JP5953897B2 - リポ蛋白質の粒子径の決定法及びリポ蛋白質の粒子マーカ - Google Patents

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Description

発明の詳細な説明
ヒトや動物の血清又は血漿中のリポ蛋白質の粒子径を求める方法およびリポ蛋白質の粒子マーカの製造に係る分野。
ヒトや動物は、食物中の中性脂肪やコレステロール等の脂質を小腸で吸収消化するが、そのままでは血液中に存在することは出来ず、アポ蛋白質を結合したリポ蛋白質として安定的に血液中に存在することができる。そのリポ蛋白質は色々な粒子径が混じり合った微細な脂質運搬体の総称であり、粒子径の大きいものよりカイロマイクロン、超低比重リポ蛋白質(VLDL)、中間比重リポ蛋白質(IDL)またはミッドバンド、低比重リポ蛋白質(LDL)、小粒子比重リポ蛋白質(small,dense LDL、小粒子LDL)、高比重リポ蛋白質(HDL)と呼ばれている。リポ蛋白質の粒子の直径は赤血球のおよそ1/70で10nmから100nm程の微小な粒子である。
一般的に知られている総コレステロール(T−CH)やLDLレステロール(LDL−C)、HDLコレステロール(HDL−C)さらに中性脂肪(TG)の測定法は、粒子状のリポ蛋白質を壊して中身のコレステロールや中性脂肪を化学的に定量しているものであり、リポ蛋白質粒子そのものを直接測定する測定法ではない。しかし生体内で、血液中の脂質の代謝はリポ蛋白質の分解・異化を中心に行われているから、VLDL、IDL、LDL、small,dense LDL、HDLというリポ蛋白質そのものを見ないと代謝や治療法の選択につながらない。リポ蛋白質そのものは極微小で非常に壊れやすいため現在も直接測定する方法がなく、コレステロール等の定量に頼るしかなかった。しかしT−CHやTGの量だけを観て治療すれば心筋梗塞などを予防できるというものでもなく、リポ蛋白質の性質所謂リポ蛋白の質的検査が必要である事は今も不変である。
最近メタボリックシンドロームという言葉に合わせ超悪玉のリポ蛋白質が動脈硬化等の原因として良く取り上げられている。この超悪玉のリポ蛋白質とはIDLやsmall,dense LDLのことであり、専門の医師の間でも心筋梗塞のリスクファクターと認識されている。そして注目すべきことはこのIDLやsmall,dense LDLは、適切な高脂血症治療薬を使えば消失させることが出来るので、IDLやsmall,dense LDLの検出が重要といわれている。
リポ蛋白質の測定法について、粒子状のリポ蛋白質を壊さないで測定する方法として、ポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動法(PAGE法)(特許文献1)がある。PAGE法は、リポ蛋白質の粒子径を測定する測定法ではないが、粒子径の順番にリポ蛋白質を分離・分析する方法である。PAGE法は、リポ蛋白質の染色剤と言われているズダンブラックBで血清または血漿中のリポ蛋白質を電気泳動前に染色し、その後濃縮ゲル、均一な分離ゲルの分子ふるい効果により粒子径の順番に分離分析され、VLDL、IDL、LDL、small,dense LDL、HDLに分離される。PAGE法の他にリポ蛋白質の荷電の違いを利用して分析するアガロースゲルまたはセルローズアセテート膜電気泳動法がある。
この方法はリポ蛋白質を先ず荷電で分離して、リポ蛋白質を固定してから脂質染色をして、血中蛋白質の分画位置に合わせ陰極側からベータ(β)、プレベータ(pre−β)、アルファ(α)リポ蛋白質と呼ぶ分析法がある。この染色をする色素をコレステロール染色に変えればコレステロール分画測定法に、中性脂肪の染色をすれば中性脂肪分画測定法になる(特許文献3、特許文献4)。ただ、アガロースゲルまたはセルローズアセテート膜電気泳動法は、リポ蛋白質を荷電の順番で分析するので、粒子径の分析とは言えず、粒子の大きいプレβがより小さいβより早く泳動される点や大きな粒子がアガロースゲルの網目構造に留まったりするため分離能が悪いと言う欠点もある。
