JP7062324B1 - 脂質タンパク質複合体を含む多検体試料を分析するための電気泳動用スラブ型ポリアクリルアミドゲル及びその方法 - Google Patents

脂質タンパク質複合体を含む多検体試料を分析するための電気泳動用スラブ型ポリアクリルアミドゲル及びその方法 Download PDF

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Abstract

【課題】医療機関等の臨床診断及び大学等の基礎研究において血中リポタンパク質をはじめとする脂質タンパク質複合体を含む多検体試料を迅速、簡便、安価、高精度かつ取扱容易に分析可能な電気泳動用スラブ型ポリアクリルアミドゲル及びその分析法を提供する。【解決手段】脂質タンパク質複合体を含む試料をズダンブラックBと非イオン性界面活性剤を含む前染色液で前染色した後、緩衝剤としてトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩を含み複数のウェルを設けた上部ポリアクリルアミドゲルと、緩衝剤としてイミダゾール塩酸塩を含む下部ポリアクリルアミドゲルからなるスラブ型ポリアクリルアミドゲルに試料をローディングし、ヒスチジン、グリシン、フェニルアラニンのいずれか1つ及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含む泳動槽溶液中にて電気泳動を行う。【選択図】図1

Description

本発明は、電気泳動用ゲル及びその分析方法に関する。
ヒト血液中にはカイロミクロン(CM)、超低比重リポタンパク質(VLDL)、中間比重リポタンパク質(IDL)、低比重リポタンパク質(LDL)及び高比重リポタンパク質(HDL)などのリポタンパク質が存在している。この中でもLDLに含まれるコレステロール(LDL-c)は悪玉コレステロールとして知られている。またIDLや小粒子低比重リポタンパク質(small dense LDL)中のコレステロールは超悪玉コレステロールとも言われ動脈硬化や心筋梗塞の原因物質と考えられている。
従来、動脈硬化や心筋梗塞のリスク予測や治療効果の分析目的で、このリポタンパク質を解析するための様々な測定方法が開発されてきた。中でもポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE法)やアガロースゲル電気泳動法(AGE法)によるリポタンパク質の分離・分析は1960年代から行われており、装置や試薬などの経費が安価であること、取扱が容易であり分析時間も短時間ですむことなど多数の利点をもつ。これまでPAGE法では主にディスク電気泳動が用いられてきた(例えば非特許文献1参照)。
ディスク電気泳動法ではポリアクリルアミドが注入された円形ガラス管に血清試料と染色液の混合物をローディングし、電気泳動を行う。VLDL、LDL、HDLの分離は良好であり、各リポタンパク質に由来するバンドを分析することにより動脈硬化や脂質異常症の診断に応用が可能であるとして、保険適用の一般臨床検査にも使用されている(例えば非特許文献2参照)。
しかし、ディスク電気泳動では円形ガラス管1本につき1検体しか解析できないなど、同一条件下での検体間比較や多検体処理を行う上で限界がある。さらに高分子量のリポタンパク質を泳動するためにゲル中のアクリルアミド濃度が低く設定されていることから物理的に軟弱であり、ゲル中のリポタンパク質を取り出して解析することやゲル中のリポタンパク質を膜へ転写して抗体を用いたウエスタンブロット解析することなどは困難であった。
一方、複数のリポタンパク質を同時に解析可能な従来のスラブ型PAGE電気泳動法では、ディスク電気泳動に比べて泳動時間が長いことや各リポタンパク質のバンドがスマイリングやスメアになるなど明瞭なバンドが得られない問題が生じていた(例えば非特許文献3参照)。
なお、上記電気泳動による分析法に加えて、血中リポタンパク質の分析法として高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)が知られている。HPLC法では、主にゲル濾過カラムやイオン交換カラムを用いて血清・血漿中のリポタンパク質を粒子サイズや電荷に応じて分画することにより分離・分析を行う。HPLC法では従来分析が困難だったCMを解析可能であること、分離したリポタンパク質の分取が可能なこと、また定量性に優れているなどの利点があり、現在国内外で基礎研究及び臨床検査に広く用いられている(例えば非特許文献4参照)。一方でHPLC装置自体が高価であり広い設置場所が必要なこと、安定して運用するために定期的なメンテナンスが必要であること、オペレーターが操作にある程度習熟している必要があること、分析を外注する場合時間や費用がかかることなどの欠点もあげられる。
特開2013-234981号公報 特表2017-504038号公報 特許第6019288号公報
新生化学実験講座4 脂質I 中性脂質とリポタンパク質 206-217 井上郁夫:リポフォー「キーワードでわかるメタボリックシンドローム」中外医学社 161-163, 2008 Singh et al., Lipids in Health and Disease 7:47, 2008 Yamashita et al., J Atheroscler Thromb 28, 974-996, 2021
