JP4687103B2 - 低炭素アルミキルド鋼の溶製方法 - Google Patents

低炭素アルミキルド鋼の溶製方法 Download PDF

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本発明は、低炭素アルミキルド鋼の溶製方法に関し、詳しくは、転炉による一次精錬と真空脱ガス装置による二次精錬との組み合せによって低炭素アルミキルド鋼を効率良く且つ安価に溶製する方法に関するものである。
冷延鋼板や表面処理鋼板などに供される低炭素アルミキルド鋼を溶製するには、転炉或いは電気炉などの一次精錬炉で大気圧下において溶銑の脱炭精錬を行なった後、得られた溶鋼に脱酸用アルミニウムを添加し、脱炭精錬によって増加した溶鋼中の酸素を除去して製造している。この場合、脱酸用アルミニウムの添加と同時に、必要に応じてフェロマンガンなどの合金鉄を添加し、マンガンなど他の成分の調整も実施している。ここで、低炭素アルミキルド鋼とは、炭素濃度が0.02〜0.06質量%で、マンガンをおよそ0.2〜0.6質量%、アルミニウムを0.02〜0.05質量%程度含有する鋼のことである。
このような成分範囲である低炭素アルミキルド鋼は、炭素濃度が0.010質量%以下である極低炭素アルミキルド鋼のように真空脱ガス装置における真空脱炭精錬を必要とせず、前述のように、転炉或いは電気炉などの一次精錬炉のみで十分に成分の調整が可能であるが、近年の高清浄度鋼の要求に対処するため、真空脱ガス装置、特にRH真空脱ガス装置における溶鋼の強攪拌処理による溶鋼中非金属介在物の除去を目的として、脱ガス処理が行なわれることもある(例えば、特許文献1参照)。即ち、アルミニウム添加による脱酸処理によって生成した溶鋼中のアルミナは溶鋼との比重差に基づいて溶鋼から浮上して除去されるが、静止状態の溶鋼から微細なアルミナを除去するには長時間を費やす必要があり、実操業においては静止させるだけでは効率的でないことから、真空脱ガス装置を利用して溶鋼を強攪拌し、この攪拌によって微細なアルミナを合体させると共にアルミナの浮上分離を促進させるというものである。
特開2001−152238号公報
ところで近年、極低炭素アルミキルド鋼のように真空脱ガス精錬を必須とする成分組成の鋼種が増加したことから、円滑で且つ柔軟性のある溶製工程を図るために、連続鋳造機と一対一で対応する真空脱ガス装置を備えた製鋼工場も出現するにいたっている。この場合、脱ガス精錬を必要としない鋼種を溶製する場合には、真空脱ガス装置は稼働せず、次の脱ガス精錬を必要とする鋼種の溶製まで待機することになる。
低炭素アルミキルド鋼を転炉などの一次精錬炉のみで溶製する場合には、例えば、炭素濃度が0.04質量%の低炭素アルミキルド鋼を得るためには大気圧下の脱炭精錬で炭素濃度を0.04質量%まで酸素吹錬する必要があり、大気圧下における脱炭精錬で炭素濃度を0.04質量%まで酸素吹錬すると、溶鋼中の酸素濃度は0.06質量%程度まで上昇してしまう。これは、溶鋼中の炭素濃度([質量%C])と酸素濃度([質量%O])とは平衡関係にあり、大気圧下の脱炭精錬では[質量%C]×[質量%O]=0.0024の関係式が成り立つからである。従って、脱酸用アルミニウムとして、0.06質量%の酸素と反応する化学当量分のアルミニウムが必要になる。
