JP4844552B2 - 低炭素高マンガン鋼の溶製方法 - Google Patents

低炭素高マンガン鋼の溶製方法 Download PDF

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本発明は、真空脱ガス設備の真空槽内の溶鋼に酸素ガス等の酸素源を供給し、溶鋼に対して真空脱炭処理を施して低炭素高マンガン鋼を溶製する方法に関し、詳しくは、マンガンの酸化を抑え、効率良く脱炭することによって安価に低炭素高マンガン鋼を溶製する方法に関するものである。
近年、鉄鋼材料は、その用途の多様化に伴い、より苛酷な環境下で使用されることが多くなり、材料特性の高性能化が従来にも増して求められている。このような状況下、構造物の軽量化を目的として、高い引張強さと高い加工性とを両立させた低炭素高マンガン鋼が開発され、ラインパイプ用鋼板や自動車用鋼板等として使用されるようになった。ここで、低炭素高マンガン鋼とは、炭素濃度が0.05質量%以下で、マンガン濃度が1.0質量%以上の鋼のことである。
溶鋼中のマンガン濃度を調整するために用いる安価なマンガン源は、マンガン鉱石や高炭素フェロマンガンであり、低炭素高マンガン鋼を溶製する際に、転炉での溶銑の脱炭精錬時に転炉内にマンガン鉱石を投入してマンガン鉱石を還元したり、転炉からの出鋼時に高炭素フェロマンガンを溶鋼に添加することによって、溶鋼中のマンガン濃度を所定値まで上昇させることは可能であるが、これらの安価なマンガン源を使用した場合には、転炉出鋼時点で十分に炭素濃度を低減させることができず、溶鋼中炭素濃度が高くなる、或いは、高炭素フェロマンガン等に含有される炭素に起因して溶鋼中炭素が上昇する等により、低炭素高マンガン鋼の炭素濃度の上限値を超えるため、炭素を溶鋼から除去する必要がある。
溶鋼中の炭素を効率良く除去する方法として、RH真空脱ガス装置等の真空脱ガス設備を用いて、未脱酸状態の溶鋼を高真空処理して脱炭する、或いは、真空処理下で酸素ガス等の酸素源を溶鋼に添加して脱炭する真空脱炭処理が知られている。しかしながら、低炭素高マンガン鋼を真空脱炭処理した場合には、マンガンが多量に含有されているため、酸素は溶鋼中の炭素と反応するのみならず、マンガンとも反応し、マンガンが酸化ロスしてマンガンの歩留まりが悪化するばかりでなく、溶鋼中のマンガン濃度の制御が非常に困難となる。
従って、この問題を避けるために、低炭素高マンガン鋼の溶製においては、マンガン源を脱ガス処理中に添加する方法が行われており、この場合、低炭素高マンガン鋼の炭素濃度の許容範囲が低く且つ狭いこともあって、炭素含有量の少ない電解マンガン等のマンガン源を使用せざるを得ず、これらのマンガン源は非常に高価であるため、溶製コストの上昇を余儀無くされていた。
この問題点を解消すべく、特許文献1には、マンガン濃度が1質量%以上の極低炭素高マンガン鋼を真空脱ガス設備により真空脱炭処理する際に、真空脱ガス設備の真空槽内の圧力を5kPa以上40kPa以下に保持し、且つ溶鋼表面に上吹きランスから不活性ガスを吹き付けて真空脱炭処理する方法が提案されており、又、特許文献2には、真空脱ガス設備の真空槽内の圧力を2.5kPa〜14kPaに調整しつつ、上吹きランスから吹き付ける酸素ガスが溶鋼に当たる火点近傍にCaO、CaCO3、或いはCa(OH)2の何れか1種以上を吹き付ける又は添加して高マンガン鋼を真空脱炭処理する方法が提案されている。
