JP5505432B2 - 極低硫低窒素鋼の溶製方法 - Google Patents

極低硫低窒素鋼の溶製方法 Download PDF

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Description

本発明は、取鍋精錬を用いる極低硫低窒素鋼の溶製方法に関し、特に製品中の硫黄含有率が10ppm以下で、窒素含有率が45ppm以下の極低硫低窒素鋼を安定して溶製する方法に関する。
鋼材中の窒素は、様々な製品の性能の低下や必要な合金鉄の使用量の増加を招き、窒化物系介在物の増加による鋼の清浄度の悪化などを引き起こすため、窒素含有率の低減が望まれている。特に、近年では従来以上の特性を有する鋼材が必要とされており、鋼中の窒素含有率をさらに低減することが課題となっている。
一般に、鋼中の窒素は、製鋼処理中に増加することが多い。転炉出鋼後から鋳造完了までの間に、大気との接触により、鋼中のN含有率は徐々に増加する。低窒素鋼を製造する技術としては、溶鋼からNを除去する脱窒処理と、溶鋼へのNの吸収を抑制する吸窒防止技術があるが、溶鋼からの脱窒反応速度はあまり速くないことが知られており、通常の方法により脱窒を図ることは経済的に困難である場合が多い。したがって、処理時間を含めて経済性に優れた吸窒防止技術を確立することが重要である。
溶鋼の吸窒反応が最も顕著に進行するのは、取鍋精錬処理においてである。取鍋精錬処理では、真空脱ガス装置を用いて行う操作のほか、大気圧下での溶鋼中への不活性ガスの吹き込みによるスラグ−メタル間反応の促進、溶鋼表面への酸素ガスの吹き付けによる溶鋼温度の上昇など各種操作が行われる。これらの大気圧下での処理は、取鍋が大気中に開放された状態で行われる場合の他に、取鍋に蓋を設置したり、あるいは大径の浸漬管を用いるなど、大気との遮断処置が採られた条件下で行われる場合もある。しかし、そのような処置が採られている場合でも通常は大気との遮断が不完全であり、Ar雰囲気化等が図られているものの空気が残っている条件下で行われることが多い。特に、大気圧下で酸素ガスを吹き付けて溶鋼温度を上昇させる昇温処理において、吸窒反応が進行し易い。
この、大気圧下で酸素ガスを吹き付けて溶鋼の温度を上昇させる昇温技術に関しては、多数の開発が行われてきた。例えば、取鍋溶鋼内に円錐状の浸漬管を浸漬させ、この浸漬管の内部でAl昇熱を行う、特許文献1により開示されたような昇熱方法が実施されている。しかし、この方法では取鍋スラグと溶鋼との反応を排除しているため、取鍋スラグを利用して促進する溶鋼の低硫化が不十分である。
一方、特許文献2には、大気圧下で取鍋スラグを利用して溶鋼を極低硫低窒素化する取鍋精錬方法が開示されており、製品中の硫黄含有率が10ppm以下で、窒素含有率が50ppm以下の極低硫低窒素鋼が効率よく溶製されている。この方法では、取鍋に蓋を設置して、蓋の開口部を不活性ガスまたは二酸化炭素ガスによりパージすることで精錬中の吸窒反応を抑制できるとしているが、窒素含有率を40ppm以下にするためには、取鍋精錬に至るまでの副原料投入等との工夫と組み合わせる一方、取鍋と蓋との間に存在する隙間への対処策は言及されていない。取鍋の上縁には製鋼操業中に地金やスラグが付着することがあり、取鍋と蓋との間の隙間は取鍋精錬処理毎に変動しているので、窒素含有率40ppm以下のような低窒素鋼を安定して溶製するためには、その隙間に関して何らかの工夫が必要と考えられる。
特開昭63−69909号公報 特開2008−144224号公報
本発明では、大気圧下で溶鋼を取鍋精錬処理することにより、製品中の硫黄含有率が10ppm以下で窒素含有率が45ppm以下、さらに好ましくは40ppm以下の極低硫低窒素鋼を、効率よく安定して溶製する方法を確立することを目指す。
そのための基本技術として、特許文献2により開示された、大気圧下で取鍋スラグを利用して溶鋼を極低硫低窒素化する取鍋精錬方法を利用する。ただし、この方法では、吸窒反応抑制策として、取鍋に蓋を設置し、蓋の開口部を不活性ガスまたは二酸化炭素ガスによりパージするが、特に取鍋の上縁に地金やスラグが付着し、取鍋の蓋と上縁部との間に隙間が発生して密閉性が低下した場合に、吸窒抑制効果が不十分になってしまうことが課題である。
本発明は、特許文献2により開示された方法を利用して、溶鋼の昇熱処理と併せて低硫化と低窒素化とを同時に満足させ、極低硫低窒素鋼を効率よく安定して製造できる精錬方法である。
すなわち、本発明では、図1に基本構成を例示する取鍋精錬装置0を用いて、溶鋼2を以下の工程1〜3で示される順序により処理する極低硫低窒素鋼の溶製方法を基本的に利用する。
工程1:大気圧下において取鍋1内の溶鋼2にCaO系フラックスを添加する工程。
工程2:大気圧下において取鍋1の上方開口部1aを覆い、溶鋼2の昇熱用の酸化性ガス上吹きランス5の挿入孔7aと、溶鋼2の攪拌用の不活性ガス吹き込み用浸漬ランス4の挿入孔7bと、合金添加孔(図示しない)とのうち少なくとも一つを備える取鍋蓋6を設置し、取鍋蓋6の開口部を不活性ガスまたは二酸化炭素ガスによりパージし、かつ、取鍋1内の溶鋼2中に攪拌ガスを吹き込むことにより取鍋蓋6に備えられた挿入孔7a、7bおよび/または合金添加孔から取鍋蓋6の内部6bへの大気の侵入を抑制しながら、溶鋼2およびCaO系フラックスを攪拌するとともに、溶鋼2に酸素ガスを供給し、酸素ガスと溶鋼2との反応により生成した酸化物をCaO系フラックスと混合してカバースラグを形成する工程。
