JP6604348B2 - 極低炭素鋼の溶製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、極低炭素鋼の溶製方法に関する。
炭素濃度が0.01wt%(100ppm)以下の極低炭素鋼は、転炉から出鋼された溶鋼に対して、真空脱ガス装置にて脱炭処理を含む精錬処理を施すことで溶製される。この際、真空脱ガス装置では、溶鋼を真空槽内で環流させながら、真空槽内に設けた上吹きランスから溶鋼に酸素ガスまたは酸素含有ガスを吹き込むことで脱炭反応を促進させる技術が実施されている。
例えば、特許文献1には、真空脱ガス装置による上吹きランスを用いた脱炭処理として、脱炭反応の促進とCOガスの2次燃焼による溶鋼の温度降下の防止とを両立する技術が開示されている。また、特許文献2には、真空脱ガス装置による上吹きランスを用いた脱炭処理として、排ガス中のCO濃度から、上吹きランスからの送酸の停止タイミングを最適化する方法が開示されている。
特開平2−77518号公報 特開2005−76060号公報
ところで、従来の精錬処理方法では、上吹きランスのランス高さを3m以下とし、溶鋼の浴面に対して酸素ガスを強く叩きつけて脱炭を行うことで、高い脱炭効率を得てきた。しかし、ランス高さを3m以下と低くした場合、真空槽内でスプラッシュが大量に発生するため、上吹きランスや真空槽内の上蓋等に地金が付着し、トラブルの原因となることが問題であった。
これに対して、浴面に対する酸素ガスの動圧を抑え、スプラッシュの発生を抑制する方法として、ランス高さを4m以上に高くする方法が考えられる。しかし、ランス高さを高くした場合、特許文献1の適合例BのヒートNo.12の結果にあるように、初期の脱炭速度が低下してしまうという問題があった。
そこで、本発明は、上記の課題に着目してなされたものであり、スプラッシュの発生を抑え、且つ脱炭速度を向上させることができる極低炭素鋼の溶製方法を提供することを目的としている。
本発明の一態様によれば、真空槽内の溶鋼に酸素ガスを噴射する上吹きランスを備えた真空脱ガス装置を用いて、上記溶鋼を精錬処理することで極低炭素鋼を溶製する際に、上記真空脱ガス装置による上記精錬処理前の酸素濃度が400ppm以上である上記溶鋼に対して、上記精錬処理の初めに、上記上吹きランスから上記酸素ガスを噴射させずに、上記溶鋼の酸素濃度が250ppm以上400ppm未満となるまで上記溶鋼を環流させて脱炭する第1の脱炭処理工程と、上記第1の脱炭処理工程の後、4m以上のランス高さで上記上吹きランスから上記酸素ガスを噴射させながら、上記溶鋼を環流させて脱炭する第2の脱炭処理工程と、を備えることを特徴とする極低炭素鋼の溶製方法が提供される。
本発明の一態様によれば、スプラッシュの発生を抑え、且つ脱炭速度を向上させることができる極低炭素鋼の溶製方法が提供される。
本発明の一実施形態における真空脱ガス装置を示す模式図である。 比較例1における、処理時間に対する排ガスの流量及び成分のトレンドを示すグラフである。 比較例2における、処理時間に対する排ガスの流量及び成分のトレンドを示すグラフである。 実施例における、処理時間に対する排ガスの流量及び成分のトレンドを示すグラフである。 実施例及び比較例3における、処理前の炭素濃度に対する脱炭速度定数の関係を示すグラフである。
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するように、本発明の実施形態を例示して多くの特定の細部について説明する。しかしながら、かかる特定の細部の説明がなくても1つ以上の実施態様が実施できることは明らかであろう。また、図面は、簡潔にするために、周知の構造及び装置が略図で示されている。
<極低炭素鋼の溶製方法>
本発明の一実施形態に係る極低炭素鋼の溶製方法について説明する。本実施形態では、真空脱ガス装置を用いて、溶鋼に脱炭処理を含む精錬処理を施すことで、炭素濃度が100ppm(0.01wt%)以下の極低炭素鋼を溶製する。
[真空脱ガス装置の構成]
はじめに、図1を参照して真空脱ガス装置1の構成について説明する。図1に示すように、真空脱ガス装置1は、RH方式の脱ガス装置であり、取鍋2に収容された溶鋼3に対して脱ガス処理や脱炭処理といった精錬処理を行う装置である。溶鋼3は、予め転炉等の精錬装置において、脱炭処理を含む一次精錬処理が施される。