また密度勾配型のグラジュエントゲル電気泳動(GGE)法は、支持体のゲル濃度が徐々に濃くなる形に作られており均一なゲルより正確にリポ蛋白質を粒子径の順に分離できると言われているが、使用するゲルの作成が難しく特定の研究室でしか実施されていなかった(非特許文献1)。非特許文献1に示されたゲルの詳細は公開されておらず再現は困難な状態にある。
また非特許文献2に示した方法は、血中蛋白質のサイログロブリンやフェリチンをマーカとしてGGEでリポ蛋白質の粒子径を特定しているが、フェリチンを安定的に確保したり、使用するゲル板自体も特定のメーカの製品でその作成法などは公開されておらず再現できなかった。さらに、泳動後蛋白染色をしなければならないなど、誰でも簡単に確認試験できる状態ではなかった。
高速液体クロマトグラフィ(HPLC)法もリポ蛋白質を粒子径の順に分析する方法として特許文献2に公開されているが、一旦リポ蛋白質を粒子径の順に分離したあと、コレステロールや中性脂肪を測定しているが、リポ蛋白質の粒子径を測定する方法ではない。
参考文献
特許文献 1 特開2005−121619
特許文献 2 特開平8−320313
特許文献 3 特開平11−230937
特許文献 4 特開2000−356641
特許文献 5 特開2003−28779
特許文献 6 特開2004−258014
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非特許文献2 生物物理化学、Vol.44、303−307、2000
非特許文献3 J.Histochem Cytochem 2000,48,471−480
リポ蛋白質が粒子状で血液中に存在し脂質の運搬に関与していることは良く知られており、その種類も多種類でしかもリポ蛋白質の代謝はリポ蛋白粒子の分解・異化が主体となっていること考えると、どのリポ蛋白質粒子がどれ程ありそれがどのように代謝されるかを知ることが重要である。先ずどんな粒子径をもつリポ蛋白質がどの位あるかを知ることで、どのリポ蛋白質が動脈硬化や心筋梗塞の発症に関与しているかも解明することができる。
本願は、従来のリポ蛋白質の分析法において、被検体中のリポ蛋白質とほぼ同じ粒子径および電荷を持つ可視状態のリポ蛋白質の粒子マーカを作成し、この粒子マーカと被検体を同時にまたは並列的に電気泳動または分離し、電気泳動像または濃度図を比較検討することで、被検体中のリポ蛋白質の粒子径を求める方法とそれに使用するリポ蛋白質の粒子マーカを提供しょうとするものである。
特許文献1のPAGE法では、VLDLとHDLの中間位に出るリポ蛋白質を特定するため、相対移動度RM値が取りいれられている。相対移動度RM値とは、PAGEの濃度図において、VLDLのピーク位置を「0」とし、HDLのピーク位置を「1」としたとき、その間に出現する他のリポ蛋白質を相対比で表現する方法である。PAGE法は泳動の条件例えば室温、試薬の温度、印加する電圧、泳動槽の形・大きさ等の条件でその移動度は変わるので、相対移動度RMの表現は、ある位置に分離したリポ蛋白質を特定する方法としては優れているものの、前述のように測定条件が変ればその数値も変るので、特定の粒子径を持つリポ蛋白質を指す普遍的なものではない。
リポ蛋白質の粒子径は、物理的な数値であるので測定法が変わっても不変で、特定のリポ蛋白質を表す言葉として最適であり、今後どの粒子径のリポ蛋白質がどのように疾患に係っているか、治療薬がどのように作用してどの程度改善されたのか等の研究や診療に活用される。
リポ蛋白質の粒子径を求めるには、まず測ろうとする粒子を分離・分取しなければならない。我々は、ポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動法がリポ蛋白質の粒子径の順に分離されることに注目し、これに適合する可視状態のリポ蛋白質の粒子マーカを探した。非特許文献2にあるような生体蛋白質のサイログロブリンやフェリチンも実験の対象としたが、安定した純品が手に入りにくいことや安定した泳動像を得ること、泳動後蛋白染色する必要があること、その泳動像からの粒子径の測定も簡単ではなかった。