工程3:酸素ガスの供給を停止し、大気圧下の取鍋1内の溶鋼2中に攪拌ガスを吹き込むことにより脱硫および介在物除去を行う工程。
ここで「CaO系フラックス」とは、CaO含有率が45質量%以上のフラックスを意味し、例えば、生石灰単味、および、生石灰を主体としてAl、MgOなどの成分を含有するフラックスが該当する。
また「取鍋蓋6の開口部を不活性ガスまたは二酸化炭素ガスによりパージする」とは、取鍋1上に設置した取鍋蓋6と溶鋼2の表面との間の空間に不活性ガスまたは二酸化炭素ガスを吹き込むか、または取鍋蓋6に設けられたランス4,5の挿入孔7a、7bおよび/または合金添加孔の開口部分に不活性ガスまたは二酸化炭素ガスを吹き付けることを意味する。すなわち、取鍋蓋6の開口部とは、取鍋蓋6に設けられたランス4,5の挿入孔7a、7bおよび/または合金添加孔の開口部分を意味する。
なお、以下の説明において、成分含有率を表す「%」は、「質量%」を意味するものとする。
本発明では、工程2において、取鍋1内の溶鋼2と大気との接触防止を強化するために、取鍋1の上部開口部1aを覆う取鍋蓋6を取鍋1に設置している。この段階では、溶鋼2の表面はCaO系フラックスなどによって既に覆われてはいるが、溶鋼2とフラックスとのガス攪拌が開始されると、その攪拌によって溶鋼2が大きく揺動するため、溶鋼2の表面の上方に大気中の窒素が存在すると、溶鋼2中への窒素の吸収が起こり易くなるからである。
取鍋1に、取鍋蓋6を設置すること、すなわち被せておくことによって、Arガスなどの溶鋼攪拌用の不活性ガスが溶鋼2に吹き込まれると同時に、溶鋼2の表面と取鍋蓋6との間の空間に不活性ガスが充満し、溶鋼2中の窒素含有率の上昇を抑制する効果を発揮する。
また、酸素ガスを供給することにより、溶鋼2の酸化反応に伴ってスプラッシュが飛散し、また発煙および発塵が起こるため、取鍋1の上方に取鍋蓋6を設けて取鍋蓋6を集塵設備に接続するように構成すれば、系外へのスプラッシュの飛散、発煙および発塵を防止する観点からも有効である。
取鍋蓋6には、続いて行われる精錬処理操作用として、溶鋼2の昇熱用の酸化性ガス上吹きランス5の挿入孔7aと、溶鋼2の攪拌用の不活性ガス吹き込み用浸漬ランス4の挿入孔7bと、合金添加孔とのうち、少なくとも一つが備えられている。
酸化性ガス上吹きランス5は、一般には金属製の水冷構造を有しており、取鍋蓋6に設けられた挿入孔7aを通して、酸化性ガス上吹きランス5の先端5aが取鍋1内の溶鋼2の上部表面(湯面)から0.5〜3mの高さ位置となるように挿設される。そして、酸化性ガス上吹きランス5の中心管を通して酸素ガスが溶鋼2の上部表面へ向けて吹き付けられる。
溶鋼2の攪拌用の不活性ガス吹き込み用浸漬ランス4を用いる場合には、取鍋蓋6に設けられた挿入孔7bから、耐火物製の不活性ガス吹き込み用浸漬ランス4を取鍋1内へ挿入し、不活性ガス吹き込み用浸漬ランス4の中心管を通して不活性ガスをランス先端から噴出させつつ、溶鋼2中へと浸漬させる。
いずれのランス4、5ともに外径は100〜300mmであって、取鍋蓋6に設けられたランス挿入孔7a、7bの内壁とランス4、5の外面との間隔は20〜50mmである。
また、工程2または工程3において溶鋼2中の成分含有率を調整する場合があるため、取鍋蓋6にはフェロマンガンなどの合金鉄やアルミニウムを添加するための合金鉄添加孔を設けておいてもよい。
取鍋蓋6の開口部を不活性ガスまたは二酸化炭素ガスによりパージすると、取鍋蓋6の設置による溶鋼2中の窒素含有率の上昇抑制効果を高めることができる。
図2(a)および図2(b)は、図1における破線丸印部を拡大して示す説明図である。
さらに工程2において、図2(a)に示すように、取鍋蓋6の下部6cの外周面6dに支持具11を介して固定された供給配管9から不活性ガスまたは二酸化炭素ガス12をパージすることで、取鍋蓋6と取鍋1との間隙10から取鍋蓋6の内側へ吸い込まれる大気を希釈することができ、溶鋼2への窒素吸収をさらに抑制することが可能となる。
図2(a)において、不活性ガスまたは二酸化炭素ガス12の供給配管9は、取鍋蓋6の下部6cの外周面6dの全周に張り巡らされて取り付けられ、供給配管9の下部には小さな穴またはスリット9aが穿設されている。これにより、供給配管9の小さな穴またはスリット9aから、不活性ガスまたは二酸化炭素ガス12が隙間10を取り囲むように吹き出される。
このガスパージは、図2(b)に示すように、上部に小さな穴またはスリット9aを穿設された供給配管9から不活性ガスまたは二酸化炭素ガス12を噴出させることによって、溶鋼2への窒素吸収抑制効果をさらに高めることができる。図2(b)では、供給配管9の上部に小さな穴またはスリット9aが穿設されるとともに、その供給配管9の上方および側方を取り囲むようにカバー8が設置されている。このようにカバー8により上方および側方を取り囲まれた空間内で不活性ガスまたは二酸化炭素ガス12を上向きに噴出させることにより、カバー8の下方に位置する隙間10の周囲に不活性ガスまたは二酸化炭素ガス12の濃度が高く、かつ空気濃度が低い領域13を形成することができる。これにより、取鍋蓋6の内部6bへ吸い込まれる大気が希釈されたものとなるため、取鍋蓋6の内側の窒素濃度が低下して溶鋼2への窒素吸収が抑制される。
