JP2018131641A - 低窒素鋼の溶製方法及びガス吹き付け装置 - Google Patents

低窒素鋼の溶製方法及びガス吹き付け装置 Download PDF

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Abstract

【課題】取鍋への出鋼時における、溶鋼の窒素吸収ならびに温度低下を抑制し、低窒素鋼を経済的に安定して製造するための低窒素鋼の溶製方法及びそれに用いるガス吹き付け装置を提供する。【解決手段】製鋼炉で溶製した溶鉄を取鍋に出鋼する際に、出鋼時の注入流2が取鍋1内溶鋼面11と接触する部分(滝壺3)に非窒素ガス又は窒素濃度20%以下のガス(低窒素ガス)を吹き付け、低窒素ガスを吹き出すランス出口でのガス温度を400℃以上とすることを特徴とする、低窒素鋼の溶製方法。使用するガス吹き付け装置は、出鋼された溶鋼を受ける取鍋1の上方に設け、ガスを吹き出すランス4と、ランスに供給するガスを加熱するガス加熱装置5とを備え、ランス出口での低窒素ガス温度を400℃以上として吹き付けることができる。【選択図】図2

Description

本発明は、溶鋼を溶鋼炉(転炉、電気炉などの製鋼炉)から取鍋に出鋼して処理する際の、溶鋼の窒素吸収を抑制し、低窒素鋼を経済的に安定して製造するための低窒素鋼の溶製方法及びそれに用いるガス吹き付け装置に関する。
近年、鋼材に要求される材料特性が高度化しており、鋼材の靭性をはじめとする特性値の向上が求められている。鋼材中に窒素が含まれると、一般的には鋼の靱性低下を招き、特に低温における靱性が低下する。このため、鋼材にTi,Nb,V,Zr,Alを添加して窒化物として固定することで窒素の無害化を図るが、合金添加は製造コストの増加を招くことに加え、他の特性にも影響を及ぼす。このため、鋼中の窒素は低いことが望ましい。
通常、高炉−転炉法で溶鋼を溶製する場合、高炉で製造された溶銑中には炭素を4〜5%(質量比、以下、本明細書中では特に説明がない限り、全て質量比)含有しており、この溶銑を転炉で脱炭する。その際、転炉内では溶鉄に向けて大量の酸素が吹き付けられ、転炉内はCOガスで満たされる。転炉内では底吹きにより溶鋼が強攪拌されることもあり、転炉吹錬終了時の溶鋼中窒素濃度は10ppm程度まで低下する。しかしながら、次工程に溶鋼を搬送するため、溶鋼は転炉から取鍋に出鋼するが、この出鋼の際に出鋼流(転炉から取鍋への注入流)が大気を巻き込むことで、溶鋼中の窒素濃度が上昇してしまう。
次工程として、真空脱ガス装置を使って溶鋼を減圧処理する場合、減圧処理中に溶鋼中窒素濃度が低下するが、溶鋼中窒素濃度の低下速度は遅いことに加え、高速処理が求められる状況では減圧処理に依存することはできず、真空脱ガス装置だけを使って低窒素鋼を経済的、安定的に製造するには至っていない。
このため、低窒素鋼を経済的、安定的に製造するには、転炉で窒素濃度を10ppm程度まで低減した溶鋼を、吸窒させることなく取鍋に出鋼し、真空脱ガス装置では吸窒を抑制した状態を維持し、次工程である連続鋳造に移るのが理想である。
このような問題を解決すべく、以下に示すように、出鋼時の吸窒を抑制する手法が提案されている。
例えば、特許文献1では、脱窒された低窒素溶鋼を不活性ガスでシールしながら出鋼する技術が提案されている。
特許文献2では、蓋を有する受鋼用取鍋内において、酸素富化空気によって燃料を燃焼させ受鋼取鍋を予熱し、且つ燃焼排ガスで置換することにより受鋼用取鍋内の雰囲気中の窒素を低下せしめた後に、転炉出鋼時に受鋼用取鍋の蓋に設けられた溶鋼流を囲む円環状に配設されたノズルからアルゴンガスを溶鋼流に吹き付けることを特徴とする技術が提案されている。
特許文献3では、精錬炉の出鋼口の周囲に窒素ガスを含まないガスを噴出するガス噴出機を設けておき、精錬炉の出鋼口から出鋼する溶鋼を、ガス噴出器からガスを噴出してシールドする技術が提案されている。