そこで我々は、生体蛋白物質とは違う安定な物理化学的物質でかつ泳動後染色しなくてもそのまま移動位置が分かる着色されたリポ蛋白質と同じ直径と同じ荷電を持つリポ蛋白質の粒子マーカを探した。
その中で金コロイド粒子(担体)や着色プラスチックス粒子ならリポ蛋白質の粒子に近いサイズのものが作れることに着目して研究を続けた。金コロイド粒子や着色プラスチックス粒子は、化学的には安定ではあるが固有の荷電を持っていないので電気泳動に適しない性質であることも分かった。
そこで我々は金コロイド粒子や着色プラスチックス粒子にアミノ基やニトロ基の導入など実験を繰り返した結果、リポ蛋白質粒子の性状に近づけることはできなかった。既に、金コロイド粒子にIgG等抗体を結合させる技術が非特許文献3に公開されており、我々も実際金コロイド粒子や着色プラスチックス粒子にIgG等抗体を結合させ、リポ蛋白質分析用の測定ゲルで電気泳動してみたが、泳動することは出来なかった。一般的に金コロイド粒子に標識抗体を結合させた隙間、いわゆるスペースの部分はウシ血清アルブミン(BSA)でブロッキングすることが日常的に行われている。金コロイド粒子やプラスチックス粒子に抗体を結合させた標識抗体は免疫学的測定法に良く使われている技術であるが、抗体の他BSAも結合しており実際の粒子径は分らずかつPAGEを支持体とする電気泳動法では分離できなかった。その原因は標識した時点で凝集塊を形成したかリポ蛋白質と異なる荷電であった可能性がある。
そこで血中で最も小さく大量に存在しかつ安定である動物のアルブミンに注目し、金コロイド粒子や着色プラスチックス粒子に結合させ泳動してみたがこれも泳動されなかった。非特許文献3には、1.4nmの金コロイド粒子にアルブミンが3個結合し、これだけでほぼ10nmの大きさになると記載されている。
我々は適当なサイズの金コロイド粒子やプラスチックス粒子を選ぶことで、リポ蛋白質と同じ粒子径を持つマーカが作れる可能性を予測し研究を続けた結果、金コロイド粒子そのものの径が大きかった可能性があり、15から20nmの金コロイド粒子にアルブミンを結合したものが、リポ蛋白質粒子に最も近くかつリポ蛋白粒子の荷電と良く似ていることを見つけた。金コロイド粒子や着色プラスチックス粒子にアルブミン等蛋白質を結合させる方法は、一般的にイオン結合法や共有結合法がありそれぞれ結合力が異なり、その後の分離精製回収に影響があるので、実際の分離精製回収には注意を要する。
またここでは結合させる蛋白質としてアルブミンを取り上げたが、必ずしもアルブミンでなければならない理由はなく、分子量が小さく安定的ならその他の蛋白質例えばプレアルブミンや、α1アンチトリプシンなども使用できる。
工業的に作られた金コロイド粒子は田中貴金属工業(株)(東京)から「G1メディカル」(金クエン酸コロイド)として何種類かが市販されているし、プラスチックス粒子もPolystyrene nanospheres(Microspheres−Nanospheres a Corpuscular company,New York)として販売されているが、電子顕微鏡レベルで観察すると円形ばかりではなく楕円形のものも混じっていた。例えば15nmのサイズと言っても、実際は15nmを中心値とした一定の分散がありかつ蛋白を結合すると粒子径も変わるので、そのままではリポ蛋白質の粒子径マーカとはならないことがわかり、作成した蛋白質標識金コロイド粒子やプラスチックス粒子をさらに精製する必要があった。