ただし、これらのガスパージによる大気の希釈効果は、取鍋蓋6の開口部や取鍋蓋6と取鍋1との隙間10の寸法等に影響されると考えられる。そこで、パージガス流量と体積との比をパラメータに採って、そのパラメータの適正な範囲を次のように調査検討した。
先ず、体積の指標として「取鍋蓋6の内部6bの体積とフリーボードの体積の合計」を採り、その体積をV(m)とする。この「取鍋蓋6の内部6bの体積とフリーボードの体積の合計」を言い換えると、「取鍋1内の溶鋼2上にあるスラグ面と取鍋2の内壁とにより囲まれた空間の体積、および取鍋蓋6の内壁により囲まれた空間の体積の合計」のことである。
次に、取鍋1と取鍋蓋6との隙間10のパージガス流量をQ(Nm/min)とし、取鍋蓋6の開口部のパージガス流量をQ(Nm/min)として、(Q/V)と(Q/V)の値と、取鍋精錬処理の工程2および工程3の間での溶鋼中窒素吸収濃度との関係を調べる。
「取鍋蓋6の開口部のパージガス流量」には、取鍋1上に設置した取鍋蓋6と溶鋼2の表面との間の空間に吹き込むパージガス(不活性ガスまたは二酸化炭素ガス)の流量と、取鍋蓋6に設けられた挿入孔7a、7bおよび/または合金添加孔の開口部分に吹き付けるパージガス(不活性ガスまたは二酸化炭素ガス)の流量の両方が含まれる。この取鍋1上に設置した取鍋蓋6と溶鋼2の表面との間の空間に吹き込むパージと、その取鍋蓋6に設けられた挿入孔7a、7bおよび/または合金添加孔の開口部分に吹き付けるパージとは、取鍋精錬装置0の形状や大きさにより適宜使い分ければよいものであって、開口部から取鍋蓋6の内部6bへの大気の侵入を抑制し、侵入した大気を希釈する効果としては、特に区別を要しないものである。
調査には,図1に示した取鍋精錬装置0を用い、取鍋1と取鍋蓋6との隙間10への供給配管9は、図2(a)に示したものと図2(b)に示したものとを使い分けて、溶鋼2の窒素吸収抑制効果を比較した。
共通する精錬条件として、転炉で吹錬した250トン(t)の溶鋼を転炉から取鍋1へ出鋼する間に、転炉からの出鋼流の取鍋1内の溶鋼2の表面への落ち口へ向けて、CaO成分含有率が92%の生石灰を10kg/t添加した後、金属Alを添加して出鋼を完了した。
転炉吹錬終了時の溶鋼成分は、質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.01%以下、Mn:0.05〜0.4%、P:0.05%以下、S:27〜28ppm、N::13〜14ppmであった。
転炉からの出鋼時に溶鋼2にAlを添加し、工程2におけるArガスの吹込みによる攪拌開始前時点における溶鋼2中のAl含有率を0.25%に調整した。
その後、下部に図2(a)または図2(b)に示した取鍋1と取鍋蓋6との隙間10へのパージガスの供給配管9を取り付けた取鍋蓋6を取鍋1の上部に装着し、大気圧下において、取鍋蓋6に設けたランス挿入孔7a、7bとランス5、4との隙間、および取鍋1と取鍋蓋6との隙間10にArガスを吹き付けつつ、溶鋼2とスラグ3を撹拌するためのArガスを昇降可能な不活性ガス吹き込み用浸漬ランス4を通して溶鋼2中へ吹き込み、かつ、溶鋼2の上部表面に昇降可能な酸素ガス上吹きランス5を通して酸素ガスを上吹きした。
溶鋼2とスラグ3を撹拌するためのArガスの流量は、工程2と工程3を通じて溶鋼1トン(t)当り0.012Nm/minで継続し、酸素ガスの上吹きは、工程2において溶鋼1トン(t)当り0.150Nm/minの吹き付け速度で、合計で1.2Nm/tを吹き付けた。
酸素の上吹きを終了した後、工程3として、引き続き溶鋼2にArガスを吹き込み、10分間攪拌を行った。
この試験における取鍋蓋6の内部6bの体積とフリーボードの体積の合計Vは34mであった。
パージガスとしてはArを用い、下記の条件で比較調査した。
A.不活性ガスまたは二酸化炭素ガスパージ実施なし
B.取鍋蓋6の開口部のみArガスパージを実施
C.図2(a)のガス供給配管9を用いて取鍋蓋6と取鍋1との間の隙間10のみArガスパージを実施
D.Bに加えて、C(図2(a)のガス供給配管9を用いて取鍋蓋6と取鍋1との間の隙間10をArガスパージ)も実施
E.Bに加えて、C’(図2(b)のガス供給配管9を用いて取鍋蓋6と取鍋1との間の隙間10をArガスパージ)も実施
まず試験Aは、従来例1であって、工程2および工程3を通じて取鍋蓋6は設置したが、不活性ガスまたは二酸化炭素ガスパージは一切行わずに、撹拌用Arを吹込んだものである。
次に試験Bは、従来例2であって、工程2および工程3を通じて取鍋蓋6を設置し、取鍋蓋6の開口部のみArガスパージを実施し、その流量(Q)を変化させた。
