JP5428447B2 - Rh真空脱ガス装置における溶鋼の精錬方法 - Google Patents

Rh真空脱ガス装置における溶鋼の精錬方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5428447B2
JP5428447B2 JP2009080772A JP2009080772A JP5428447B2 JP 5428447 B2 JP5428447 B2 JP 5428447B2 JP 2009080772 A JP2009080772 A JP 2009080772A JP 2009080772 A JP2009080772 A JP 2009080772A JP 5428447 B2 JP5428447 B2 JP 5428447B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
molten steel
gas
nitrogen
decarburization
vacuum degassing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2009080772A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009263783A (ja
Inventor
大輔 高橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2009080772A priority Critical patent/JP5428447B2/ja
Publication of JP2009263783A publication Critical patent/JP2009263783A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5428447B2 publication Critical patent/JP5428447B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、RH真空脱ガス装置における溶鋼の精錬方法に関し、詳しくは、RH真空脱ガス装置の上昇側浸漬管から吹き込む環流用ガスとして、窒素ガスを使用した精錬方法に関するものである。
近年、鋼の高純度化並びに高清浄度化が従来にも増して要求されており、この要求に対処するべく、鋼の精錬工程では、RH真空脱ガス装置を始めとする真空脱ガス設備を用いた精錬が増加している。真空脱ガス設備を用いることで、水素や窒素などのガス成分が除去されるのみならず、溶鋼を強攪拌することによって溶鋼中に懸濁する酸化物の浮上・分離が促進される、或いは、極低炭素鋼の製造が可能となるなどの理由からである。
真空脱ガス設備には種々の型式があるが、鋼の精錬工程で現在最も一般的に利用されている装置はRH真空脱ガス装置である。このRH真空脱ガス装置は、真空槽の下部に配置された上昇側浸漬管及び下降側浸漬管を取鍋内の溶鋼中に浸漬させ、真空槽内を減圧するとともに上昇側浸漬管にArガスなどを還流用ガスとして吹き込み、環流用ガスによるガスリフトポンプ効果によって取鍋内の溶鋼を真空槽に導入し、真空槽内で溶鋼を減圧化に曝し、その後、下降側浸漬管を介して取鍋に溶鋼を戻すことで、溶鋼に真空脱ガス精錬を施す装置である。取鍋から真空槽内に流入し、真空槽内から取鍋に戻る溶鋼の流れを「環流」と呼んでいる。
この場合に、上昇側浸漬管から吹き込む環流用ガスとしては、一般的にArガスが使用されている(例えば、特許文献1を参照)。Arガスは不活性ガスであるので、溶鋼は酸化されず、また、溶鋼中に溶解しないので所定のガスリフトポンプ効果が得られるからである。Arガスに比較して安価である窒素ガスや圧搾空気は環流用ガスとして使用されない。空気は溶鋼を酸化させ、窒素ガスは溶鋼中に溶解するので、溶鋼中の窒素濃度を上昇させ、鋼材の特性を劣化させるからである。窒素ガスは溶鋼に溶解するので、ガスリフトポンプ効果が低下して溶鋼の環流量が減少するという問題もある。但し、窒素を化学成分として必要とする鋼では、溶鋼中の窒素含有量を高めるために、窒素ガスとArガスとの混合ガスを、環流用ガスとして上昇側浸漬管から吹き込むこともある(例えば、特許文献2を参照)。
特開平6−192724号公報 特開平6−17113号公報