一方、一次精錬炉では炭素濃度を0.08質量%程度まで脱炭精錬した時点で酸素吹錬を終了し、待機していた真空脱ガス装置を利用して炭素濃度が0.08質量%から0.04質量%になるまで真空脱炭精錬を施して溶製した場合には、一次精錬終了時の溶鋼中酸素濃度は0.03質量%程度になる。仮に、その酸素濃度のままで脱酸処理すれば、脱酸用アルミニウムの必要量は、一次精錬炉のみで0.04質量%まで脱炭精錬した場合に比較して半分になる。実際には、溶鋼中酸素は真空脱炭精錬の酸素源として消費されるため、真空脱炭精錬によって溶鋼中酸素濃度は0.03質量%よりも更に低下することから、脱酸用アルミニウムの必要量は更に減少することになる。
二次精錬炉における処理費用が必要であることから両者を単純には比較することはできないものの、一次精錬炉の操業条件と二次精錬炉の操業条件とをうまく組み合せて低炭素アルミキルド鋼を溶製することで、従来の一次精錬炉のみで溶製する場合よりも少ない製造コストで低炭素アルミキルド鋼を溶製できる可能性がある。
この観点から、一次精錬炉と二次精錬炉とを組み合せて低炭素鋼を溶製する上記特許文献1を考察すると、特許文献1では、一次精錬炉ですでに溶鋼の炭素濃度を低炭素鋼の成分範囲である0.02〜0.06質量%まで脱炭精錬しており、真空脱ガス精錬の処理費用が一次精錬の処理費用に加算される形になり、一次精錬炉のみで溶製する場合よりも少ない製造コストで低炭素アルミキルド鋼を溶製できるものではないことが明らかである。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、低炭素アルミキルド鋼を溶製するに際し、転炉による一次精錬の操業条件と真空脱ガス装置による二次精錬の操業条件とを最適な条件で組み合せることにより、従来の一次精錬炉のみを使用した溶製方法に比べて安価に且つ効率良く低炭素アルミキルド鋼を溶製することのできる方法を提供することである。
上記課題を解決するための第1の発明に係る低炭素アルミキルド鋼の溶製方法は、転炉を用いて大気圧下で溶銑に脱炭精錬を施し、続いて前記脱炭精錬によって得られた溶鋼を、RH真空脱ガス装置、DH真空脱ガス装置、VOD炉からなる真空脱ガス設備のうちの何れかの真空脱ガス設備を用いて減圧下で脱炭精錬して、炭素濃度が0.02〜0.06質量%の低炭素アルミキルド鋼を溶製するに際し、前記転炉では溶鋼中の炭素濃度が0.07〜0.12質量%になるまで脱炭精錬し、脱炭精錬終了後はアルミニウムによる溶鋼の脱酸を実施しないまま前記真空脱ガス設備に搬送し、真空脱ガス設備では、雰囲気中のCOガス分圧が、溶鋼中の炭素濃度が0.02〜0.06質量%で且つ酸素濃度が0.015質量%以下となる炭素と酸素との平衡関係の範囲である、大気圧よりも低い雰囲気下の溶鋼に酸素ガスを吹き付けて真空脱炭精錬を行い、炭素濃度が0.02〜0.06質量%、且つ、酸素濃度が0.015質量%以下の溶鋼を溶製し、その後、溶鋼にアルミニウムを添加して脱酸することを特徴とするものである。
第2の発明に係る低炭素アルミキルド鋼の溶製方法は、第1の発明において、前記溶銑は、脱燐処理が施された溶銑であり、前記転炉では、マンガン鉱石を装入し、マンガン鉱石を還元しながら溶銑の脱炭精錬を行なうことを特徴とするものである。
