JP5458706B2 - 溶鉄の脱硫精錬方法 - Google Patents

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Description

本発明は、極低硫鋼を溶製するための溶鉄の脱硫精錬方法に関する。
一般に、炭素鋼で極低硫鋼(溶鋼の硫黄濃度で[S]≦20ppm)を製造するには、まず、溶銑の段階で、ソーダ灰、金属Mg系又は石灰系の脱硫剤を用い、強力に予備脱硫を行ない、溶銑の硫黄濃度を20〜50ppm程度に低下させる。そして、溶銑に対し、転炉等で脱炭精錬を行なった後、得られた溶鋼に対し、更に、二次精錬を行って脱硫し、最終目標の硫黄濃度にする。
二次精錬で行う脱硫には、下記の方法が利用される。
(1)取鍋、蓋、及び、加熱用電極からなる、所謂「LF装置」を用い、電気エネルギーによる昇熱とスラグ−メタル精錬とを行い脱硫する方法。
(2)取鍋に保持した溶鋼に、ガス吹き込みノズルを介して、脱硫剤を、大気下で吹き込んで脱硫する方法。
(3)取鍋に保持した溶鋼を、RH等の真空脱ガス槽内で環流させ、上方より脱硫剤を吹き付けて脱硫する方法。
(4)取鍋に保持した溶鋼を、VOD真空脱ガス槽内にセットし、強撹拌して脱硫する方法。
また、LF装置やVOD真空脱ガス槽を用いない方法としては、予め、溶銑の予備処理段階で、硫黄濃度を10〜35ppmに低下させ、その後、プリメルトフラックスの利用と溶鋼中Al濃度の制御により、2ppm以下の硫黄濃度を安定して実現する方法が提案されている(特許文献1、参照)。
さらに、簡便に極低硫鋼を製造する方法として、フリーボード内の酸素濃度を低く制御しつつ、CaO系フラックスとAlを添加する方法が提案されている(特許文献2、参照)。
また、特許文献3には、平衡酸素分圧を0.2〜0.8に制御したガスをスラグに吹き付けることで、溶鉄からスラグへの脱硫に併せて、スラグからの気化脱硫を進行させる方法が提案されている。
なお、極低硫鋼を製造する場合には、スラグの脱硫能を高めるために、蛍石などのフッ素を含む脱硫剤を使用することが一般的に行われている。
特開平9−217110号公報 特開2004−107716号公報 特開平1−165709号公報
LF装置を用いる方法は、電力エネルギーで精錬用フラックスを溶かし、溶鋼浴面を覆い、保温に有効な技術である。また、溶融し難い精錬用フラックスでも利用でき、スラグの硫黄保持能力(サルファイドキャパシティ)を高めることができるので、脱硫反応効率が高いという利点がある。
しかしながら、LF装置を用いる場合は、多大な電力エネルギーを使うために、製造コストが高くなるばかりでなく、溶製時間が長く、生産性も低いという問題点があった。
一方、ガス吹き込みノズルを介して脱硫剤を大気下で吹き込む方法では、脱硫が還元反応で進行するため、大気中の酸素により反応が阻害され、脱硫効率が不十分という課題がある。
また、この方法では、還元脱硫反応を阻害する酸素を吹き付けることなく加熱する手段がなく、多量に脱硫剤を使用する場合には、溶鋼温度を保持することが困難であり、脱硫剤を十分に溶かすことも難しいため、溶融促進剤であるフッ素源を脱硫剤に混合する必要があった。
RH等の真空脱ガス槽内で環流させ、上方より脱硫剤を吹き付ける方法では、脱硫剤の滞留時間が短いため、やはり、脱硫効率が不十分であった。この方法も、同様に、酸素を吹き付ける以外に加熱する手段がなく、保温しつつ反応効率の高い脱硫精錬を行うことが困難であった。
さらに、VOD真空脱ガス槽を用いる方法は、撹拌力が大きいので、脱硫反応効率は大きいが、溶製時間が長く、処理コストが高いという問題があった。また、溶鋼の強撹拌により、取鍋の内張り耐火物の溶損が著しく大きくなるという問題も生じていた。この方法でも、やはり、酸素を吹き付ける以外に加熱する手段がなく、保温しつつ反応効率の高い脱硫精錬を行うことが困難であった。
特許文献1に記載の方法では、溶銑予備処理と二次精錬の二段精錬が必須となるため、溶銑予備処理に要する時間と費用が莫大になる。また、目標達成が不十分の時には、RH真空脱ガス槽を用いたさらなる脱硫処理、つまり、二次精錬だけで2段階の脱硫処理が必要とされるという課題があった。