上記説明のように、RH真空脱ガス装置の環流用ガスとしては、高濃度の窒素を含有する特殊鋼の精錬を除き、窒素ガスを環流用ガスとして使用することはない。しかしながら、Arガスは窒素ガスの5〜6倍の価格であり、環流用ガスとしてArガスを使用することは、RH真空脱ガス装置における処理コストを高くする一因であった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、RH真空脱ガス装置で溶鋼を精錬するにあたり、溶鋼中への窒素のピックアップを抑制し、しかも、溶鋼の環流量を減少させることなく、安価な窒素ガスを環流用ガスとして使用することのできる、RH真空脱ガス装置における溶鋼の精錬方法を提供することである。
上記課題を解決するための第1の発明に係るRH真空脱ガス装置における溶鋼の精錬方法は、取鍋とRH真空脱ガス装置の真空槽との間で溶鋼を環流させながら、未脱酸溶鋼を減圧下で脱炭処理し、該脱炭処理の終了後に脱酸剤を添加して溶鋼を脱酸処理する、RH真空脱ガス装置における溶鋼の精錬方法において、上昇側浸漬管から吹き込む環流用ガスとして窒素ガスを単独で使用して前記脱炭処理を実施し、環流用ガスを窒素ガスからArガスへと切り替えた後に、脱酸剤を添加して溶鋼を脱酸処理することを特徴とするものである。
第2の発明に係るRH真空脱ガス装置における溶鋼の精錬方法は、第1の発明において、環流用ガスとして窒素ガスを単独で使用したときの環流時間(tN2)が下記の(1)式の範囲を満足することを特徴とするものである。
ΔN≧[(1-Kc)/1.2]×[3.15×10-0.0014/(1.776+300×10α)]×tN2 …(1)
ここで、αは下記の(2)式で示される。
α=-0.002-0.17×[%O]+log[%O] …(2)
但し、(1)式及び(2)式において、ΔNは、窒素濃度の規格上限値と脱炭処理前の溶鋼中窒素濃度との差分値(ppm)、Kcは、脱炭反応速度定数(0.1〜0.5)、tN2は、窒素ガス単独の環流時間(分)、[%O]は、脱炭反応終了時の溶鋼中のフリー酸素濃度(質量%)である。
本発明によれば、溶鋼が未脱酸状態であり、溶鋼中のフリー酸素濃度が高い脱炭処理の時期に限って、環流用ガスとして窒素ガスを使用するので、溶鋼中のフリー酸素が表面活性元素として機能し、窒素ガスの溶鋼への溶解を阻止するので、窒素ガスの溶鋼への溶解は極めて少なく、溶鋼中の窒素濃度のピックアップが抑制されるとともに、Arガスを環流用ガスとして使用した場合と同等に溶鋼を環流させることができる。その結果、窒素ガスはArガスに比較して安価であるので、RH真空脱ガス装置における処理コストを大幅に削減することが可能となる。
本発明を実施する際に用いたRH真空脱ガス装置の概略断面図である。 窒素ガスを環流用ガスとして使用したときの、脱炭反応終了時の溶鋼中フリー酸素濃度と溶鋼中窒素濃度の上昇速度との関係を示す図である。
以下、本発明を説明する。本発明者等は、RH真空脱ガス装置の環流用ガスとして窒素ガスを使用することを検討した。
溶鋼中にフリー酸素(「溶存酸素」ともいう)が存在する場合、フリー酸素は、表面活性元素であるので、溶鋼中への窒素ガスの溶解を阻害することは知られており、低窒素鋼溶製の製造プロセスでも、転炉からの出鋼時に大気からの窒素ガスのピックアップを抑止する目的で、未脱酸のまま出鋼することが採用されている。そこで、溶鋼への吸窒が抑止できる条件であるならば、環流用ガスとして安価な窒素ガスが適用可能ではないかと考えた。
炭素濃度が0.003質量%以下の極低炭素鋼や、大気圧下での転炉脱炭精錬だけでは溶製困難な炭素濃度が0.03質量%以下の低炭素鋼では、RH真空脱ガス装置において未脱酸の状態で脱炭精錬が行われている。この脱炭精錬においては、溶鋼中にフリー酸素が存在することから窒素の溶解が阻害されること、また、仮に窒素ガスが溶解したとしても、脱炭反応により生ずるCOガス気泡によって脱窒反応が期待できることから、RH真空脱ガス装置における脱炭精錬時には、環流用ガスとして窒素ガスの使用が可能と考え、試験を実施した。
RH真空脱ガス装置における脱炭精錬時、窒素ガスを環流用ガスとして使用する時間を変化させて溶鋼中の窒素濃度の上昇量を調査した。その結果、脱炭精錬時、溶鋼中にフリー酸素が150ppm以上確保されていれば、溶鋼中の窒素濃度はほとんど上昇しないことが確認できた。尚、極低炭素鋼などを減圧下で脱炭処理する場合、溶鋼中のフリー酸素濃度を150ppm以上とすることは、脱炭反応を安定化するための一般的な制御手法であり、何ら特別のことではなく、通常行われていることである。また、フリー酸素が150ppm以下の場合でも、フリー酸素が存在することから窒素の上昇量は少なく、窒素規格の上限値が高い、或いは窒素規格の上限値までには余裕があり、或る程度の窒素の上昇が許容できる場合には、環流用ガスとして窒素ガスを適用可能である。
