JP5953897B2 - リポ蛋白質の粒子径の決定法及びリポ蛋白質の粒子マーカ - Google Patents
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最近メタボリックシンドロームという言葉に合わせ超悪玉のリポ蛋白質が動脈硬化等の原因として良く取り上げられている。この超悪玉のリポ蛋白質とはIDLやsmall,dense LDLのことであり、専門の医師の間でも心筋梗塞のリスクファクターと認識されている。そして注目すべきことはこのIDLやsmall,dense LDLは、適切な高脂血症治療薬を使えば消失させることが出来るので、IDLやsmall,dense LDLの検出が重要といわれている。
この方法はリポ蛋白質を先ず荷電で分離して、リポ蛋白質を固定してから脂質染色をして、血中蛋白質の分画位置に合わせ陰極側からベータ(β)、プレベータ(pre−β)、アルファ(α)リポ蛋白質と呼ぶ分析法がある。この染色をする色素をコレステロール染色に変えればコレステロール分画測定法に、中性脂肪の染色をすれば中性脂肪分画測定法になる(特許文献3、特許文献4)。ただ、アガロースゲルまたはセルローズアセテート膜電気泳動法は、リポ蛋白質を荷電の順番で分析するので、粒子径の分析とは言えず、粒子の大きいプレβがより小さいβより早く泳動される点や大きな粒子がアガロースゲルの網目構造に留まったりするため分離能が悪いと言う欠点もある。
また非特許文献2に示した方法は、血中蛋白質のサイログロブリンやフェリチンをマーカとしてGGEでリポ蛋白質の粒子径を特定しているが、フェリチンを安定的に確保したり、使用するゲル板自体も特定のメーカの製品でその作成法などは公開されておらず再現できなかった。さらに、泳動後蛋白染色をしなければならないなど、誰でも簡単に確認試験できる状態ではなかった。
特許文献 2 特開平8−320313
特許文献 3 特開平11−230937
特許文献 4 特開2000−356641
特許文献 5 特開2003−28779
特許文献 6 特開2004−258014
非特許文献2 生物物理化学、Vol.44、303−307、2000
非特許文献3 J.Histochem Cytochem 2000,48,471−480
本願は、従来のリポ蛋白質の分析法において、被検体中のリポ蛋白質とほぼ同じ粒子径および電荷を持つ可視状態のリポ蛋白質の粒子マーカを作成し、この粒子マーカと被検体を同時にまたは並列的に電気泳動または分離し、電気泳動像または濃度図を比較検討することで、被検体中のリポ蛋白質の粒子径を求める方法とそれに使用するリポ蛋白質の粒子マーカを提供しょうとするものである。
リポ蛋白質の粒子径を求めるには、まず測ろうとする粒子を分離・分取しなければならない。我々は、ポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動法がリポ蛋白質の粒子径の順に分離されることに注目し、これに適合する可視状態のリポ蛋白質の粒子マーカを探した。非特許文献2にあるような生体蛋白質のサイログロブリンやフェリチンも実験の対象としたが、安定した純品が手に入りにくいことや安定した泳動像を得ること、泳動後蛋白染色する必要があること、その泳動像からの粒子径の測定も簡単ではなかった。
そこで我々は、生体蛋白物質とは違う安定な物理化学的物質でかつ泳動後染色しなくてもそのまま移動位置が分かる着色されたリポ蛋白質と同じ直径と同じ荷電を持つリポ蛋白質の粒子マーカを探した。
その中で金コロイド粒子(担体)や着色プラスチックス粒子ならリポ蛋白質の粒子に近いサイズのものが作れることに着目して研究を続けた。金コロイド粒子や着色プラスチックス粒子は、化学的には安定ではあるが固有の荷電を持っていないので電気泳動に適しない性質であることも分かった。
そこで我々は金コロイド粒子や着色プラスチックス粒子にアミノ基やニトロ基の導入など実験を繰り返した結果、リポ蛋白質粒子の性状に近づけることはできなかった。既に、金コロイド粒子にIgG等抗体を結合させる技術が非特許文献3に公開されており、我々も実際金コロイド粒子や着色プラスチックス粒子にIgG等抗体を結合させ、リポ蛋白質分析用の測定ゲルで電気泳動してみたが、泳動することは出来なかった。一般的に金コロイド粒子に標識抗体を結合させた隙間、いわゆるスペースの部分はウシ血清アルブミン(BSA)でブロッキングすることが日常的に行われている。金コロイド粒子やプラスチックス粒子に抗体を結合させた標識抗体は免疫学的測定法に良く使われている技術であるが、抗体の他BSAも結合しており実際の粒子径は分らずかつPAGEを支持体とする電気泳動法では分離できなかった。その原因は標識した時点で凝集塊を形成したかリポ蛋白質と異なる荷電であった可能性がある。
我々は適当なサイズの金コロイド粒子やプラスチックス粒子を選ぶことで、リポ蛋白質と同じ粒子径を持つマーカが作れる可能性を予測し研究を続けた結果、金コロイド粒子そのものの径が大きかった可能性があり、15から20nmの金コロイド粒子にアルブミンを結合したものが、リポ蛋白質粒子に最も近くかつリポ蛋白粒子の荷電と良く似ていることを見つけた。金コロイド粒子や着色プラスチックス粒子にアルブミン等蛋白質を結合させる方法は、一般的にイオン結合法や共有結合法がありそれぞれ結合力が異なり、その後の分離精製回収に影響があるので、実際の分離精製回収には注意を要する。
