および任意にDS,および任意に酢酸アンモニ
ウム(AA)を使用することにより,差異荷電粒子移動度分析により判定して,LDLおよびHDL画分の回収を調節することができる。実施例4および図5を参照すると,図5に示されるプロファイルのHDL領域には類似性があり,抽出中にDSが存在すると,HDLの回収が増加する。さらに,低いアルブミンピーク高さが観察された。HDL2a(図5)中の1つの調製物中のピークの増加は典型的には再現性がないと考えられる。また,顕著なことは,LDLの回収の増加である。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが,ここに示される結果は,抽出および希釈剤中に存在するDSが最良の回収および再現性を与えることを示唆する。
ある態様においては,本発明の方法により得られる精製したリポ蛋白質含有サンプルは,差異荷電粒子移動度分析の前にさらに希釈する。図6および実施例5を参照すると,差異荷電粒子移動度分析の前に25mM酢酸アンモニウムで1:200に希釈する工程において,DS(+/−5ug/mL)の存在または非存在の影響を評価した。図6に示されるように,DSの存在下ではLDLのピーク高さが有意に増加し,一方HDLのピークプロファイルは比較的影響を受けない。
ある観点および態様においては,本発明は,遠心チューブ中でリポ蛋白質含有サンプルの下にこれと隣接して,クロマトグラフィー媒体とコンジュゲートさせたアルブミン結合化合物をDSと組み合わせて,さらにDO溶液と組み合わせて用いる方法を企図する。このプロトコルを利用する典型的な手順は実施例6に記載される。
本明細書に提供される,リポ蛋白質および非リポ蛋白質成分を含むサンプルの遠心分離を企図するある態様においては,サンプルはさらに,非リポ蛋白質成分と結合して非リポ蛋白質/非リポ蛋白質捕捉リガンド複合体を形成しうる非リポ蛋白質捕捉リガンドを含み,さらに,遠心分離は,非リポ蛋白質/非リポ蛋白質捕捉リガンド複合体をリポ蛋白質成分から分離させる。“非リポ蛋白質捕捉リガンド”および同様の用語は,リポ蛋白質ではない血漿成分と結合する化合物を表す。例示的非リポ蛋白質捕捉リガンドとしては,限定されないが,当該技術分野において理解されるように,抗体およびアプタマーが挙げられる。例えば,限定されないが,抗原(すなわち,非リポ蛋白質)からの抗体(すなわち,非リポ蛋白質捕捉リガンドとして)の分離は,種々の方法,例えば,温度,pH,塩濃度等の調節により実施することができる。さらに別の例としては,限定されないが,アプタマー(すなわち,非リポ蛋白質捕捉リガンドとして)のアプタマー標的(すなわち,非リポ蛋白質)からの分離は,種々の方法,例えば,温度,pH,塩濃度,DNaseまたはRNase等の調節により実施することができる。
本明細書に提供される,リポ蛋白質および非リポ蛋白質成分を含むサンプルの遠心分離を企図する観点のある態様においては,サンプルはさらに,リポ蛋白質成分と結合してリポ蛋白質/リポ蛋白質捕捉リガンド複合体を形成しうるリポ蛋白質捕捉リガンドを含み,遠心分離により,リポ蛋白質/リポ蛋白質捕捉リガンド複合体が非リポ蛋白質成分から分離される。“リポ蛋白質捕捉リガンド”および同様の用語は,リポ蛋白質と結合する化合物を表す。リポ蛋白質捕捉リガンドの例としては,限定されないが,当該技術分野において理解されるように,抗体およびアプタマーが挙げられる。好ましい態様においては,リポ蛋白質捕捉リガンドは抗体である。
本明細書に提供される観点の,リポ蛋白質および非リポ蛋白質成分を含むサンプルの遠心分離を企図しないある態様においては,この方法は,リポ蛋白質成分と結合してリポ蛋白質/リポ蛋白質捕捉リガンド複合体を形成しうるリポ蛋白質捕捉リガンドを企図する。
“アプタマー”との用語は,核酸,例えば,RNAまたはDNAから構成され,特定の分子標的に強く結合する高分子を表す。“結合する”,“結合”および同様の用語は,分
離を可能とするのに十分に安定な複合体を生ずる相互作用または複合体形成を表す。ある態様においては,アプタマーはApoA1,ApoB,またはApo(a)に特異的に結合する。本発明に有用なアプタマーを製造しスクリーニングする方法は,当該技術分野においてよく知られている。例えば,Griffin et al.,米国特許5,756,291(その全体はすべての目的のために本明細書に参照として組み込まれる)を参照。
当該技術分野において実施されているように,アプタマーの選択(すなわち学習)の方法には,ランダム配列と,続くポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅においてプライマー結合部位として作用する既知の配列のフランキング領域との両方を含む一本鎖ランダムDNAオリゴマーのプールが必要である。そのようなDNAオリゴマーは,当該技術分野においてよく知られる慣用の合成法を用いて生成される。最初のかつ任意の工程として,PCR増幅を慣用の方法により行い,増幅されたプールをデュープレックスDNAをそのままにしておくか,または鎖分離の後に一本鎖DNAとして用いる。任意に,RNAに転写してもよい。この文脈において,“オリゴマープール”との用語は,そのような一本鎖またはデュープレックスDNA,またはここから転写されたRNAを表す。“洗練された(refined)オリゴマープール”との用語は,本明細書に記載される少なくとも1ラウンドの選択に供されたオリゴマープールを表す。
上述のアプタマー学習に加えて,標的分子がその上に結合しているカラムまたは他の支持マトリクス(すなわち,標的が結合した支持体)を用いて“選択”工程を行う。結合は,当該技術分野においてよく知られるように,共有結合手段によるものでも非共有結合手段によるものでもよい。オリゴマープール,または洗練オリゴマープール,および標的を結合した支持体を,オリゴヌクレオチド−標的複合体を形成させるためにインキュベーションし,例えば,当該技術分野においてよく知られる方法による洗浄により,オリゴマープールまたは洗練オリゴマープールの複合体を形成しない画分を支持体環境から除去する。次に,当該技術分野においてよく知られる方法によりオリゴヌクレオチドを除去すると,前のオリゴマープールまたは洗練オリゴマープールと比較して標的に対する特異性が高まった洗練されたオリゴマープール画分が得られる。
あるいは,上述のアプタマー学習には,“逆選択”工程を用いることができ,この工程では,生物学的サンプルの他の構成成分に結合するアプタマーが選択される。この場合には,生物学的サンプルの他の構成成分がその上に結合しているカラムまたは他の支持マトリクス(すなわち,構成成分が結合した支持体)を用いる。オリゴマープールまたは洗練オリゴマープールと,構成成分と結合した支持体とを,オリゴヌクレオチド−結合成分複合体を形成させるためにインキュベーションし,例えば,当該技術分野においてよく知られる方法による洗浄により,オリゴマープールまたは洗練オリゴマープールの複合体を形成しない画分を支持体環境から除去する。続いて,当該技術分野においてよく知られる方法によりオリゴヌクレオチドを除去すると,前のオリゴマープールまたは洗練オリゴマープールと比較して生物学的サンプルの他の構成成分に対する特異性が高まった洗練されたオリゴマープール画分が得られる。逆選択工程において用いられる生物学的サンプルの他の構成成分の例としては,限定されないが,イムノグロブリンおよびアルブミンが挙げられる。