特開平5−186818号公報 特開2002−256328号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献2には以下の問題点がある。即ち、特許文献1の方法では、脱炭のための酸素源は、溶鋼中の溶存酸素だけのため、炭素濃度の高い領域では酸素の供給律速となり、脱炭速度が遅くなるために処理時間が長くなり、効率的に処理することができない。ここで、溶鋼中の溶存酸素とは、溶解酸素とも呼び、溶鋼中の酸素の中で酸化物等の化合物になっていない酸素であり、溶鋼中の全酸素量から酸化物等の化合物形態の酸素量を差し引いたものである。
又、特許文献2では、粉体切り出し装置等のCaO、CaCO3 等を供給するための専用の装置が必要であり、設備コストが上昇する。更に、CaO、CaCO3等を添加することにより、処理中の溶鋼の温度低下が大きくなり、それを補償するために転炉終点温度を上昇させる等の対策が必要であり、これに伴う製造コストの上昇を余儀無くされる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、真空脱ガス設備を用いて溶鋼に真空脱炭処理を施して低炭素高マンガン鋼を溶製する際に、マンガンの酸化を抑えて効率良く脱炭し、安価に且つ容易に低炭素高マンガン鋼を溶製することのできる方法を提供することである。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討・研究を重ねた。以下に、検討・研究結果を説明する。
安価マンガン源を使用し、真空脱炭処理を施すことによって低炭素高マンガン鋼を溶製する場合には、脱炭すべき溶鋼中の炭素量が多いため、溶鋼中の溶存酸素だけでは効率的に脱炭することができない。従って、効率的に脱炭処理するためには、真空脱ガス設備の真空槽内の溶鋼に酸素ガス等の酸素源を供給しつつ脱炭する必要がある。酸素源としては、処理中の溶鋼温度を低下させないことから判断して酸素ガスが好ましい。
真空槽内の溶鋼に酸素ガスを供給して溶鋼を真空脱炭する場合、マンガンを含有しない溶鋼或いはマンガンの含有量が少ない溶鋼では、供給した酸素ガスは溶鋼中に溶解する以外は主に炭素と反応するだけであるため、酸素ガスの供給速度を高めることによって脱炭速度を高めることができる。しかしながら、マンガンを1質量%以上含有する溶鋼の場合には、供給した酸素ガスは炭素以外にマンガンとも反応するため、脱炭速度を高めて脱炭を効率的に行うためには、酸素とマンガンとの反応を抑制しなければならない。酸素と炭素との反応式を下記の(3)式に、又、酸素とマンガンとの反応式を下記の(4)式に示す。
Figure 0004844552
Figure 0004844552
これらの式からも分かるように、溶鋼中の炭素濃度が高い領域では(3)式の反応が優先的に起こり、マンガンはさほど酸化されないが、炭素濃度が低い領域ではマンガンの酸化が進行する。これは試験でも確認された。更に、本発明者等は、試験を重ねることによって、炭素濃度が同一であっても、溶鋼中の溶存酸素濃度に依存してマンガンの酸化速度が異なることを見出した。即ち、同じ炭素濃度から酸素ガスの供給を開始して脱炭処理しても、溶存酸素濃度に依存してマンガンの酸化速度が異なることが分かった。溶存酸素濃度が低い場合にはマンガンの酸化速度が遅く、一方、溶存酸素濃度が高い場合にはマンガンの酸化速度が速くなり、その臨界となる溶存酸素濃度は0.01質量%であることを見出した。これは、溶存酸素濃度が0.01質量%より高い場合には、Mn−O平衡が支配的になってマンガンが酸化されやすくなり、一方、溶存酸素濃度が0.01質量%以下の場合には、C−O平衡が支配的になって炭素の酸化が優先するためであり、この現象は溶鋼中の炭素、マンガン、酸素の挙動から確認されている。