真空脱ガス装置1は、真空槽11と、上昇側浸漬管12aと、下降側浸漬管12bと、ダクト13と、副原料投入管14と、上吹きランス15とを備える。
真空槽11は、内面に耐火物がライニングされた略円筒状の容器である。真空槽11は、鉛直方向下側の端に上昇側浸漬管12a及び下降側浸漬管12bが接続され、上部にダクト13及び副原料投入管14が接続される。
上昇側浸漬管12a及び下降側浸漬管12bは、略円筒状の形状を有し、内面及び下端側の外面に耐火物がライニングされる。また、上昇側浸漬管12aは、不図示のガス供給装置から供給されるガスを内面から吹き込むように構成される。
ダクト13は、真空排気装置(不図示)に接続され、真空排気装置によって真空槽11の内部の気圧を低くすることができるように構成される。
副原料投入管14は、不図示の複数のホッパーに接続され、各ホッパーから合金鉄や脱酸剤、造滓剤等の各種副原料が送られることで、真空槽11内の溶鋼3に副原料を投入する。
上吹きランス15は、長手方向(図1の紙面に対する上下方向)に延在する酸素供給路が内部に形成され、下端にはノズルが設けられる。また、上吹きランス15の真空槽11の外に配された上端側は、酸素供給装置(不図示)及び昇降装置(不図示)に接続される。このような構成の上吹きランス15は、酸素供給装置を介して送られる酸素ガスを、下端のノズルから真空槽11内の溶鋼3に向けて噴射する。この上吹きランス15から酸素ガスを溶鋼3に噴射する処理を、送酸ともいう。また、上吹きランス15の下端から、真空槽11内の溶鋼3の表面(浴面)までの高さを、ランス高さという。さらに、上吹きランス15は、昇降装置が駆動することで、ランス高さを自在に調整可能に構成される。
[溶製方法]
次に、極低炭素鋼の溶製方法について説明する。本実施形態では、真空脱ガス装置1による精錬処理に先立ち、真空脱ガス装置1による処理前、つまり転炉等による一次精錬処理後の溶鋼3の酸素濃度を測定する。そして、溶鋼3の酸素濃度が400ppm(0.0004wt%)以上である場合には、真空脱ガス装置1を用いた下記の溶製方法で極低炭素鋼を溶製する。
本実施形態に係る溶製方法では、はじめに、図1に示すように、取鍋2に収容された酸素濃度が400ppm以上の溶鋼3を、取鍋2が真空脱ガス装置1の下方に配された処理位置に配する。そして、取鍋2を上昇させ、取鍋2内に収容された溶鋼3に上昇側浸漬管12a及び下降側浸漬管12bを浸漬させる。さらに、真空槽11内の真空度を上げ、真空槽11内の所定の高さまで溶鋼3を吸い上げると同時に上昇側浸漬管12aの内面からガスを溶鋼3に吹き込むことで精錬処理を開始する。
真空脱ガス装置1による精錬処理では、精錬処理の初めに脱炭処理(「リムド処理」ともいう。)を行う。さらに、脱炭処理では、第1の脱炭処理工程及び第2の脱炭処理工程の2つの処理工程を順に行う。
このうち、第1の脱炭処理工程では、処理前の酸素濃度が400ppm以上の溶鋼3を、減圧下で環流することで溶鋼3の脱炭処理を行う。また、第1の脱炭処理工程では、上吹きランス15から酸素ガスを噴射させずに溶鋼3の環流を行う。このような脱炭処理では、溶鋼3中の酸素と炭素とが反応することでCOガスが発生する。そして、発生したCOガスが溶鋼3から真空槽11内へと排出されることで、溶鋼3中の炭素が除去される。なお、第1の脱炭処理工程では、溶鋼3の酸素濃度が250ppm以上400ppm未満となるまで脱炭処理が行われる。
第1の脱炭処理工程の終了時の酸素濃度が250ppm未満となってしまうと、脱炭速度が極端に低下してしまい処理時間が長くなる。このため、安定して処理を行うためには、溶鋼3の酸素濃度が300ppm以上400ppm未満となるまで第1の脱炭処理工程を行うことが好ましい。また、後述するように、第1の脱炭処理工程における処理時間が長くなるほど、真空度が上がるため脱炭速度を向上させることができる。つまり、脱炭速度を向上させるためには、第1の脱炭処理工程の終了時の酸素濃度を低くすることが好ましい。このため、安定した処理と脱炭速度の向上とを両立させる観点からは、第1の脱炭処理工程の終了時の酸素濃度を300ppm程度とすることが好ましい。