特許文献4では、ステンレス鋼を対象として、脱炭炉から取鍋へ出鋼する際、出鋼流の下端付近に向けて、ステンレス溶鋼の出鋼前から出鋼完了までの間、純酸素ガスまたは窒素を含まず、酸素を20体積%以上含むガスを供給し、取鍋内へ供給されるガスの流量V(Nm3/min)が、取鍋内容積T(m3)に対してV>Tとなるように前記ガスを吹き付ける技術が提案されている。
また、特許文献5では、出鋼流を傾斜させた取鍋の壁に沿わせて取鍋に受鋼するとともに、転炉等の製鋼炉の出鋼口に不活性ガスを供給して出鋼流に不活性ガスを混入させる技術が提案されている。
特開昭60−26611号公報 特開平2−285020号公報 特開2010−138446号公報 特開2012−207272号公報 特開昭61−166911号公報
長隆郎、岩田勝吉、井上道雄、「転炉出鋼時の溶鋼の酸素および窒素吸収の推算」、鉄と鋼、69(1983)、p.767−774
転炉から取鍋への出鋼時に起きる溶鋼の吸窒を抑制するには、吸窒が生じている部分を大気と遮断することに加え、吸窒反応を遅らせれば良いと考えられる。吸窒が生じている場所は、非特許文献1に記載されているように、転炉から取鍋内に出鋼される際の溶鋼注入流が取鍋内の溶鋼面と接触する部分(以下「滝壺」という。)であると考えられる。上記した特許文献1から4までは出鋼流にガスを吹き付ける点で共通している。取鍋内の全容積を不活性ガスで置換するといった手法と比較すると、特許文献1〜4に記載の発明は経済的かつ継続性が期待できる。しかしながら、特許文献1から4には問題点がある。すなわち、上記した技術は滝壺部に巻き込まれる気体中の窒素濃度を下げることに主眼がおかれているものの、巻き込まれた後の滝壺の状況に関しては触れられていない。特許文献5では滝壺の生成を抑制する思想が見られるものの、転炉の出鋼孔から取鍋内までは通常3〜5m程度離れているため、不活性ガスは滝壺に届く前に拡散してしまう。
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、取鍋への出鋼時における、溶鋼の窒素吸収を抑制し、低窒素鋼を経済的に安定して製造するための低窒素鋼の溶製方法及びそれに用いるガス吹き付け装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、転炉から取鍋への出鋼中の吸窒挙動を検討した結果、吸窒が生じているのは、そのほとんどが出鋼流が取鍋内の溶鋼に入り込む滝壺部分であることを知見した。このため、特に、滝壺部に非窒素ガスを吹き付けた際のガス吸収挙動を調査した。その結果、滝壺部に吹き付ける非窒素ガスを予熱した上で滝壺近傍に吹き付けた場合、気体が溶鋼内に巻き込まれた後の気泡生成挙動が変わることを見出した。この知見を元に、滝壺部に吹き付ける非窒素ガスの温度と出鋼時の吸窒挙動を調査し、滝壺部に吹き付ける非窒素ガス又は窒素濃度20%以下のガス(以下まとめて「低窒素ガス」という。)を一定温度(400℃)以上にした上で滝壺近傍に向けて吹き付けることで、出鋼時の吸窒を抑制可能であることが判明した。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
(1)製鋼炉で溶製した溶鉄を取鍋に出鋼する際に、出鋼時の注入流が取鍋内溶鋼面と接触する部分(以下「滝壺」という。)に非窒素ガス又は窒素濃度20%以下のガス(以下まとめて「低窒素ガス」という。)を吹き付け、前記低窒素ガスを吹き出すランス出口でのガス温度を400℃以上とすることを特徴とする、低窒素鋼の溶製方法。
(2)前記低窒素ガスを供給している期間は常に、前記ランス出口から滝壺部分までの距離を4.5m以内とし、低窒素ガス流量を5Nm3/min以上とすることを特徴とする、(1)に記載の低窒素鋼の溶製方法。