蛋白質標識マーカの精製は、一般的に蛋白質回収法として知られている液体クロマトグラフィーおよびポリアクリルアミドゲルを選び試行錯誤で回収実験した結果、色々なサイズのリポ蛋白質の粒子マーカを選択的に回収することに成功し、リポ蛋白分析用ポリアクリルアミドゲルディスクゲルで電気泳動した結果、同時に泳動した検体中のリポ蛋白質と実によく似た移動度を示すことが分かり、得られた粒子マーカの粒子径の測定を如何に成すべきかが次の課題となった。そこで我々は特許文献5に記載された光散乱技術を用いる粒子径の測定装置、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置Partica LA‐950V2(堀場製作所)を用いる事で精製したサイズマーカの分布および粒子径を測定した。その結果、分布波形のピーク値が27nm、25nm、23nmである粒子径の粒子マーカがリポ蛋白質の粒子マーカに最適であることを確認しリポ蛋白質の粒子マーカ「リポ球」と名付けた。
作成した粒子マーカの粒子径の測定は走査型電子顕微鏡でも実施し、その粒子サイズを確認した。粒子マーカの粒子径は製造により多少変わるので製造ロット毎に散乱式粒子径分布測定装置および電子顕微鏡で確認する必要がある。
この粒子マーカ「リポ球」と被検検体とをリポ蛋白質分析用ポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動法で同時または並列的に泳動し、特許文献6の画像解析法を用いて作成した濃度図から相対移動度を求めると、RM0.188のIDL(ミッドバンド)の位置にくる粒子マーカの粒子径は27nmであり、RM0.30のLDLと一致する粒子マーカの粒子径は25nm、RM0.411のsmall,dense LDLと一致する粒子マーカの粒子径は23nmであった。アガロースゲル電気泳動法やHPLCの分析結果を相対移動度で表す分析方法(特許文献2、特許文献4)でも、「リポ球」を利用することで、リポ蛋白質を粒子径で表現することは容易に出来る。なお粒子マーカと被検検体を同時に電気泳動または分離するという意味は、粒子マーカと被検検体を泳動前に混合したものを被検検体とし泳動または分離する方法、粒子マーカと被検検体の測定ゲルは違うが同じ泳動糟で泳動する方法、粒子マーカと被検検体を同じ支持体上の別のレーンで泳動する方法等を包む。
今まで可視状態の粒子を強調してきたが、使用法によっては可視状態のリポ蛋白質の粒子マーカでなければならない理由はない。例えば透明のプラスチック粒子にアルブミンやその他蛋白質の断片を結合しているので、電気泳動後またはHPLC分離後、粒子マーカを蛋白染色または特定の波長で蛋白質を検知してその位置に特定の粒子径を持つ物質があると認定することも可能である。
血液中を流れているリポ蛋白質は確実に粒子状で存在している。しかしこの粒子状を理論づけて説明できる分析法は今までなかった。現在世界中で広く使用されている測定法は、前述のように粒子径の順番で回収したリポ蛋白質の粒子を壊してその中の脂質であるT−CHやTGを測定している。また、LDL−C、HDL−Cの測定とは、リポ蛋白質の内LDLやHDLを物理的または化学的に分取してその中のT−CHを測定するものであって、リポ蛋白質そのものを直接測定しているものではない。
現在脂質の質の測定法としてポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動法(PEGE)が一般的に脂質の質の検査法として知られているが、VLDL、IDL(ミッドバンド)、LDL、small,dense LDL、HDLがあるかないかまたは多いか少ないかを判定するだけに使われていた。また最近相対移動度RM値で特定の異常なリポ蛋白質を認定しようとしているが、あくまでも相対移動度であって固有の粒子径を持ったリポ蛋白質を指しているわけではない。泳動条件が変われば相対移動度RMも変り特定の粒子径を持ったリポ蛋白質であると言い難い。
本願発明を実施すれば、粒子径が分かっている粒子マーカを検体と同時または並列的に電気泳動を行い、同じ位置に泳動した検体のリポ蛋白質を粒子マーカと同じ粒子径を持つリポ蛋白質と認定することができる。
この物理的な粒子径は普遍的なものであり、同じ粒子径を持つリポ蛋白質は他にないことを意味する。本願発明の適用により今後電気泳動の濃度図のピーク位置が例えば25nmの粒子径を持つリポ蛋白質と具体的な数値で表現することができ、世界中が同じ尺度で研究及び治療効果を論じあえることができるようになり、結果的に医療や治療薬の評価が一層進むことが期待できる。