本発明は上記の課題に鑑みて、医療機関等の臨床診断及び大学等の基礎研究において血中リポタンパク質をはじめとする脂質タンパク質複合体を含む多検体試料を迅速、簡便、安価、高精度かつ取扱容易に分析可能な電気泳動用スラブ型ポリアクリルアミドゲル及びその分析法を提供する。
本発明では、脂質タンパク質複合体を含む多検体試料をローディングするための複数のウェルを設け、緩衝剤としてトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩を含む上部ポリアクリルアミドゲルと、緩衝剤としてpHが8.0~8.6のイミダゾール塩酸塩を含み、脂質タンパク質複合体をそのサイズ及び電荷に応じて分離するための下部ポリアクリルアミドゲルを備えた電気泳動用スラブ型ポリアクリルアミドゲルが提供される。
また、本発明の別の観点によれば前記スラブ型ポリアクリルアミドゲルを電気泳動するための泳動槽溶液中にヒスチジン、グリシン、フェニルアラニンのいずれか1つ及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含む脂質タンパク質複合体を分析するための方法が提供される。
さらには、前記スラブ型ポリアクリルアミドゲルの前記上部ポリアクリルアミドゲルに多検体試料をローディングする前にズダンブラックBと非イオン性界面活性剤を含む前染色液で前記脂質タンパク質複合体を前染色する手順を含む脂質タンパク質複合体を分析するための方法が提供される。
本発明によれば、前記スラブ型ポリアクリルアミドゲル及び前記脂質タンパク質複合体を分析するための方法を用いることにより、脂質タンパク質複合体を含む多検体試料を迅速、簡便、安価、高精度かつ取扱容易で、基礎研究及び臨床検査への応用が可能なレベルで分析することが可能となる。上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
図1は本発明の電気泳動用スラブ型ポリアクリルアミドゲルの実施例1の結果を示す図である。試料としてヒト血清が用いられている。 図2は本発明の電気泳動用スラブ型ポリアクリルアミドゲルの実施例2の結果を示す図である。泳動槽溶液として実施例1で使用されるトリス-ヒスチジンバッファに代えて、トリス-グリシンバッファを用いた。 図3は本発明の電気泳動用スラブ型ポリアクリルアミドゲルの実施例3の結果を示す図である。泳動槽溶液として実施例1で使用されるトリス-ヒスチジンバッファに代えて、トリス-フェニルアラニンバッファを用いた。 図4は本発明の電気泳動用スラブ型ポリアクリルアミドゲルの実施例4の結果を示す図である。試料としてヒト線維芽細胞の細胞膜画分と細胞質画分が用いられている。 図5は本発明の電気泳動用スラブ型ポリアクリルアミドゲルの比較例1の結果を示す図である。下部ポリアクリルアミドゲルに含まれる緩衝液に実施例で使用されるイミダゾール塩酸塩に代えて、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩を用いた。 図6は本発明の電気泳動用スラブ型ポリアクリルアミドゲルの比較例2の結果を示す図である。泳動槽溶液として実施例1で使用されるトリス-ヒスチジンバッファに代えて、ゲル電気泳動で一般的に使用されるトリス-ホウ酸バッファを用いた。 図7は本発明の電気泳動用スラブ型ポリアクリルアミドゲルの比較例3の結果を示す図である。下部ポリアクリルアミドゲルに含まれる緩衝剤のイミダゾール塩酸塩のpHを実施例で使用される8.0から7.0へと変更した。 図8は本発明の電気泳動用スラブ型ポリアクリルアミドゲルの比較例4の結果を示す図である。下部ポリアクリルアミドゲルに含まれる緩衝剤のイミダゾール塩酸塩のpHを実施例で使用される8.0から8.6へと変更した。 図9は本発明の電気泳動用スラブ型ポリアクリルアミドゲルの比較例5の結果を示す図である。脂質タンパク質複合体を前染色するための前染色液に加える非イオン性界面活性剤の種類と濃度を検討した。
<実施形態>
本発明に係る電気泳動用ポリアクリルアミドゲル、泳動槽溶液及び前染色液の作製方法の一実施形態、並びに当該ゲルを用いた脂質タンパク質複合体を分析するための方法の一実施形態を以下に説明する。
(1)電気泳動用ポリアクリルアミドゲル
本発明に係るポリアクリルアミドゲルは、サンプルをローディングするための複数のウェルを設け、脂質タンパク質複合体をそのサイズ及び電荷によって分離するための上部ポリアクリルアミドゲル(以下「上部ゲル」と略す)と、当該上部ゲルよりも高い濃度のアクリルアミドを含み、脂質タンパク質複合体をそのサイズ及び電荷によってさらに分離するための下部ポリアクリルアミドゲル(以下「下部ゲル」と略す)とを有する。特に本実施形態1~3においては、脂質タンパク質複合体としてヒト血清リポ蛋白質を試料とするが、この場合上部ゲルのアクリルアミド濃度は前記血清に含まれるVLDL、LDL及びHDLの全てをウェルからゲル中に流入させうる濃度となっている。このアクリルアミド濃度が高すぎる場合、ポリアクリルアミドゲルの網目が小さいためにVLDL、LDL及びびHDLをウェルからゲル中に流入させることができない。本実施形態1~3においては、LDL及びHDLは上部ゲルを泳動したあと下部ゲルに流入し、さらに分離されるが、VLDLは下部ゲルのアクリルアミド濃度を高く設定しているために下部ゲルに流入できない。これによりLDL及びHDLとVLDLとの間で十分な分離が行われる。