また、環流用ガスとして窒素ガスを使用しても、Arガスを環流用ガスとして行った脱炭処理と比較して脱炭反応速度は同一レベルであることを確認した。
本発明は、これらの検討結果に基づいてなされたものであり、RH真空脱ガス装置において、未脱酸溶鋼を減圧下で脱炭処理し、この脱炭処理の終了後に脱酸剤を添加して溶鋼を脱酸処理して溶鋼を溶製するにあたり、脱炭処理の期間は、上昇側浸漬管から吹き込む環流用ガスとして窒素ガスを単独で使用し、環流用ガスを窒素ガスからArガスへと切り替えた後に、脱酸剤を添加して溶鋼を脱酸処理することを特徴とする。
以下、本発明を具体的に説明する。
高炉から出銑された溶銑を転炉において、酸素ガスの上吹き、底吹き、或いは上底吹きにより脱炭精錬し、得られた溶鋼を転炉から取鍋に出鋼する。本発明で対象とする鋼種は、炭素濃度が0.003質量%以下の極低炭素鋼、及び、大気圧下での転炉脱炭精錬だけでは溶製困難な炭素濃度が0.03質量%以下の低炭素鋼であり、従って、転炉においては0.03〜0.08質量%まで脱炭精錬する。0.03質量%未満まで転炉で脱炭すると、鉄の酸化が著しく、歩留りの低下や清浄性の低下を招くので好ましくなく、一方、0.08質量%を越えると次工程のRH真空脱ガス装置での脱炭精錬に長時間を費やすので好ましくない。
得られた溶鋼を、図1に示すRH真空脱ガス装置に搬送し、RH真空脱ガス装置にて減圧下での脱炭精錬を実施する。尚、図1は、本発明を実施する際に用いたRH真空脱ガス装置の概略断面図である。
図1に示すように、RH真空脱ガス装置1は、上部槽6及び下部槽7からなる真空槽5と、下部槽7の下部に設けられた上昇側浸漬管8及び下降側浸漬管9とを備え、上部槽6には、排気装置(図示せず)と接続するダクト11と、原料投入口12と、真空槽5の内部を上下方向に移動可能な上吹きランス13とが備えられ、また、上昇側浸漬管8には環流用ガス吹込管10が設けられている。環流用ガス吹込管10からは窒素ガスまたはArガスが環流用ガスとして上昇側浸漬管8の内部に吹き込まれる構造となっている。上吹きランス13は、その先端に設置されたラバールノズル(図示せず)から真空槽5を環流する溶鋼3に向けて酸素ガス、空気、酸素富化空気、Arガスで希釈した酸素ガスなどの酸素含有ガスを吹き付けて溶鋼3のフリー酸素濃度を高め、減圧下での脱炭精錬(以下、「真空脱炭精錬」とも記す)を促進させるための装置であるが、上吹きランス13が設置されていなくても、溶鋼中に含有されるフリー酸素だけでも溶鋼3の真空脱炭精錬を行うことができることから、本発明を実施する上では、必ずしも必要な装置ではない。このようにしてRH真空脱ガス装置1が構成されている。
ここで、真空脱炭精錬は、溶鋼中の炭素と溶鋼中のフリー酸素とが反応(C+O=CO)して起こることから、溶鋼中のフリー酸素濃度が高いほど真空脱炭精錬の反応速度が速くなる。そのため、転炉で脱炭精錬した後の溶鋼3にAlやSiなどの脱酸剤を添加せず、未脱酸状態のままRH真空脱ガス装置1に搬送する。AlやSiなどの脱酸剤で脱酸しても、真空脱炭精錬によって溶鋼中のAl及びSiは酸化・除去されてしまうために無意味である。
RH真空脱ガス装置1において、先ず、溶鋼3を収納する取鍋2を真空槽5の直下に搬送し、取鍋2を昇降装置(図示せず)によって上昇させ、上昇側浸漬管8及び下降側浸漬管9を取鍋2に収容された溶鋼3に浸漬させる。次いで、環流用ガス吹込管10から上昇側浸漬管8の内部に窒素ガスを環流用ガスとして吹き込むとともに、真空槽5の内部をダクト11に連結される排気装置にて排気して真空槽5の内部を減圧する。真空槽5の内部が減圧されると、取鍋2に収容された溶鋼3は、環流用ガス吹込管10から吹き込まれる窒素ガスとともに上昇側浸漬管8を上昇して真空槽5の内部に流入し、その後、下降側浸漬管9を介して取鍋2に戻る流れ、所謂、環流を形成してRH真空脱ガス精錬が施される。取鍋2の内部には転炉精錬で発生したスラグ4が一部混入し、溶鋼3の湯面を覆っている。