又、炭素濃度の減少に伴い、酸素ガスの供給量に対して炭素の供給が追いつかなくなり、溶鋼中炭素の物質移動律速領域となることが分かった。更に、物質移動律速となる炭素濃度領域は、溶鋼中炭素濃度が0.04質量%以下の範囲であることを定量化することができた。従って、溶鋼中炭素濃度が0.04質量%以下の範囲では、酸素ガス供給量を低下させることにより、マンガンの酸化を一層抑制することができることが分かった。
酸素とマンガンとの反応を抑制する第2の方法として、上記(3)式及び(4)式からも類推されるように、酸素ガスにArガス等の不活性ガスを加えることによって真空槽内雰囲気のCOガス分圧(以下「Pco」と記す)を低下させることで、(4)式に対して(3)式が優先的に進行し、マンガンの酸化を抑制可能であることが分かった。実際、溶鋼中炭素濃度が低下した真空脱炭処理後半に、不活性ガスとしてArガスを加えた酸素ガス−Arガスの混合ガスを真空槽内の溶鋼に吹き付けたところ、マンガンの酸化が抑制された。このPcoの低下に起因するマンガン酸化の抑制効果は、真空脱炭処理の後半ほど顕著であることを確認した。不活性ガスとしては、Arガス等の希ガスの他に窒素ガス等の非酸化性のガスを用いることができる。但し、窒素ガスを用いた場合には、溶鋼中の窒素濃度が上昇するので、溶製する低炭素高マンガン鋼の窒素濃度規格によって使用量の制限や使用の可否等を考慮する必要がある。
この場合、真空脱炭処理の処理前半では、混合ガス濃度比が0.1〜1.0の範囲で脱炭効率が良く、更に混合ガス濃度比が0.2〜0.5のときに最も効率良く脱炭することができた。この理由として、混合ガス濃度比が0.1未満の場合には、Pcoの低減効果が小さくなるためにマンガンの酸化を抑制する効果が小さくなり、逆に、混合ガス濃度比が1.0を越える範囲では、酸素ガス供給量が不足して脱炭反応が遅くなってしまうため、好ましくない。ここで、混合ガス濃度比とは、不活性ガス濃度/酸素ガス濃度である。
又、真空脱炭処理の処理後半では、混合ガス濃度比が0.3〜3.0の範囲で脱炭効率が良く、更に混合ガス濃度比が0.5〜2.0のときに最も効率良く脱炭することができた。この理由として、処理前半と同様に、混合ガス濃度比が0.5未満の場合には、Pcoの低減効果が小さくなるためにマンガンの酸化を抑制する効果が小さくなり、逆に、混合ガス濃度比が3.0を越える範囲では、酸素ガス供給量が不足して脱炭反応が遅くなってしまうため、好ましくない。尚、真空脱炭処理の処理前半と処理後半とは、真空脱炭処理の正確な1/2の期間を意味するものではなく、前半部及び後半部を意味するものである。
酸素とマンガンとの反応を抑制する第3の方法として、真空脱ガス設備の真空槽内への酸素ガスの供給量と、取鍋から真空槽内へ環流する溶鋼量(以下、「環流量」と記す)との比を適正値に制御することで、マンガンの酸化を抑制可能であることが分かった。具体的には、下記の(1)式で定義される環流量(Q:t/min)に対する酸素ガス供給量(FO2:Nm3 /min)の比(FO2/Q)を0.15〜0.30の範囲内とすること、即ち、環流量(Q)と、上吹きランスからの酸素ガス供給量(FO2)とを、下記の(2)式の範囲内とすることによって、効率良く脱炭することが可能であることが分かった。但し、(1)式及び(2)式において、Qは溶鋼の環流量(t/min)、Gは環流用Arガス流量(Nl/min)、dは浸漬管内径(m)、P1は環流用Arガス吹き込み点の圧力(kPa)で、通常は1気圧(101.3kPa)、P2は真空槽内圧力(kPa)、FO2は上吹きランスからの酸素ガスの供給量(Nm3/min)である。