すなわち本発明において上部ゲルを設ける主な効果としては前染色した試料をローディングするためのウェル構造を提供すること及び下部ゲルとのアクリルアミド濃度差を利用して粒子サイズや形状に応じた脂質タンパク質複合体の分離を行うことの2つがあげられる。
なお、本発明に係るポリアクリルアミドゲルには、上部ゲル及び下部ゲルとはポリアクリルアミド濃度の異なる第3のゲル(層)を含み得る。さらには、上部ゲル又は下部ゲルもしくはその両方に一定の濃度差の間で連続的なアクリルアミド濃度勾配をもつグラディエントゲルを用いることもできる。
また、本発明に係るポリアクリルアミドゲルにおけるポリアクリルアミドとは、実施例に示すようにアクリルアミドモノマーとN, N'-エチレンビスアクリルアミドとの混合物をいうが、アクリルアミドモノマーと架橋して分枝状の分子構造を形成できる架橋剤については、特にN, N'-エチレンビスアクリルアミドに限定されるわけではない。このような化合物の具体例として、N, N'-メチレンビスアクリルアミド、1,4-ジアクリロイルピペラジン、N, N'-ジアリルタータジアミド、N, N'-ビス(アクリロイル)シスタミンなどが挙げられる。
本実施例1~3では分析試料として、ヒト血清中リポタンパク質を挙げて説明を行うが、試料はヒト血清中リポタンパク質に限定されるものではなく、当該ポリアクリルアミドゲルを使用して分離することができる脂質タンパク質複合体を含む物質である。このような試料の具体例として、ヒト及び動物組織抽出物、ヒト及び動物体液、培養細胞抽出物、精製脂質タンパク質複合体、金属を含む粒子などが挙げられる。例えば、表面にアルブミン吸着させた金コロイド粒子なども前記金属を含む粒子に含まれる。本実施例4では分析試料として、ヒト線維芽細胞MRC-5から抽出した細胞膜画分及び細胞質画分を用いており、膜画分のレーンでズダンブラック染色された脂質タンパク質複合体の泳動が認められる。
本発明に係るポリアクリルアミドゲルは非変性ゲルである。非変性ゲルとはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などのイオン性界面活性剤やグアニジン塩酸塩や尿素などのタンパク質変性剤を含まないポリアクリルアミドゲルをいう。これらのイオン性界面活性剤やタンパク質変性剤は試料中の脂質タンパク質複合体の構造を破壊する恐れがある。よって本発明ではポリアクリルアミドゲル、泳動槽溶液及び前染色液には上記変性剤等を含まない。
非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析はネイティブPAGEとも呼ばれ一般的に生物試料の分析に用いられているが、特に血清リポタンパク質を非変性ポリアクリルアミドゲルで分析する上で、泳動にともなって各リポタンパク質のバンドがスマイリングやスメアなど歪む問題が生じていた。本願発明者らは、ポリアクリルアミドゲル、泳動槽溶液及び前染色液の組成やpHに創意工夫を重ねることにより、上記スマイリングやスメアなどの泳動像の歪みが生じない脂質タンパク質複合体のスラブ型非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動法の開発に成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るスラブ型非変性ポリアクリルアミドゲルは、脂質タンパク質複合体を含む多検体試料をローディングするための上部ゲルに緩衝剤としてトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩を含み、脂質タンパク質複合体をそのサイズ及び電荷によってさらに分離するための下部ゲルに緩衝剤としてイミダゾール塩酸塩を含む点に特徴がある。
前記上部ゲルに、緩衝剤としてトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩の代わりに下部ゲルで使用するイミダゾール塩酸塩を用いた場合、低濃度のポリアクリルアミドゲルではその強度が不十分となり、試料をローディングする前にウェルが変形・破損したりウェル内に餅状の上部ゲル破片が流入するなどして著しく実用性を欠く。
すなわち本発明において上部ゲルにトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩を使用する効果としては、低濃度のポリアクリルアミドゲルである上部ゲルのウェル構造を維持すること及びこれにより歪みのない泳動像を得ることが挙げられる。
なお、本実施形態に係るポリアクリルアミドゲルは取扱易さと使用する試薬量の経済性から勘案して、縦7cm×横9cm程度であって、ゲルの厚みが1mm程度の大きさであるが、本発明におけるポリアクリルアミドゲルは、支持体としてその強度が維持される範囲においてそのサイズに特段の制限はない。すなわち本発明の効果は使用するポリアクリルアミドゲルの大きさには依存せず、その分析目的や使用する電気泳動装置等の大きさに応じて適宜選択することが可能である。