溶鋼3の環流が始まり、溶鋼3が真空槽5の内部に流入すると、真空槽5の内部の圧力は大気圧よりも低いので、溶鋼中における炭素とフリー酸素との平衡状態は、大気圧の場合に比べて炭素濃度とフリー酸素濃度との積が小さくなる方向に移り、溶鋼3が未脱酸の状態であることから、溶鋼中の炭素とフリー酸素との反応つまり脱炭反応が進行する。その際、溶鋼中のフリー酸素濃度を高めるために、或いは、真空脱炭精錬中のフリー酸素濃度を150ppm以上に確保するために、上吹きランス13から酸素含有ガスを真空槽5の内部を還流する溶鋼3に向けて吹き付けてもよい。
このようにして溶鋼3の環流を継続することで真空脱炭精錬が進行し、真空脱炭精錬によって発生したCOガスは排ガスとともにダクト11を経由して排気される。真空脱炭精錬によって溶鋼中の炭素濃度が所定値まで低減したなら、環流用ガスを窒素ガス単独からArガス単独へと切り替える。切り替えの際の一時期に、窒素ガスとArガスとの混合ガスが吹き込まれるが何ら問題ない。
環流用ガスをArガスに切り替えた後、数秒〜十数秒経過したなら、つまり環流する溶鋼3に懸濁する窒素ガスが真空槽5に放出されたと推定されたなら、原料投入口12から脱酸剤として金属Alを添加して溶鋼3を脱酸する。この脱酸剤の添加により、溶鋼中のフリー酸素濃度は実質的にゼロになり、真空脱炭精錬が終了する。Al脱酸後、必要に応じて原料投入口12から合金鉄などを投入して溶鋼成分の微調整を実施した後に、RH真空脱ガス装置1における精錬を終了する。尚、本発明で対象とする極低炭素鋼及び低炭素鋼はAlキルド鋼であり、脱酸剤としては金属Alが使用される。
ここで、窒素ガスの溶鋼3への溶解速度について考察する。溶鋼3への窒素ガスの溶解反応は下記の(3)式で表される。
N2(gas)=2[N] …(3)
この(3)式で示す窒素ガスの溶鋼への溶解反応(吸窒反応)は、速度論的に一次反応であり(但し、脱窒反応は二次反応)、下記の(4)式で表されることが知られている。
dN/dt=A×KN’ …(4)
ここで、(4)式において、Aは、反応界面積の影響を含む変数、KN’は、見掛けの反応速度定数である。
溶鋼中に酸素(O)、硫黄(S)などの界面活性元素が多量に含まれる場合、脱窒反応及び吸窒反応は著しく阻害されることが知られており、そのような場合は、KN’は下記の(5)式で表わされる。
KN’=3.15×fN 2×[1/(1+300aO+130aS)] …(5)
但し、(5)式において、fNは、溶鉄中の窒素の活量係数、aOは、溶鉄中の酸素の活量、aSは、溶鉄中の硫黄の活量である。尚、溶鉄中の或る成分(=成分iとする)の活量ai及び活量係数fiは、下記の(6)式及び(7)式で表される。
ai=fi×[%i] …(6)
log fi=Σei j×[%j] …(7)
但し、(6)式及び(7)式において、ei jは、成分jが成分iに及ぼす成分iの相互作用助係数、[%i]は、成分iの濃度(質量%)、[%j]は、成分jの濃度(質量%)である。表1に、溶鋼中の窒素、酸素、硫黄に及ぼす成分jの相互作用助係数を示す。
Figure 0005428447
表1に示す相互作用助係数と脱炭処理中の対象溶鋼の成分から、溶鋼中の窒素の活量係数fN、硫黄の活量aS、酸素の活量aOを求めると、logfN=−0.0007、logaS=−2.236、logaO=−0.002−0.17×[%O]+log[%O]となり、その結果、KN’は下記の(8)式で表わされる。
KN’=3.15×10-0.0014/(1.776+300×10α) …(8)
但し、(8)式において、αは下記の(2)式で表される。
α=-0.002-0.17×[%O]+log[%O] …(2)
一方、(4)式における変数Aは、溶鋼中の脱炭反応により生じるCOガス気泡の影響を強く受け、脱炭反応速度Kcとの間に下記の(9)式の相関が得られた。
A=(1-Kc)/1.2 …(9)
但し、脱炭反応速度Kcは下記の(10)式で表される。
Kc=ln([%C]t-[%C]0)/t (0.1≦Kc≦0.5) …(10)
ここで、tは、脱炭処理時間(分)、[%C]tは、脱炭反応終了時の溶鋼中の炭素濃度(質量%)、[%C]0は、脱炭反応開始時の溶鋼中の炭素濃度(質量%)である。
(4)式、(8)式、(9)式から、溶鋼中の窒素上昇速度は下記の(11)式で表される。
UN2=dN/dt=[(1-Kc)/1.2]×[3.15×10-0.0014/(1.776+300×10α)] …(11)