Figure 0004844552
Figure 0004844552
比(FO2/Q)が0.15未満の場合には、脱炭速度が遅くなって効率的でなく、一方、比(FO2/Q)が0.30を越える場合には、酸素ガス供給量が過剰になり、酸素が炭素以外にマンガンとも反応するため、好ましくない。この場合、溶鋼中の炭素濃度の低下に伴って比(FO2/Q)を小さくすることで、効率良く脱炭できることも確認した。
又、当然ではあるが、上述した脱炭処理開始時の溶存酸素濃度の制御、Arガス等の不活性ガスの混合による真空槽内雰囲気ガスのPcoの低減、及び、比(FO2/Q)の制御の3つの手段を組み合わせることで、マンガンの酸化がより一層抑制されることも確認した。
本発明は、上記検討・研究結果に基づきなされたもので、第1の発明に係る低炭素高マンガン鋼の溶製方法は、真空脱ガス設備の真空槽内の溶鋼に酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを供給しつつ、溶鋼に対して真空脱炭処理を施して低炭素高マンガン鋼を溶製する際に、真空脱炭処理前の溶鋼中の溶存酸素濃度を0.01質量%以下とするとともに、前記混合ガスの混合ガス濃度比(不活性ガス濃度/酸素ガス濃度)を真空脱炭処理中に、真空脱炭処理の前半に比較して真空脱炭処理の後半で高くなるように、変更することを特徴とするものである。
本発明によれば、真空脱ガス設備を用いた真空脱炭処理を施して低炭素高マンガン鋼を溶製する際に、溶鋼中のマンガンの酸化を抑制しつつ効率良く脱炭することが可能となり、その結果、安価なマンガン源を原料として使用することが可能となり、製造コストが削減されるのみならず、従前の真空脱ガス設備であっても容易に低炭素高マンガン鋼を溶製することができ、工業上有益な効果がもたらされる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。高炉から出銑された溶銑を溶銑鍋やトーピードカー等の溶銑保持・搬送用容器で受銑し、次工程の脱炭精錬を行う転炉に搬送する。通常、この搬送途中で、溶銑に対して脱硫処理や脱燐処理等の溶銑予備処理が施されており、本発明においては、低炭素高マンガン鋼の成分規格上からは溶銑予備処理が必要でない場合でも、安価なマンガン源としてマンガン鉱石を転炉内に添加するため、転炉脱炭精錬におけるマンガン鉱石の歩留まりを上昇させる観点から、溶銑予備処理を実施することが好ましい。
転炉精錬はマンガン源としてマンガン鉱石を添加しつつ、必要に応じて少量の生石灰等を媒溶剤として用い、酸素を上吹き又は底吹きして溶銑の脱炭精錬を行う。転炉内に添加したマンガン鉱石のみでは、溶鋼のマンガン濃度が目的とする低炭素高マンガン鋼の成分規格範囲に不足する場合には、転炉から取鍋等の溶鋼保持容器への出鋼時に高炭素フェロマンガン等の安価な合金鉄系マンガン源を所定量添加し、溶鋼のマンガン濃度を成分規格と同等のレベルまで上昇させる。この場合、安価マンガン源を使用することによるコストメリットを十分に発揮させるため、出鋼後の溶鋼保持容器内の溶鋼中のマンガン濃度を、少なくとも低炭素高マンガン鋼の成分規格値の90%以上まで確保することが好ましい。
マンガン鉱石や高炭素フェロマンガン等の安価なマンガン源を使用するため、溶鋼中の炭素濃度は必然的に高くなるが、それでも、マンガン濃度を調整した後の出鋼後の溶鋼中の炭素濃度を0.2質量%以下に抑えることが好ましい。溶鋼の炭素濃度が0.2質量%を越えると、次工程の真空脱ガス設備における真空脱炭処理に長時間を費やし、真空脱ガス設備の生産性の低下のみならず、真空脱炭処理時間の延長による温度補償として出鋼時の溶鋼温度を高くする必要が生じ、これに起因する鉄歩留まりの低下や耐火物損耗量の増大等によって製造コストが上昇するため、好ましくない。