さらに本願発明は、PAGEだけでなく、キャピラリー電気泳動法、アガロースゲルやセルローズアセテート膜電気泳動法さらにHPLC法によるリポ蛋白質の分析法に適用し、移動度の直接比較や相対比較により粒子径の特定にも同様に使用できる特徴がある。
また今までPAGEでどれがIDLでどれがsmall,dense LDLかの判定も測定する技術者に任されていたが、今後は粒子マーカと対比し、粒子径の数値で表現することができ結果の信頼性が向上する。
粒子マーカIDL 粒子マーカsmall,dense LDL
粒子マーカ「リポ球」の内、直径27nmにピークを持つIDL(ミッドバンド)マーカをポリアクリルアミドゲルを支持体とする電気泳動法すなわち、濃縮ゲルおよび3%の均一な分離ゲルを持つディスク電気泳動法のリポフォーASキット(株)明日香特殊検査研究所)を用いて泳動し、同時に被検体中のリポ蛋白質をズダンブラックBで前染色し泳動したものを画像からの濃度定量法(特許文献6)で濃度図に表したものについて、VLDLとHDLそれぞれのピーク位置を正確に合わせ、粒子マーカ27nmのIDLの泳動位置と一致した被検体の一部分を27nmの粒子径をもつリポ蛋白質と決定した。泳動位置の比較は、相対移動度RM値による比較でも同様に決定できる。
図1で具体的に説明する。(1)は被検体中のリポ蛋白質の濃度図(波形)であり、(2)(3)(4)はそれぞれ当該被検体のVLDL,LDL,HDLと呼ばれるリポ蛋白質である。(5)は粒子マーカ27nmのIDLの濃度図であり、これらを同一図の中に重ねて図示したものである。粒子マーカ27nmに重なった部分が被検体中の27nmの粒子径を持つリポ蛋白質と言うことができる。
図2は作成した粒子マーカの内small,dense LDLをポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動法で泳動し、画像からの濃度定量法(特許文献6)で濃度図(波形)に表したものの一例である。(1)は同時または並列的に泳動した被検体中の濃度波形であり、(2)(3)(4)はそれぞれVLDL,LDL,HDLの濃度波形である。(6)は粒子マーカ23nmのsmall,dense LDLの濃度図で、被検体の濃度図とVLDLとHDLのそれぞれピーク位置を正確に合わせた上で、同じ図面上に重ね合わせて描いた図であり、重なった部分が被検体中の23nmの粒子径を持つsmall,dense LDLと決定した。
実施例1のIDLの粒子径が27nm、実施例2のsmall,dense LDLの粒子径が23nmであり、それぞれ相対移動度(VLDLのピーク位置を0、HDLのピーク位置を1としたときのIDL、small,dense LDLの移動度)RMはそれぞれ0.188、0.411となる。また被検体のLDLのピーク位置のRMは0.30であった。IDLの粒子径が27nm、small,dense LDLの粒子径が23nmであるのでその中間位にある被検体のLDL(RM0.30)のピーク位置の粒子径は
y=−17.937x+30.372
より計算して25nmとなった。
アガロースゲルを用いる分析法は、原理的にリポ蛋白質を粒子径の順に分析しておらずリポ蛋白粒子の表面荷電で分離している。但し本願粒子マーカを被検体と同じゲル上に塗布し泳動すると粒子マーカの荷電位置に泳動される。
被検体の泳動位置と何種類かの粒子マーカの泳動位置を比較検討することで、荷電と粒子の差はあるものの、被検体の泳動位置と一致する粒子マーカの直径をもってリポ蛋白質の粒子径を特定することができる。
高速液体クロマトグラフィー(HPLCのゲルろ過法)でもリポ蛋白質を分析できる。被検検体の代わりに本願粒子マーカを分析すると、粒子径の大きいものから小さい順番に溶出される。粒子マーカと被検検体の溶出時間を比較することで被検検体のリポ蛋白質の粒子径を特定することができる。
