JP3891013B2 - Rh脱ガス装置による溶鋼の精錬方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、RH脱ガス装置による溶鋼の精錬方法に係わり、詳しくは、転炉から出鋼した溶鋼を、さらに該RH脱ガス装置で処理(二次精錬という)し、非金属介在物の少ない清浄な溶鋼を効率良く溶製する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
連続鋳造等で製造した鋼鋳片中に非金属介在物(以下単に「介在物」と呼ぶ)が多く含有されていると、それは、圧延後の鋼板に所謂「ヘゲ」や「ふくれ」等の欠陥を発生させる原因となったり、強度を損ねる等の問題を生じる。そのため、かかる介在物は、溶鋼の製造段階で極力低減することが望まれ、従来より種々の精錬方法を適用して、溶鋼から分離・除去するようにしている。なお、この溶鋼中の介在物としては、溶鋼浴面上に浮遊しているスラグが溶鋼中に巻き込まれて生成するもの、溶鋼へのアルミニウム等の脱酸剤の添加によって溶鋼中の溶解酸素と脱酸剤との反応によって生成するもの、スラグ中の酸化性成分(FeOやMnO等の低級酸化物成分)によって溶鋼中のアルミニウムが徐々に酸化して生成するもの等がある。そして、これら介在物の発生防止、あるいは発生量低減の対策としては、転炉等の一次脱炭精錬炉から取鍋に出鋼する際の取鍋内へのスラグの流出量を極力低減する(スラグ・カット方法の改善)、スラグ中に還元剤等を投入してスラグ中のFeO等を低減する(スラグ改質)、スラグ中にMgOやCaOを添加してスラグを固化してスラグの溶鋼との反応性を低減する(スラグ固化)等が以前より行われており、いずれもそれ相当の効果をあげている。
【0003】
一方、以上述べたようなスラグに起因する溶鋼中の介在物低減対策の他にも、特殊な精錬装置を利用する技術がある。その代表的なものは、RH脱ガス精錬方法と称され、溶鋼の精錬効率が高く、また各種の精錬処理(例えば、脱炭処理、脱酸処理、脱水素・窒素等の脱ガス処理、脱硫処理、成分調整等)に柔軟に対応できる等の特徴があるので、広く普及している。
【0004】
この精錬方法は、図1に示すように、下部に2本の浸漬管2、3を有する円筒状の槽(内部は減圧されるので、以下、真空槽1という)を用い、取鍋4内に保持した溶鋼5にその浸漬管を浸漬させて行われる。つまり、該真空槽1内を減圧して溶鋼5の一部を浸漬管2、3を介して真空槽1内に吸い上げると共に、一方の浸漬管(これを上昇管という)2内にアルゴンや窒素等のガス6を吹込んで、ガスリフトポンプの原理(ガスの気泡で溶鋼を持ち上げる)で前記上昇管2内の溶鋼5に浮力を与えて溶鋼の上昇流を、他方の浸漬管(これを下降管という)3を介して逆に真空槽1内から取鍋4内に向かう溶鋼5の下降流を発生させて、取鍋4内と真空槽1内との間で溶鋼を環流させることにより前記した各種の精錬処理を効率良く行うものである。特に、減圧下で脱酸剤を溶鋼5に添加して行う脱酸処理では、環流によって溶鋼内の介在物同士が衝突・合体するので、介在物に作用する浮力が大きくなり、溶鋼5の浴面上に浮上し、スラグ9にトラップされて溶鋼から分離し易くなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このRH脱ガス装置を利用する精錬方法でも、真空槽1内に浸漬管2、3を介して取鍋4内の溶鋼5を吸い上げるという特性上、取鍋4内の溶鋼浴面上に浮遊するスラグ9の一部も真空槽1内に吸い上げてしまうことが避けられず、これによって真空槽1内の溶鋼5が酸化されたり、あるいはスラグ自体が溶鋼に巻き込まれて介在物を生成することが不可避的に発生する。そのため、特開平2−25251号公報に開示されているように、浸漬管2、3の浸漬深さを深くして,スラグの吸い込みを防止することが行われてきた。
【0006】