また、特許文献2に記載の方法では、Alを使用するため、材質上Al濃度規制がある鋼種やアルミナ系介在物の存在が許されない鋼種には適用できないという課題があった。
特許文献3に記載の方法では、平衡酸素分圧を0.2〜0.8に制御したガスをスラグに吹き付けて、スラグから気化脱硫させているため、気化脱硫の進行が遅く、このため、溶鉄からスラグへの脱硫も遅いという課題があった。また、脱硫と同時に、脱珪や脱りん精錬も行うため、脱硫能力に限界があり、硫黄濃度30ppm未満の低硫鋼には適用できないという課題があった。
さらに、極低硫鋼製造時には、通常、フッ素を含有するフラックスを用いて脱硫処理が行なわれているため、脱硫処理後のスラグにもフッ素が残留する。そのため、フッ素を含有するスラグは、フッ素が環境に及ぼす影響を考慮して、有効に利用されておらず、スラグの有効利用の観点から、鋼の精錬においても、フッ素源の使用を抑えることが要請されている。
本発明は、設備費や処理コストの高いLF装置や真空脱ガス装置を使うことなく、また、フッ素を含有するフラックスを用いることなく、より簡便に、高効率でかつ安定して、20ppm以下の極低硫黄濃度まで脱硫処理する精錬方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(1)精錬容器内の溶鉄を脱硫精錬する方法において、
(i)第一工程として、溶鉄に脱硫剤を添加して、処理後のS濃度が処理前のS濃度の20〜70%となるように脱硫処理を施し、
(ii)第二工程として、第一工程で溶鉄表面の全面を覆うように生成した脱硫スラグの一部又は全部を残した状態で、該スラグの上方から、プラズマ気流中の酸素濃度が1体積%以上100体積%以下のプラズマアークを、溶鉄まで到達しないように、脱硫スラグに照射し、第二工程終了後の溶鉄中のS濃度を、第一工程終了後の溶鉄中のS濃度よりも低くする
ことを特徴とする溶鉄の脱硫精錬方法。
(2) 前記溶鉄が、脱炭精錬後の溶鋼の場合、第一工程及び第二工程を実施した後、第三工程として、脱酸剤による溶鋼とスラグの脱酸を実施することを特徴とする前記(1)に記載の溶鉄の脱硫精錬方法。
(3) 前記脱硫剤として、実質的にフッ素を含まないフラックスを使用することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の溶鉄の脱硫精錬方法。
(4) 前記(1)〜(3)のいずれかに記載の溶鉄の脱硫精練方法で生成したスラグを、前記脱硫剤として使用することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載溶鉄の脱硫精錬方法。
本発明によれば、設備費や処理コストの高いLF装置や真空脱ガス装置を使うことなく、また、フッ素を含有するフラックスを用いることなく、より簡便に、高効率でかつ安定して、極低硫黄濃度まで脱硫処理を行うことが可能である。
通常の脱硫処理においては、CaO源を添加し、下記(A)式で還元脱硫反応を進行させる。
CaO+→CaS+ ・・・(A)
フラックスの溶融を促進して反応性を高めるため、また、スラグの脱硫能を高めるため、(a)アルミナ源やフッ素源をCaOに混合したり、(b)還元反応を阻害する溶鉄中の酸素活量を下げるために、金属Al等を添加して脱酸したり、(c)雰囲気の酸素分圧を下げて還元反応を促進するために減圧化、不活性ガス化したり、という工夫がなされている。
溶銑段階では、金属Mgを添加して脱酸しつつ、MgSの形で脱硫する場合もあるが、MgSは不安定であり、最終的に、SはCaSの形でスラグ中に固定される。
いずれにしても、平衡硫黄濃度は、スラグの硫黄保持能力(サルファイドキャパシティ)と溶鉄中の酸素活量に依存し、フラックス(スラグ)のみによる極低硫黄濃度までの脱硫能力には限界がある。
また、フラックス(スラグ)のみによる脱硫方法以外では、特許文献3に記載の通り、硫黄を含むスラグに酸素を含有するガスを吹き付け、下記(B)式で示す酸化反応により気化脱硫を進行させることが知られている。