次に試験Cは、比較例であって、工程2および工程3を通じて取鍋蓋6を設置し、取鍋蓋6と取鍋1との間の隙間10のみArガスパージを実施し、その流量(Q)を変化させた。この試験では、取鍋蓋6と取鍋1の間の隙間10のArガスパージ用配管9として図2(a)に示したものを用いた。
さらに試験Dは、本発明例1であって、工程2および工程3を通じて取鍋蓋6を設置し、取鍋蓋6の開口部のArガスパージと、取鍋蓋6と取鍋1との間の隙間10のArガスパージとを併用した。この試験でも取鍋蓋6と取鍋1との間の隙間10のArガスパージ用配管9には図2(a)に示したものを用いて、その流量(Q)を変化させた。なお、この試験での取鍋蓋6の開口部のArパージガス流量の指標(Q/V)は、0.35Nm/min/mで一定とした。
最後に試験Eは、本発明例2であって、工程2および工程3を通じて取鍋蓋6を設置し、取鍋蓋6の開口部のArガスパージと、取鍋蓋6と取鍋1との間の隙間10のArガスパージとを併用した。この試験では、取鍋蓋6と取鍋1との間の隙間10のガスパージ効果を高めることを目的として取鍋蓋6と取鍋1との間の隙間10のArガスパージ用配管9に図2(b)に示したものを用い、その流量(Q)を変化させた。また、この試験でも取鍋蓋6の開口部のArパージガス流量(Q/V)は、0.35Nm/min/mで一定とした。
各試験において工程2の処理を開始する前と工程3の処理を終了した後に溶鋼サンプルを採取し、溶鋼2中の窒素濃度の変化量(窒素吸収濃度)とパラメータQ/VおよびパラメータQ/Vとの関係を調査検討した。その結果を、図3に纏めて示す。
取鍋蓋6を設置しただけで各種ガスパージを行わなかった試験A(◇印:従来例1)では、窒素吸収濃度は19〜24ppmであったが、取鍋蓋6の開口部のArガスパージを実施した試験B(■印:従来例2)ではそれが10〜15ppmに抑制されていて、その流量指標(Q/V)が0.30以上で11ppm以下になっていた。
また、取鍋蓋6の開口部のArガスパージを実施せずに、取鍋蓋6と取鍋1との間の隙間10のみArガスパージを実施した試験C(▲印:比較例)でも、窒素吸収濃度が14〜18ppmであったので、この隙間10のガスパージも取鍋蓋6の開口部のArガスパージとは別に窒素吸収抑制効果があり、その流量指標(Q/V)が0.30以上で14ppm以下になっていたことが分かった。
次に、取鍋蓋6の開口部のArガスパージと、取鍋蓋6と取鍋1との間の隙間10のArガスパージとを併用した試験D(×印:発明例1)では、窒素吸収濃度が9〜12ppmに低減されていたので、両方のガスパージを併用することで窒素吸収抑制効果が高まることが確認された。図3のグラフにおけるプロット(×印)は、取鍋蓋6の開口部のArパージガス流量の指標(Q/V)は、0.35Nm/min/mで一定として、取鍋蓋6と取鍋1との間の隙間10のArガスパージ流量の指標(Q/V)を変化させた場合の窒素吸収濃度の変化を表しているので、この条件では指標(Q/V)が0.30以上で9ppm以下となっており、それ以上増やしても効果が変わらないと分かる。
このQ/V≧0.30という効果的な範囲は、取鍋蓋6の開口部のArパージガス流量の指標(Q/V)が0.35Nm/min/mで一定での結果であるが、試験B(■印)で示したように指標(Q/V)が0.30以上で窒素吸収濃度が11ppm以下と、その窒素吸収抑制効果が安定していることが分かっているので、両方のガスパージを併用した場合の窒素吸収抑制に効果的な指標の数値範囲は、Q/V≧0.30で、かつ、Q/V≧0.30と考えて良く、この数値範囲での窒素吸収抑制効果は従来の取鍋蓋6の開口部のArパージである試験B(■印:従来例2)の効果と比べて、約2ppm相当であると言える。
最後に、取鍋蓋6の開口部のArガスパージと、取鍋蓋6と取鍋1との間の隙間10のArガスパージとを併用し、かつ、その蓋6と取鍋1との間の隙間10のパージガス供給配管9に工夫を加えた試験E(●印:発明例2)では、窒素吸収濃度が6〜9ppmに低減されていた。したがって、両方のガスパージを併用した上で、パージガス供給配管9に工夫を加えた効果が確認され、その効果を試験Dの結果に関して行ったのと同様に見積もると、試験E(●印)のプロットが指標(Q/V)が0.30以上で6ppm以下となっていることから、Q/V≧0.30で、かつ、Q/V≧0.30の条件では、試験B(■印:従来例2)と比べて、約5ppm相当であると言える。
なお、流量指標(Q/V)と流量指標(Q/V)は、共にその指標を大きくすれば窒素吸収抑制効果が高まる性質のものであるが、いずれもパージガスの使用コストとの兼ね合いで適正な上限がある。今回の調査結果では、いずれも0.30Nm/min/mまではその増加により窒素吸収抑制効果が高まることが分かったが、それを超えて増加させても窒素吸収抑制効果は実質的に変わらなかった。したがって、流量指標(Q/V)と流量指標(Q/V)ともに、その上限は今回調査した0.60Nm/min/m程度と考えて良い。