(3)前記低窒素ガスを吹き付けるガス吹き付け装置として、前記取鍋の上方に設けられ、ガスを吹き出すランスと、ランスに供給するガスを加熱するガス加熱装置とを備え、前記ガス加熱装置を用いて低窒素ガスを加熱し、ランス出口での前記低窒素ガス温度を400℃以上として吹き付けることができるガス吹き付け装置を用いることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の低窒素鋼の溶製方法。
(4)出鋼された溶鋼を受ける取鍋の上方に設けるガス吹き付け装置であって、
ガスを吹き出すランスと、ランスに供給するガスを加熱するガス加熱装置とを備え、前記ガス加熱装置を用いて非窒素ガス又は窒素濃度20%以下のガス(以下まとめて「低窒素ガス」という。)を加熱し、ランス出口での前記低窒素ガス温度を400℃以上として吹き付けることができることを特徴とする、ガス吹き付け装置。
本発明によれば、シール性の高い蓋や出鋼前の取鍋内置換用の大量の非窒素ガスを用いることなく出鋼時の吸窒を抑制でき、低窒素鋼を経済的に安定して溶製することができる。
吸窒量に及ぼす吹き付ける非窒素ガス温度の影響 ガス吹き付け装置図 非窒素ガスの温度と吹き付けガス流量の関係
以下、本発明の実施形態を、図1を参照しながら詳細に説明する。
低窒素鋼を溶製する場合、高炉あるいは電気炉から搬送された炭素濃度の高い溶銑を転炉などの精錬炉に装入し、酸素吹錬により鋼中の炭素をCOガスとして除去する。その際、精錬炉ではC+O=CO反応によって炉内の窒素分圧が低下することに加え、底吹きおよび上吹きによる撹拌作用とも相まって鋼中の窒素濃度は10ppm程度まで低下する。脱炭処理後の溶鋼は成分調整や脱ガスを行うため、精錬炉から取鍋に出鋼される。その後、成分や温度が調整された溶鋼は鋳造プロセスに供され、鋳造された後は加熱、圧延、熱処理、表面処理といった工程を経て製品として出荷される。
精錬炉から出鋼する際は、精錬炉を傾動させ、炉体側面もしくは炉底に設けた出鋼孔から溶鋼を取鍋に注入する。その際、製品で必要な成分の一部もしくは全部を合金として添加する。また、再酸化抑制、温度低下防止、精錬作用を狙って造滓剤を添加する場合がある。この出鋼の際、図2に示すように、溶鋼が取鍋内に注入され、取鍋内に溶鋼が溜まってくると、注入流2と溶鋼面11が接する部分(滝壺3)では溶鋼注入流2が周囲の気体を巻き込み、溶鋼中においては、巻き込まれた気体と溶鋼とが激しく攪拌混合する。この際、滝壺に巻き込まれる気体が空気と同じ成分であった場合、気体には窒素が8割近く含まれており、窒素分圧と平衡する溶鋼中窒素濃度は400ppmである。そのため、脱炭処理後に一旦10ppm程度まで低下した溶鋼中の窒素濃度は、巻き込まれた気体中の窒素を吸収して増加することになる。
この時、出鋼時の滝壺近傍に非窒素ガスを吹き付けることで、溶鋼中の窒素濃度増加を抑制できると考えられる。ガス巻込みが生じる滝壺部にガスを吹き付ける場合、吹き出したガスが非窒素ガスであっても、ガス噴流が途中で大気と混合し、滝壺への到達時には大気が含まれている。さらに、ガス流速が大きい場合は、ガス温度が上昇しきる前に吹き付けたガスが滝壺に巻き込まれる。このような状況では、巻き込まれた大気を含むガスが溶鋼中で膨張する。このとき、気泡の表面積すなわち吸窒サイトが増加することに加え、巻き込まれたガスの膨張に伴って溶鋼が撹拌されるために気液界面の物質移動係数も増大する。そのため、いわゆる吸ガス容量係数(=溶鋼中気泡表面積×物質移動係数)が増大し、吸窒抑制効果が低減してしまう。この現象は、滝壺部にガスを吹き付ける状況において、ガス流速が大きい条件で顕著に生じる。一方で、ガス流速を小さくして吹き付けた場合、滝壺に到着する前にガス温度が上昇するため、吸窒抑制効果が低減することはないものの、流速が小さいことで途中で非窒素ガスが拡散してしまい、滝壺到達時にはガス中の窒素濃度が増大しているので、滝壺を効率よくシールできない可能性がある。