CaS+3/2O2→CaO+SO2↑ ・・・(B)
しかし、上述の通り、この方法では、上記(B)式で示す気化脱硫の進行が遅く、このため、溶鉄からスラグへの脱硫も遅いという課題がある。
そこで、本発明者らは、従来の脱硫能力限界を脱硫方法について鋭意検討した。その結果、酸素を、数千〜1万℃といわれる極めて高温のプラズマアークのプラズマガスとして使用すると、(i)下記(C)式に示すように、酸素が解離してスラグ中Sと反応し、気化脱硫が顕著に進行すること、及び、(ii)より低濃度の酸素ガスでも、気化脱硫が大幅に進行すること、を知見した。
CaS+3O→CaO+SO2↑ ・・・(C)
本発明は、プラズマ気流中の酸素による、スラグからの酸化気化脱硫反応を活用したものである。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
本発明では、第一工程として、まず、脱硫処理を施していない溶鉄、又は、ある程度、脱硫処理を施した溶鉄(溶銑と溶鋼を総称して「溶鉄」という)を、精錬容器内に収容して、脱硫剤を添加し、溶鉄に、処理後のS濃度が処理前のS濃度の20〜70%となるように脱硫処理を施す。
精錬容器は、トーピードカー、転炉、及び、取鍋のいずれでもよいが、本発明は、転炉のような、大きなフリーボードを必須としないので、トーピードカーや取鍋でも実施できる点が特徴である。
取鍋は、浸漬方式の円筒状の蓋(浸漬管)を溶湯表面に浸漬するので、浸漬管内部の溶湯表面を、脱硫に有利な雰囲気にし易い利点、即ち、酸化気化脱硫する場合には酸化性ガス雰囲気に、還元脱硫する場合にはアルゴン又は窒素による非酸化性ガス雰囲気にし易い利点がある。
なお、精錬容器は、脱硫剤を添加して脱硫処理を施した後、後述の通り、第二工程で、プラズマアークにより酸素含有ガスを吹き付けるので、構造的に取鍋が望ましい。
溶鉄(溶銑や溶鋼)を精錬容器に収容した後、第一工程では、精錬処理段階(溶銑又は溶鋼)や鋼種に応じて適宜選択した生石灰、生石灰とアルミナ源の混合物、生石灰と金属Mgの混合物等の脱硫剤を添加し、底吹きガスによる攪拌や機械式攪拌により脱硫剤と溶鉄を混合しつつ、溶鉄に、処理後のS濃度が処理前のS濃度の20〜70%となるように脱硫処理を施す。
なお、第一工程の脱硫は、脱硫処理により溶鉄中のSが溶鉄上に生成するスラグに取り込まれるものであればよく、特に、脱硫方法や形態は問わない。
次に、第二工程の脱硫について説明する。第二工程では、まず、第一工程で、溶鉄表面の全面を覆うように生成した脱硫スラグの一部又は全部を残す。脱硫スラグの一部を残す場合、残るスラグが、溶鉄表面の全面を覆うように、第一工程で生成したスラグを排出すればよい。
第二工程では、溶鉄表面の全面が脱硫スラグで覆われている状態で、引続き、精錬容器の上方に設置したプラズマトーチより、酸素を含むプラズマ気流によるプラズマアークをスラグに照射する。
本発明者らは、高温の酸素を含むプラズマガスをスラグに照射すると、上記(C)式の反応により、スラグ中のSの気化脱硫反応が顕著に進行することを、実験的に知見した。また、本発明者らは、酸素濃度を変更して行った脱硫実験から、プラズマ気流中の酸素濃度が1体積%以上であれば、気化脱硫速度が、大幅に向上することも知見した。
気化脱硫反応により、スラグ中のSが気化して排出されて、溶鉄中のSがスラグへ取り込まれるので、第二工程終了後の溶鉄中のS濃度は、第一工程終了後のS濃度よりも、さらに低減する。本発明によれば、第二工程終了後の溶鉄中S濃度は、例えば、第一工程終了後のS濃度の50%以下とすることができる。
本発明は、上述の通り、プラズマ気流中に酸素を含むプラズマアークを、脱硫スラグの上方から、脱硫スラグに照射して、脱硫スラグ中のSの気化脱硫反応を行うものである。したがって、プラズマ気流が、脱硫スラグ厚みを突き抜けて溶鉄まで到達しないように、プラズマアークをスラグに吹き付ける必要がある。