しかしながら、このような対策を行っても、真空槽1に吸い込まれたスラグ9に起因する介在物が満足できる程度に低減しているとは言い難いのが現状である。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑み、真空槽内に吸い込まれたスラグに起因する溶鋼中の介在物を従来より低減可能なRH脱ガス装置による溶鋼の精錬方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
【0009】
すなわち、本発明は、取鍋に保持した溶鋼に、2本の浸漬管を下部に備えた筒状槽を配置し、該筒状槽内を減圧して該溶鋼を取鍋と筒状槽間で環流させると同時に、溶鋼の各種精錬処理を順次行うRH脱ガス装置による溶鋼の精錬方法において、
前記浸漬管を溶鋼に浸漬し、前記筒状槽内圧力を減圧して精錬を開始してから1分以上5分経過するまでは、該溶鋼への浸漬管の浸漬深さを前記筒状槽内の溶鋼深さが100mm以上でかつ200mm未満となるように、通常の精錬時より浅くし、その後に該溶鋼への浸漬管の浸漬深さを前記筒状槽内の溶鋼深さが200mm以上となる通常精錬時の浸漬深さとして精錬することを特徴とするRH脱ガス装置による溶鋼の精錬方法である。
【0010】
この場合、さらに精錬の途中で溶鋼にアルミニウムを添加して脱酸を開始してから1分以上5分経過するまでは、前記浸漬管の浸漬深さを前記筒状槽内の溶鋼深さが100mm以上でかつ200mm未満となるように、通常の精錬時より浅くし、その後に該溶鋼への浸漬管の浸漬深さを前記筒状槽内の溶鋼深さが200mm以上となる通常精錬時の浸漬深さとして精錬しても良い。また、前記浸漬管の浸漬深さを通常の精錬時より浅くしているときの前記筒状槽内の圧力を13.3kPa(100torr)以下とするのが好ましい。
【0011】
本発明によれば、操業中における真空槽内の溶鋼深さを、各種の精錬処理を行う時期に対応させて取鍋に保持した溶鋼への浸漬管の浸漬深さを調整することで適正にしたので、真空槽内に吸い込まれたスラグに起因する溶鋼中の介在物を従来より低減できるようになる。その結果、介在物に起因した鋼材の欠陥が低減される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、発明をなすに至った経緯もまじえ、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
本発明を適用するRH脱ガス装置は、溶鋼の二次精錬に一般的に使用されるもので良い。すなわち、図1に示すように、円筒状の真空槽1とその下部に設けられた浸漬管(一方を上昇管2、他方を下降管3と称する)からなり、真空槽1には図示しない真空排気系へと連なる排気ダクト7が設けられている。この一般的なRH脱ガス装置では、取鍋4内に保持した溶鋼5に前記浸漬管2、3を浸漬するために、該取鍋4を上昇させる昇降手段(例えば、油圧シリンダー8等)が設けられている。なお、取鍋4を固定しておき、真空槽1を上下するようにしたRH脱ガス装置も存在するが、勿論そのような装置であっても、本発明を適用するにあたって何ら問題ない。また、昇降手段が図示のように直接取鍋を押し上げるのではなく、取鍋を保持した台車の全体又は一部分を押し上げるものであっても良い。さらに、かかるRH脱ガス装置に種々の精錬機能を付加するために、真空槽の下部側壁に酸素や不活性ガス等のガス吹込み羽口(図示せず)を設けたもの、真空槽の上部からガス、燃料あるいは精錬用フラックス等を吹込むランス(図示せず)を設けたものもあるが、これらいずれの機能が併設してあっても構わない。
【0014】
まず、本発明者は、浸漬管2、3を溶鋼5に深く浸漬する従来の真空槽1内へのスラグ吸い込み防止方法がなぜ効果を奏さないかを綿密に検討した。その結果、従来の方法では、確かに初期のスラグ9の吸い込みが生じ難い反面、一旦真空槽1内に吸い上げられたスラグ9は、精錬中に下降管3から取鍋4内へ容易に排出されないことを突きとめた。そこで、本発明者は、真空槽1内にスラグ9を吸い込まないようにするのではなく、逆に吸い込んだスラグ9を容易に取鍋4内に排出し易くすることを着想し、本発明を完成させたのである。