なお、窒素吸収抑制効果は空気中の窒素を排除して溶鋼と窒素との接触を減らす効果であるから、不活性ガスでも二酸化炭素ガスでも同等な効果が得られる筈である。また、ガスパージは工程2だけでなく工程3でも継続して行うほうが、窒素吸収抑制効果が高まると考えられる。しかし、工程2において溶鋼2上に溶融スラグが生成されており、しかもガスパージによって溶鋼2上の取鍋蓋6と取鍋1の内側にある空間(V)の窒素濃度が既に低減されている。その上、工程3では上吹き酸素の吹付けも無い等、窒素吸収がされ難い条件になっている。そのため、窒素吸収がされ難い条件が多数存在する工程3では、溶鋼撹拌用Arの供給による空間(V)への空気侵入抑制効果だけでも、パージガスを流した場合と比べて大きな違いが無いと考えられ、実際調査した結果でも工程3でのパージガス供給効果を確認することはできなかった。
以上の結果により、本発明の技術的特徴を次のように纏めて示すことができる。
(1)Alを含有する溶鋼を下記の工程1〜3で示される順序により処理する極低硫低窒素鋼の溶製方法において、
工程2で行う不活性ガスまたは二酸化炭素ガスによるパージを、(1)式および(2)式を満たすように調整して行うことを特徴とする極低硫低窒素鋼の溶製方法。
工程1:大気圧下において取鍋内溶鋼にCaO系フラックスを添加する工程
工程2:大気圧下において取鍋の上方の開口部を覆い溶鋼の昇熱用のランス挿入孔と攪拌用のランス挿入孔と合金添加孔とのうち少なくとも一つを備えた取鍋蓋を設置し、
該取鍋蓋の開口部および取鍋と取鍋蓋との間の隙間を不活性ガスまたは二酸化炭素ガスによりパージし、かつ、取鍋内の溶鋼中に攪拌ガスを吹き込むことにより
該取鍋蓋の内部への大気の侵入を抑制しながら、
該溶鋼および前記CaO系フラックスを攪拌するとともに、溶鋼に酸素ガスを供給し、
酸素ガスと溶鋼との反応により生成した酸化物をCaO系フラックスと混合してカバースラグを形成する工程
工程3:前記酸素ガスの供給を停止し、大気圧下の前記取鍋内溶鋼中に攪拌ガスを吹き込むことにより脱硫および介在物除去を行う工程
0.3≦Q/V ・・・・・(1)
0.3≦Q/V ・・・・・(2)
V:取鍋蓋の内部の体積とフリーボード部の体積との合計(m
:取鍋と取鍋蓋との間の隙間のパージガス流量(Nm/min)
:取鍋蓋の開口部のパージガス流量(Nm/min)
フリーボード部の体積:取鍋内の溶鋼上にあるスラグ面と取鍋の内壁とにより囲まれた空間の体積
(2)取鍋と取鍋蓋との間の隙間に不活性ガスまたは二酸化炭素ガスをパージする際、不活性ガスまたは二酸化炭素ガスの噴出孔を該ガスの供給配管に上向きに設置し、さらに該ガスの供給配管の上方および側方をカバーで囲うことを特徴とする(1)項に記載の極低硫低窒素鋼の溶製方法。
本発明によれば、取鍋に取鍋蓋を設置し、取鍋蓋の開口部を不活性ガスまたは二酸化炭素ガスによりパージしながら、大気圧下で取鍋スラグを利用して溶鋼を極低硫低窒素化する取鍋精錬方法において、取鍋の上縁に地金やスラグが付着し、取鍋蓋と取鍋の縁の間に隙間が発生して密閉性が低下する場合にあっても、溶鋼の吸窒抑制効果が十分に維持することができる。
図1は、取鍋精錬装置の基本構成を例示する説明図である。 図2(a)および図2(b)は、図1における破線丸印部を拡大して示す説明図である。 図3は、試験A〜Eにおける、溶鋼中の窒素濃度の変化量(窒素吸収濃度)とパラメータQ/VおよびパラメータQ/Vとの関係を纏めて示すグラフである。
(1)処理対象とする溶鋼成分等
予め、上底吹き転炉等を用いて溶鋼を製造した後、その溶鋼を取鍋に出鋼し、出鋼時に各種脱酸剤および合金を添加して取鍋内溶鋼成分を、C:0.03〜0.2%、Si:0.001〜1.0%、Mn:0.05〜2.5%、P:0.003〜0.05%、S:20〜30ppm、sol.Al:0.005〜2.0%、N:22〜35ppm等とする。
この出鋼時には、脱酸用であるとともに、工程2において上吹きする酸化性ガスとの反応に要するAlを添加して、溶鋼を脱酸するとともに、出鋼流の攪拌によりスラグの脱酸も行う。
(2)CaO系フラックスの添加
工程1では、後に脱硫を進行させるため、大気圧下において溶鋼にCaO系フラックスを添加する。その添加量は、目標温度、目標Al濃度、目標S濃度に応じてAl添加量および酸素供給量が決定されるので、それに応じた量とする。ただし、CaO系フラックスは、全量を酸素ガス供給完了前に添加する必要がある。これは、酸素ガス供給により形成される高温領域によってCaO系フラックスの滓化が促進されるからである。
CaO系フラックスの添加量は、8kg/t未満では脱硫不足となる場合があるし、16kg/tを超えて多くなると生成するスラグ量が増大して溶鋼とスラグとの撹拌が難しくなるので、8kg/t以上16kg/t以下とすることが好ましい。
このCaO系フラックスの添加時期は、転炉出鋼中、または出鋼完了後であって取鍋精錬開始前のいずれでもよいが、出鋼流による攪拌力を活用でき、次工程でのフラックスの添加時間を短縮できることから、転炉出鋼中に添加することが好ましい。
また、CaO系フラックスを添加すると、鍋中の溶鋼の上部表面をそのフラックスが覆うため、取鍋中の溶鋼を大気から遮断して溶鋼の吸窒を抑制する効果がある。この吸窒抑制効果を十分に活用するためには、出鋼中のCaO系フラックスの添加時期を、出鋼時間の前期50%までの時期とすることが好ましく、さらに出鋼期間の前期20%までに添加を完了することが一層好ましい。