本実施形態におけるポリアクリルアミドゲルは、一般的に使用されている電気泳動装置の一対の電極間に配置され、電圧印加によりその内部に電流が流れる。本実施形態では、一対の電極の一方(陰極)は、本実施形態1におけるポリアクリルアミドゲルよりも上方(上部ゲル側)に配置され、また他方の電極(陽極)は、当該ゲルよりも下方(下部ゲル側)に配置される。そして陽極側と陰極側の電極の間には、陽極側泳動槽溶液、下部ゲル、上部ゲル、陰極側泳動槽溶液の向きで電流が流れるようになっている。
本実施形態における非変性ポリアクリルアミドゲルに使用される上部ゲルは、そのpHが8.0~8.6の範囲に調整されている。より好ましくは、pH8.0~8.2の範囲に調整され、さらには一例としてpH8.0に調整されている。
また、本実施形態における上部ゲルはポリアクリルアミド濃度が2.7~3.4%の範囲に調整されている。より好ましくはポリアクリルアミド濃度が3.0~3.2%の範囲に調整され、さらには一例としてポリアクリルアミド濃度が3.0%に調整されている。
また、本実施形態における上部ゲルは緩衝剤として、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩を含む。その濃度は0.5~1.5Mの範囲に調整されており、より好ましくは1.0~1.5Mの範囲に調整され、さらには一例として1.25Mに調整されている。
本実施形態における非変性ポリアクリルアミドゲルに使用される下部ゲルは、そのpHが8.0~8.6の範囲に調整されている。より好ましくは、pH8.0~8.2の範囲に調整され、さらには一例としてpH8.0に調整されている。
また、本実施形態における下部ゲルはポリアクリルアミド濃度が3.0~8.0%の範囲に調整されている。より好ましくはポリアクリルアミド濃度が4.0~6.0%の範囲に調整され、さらには一例として4.0%に調整されている。
また、本実施形態における下部ゲルは緩衝剤として、イミダゾール塩酸塩を含む。その濃度は0.2~0.5Mの範囲に調整されており、より好ましくは0.25~0.4Mの範囲に調整され、さらには一例として0.37Mに調整されている。
(2)泳動槽溶液
泳動槽溶液は、陽極-ポリアクリルアミドゲル-陰極間を通電可能にするための陽イオン及び陰イオンを含む。特に中性から弱塩基性の泳動槽溶液において陰イオンとして働くアミノ酸を含む。また、これらのイオンはポリアクリルアミドゲル中の脂質タンパク質複合体の濃縮、移動度、バンドの鮮明度にも深く関わっている。本発明における陽極側及び陰極側泳動槽溶液として、特に血清中リポタンパク質を試料とした場合、ヒスチジン、グリシン、又はフェニルアラニンを陰イオンとして用いることにより各リポタンパク質バンドの顕著な鮮明化が可能となる。なお、ヒスチジン(pI=7.59)、グリシン(pI=5.97)、フェニルアラニン(pI=5.48)と近い等電点(pI)をもつアミノ酸、例えばアラニン(pI=6.00)、トレオニン(pI=6.16)、プロリン(pI=6.30)等についても代用が可能であるが、中性水溶液への溶解性と経済性の観点からヒスチジン、グリシン、又はフェニルアラニンを使用することが好ましい。
本実施形態における泳動槽溶液は、そのpHが8.0~9.0の範囲に調整されている。より好ましくは、pH8.0~8.6の範囲に調整され、さらには一例としてpH8.4に調整されている。
また、本実施形態1~3における泳動槽溶液はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン濃度が0.02~0.04Mの範囲に調整されている。より好ましくはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン濃度が0.02~0.03Mの範囲に調整され、さらには一例として0.025Mに調整されている。
また、本実施形態1における泳動槽溶液はヒスチジン濃度が0.1~0.2Mの範囲に調整されている。より好ましくは0.1~0.15Mの範囲に調整され、さらには一例として0.13Mに調整されている。
また、本実施形態2における泳動槽溶液はグリシン濃度が0.3~0.5Mの範囲に調整されている。より好ましくは0.4~0.5Mの範囲に調整され、さらには一例として0.44Mに調整されている。
また、本実施形態3における泳動槽溶液はフェニルアラニン濃度が0.1~0.2Mの範囲に調整されている。より好ましくは0.1~0.15Mの範囲に調整され、さらには一例として0.12Mに調整されている。
(3)前染色液
本発明における前染色液は、本発明におけるスラブ型ポリアクリルアミドゲルによる電気泳動を行う前に、脂質タンパク質複合体を含む試料と混合して試料中の脂質成分をズダンブラックBにより染色する(前染色)ためのものである。一般的にタンパク質のSDS-PAGE分析では電気泳動後にゲルをクマシーブリリアントブルー染色液等に浸けて染色・脱色する(後染色)。しかし本発明におけるスラブ型ポリアクリルアミドゲルは、質量の非常に大きな脂質タンパク質複合体を分離・分析する目的であるためにアクリルアミド濃度を低く設定しており、ガラス板等の補助部材から取り外した当該ゲルは物理的に軟弱で後染色が非常に困難である。本発明においては試料中の脂質成分を前染色液と混合して前染色することにより、電気泳動後のゲルの後染色は不要となり、この課題を解決することができる。