プラズマ気流がスラグ厚みを突き抜けて溶鉄まで到達しているか否かは、ダストの発生の有無により、目視で把握することができる。ダストの発生が起きたら、プラズマアークが溶鉄まで到達していることを示しているので、プラズマ気流を小さくして、プラズマ気流が溶鉄まで到達しないように調整する。
また、精錬容器の構造上、脱硫処理中、ダストの発生を目視で確認できない場合は、予め、処理ステーション外での予備試験で、スラグ厚みと、プラズマ気流のガス流量及びプラズマトーチの高さとの関係を求めておき、処理前にスラグ厚みを測定して、上記関係から、ガス流量やトーチ高さを決定することで、対応が可能である。
第二工程の脱硫は、第一工程において、溶鉄中の処理後のS量(質量%)が、処理前のS量(質量%)の20〜70%に低減した後に実施するのが望ましい。
この理由は以下の2点である。1点目は、第一工程において、溶鉄中の処理後のS量が処理前のS量の70%超の段階、即ち、脱硫率が30%未満の段階では、未だ、スラグ中のS濃度が低いので、第二工程における気化脱硫率が低く、十分な気化脱硫効果が得られ難いということである。
2点目は、第一工程において、溶鉄中の処理後のS量が処理前のS量の20%未満となる段階、即ち、脱硫率が80%超の段階まで脱硫を続けると、脱硫の進行が緩慢又は停滞することにより、第一工程における処理時間が長くなり過ぎるということである。
処理する溶鉄が、溶銑等の高炭素溶鉄の場合(溶鉄のC濃度が2.0質量%以上、飽和濃度以下)、酸素濃度が高いプラズマガスをスラグ上方から照射しても、溶鉄の炭素濃度が高いために、溶鉄−スラグ界面の酸素活量は低く維持されるので、スラグから、気化により硫黄が抜けた分、溶鉄からスラグへの還元脱硫が更に進行し、極低硫域まで硫黄濃度が低下する。
この場合、プラズマ気流中の酸素濃度は、本発明者らの実験によれば、10体積%超100体積%以下が好適である。なぜなら、プラズマ気流中の酸素濃度が高くなるほど、プラズマ照射による脱硫スラグからの硫黄の気化反応が進行し、反応界面へ移動する硫黄移動量が多くなって、脱硫速度は増加するので、スラグから、気化により硫黄がより多く抜けた分、溶鉄からスラグへの還元脱硫がより進行し、極低硫域まで硫黄濃度をより低下することができるからである。
したがって、十分な硫黄移動量がある場合、プラズマ気流中の酸素濃度は高いほど好ましく、プラズマ気流中の酸素濃度は、100体積%、即ち、純酸素ガスが最も好適である。
処理する溶鉄が溶鋼の場合(溶鉄のC濃度が2.0質量%未満)、酸素濃度が高いプラズマガスを照射すると、酸素がスラグ内を透過し、溶鉄−スラグ界面の酸素活量が増加する。この場合、第二工程において、スラグからの気化脱硫は進行するが、溶鉄からスラグへの更なる還元脱硫が停滞し、場合によっては、スラグから溶鉄への復硫が一部進行することが懸念される。
処理する溶鉄が溶鋼の場合、プラズマ気流中の酸素濃度は、低いほうが望ましく、本発明者らの実験によれば、1体積%以上10体積%以下が好適である。
溶鋼を処理する場合、別の実施形態として、第二工程において、スラグへの酸素含有プラズマの照射を止めた後、引き続き、第三工程として、脱酸剤を添加して、溶鉄とスラグの界面の酸素活量を低下させてもよい。
酸素活量の低下により、再び、スラグの還元脱硫能が復帰し、第二工程でのスラグからの気化脱硫により、スラグの硫黄濃度が低下しているので、第二工程終了後よりも、更に、溶鉄中の硫黄濃度は低下する。溶鉄中Sが0.0010質量%(10ppm)以下の溶鉄を製造する場合、復硫が起こり易くなるので、10ppm以下のSを達成する場合には、第三工程を実施することが好ましい。
脱酸剤は、通常、硫黄濃度低減の点で、強脱酸元素のAlが望ましいが、材質上、Al濃度の制約がある鋼種や、アルミナ系介在物の存在に規制がある鋼種の場合は、Si、Mn、Ti、Zr、Ca等を、適宜選択できる。
なお、第二工程で照射するプラズマ気流中の酸素以外のガスは、溶鉄を汚染しない非酸化性ガスが望ましい。高炭素濃度の溶鉄を処理する場合には、後の脱炭精錬工程で、脱窒が進行するので、安価な窒素ガスが望ましいが、低炭素溶鉄を処理する場合には、吸窒を避けるため、プラズマ化効率が高いアルゴンガスが望ましい。