(3)Alの添加
脱硫反応は還元雰囲気下で進行し易いことから、溶鋼中、スラグ中の酸素ポテンシャルを低減することが必要である。添加するAl量は出鋼中に溶鋼を脱硫する観点からは出鋼後のSol.Al濃度を0.050%以上とすることが望ましい。また、本発明では酸素ガスによるAl燃焼を実施するため、酸化されるAl予定量を出鋼段階で添加してもよい。
Alの添加により、溶鋼昇熱のための発熱源およびAl源が供給される。Alは、溶鋼中の酸素やスラグ中の酸化鉄を還元して、最終的にはスラグ中のAlとなり、スラグの融点を低下させて、溶鋼の脱硫および清浄化に有効に作用する。
極低硫鋼を溶製するためには、工程3以降において溶鋼上のスラグ成分組成を適正範囲に制御する必要があり、工程1および工程2を通算して酸素ガスの供給が完了するまでに金属Al換算で1.5kg/t以上のAlを添加するのが好ましく、より好ましくは2kg/t以上を添加する。Al添加量が1.5kg/t未満では、生成するAl量が少な過ぎ、スラグ制御へのAl活用の効果が小さくなるのに加えて、CaO系フラックスの添加量の調整も必要となるからである。また、スラグ中の低級酸化物の十分な低減効果も低下するため、効果にややばらつきが大きくなる。
しかし、Alは高価な金属であるし、溶鋼の目標温度および目標Al含有率、および目標S含有率に応じて、Al添加量および酸素ガス供給量が決定されるので、工程2において酸素ガスの供給が完了するまでのAl添加量は、現実には添加量は7.0kg/t以下となる。
また、転炉にて吹錬された溶鋼を取鍋に出鋼する際に、Alの添加に先立ち総出鋼時間の前期50%以内にCaO換算で溶鋼1t当たり6kg以上10kg以下のCaO系フラックスを添加してカバースラグを形成した後、出鋼完了までにまたは工程2における酸化性ガスの供給完了までに、金属Al換算で溶鋼1t当たり1.5kg以上7.0kg以下のAlを取鍋内へ添加すると、溶鋼への窒素吸収を抑制する上で一層好ましい。
(4)酸素の供給
工程2において溶鋼に酸化ガスを供給するのは、溶鋼成分と酸素ガスとの反応による酸化熱を利用して溶鋼の加熱を行うとともに、Alを生成させてスラグの成分制御を行うためである。酸素ガスの供給方法としてはスラグの滓化性向上の観点から上吹きランスから溶鋼表面に吹き付ける方法が望ましい。
溶鋼の表面からのランスまたはノズルの高さは0.5〜3.0mとすることが望ましい。0.5m未満ではスピッティングが激しくなるとともに、ノズル寿命が低下する。一方、3.0mをこえて高くなると酸素ガスが溶鋼表面に到達しなくなり、Alの燃焼効率が低下するおそれがある。
酸素ガス供給量は0.4Nm/t以上さらには1.2Nm/tとすることが望ましい。この酸素供給量はCaO源の滓化促進のために必要な供給量である。
(5)撹拌ガスの供給
工程2における撹拌方法としては、溶鋼に浸漬したランスを通して溶鋼中に撹拌ガスを導入する方法が望ましい。この理由は取鍋底に設置したポーラスプラグから撹拌ガスを導入する方法などでは十分な撹拌ガス流量を確保できないからである。工程2における撹拌ガスの吹き込み流量は、0.004〜0.02Nm/min/tとすることが望ましい。0.004Nm/min/t未満では撹拌力が不足し、0.02Nm/min/tを超えるとスプラッシュの発生が多くなるからである。
(6)パージガスの供給
工程2において取鍋に取鍋蓋を設置した後、溶鋼撹拌の開始とほぼ同時にパージガスを流し始めるとよい。ただし、窒素吸収抑制効果を高めるためには、溶鋼撹拌の開始より30秒程度前からパージガスを流し始めると、取鍋蓋の内側および取鍋蓋の周囲の窒素濃度が予め低下されるために好ましい。
また、取鍋と取鍋蓋との間の隙間に不活性ガスまたは二酸化炭素ガスをパージするためのガスの供給配管や、その供給配管の上方および側方を覆うカバーは、前記した(1)式および(2)式を満足するガス流量を流すことができるように設置すればよいのであるが、ガス供給配管は50Aで、それを囲うものとして、幅150mmで高さ150mmの鉄板が例示される。
(7)工程3
工程2において、スラグ成分組成の制御とその溶融が進行するとともに、脱硫反応が進行する。しかし、この酸素ガスの供給時間では脱硫反応が十分には進行せず、工程3において、酸素ガスの供給を停止し、大気圧下で溶鋼中に攪拌ガスを吹き込むことにより、脱硫および介在物の除去処理を行う。この処理により、脱硫余力を有するスラグによるさらなる脱硫と、不要な残留介在物の除去を図る。
工程2では、酸素ガスの供給により、不可避的に低級酸化物が生成する。このため、工程2の後に、工程3において不活性ガスを溶鋼中に吹き込み、これらの低級酸化物の濃度を低減させることによりさらに脱硫化を促進させることができる。
工程3では酸素ガスの供給を停止するとともに、大気圧下にて溶鋼に浸漬したランスを通して撹拌ガスを導入することで溶鋼とスラグの撹拌を継続し、脱硫を行う。このときの撹拌ガス吹き込み流量も前記の0.004〜0.02Nm/min/tとすることが望ましい。0.004Nm/min/t未満では撹拌力が不足し、脱硫が促進されず、0.02Nm/min/tを超えるとスプラッシュの発生が多くなるからである。また、撹拌ガス吹き込み時間は4〜20分間とすることが望ましい。4分間未満では脱硫時間が確保できず極低硫鋼の溶製は困難である。また、20分間を超えて長くなると溶鋼の温度低下と生産性が悪化する。