第1の脱炭処理工程において判断される酸素濃度は、処理前の酸素濃度から推定された濃度でもよく、測定装置を用いて溶鋼3の酸素濃度を実際に測定した濃度であってもよい。なお、酸素濃度を推定する際には、同様な成分系の溶鋼の第1の脱炭処理工程と同様な脱炭処理における、処理時間に対する溶鋼の酸素濃度の減少量の実績から酸素濃度を推定してもよい。また、このような酸素濃度の減少量の実績から、目標とする第1の脱炭処理工程終了時の酸素濃度となる時間を算出し、この時間だけ第1の脱炭処理工程を行うようにしてもよい。
第1の脱炭処理工程が終了すると、連続して第2の脱炭処理工程を行う。第2の脱炭処理工程では、第1の脱炭処理工程から引き続き溶鋼3を環流させた状態で、上吹きランス15から酸素ガスを噴射させることで、溶鋼3を脱炭処理する。この際、上吹きランス15のランス高さは、4m以上とする。ランス高さが4m未満の場合、溶鋼3の浴面に対する酸素ガスの動圧が高くなりすぎるため、スプラッシュが大量に発生することとなる。また、溶鋼3に酸素を供給するという観点から、ランス高さは、4.8m以下とすることが好ましい。酸素ガスの流量は、上吹きランス15のノズル孔数やノズル形状に応じた従来の流量でよく、一般的な設備であれば、例えば30Nm/min以上60Nm/min以下としてもよい。
第2の脱炭処理工程は、溶鋼3の炭素濃度が100ppm以下の目標濃度となるまで行われる。この際、上吹きランス15からは、脱炭に必要な量だけ酸素ガス吹き込まれることが好ましい。この脱炭に必要な酸素ガスの量は、処理前の炭素濃度や酸素濃度といった各成分や第2の脱炭処理工程に測定した炭素濃度に応じて推定される。そして、必要な量の酸素ガスが噴射された後は、上吹きランス15からの酸素ガスの噴射は停止し、溶鋼3の環流のみが行われることで、脱炭反応が進行する。その後、炭素濃度が目標濃度となるまで溶鋼3が環流されることで、第2の脱炭処理工程つまり脱炭処理が終了する。
脱炭処理の後、本実施形態では、溶鋼3中の酸素濃度を下げ、過剰な酸素を溶鋼3から除去する脱酸処理を行う。この際、副原料投入管14からアルミやシリコンといった脱酸成分を含有する脱酸剤が溶鋼3に添加され、成分の調整・均一化及び温度の調整に必要な時間だけ溶鋼3が環流されることで脱酸処理が行われる。なお、脱酸処理では、極低炭素鋼の目標成分に応じて、合金鉄等の副原料がさらに添加されてもよい。
以上のように、真空脱ガス装置1を用いて脱炭処理及び脱炭処理を行うことで、極低炭素鋼の溶鋼を溶製することができる。
なお、真空脱ガス装置1による処理前の溶鋼3の酸素濃度が400ppm未満である場合には、精錬処理が開始し溶鋼3が環流した後、第1の脱炭処理工程を行わずに第2の脱炭処理工程のみを脱炭処理として行う。つまり、処理が開始されると、従来の溶製方法と同様に、送酸しながら脱炭処理を行う。そして、溶鋼3の炭素濃度が目標濃度となると、上記の方法と同様に脱酸処理が行われる。
<変形例>
以上で、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態とともに種々の変形例を含む本発明の別の実施形態も明らかである。従って、特許請求の範囲に記載された発明の実施形態には、本明細書に記載したこれらの変形例を単独または組み合わせて含む実施形態も網羅すると解すべきである。
例えば、上記実施形態では、第2の脱炭処理工程において、脱炭に必要な酸素ガスの量は、処理前の炭素濃度や酸素濃度といった各成分や第2の脱炭処理工程に測定した炭素濃度に応じて推定されるとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、脱炭に必要な酸素ガスの量は、第1の脱炭処理工程における溶鋼3の炭素濃度に基づいて決定されてもよい。この場合、第1の脱炭処理工程では、処理の途中で溶鋼3の炭素濃度の測定が行われる。この炭素濃度の測定は、第1の脱炭処理工程のできるだけ後半に採取されるサンプルを用いて測定されることが好ましい。そして、第2の脱炭処理工程では、処理前の炭素濃度と、第1の脱炭処理工程にて測定された炭素濃度と、この測定のタイミングとから、第1の脱炭処理工程における脱炭速度を求め。さらに、求めた脱炭速度と第1の脱炭処理工程に掛かる処理時間とから、第2の脱炭処理工程開始時の溶鋼3の炭素濃度を求め、この炭素濃度から脱炭に必要な酸素ガスの量を決定してもよい。