脱炭精錬は、酸素と炭素とが反応して起こる。従って、酸素及び炭素を含有する溶鋼を減圧下にさらせば酸素と炭素との化学当量(C/O=12/16)に基づいて脱炭反応が進行する。転炉脱炭精錬により得られた、炭素濃度が0.07〜0.12質量%の溶鋼を減圧下にさらせば脱炭反応が進行するが、この場合、酸素と炭素との化学当量から脱炭量は高々0.025質量%程度にしかならず、炭素濃度が0.07〜0.12質量%の溶鋼を減圧下にさらしただけでは炭素濃度が0.02〜0.06質量%の低炭素アルミキルド鋼を安定して溶製することはできない。しかし、本発明においては、減圧下の溶鋼湯面に酸素ガスを吹き付けて真空脱炭精錬するので、脱炭反応で必要とする酸素源が供給され、所望する炭素濃度まで真空脱炭することができる。
本発明では、溶鋼中炭素濃度が0.07〜0.12質量%の時点で大気圧下での転炉脱炭精錬を終え、次いで、この溶鋼を大気圧よりも減圧された雰囲気下で炭素濃度が0.02〜0.06質量%になるまで上吹き送酸しながら真空脱炭して低炭素アルミキルド鋼を溶製するので、転炉脱炭精錬により増加した溶鋼中の酸素は真空脱炭精錬の酸素源として消費され、真空脱炭精錬終了時の溶鋼中酸素濃度を0.015質量%以下にまで下げることが可能となり、脱酸用アルミニウムの原単位を従来の一次精錬炉のみで溶製した場合に比較して大幅に削減することができる。また、転炉脱炭精錬終了時の炭素濃度が従来の一次精錬炉のみで溶製した場合と比較して高いので、転炉脱炭精錬では鉄の酸化が抑制され、鉄の歩留まりが向上するのみならず、スラグ中の鉄酸化物が少なくなり、スラグを改質するためのスラグ改質剤の原単位を低減することができる。更に、転炉脱炭精錬終了時の炭素濃度が高いので、マンガンの歩留まりも向上する。更にまた、転炉では、溶鋼を所定の成分組成に仕上げる必要がなくなり、例えば、脱酸用アルミニウムの添加量を決定するために実施していたサブランスによる溶鋼中の酸素濃度測定などを行なう必要がなくなり、その分だけ精錬時間を短くすることができ、転炉の生産性を向上させることができる。
このように、本発明によれば、脱酸用アルミニウム及びスラグ改質剤の原単位の削減、鉄及びマンガン歩留まりの向上などのメリット分が真空脱ガス精錬で必要とする処理費用よりも大きくなり、低炭素アルミキルド鋼の溶製工程全体の製造コストを従来の一次精錬炉のみで溶製した場合に比較して大幅に低減することができる。また、溶鋼は真空脱ガス精錬による強攪拌を受けるので、清浄性に優れた溶鋼を得ることができるという副次的効果も得ることができ、工業上有益な効果がもたらされる。
以下、本発明を具体的に説明する。
高炉から出銑された溶銑を溶銑鍋やトーピードカーなどの溶銑保持・搬送用容器で受銑し、次工程の脱炭精錬を行なう転炉に搬送する。通常、この搬送途中で、溶銑に対して脱硫処理や脱燐処理などの溶銑予備処理が施されており、本発明においては、低炭素アルミキルド鋼の成分規格上からは溶銑予備処理が必要でない場合でも、安価なマンガン源としてマンガン鉱石を転炉内に添加し、このマンガン鉱石を高い歩留まりで溶鋼中に還元させるために、溶銑予備処理を実施することが好ましい。これは、溶銑予備処理を施すことによって転炉精錬で必要とする媒溶剤を少なくすることができ、また、転炉内に装入する媒溶剤の量が少ないほどマンガン鉱石の還元が促進されるからである。転炉で使用する媒溶剤を最大限少なくするためには、溶銑の燐濃度を溶製する低炭素アルミキルド鋼の成分規格よりも低くなるまで予備脱燐処理することが好ましい。このようにすることで、転炉では媒溶剤を実質的にゼロとすることができる。溶銑の燐濃度を成分規格よりも低くなるまで下げるためには、脱燐処理の前に脱珪処理を行ない、効率的な脱燐反応を阻害する珪素を予め除去しておくことが好ましい。