実施例1〜6は、被検検体と本願粒子マーカを別のゲルや同じ支持体の別のレーンで泳動または分離したが、予め被検検体と本願粒子マーカを適当に混合して一緒に泳動または分離することで、被検検体の濃度図の他に着色した本願粒子マーカの位置が同時に観察または濃度図として表現することができる。この場合は、同じゲルまたは同じレーン内で被検検体と粒子マーカを色調の違いで被検検体中のリポ蛋白質の粒子径を特定することができる。
(1) 被検体の濃度図
(2) 被検体のVLDL
(3) 被検体のLDL
(4) 被検体のHDL
(5) 粒子マーカIDL
(6) 粒子マーカsmall,dense LDL
[図面の簡単な説明]
図1粒子マーカIDLの濃度図と被検体の濃度図を同一図面上に表示した例
図2粒子マーカsmall,denseLDLの濃度図と被検体の濃度図を同一図面上に表示した例

Claims (5)

  1. ポリアクリルアミドゲルまたはアガロースゲルを支持体とする電気泳動法または高速液体クロマトグラフィー法でリポ蛋白質を分析するとき、10から25nmの粒子径を持つ金コロイド粒子または着色合成樹脂の小球に蛋白質を結合させたものを、分離精製用ポリアクリルアミドゲルや液体クロマトグラフィーで数種類に分離後回収し、粒子径を物理化学的に測定したものをリポ蛋白の粒子マーカとし、リポ蛋白質測定用のポリアクリルアミドゲルやアガロースゲルで電気泳動し、または高速液体クロマトグラフィーで分離し、それと同時または並列的に被検体である血清又は血漿中のリポ蛋白質をポリアクリルアミドゲルやアガロースゲルで電気泳動または高速液体クロマトグラフィーで分離し、リポ蛋白質の粒子マーカの泳動位置または分離位置とを比較し一致する部分をリポ蛋白質の粒子径とすることを特徴とするリポ蛋白質の粒子径の決定方法
  2. リポ蛋白質を分析する支持体は、試料ゲルと濃縮ゲルおよび3%の均一な分離ゲルを持つディスク電気泳動または濃度均一な分離ゲルをもつ平板スラブ型ポリアクリルアミドゲルまたは、密度勾配を持つグラジュエントゲルであり、ズダンブラックBで被検体中の脂質を前染色し泳動したものや泳動後脂質染色または蛋白染色を施したものまたは支持体が薄い平板アガロースゲルで被検体を電気泳動後リポ蛋白質を固定したあとファットレットやオイルレット等の脂質染色またはコレステロール染色を施したものについて、同時または並列的に泳動したリポ蛋白質の粒子マーカの泳動位置とを比較しリポ蛋白質の粒子径を特定することを特徴とする請求項1のリポ蛋白質の粒子径の決定方法
  3. 一定の粒子径を持つ金コロイド粒子または着色合成樹脂の小球は、その直径がおおよそ10nmから25nmであり、動物の塩基性蛋白質であるアルブミン、プレアルブミンまたはα1アンチトリプシンなどを吸着結合させ、粒子の総直径が20から30nmの間にあり、粒子の荷電がリポ蛋白質と同じマイナス荷電を帯びていることを特徴とする請求項1のリポ蛋白質の粒子径の決定方法に用いるためのリポ蛋白質の粒子マーカ
  4. 請求項3のリポ蛋白質の粒子マーカは、複数個の可視状態のリポタンパク質の粒子マーカであり、質量分析装置または電子顕微鏡により、粒子径を求め粒子サイズを数値で表記し、中央値27nm±1nm、25nm±1nm及び24nm±1nmのものをそれぞれIDLマーカ、LDLマーカ、small、dense LDLマーカとすることを特徴とする請求項3のリポ蛋白質の粒子マーカ
  5. 被検体中のリポ蛋白質をポリアクリルアミドゲルディスクゲルまたは平板スラブポリアクリルアミドゲルまたは密度勾配を持つグラジュエントゲルまたはアガロースゲルやキャピラリー等で電気泳動を行いまたは高速液体クロマトグラフィーで分離分析し、測定結果を濃度図で表し、出現するリポ蛋白質の分画バンドを相対移動度RMまたは溶出時間で表す一方、同時または並列的に電気泳動または高速液体クロマトグラフィーで分離した請求項3または4記載のリポ蛋白質の粒子マーカを相対移動度RMや溶出時間で表し、被検体中のリポ蛋白質と当該粒子マーカの関係から、被検体中のリポ蛋白質の粒子径を決定する方法
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