<実施形態の効果>
(1)本発明の一態様に係る極低炭素鋼の溶製方法は、真空槽11内の溶鋼3に酸素ガスを噴射する上吹きランス15を備えた真空脱ガス装置1を用いて極低炭素鋼を溶製する際に、真空脱ガス装置1による精錬処理前の酸素濃度が400ppm以上である溶鋼3に対して、精錬処理の初めに、上吹きランス15から酸素ガスを噴射させずに、溶鋼3の酸素濃度が250ppm以上400ppm未満となるまで溶鋼3を環流させて脱炭する第1の脱炭処理工程と、第1の脱炭処理工程の後、4m以上のランス高さで上吹きランス15から酸素ガスを噴射させながら、溶鋼3を環流させて脱炭する第2の脱炭処理工程と、を備える。
上記(1)の構成によれば、脱炭処理の初期において送酸をせずに脱炭を行うことで、より短い時間で真空度を上げることができる。このため、脱炭処理の初期の高いランス高さで送酸を行う場合に比べて、脱炭最盛期における脱炭速度を向上させることができるようになることから、脱炭効率を向上させることができる。また、上記(1)の構成では、第1の脱炭処理工程では送酸は行わず、第2の脱炭処理工程では4m以上のランス高さで送酸を行う。このため、低いランス高さで送酸を行う従来の方法に比べ、スプラッシュの発生量を低減することができる。
(2)上記(1)の構成において、第1の脱炭処理工程では、溶鋼3の炭素濃度を測定し、第2の脱炭処理工程では、第1の脱炭処理工程で測定される炭素濃度に基づいて、酸素ガスの使用量を決定する。
上記(2)の構成によれば、脱炭処理が施された炭素濃度に基づいて酸素ガスの使用量を決定する。このため、精錬処理前の高い炭素濃度に基づいて酸素ガスの使用量を決定する方法に比べ、必要な酸素量の推定精度を高めることができるため、酸素ガスの使用量を削減することができる。また、酸素濃度が低下した状態で送酸を行うことで酸素歩留が上昇して酸素ガスの使用量を削減することができ、精錬処理に掛かる時間を短縮することができる。
次に、本発明者らが行った実施例について説明する。実施例では、はじめに比較例1として、送酸をしないで脱炭を行う条件、つまり脱炭処理の全期間を通して上記実施形態における第1の脱炭処理工程と同様な方法を用いて処理を行った。そして、ダクト13から回収される排ガスの流量と、その成分(CO濃度及びCO濃度)とを測定することで、脱炭処理における反応の状態を調査した。
図2は、比較例1における、処理時間に対する排ガスの流量及び成分のトレンドを示すグラフである。図1からわかるように、排ガスのCO濃度は処理開始からおよそ2分〜5分の範囲で最大となることがわかる。この時間範囲では、排ガスの流量も多くなっていることから、脱炭最盛期であることが分かる。また、処理開始から2分〜5分における、1分間あたりの平均の脱炭量は、9.2kg/minであった。
この時間帯は、排ガスのCO濃度やCO濃度の変化から、特許文献1の第2図の真空度が200torr〜1torrの時間帯と一致する。ここで、加藤らの報告(加藤嘉英、他4名、「RH真空脱ガス装置の装置条件と脱炭反応特性」、鉄と鋼、日本鉄鋼協会、平成5年6月19日、Vol.79、No.11、P.1248−1253)によれば、真空脱ガス装置の脱炭処理における、脱炭反応のはやさを示す脱炭速度定数Kcは、下記(1)式で示される。そして、(1)式中の脱炭反応の容量係数akは、真空度の1torr以下への到達時間に影響を受けることが報告されている。
Figure 0006604348
つまり、真空脱ガス装置1における脱炭処理では、真空度を処理開始から1torr以下までできるだけ早く減圧することが肝要となる。また、本発明者は、脱炭処理において送酸を行うと、真空槽11内の真空度が悪化し、特にランス高さが高い状況だとその傾向が顕著になると考えた。以上のことから、本発明者は、脱炭処理の脱炭量がもっとも多い時期において、スプラッシュの発生を抑えるためにランス高さを高くして上吹きランス15から送酸を行ってしまうと、真空度が1torr以下まで減圧する時間が長くなり、脱炭反応が阻害されると考えた。