工程3による処理の終了後におけるスラグ中のCaOとAlとの質量含有率の比は0.9〜2.5とし、そのスラグ中のFeOおよびMnOの質量含有率の合計を8%以下とすると、脱硫不足やスラグの滓化性悪化を防止するために好ましい。
なお、工程3の終了後におけるスラグ量は、13〜32kg/t程度であることが好ましい。スラグ量が13kg/t未満ではスラグ量が少なく、安定した脱硫率が得られ難い。転炉から取鍋へのスラグ流出量のバラツキを考慮すると、工程3の終了後における取鍋中スラグ量は、16kg/t以上であることが一層好ましい。また、スラグ量が32kg/tを超えて多いと、スラグ成分組成の制御に要する時間が長くなり、その結果、処理時間の延長につながる場合がある。取鍋の容量(取鍋内の溶鋼の容積とスラグの容積との合計)や溶鋼とスラグとの攪拌度合いを考慮すると、このスラグ量は25kg/t以下であることが一層好ましい。
また、工程1〜工程3においては、脱硫に有効に作用するスラグ量を確保する観点から、取鍋内の溶鋼にシュノーケルなどの浸漬管を浸漬させずに処理することが好ましい。脱ガス装置の浸漬管などを浸漬すると、浸漬管の内外でスラグが分断され、酸化性ガスが供給される領域に存在するスラグの滓化は促進されるものの、それ以外の領域に存在するスラグの滓化が遅れ、浸漬管の外側に存在するスラグの攪拌も不十分となって、脱硫に有効に作用するスラグ量が減少するおそれがあるからである。
工程3の処理を終了することにより、溶鋼中S含有率が10ppm以下であるとともにT.[O]が30ppm以下、かつN含有率が45ppm以下である極低硫低窒素鋼、例えば、C:0.03〜0.2%、Si:0.001〜0.65%、Mn:0.05〜2.5%、P:0.005〜0.05%、S:10ppm以下、sol.Al:0.005〜2.0%、N:45ppm以下の鋼成分組成を有する極低硫低窒素の溶鋼が製造される。工程3の終了時の温度は1590〜1665℃程度である。
(8)工程4
本発明は、工程3の処理後に工程4の処理を実施してもよい。工程1〜工程3においては、大気圧下において取鍋内溶鋼を処理するが、この処理の後に、取鍋をRH式真空脱ガス処理装置に移送し、工程4としてRH処理において脱窒素を行うことができる。ここで、酸素ガスを溶鋼に供給して溶鋼温度を上昇させ、さらに、その後、RH装置内において溶鋼を環流させてもよい。この工程を経ることにより、一層清浄度を高め、窒素含有率の減少を図ることができる。
本発明の効果を確認するため、図1に示した取鍋精錬装置0を用い、取鍋蓋6に図2(a)または図2(b)に示したパージガス供給配管9を装着して、下記に示す鋼の溶製試験を実施し、その評価を行った。
予め溶銑脱硫、溶銑脱りんを行った溶銑を上底吹き転炉に装入し、[C]含有量が0.03〜0.20%になるまで粗脱炭吹錬を行い、吹錬終点温度を1640℃〜1700℃として、取鍋1に出鋼し、出鋼時に脱酸素剤および合金を添加して取鍋溶鋼2の成分をC:0.03〜0.20%、Si:0.001〜1.0%、Mn:0.10〜2.5%、P:0.002〜0.050%、S:20ppm〜30ppmとした。
出鋼量は250tとなるようにし、出鋼時には、CaO換算で8kg/tの生石灰と4.0kg/tのAlを一括して投入した。
次に取鍋1に取鍋蓋6を設置して、工程2として取鍋蓋6の開口部のガスパージと取鍋1と取鍋蓋6の間の隙間10のガスパージを行いながら、取鍋内溶鋼2に不活性ガス吹き込み用浸漬ランス4を浸漬させ、撹拌用Arガスを0.012Nm/min/tの供給速度で溶鋼中に吹き込むとともに、水冷構造を有する酸化性ガス上吹きランス5から酸素ガスを供給速度0.16Nm/min/tの供給速度で、溶鋼2の表面に1.2〜2.0Nm/t吹き付けた。この時、酸化性ガス上吹きランス5の先端5aと溶鋼2の表面との距離は2.0mとした。
次いで、工程3として酸素ガスの供給停止後、撹拌用Arガスを、0.012Nm/min/tの供給速度で溶鋼中に10分間吹き込んで、溶鋼2及びスラグ3の撹拌を行った。
本発明である取鍋蓋6の開口部のガスパージと、取鍋1と取鍋蓋6との間の隙間10のガスパージの条件と、取鍋精錬の工程2の開始前および工程3の終了後の[S](溶鋼中硫黄濃度)と脱硫率、並びに取鍋精錬の工程2の開始前および工程3の終了後の[N](溶鋼中窒素濃度)と窒素吸収濃度とを、表1に纏めて示す。
ここで、脱硫率は{工程2前の[S]−工程3後の[S])/工程2前の[S]×100}で計算され、窒素吸収濃度は(工程3後の[N]−工程2前の[N]ppm)で計算される数値である。
Figure 0005505432
表1において、取鍋精錬の工程3を終えた後の[S]は全て5ppm以下であり、脱硫率は80%以上で良好であった。
一方、その工程3を終えた後の[N]は32〜55ppmでバラツキがあり、窒素吸収濃度がパージガス使用条件の影響を強く受けていると分かる結果が得られた。