但し、(11)式において、UN2は、溶鋼中の窒素上昇速度(ppm/分)、Kcは、脱炭反応速度定数(0.1〜0.5)、[%O]は、脱炭反応終了時の溶鋼中のフリー酸素濃度(質量%)である。
図2は、窒素ガスを環流用ガスとして使用した際に、脱炭反応終了時の溶鋼中フリー酸素濃度を変化させたときの溶鋼中窒素濃度の上昇速度を、上記の(11)式から算出したものである。
図2に示すように、脱炭反応終了時の溶鋼中フリー酸素濃度が高くなるほど窒素の上昇速度は遅く、脱炭反応終了時のフリー酸素濃度が150ppm以上になると、窒素上昇速度は0.4ppm/分以下となる。但し、脱炭反応終了時の溶鋼中フリー酸素濃度が高くなるほど窒素の上昇速度は遅くなるので、好ましくは、真空脱炭精錬時の溶鋼中フリー酸素濃度を300ppm以上確保することである。尚、図2では、Kc=0、つまり脱炭反応が進行しない場合のデータを示しているが、実際には、Kc=0となることはなく、このデータは、仮に脱炭反応が進行しない場合でも窒素上昇速度は限られた値であることを示すデータである。脱炭反応速度定数が大きくなるほど窒素上昇速度は抑制されることが分かる。
このように、窒素ガスを環流用ガスとして使用した場合の溶鋼中窒素濃度の上昇量は少ないものであるが、本発明で対象とする極低炭素鋼及び低炭素鋼の窒素濃度の上限値は様々であり、窒素ガスを環流用ガスとして使用すると、窒素の上限値を超える恐れもある。
(11)式より求まる窒素上昇速度(UN2)と、窒素濃度の規格上限値と脱炭処理前の溶鋼中窒素濃度との差分値(ΔN)とから、溶鋼中窒素濃度が上限値を超えないようにするための窒素ガス単独の環流時間(tN2)は、下記の(1)式によって定まる。即ち、窒素ガス単独の環流時間(tN2)は、下記の(1)式の範囲を満足することが好ましい。
ΔN≧[(1-Kc)/1.2]×[3.15×10-0.0014/(1.776+300×10α)]×tN2 …(1)
但し、(1)式において、ΔNは、窒素濃度の規格上限値と脱炭処理前の溶鋼中窒素濃度との差分値(ppm)、Kcは、脱炭反応速度定数(0.1〜0.5)、tN2は、窒素ガス単独の環流時間(分)である。
以上説明したように、本発明によれば、溶鋼が未脱酸状態であり、溶鋼中のフリー酸素濃度が高い脱炭処理の時期に限って環流用ガスとして窒素ガスを使用するので、溶鋼中のフリー酸素が表面活性元素として機能し、窒素ガスの溶鋼への溶解を阻止するので、窒素ガスの溶鋼への溶解は極めて少なく、溶鋼中の窒素濃度のピックアップが抑制されるとともに、Arガスを環流用ガスとして使用した場合と同等に溶鋼を環流させることが可能となる。
図1に示すRH真空脱ガス装置を用い、約350トンの取鍋内の極低炭素溶鋼に本発明を適用した。
転炉から出鋼された、炭素濃度が0.03〜0.06質量%の未脱酸の溶鋼をRH真空脱ガス装置に搬送し、窒素ガスのみを環流用ガスとして真空脱炭精錬した。この脱炭処理中、溶鋼中炭素濃度が0.003質量%以下になった時点で、還流用ガスを窒素ガスからArガスに切り替え、Arガスに切り替えた後、15秒経過した時点で金属Alを原料投入口から溶鋼に添加してAl脱酸し、その後、必要に応じて成分調整を施し、極低炭素溶鋼を溶製した。
表2に、環流用ガスとしての窒素ガスの吹き込み流量、吹き込み時間、そのときの脱炭速度、窒素ガス吹き込み終了時の溶鋼中酸素濃度、窒素ガス吹き込み中の溶鋼中窒素濃度の上昇量(実測値)を示す。また、表2には、(1)式の右辺により算出される窒素ガス吹き込み中の溶鋼中窒素濃度の上昇量(計算値)を併せて示す。
Figure 0005428447
表2に示すように、環流用ガスとして、毎分1600NLの窒素ガスを16分間吹き込んで極低炭素鋼の真空脱炭精錬を実施しても、溶鋼中の窒素のピックアップは高々4ppm程度であり、真空脱炭精錬時においては、窒素ガスを環流用ガスとしても問題のないことが確認できた。また、(1)式の右辺により算出される窒素のピックアップ量(計算値)と実測値とは良く一致しており、(1)式を用いることで、窒素ガスによる環流時の窒素のピックアップ量を制度良く推定できることも確認できた。
従来、極低炭素鋼の真空脱炭精錬には、環流用ガスとしてArガスを使用しており、本発明を適用することにより、極低炭素鋼の製造コストを大幅に削減することが可能となった。
1 RH真空脱ガス装置
2 取鍋
3 溶鋼
4 スラグ
5 真空槽
6 上部槽
7 下部槽
8 上昇側浸漬管
9 下降側浸漬管
10 環流用ガス吹込管
11 ダクト
12 原料投入口
13 上吹きランス