典型的な生成学習スキームにおいては,標的または生物学的サンプルの他の構成成分との複合体化の後に回収されたオリゴヌクレオチドをPCR増幅に供する。次に,標的または生物学的サンプルの他の構成成分への結合および特異性が高まった洗練されたオリゴマープールを与えるために,選択/増幅工程を典型的には3から6回繰り返す。このようにして得られる増幅された配列をクローニングし,配列決定することができる。任意に,標的に特異的な複数の個別のアプタマー配列が得られ,配列決定された場合には,当該技術
分野においてよく知られるように,一対でのまたは多数のアラインメント実験を行うことにより,“ヌクレオチド配列または任意に連続したヌクレオチドの領域が同定され,その存在がアプタマーの標的への結合と相関しているコンセンサス配列”を解明することができる。コンセンサス配列が同定されれば,慣用の合成または組換え手段によりコンセンサス配列を含むオリゴヌクレオチドを作製することができる。
“抗体”との用語は,高い親和性および高い特異性をもって抗原(例えば,リポ蛋白質またはサンプルの他の成分)と結合するイムノグロブリンを表す。この文脈において,“高い親和性”とは,例えば,限定されないが,1μM,100nM,10nM,1nM,100pMまたはそれより低い解離定数を表し,抗体と,抗体がそれに対して生成された抗原との結合反応を特徴づける。“生成される”との用語は,当該技術分野において長く知られている方法により高親和性抗体を製造することを表す。さらに,この文脈において,“高い特異性”との用語は,試験抗体が非標的抗原と比較して標的抗原に優先的に結合することを表し,試験抗体がそれに対して生成された標的抗原に優先的に結合する解離定数の比率,例えば,限定されないが,1,2,5,10,20,50,100,200,500,1000,10000またはそれ以上の比率により特徴づけられる。
本発明により企図される,抗体およびアプタマーを誘導化する方法としては,例えば,限定されないが,ビオチン化が挙げられる。ある態様においては,抗体またはアプタマーをビオチン化して,続くアビジンコンジュゲート化マトリクス,例えば,限定されないが,アビジンクロマトグラフィーカラムにおける単離により,当該技術分野においてよく知られる生化学的精製法による分離が容易になるようにする。ある態様においては,リポ蛋白質との複合体中のビオチン化抗体またはアプタマーをさらにストレプトアビジンコンジュゲート化磁気ビーズに供する。次に,リポ蛋白質−ビオチン化アフィニティー試薬−ストレプトアビジンの三者がコンジュゲートした磁気ビーズ複合体を,当該技術分野においてよく知られる免疫磁気方法により単離する。
この観点のある態様においては,リポ蛋白質捕捉リガンドは,当該技術分野においてよく知られる適当なリンカーを用いて固体支持体に結合させる。例示的固体支持体としては,限定されないが,常磁性体粒子,ビーズ,ゲルマトリクス材料(例えば,アガロース,Sephadex(登録商標))等が挙げられる。
この観点に加えて,ある態様においては,本発明は,遠心分離の前にサンプルからLp(a)を除去する方法を提供する。この方法は,以下の工程を含む:(a)サンプルを,Lp(a)が沈殿するのに十分な条件下で,ApoB含有リポ蛋白質用の沈殿剤と混合することによりLp(a)の沈殿物を形成し;そして(b)Lp(a)含有沈殿物を第1の溶液から単離する。“ApoB含有リポ蛋白質用の沈殿剤”および同様の用語は,当該技術分野においてよく知られるように,ApoBを沈殿させることが知られている化合物を表す。
本明細書に記載される遠心分離法により回収されたリポ蛋白質の精製を企図する本発明のある態様においては,本発明は,回収されたリポ蛋白質からLp(a)を除去する方法を提供し,この方法は,以下の工程を含む:(a)回収したリポ蛋白質を,Lp(a)が沈殿するのに十分な条件下で,ApoB含有リポ蛋白質用の沈殿剤と混合することによりLp(a)の沈殿物を形成し;そして(b)Lp(a)含有沈殿物を回収されたリポ蛋白質から単離する。
本明細書に記載される,リポ蛋白質を含む溶液からLp(a)を除去するための方法に加えて,ApoB用の沈殿剤の例としては,限定されないが,二価カチオンの存在下におけるDSが挙げられる。ある態様においては,二価カチオンはMg2+である。DSを含
めることにより,HDLの回収にはほとんど影響を与えることなく,LDLの回収が有意に増加することがわかった。DSは,約0.1から50mg/mLの範囲の濃度でリポ蛋白質含有サンプルと混合することができる。ある態様においては,DSの濃度は,約0.1,0.2,0.5,1.0,1.5,2.0,2.5,3.0,4.0,5.0,10.0,15.0,20.0,25.0,30.0,40.0mg/mLであり,50.0mg/mLであってもよい。
さらに別の態様においては,本発明は,精製したLp(a)を得る方法を提供し,この方法は以下の工程を含む:(a)本明細書に記載される方法のいずれかにしたがって得た沈殿物を含むLp(a)を可溶化し;(b)可溶化したLp(a)を,Lp(a)−レクチン複合体が形成するのに適した条件下で,固体支持体に結合したレクチンを含む固体支持試薬と混合し;(c)Lp(a)−レクチン複合体を単離し;そして(d)Lp(a)をLp(a)−レクチン複合体から放出させ,このことにより,例えば差異荷電粒子移動度分析に適した精製されたリポ蛋白質を提供する。
さらにこの方法では,レクチンは,小麦胚芽アグルチニン(WGA),ライマメアグルチニン(LGA),フィトヘマグルチニン(PHA),およびカブトガニレクチン(HCL)からなる群より選択することができる。ある態様においては,レクチンはWGAであり,ある態様においては,固体支持体はアガロースを含む。そのようなレクチンを操作する方法,例えばLp(a)と反応させて複合体を形成させること,そのような複合体を単離すること,およびレクチンを固体支持体に結合させることは,当該技術分野においてよく知られている。
さらにこの方法のある態様においては,放出工程は,Lp(a)−レクチン複合体をレクチンの競合リガンドで洗浄することを含む。ある態様においては,競合リガンドはN−アセチルグルコサミン(NAG)である。ある態様においては,放出工程は,当該技術分野において知られるジスルフィド還元剤を用いるジスルフィド還元によりジスルフィド結合apo(a)およびApoBを還元し,このことによりLDLを放出させることを含む。