このようにして得た溶銑を一次精錬炉である転炉に装入して大気圧下で転炉脱炭精錬を行なう。この大気圧下での転炉脱炭精錬は、マンガン源としてマンガン鉱石を添加しながら必要に応じて少量の生石灰などを媒溶剤として用い、酸素ガスを上吹き又は底吹きして溶銑の脱炭精錬を行なう。添加されたマンガン鉱石は送酸脱炭中に溶銑中の炭素によって還元され、還元されたマンガンは溶鋼中に移行する。転炉内に添加したマンガン鉱石のみでは、溶鋼のマンガン濃度が目的とする低炭素アルミキルド鋼の成分規格範囲に不足する場合には、転炉から取鍋などの溶鋼保持容器への溶鋼の出鋼時に高炭素フェロマンガンなどの安価な合金鉄系マンガン源を所定量添加し、溶鋼のマンガン濃度を成分規格と同等のレベルまで上昇させる。尚、予備処理の施されていない溶銑を使用する場合には、スラグの塩基度が3〜5程度となるように、媒溶剤として生石灰を添加して脱炭精錬を実施する。予備処理の施されていない溶銑を使用する場合には、マンガン源としてのマンガン鉱石は添加しない。
マンガン鉱石を還元しながら溶銑の脱炭精錬を行ない、溶銑から溶鋼へと脱炭精錬された溶湯中の炭素濃度が0.07〜0.12質量%の範囲まで脱炭精錬されたなら、転炉内への酸素ガスの供給を停止して脱炭精錬を終了する。転炉での大気圧下における脱炭精錬終了時の溶鋼中炭素濃度を0.07〜0.12質量%とする理由は以下の通りである。
即ち、溶鋼中炭素濃度を0.07質量%未満まで脱炭精錬した場合には、鉄の酸化が著しく、スラグ中の鉄酸化物の濃度が高くなり、鉄の歩留まりが低下すると共に、スラグの酸化度を低減するために使用するスラグ改質剤の原単位が上昇し、製造コストが上昇するからである。スラグ改質剤としては、金属アルミニウム、アルミニウムスクラップを溶解再生するときに発生するアルミドロス(金属Alを30〜50質量%程度含有する)、或いは、生石灰などが使用される。また、溶鋼中炭素濃度を0.07質量%よりも大幅に低下させた場合には、次工程の真空脱炭精錬において、炭素濃度が低炭素アルミキルド鋼の規格範囲よりも下がり過ぎ、炭素源を添加する必要が生ずるのみならず、真空脱炭精錬終了後の溶鋼中酸素濃度が低くならず、脱酸用のアルミニウムの原単位が上昇するからである。
一方、溶鋼中炭素濃度が0.12質量%を超える範囲で転炉脱炭精錬を終了した場合には、次工程の真空脱炭精錬における脱炭量が多くなり、その分だけ脱炭処理時間が延長し、真空脱ガス装置の生産性が低下し、製造コストの上昇を招くからである。また、処理時間が延長することから、真空脱炭処理時間の延長による温度補償として出鋼時の溶鋼温度を高くする必要が生じ、これに起因する鉄歩留まりの低下や耐火物損耗量の増大などによって製造コストが上昇し、好ましくないからである。出鋼時の溶鋼温度は、製鋼工場の各設備の配置などから定まるリードタイムによって決まるもので一概にはいえないが、例えば1620〜1650℃程度で十分である。
マンガン鉱石の還元のためには転炉脱炭精錬終了時の溶鋼中炭素濃度は高いほど好ましいが、転炉脱炭精錬終了時の炭素濃度が0.07〜0.12質量%の範囲であるならば、マンガン鉱石は十分に還元され特に問題にはならない。
得られた溶鋼にアルミニウム、チタン、カルシウム、ジルコニウムなどの強脱酸剤を添加せず未脱酸のまま転炉から溶鋼保持容器に出鋼し、溶鋼を収容した溶鋼保持容器を未脱酸のまま次工程の二次精錬炉である真空脱ガス装置に搬送する。出鋼時或いは出鋼後溶鋼保持容器内のスラグ上に必要に応じてスラグ改質剤を添加する。尚、この時点ではスラグ改質剤を添加せず、次工程の真空脱ガス装置で添加してもよい。