またここでは結合させる蛋白質としてアルブミンを取り上げたが、必ずしもアルブミンでなければならない理由はなく、分子量が小さく安定的ならその他の蛋白質例えばプレアルブミンや、α1アンチトリプシンなども使用できる。
本願発明を実施すれば、粒子径が分かっている粒子マーカを検体と同時または並列的に電気泳動を行い、同じ位置に泳動した検体のリポ蛋白質を粒子マーカと同じ粒子径を持つリポ蛋白質と認定することができる。
この物理的な粒子径は普遍的なものであり、同じ粒子径を持つリポ蛋白質は他にないことを意味する。本願発明の適用により今後電気泳動の濃度図のピーク位置が例えば25nmの粒子径を持つリポ蛋白質と具体的な数値で表現することができ、世界中が同じ尺度で研究及び治療効果を論じあえることができるようになり、結果的に医療や治療薬の評価が一層進むことが期待できる。
図1で具体的に説明する。(1)は被検体中のリポ蛋白質の濃度図(波形)であり、(2)(3)(4)はそれぞれ当該被検体のVLDL,LDL,HDLと呼ばれるリポ蛋白質である。(5)は粒子マーカ27nmのIDLの濃度図であり、これらを同一図の中に重ねて図示したものである。粒子マーカ27nmに重なった部分が被検体中の27nmの粒子径を持つリポ蛋白質と言うことができる。
y=−17.937x+30.372
より計算して25nmとなった。
被検体の泳動位置と何種類かの粒子マーカの泳動位置を比較検討することで、荷電と粒子の差はあるものの、被検体の泳動位置と一致する粒子マーカの直径をもってリポ蛋白質の粒子径を特定することができる。
(2) 被検体のVLDL
(3) 被検体のLDL
(4) 被検体のHDL
(5) 粒子マーカIDL
(6) 粒子マーカsmall,dense LDL
[図面の簡単な説明]
図2粒子マーカsmall,denseLDLの濃度図と被検体の濃度図を同一図面上に表示した例
Claims (5)
- ポリアクリルアミドゲルまたはアガロースゲルを支持体とする電気泳動法または高速液体クロマトグラフィー法でリポ蛋白質を分析するとき、10から25nmの粒子径を持つ金コロイド粒子または着色合成樹脂の小球に蛋白質を結合させたものを、分離精製用ポリアクリルアミドゲルや液体クロマトグラフィーで数種類に分離後回収し、粒子径を物理化学的に測定したものをリポ蛋白の粒子マーカとし、リポ蛋白質測定用のポリアクリルアミドゲルやアガロースゲルで電気泳動し、または高速液体クロマトグラフィーで分離し、それと同時または並列的に被検体である血清又は血漿中のリポ蛋白質をポリアクリルアミドゲルやアガロースゲルで電気泳動または高速液体クロマトグラフィーで分離し、リポ蛋白質の粒子マーカの泳動位置または分離位置とを比較し一致する部分をリポ蛋白質の粒子径とすることを特徴とするリポ蛋白質の粒子径の決定方法
- リポ蛋白質を分析する支持体は、試料ゲルと濃縮ゲルおよび3%の均一な分離ゲルを持つディスク電気泳動または濃度均一な分離ゲルをもつ平板スラブ型ポリアクリルアミドゲルまたは、密度勾配を持つグラジュエントゲルであり、ズダンブラックBで被検体中の脂質を前染色し泳動したものや泳動後脂質染色または蛋白染色を施したものまたは支持体が薄い平板アガロースゲルで被検体を電気泳動後リポ蛋白質を固定したあとファットレットやオイルレット等の脂質染色またはコレステロール染色を施したものについて、同時または並列的に泳動したリポ蛋白質の粒子マーカの泳動位置とを比較しリポ蛋白質の粒子径を特定することを特徴とする請求項1のリポ蛋白質の粒子径の決定方法
- 一定の粒子径を持つ金コロイド粒子または着色合成樹脂の小球は、その直径がおおよそ10nmから25nmであり、動物の塩基性蛋白質であるアルブミン、プレアルブミンまたはα1アンチトリプシンなどを吸着結合させ、粒子の総直径が20から30nmの間にあり、粒子の荷電がリポ蛋白質と同じマイナス荷電を帯びていることを特徴とする請求項1のリポ蛋白質の粒子径の決定方法に用いるためのリポ蛋白質の粒子マーカ
- 請求項3のリポ蛋白質の粒子マーカは、複数個の可視状態のリポタンパク質の粒子マーカであり、質量分析装置または電子顕微鏡により、粒子径を求め粒子サイズを数値で表記し、中央値画27nm±1nm、25nm±1nm及び24nm±1nmのものをそれぞれIDLマーカ、LDLマーカ、small、dense LDLマーカとすることを特徴とする請求項3のリポ蛋白質の粒子マーカ
- 被検体中のリポ蛋白質をポリアクリルアミドゲルディスクゲルまたは平板スラブポリアクリルアミドゲルまたは密度勾配を持つグラジュエントゲルまたはアガロースゲルやキャピラリー等で電気泳動を行いまたは高速液体クロマトグラフィーで分離分析し、測定結果を濃度図で表し、出現するリポ蛋白質の分画バンドを相対移動度RMまたは溶出時間で表す一方、同時または並列的に電気泳動または高速液体クロマトグラフィーで分離した請求項3または4記載のリポ蛋白質の粒子マーカを相対移動度RMや溶出時間で表し、被検体中のリポ蛋白質と当該粒子マーカの関係から、被検体中のリポ蛋白質の粒子径を決定する方法
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