次いで、この溶鋼をRH真空脱ガス装置又はDH真空脱ガス装置、VOD炉等の真空脱ガス設備に搬送し、真空脱炭処理を実施する。真空脱ガス設備の代表的な設備はRH真空脱ガス装置であり、以下、真空脱ガス設備としてRH真空脱ガス装置を用いて精錬する例で説明する。
図1に、本発明を実施する際に用いたRH真空脱ガス装置の例を示す。図1はRH真空脱ガス装置の概略縦断面図であり、図1において、1はRH真空脱ガス装置、2は取鍋、3は溶鋼、4はスラグ、5は真空槽、6は上部槽、7は下部槽、8は上昇側浸漬管、9は下降側浸漬管、10は環流用ガス吹き込み管、11はダクト、12は原料投入口、13は上吹きランスであり、真空槽5は上部槽6と下部槽7とから構成され、又、上吹きランス13は上下移動が可能となっており、この上吹きランス13からは酸素ガス及びArガス等の不活性ガスと酸素ガスとの混合ガスが真空槽5内の溶鋼3の湯面に吹き付けられるようになっている。
RH真空脱ガス装置1では、搬送された取鍋2を昇降装置(図示せず)にて上昇させ、上昇側浸漬管8及び下降側浸漬管9を取鍋2内の溶鋼3に浸漬させる。そして、環流用ガス吹き込み管10から上昇側浸漬管8内に環流用Arガスを吹き込むと共に、真空槽5内をダクト11に連結される排気装置(図示せず)にて排気して真空槽5内を減圧する。真空槽5内が減圧されると、取鍋2内の溶鋼3は、環流用ガス吹き込み管10から吹き込まれるArガスと共に上昇側浸漬管8を上昇して真空槽5内に流入し、その後、下降側浸漬管9を経由して取鍋2に戻る流れ、所謂、環流を形成してRH真空脱ガス精錬が施される。
溶鋼3の環流が形成され、溶鋼3に対してRH真空脱ガス精錬が施されると、真空槽5内では溶鋼3中の炭素と溶存酸素との反応が生じ、溶鋼3中の炭素はCOガスとなって排ガスと共に真空槽5からダクト11を介して排出され、溶鋼3は真空脱炭処理される。更に、上吹きランス13から酸素ガス或いは不活性ガスと酸素ガスとの混合ガスが吹き込まれ、溶鋼3の脱炭反応が促進される。
この真空脱炭処理中に溶鋼3中のマンガンの酸化を抑制して脱炭反応を行うために、(1):真空脱炭処理前の溶鋼3中の溶存酸素濃度を0.01質量%以下に調整する、(2):上吹きランス13から吹き付ける酸素ガスとArガス等の不活性ガスとの混合ガスの混合ガス濃度比(不活性ガス濃度/酸素ガス濃度)を、真空脱炭処理の前半に比較して真空脱炭処理の後半で高くする、(3):前述した(1)式で定義される溶鋼3の環流量(Q)と上吹きランス13からの酸素ガス供給量(FO2)とが前述した(2)式の範囲内となるように、溶鋼3の環流量(Q)又は上吹きランス13からの酸素ガス供給量(FO2)を調整する、の3種類の内の少なくとも1つを実施する。
この場合、真空脱炭処理前の溶鋼3中の溶存酸素濃度を0.01質量%以下に調整するために、溶鋼3にAl等の脱酸剤を添加してもよい。但し、溶存酸素濃度が低下し過ぎると脱炭反応が起こらず、Alが無駄になるため、溶存酸素濃度が0.003質量%よりも低下しないように、Al等の脱酸剤の添加量を調整することが好ましい。