このことを検証するため、本発明者は、比較例2として、比較例1と同様な脱炭処理において、脱炭最盛期に上吹きランス15からの酸素ガスの吹き込みを実施した。比較例2では、条件として、上吹きランス15のランス高さを4.2mとし、溶鋼3の環流が始まる処理開始から2分のタイミングで送酸を行った。
図3は、比較例2における、処理時間に対する排ガスの流量及び成分のトレンドを示すグラフである。図3から分かるように、送酸が行われる処理開始から2分以降で、COガス濃度が低下し、CO濃度が増加している。これは、上吹きランス15から噴射された酸素が、溶鋼3中の炭素と反応せずに脱炭に伴い発生するCOガスと反応し、脱炭に寄与していないことを示す。また、比較例2における、1分間あたりの平均の脱炭量は、7.3kg/minとなり、送酸をしない比較例1よりも低下することが確認された。
以上の知見から、本発明者は、ランス高さを4m以上とする真空脱ガス装置1の脱炭処理においては、環流処理で脱炭反応が生じる程度に溶鋼3中の酸素濃度が十分に高い場合、上吹きランス15からの送酸は行わずに環流処理のみを行うことで効率よく脱炭処理ができることを知見した。つまり、本発明者は、上記実施形態のように、真空脱ガス装置1による処理前の溶鋼3の酸素濃度が400ppm以上である場合には、送酸を行わない第1の脱炭処理工程と、送酸を行う第2の脱炭処理工程とを行うことで、効率的に脱炭処理できることを想到した。
次に、本発明者は、実施例として、これらの知見に基づいた上記実施形態に係る極低炭素鋼の溶製方法を用いて、真空脱ガス装置1にて脱炭処理を行った。実施例では、真空脱ガス装置1による処理前の酸素濃度が400ppm以上である溶鋼3に対して、第1の脱炭処理工程及び第2の脱炭処理工程を行うことで脱炭処理を行った。なお、実施例では、上吹きランス15のランス高さを4.2mとし、第1の脱炭処理工程の時間を4.5分とした。つまり、実施例1では、処理を開始した後、4.5分までは送酸を行わずに環流だけを行い、4.5分以降には送酸をしながら環流をおこなった。
図4に、実施例における、処理時間に対する排ガスの流量及び成分のトレンドを示すグラフである。図4に示すように、処理開始から2分〜5分の脱炭最盛期を含む期間において、比較例2と比べて排ガスの流量を低減することができ、COの二次燃焼も少なくなることが確認できた。また、第1の脱炭処理工程において、真空槽11内の真空度も1torr以下に減圧できることが確認できた。
また、実施例では、図4に示した処理を含む処理前の炭素濃度が異なる2条件で、上記実施形態と同様に脱炭処理を行い、脱炭速度定数Kcの測定、使用した酸素ガスの量及び処理時間を測定した。実施例の2条件における第1の脱炭処理工程に要する時間は同じとした。また、実施例では、第1の脱炭処理工程において処理の後半に溶鋼3の炭素濃度を測定し、測定される炭素濃度に基づいて第2の脱炭処理工程における酸素ガスの使用量を決定した。
さらに、比較として、処理前の酸素濃度が400ppm以上である溶鋼3に対して、脱炭処理として第2の脱炭処理工程のみを行う処理条件で、極低炭素鋼を溶製した(比較例3)。なお、比較例3の脱炭処理では、処理開始から2分の溶鋼3の環流が始まるタイミングで送酸を行うことで、第2の脱炭処理工程を行った。比較例3における上吹きランス15のランス高さは、実施例と同様に4.2mとした。
また、実施例及び比較例3では、100ppm以下の目標炭素濃度となるまで脱炭処理を行い、その後、脱酸処理を行うことで極低炭素鋼を溶製した。なお、脱炭処理と脱酸処理とに掛かる時間の合計を処理時間とし、脱酸処理に掛かる時間を実施例と比較例3とで同じ長さとした。
図5に、実施例と比較例3とにおける、真空脱ガス装置1による処理前の溶鋼3の炭素濃度に対する、処理開始から10分までの間における脱炭速度定数のプロットを示す。図5に示すように、比較例3に対して実施例の条件の方が、脱炭速度定数が0.05min−1上昇することが確認された。これは、脱炭処理の初期に送酸を行わなかったことで、真空度が1torr以下となるまでの時間が短縮され、効率よく脱炭が行われためだと考えられる。