【0015】
つまり、本発明では、取鍋4内の溶鋼5に真空槽1下部に設けた浸漬管2、3を浸漬して精錬を開始してから一定時間、取鍋4内の溶鋼5への浸漬管の浸漬深さを通常の精錬時より浅くする。このような操業は、従来、取鍋4内の溶鋼5を真空槽1内へ吸い込み易いものとみなされ、決して採用されることがなかったものである。しかし、本発明者が調査したところによると、確かに浸漬を開始した際には浸漬管2、3の直下及びその周囲にあるスラグ9は、真空槽1内に吸い上げられるものの、その後は環流の開始と共にむしろ下降管3を通じて取鍋4内に排出されるスラグ量がこれを上回り、初期に真空槽1内に吸い上げられたスラグ9の殆どを排出できることが判明した。
【0016】
ところが、このような浅い浸漬深さでの操業を長時間続けると、以下のような問題が発生することも明らかとなった。第1には、浸漬深さが浅いと、真空槽1内の溶鋼浴の深さが浅くなり、上昇管2に吹込んだ環流促進ガスの気泡が溶鋼中に分散する前に浴面に吹き抜けて前記ガスリフトポンプの効果が減殺されてしまうことである。このことは、環流速度の減少を来すので、精錬効率の悪化を招く。第2には、取鍋4内の溶鋼浴面近くに溶鋼5の流動が生じ易く、これによって取鍋4内の溶鋼浴面上のスラグ9が次第に溶融して上昇管2から真空槽1内に吸い上げられ易くなることである。また、第3には、溶鋼浴面上から酸素を吹き付けて脱炭精錬を行う場合には、酸素ガスジェットによって真空槽1の敷(底)耐火物10が溶損し易くなることである。
【0017】
そこで、これらの問題を解消する対策として、本発明では、上記のような浸漬深さを浅くする操業を、精錬の全期間にわたって継続して行うのではなく、精錬を開始してから一定時間に限定し、それ以降は、通常の浸漬深さでの操業に戻すことにした。具体的には、取鍋4内の溶鋼5に真空槽1下部に設けた浸漬管2、3を浸漬し、該槽1内の圧力を13.3kPa(100torr)以下に減圧してから最長で5分までの間を真空槽1内の溶鋼深さを200mm未満に、それ以降は真空槽内の溶鋼深さが200mm以上、好ましくは300mm以上の通常の操業条件となるように、取鍋4内の溶鋼5への浸漬管の浸漬深さを調整するのである。
【0018】
また、真空槽1内から取鍋4内へのスラグ9の排出され易さだけの観点では、真空槽1内の溶鋼深さを浅くするだけで良い。ところが、真空槽1内の溶鋼深さは、槽内の圧力と浸漬管の取鍋内溶鋼への浸漬深さとに依存し、槽内の圧力が高いほど浅く、浸漬深さが浅い程浅くなる。したがって、真空槽1内の溶鋼深さを浅くするには、槽内の圧力を高めに設定するという選択肢も考えられる。しかしながら、真空槽1内の圧力を高めにすることは、真空脱ガス精錬そのものの効率を低下させることになるので、本発明では、本来の真空脱ガス精錬の効率をできるだけ損なわないで真空槽1内のスラグ9を排出させるために、真空槽1内の圧力を13.3kPa(100torr)以下まで減圧した状態で浸漬深さをコントロールして槽内の溶鋼深さを200mm未満に調整するのである。槽内の溶鋼深さを200mm未満とする理由は、下記の通りである。
【0019】
すなわち、本発明者がスラグ9として流動パラフィン、溶鋼5として水を使用した水モデル実験(相似条件は、フルード数相似とした)によって確認したところによれば、槽内の水の深さが浅いときには、槽内水面上の流動パラフィンが下降管を下降する水流の渦の中に連続的に吸い込まれて真空槽外に排出されるが、槽内水深さが溶鋼相当で200mm以上となると、このような巻き込み減少が消滅し、槽外への排出が極端に減少したからである。なお、真空槽内の溶鋼深さがあまりにも浅いと、前記したように、ガスリフトポンプの効果が減殺されると共に、溶鋼と真空槽内の敷耐火物との摩擦の影響で溶鋼の環流が不十分となり、かえってスラグの排出に不利になる。このような観点から、真空槽内の溶鋼深さは、100mm以上確保する。