又、上吹きランス13からの酸素ガスの供給量を、溶鋼3中の炭素濃度の減少に応じて連続的又は段階的に低減することが好ましい。換言すれば、上吹きランス13からの酸素ガス供給量(FO2)と環流量(Q)との比(FO2/Q)を、溶鋼3中の炭素濃度の減少に伴い、連続的又は段階的に低減することが好ましい。脱炭反応が進行して溶鋼3中の炭素濃度が低下すると、酸素ガスの供給量に対して炭素の供給が追いつかなくなり、溶鋼3中の炭素の物質移動律速領域となり、マンガンの酸化が起こるが、溶鋼3中の炭素濃度の減少に応じて酸素ガスの供給量を減じることで、マンガンの酸化を抑制することができる。炭素の物質移動律速となる炭素濃度領域は、溶鋼3中の炭素濃度が0.04質量%以下の範囲であるので、特に、溶鋼中炭素濃度が0.04質量%以下の範囲で、酸素ガスの供給量を低下させることが好ましい。
又、酸素源として溶鋼3に吹き付けるガスは酸素ガス単体ではなく、酸素ガスにArガス等の不活性ガスを混合することが好ましい。不活性ガスを混合することによって真空槽5内の雰囲気ガスのPcoが低下し、脱炭反応が優先的に起こり、マンガンの酸化を抑制することができる。
酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを吹き込む場合には、混合ガスの混合ガス濃度比(不活性ガス濃度/酸素ガス濃度)を、溶鋼3中の炭素濃度が高い真空脱炭処理の前半では0.1〜1.0とし、炭素濃度が低下する真空脱炭処理の後半では0.3〜3.0とすることが好ましい。真空脱炭の後半では炭素の物質移動律速になりやすいが、不活性ガス濃度を高めて真空槽5内の雰囲気ガスのPcoを低下させることにより、炭素の物質移動律速に移行する時期を遅らせ、マンガンの酸化を抑制することができる。
このようにして真空脱炭処理を施しつつ、溶鋼3中の炭素濃度が、目的とする低炭素高マンガン鋼の成分規格値以下になるまで真空脱炭処理を継続し、溶鋼3の炭素濃度が成分規格値以下の所定の値になったなら、上吹きランス13からの酸素ガスの吹き込みを停止すると共に原料投入口12から溶鋼3にAl等の強脱酸剤を添加して溶鋼3を脱酸処理する。Al等の強脱酸剤の添加により溶鋼3中の溶存酸素濃度は急激に低下し、真空脱炭処理が終了する。
真空脱炭処理の終了後も更に数分間程度の環流を継続し、必要に応じてAl、Si、Mn、Ni、Cr、Cu、Nb、Ti等の成分調整剤を原料投入口12から溶鋼3に投入して溶鋼3の成分を調整した後、真空槽5を大気圧に戻してRH真空脱ガス精錬を終了し、低炭素高マンガン鋼を溶製する。ここで、低炭素高マンガン鋼とは、炭素濃度が0.05質量%以下で、マンガン濃度が1.0質量%以上の鋼のことである。
以上説明したように、本発明によれば、真空脱ガス設備を用いた真空脱炭処理を施して低炭素高マンガン鋼を溶製する際に、溶鋼3中のマンガンの酸化を抑制しつつ効率良く脱炭することが可能となり、その結果、マンガン鉱石や高炭素フェロマンガン等の安価なマンガン源を原料として使用することが可能となり、製造コストが削減されるのみならず、従前の真空脱ガス設備であっても容易に低炭素高マンガン鋼を溶製することが可能となる。
尚、上記説明ではRH真空脱ガス装置1について説明したが、上記に準じて実施することにより、DH真空脱ガス装置やVOD炉等の他の真空脱ガス設備にも適用することができる。
高炉から出銑された溶銑に対して脱硫処理、脱燐処理の溶銑予備処理を施し、この溶銑を用いて転炉精錬し、低炭素高マンガン鋼を溶製する試験(試験番号1〜31)を実施した。転炉ではマンガン源としてマンガン鉱石を添加してマンガン濃度を上昇させ、得られた250トンの溶鋼を未脱酸のまま取鍋に出鋼した。出鋼時の溶鋼成分は、炭素が0.15〜0.20質量%、珪素が0.05質量%以下、マンガンが1.2〜1.5質量%、燐が0.01質量%以下、硫黄が0.003質量%以下であった。この溶鋼をRH真空脱ガス装置に搬送し、真空脱炭処理条件を種々変更して低炭素高マンガン鋼を溶製した。