本実施形態における前染色液は脂質成分を染色するためのズダンブラックBと、緩衝剤としてトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩を含む。さらに疎水性物質であるズダンブラックBを水溶性の当該前染色液に拡散させるための非イオン性界面活性剤及びローディングした試料をウェル底部に沈降させるためのグリセロールを含む。
前染色液中のズダンブラックBの濃度は0.05~0.2(w/v)%の範囲に調整されている。より好ましくは0.1~0.15(w/v)%の範囲に調整され、さらには一例として0.12(w/v)%に調整されている。
本実施形態における前染色液は、緩衝剤によりそのpHが7.0~9.0の範囲に調整されている。より好ましくは、pH7.0~8.0の範囲に調整され、さらには一例としてpH7.4に調整されている。
本実施形態における前染色液に含まれる非イオン性界面活性剤としては例えば、n-ドデシル-β-D-マルトシド(DDM)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(Tween 20)、トリトンX-100(Triton X-100)、ノニデットP40(Nonidet P-40)などが挙げられる。
DDMを前染色液として添加する場合、その染色液中の最終濃度は0.05~0.25(w/v)%が好ましい。これよりも低いDDM濃度(0.05%未満)の前染色液を用いて脂質タンパク質複合体を染色した場合、染色性が著しく低下して電気泳動後の脂質タンパク質複合体のバンドを検出することが困難となる。また前染色に長時間を要するなど実用性の上でも問題がある。
一方上記より高いDDM濃度(0.25%より上)の前染色液を用いて脂質タンパク質複合体を染色した場合、界面活性剤の変性作用により脂質タンパク質複合体の分解が生じるため、やはり脂質タンパク質複合体の染色性が低下し、泳動後の検出は困難となる。
本発明を以下の実施例を用いて解説するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
図1は、実施例1におけるヒト血清の電気泳動の結果を示す図である。
<製造方法>
(1)30% アクリルアミド(19:1)の作製
Figure 0007062324000002
表1にしたがって、アクリルアミド(富士フィルム和光純薬製)とN,N'-エチレンビスアクリルアミド(富士フィルム和光純薬製)を秤量して50mLチューブに入れ、適量の超純水を加えて溶解させた後、さらに超純水を加えて容量を40mLに調製する。pH調製は不要。ほこりなどのゴミを除くため0.45μmのフィルタに通して濾過した後、4℃にて保存する。
(2)スラブ型ポリアクリルアミドゲルの作製
スラブ型ポリアクリルアミドゲルを作製するためのガラス板として、ミニゲルスラブ電気泳動用のガラス泳動プレート(日本エイドー株式会社製)を用いる。サイズは幅106mm、高さ100mmの切込入りガラス板と同サイズでゲル厚が1mm用のガラス板の間にスペーサーをはさんで重ね合わせてクリップで固定する。また任意の好適なプラスチック素材を用いて上記ガラス板と類似サイズの泳動プレートを用いることも可能である。
10%過硫酸アンモニウム(APS)は過硫酸アンモニウム粉末1gを超純水10mLに溶解し、小分けして冷凍(-20℃)保存する。N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)は市販品をそのまま使用する。
次に以下の組成の上部及び下部ゲル用溶液を調製する。
上部ゲル
Figure 0007062324000003
下部ゲル
Figure 0007062324000004
まず上述のガラス泳動プレートを用意した後、表2及び表3にしたがって、TEMEDを除く上部及び下部ゲル溶液を調製する。次に、下部ゲル溶液に規定量のTEMEDを添加し、よく混和する。これをガラス泳動プレートに流し込んだ後、ゲル溶液の上端に純水を静かに少しずつ重層し、室温で10分間以上静置する。下部ゲル溶液がゲルを形成したのを確認してから、ガラス泳動プレートを傾けてペーパータオルなどを用いて重層した純水を完全に除去する。次に、上部ゲル溶液に規定量のTEMEDを添加し、よく混和する。これをガラス泳動プレートに流し込んだ後、適当な数のくさび形歯を備えたコームを上部ゲル溶液に挿入する。いくつかの実施形態では、コームのくさび形歯は10~12歯、あるいはサンプルの容量に応じた好適な数のくさび形歯を有するものであってよい。コームを上部ゲル溶液に挿入した後、室温で1時間以上静置し、上部及び下部ゲルを完全にゲル化させる。作製したポリアクリルアミドゲルは乾燥を防ぐためにラップ等で覆いをして冷蔵で数日間保存が可能である。
(3)泳動槽溶液の作製
上記スラブ型ポリアクリルアミドゲルを泳動するための泳動槽溶液としてトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとヒスチジンを含む溶液を作製する。泳動槽溶液の容量は泳動槽のサイズによって増減が可能であるが、ここでは上記泳動ゲルとそれを泳動するための泳動槽のサイズに必要な容量の組成を記載する。
泳動槽溶液
Figure 0007062324000005