表1に、実施例及び比較例3における、真空脱ガス装置1での処理時間、酸素ガスの使用量及び酸素歩留の平均値を示す。酸素歩留は、酸素ガスの使用量と、溶鋼3中の酸素量と、溶鋼3の脱炭量とから算出される、使用した酸素ガスが脱炭に寄与した割合を示す。
Figure 0006604348
表1に示すように、比較例3に対して実施例の方が、処理時間が短くなった。これは、脱炭速度が大きくなったことで目標の炭素濃度となるまでの時間が短縮され、さらに後述するように、酸素ガスの使用量が少なくなったことが寄与している。
また、酸素ガスの使用量は、比較例3に対して実施例の方が少なくなることが確認できた。これは、実施例と比較例3とでは、酸素ガスの使用量を決定する時期が異なることが影響していると考えられる。比較例3では、処理前の溶鋼3の炭素濃度に基づいて酸素ガスの使用量を決定する。このような方法では、推定する脱炭量が多いため、脱炭に必要な酸素ガスの量の推定精度にばらつきが生じる。特に、真空脱ガス装置1による脱炭処理では、脱炭量や脱炭効率を推定する際に、脱炭反応への影響の推定が難しいスラグ中の酸素等の不明分があるため、酸素ガスによる脱炭量を精度よく推定することが難しい。このため、比較例3のように通常は、安定した操業を行うため、操業の実績等からばらつきの中で脱炭の効率が最も低い条件を用いて酸素ガスの使用量を決定する。つまり、比較例3では、平均的に見た場合、酸素ガスの使用量が過剰な条件で処理が行われることとなる。これに対して、実施例では、第1の脱炭処理工程の後半の溶鋼3の炭素濃度、つまり比較例3よりも脱炭が進んだ低い炭素濃度に基づいて、酸素ガスの使用量を算出している。このため、実施例では、比較例3に比べて推定する脱炭量が少なくなり、脱炭に必要な酸素ガスの量を精度よく推定することができる。なお、実施例1では、さらに、第1の脱炭処理工程における実際の脱炭効率も考慮して、必要な酸素ガスの量を推定することで、より高い精度で必要な酸素ガスの量を推定することができる。この脱炭効率は、処理前の炭素濃度と、第1の脱炭処理工程で測定した炭素濃度から算出することができる。
さらに、表1に示すように、酸素歩留は、比較例3に対して実施例の方が高くなることが確認できた。これは、上吹きランス15から酸素を噴射する際の、溶鋼3の酸素濃度が影響していると考えられる。実施例の場合、送酸を開始する前に、第1の脱炭処理工程において溶鋼3中の酸素を用いて脱炭処理が行われる。このため、送酸を開始するときの溶鋼3の酸素濃度は、比較例3よりも低くなり、酸素歩留が向上したものと考えられる。
以上のように本発明に掛かる極低炭素鋼の溶製方法によれば、スプラッシュの発生を抑え、且つ脱炭速度を向上させることができる。また、酸素ガスの使用量を低減でき、処理時間を短くすることができる。
1 真空脱ガス装置
11 真空槽
12a 上昇側浸漬管
12b 下降側浸漬管
13 ダクト
14 副原料投入管
15 上吹きランス
2 取鍋
3 溶鋼

Claims (2)

  1. 真空槽内の溶鋼に酸素ガスを噴射する上吹きランスを備えた真空脱ガス装置を用いて、前記溶鋼を精錬処理することで極低炭素鋼を溶製する際に、
    前記真空脱ガス装置による前記精錬処理前の酸素濃度が400ppm以上である前記溶鋼に対して、前記精錬処理の初めに、前記上吹きランスから前記酸素ガスを噴射させずに、前記溶鋼の酸素濃度が250ppm以上400ppm未満となるまで前記溶鋼を環流させて脱炭する第1の脱炭処理工程と、
    前記第1の脱炭処理工程の後、4m以上のランス高さで前記上吹きランスから前記酸素ガスを噴射させながら、前記溶鋼を環流させて脱炭する第2の脱炭処理工程と、
    を備えることを特徴とする極低炭素鋼の溶製方法。
  2. 前記第1の脱炭処理工程では、前記溶鋼の炭素濃度を測定し、
    前記第2の脱炭処理工程では、前記第1の脱炭処理工程で測定される前記炭素濃度に基づいて、前記酸素ガスの使用量を決定することを特徴とする請求項1に記載の極低炭素鋼の溶製方法。
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