本明細書に記載される遠心分離法により回収されたリポ蛋白質のさらなる精製を企図する本発明のある態様においては,本発明は,回収されたリポ蛋白質からLp(a)を除去する方法を提供し,この方法は以下の工程を含む:(a)本明細書に記載される方法の任意のものにしたがって得られるLp(a)含有沈殿物を可溶化し;(b)可溶化したLp(a)をガンマグロブリンおよびプロリンと混合し;(c)沈殿剤を加えることにより混合物を沈殿させ;そして(d)沈殿物からLp(a)を回収し,このことにより差異荷電粒子移動度分析用に適した精製リポ蛋白質を与える。当該技術分野において知られるように,“ガンマグロブリン”とは,γ−クラスのイムノグロブリンを表す。沈殿剤の例としては,限定されないが,高度に荷電した無機イオンの塩が挙げられ,好ましくは硫酸アンモニウムである。本発明の態様に有用なガンマグロブリンの濃度は,0.01−0.1ug/mL,0.1−1.0ug/mL,1.0−2.0−ug/mL,2.0−5.0ug/mL,5.0−10.0ug/mL,10.0−100ug/mL,100−1000ug/mLの範囲であることができ,さらに高くてもよい。プロリンの濃度は,10uM−100uM,100−100−uM,1−2mM,2−5mM,5−10mMの範囲であることができ,さらに高くてもよい。
回収されたリポ蛋白質を企図する本明細書に記載される方法に加えて,ある態様においては,リポ蛋白質含有溶液は不活性遠心分離マトリクスと接触している。本発明の遠心分離による精製方法の文脈において,“不活性遠心分離マトリクス”および同様の用語は,リポ蛋白質と化学的に反応しないが,それにもかかわらず精製を促進する材料を表す。い
かなる理論にも拘束されることを望むものではないが,不活性遠心分離マトリクスは,例えば,減速の間に,および/またはリポ蛋白質または他の画分をチューブからピペッティングする際に導入されるアルチファクトを最小限にするように,遠心分離の後に遠心分離チューブの内容物を安定化するよう作用すると考えられる。例示的不活性遠心分離マトリクスとしては,限定されないが,ゲルスラリーまたは不活性ビーズが挙げられる。ある態様においては,ゲルスラリーはSephadex(登録商標)ゲルマトリクスである。ある態様においては,不活性遠心分離マトリクスは不活性ビーズを含む。例示的不活性ビーズとしては,限定されないが,遠心チューブ中の第1の溶液の底に沈むよう適合されたガラスビーズ,ポリスチレンビーズ等が挙げられる。不活性ビーズは,慣用のサイズのいずれであってもよく,例えば,限定されないが,約0.1,0.2,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1.0,1.1,1.21.3,1.4,1.5,1.6,1.7,1.8,2.0,2.2,2.4,2.6,2.8,3.0,3.3,3.6,3.9,4.0mmであることができ,あるいはこれより小さくても大きくてもよい。
ポリアニオン化合物および1またはそれ以上の二価カチオンを用いてリポ蛋白質を差異荷電粒子移動度分析用に精製する方法に関する本発明の観点のある態様においては,ポリアニオン化合物は,DS,アミロペクチンおよびポリビニル硫酸からなる群より選択され,好ましくはDSである。ある態様においては,二価カチオンは,Mg2+およびCa2+,好ましくはMg2+からなる群より選択される。
ある態様においては,本発明は差異荷電粒子移動度分析用にリポ蛋白質を精製する方法を提供し,この方法は,遠心分離を含まない。ある態様においては,リポ蛋白質および非リポ蛋白質を含む溶液を,リポ蛋白質と結合してリポ蛋白質/リポ蛋白質捕捉リガンド複合体を形成しうる1またはそれ以上のリポ蛋白質捕捉リガンドと混合する。ある態様においては,リポ蛋白質/リポ蛋白質捕捉リガンド複合体が形成された後,そのように形成された複合体を,当該技術分野において知られる方法,例えば,限定されないが,免疫磁気法により単離する。ある態様においては,リポ蛋白質/リポ蛋白質捕捉リガンド複合体を単離した後,当該技術分野において知られ,本明細書に記載される方法により,リポ蛋白質/リポ蛋白質捕捉リガンド複合体からリポ蛋白質を放出させる。
別の観点においては,本発明は,差異荷電粒子移動度分析によりリポ蛋白質のサイズ分布を分析する方法を提供する。ある態様においては,1またはそれ以上のリポ蛋白質は,体液,例えば個体からの血漿標本から取得する。ある態様においては,1またはそれ以上のリポ蛋白質は,HDL,LDL,Lp(a),IDLおよびVLDLからなる群より選択される。ある態様においては,この方法はさらに,決定されたリポ蛋白質サイズ分布を用いて個体の評価を行う工程を含み,評価は,脂質に関連する健康上のリスク,心臓血管疾患,心臓血管疾患のリスク,および治療的介入に対する応答からなる群より選択される。
脂質に関連する健康上のリスク,心臓血管疾患,および心臓血管疾患のリスクの文脈において,“評価”とは,得られたリポ蛋白質のサイズ分布と,当該技術分野においてよく知られる人工死亡率およびリスク因子との統計学的相関を表す。治療的介入に対する応答の文脈においては,評価とは,治療的介入を実施する前および後のリポ蛋白質サイズ分布の比較を表す。治療的介入の例としては,限定されないが,当該技術分野において知られるように,血清コレステロールの低下,LDL,IDL,およびVLDL,Lp(a)の低下,および/またはHDLの上昇を目的として固体に薬剤を投与することが挙げられる。
ある態様においては,リポ蛋白質分析の結果は分析報告書として報告される。本発明により企図されるリポ蛋白質および他の脂質分析の文脈において,“分析報告書”とは,臨
床医,他のヘルスケア提供者,疫学者等に対して提供される報告書を表し,この報告書は,生物学的標本,例えば個体からの血漿標本の分析の結果を含む。分析報告書は,当該技術分野において知られるように,印刷された形態で,電子的な形態で,あるいは,その中のデータの分析,検討および/またはアーカイブに便利な任意の形態で表示することができる。分析報告書は,報告書の対象である個体に関する識別情報,例えば,限定されないが,氏名,住所,性別,識別情報(例えば,社会保障番号)等を含んでいてもよい。分析報告書は,当該技術分野において知られるか,および/または本明細書に記載されるように,サンプル中の脂質の生化学的特徴付け,例えば,限定されないが,トリグリセリド,総コレステロール,LDLコレステロール,および/またはHDLコレステロール等の特徴付けを含んでいてもよい。分析報告書は,さらに,本明細書に記載される方法により調製されたサンプルについて行われたリポ蛋白質の特徴付け,およびその参照範囲を含んでいてもよい。“参照範囲”との用語および同様の用語は,個体の集団において通常典型的に観察される範囲を反映するものとして知られている生物学的サンプルの成分の濃度を表す。分析報告書におけるリポ蛋白質の特徴付けの例としては,差異荷電粒子移動度により決定した非HDLリポ蛋白質およびLp(a)の濃度が挙げられる。例えば,本発明の方法により調製したサンプルについて行った差異荷電粒子移動度分析により測定されたリポ蛋白質の特徴付けのさらに別の例としては,VLDL,IDL,Lp(a),LDLおよびHDL,およびこれらのサブクラスの濃度および参照範囲が挙げられる。分析報告書はさらに,例えば,本発明の方法により調整されたサンプルの差異荷電粒子移動度分析により得られるリポ蛋白質サイズ分布を含んでいてもよい。例示的分析報告書に含まれる項目は実施例7に示される。
実施例1−DOおよび低塩溶液を用いるリポ蛋白質精製の比較