表4にしたがって、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(富士フィルム和光純薬製)とヒスチジン(富士フィルム和光純薬製)を秤量してビーカーに入れ、適量の超純水を加えて攪拌により溶解させた後、さらに超純水を加えて容量を300mLに調整する。pH調整は不要だが、上記組成にて調製すると概ねpH8.4になっている。調製後は4℃にて保存する。
(4)前染色液の調製
脂質タンパク質複合体を前染色するための前染色液を調製する。前染色液の調製量は適宜増減が可能であり、以下の調製量に限定されるものではない。また3%ズダンブラックDMSO溶液や10% n-ドデシル-β-D-マルトシド(DDM)(Thermo製)の添加量もサンプルによって適宜増減することが可能である。
前染色液
Figure 0007062324000006
本実施形態におけるズダンブラック溶液は、粉末のズダンブラックB(富士フィルム和光純薬製)0.3gをジメチルスルホキシド(DMSO)10mLに溶解した3(w/v)%ズダンブラックDMSO溶液を調製して使用する。室温で保存が可能であるが、次第に染色性が低下するため、数ヶ月ごとに再調製する。
前染色液の調製は表5の試薬を上から順に混合する。混合順序を変更した場合、ズダンブラックBが溶液全体に拡散せず、不溶性の粒状物となって沈殿するので注意が必要である。すなわち、ズダンブラックDMSO溶液、DDM、グリセロール、Tris-HCl及び超純水の順で混合していく。各成分を混合する際、毎回激しく振盪して完全に混合していることを確認する。調製後の前染色液は冷蔵保存が可能であるが、次第に染色性が低下するため、数ヶ月ごとに再調製する。
(5)脂質タンパク質複合体の前染色と上部ゲルへのローディング及び電気泳動
上記上部ゲルに多検体試料をローディングする前に上記前染色液を用いて脂質タンパク質複合体の前染色を行う。試料と前染色液の量比については試料中の脂質タンパク質複合体の濃度や総量に応じて適宜増減が可能であり、以下の表6の染色例に限定されるものではない。なお、実施例1~3では試料として健常者のヒト血清を用いている。
脂質タンパク質複合体の前染色
Figure 0007062324000007
表6にしたがって試料と前染色液を混合した後、室温にて5分間静置し、ズダンブラックBを試料中の脂質タンパク質複合体と結合させる。次に全量を上部ゲルに設けたウェルにローディングする。全ての染色済み試料をローディングし終えたら、20~40mAの定電流で泳動を開始する。泳動時間はゲルの大きさによるが、幅106mm、高さ100mm、ゲル厚1mmの場合40mA定電流で概ね30分間程度である。泳動後ゲル板にゲルをはさんだ状態で写真撮影やスキャナによるゲル泳動画像の取り込みを行う。
図1の泳動結果から本発明の電気泳動法により、ヒト血清中のVLDL、LDL及びHDLがそれぞれスメアやスマイリングすることなく鮮明なバンドとして検出されることがわかる。また上記製造方法及び電気泳動法の記述から本発明により脂質タンパク質複合体を含む多検体試料を迅速に分析できること、その操作が簡便であること、安価な試薬で実施可能であることは明らかである。
[実施例2]
泳動槽溶液(トリス-グリシンバッファ)
図2は、実施例2におけるヒト血清の電気泳動の結果を示す図である。
泳動槽溶液
Figure 0007062324000008
表7にしたがってトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとグリシンを秤量してビーカーに入れ、適量の超純水を加えて攪拌により溶解させた後、さらに超純水を加えて容量を300mLに調整する。pH調整は不要だが、上記組成にて調製すると概ねpH8.4になっている。
実施例1と上部及び下部ゲルの組成は同じだが、泳動槽溶液として実施例1のヒスチジンの代わりにグリシンを用いた。その他の条件は実施例1と同様に泳動を行った。実施例1の結果と比較して、実施例2ではHDLのバンドが2本に分かれており、1つのアクリルアミドゲルでVLDL、LDLに加えてHDLのサブタイプ(亜分画)を分離可能であることが分かる。
[実施例3]
泳動槽溶液(トリス-フェニルアラニンバッファ)
図3は、実施例3におけるヒト血清の電気泳動の結果を示す図である。
泳動槽溶液
Figure 0007062324000009
表8にしたがってトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとフェニルアラニンを秤量してビーカーに入れ、適量の超純水を加えて攪拌により溶解させた後、さらに超純水を加えて容量を300mLに調整する。pH調整は不要だが、上記組成にて調製すると概ねpH8.5になっている。
実施例1と上部及び下部ゲルの組成は同じだが、泳動槽溶液として実施例1のヒスチジンの代わりにフェニルアラニンを用いた。その他の条件は実施例1と同様に泳動を行った。実施例1及び実施例2の結果と比較して、実施例3ではVLDLのバンドがやや薄いが、LDL及びHDLは実施例1と同様の泳動結果となった。なお、フェニルアラニンは中性~アルカリ性の水溶液に溶解させるのにヒスチジンに比べてより長い攪拌時間を要する。
[実施例4]
図4は、実施例4におけるヒト線維芽細胞の細胞膜画分と細胞質画分の電気泳動の結果を示す図である。
実施例1のヒト血清リポタンパク質と同様に、ヒト線維芽細胞株MRC-5の膜画分及び細胞質画分を前染色液にて前染色し、実施例1と同様のゲル及び泳動槽溶液を用いて電気泳動を行った。