第二工程でプラズマを照射する際、溶鉄を攪拌してもよい。精錬容器の底部のポーラスプラグから、非酸化性ガスを吹き込むことが望ましい。例えば、溶鉄全面を実質的に脱硫スラグが覆う状態を維持するためには、溶鉄1トンあたり、0.1〜0.5(Nl/分)の吹込みガス量が好ましい。
プラズマ気流中へ酸素を導入するため、作動ガスとして酸素を含むガスを用いてもよいが、プラズマ電極の溶損が問題となる場合は、二重ノズル等を用いて、プラズマガスがプラズマトーチを出た直後に、酸素をプラズマ流へ導入する方法や、精錬容器内に酸素含有ガスを導入して、プラズマ気流中に巻き込ませる方法を用いるのが好ましい。
本発明では、プラズマ気流が高温であることで、酸素が解離することを活用しているので、プラズマ方式は、移行式でも非移行式でもよい。精錬容器の底部に電極を必要とせず、設備が簡略化できる点で、非移行式が好適である。
本発明では、フッ素を実質的に添加しなくても、十分に高い脱硫能が得られることを特徴としている。実質的に添加しないということは、脱硫精錬後のスラグからフッ素(F)の溶出が顕著には認められないといことを意味し、本発明者らの知見によれば、精錬後のスラグ組成において、Fが1質量%以下であることを意味する。Fが0.5質量%以下であれば、さらに好ましい。
本発明においては、プラズマアークの照射により、大部分の硫黄は気化して、スラグから抜けるので、脱硫精錬後のスラグ中のS濃度は大幅に低減する。それ故、S濃度が大幅に低減した脱硫精錬後のスラグを、溶鉄の還元脱硫精錬処理における新たな脱硫剤として再利用することが可能となる。
脱硫精錬後のスラグの再利用が可能となることで、新たに使用する脱硫剤の量や、脱硫精練スラグの排出量を大幅に低減することができるので、本発明は、脱硫処理コストや脱硫精練スラグの処理コストの低減に大きく貢献する。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例で採用した条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例1)
高炉から出銑した溶銑を溶銑鍋(350トン)に収容し、機械攪拌のKR装置を用いて脱硫精錬処理(第一工程)を行った。脱硫精錬前の溶銑のS濃度は、0.021〜0.025質量%であった。脱硫精錬剤として、粒径1mm以下の生石灰粉を、溶銑1トン当り5kg使用した。生石灰粉を添加した後、10分間、インペラーで機械攪拌を行った。なお、脱硫精錬剤の生石灰粉のF濃度は、分析定量下限の0.01質量%未満であった。
第一工程終了後、インペラーを引き上げ、溶銑の全面が脱硫スラグで覆われていることを確認し、次いで、KR装置に設置したプラズマトーチを挿入して、スラグ面から上方500mmの位置にプラズマトーチ下端部を配置し、酸素濃度の異なる酸素−アルゴン混合ガスを、15Nm3/時の供給速度で5分間、スラグに吹き付けて、プラズマアークのスラグへの照射処理(第二工程)を行った。
プラズマ装置は、電源容量2MWの直流非移行型を用いた。プラズマアークをスラグへ照射する際、ダストの発生が見られなかったので、プラズマ気流が、スラグ厚みを突き抜けて溶銑まで到達することなく、プラズマアークをスラグに照射できたことを確認できた。
第二工程では、プラズマを発生しない条件で、酸素−アルゴンの混合ガスを15Nm3/時の供給速度で5分間吹き付ける脱硫処理も行った。
実施例及び比較例の結果を、脱硫処理条件とともに、表1に示す。表1に示す数値は、10〜20ch(チャージ)の脱硫処理で得た数値(測定値)を平均したものである。
表1から、本発明の実施例では、いずれも、安定して、処理後の溶銑のS濃度が0.002質量%未満となっており、また、処理後のスラグのS濃度も、再利用が可能な低濃度となっていることが解る。
Figure 0005458706
(実施例2)
転炉から出鋼した溶鋼を溶鋼鍋(350トン)に装入し、浸漬管を備えるCAS装置(溶鋼鍋内の溶鋼上部から浸漬管を挿入して、溶鋼鍋の底部からArガスを吹き込んで、浸漬管内部をArガス雰囲気として、合金添加等の二次精錬を行う装置)を用いて、脱硫精錬処理(第一工程)を行った。脱硫精錬前の溶鋼のS濃度は、0.007〜0.020質量%であった。