ここで、滝壺近傍に吹き付ける非窒素ガスを、ガス吹き出しランスからの吹き出し時に予め高温に加熱した状況で吹き付けることで、上記した吸窒抑制効果が低下することを回避できると考えた。すなわち、非窒素ガスを予熱した上で吹き付けた場合、滝壺に到達した段階でガス温度は溶鋼温度近傍まで上昇していることから、巻き込まれたガスは溶鋼中で膨張しない。このため、溶鋼中での吸ガス容量係数が増大しないことから、ガスを予熱しないで吹き付けた場合と比較すると、吸窒を抑制できると着想した。
このことを確認するため、誘導炉で溶解した200kg規模の溶鋼を取鍋に出鋼する際に、取鍋内の滝壺から0.5m離れた位置からArガスを吹き付ける実験を行い、吹き出すガス温度を200〜900℃に変化させた。出鋼前後の吸窒量に及ぼす非窒素ガス温度の影響を調査した。図1は吹き付ける非窒素ガスの標準状態での流量を同じ条件とし、吹き付ける非窒素ガスの温度を高めた条件での吸窒量を求め、200℃での吸窒量で除して求めた吸窒量の指標と、吹き付ける非窒素ガスの温度の関係を示すものである。図1から分かるように、非窒素ガス温度が400℃を超えると吸窒量が低下することが分かる。
滝壺周囲の窒素濃度を低減するのに用いるガス種としては、窒素を含有しない非窒素ガスが好ましいが、窒素濃度20%以下であれば窒素を含んだガスでもかまわない。以下これらを総称して「低窒素ガス」という。吹き付けるガス種としては、CO2、Ar、O2のうち一種もしくは二種以上の混合ガスであることが望ましい。
以上の実験結果から明らかなように、本発明の低窒素鋼の溶製方法においては、製鋼炉で溶製した溶鉄を取鍋に出鋼する際に、出鋼時の注入流が取鍋内溶鋼面と接触する部分(滝壺)に非窒素ガス又は窒素濃度20%以下のガス(低窒素ガス)を吹き付け、前記低窒素ガスを吹き出すランス出口でのガス温度を400℃以上とすることを特徴とする。
ガス吹き付け装置を用いて、滝壺近傍に高温ガスを吹き付ける場合、低窒素ガスを供給している期間は常にランス先端から滝壺部分までの距離を4.5m以内とすることが望ましい。ガス吹付けの場合、ランス先端から滝壺部分までの距離が最も離れているのは、出鋼開始直後であり、その後は取鍋内に溶鋼が満たされて溶鋼面が上昇してくることから、この距離は徐々に縮まってくる。しかしながら、ランス先端から滝壺部分までの距離が4.5mよりも離れてくると、吹き付けた低窒素ガスが滝壺部に到達しなくなってくる。ランス先端から滝壺部分までの距離が近いほど吸窒抑制効果が大きくなるが、1.0m以内に近づくと、飛散した溶鋼がノズルに付着してしまうことから、1.0m以上離れていることが望ましい。なお、本発明において高温ガスを吹き付ける滝壷近傍とは、ガスを吹き付けるランスの軸線が取鍋内溶鋼面と接する位置が、滝壷の中心から0.5m以内であれば、本発明の効果を発揮することができる。
また、滝壺周囲の窒素濃度を低減するには、吹き付ける低窒素ガスの流量が5Nm3/min以上であることが望ましい。低窒素ガス流量が少ないと、ガスが滝壺に到達するまでに拡散してしまい、巻き込まれる気体中の窒素濃度を十分に下げることができない。吹き付ける低窒素ガスの流量の上限には特に制限がないが、吹き付ける低窒素ガスの流量が多すぎても、吸窒抑制効果が飽和することに加え、溶製コストの増大、溶鋼の温度低下、酸欠防止対策といった操業悪化を引き起こしてしまうため、上限は20Nm3/min程度であることが望ましい。吹き付ける低窒素ガス流量および予熱温度を決め、低窒素ガスの供給圧力を決めると、ランス出口の内径から概ねガス流速を求めることができ、ランス出口での流速は概ね60から400m/s程度に設定できる。なお、ガス温度が400℃の場合の音速は450m/s程度であることから、ランス先端をラバール形状にする必要はない。