血清サンプル(25uL)を,低密度塩溶液(1.151g/mL)(すなわち,“低密度塩サンプル”)またはDO(各200uL)のいずれかを用いて加工処理した。サンプルを,223,000xGで3.7時間(低密度塩サンプル),または2時間(DO)遠心分離した。遠心分離後に最上部100uLを取り出して,低密度塩サンプルを酢酸アンモニウム溶液に対して透析し,1:200に希釈した後,差異荷電粒子移動度分析を行った。DOサンプルは,遠心分離の直後に酢酸アンモニウムで1:200に希釈した後,差異荷電粒子移動度分析を行った。差異荷電粒子移動度分析の結果を図2に示す。
実施例2−ApoA,ApoB,およびTCの回収に及ぼす精製の効果
Oを用いる手順の間にHDL(ApoA1)が優先的に減少するか否かを評価するため,図3に示す3つのサンプル(すなわち,749,1043,14:任意の固有の患者識別番号)について,DOをアルブミンを除去するためのRGD/DS溶液(それぞれ7.5/2.5mg/mL)とともに用いて,リポ蛋白質を単離した。サンプルはそれぞれ6重に用意した。単離したそれぞれの最上部100uLを,ApoA1(HDL),ApoB(LDL,IDL,VLDL)および総コレステロール(TC)についてそれぞれ分析した。血漿または血清アポリポ蛋白質AIおよびBは,標準化ELISAにより,市販のモノクローナル捕捉抗体(Biodesign International,Saco,MN)および精製しビオチン化した抗ヒトヤギポリクローナル検出抗体(International Immunology Corp.,Murrieta,CA)を用いる非競合的サンドウィッチイムノアッセイで測定した。濃度は,ストレプトアビジンコンジュゲート化ペルオキシダーゼを加え,オルトフェニリンジアミンを用いて発色させることにより測定した。リポ蛋白質較正器は,CDC#1883血清参照材料(Center for Disease Control,Atlanta,GA)およびプールした参照血清(Northwest Lipid Research Clinic,Seattle,WA)を用いて標準化した。総コレステロールは,市販のアッセイキット試薬(Bayer Health Care,Tarrytown,NY)を用いて,
製造元の指針にしたがって,マイクロタイタープレートのウエルあたり25μlの血清または血漿プラス200μlのコレステロール試薬の分析用に改変して測定した。発色後,標準,対照,サンプルおよび試薬バックグラウンドをマイクロタイタープレートリーダーを用いて測定した。結果(図3)は,各血清中に存在する総量と比較した各サンプルの平均回収率を示す。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが,ApoA1とApoBの回収が同等であったことからみて,精製手順によってHDLは優先的に減少しなかった。
実施例3−リポ蛋白質画分回収に及ぼす種々のRGDの影響
血清サンプルを,種々の量のRGD(10,15,20,25mg/mL)と混合し,氷上で15分間インキュベーションした後,DOのクッションの上に重層した。223,000xGで120分間遠心分離した後,最上部の100μLを取り出し,酢酸アンモニウム溶液で1:200に希釈した。次に,サンプルを差異荷電粒子移動度分析により分析した。結果を図4に示す。
実施例4−RG19,DS,AAを用いるリポ蛋白質の精製
図5を参照すると,抽出/精製物および希釈物の両方において,アルブミンの除去およびリポ蛋白質の回収に及ぼすDSの影響を評価するために,血清サンプル(5uL)を,20μLの7.5mg/mL RGD単独(図5中“C/D”)または20μLの7.5mg/mL RGDと2.5mg/mL DSとの組み合わせ(図5中“A/B”)で抽出した。抽出および希釈の両方について,用いたDSの分子量は10Kである。氷上で15分間インキュベーションした後,各サンプルを223,000xG,10℃で,2時間15分間遠心分離した。最上部の100μLを取り出し,25mM酢酸アンモニウム溶液(図5中“B/D”)または5ug/mL DS(図5中“A/C”)を含む25mM酢酸アンモニウムのいずれかで1:200に希釈した。
実施例5−希釈剤中でDSを用いたリポ蛋白質の精製の結果
図6を参照すると,当該技術分野においてよく知られる方法を用いて,18時間の密度分離により調製したリポ蛋白質含有血清サンプルを透析後に用いて,希釈剤中のDSがLDLの回収に及ぼす効果を評価した。遠心分離した血清サンプルのアリコートを25mM酢酸アンモニウムでDSなしで1:200に希釈し,差異荷電粒子移動度分析を行った。別のアリコートを25mM酢酸アンモニウムで5μg/mLのDSの存在下で1:200に希釈した。各サンプルについて二重に行った試験の結果を図6に示す。
実施例6−RG19,DS,DOを用いるリポ蛋白質の精製
血漿から得たリポ蛋白質含有サンプルをボルテックスにより軽く混合した。5μLのサンプルまたは任意に対照を,7.5mg/mLのRGD(Sigma),2.5mg/mLのDS(Sigma)および0.5mg/mLのEDTA(Spectrum Chemicals)を含む20μLのアルブミン除去試薬と混合し,氷上で15分間インキュベーションした。インキュベーションの後,サンプル混合物をTi42.2超遠心チューブ(Beckmann)中の200μLのDO(Medical Isotopes)の上に重層した。次にサンプルを10℃で223,000xG(42,000rpm)で135分間超遠心分離した。超遠心分離後,脂質画分(85μL)を遠心チューブの最上部から取り出した。差異荷電粒子移動度による分析の前に,HDL分析用に,サンプルを25mM酢酸アンモニウム,0.5mM水酸化アンモニウム(pH7.4)で最終希釈1:800に希釈した。LDL分析用には,サンプルを5μg/mLのDSを含む同じ希釈剤で1:200に希釈した。最終希釈物はディープウエル96ウエルプレート中に作製し,6℃に維持した冷却板付きオートサンプラーに置いた後,差異荷電粒子移動度分析を行った。
実施例7−血清サンプル中のリポ蛋白質の精製および分析の結果
静脈穿刺により採取した全血から血清を分離した。分離後,血清を3つに分けた。1つのアリコートは,当該技術分野においてよく知られる伝統的な方法を用いて,HDL,トリグリセリド,および総コレステロールの含有量について分析した。LDLはこれらの結果から計算した。好ましい態様においては,トリグリセリドが400mg/dLより高い場合,LDLは直接測定した。第2のアリコートは,当該技術分野においてよく知られるイムノアッセイを用いて,そのLp(a)含有量について分析した。第3のアリコートについて,差異荷電粒子移動度分析を用いてリポ蛋白質を分画した。