【0020】
また、真空槽1内の圧力を13.3kPa(100torr)以下とするのは、脱炭や脱ガス精錬の初期の精錬効率を十分高く確保するためである。なお、未脱酸溶鋼を処理する場合は、溶鋼5の突沸を避けるために6.7〜13.3kPa(50〜100torr)の圧力であるのが好ましく、転炉出鋼時に十分脱酸した溶鋼を処理する場合は,0.133kPa(1torr)以下の圧力でも良い。
【0021】
さらに、このような槽内の溶鋼深さを浅くするための浸漬管の浸漬深さ調整を行う時間は、最大で5分間とするのが好ましい。その理由は、5分間を超えると、取鍋4内の溶鋼浴面上のスラグ9が軟化溶融して流動性が増し、上昇管2の周囲の溶鋼5の流動に引き込まれて再度真空槽1に吸い上げられ易くなるためである。したがって、その後は通常の操業条件、すなわち真空槽1内の溶鋼深さが200mm以上の条件となるように浸漬管2、3の浸漬深さを変えるのである。また、上記した槽1内の溶鋼深さを浅くするための浸漬管の浸漬深さを調整する時間の下限は、少なくとも1分、好ましくは2分以上とするのが好ましい。その理由は、水モデル実験によれば、1分間の処理で初期に吸い上げたスラグの約70%が槽外に排出され、2分間ではほぼ90%を排出できることが確認されたからである。
【0022】
引き続き、本発明者がさらに検討を加えたところ、RH脱ガス処理の際にアルミニウムで脱酸を行うヒートについては、上記のように初期に真空槽1内に吸い上げられるスラグ9だけでなく、脱酸反応によって生成した脱酸生成物も真空槽1に滞留して溶鋼5の清浄度に悪影響を及ぼすことを見出した。すなわち、脱酸用のアルミニウムは、真空槽1の上部に設けられたロータリーフィーダー等(図示せず)の添加手段から槽1内の溶鋼5に投入されるのが普通である。したがって、アルミニウムは、まず槽1内の溶鋼中の酸素と反応して多量の脱酸生成物(アルミナ)を発生させる。その後、一部のアルミニウムは、溶鋼中に溶解して溶鋼5と共に下降管3を通って取鍋4内の溶鋼5中に移行し、取鍋4内で脱酸反応を継続する。取鍋4内で生成する脱酸生成物については、溶鋼5の環流による撹拌力によって互いに衝突して合体し、取鍋4内の溶鋼浴面上のスラグ9に吸収されるので問題とはならない。しかしながら、真空槽1内で発生したアルミナは、槽内溶鋼5の浴面上に浮上し、精錬の終了まで残存し続ける。そして、精錬を終了して真空槽1を大気圧にリークした際に一気に取鍋4内の溶鋼5中に流入して、溶鋼5を汚染するのである。精錬終了後は、もはや取鍋4内の溶鋼5を撹拌する手段はないから、溶鋼中の介在物は浮上分離されることなく連続鋳造によって凝固されるまで持ち越されるのである。
【0023】
そこで、本発明者は、このように槽1内において発生した脱酸生成物を精錬中に速やかに取鍋4内に排出することも想到した。すなわち、RH脱ガス精錬時にアルミニウム脱酸を伴う溶鋼5では、さらに精錬の途中において、溶鋼5内にアルミニウムを添加して脱酸を開始してから一定時間、取鍋4内の溶鋼5への浸漬管の浸漬深さを通常の精錬時より浅く調整し、その後、該浸漬深さを通常の精錬時の浸漬深さとして操業するのである。取鍋4内の溶鋼5への浸漬管2、3の浸漬深さを通常の精錬時より浅くすることによって、前述した初期に吸い上げられたスラグ9と同様に、脱酸生成物を速やかに真空槽1から取鍋4中へ排出することができる。しかし、このまま浸漬深さの浅い状態を継続すると、溶鋼5の撹拌が弱い状態が継続するために、取鍋4内の溶鋼中の脱酸生成物を浮上分離する効率が低下して好ましくない。そこで、本発明では、一定時間だけ浸漬深さの浅い状態を継続した後は、再度通常の浸漬深さでの精錬を継続することにした。
【0024】