膜画分及び細胞質画分の単離は、Thermo社のMem-PER Plus Membrane Protein Extraction Kitを用いて行った。ただし、当該キット添付のSolubilization Bufferによる膜タンパク質の抽出は行わず、Permeabilization Bufferにより調製した膜画分を電気泳動の試料として用いた。
図4の泳動結果より、ヒト血清リポタンパク質(レーン1)の結果と比較して明瞭なバンドは認められないものの、細胞質画分(レーン6)に比べて膜画分のレーン5でズダンブラック染色された脂質タンパク質複合体の泳動が認められ、対象となる脂質タンパク質複合体の組成や電荷に最適化した条件検討をさらに行う事により、ヒト血清リポタンパク質以外の生体脂質タンパク質複合体の分析にも本発明が適用可能であることは明らかである。
[参考比較例1]下部ゲルの緩衝液(Tris-HCl)
図5は、比較例1におけるヒト血清の電気泳動の結果を示す図である。
下部ゲル
Figure 0007062324000010
比較例1では下部ゲルに含まれる緩衝液として実施例1で使用したイミダゾール塩酸塩に代えて、表9に示すとおりトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩を用いた。下部ゲルのpHや泳動槽溶液を含むその他の条件は実施例1と同様に泳動を行った。図5の泳動結果を実施例1の結果と比較すると下部ゲルの緩衝剤としてトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩を用いるとHDLのバンドが歪んでしまうことが分かる。また、LDLの移動度が低く、VLDLとの間隔が狭まってしまい分離不十分となってしまった。よって実施例1のイミダゾール塩酸塩を用いた下部ゲルの方が、HDLのバンドの形状と位置を明瞭に特定することができ、さらにLDLとVLDLの間の分離が優れていることが分かる。
[参考比較例2]泳動槽溶液(トリス-ホウ酸バッファ)
図6は、比較例2におけるヒト血清の電気泳動の結果を示す図である。
泳動槽溶液
Figure 0007062324000011
表10にしたがってトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとホウ酸を秤量してビーカーに入れ、適量の超純水を加えて攪拌により溶解させた後、さらに超純水を加えて容量を300mLに調整する。pH調整は不要だが、上記組成にて調製すると概ねpH8.5になっている。
実施例1と上部及び下部ゲルの組成は同じだが、泳動槽溶液としてゲル電気泳動で一般的に使用されるトリス-ホウ酸バッファを用いた。すなわち実施例1の泳動槽溶液に含まれるヒスチジンに代えて、ホウ酸を用いた。その他の条件は実施例1と同様に泳動を行った。実施例1の結果と比較して、比較例2ではLDL及びVLDLのバンドがスメアになってしまい、実施例1のトリス-ヒスチジン泳動槽溶液を用いた方が、リポタンパク質の位置を明瞭に特定できることが分かる。
[参考比較例3]下部ゲル(pH7.0)
図7は、比較例3におけるヒト血清の電気泳動の結果を示す図である。
下部ゲル
Figure 0007062324000012
比較例1の下部ゲルに含まれる緩衝液として表11のとおりイミダゾール塩酸塩のpHを実施例1の8.0から7.0へと変更した。上部ゲルの組成、泳動槽溶液その他の条件は実施例1と同様に泳動を行った。実施例1の結果と比較してLDLのバンドがスメアになっていることが分かる。また、pH 8.0の場合と比較して泳動に約2倍の時間を要した。さらにLDLとHDLの間隔が狭まってしまい分離不十分となってしまった。よって実施例1の下部ゲル(pH8.0)を用いた方が、LDLのバンドの形状と位置を明瞭に特定することができ、短時間で泳動が完了し、さらにはLDLとHDLの間の分離が優れていることが分かる。
[参考比較例4]下部ゲル(pH8.6)
図8は、比較例4におけるヒト血清の電気泳動の結果を示す図である。
下部ゲル
Figure 0007062324000013
下部ゲルに含まれる緩衝液として表12のとおりイミダゾール塩酸塩のpHを実施例1の8.0から8.6へと変更した。上部ゲルの組成、泳動槽溶液その他の条件は実施例1と同様に泳動を行った。図8の泳動結果よりpHを8.6まで上げても実施例1の結果とほぼ同様の泳動結果が得られることが分かる。なお、これ以上pHを上げると生理的条件下から外れることになり、脂質タンパク質複合体の構造に影響を及ぼすことが考えられる。さらに、アルカリ条件下ではアクリルアミドの重合効率が低下するため、アクリルアミド溶液がゲル化しないなどの問題が生じる。従って下部ゲルのpHとして8.0~8.6が適当であると考えられる。
[参考比較例5]前染色液中の非イオン性界面活性剤の種類と濃度
図9は、比較例5におけるヒト血清の電気泳動の結果を示す図である。
比較例5では、脂質タンパク質複合体を前染色するための前染色液に加える非イオン性界面活性剤の種類と濃度を検討した。前染色液とサンプルの量比は実施例1と同様にサンプル:前染色液=1:2とした。3%ズダンブラックDMSO溶液、80%グリセロール及び1M Tris-HCl, pH7.4の添加量、上部及び下部ゲル組成、泳動槽溶液組成その他の条件は実施例1と同様に泳動を行った。