典型的な製造方法においては,サンプルを,対照,すなわち,当該技術分野において知られるように,LDLパターンA(対照A)であることが知られている1つのサンプルおよびパターンB(対照B)であることが知られている1つのサンプルとともに,Perkin Elmer JANUSマルチプローブ装置に入れる。30uLの対照およびサンプルを別々のチューブに移し,混合し,120μLのRG19デキストラン,DS,EDTA溶液を加える。次にチューブを氷上に移し,15分間インキュベーションする。15分間のインキュベーションの後,チューブをマルチプローブに戻す。別に,遠心チューブに2つの4mmビーズを加え,次にこれをマルチプローブに入れ,ここで120μLのDOを各遠心チューブに加える。次に,対照およびサンプルをマルチプローブによりDOに重層した後,超遠心分離ローター(Ti42.2)に移す。次にサンプルを10℃で223,000xG(42,000rpm)で135分間遠心する。遠心分離後,遠心チューブを注意深く取り出し,マルチプローブ上に置き,ここで,最上部の85μL(+/−5μL)を取り出して別のチューブに入れる。すべてのサンプルが回収されると,マルチプローブは対照およびサンプルのそれぞれについて2つの希釈を作製する。一方の希釈は5μg/mLのDSを含む酢酸アンモニウム溶液で1:200の最終希釈である。もう一方の希釈は,酢酸アンモニウム溶液のみで1:800の希釈である。次に2つの希釈物を差異荷電粒子移動度装置で分析する。分析後,当該技術分野においてよく知られる換算を用いて粒子数をnmol/Lに変換する。HDL(1:800)およびより大きいリポ蛋白質(1:200)からのデータを組み合わせを,アリコート1および2からの生化学的データとともに記録する。リポ蛋白質のプロファイル,ならびに総LDL粒子濃度およびLDLピーク粒子サイズも記録し,これを用いてLDL表現型を判定する。これらのデータの組み合わせから得られた例示的評価報告書を表2(数値表示)および図7(リポ蛋白質プロファイルのグラフ表示)に示す。
上述の差異荷電粒子移動度分析を用いてより正確なリポ蛋白質プロファイルを得るために,差異荷電粒子移動度装置の前の操作(例えば,サンプルの遠心分離,ピペッティングおよび希釈)の間のリポ蛋白質の損失について結果を調整してもよい。これは,1またはそれ以上のタイプの標識リポ蛋白質を内部標準としてサンプルに加えることにより行うことができる。加工の間に標識を追跡することにより,標識リポ蛋白質の回収を用いて,元のサンプル中に存在した非標識リポ蛋白質の濃度を上方に調整することができる。例えば,遠心分離後のリポ蛋白質単離物のアリコートの蛍光シグナルを測定し,出発ストックサンプル(遠心分離していない)から直接取り出したアリコートと比較する。シグナルの相違は回収された未知のサンプルの比率を表し,血漿または血清中のリポ蛋白質濃度のより正確な計算が可能となる。
以下の方法を用いて,蛍光分子をHDLサブ画分にコンジュゲートさせた。この方法は
,他のタイプのリポ蛋白質に適用することができる。順次浮遊により血漿からHDLを単離して,密度区間1.063−1.20g/mLのリポ蛋白質を得た。次に総HDL画分をバックグラウンド塩密度1.184g/mLに対して透析し,固定角50.3のBeckmanローターで40,000rpm,10℃で28時間遠心分離した。次に6mlの遠心チューブからピペットにより,主として大,中,および小HDLサブ画分(それぞれ,T[0−1],T[1−3]およびT[3−6])を得た。次にサブ画分を100mMNaHCO3(pH8.5)に対して4℃で一晩透析した。各サブ画分の蛋白質濃度をローリー法を用いて測定した。
次に,HDLサブ画分を,蛍光プローブAlexa Fluor 488(登録商標)(カルボン酸,スクシンイミジルエステル混合アイソマー,Molecular Probes Cat#A−20000,分子量643.42,吸収494nm/放出517nm)で,製造元の指針にしたがって標識した。簡単には,HDLサブ画分をAF488と,示唆される最適比10:1(wt:wt)で,HDLおよびAF488の最適濃度をそれぞれ>2mg/mlおよび10mg/mlに維持しながら混合した。プロトコルおよび用いた溶液の量は下記の表3に示す。
次に,AF488で標識したHDLサブ画分をバッファに250から>30000で様々に希釈して,シグナル感度について試験した。標識したHDLサブ画分はまた,リポ蛋白質を単離する遠心分離の前および後に,種々の血漿調製物中に希釈して,シグナル感度について試験した。
密度<1.23g/mLで2回目の遠心分離を行って,コンジュゲートしていない蛍光標識をHDL:AF488コンジュゲートから除去して,標識したHDLサブ画分を単離した後に,さらなる希釈および感度試験を行った。
蛍光プローブであるフルオレセイン−5−EX,スクシンイミジルエステル(Molecular Probes,Cat#F−6130)を用いて,AF488について上述したものと同様にして,HDLサブ画分を標識した。また,上述の方法を用いて,VLDLおよびLDLを蛍光標識した。高分子量標準(Pharmacia HMW Standard Mix,サイログロブリン,アポフェリチン,カタラーゼ,乳酸デヒドロゲナーゼおよびアルブミンを含む)と組み合わせた蛍光標識について追加の試験を行った。
例えば,限定されないが,図1,図7等により例示される,リポ蛋白質分布の分析および/またはディスプレイを企図する本発明の観点の態様においては,イオン移動度分析装置を用いて得た差異荷電粒子移動度データを加工した後に,臨床的な解釈用に提示することができる。差異荷電粒子移動度分析からの生データ,または臨床的な解釈用に提示するための加工したデータの文脈において,特に記載しないかぎり,“差異荷電粒子移動度データ”および同様の用語は,粒子の直径と相関する独立変数と,粒子数と相関する観測された従属変数とを有する差異荷電粒子移動度粒子サイズ分布を表す。ある態様においては,独立変数は電圧または電圧により生ずる対応する電界(等式3を参照)である。ある態様においては,独立変数は粒子直径である。ある態様においては,従属変数は粒子数である。ある態様においては,従属変数は特定の時間,例えば,限定されないが,0.001−0.01,0.01−0.1,0.1−1,1−2秒またはそれ以上の間に計数された粒子の数である。ある態様においては,特定の時間は0.1秒である。
“差異荷電粒子移動度データの加工”および同様の用語は,データの操作を表し,この操作は,総合的に,グラフおよび/または数値の結果を提供することができ,これはサンプル中の個別のリポ蛋白質クラスおよびそのサブクラスのリポ蛋白質分布,および/または濃度を正確にかつ再現性よく反映する。差異荷電粒子移動度粒子サイズ分布データの加工において有用な操作の例としては,限定されないが,定数による操作,関数による畳み込み,一定の数値または関数の加算および/または減算,例えば,限定されないが,夾雑物の寄与についての補正,数値の積分,平滑化,および当該技術分野において知られる他の算術的操作が挙げられる。したがって,種々の理由により差異荷電粒子移動度粒子サイズ分布データの加工を利用することができ,これには,限定されないが,サンプル中のリポ蛋白質の生理学的濃度を正確に反映する補正,特定の装置およびプロセスの効率について補正するための拡大/縮小,夾雑物の寄与を表すデータの除去等が含まれる。“特定の装置およびプロセスの効率”および同様の用語は,加工および分析の間の被検物質(例えばリポ蛋白質)の濃度の変化についての検出および補正を表す。特定の装置効率の例としては,エレクトロスプレーの間に導入される見かけの希釈が挙げられ,ここでは,テイラーコーンが形成されることにより,粒子を運ぶガス流中でリポ蛋白質が見かけ上希釈される。効率は,当業者によく知られる定量された効率を有する装置を用いる方法により測定される。差異荷電粒子移動度粒子サイズ分布データの文脈において,“夾雑物の寄与”および同様の用語は,例えば,限定されないが,差異荷電粒子移動度装置で計数された非リポ蛋白質種から生じ,ここから得られる差異荷電粒子移動度粒子サイズ分布データに含まれるイオン移動度装置からの粒子カウントのデータを表す。この文脈において,非リポ蛋白質種の例としては,限定されないが,本明細書に開示される任意の試薬,およびモノマー形および/またはマルチマー形のアルブミンが挙げられる。