本発明で400℃以上の低窒素ガスを吹き付けるに当たり、ガスを予熱するために、一般的な内燃式の燃焼室でガスを予熱する方式を採用し、高温ガスをランスに供給する装置を用いようとする場合、転炉周辺に大がかりな設備を要する上に、高温ガス搬送用の配管が必要である。また、転炉出鋼時に高温の低窒素ガスを吹き付ける場合、滝壺位置が時間と共に変わることから、ガスを固定配管でランスに供給したのでは、ランスの向きを変えることができず、効果的な吹付けができない。
しかしながら、前述のとおり、必要な低窒素ガスの容量を調査した結果、吸窒抑制の効果を得るには5〜20Nm3/min程度のガス容量で十分であることを知見した。この程度のガス容量であれば、上記した大がかりな設備は不要であることが分かった。すなわち、ガス加熱装置をランスの直前に配置した一体形状のランスにすることが可能であり、このような形状とすることで、設備の大型化や高温ガス搬送用の配管を排し、設備上の制約を回避した上で、高温の低窒素ガスを供給できる。また、このようなガス加熱装置とランス一体型の構成を取ることで、出鋼中にランスの向きを滝壺先端に調整するための方向調整機能を設けることも可能である。
即ち、本発明の低窒素鋼の溶製方法で用いることのできるガス吹き付け装置は、図2に示すように、出鋼された溶鋼を受ける取鍋1の上方のデッキ10上に設けられ、低窒素ガスを滝壺3近傍に搬送するためのガスを吹き出すランス4部分およびそのランス本体に備え付けた、ランスに供給するガスを加熱するガス加熱装置5で構成されており、ランス出口でのガス温度を400℃以上の高温にして吹き付けることができることが特徴である。装置は大きく分けて、ランス4部分、ガス加熱装置5部分で構成されている。ガス供給源からガス加熱装置にガスを供給するガス供給ライン6は、常温のガスが通過するため、通常のフレキホースが接続されている。ランス4部分は炭素鋼で構成されており、ガス加熱装置5部分に接続される。ガス加熱装置5は金属製の発熱体を具備しており、温度調整器7および電源8が接続されている。ガス温度を400℃以上に昇温させるには、電源8は少なくとも70kW程度の出力が必要であり、ガス温度をさらに高めるためには、ガス加熱装置部分を拡大すれば良い。ガス温度は少なくとも400℃以上に高めることが望ましく、好ましくは500℃以上に高めておくことが望ましい。一方で、ガス温度を800℃以上に高めた場合、発熱体温度は1200℃程度必要であり、高くなりすぎることから、ガス温度の上限は800℃であることが望ましい。また、ガス吹き付け装置は、加熱したガスを滝壺部に向けて放出できるように、本体を水平方向に回転、および、ランス部分の傾きを調整する方向調整機能9を設けることで、ガス吹き付け方向を調整できる。
滝壺周辺に吹き付けられた低窒素ガスは滝壺近傍で拡散するため、ランス1本でも吸窒抑制効果を得られるが、合金添加用のシュートと干渉しない範囲でランスを2本以上設置し、低窒素ガスを吹き付けたとしても何ら問題はない。
上記のように本発明を用いることで、出鋼時に窒素濃度の上昇を抑制することができるので、低窒素鋼を経済的にかつ安定的に溶製することができる。
このような溶製方法は、炭素鋼に非常に有効であるが、炭素鋼以外のステンレス鋼、合金鋼の溶製にも有効である。また、実施例では出鋼時にAlで脱酸する条件を記載してあるが、本発明法は、未脱酸出鋼する場合であっても有効である。
以下に示す溶鋼の実施例および比較例の条件で、出鋼時の吸窒挙動評価試験を行い、発明の効果を確認した。