より具体的には、溶鋼5内にアルミニウムを添加して脱酸を開始してから最長で5分までの間を真空槽1内の溶鋼深さを200mm未満となるようにし、それ以降は真空槽1内の溶鋼深さが200mm以上となるように、取鍋4内の溶鋼5への浸漬管2、3の浸漬深さを調整することが好ましい。本発明者は、アルミナを模すものとしてポリエチレンビーズを用いて水モデル実験を行った。その結果、前述したスラグの排出実験と同様に、真空槽1内の溶鋼深さが200mmを境界として、それより浅い場合には、下降管内の下降流中の渦に前記ポリエチレンビーズが巻き込まれて取鍋4内に排出されるのに対して、200mm以上ではそのような巻き込みが発生しないことを確認した。
【0025】
なお、真空槽1内の溶鋼深さがあまりにも浅いと、前述したように、ガスリフトポンプの効果が減殺されると共に、溶鋼5と真空槽1内の敷耐火物との摩擦の影響で溶鋼の環流が不十分となり、かえって介在物の排出に不利になる。このような観点から、真空槽1内の溶鋼深さは、100mm以上確保する。また、このような浸漬深さを浅くする調整を行う時間は、最長で5分である。5分間を超えると、取鍋4内の溶鋼浴面上のスラグ9が溶融して流動性が増し、上昇管2の周囲の溶鋼5の流動に引き込まれて、再度真空槽1に吸い上げられ易くなると共に、取鍋4内の溶鋼5の撹拌が弱い時間が長くなって、精錬時間が長くなるからである。また、槽1内の溶鋼深さを浅くするための浸漬深さの調整を行う時間の下限は、少なくとも1分、好ましくは2分以上とするのが良い。その理由は、水モデル実験によれば、1分間の処理で槽内で生成したアルミナを模したポリエチレンビーズの約70%が槽外に排出され、2分間ではほぼ90%を排出できることが確認されたからである。
【0026】
【実施例】
260トンの溶鋼を処理するRH脱ガス装置において、従来の操業と本発明に係る方法を用いた操業を行い、その効果を比較した。
【0027】
まず、炭素(C)濃度が4.3質量%の溶銑を底吹き転炉に装入して脱炭精錬を行い、C濃度が0.03〜0.04質量%の溶鋼として、脱酸剤を添加することなく取鍋に出鋼した。そして、取鍋内の溶鋼上のスラグにアルミ滓を投入し、ランスを介してガスを吹き込みスラグを撹拌してスラグ中のT.Feを1質量%に低減し、この溶鋼をRH脱ガス装置を用いて脱炭精錬及び脱酸精錬を順次行った。なお、以下に記載する比較例、本発明例では、真空槽内の溶鋼の深さ(D:mm)は、浸漬管の下端から真空槽の敷レンガ上面までの距離(L:mm)、真空槽内の圧力(P:kPa(torr))、浸漬管の取鍋内溶鋼への浸漬深さ(H:mm)を用いて、図2の関係から力学的釣り合いによって導かれる次式により計算で求めた。
【0028】
D=H−L+13.6×(760−P)/7
(比較例)
まず、効果を比較する基準とするために行った従来法による例(比較例という)を説明する。脱炭精錬は、真空槽下部の浸漬管を取鍋内溶鋼に650mm浸漬してから真空槽内を減圧し、槽内圧力が13.3kPa(100torr)となったところで(このときの真空槽内の溶鋼深さ(D)は230mmであった),真空槽の上部から挿入した酸素ランスを介して真空槽内溶鋼の表面に酸素を吹き付けて5分間の酸素吹錬脱炭を行った後、酸素を停止して10分間の真空脱炭を行い、溶鋼中の炭素濃凌を20ppm(0.0020質量%)まで低下した。この時の溶鋼中の溶解酸素濃度は、約300ppm(0.03質量%)であった。酸素吹錬脱炭中、真空槽内の圧力は13.3kPa(100torr)から6.7kPa(50torr)に推移し(このときの真空槽内の溶鋼深さ(D)は330mm)、真空脱炭時の真空槽内の圧力は、約1.33〜0.133kPa(10〜1torr)に調整した(この時の真空槽内の溶鋼深さ(d)は410〜420mm)。
【0029】