次いで、この溶鋼をRH真空脱ガス装置、DH真空脱ガス装置、VOD炉などの真空脱ガス装置において、大気圧よりも減圧した雰囲気下で真空脱炭精錬を実施する。真空脱ガス装置の代表的な設備はRH真空脱ガス装置であり、以下、真空脱ガス装置としてRH真空脱ガス装置を用いて精錬する例で説明する。
図1に、本発明を実施する際に用いたRH真空脱ガス装置の1例を示す。図1はRH真空脱ガス装置の概略縦断面図であり、図1において、1はRH真空脱ガス装置、2は溶鋼保持容器としての取鍋、3は溶鋼、4はスラグ、5は真空槽、6は上部槽、7は下部槽、8は上昇側浸漬管、9は下降側浸漬管、10は環流用ガス吹き込み管、11はダクト、12は原料投入口、13は上吹きランスであり、真空槽5は上部槽6と下部槽7とから構成され、又、上吹きランス13は上下移動が可能となっており、この上吹きランス13からは酸素ガスが真空槽5の内部の溶鋼3の湯面に吹き付けられるようになっている。
RH真空脱ガス装置1では、搬送された取鍋2を昇降装置(図示せず)にて上昇させ、上昇側浸漬管8及び下降側浸漬管9を取鍋2に収容された溶鋼3に浸漬させる。そして、環流用ガス吹き込み管10から上昇側浸漬管8に環流用Arガスを吹き込むと共に、真空槽5の内部をダクト11に連結される排気装置(図示せず)にて排気して真空槽5の内部を減圧する。真空槽5が減圧されると、取鍋2に収容された溶鋼3は、環流用ガス吹き込み管10から吹き込まれるArガスと共に上昇側浸漬管8を上昇して真空槽5の内部に流入し、その後、下降側浸漬管9を経由して取鍋2に戻る流れ、所謂環流を形成してRH真空脱ガス精錬が施される。
溶鋼3に対してRH真空脱ガス精錬が施されると、溶鋼3は未脱酸状態であるので、真空槽5の内部では溶鋼3に含有される炭素と酸素との反応が生じ、炭素はCOガスとなって排ガスと共に真空槽5からダクト11を介して排出され、溶鋼3は真空脱炭処理される。更に、上吹きランス13から酸素ガスを溶鋼3に向けて吹き込むことにより、溶鋼3の脱炭反応が進行する。
図2は、この真空脱炭精錬における溶鋼中の炭素濃度と酸素濃度との関係を示す図である。大気圧下の転炉で脱炭精錬された溶鋼3に含有される炭素と酸素は、図中のPCO=1.0の平衡関係にあり、0.07〜0.12質量%の炭素濃度で転炉脱炭精錬を終了した溶鋼3には、0.020〜0.034質量%程度の酸素が含有されている。転炉における脱炭精錬の最盛期には雰囲気ガスはCOガスのみであり、転炉脱炭精錬終了時の酸素及び炭素を求めるに当たり雰囲気のCOガス分圧を1.0気圧としても何ら問題にならない。
この溶鋼3を環流させ、真空槽5の内部で減圧下にさらすと、真空槽5の内部の雰囲気中のCOガス分圧は低下し、溶鋼3に含有される炭素と酸素との反応、即ち脱炭反応が起こる。ここで、真空脱炭精錬時における真空槽5の内部の雰囲気中COガス分圧は0.2気圧程度であることが経験的に知られている。溶鋼3に含有される酸素と炭素とが反応する場合、酸素と炭素との化学当量(C/O=12/16)に基づいて反応する。即ち、図中に示すC/O=12/16の傾斜にそって酸素濃度及び炭素濃度が減少しながら反応し、図中に示すPCO=0.2の曲線と交差する濃度で、溶鋼3に含有される酸素と炭素とによる脱炭反応が終了する。