Claims (2)

  1. 取鍋とRH真空脱ガス装置の真空槽との間で溶鋼を環流させながら、未脱酸溶鋼を減圧下で脱炭処理し、該脱炭処理の終了後に脱酸剤を添加して溶鋼を脱酸処理する、RH真空脱ガス装置における溶鋼の精錬方法において、上昇側浸漬管から吹き込む環流用ガスとして窒素ガスを単独で使用して前記脱炭処理を実施し、環流用ガスを窒素ガスからArガスへと切り替えた後に、脱酸剤を添加して溶鋼を脱酸処理することを特徴とする、RH真空脱ガス装置における溶鋼の精錬方法。
  2. 環流用ガスとして窒素ガスを単独で使用したときの環流時間(tN2)が下記の(1)式の範囲を満足することを特徴とする、請求項1に記載のRH真空脱ガス装置における溶鋼の精錬方法。
    ΔN≧[(1-Kc)/1.2]×[3.15×10-0.0014/(1.776+300×10α)]×tN2 …(1)
    ここで、αは下記の(2)式で示される。
    α=-0.002-0.17×[%O]+log[%O] …(2)
    但し、(1)式及び(2)式において、
    ΔN:窒素濃度の規格上限値と脱炭処理前の溶鋼中窒素濃度との差分値(ppm)
    Kc:脱炭反応速度定数(0.1〜0.5)
    N2:窒素ガス単独の環流時間(分)
    [%O]:脱炭反応終了時の溶鋼中のフリー酸素濃度(質量%)
JP2009080772A 2008-03-31 2009-03-30 Rh真空脱ガス装置における溶鋼の精錬方法 Active JP5428447B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009080772A JP5428447B2 (ja) 2008-03-31 2009-03-30 Rh真空脱ガス装置における溶鋼の精錬方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008089114 2008-03-31
JP2008089114 2008-03-31
JP2009080772A JP5428447B2 (ja) 2008-03-31 2009-03-30 Rh真空脱ガス装置における溶鋼の精錬方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009263783A JP2009263783A (ja) 2009-11-12
JP5428447B2 true JP5428447B2 (ja) 2014-02-26