真空脱炭の終了後、引き続き真空槽の上部に設けたロータリーフィーダーから真空槽内の溶鋼にアルミニウムを投入して脱酸処理を行った。アルミニウムの投入後10分間は槽内の圧力を0.0133kPa(0.1torr)として環流を続け(このときの真空槽内の溶鋼深さ(D)は430mm)、脱酸反応によって生成したアルミナ介在物の浮上分離を図った。その後、真空槽内をアルゴンガスで大気圧までリークし、RH脱ガス装置での精錬を終了した。精錬終了後の溶鋼中のC濃度は21ppm、溶解酸素濃度は1ppm、トータル酸素濃度は25ppmであった。
【0030】
(本発明例1)
前述のように転炉で脱炭精錬してから取鍋に出鋼した溶鋼に、スラグの還元処理を施した後、RH脱ガス装置で脱炭精錬及び脱酸精錬を順次行った。
【0031】
脱炭精錬は、真空槽下部の浸漬管を取鍋内の溶鋼に550mm浸漬してから真空槽内を減圧し、槽内の圧力が13.3kPa(100torr)となったところで(このときの真空槽内の溶鋼深さ(D)は130mmであった)真空槽上部から挿入した酸素ランスを介して真空槽内溶鋼の表面に酸素を吹き付けて、5分間の酸素吹錬脱炭を行った。酸素の吹き付けを開始してから3分経過した時(この時の真空槽内の圧力は13.3kPa(100torr)であり、真空槽内の溶鋼深さは130mmであった)に取鍋の位置をさらに上昇して、浸漬管の浸漬深さを650mmとした。これによって、真空槽内の溶鋼深さは230mmとなった。酸素吹錬脱炭の後、引き続き酸素を停止して10分間の真空脱炭を行い、溶鋼中の炭素濃度を21ppm(0.0021質量%)まで低下した。この時の溶鋼中の溶解酸素濃度は、約300ppm(0.03質量%)であった。酸素吹錬脱炭中、真空槽内の圧力は、13.3〜6.7kPa(100torrから50torr)に推移し(この時の真空槽内の溶鋼深さ(D)は330mm)、真空脱炭時の真空槽内圧力は、約1.33〜0.133kPa(10〜1torr)に調整した(この時の真空槽内溶鋼深さ(D)は410〜420mm)。
【0032】
真空脱炭の終了後、引き続き真空糟の上部に設けたロータリーフィーダーから真空槽内の溶鋼にアルミニウムを投入して脱酸を行った。アルミニウムの投入後10分間槽内圧力を0.0133kPa(0.1torr)として環流を続け(この時の真空槽内溶鋼深さ(D)は430mm)、脱酸反応によって生成したアルミナ介在物の浮上分離を図った。
【0033】
その後、真空槽内をアルゴンガスで大気圧までリークし、RH脱ガス装置による精錬を終了した。精錬終了後の溶鋼中炭素(C)濃度は20ppm、溶解酸素濃度は1ppm、トータル酸素濃度は15ppmであった。
【0034】
(本発明例2)
前述のように転炉で脱炭精錬し取鍋に出鋼した溶鋼に、スラグの還元処理を施した後、RH脱ガス装置にて脱炭精錬及び脱酸精錬を順次行った。
【0035】
脱炭精錬は、真空槽下部の浸漬管を取鍋内の溶鋼に550mm浸漬してから真空槽内を減圧し、槽内の圧力が13.3kPa(100torr)となったところで(この時の真空槽内の溶鋼深さ(D)は130mmであった)真空槽上部から挿入した酸素ランスを介して真空槽内溶鋼の表面に酸素を吹き付けて5分間の酸素吹錬脱炭を行った。酸素の吹き付けを開始してから3分経過した時(この時の真空槽内の圧力は13.3kPa(100torr)であり、真空槽内の溶鋼深さ(D)は130mmであった)に,取鍋の位置をさらに上昇して浸漬管の浸漬深さ(H)を650mmとした。これによって真空槽内の溶鋼深さ(D)は,230mmとなった。酸素吹錬脱炭の後、引き続き酸素を停止して10分間の真空脱炭を行い、溶鋼中の炭素濃度を21ppm(0.0021質量%)まで低下した。この時の溶鋼中の溶解酸素濃度は、約300ppm(0.03質量%)であった。酸素吹錬脱炭中、真空槽内の圧力は13.3〜6.7kPa(100torrから50torr)に推移し(このときの真空槽内溶鋼深さは330mm)、真空脱炭時の真空槽内の圧力は,約1.33〜0.133kPa(10〜1torr)に調整した(このときの真空槽内の溶鋼深さ(D)は410〜420mm)。