脱硫精錬剤として、粒径1mm以下の生石灰粉とアルミナ粉を質量比6:4で混合したものを、溶鋼1トン当り5kg使用した。ただし、脱硫精錬前の溶鋼のS濃度が0.015%を超える場合には、溶鋼1トン当り20kgの脱硫精錬剤を使用した。
浸漬管内の雰囲気をアルゴンガスで置換した後、脱硫精錬剤を上方から添加し、溶鋼鍋の底部に設置したポーラスプラグより、100Nl/分のアルゴンガスを10分間吹き込んで攪拌した。なお、脱硫精錬剤として用いた生石灰粉とアルミナ粉の混合物中のF濃度は、分析定量下限の0.01質量%未満であった。
第一工程終了後、溶鋼の全面が脱硫スラグで覆われていることを確認し、次いで、CAS装置に設置したプラズマトーチを挿入して、スラグ面から上方500mmの位置にプラズマトーチ下端部を配置し、酸素濃度の異なる酸素−アルゴン混合ガスを、15Nm3/時の供給速度で5分間、スラグに吹き付け、プラズマアークのスラグへの照射処理(第二工程)を行った。
プラズマ装置は、電源容量2MWの直流移行型を用い、トーチ側を負極とした。一部の水準では、ガス吹き付け終了後、金属Alを添加して脱酸を行うとともに、溶鋼鍋の底部からアルゴンガスを、100Nl/分で3分間吹き込んで攪拌を行った。
プラズマアークをスラグへ照射する際、CAS装置の浸漬管のプラズマトーチ挿入孔の隙間からダストが発生するのが見られなかったので、プラズマ気流がスラグ厚みを突き抜けて溶銑まで到達することなく、プラズマアークをスラグに照射できたことを確認できた。
また、第二工程では、プラズマを発生しない条件で、酸素−アルゴン混合ガスを、15Nm3/時の供給速度で5分間吹き付ける脱硫処理も行った。
実施例及び比較例の結果を、脱硫処理条件とともに、表2に示す。表2に示す数値は、10〜20ch(チャージ)の脱硫処理で得た数値(測定値)を平均したものである。
表2から、本発明の実施例では、いずれも、安定して、処理後の溶銑のS濃度が0.002質量%未満となっており、また、処理後のスラグのS濃度も、再利用が可能な低濃度となっていることが解る。
Figure 0005458706
前述したように、本発明によれば、設備費や処理コストの高いLF装置や真空脱ガス装置を使うことなく、また、フッ素を含有するフラックスを用いることなく、より簡便に、高効率でかつ安定して、極低硫黄濃度まで脱硫処理を行うことが可能である。よって、本発明は、鉄鋼産業における利用可能性が大きいものである。

Claims (4)

  1. 精錬容器内の溶鉄を脱硫精錬する方法において、
    (i)第一工程として、溶鉄に脱硫剤を添加して、処理後のS濃度が処理前のS濃度の20〜70%となるように脱硫処理を施し、
    (ii)第二工程として、第一工程で溶鉄表面の全面を覆うように生成した脱硫スラグの一部又は全部を残した状態で、該スラグの上方から、プラズマ気流中の酸素濃度が1体積%以上100体積%以下のプラズマアークを、溶鉄まで到達しないように、脱硫スラグに照射し、第二工程終了後の溶鉄中のS濃度を、第一工程終了後の溶鉄中のS濃度よりも低くする
    ことを特徴とする溶鉄の脱硫精錬方法。
  2. 前記溶鉄が、脱炭精錬後の溶鋼の場合、第一工程及び第二工程を実施した後、第三工程として、脱酸剤による溶鋼とスラグの脱酸を実施することを特徴とする請求項1に記載の溶鉄の脱硫精錬方法。
  3. 前記脱硫剤として、実質的にフッ素を含まないフラックスを使用することを特徴とする請求項1または2に記載の溶鉄の脱硫精錬方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶鉄の脱硫精練方法で生成したスラグを、前記脱硫剤として使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載溶鉄の脱硫精錬方法。
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