0.07〜0.12質量%の炭素濃度で転炉脱炭精錬を終了した溶鋼3を高真空下にさらして脱炭するだけでは、酸素と炭素との化学当量から脱炭量は高々0.025質量%程度にしかならない。従って、炭素濃度が0.02〜0.06質量%である低炭素アルミキルド鋼の内で炭素濃度が0.05質量%以上のものは、転炉脱炭精錬終了時の炭素濃度を0.07質量%程度に低く制御することで溶製できないことはないが、転炉脱炭精錬終了時の炭素濃度がそれ以上になれば溶製することができない。いわんや、0.07〜0.12質量%の炭素濃度の溶鋼3を高真空下にさらして脱炭するだけでは、炭素濃度が0.05質量%未満の低炭素アルミキルド鋼は溶製できない。
そこで、本発明では脱炭反応に必要とする酸素を酸素ガスとして上吹きランス13から供給する。上吹きランス13から供給される酸素ガスは溶鋼3に溶解し、溶鋼3の酸素濃度が上昇することで脱炭反応が進行し、溶鋼3の炭素濃度は図中のPCO=0.2の曲線に沿って低下する。このようにして0.02〜0.06質量%の所定の炭素濃度になるまで、上吹きランス13から酸素ガスを供給しながら真空脱炭精錬を実施する。
この方法によって真空脱炭精錬することで、真空脱炭精錬終了時の溶鋼3の酸素濃度を高々0.015質量%程度に抑えることができる。尚、図2は、先ず、溶鋼3を高真空下にさらして脱炭精錬し、次いで、上吹きランス13から送酸して脱炭精錬するが如く記載しているが、これは説明を分かり易くするためのもので、実操業では、脱炭処理時間を短縮させるために、高真空下の脱炭精錬と上吹きランス13からの送酸による脱炭精錬とを同時に進行させる。
溶鋼中の炭素濃度が所定の値になったなら、上吹きランス13からの酸素ガスの供給を停止すると共に、脱酸用アルミニウムを原料投入口12から溶鋼3に投入して溶鋼3を脱酸し、真空脱炭精錬を終了する。真空脱炭精錬の終了後も更に数分間程度の環流を継続し、必要に応じてアルミニウム、マンガン、ボロン、カルシウム、クロム、ニオブ、チタン、ジルコニウム、バナジウムなどの成分調整剤を原料投入口12から溶鋼3に投入して溶鋼3の成分を調整した後、真空槽5を大気圧に戻してRH真空脱ガス精錬を終了し、低炭素アルミキルド鋼を溶製する。ここで、低炭素アルミキルド鋼とは、炭素濃度が0.02〜0.06質量%以下で、マンガンをおよそ0.2〜0.6質量%、アルミニウムを0.02〜0.05質量%程度含有し、その他必要に応じて、ボロン、カルシウム、クロム、ニオブ、チタン、ジルコニウム、バナジウムなどを微量含有する鋼のことである。
このように、本発明によれば、転炉脱炭精錬により増加した溶鋼3の酸素を真空脱炭精錬の酸素源として使用し、真空脱炭精錬における酸素源の不足分は酸素ガスとして供給するので、真空脱炭精錬終了時の溶鋼中酸素濃度を0.015質量%以下にまで下げることが可能となり、脱酸用アルミニウムの原単位を従来の一次精錬炉のみで溶製した場合に比較して大幅に削減することが達成される。また、転炉脱炭精錬終了時の炭素濃度が従来の一次精錬炉のみで溶製した場合に比較して高くなるので、転炉脱炭精錬では鉄の酸化が抑制され、鉄の歩留まりが向上するのみならず、出鋼時のスラグ4の鉄酸化物が少なくなり、スラグ改質剤の原単位を低減することができると同時に、マンガンの歩留まりも向上する。更に、転炉では、出鋼時に脱酸用アルミニウムを添加することがなくなり、そのため、脱酸用アルミニウムの添加量を決定するために実施していたサブランスによる溶鋼中酸素濃度の測定を行なう必要がなくなり、その分、精錬時間が短くなり転炉の生産性を向上させることができる。