ある態様においては,本明細書に記載される試薬による差異荷電粒子移動度粒子サイズ分布データに対する寄与を,データのプロセシングの間に差異荷電粒子移動度サイズ分布データから減算する。例えば,いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが,差異荷電粒子移動度分析からの粒子サイズ分布データ(すなわち,粒子直径に対する粒子数をもつ差異荷電粒子移動度粒子サイズ分布データ)中のRGDに起因する寄与は,選択された直径領域にわたる1またはそれ以上の減衰指数関数により表すことができると考えられる。したがって,ある態様においては,差異荷電粒子移動度粒子サイズ分布データは
,選択された領域において式4:
(式中,yは,当該技術分野においてよく知られる方法により決定される,差異荷電粒子移動度に対する寄与のベストフィットであり,kはフィットの実験的定数であり,dは粒子直径である)
の関数にフィットする。上述の式4は,2nmより大きい粒子直径について有効である。ある態様においては,フィットの領域は,3−6,3−4,3−5,3−6,4−6,または5−6nm(粒子直径)であり,好ましくは3−4nmである。ある態様においては,差異荷電粒子移動度データ全体を,等式4へのあてはめから得られる関数により補正する。
ある態様においては,差異荷電粒子移動度粒子サイズ分布データをさらに加工して,差異荷電粒子移動度分析用に採取されたサンプル中に含まれるアルブミンに起因する寄与を計算する。ある態様においては,アルブミンについての補正の構築(すなわち,“アルブミン補正曲線”)は最初に,下記の形の区分的関数により行われる:
ここで,yおよびyは,それぞれ領域2および3における関数値であり,kおよびkは,当該技術分野においてよく知られる方法により決定される経験的定数であり,dは粒子直径である。“(添加されたアルブミンデータからの)経験値”とは,測定された分布中のアルブミンの量と等しいアルブミンの量を分布から減算することが,差異荷電粒子移動度粒子サイズ分布データに及ぼす影響を表す。
ある態様においては,アルブミンダイマーの存在を考慮してアルブミン補正曲線をさらに修正することができる。アルブミンダイマーは,典型的には,差異荷電粒子移動度分析用のサンプル中に1−10%,1−8%,2−8%,2−7%,2−6%,2−5%の範囲で,好ましくは2%で存在すること,およびアルブミン補正曲線を特定の領域において調整して,アルブミンダイマーの存在を考慮し,段階的に抑制しうることが経験的に見いだされている。ある態様においては,この特定の領域の直径の下限は,0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11または12nmである。ある態様においては,この特定の領域の直径の上限は,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14または15nmである。ある態様においては,この特定の領域の範囲は,0−15,5−10,7−9,好ましくは7.9−8.4nmである。したがって,アルブミン補正曲線は,等式7の形をもつ関数により修正することができる:
y’=y * ((d-lowerlimit) * 2 * dimer+(upperlimit-d) * 2) (7)
(yはアルブミン補正曲線であり,y’はアルブミンダイマーの存在の段階的抑制後のアルブミン補正曲線であり,dは粒子直径であり,lowerlimitおよびupperlimitは,それぞれ補正用のサイズの下限および上限であり,dimerは選択されたパーセントダイマー濃度
である。ある態様においては,ダイマーの存在が抑制されている領域は,7.9nm(lowerlimit)と8.4nm(upperlimit)との間である。
ある態様においては,アルブミンモノマーを示す理論的曲線を,当該技術分野においてよく知られるカーブフィッティング法を用いて,特定の領域におけるサンプルの差異荷電粒子移動度粒子サイズ分布にフィットさせる。ある態様においては,この理論的曲線は式8:
(yはアルブミンモノマーの理論数の分布,kおよびkは実験的に得られる定数である)
の関数で表される。ある態様においては,kは0.1−10,1−5,2−4または2−3の範囲である。ある態様においては,kは2.56である。ある態様においては,この特定の領域は,0−15,5−10,6−9,7−8,好ましくは7.3−7.5nmである。ある態様においては,アルブミンモノマーの寄与を判定して等式8にベストフィットさせた後,ここから同じ寄与のスケールで等式7を減算することにより差異荷電粒子移動度粒子サイズ分布データを補正する。ある態様においては,等式7を減算することによる補正は,特定の領域,例えば,限定されないが,0−15,2−12,4−10,好ましくは6−10nm中で行う。補正が10−11nmの範囲を意図しないある態様においては,領域10−11nm中の対応する補正は,等式7を(11−直径)倍し,その結果を差異荷電粒子移動度粒子サイズ分布データから減算することにより行う。
上述のプロセスは,種々の電子機器,例えばデスクトップまたはラップトップコンピュータ,または携帯端末に実装することができる。このような機器は当該技術分野においてよく知られている。さらに,結果は,モニターにディスプレイするか,プリントするか,またはメモリ装置,例えば,ハードドライブ,CDROM,CDR/W,フラッシュメモリ等に格納することができる。さらに,結果は,ネットワークを介して他の装置から利用できるようにしてもよく,このネットワークは私的ネットワークであっても公的ネットワーク,例えばインターネットであってもよい。この点に関して,電子機器および/またはメモリ装置は,ネットワークを介してアクセス可能である。
1つの態様においては,測定値を実験的に決定された範囲と比較して,範囲内または範囲外である患者の血清または血漿の値に基づいて診断を行う。下記のチャートは,そのような診断のための範囲の1つの例示的セットを示す。