【0036】
真空脱炭の終了後、引き続き真空槽上部に設けたロータリーフィーダーから真空槽内の溶鋼にアルミニウムを投入して脱酸を行った。アルミニウムの投入後直ちに取鍋を下降して浸漬管の浸漬深さ(H)を400mmとし(この時の真空槽内の溶鋼深さ(D)は170mm)、この状態で3分間環流を行った後、取鍋を上昇させて浸漬管の浸漬深さ(H)を650mmに戻し(この時の真空槽内の溶鋼深さ(D)は430mm)として,さらに7分間の環流を続け、脱酸反応によって生成したアルミナ介在物の浮上分離を図った。アルミニウムの投入から以降の真空槽内の圧力は0.0133kPa(0.1torr)に調整した。その後、真空槽内をアルゴンガスで大気圧までリークし、RH脱ガス装置による精錬を終了した。精錬終了後の溶鋼中炭素(C)濃度は21ppm、溶解酸素濃度は1ppm、トータル酸素濃度は8ppmであった。
【0037】
以上のことから、溶鋼中の介在物の指標となる溶鋼中のトータル酸素濃度(溶解酸素と介在物として溶鋼中に懸濁している酸化物中の酸素の合算量)は、RH脱ガス精錬初期のスラグ排出を行った本発明例では、このような処理を行わなかった従来例の3/5に低減できた。また、脱酸剤のアルミニウム投入後のアルミナの排出処理をも行った本発明例2では、従来例の1/3以下に低減できた。さらに、本発明では、脱炭精錬効率は従来例と何ら遜色がないことも明らかとなった。
【0038】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明により、RH脱ガス処理の開始時に真空槽内に吸い上げられるスラグを効果的に取鍋に排出することができ、あるいはさらにアルミニウム脱酸によって生成したアルミナをも効果的に取鍋に排出することができるようになる。その結果、溶鋼中のスラグや脱酸生成物に起因する非金属介在物を飛躍的に低減することができるという顕著な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的なRH脱ガス装置を説明する横断面図である。
【図2】図1の浸漬管の近傍を拡大した図である。
【符号の説明】
1 真空槽(筒状槽)
2 上昇管
3 下降管
4 取鍋
5 溶鋼
6 ガス
7 排気ダクト
8 油圧シリンダー等
9 スラグ
10 敷耐火物
Claims (3)
- 取鍋に保持した溶鋼に、2本の浸漬管を下部に備えた筒状槽を配置し、該筒状槽内を減圧して該溶鋼を取鍋と筒状槽間で環流させると同時に、溶鋼の各種精錬処理を順次行うRH脱ガス装置による溶鋼の精錬方法において、
前記浸漬管を溶鋼に浸漬し、前記筒状槽内圧力を減圧して精錬を開始してから1分以上5分経過するまでは、該溶鋼への浸漬管の浸漬深さを前記筒状槽内の溶鋼深さが100mm以上でかつ200mm未満となるように、通常の精錬時より浅くし、その後に該溶鋼への浸漬管の浸漬深さを前記筒状槽内の溶鋼深さが200mm以上となる通常精錬時の浸漬深さとして精錬することを特徴とするRH脱ガス装置による溶鋼の精錬方法。 - さらに精錬の途中で溶鋼にアルミニウムを添加して脱酸を開始してから1分以上5分経過するまでは、前記浸漬管の浸漬深さを前記筒状槽内の溶鋼深さが100mm以上でかつ200mm未満となるように、通常の精錬時より浅くし、その後に該溶鋼への浸漬管の浸漬深さを前記筒状槽内の溶鋼深さが200mm以上となる通常精錬時の浸漬深さとして精錬することを特徴とする請求項1記載のRH脱ガス装置による溶鋼の精錬方法。
- 前記浸漬管の浸漬深さを通常の精錬時より浅くしているときの前記筒状槽内の圧力を13.3kPa(100torr)以下とすることを特徴とする請求項1又は2記載のRH脱ガス装置による溶鋼の精錬方法。
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