尚、上記説明では、真空脱ガス装置としてRH真空脱ガス装置の例で説明したが、上吹きランスを有する真空脱ガス装置であるならば、DH真空脱ガス装置やVOD炉などの他の真空脱ガス装置においても、上記に準じて本発明を実施することができる。
炭素濃度の成分規格範囲が0.02〜0.05質量%の低炭素アルミキルド鋼を本発明方法によって溶製した。真空脱ガス装置としては図1に示すRH真空脱ガス装置を使用した。用いた溶銑は脱硫処理、脱珪処理、脱燐処理が施された溶銑であり、転炉では合金鉄の代替としてマンガン鉱石を添加し、マンガン鉱石を還元しながら脱炭精錬を実施した。転炉での脱炭精錬終了時の炭素濃度は0.07〜0.12質量%に調整し、1630〜1650℃で未脱酸のまま取鍋に出鋼した。出鋼時、溶鋼と共に転炉から排出されたスラグにアルミドロス粉末をスラグ改質剤として添加した。
RH真空脱ガス装置では、上吹きランスから酸素ガスを吹き付けながら、溶鋼中の炭素濃度が0.02〜0.05質量%になるまで真空脱炭精錬し、真空脱炭精錬後アルミニウムを添加して脱酸し、低炭素アルミキルド鋼を溶製した。
その結果、RH真空脱ガス装置を使用せずに溶鋼中の炭素濃度が0.02〜0.05質量%になるまで転炉で脱炭精錬し、取鍋への出鋼時に脱酸用アルミニウムを添加して溶製した従来の溶製方法に比べて、アルミニウム原単位が溶鋼トン当たり約0.5kg低減し、RH真空脱ガス装置による処理費用の増加を打ち消し、大幅に製造コストを削減することが達成された。また、この溶鋼を連続鋳造機で鋳造したスラブ鋳片を薄鋼板に圧延した結果、鋳片のアルミナ系介在物に起因する欠陥は従来の溶製方法で溶製した鋳片に比べて大幅に低減し、本発明により溶鋼の清浄性が向上したことも確認できた。
本発明を実施する際に用いたRH真空脱ガス装置の概略縦断面図である。 溶鋼中の炭素濃度と酸素濃度との関係を示す図である。
符号の説明
1 RH真空脱ガス装置
2 取鍋
3 溶鋼
4 スラグ
5 真空槽
8 上昇側浸漬管
9 下降側浸漬管
10 環流用ガス吹き込み管
13 上吹きランス

Claims (2)

  1. 転炉を用いて大気圧下で溶銑に脱炭精錬を施し、続いて前記脱炭精錬によって得られた溶鋼を、RH真空脱ガス装置、DH真空脱ガス装置、VOD炉からなる真空脱ガス設備のうちの何れかの真空脱ガス設備を用いて減圧下で脱炭精錬して、炭素濃度が0.02〜0.06質量%の低炭素アルミキルド鋼を溶製するに際し、前記転炉では溶鋼中の炭素濃度が0.07〜0.12質量%になるまで脱炭精錬し、脱炭精錬終了後はアルミニウムによる溶鋼の脱酸を実施しないまま前記真空脱ガス設備に搬送し、真空脱ガス設備では、雰囲気中のCOガス分圧が、溶鋼中の炭素濃度が0.02〜0.06質量%で且つ酸素濃度が0.015質量%以下となる炭素と酸素との平衡関係の範囲である、大気圧よりも低い雰囲気下の溶鋼に酸素ガスを吹き付けて真空脱炭精錬を行い、炭素濃度が0.02〜0.06質量%、且つ、酸素濃度が0.015質量%以下の溶鋼を溶製し、その後、溶鋼にアルミニウムを添加して脱酸することを特徴とする、低炭素アルミキルド鋼の溶製方法。
  2. 前記溶銑は、脱燐処理が施された溶銑であり、前記転炉では、マンガン鉱石を装入し、マンガン鉱石を還元しながら溶銑の脱炭精錬を行なうことを特徴とする、請求項1に記載の低炭素アルミキルド鋼の溶製方法。
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