差異荷電粒子移動度スペクトロメトリは,気相粒子電気移動度に基づいてナノ粒子のサイズ分布を測定する方法を提供する。この方法論を,リポ蛋白質粒子のサイズ分布の測定に適合させた。この方法は自動化され,約1分間で,粒子直径に対して粒子数および粒子質量のプロファイルを生成する。リポ蛋白質をまず超遠心分離により濃縮し(血漿蛋白質の除去),次に揮発性バッファで希釈し,エレクトロスプレーを行った。電荷中和プロセスにより,単一の電荷をもつ粒子のよく特徴付けされた画分が得られる。荷電粒子は差異移動分析装置(DMA)を通して取り出され,これにより狭いサイズの粒子がDMAに適用される電圧の関数として通過して,粒子カウンターに達することができる。適用した電圧をスキャンすることにより,HDL,LDL,IDLおよびVLDLについて粒子数の分布が得られる。測定は,第1原則に基づいており,粒子サイズに関してキャリブレーションする必要はない。粒子数分布を粒子質量分布に変換する。この方法を用いて,LDL直径のアッセイ内変動は<0.6%であり,濃度に関しては,HDLおよびLDLについては<10%,IDLおよびVLDLについては<15%であった。アッセイ間の再現性は,LDLの粒子サイズについて<1.0%,HDLおよびLDLの濃度について<15%,IDLの濃度について<20%,VLDLの濃度について<25%であった。下記の表は,個々のリポ蛋白質画分についての参照範囲を生成するための用いたデータのまとめを平均およびSDで示す。この実験では,最適脂質/リポ蛋白質レベルについての現在のNCEP ATP IIIの基準に合致した合計で259名の健康な個体(191F,68M)を用いた:総コレステロール(chol)<200,LDLchol<100,HDLchol>40(M)>50(F),トリグリセリド<150mg/dL。この結果は,予測された性別による差異を示し,男性は小LDL粒子の濃度がより高く,女性はHDL2bがより高かった。
集団(異常)の残りについて,ATP IIIガイドラインに含まれない1またはそれ以上の基準の範囲を測定した。予測された相違,すなわち,より小さいLDLの濃度の増加,ならびにHDL2b(B)のサイズの減少および濃度の低下が示され,HDL2aおよび3はほとんど変化がなかった。
上述の方法は,種々の装置で実施することができる。例えば,Bennerらの米国特許7,259,018は,遠心チューブ中のサンプル溶液をキャピラリーチューブを通して放出し,キャピラリーチューブから出るときにエレクトロスプレープロセスによりイオン化する装置を記載する。すなわち,圧力チャンバにより引き起こされる圧力差がイオン化したサンプルをガス流中に移動させ,次にこれはサンプルを移動度分析装置に運ぶ。一旦,遠心分離チューブ中のサンプルを分析すると,別のチューブのサンプルを圧力チャンバ内に置く。しかし,この配置では,遠心分離チューブ中で任意の時間に少量のサンプルしか与えられないため,圧力チャンバにおける圧力が維持されていても,キャピラリーを通るサンプルの流速が時間とともに実質的に変化し,このことにより予測流速に基づくイオン移動度分析装置からの定量的測定が影響を受ける可能性がある。
本発明の態様はこれらの懸念に対処する。本発明の態様にしたがえば,サンプルをキャピラリーを通して送出し,イオン移動度分析装置へと流れる間にサンプルをキャピラリー中でイオン化(ないし荷電)することにより,一定流速が達成される。図8は,本発明のある態様にしたがう,イオン移動度分析の例示的装置を示す。図8のイオン移動度分析装置10は,米国特許7,259,018に例示されるものと同様のイオン移動度分析装置20を含む。イオン移動度分析装置20は,ここを通って流れる粒子を計数することがで
きる。イオン移動度分析装置20には,例えば上述したアルゴリズムにしたがってデータをプロセシングすることができる電子装置(図に示さず),例えばコンピュータが備えられていてもよい。
サンプルの荷電粒子流れをオートサンプラー22からイオン移動度分析装置20に提供する。オートサンプラー22は,サンプルを自動的に供給するロボットシステムであってもよい。そのようなオートサンプラーの1つは,モデルHTCPAL,Leap Technologies of Carrboro,North Carolinaである。1つの態様においては,オートサンプラーは,精製されたサンプルのみをチューブのラックからまたはマルチウエルプレートからポンプに供給するロボット装置である。オートサンプラー22は,実質的なヒトの介入なしでサンプルをイオン移動度分析用に実質的に連続して供給することができる。
サンプルはオートサンプラー22から注入ポート24を通って第1のポンプ26に供給される。この点に関して,オートサンプラー22はリザーバー(図示せず)を含んでいてもよく,精製されたサンプルはここに含まれる。注入ポート24は第1のポンプ26の一部であってもよい。第1のポンプ26は,サンプルをオートサンプラー22から比較的早い流速(例えば,1分間に1.0マイクロリットル以上)で送出することができる高流速(または高フロー)ポンプである。1つの態様においては,高フローポンプは,サンプルをオートサンプラー22から1分間に約5−20マイクロリットルの速度で送出する。最も好ましくは,高フローポンプは,サンプルを1分間に約10マイクロリットルの速度で送出する。適当な高フローポンプは,Eksigent Technologies(2021 Las Positas Ct Suite 161,Livermore,CA)から入手される。
サンプルは第1のポンプ26から第2のポンプ30に供給される。第2のポンプ30は,サンプルをキャピラリー34に比較的遅い速度で(例えば1分間に1.0マイクロリットル以下)で送出して,サンプルの粒子の適切なイオン化ないし荷電をすることができる低流速(またはナノフロー)ポンプであり,これは下記に説明する。1つの態様においては,ナノフローポンプはサンプルをキャピラリーに1分間に約100−200ナノリットルの速度で送出する。最も好ましくは,ナノフローポンプはサンプルを1分間に約200ナノリットルの速度で送出する。適当なナノフローポンプは,Eksigent Technologies(2021 Las Positas Ct Suite 161,Livermore,CA)から得られる。
1つの態様においては,2つのポンプの代わりに,組み合わせポンプアセンブリを用いることができる。例えば,ポンプアセンブリは,高流速部品および1またはそれ以上のナノフロー部品を含むことができる。組み合わせポンプアセンブリの一例は,Nano LC1−D(Eksigent Technologies,2021 Las Positas Ct Suite 161,Livermore,CAから入手可能)である。
1つの態様においては,第1のポンプ26は単一のバルブ28または複数のバルブを介してサンプルを複数のナノフローポンプに供給することができる。
キャピラリー34に入りここを通る流れは,バルブ32により制御することができ,これは第2のポンプ30の一部であってもよく,またはキャピラリー34中に配置された別個のバルブであってもよい。バルブ32は,サンプルがキャピラリー34を通って下流のバルブ32に一定の流速で流れることを確実にする。バルブ32は,一定の流速を維持するよう電気的に制御してもよい。この点に関して,バルブは,バルブ32の下流に配置されたセンサーまたはメーターに応答して制御してもよい。
サンプル粒子は,キャピラリー34を通る流れの間にイオン化装置40により荷電される。当業者には理解されるように,粒子の実際のイオン化ないし荷電は,粒子がキャピラリーを出てイオン移動度分析装置に入るときに生ずる。1つの態様においては,イオン化装置40はキャピラリー34の一部の周りに配置された導電ユニオンアセンブリである。導電ユニオン(導電接続部としても知られる)非常に薄い流れのまわりに電流を適用して,流れに荷電を与える。1つの例示的導電ユニオンアセンブリは米国特許7,075,066(その全体参照として本明細書に組み込まれる)に記載されている。次に,荷電したサンプル粒子は,キャピラリー34を通してイオン移動度分析装置20に供給される。