すなわち、試験No.7と8は従来例1であり、取鍋蓋6の開口部のパージガス(Q)も取鍋蓋6と取鍋1との間の隙間10のパージガス(Q)も用いなかった例である。この例では、窒素吸収濃度が23および20ppmであり、その結果工程3を終えた後の[N]が48ppm、55ppmと最も高い濃度になった。
一方、試験No.12〜14は従来例2であり、取鍋蓋6の開口部のパージガス(Q)は流したが、取鍋蓋6と取鍋1との間の隙間10のパージガス(Q)は流さなかった例である。この例では、窒素吸収濃度が13〜19ppmと上記の従来例1よりは窒素吸収が抑制されていたが、窒素吸収濃度のバラツキが大きく本発明の目標である工程3後の[N]が45ppm以下を安定して達成することができなかった。
また、試験No.9〜11は比較例であり、取鍋蓋6の開口部のパージガス(Q)を流さず、取鍋蓋6と取鍋1との間の隙間10のパージガス(Q)だけ流した例である。この例でも、窒素吸収濃度が12〜16ppmと上記の従来例1よりは窒素吸収が抑制されていたが、全体として上記の従来例2並みの結果であり、こちらのパージだけでは満足な結果が得られないと確認された。
一方、試験No.15〜20は本発明例1であり、取鍋蓋6の開口部のパージガス(Q)および取鍋蓋6と取鍋1との間の隙間10のパージガス(Q)を併用しているが、取鍋蓋6と取鍋1との間の隙間10のパージガス供給配管9は図2(a)に示したものを用いた例である。この例では、窒素吸収濃度が9〜12ppmと上記の従来例、比較例より明確に窒素吸収が抑制されていた。その結果、本発明の目標である工程3後の[N]が45ppm以下を全て達成することができていた。
最後に、試験No.1〜6は本発明例2であり、取鍋蓋6の開口部のパージガス(Q)および取鍋蓋6と取鍋1との間の隙間10のパージガス(Q)を併用し、かつ、取鍋蓋6と取鍋1との間の隙間10のパージガス供給配管9に図2(b)に示したものを用いた例である。この例では、窒素吸収濃度が4〜7ppmと上記の従来例、比較例、本発明例1のいずれよりも明確に窒素吸収が抑制されていて、そのバラツキも小さかった。その結果、本発明において好ましい目標とした工程3後の[N]が40ppm以下を全て達成することができていた。
このように、本発明によれば、取鍋精錬による脱硫処理において、取鍋蓋の開口部および取鍋蓋と取鍋との間の隙間を不活性ガスでパージすることにより窒素吸収量を抑制でき、極低硫かつ低窒素濃度の鋼を効率よく安定して製造することができるようになる。
0:取鍋精錬装置
1:取鍋
1a:開口部
2:溶鋼
3:スラグ
4:不活性ガス吹き込み用浸漬ランス
5:酸化性ガス上吹きランス
5a:先端
6:取鍋蓋
6b:内部
6c:下部
6d:外周面
7a:酸化性ガス上吹きランスの挿入孔
7b:不活性ガス吹き込み用浸漬ランスの挿入孔
8:カバー
9:供給配管
9a:小さな穴またはスリット
10:取鍋蓋と取鍋との間隙
11:支持具
12:不活性ガスまたは二酸化炭素ガス
13:不活性ガスまたは二酸化炭素ガスの濃度が高く、かつ空気濃度が低い領域

Claims (2)

  1. Alを含有する溶鋼を下記の工程1〜3で示される順序により処理する極低硫低窒素鋼の溶製方法において、
    下記工程2で行う不活性ガスまたは二酸化炭素ガスによるパージを、下記(1)式および(2)式を満たすように調整して行うこと
    を特徴とする極低硫低窒素鋼の溶製方法。
    工程1:大気圧下において取鍋内の溶鋼にCaO系フラックスを添加する工程。
    工程2:大気圧下において取鍋の上方の開口部を覆い溶鋼の昇熱用のランス挿入孔と攪拌用のランス挿入孔と合金添加孔とのうち少なくとも一つを備えた取鍋蓋を設置し、
    該取鍋蓋の開口部および取鍋と取鍋蓋との間の隙間を不活性ガスまたは二酸化炭素ガスによりパージし、かつ、取鍋内の溶鋼中に攪拌ガスを吹き込むことにより
    該取鍋蓋の内部への大気の侵入を抑制しながら、
    該溶鋼および前記CaO系フラックスを攪拌するとともに、溶鋼に酸素ガスを供給し、
    酸素ガスと溶鋼との反応により生成した酸化物をCaO系フラックスと混合してカバースラグを形成する工程。
    工程3:前記酸素ガスの供給を停止し、大気圧下の前記取鍋内の溶鋼中に攪拌ガスを吹き込むことにより脱硫および介在物除去を行う工程。
    0.3≦Q/V ・・・・・・・(1)
    0.3≦Q/V ・・・・・・・(2)
    V:取鍋蓋の内部の体積とフリーボード部の体積の合計(m
    :取鍋と取鍋蓋との間の隙間のパージガス流量(Nm/min)
    :取鍋蓋の開口部のパージガス流量(Nm/min)
    フリーボード部の体積:取鍋内の溶鋼上にあるスラグ面と取鍋の内壁とにより囲まれた空間の体積
  2. 取鍋と取鍋蓋との間の隙間に不活性ガスまたは二酸化炭素ガスをパージする際、不活性ガスまたは二酸化炭素ガスの噴出孔を該ガスの供給配管に上向きに設置し、さらにそのガスの供給配管の上方および側方をカバーで囲うことを特徴とする請求項1に記載の極低硫低窒素鋼の溶製方法。
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