図9のレーン21の泳動結果から、界面活性剤を含まない前染色液ではヒト血清リポタンパク質がほとんど染色されないことが分かる。また実施例1で使用したDDM(レーン22~24)の代わりに非イオン性界面活性剤としてTween20(レーン25、26)、Triton X-100(レーン27、28)又はNonidet P-40(レーン29、30)を使用してもヒト血清リポタンパク質の染色が確認されたが、DDMと比較すると染色性の低下や、各バンドの歪みが観察された。従ってDDMを含む前染色液の方が血清リポタンパク質の染色性が優れていることが分かる。
なお、前染色液中の界面活性剤の濃度によってはリポタンパク質がほとんど染色されないなど、各界面活性剤において最適な濃度域が存在することが分かる。
これは、界面活性剤が含まれていない場合や、界面活性剤の濃度が低すぎる場合は、ズダンブラックBの前染色液中への拡散が不十分なため、効果的にリポタンパク質が染色されないことによる。一方、界面活性剤濃度が高すぎる場合は、界面活性剤の変性作用により脂質タンパク質複合体の分解が生じることが考えられる。
以上より、本発明の実施形態を本明細書に示し、説明してきたが、これらの実施形態が例示目的で記載されていることは当業者には明らかである。当業者は、本発明を逸脱することなく、多数の改変及び代用を実施可能である。上述の特許請求の範囲が本発明の範囲を定めるものとし、また、特許請求の範囲に記載された方法及び物並びにそれらの同等物は本発明の範囲に含まれるものとする。
各ウェルにローディングしたサンプル
1・・・ヒト血清リポタンパク質
2・・・ヒト血清から浮上分画法(超遠心分離)により精製したVLDL画分
3・・・ヒト血清から浮上分画法(超遠心分離)により精製したLDL画分
4・・・ヒト血清から浮上分画法(超遠心分離)により精製したHDL画分
5・・・ヒト線維芽細胞MRC-5の膜画分をズダンブラック染色した
6・・・ヒト線維芽細胞MRC-5の細胞質画分をズダンブラック染色した
21・・・ヒト血清リポタンパク質をズダンブラック染色した(界面活性剤なし)
22・・・ヒト血清リポタンパク質をズダンブラック染色した(0.01(w/v)% DDM)
23・・・ヒト血清リポタンパク質をズダンブラック染色した(0.05(w/v)% DDM)
24・・・ヒト血清リポタンパク質をズダンブラック染色した(0.25(w/v)% DDM)
25・・・ヒト血清リポタンパク質をズダンブラック染色した(0.05(v/v)% Tween 20)
26・・・ヒト血清リポタンパク質をズダンブラック染色した(0.25(v/v)% Tween 20)
27・・・ヒト血清リポタンパク質をズダンブラック染色した(0.05(v/v)% Triton X-100)
28・・・ヒト血清リポタンパク質をズダンブラック染色した(0.25(v/v)% Triton X-100)
29・・・ヒト血清リポタンパク質をズダンブラック染色した(0.05(v/v)% Nonidet P-40)
30・・・ヒト血清リポタンパク質をズダンブラック染色した(0.25(v/v)% Nonidet P-40)

Claims (5)

  1. 試料を分離する方向と直交する方向に、脂質タンパク質複合体を含む試料をローディングするための複数のウェルを設け、緩衝剤としてトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩を含み、脂質タンパク質複合体をそのサイズ及び電荷に応じて分離するための上部ポリアクリルアミドゲルと、上部ポリアクリルアミドゲルよりも高い濃度のアクリルアミドを含み、緩衝剤としてpHが8.0~8.6のイミダゾール塩酸塩を含み、脂質タンパク質複合体をサイズ及び電荷に応じてさらに分離するための下部ポリアクリルアミドゲルを備えた電気泳動用スラブ型ポリアクリルアミドゲル
  2. 請求項1に記載の電気泳動用スラブ型ポリアクリルアミドゲルを電気泳動するための陽極側及び陰極側泳動槽溶液中にヒスチジン、グリシン、フェニルアラニンのいずれか1つ及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含む脂質タンパク質複合体を分析するための方法
  3. 請求項1に記載の電気泳動用スラブ型ポリアクリルアミドゲルの前記上部ポリアクリルアミドゲルに前記脂質タンパク質複合体を含む試料をローディングする前にズダンブラックBと非イオン性界面活性剤を含む前染色液で前記脂質タンパク質複合体を前染色する手順を含む脂質タンパク質複合体を分析するための方法
  4. 請求項2に記載の脂質タンパク質複合体を分析するための方法であって、前記電気泳動用スラブ型ポリアクリルアミドゲルの前記上部ポリアクリルアミドゲルに前記脂質タンパク質複合体を含む試料をローディングする前にズダンブラックBと非イオン性界面活性剤を含む前染色液で前記脂質タンパク質複合体を前染色する手順を含む脂質タンパク質複合体を分析するための方法
  5. 請求項4に記載の脂質タンパク質複合体を分析するための方法であって、前記脂質タンパク質複合体は血清中に含まれるリポタンパク質である脂質タンパク質複合体を分析するための方法
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