図9Aおよび9Bは,キャピラリーを通るサンプル粒子の流れを荷電するために用いられる導電ユニオンの例示的態様を示す。まず図9Aを参照すると,導電ユニオンアセンブリ40aがキャピラリー34の周りに形成されている。キャピラリー34のイオン化領域35の周りには,導電ユニオン42が存在する。導電ユニオン42に適用された電圧は,キャピラリー34のイオン化領域35を通る流れの中で粒子の荷電を引き起こす。導電ユニオンアセンブリ40aの作動の詳細な説明については,米国特許7,075,066を参照のこと。
次に,図9Bを参照すると,導電ユニオンアセンブリの別の態様が示されている。図9Bの態様においては,導電ユニオンアセンブリ40bはキャピラリー34の一部の中にマイクロタイト領域37を形成し,これを通ってサンプルが流れる。マイクロタイト領域37は,キャピラリーの2つの区域の間に接続部ないしシールを形成してもよい。マイクロタイト領域37は小さいデッドボリュームを有しており,ここでサンプル粒子は荷電される。1つの態様においては,マイクロタイト領域37は約5−50ナノリットルのデッドボリュームを有する。最も好ましい態様においては,マイクロタイト領域37は約10−15ナノリットルのデッドボリュームを有する。マイクロタイト領域37は好ましくはステンレス製である。導電ユニオンアセンブリ40bは,マイクロタイト領域37の周りに形成された導電ユニオン44を含む。導電ユニオン44に電圧をかけると,粒子がマイクロタイト領域37を通過する間に荷電される。
すなわち,イオン移動度分析装置20には,実質的に時間により変動しない速度に制御されたサンプルのナノフローが提供される。この点に関して,流速は,好ましくは名目上の速度から5%未満,より好ましくは2%未満,最も好ましくは1%未満の変動である。このことにより,イオン移動度分析装置20によって,より一貫性のある信頼できる分析を行うことが可能となる。
本明細書に引用される全ての特許および他の参考文献は,各参考文献の全体が個々に本明細書に参照として組み込まれるのと同じ程度に,表および図面を含め,その全体が本明細書に参照として組み込まれる。
当業者は,本発明は,記載される結果および利点,ならびに本明細書に固有のものを得るのによく適合していることを容易に理解するであろう。本明細書に好ましい態様の代表的なものとして記載される方法,変種および組成物は,例示的なものであって,本発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業者は,その改変および他の用途をなすであろう。これらの改変は本発明の精神の中に包含され,特許請求の範囲により定義される。
当業者には,本発明の範囲よび精神から逸脱することなく,本明細書に記載される本発明に対して,置換および改変をなしうることが明らかであろう。すなわち,そのような追加の態様も本発明および特許請求の範囲の範囲内である。
本明細書に例示的に記載されている発明は,本明細書に特定的に開示されていない任意の要素または限定なしでも適切に実施することができる。したがって,例えば,本明細書のそれぞれの場合について,"・・・を含む","本質的に・・・からなる"および"・・・
からなる"との用語は,互いに他の2つの用語のいずれかと置き換えることができる。本
明細書において用いた用語および表現は,説明の用語として用いるものであり,限定ではなく,そのような用語および表現の使用においては,示されかつ記載されている特徴またはその一部の同等物を排除することを意図するものではなく,特許請求の範囲に記載される本発明の範囲中で種々の変更が可能であることが理解される。すなわち,好ましい態様および任意の特徴により本発明を特定的に開示してきたが,当業者には本明細書に記載される概念の変更および変種が可能であり,そのような変更および変種も特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
さらに,発明の特徴および局面がマーカッシュグループの用語または他の代替物のグループの用語で記載されている場合,当業者は,本発明が,マーカッシュグループまたは他のグループのすべての個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関してもまた記載されていることを認識するであろう。
また,特に断らない限り,ある態様について種々の数値が与えられている場合,追加の態様は,任意の2つの異なる数値を範囲の終点としてとることにより記述される。そのような範囲もまた本明細書に記載される発明の範囲内である。
すなわち,追加の態様も本発明の範囲内であり,下記の特許請求の範囲内である。

Claims (13)

  1. 差異荷電粒子移動度分析用の装置であって,
    (a) サンプルをキャピラリーを通して運搬する1またはそれ以上のポンプ;
    (b) サンプルがキャピラリー内を流れるときに前記サンプルの粒子に荷電するイオン化装置;および
    (c) 前記サンプルについて荷電粒子の差異荷電粒子移動度分析を行うイオン移動度分析装置,
    を含む装置。
  2. さらに,差異荷電粒子移動度分析用のサンプルを前記1またはそれ以上のポンプに提供するオートサンプラーを含む,請求項1記載の装置。
  3. 前記サンプルはリポ蛋白質を含む,請求項1記載の装置。
  4. 前記1またはそれ以上のポンプは,サンプルをナノフローポンプに提供する高フローポンプを含み,前記ナノフローポンプはサンプルをキャピラリーに提供する,請求項1記載の装置。
  5. 高フローポンプはサンプルを1分間に15−25マイクロリットルの速度で送出し,およびナノフローポンプはサンプルを1分間に100−200ナノリットルの速度で送出する,請求項4記載の装置。
  6. 前記イオン化装置は,キャピラリーの一部の周りに導電ユニオンを含む,請求項5記載の装置。
  7. 前記導電ユニオンは,ここを通るサンプルに電荷を与え,このことによりサンプルの粒子を荷電する,請求項6記載の装置。
  8. 前記導電ユニオンは,キャピラリーの一部にマイクロタイト領域を形成し,ここを通るサンプルに電荷を与え,このことによりサンプルの粒子を荷電する,請求項7記載の装置。
  9. 前記マイクロタイト領域は,5−50ナノリットルのデッドボリュームを有する,請求項8記載の装置。
  10. 前記マイクロタイト領域は,10−15ナノリットルのデッドボリュームを有する,請求項9記載の装置。
  11. サンプルが,蛍光標識されたリポ蛋白質である,請求項1記載の装置。
  12. 前記蛍光標識されたリポ蛋白質が,蛍光プローブで標識されている,請求項11記載の装置。
  13. 前記蛍光プローブが,Alexa Fluor 488(登録商標)(カルボン酸,スクシンイミジルエステル混合アイソマー)またはフルオレセイン−5−EX,スクシンイミジルエステルである,請求項12記載の装置。
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