RH真空脱ガス装置では、環流用Arガス流量を1500〜5500Nl/min、真空槽の到達真空度を0.7〜6.7kPa、上吹きランスからの酸素ガス供給量(「送酸速度」と呼ぶ)を400〜3000Nm3 /h、上吹きランスからの酸素ガスに混合する不活性ガスとしてArガスを用い、このArガス流量を0〜1500Nm3/hの範囲で変更し、酸素ガス吹き込み時間(「送酸時間」と呼ぶ)を20分(試験番号1〜8、試験番号20〜31)及び25分(試験番号9〜19)の2水準とした。用いたRH真空脱ガス装置の浸漬管の内径(d)は0.6mである。一部の試験では、真空脱炭処理の途中で上吹きランスからの吹き込み条件(「送酸条件」と呼ぶ)を変更した。真空脱炭処理の途中で送酸条件を変更した試験では、変更時期に溶鋼から分析試料を採取し、溶鋼成分を分析した。又、真空脱炭処理開始前の溶鋼中溶存酸素濃度を0.01質量%以下にした試験では、真空脱炭処理に先立ち、Alを添加して溶鋼を脱酸した。表1に各試験操業における送酸条件、環流条件及び試験結果を示す。表1に示す環流量は前述の(1)式を用いて算出した数値である。
Figure 0004844552
表1に示すように、本発明に係る溶製方法である、(1):真空脱炭処理前の溶鋼中の溶存酸素濃度が0.01質量%以下であること、(2):上吹きランスから吹き付ける酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスの混合ガス濃度比(不活性ガス濃度/酸素ガス濃度)が真空脱炭処理の前半に比較して真空脱炭処理の後半で高くなること、(3):溶鋼の環流量(Q)に対する上吹きランスからの酸素ガス供給量(FO2)の比(FO2/Q)が0.15以上0.30以下の範囲内であること、の3種類の溶製方法の何れをも満足しない試験(試験番号6〜8、試験番号15〜19、試験番号27〜31)では、脱Mn量が多く、脱Mn量/脱炭量の値が1.0以上であり、2.0を越える試験も発生した。
これに対して、上記3種類の溶製方法の内の少なくとも1種類以上を満足する試験(試験番号1〜5、試験番号9〜14、試験番号20〜26)では、脱Mn量が少なく、脱Mn量/脱炭量の値が1.0未満であり、0.5未満の試験も発生した。即ち、本発明方法によってマンガンの酸化を抑制しつつ溶鋼中の炭素を効率良く除去できることが確認された。又、真空脱炭処理前の溶鋼中の溶存酸素濃度を0.01質量%以下に調整した試験では、真空脱炭処理後まで溶存酸素濃度は0.01質量%以下の範囲に維持されていた。尚、表1の備考欄には、本発明方法の範囲内の試験には本発明例と表示し、それ以外の試験には比較例と表示した。
本発明を実施する際に用いたRH真空脱ガス装置の概略縦断面図である。
符号の説明
1 RH真空脱ガス装置
2 取鍋
3 溶鋼
4 スラグ
5 真空槽
8 上昇側浸漬管
9 下降側浸漬管
10 環流用ガス吹き込み管
13 上吹きランス

Claims (1)

  1. 真空脱ガス設備の真空槽内の溶鋼に酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを供給しつつ、溶鋼に対して真空脱炭処理を施して低炭素高マンガン鋼を溶製する際に、真空脱炭処理前の溶鋼中の溶存酸素濃度を0.01質量%以下とするとともに、前記混合ガスの混合ガス濃度比(不活性ガス濃度/酸素ガス濃度)を真空脱炭処理中に、真空脱炭処理の前半に比較して真空脱炭処理の後半で高くなるように、変更することを特徴とする、低炭素高マンガン鋼の溶製方法。
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