Family

ID=41389983

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009080772A Active JP5428447B2 (ja) 2008-03-31 2009-03-30 Rh真空脱ガス装置における溶鋼の精錬方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5428447B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
RU2446216C1 (ru) * 2010-10-11 2012-03-27 Открытое акционерное общество "Магнитогорский металлургический комбинат" Способ дегазации металла в ковше
CN103866091B (zh) * 2014-03-31 2016-03-02 中冶南方工程技术有限公司 一种rh真空室插入管氮氩供气方法及装置
CN111944955A (zh) * 2020-08-27 2020-11-17 湖南华菱涟源钢铁有限公司 一种rh真空精炼方法
JP7384294B2 (ja) * 2021-05-26 2023-11-21 Jfeスチール株式会社 溶鉄の精錬方法
CN114703342B (zh) * 2022-04-15 2022-11-08 北京科技大学 去除钢液杂质的方法和冶金方法

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0617113A (ja) * 1992-06-30 1994-01-25 Kawasaki Steel Corp 溶鋼の真空脱ガス処理方法
JP3293674B2 (ja) * 1992-12-25 2002-06-17 川崎製鉄株式会社 Rh脱ガス処理における終点炭素濃度制御方法
JPH08100211A (ja) * 1994-09-30 1996-04-16 Nkk Corp Rh真空脱ガス設備における窒素制御方法
JPH08311529A (ja) * 1995-05-12 1996-11-26 Sumitomo Metal Ind Ltd Rh真空槽におけるガスバブリング法
JP4582826B2 (ja) * 1997-09-12 2010-11-17 Jfeスチール株式会社 Rh脱ガス装置での清浄鋼の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009263783A (ja) 2009-11-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5428447B2 (ja) Rh真空脱ガス装置における溶鋼の精錬方法
JP5904237B2 (ja) 高窒素鋼の溶製方法
JP2011208170A (ja) マンガン含有低炭素鋼の溶製方法
JP5601132B2 (ja) 清浄性に優れた低炭素アルミキルド鋼の溶製方法
JP2018016843A (ja) 極低硫低窒素鋼の溶製方法
JP5509876B2 (ja) 低炭素高マンガン鋼の溶製方法
JP4463701B2 (ja) ステンレス溶鋼の脱炭方法および極低炭素ステンレス鋼の製造法
JP5979029B2 (ja) 極低硫低窒素鋼の製造方法
JP4844552B2 (ja) 低炭素高マンガン鋼の溶製方法
JPH05239534A (ja) 無方向性電磁鋼板材の溶製方法
JP5505432B2 (ja) 極低硫低窒素鋼の溶製方法
JP3843589B2 (ja) 高窒素ステンレス鋼の溶製方法
JP3241910B2 (ja) 極低硫鋼の製造方法
JP4085898B2 (ja) 低炭素高マンガン鋼の溶製方法
JP2009191290A (ja) 極低炭素鋼の溶製方法
JP5131827B2 (ja) 溶鋼の加熱方法および圧延鋼材の製造方法
JP2724035B2 (ja) 溶鋼の減圧脱炭法
JP2985720B2 (ja) 極低炭素鋼の真空精錬方法
JP4404025B2 (ja) 低窒素鋼の溶製方法
JP2012012681A (ja) 溶鋼の高速脱硫脱窒方法
JP4035904B2 (ja) 清浄性に優れた極低炭素鋼の製造方法
JP4020125B2 (ja) 高清浄度鋼の溶製方法
JP2962163B2 (ja) 高清浄極低炭素鋼の溶製方法
JPH11158536A (ja) 清浄性に優れた極低炭素鋼の溶製方法
JPH0941028A (ja) 高清浄性極低炭素鋼の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120223

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20120321

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20120327

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20131105

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20131118

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 5428447

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250