高炉から搬送された溶銑(炭素含有量4.5%相当)を転炉に装入し、酸素吹錬を行った。転炉吹錬後の成分は、[C]=0.06〜0.14%、[Si]=0.01〜0.05%、[Mn]=0.1〜0.4%、[P]=0.01〜0.03%、[N]=9〜12ppm、残部がFeおよび不可避的成分である。処理量は300ton規模であり、出鋼時間はおよそ5分である。溶鋼を受ける取鍋の炉底から炉頂までの高さは3.9mであり、取鍋は事前に700〜800℃程度に予熱されている。出鋼流は出鋼開始から出鋼完了までの間に、傾動した転炉の炉口を正面から見た場合、前後に動くため、出鋼流に合わせて取鍋台車を前後に動かして受鋼する。
高温の低窒素ガスを吹き付けるガス吹き付け装置は、図2に示すように、ランス4およびガス加熱装置5を含め、転炉が設置してあるデッキ10上に設置した。ガス吹き付け装置は水平方向に回転し、かつランスの傾きを変えることができ、出鋼の進み具合に併せてガス吹き付け方向を変えることができるランス方向調整機能9を具備している。ガス加熱装置5は、温度調整器7および電源8と接続されており、ガス加熱装置5部およびランス4先端に設置した熱電対の計測値を参照しながらガス温度を調整できる。吹き付ける低窒素ガスとしては、Ar、CO2ガスの単体からなる非窒素ガスおよびこれらのガスとO2ガスを20%混合したガスを用いた。非窒素ガスを含め、低窒素ガスという。
発明の効果を確認するため、出鋼前の転炉内、出鋼後の取鍋内の溶鋼を採取し、出鋼前後の窒素濃度変化量Δ[N](ppm)を吸窒量として評価した。出鋼条件を表1に示す。出鋼前、蓋のない状態の取鍋を転炉下に設置した段階で、取鍋内の出鋼流が当たる湯当たり部にランスの方向を向けた。出鋼するために転炉を傾動させるタイミングでランスから低窒素ガスを導入し、出鋼中は常に滝壺部に低窒素ガスが当たるようにランスの向きを調整した。ランスの長さは一定であり、ランス先端から滝壺部分までの距離は出鋼開始時が最も長く、時間経過とともに徐々に短くなる。出鋼中にランス長さを変更できないため、ランス先端から滝壺部分までの距離を変更する場合は、事前にランス長さを変えることで対応した。初期のランス先端から滝壺部分までの距離は、初期が4.5mであった条件では出鋼完了直前に1.3mとなり、初期が4.0mであった条件では出鋼完了直前に1.0mとなった。
出鋼の際、出鋼してから2分後に出鋼流に巻き込ませる形でAlを含む合金を投入した。表1に示したCおよびAl濃度は、出鋼後の取鍋内溶鋼の成分である。他の成分に関しては一般的な転炉吹錬後の値であったが、Al脱酸されていることから、吸窒挙動は溶鋼中もしくは気相中の窒素の物質移動の影響が大きく、溶鋼成分の影響は限定的であったと考えられる。以下、Δ[N]が20ppmを超える場合効果がなかったとして「×」とし、Δ[N]が16〜19ppmであった場合、発明の効果があったとして「△」とし、Δ[N]が15ppm以下であった場合、優れた発明の効果があったとして「○」とし、さらに、Δ[N]が10ppm以下であった場合、特に優れた効果があったと判断して「◎」とした。
結果を表1に示す。
試験No.1からNo.7(比較例)は非窒素ガスの温度を調整することなく常温のまま吹き付け、吹き付けガス流量を5〜10Nm3/min、初期のランス先端−滝壺間距離を4.0〜6mとした条件で滝壺部に非窒素ガスを吹き付けた結果、Δ[N]は20から24ppmであった。以下、試験No.8から32まで、ガス吹き付け装置を用いて、低窒素ガスを所定の温度に予熱した条件で、出鋼中に滝壺に向けて低窒素ガスを吹き付けた。
No.8からNo.10(比較例)までは、高温ガス吹き付け装置を用いて、非窒素ガスの温度を200から300℃とし、初期のランス先端−滝壺間距離を4.0〜4.5m、吹き付けガス流量を5〜10Nm3/minとした条件で滝壺部に非窒素ガスを吹き付けたものの、吹き付けたガス温度が本発明範囲から外れ、Δ[N]は20〜21ppmであり、発明の効果は認められなかった。
No.11からNo.16(発明法)までは、非窒素ガスの温度を400℃まで高めた条件で、初期のランス先端−滝壺間距離を4.0〜5.5m、吹き付けガス流量を4〜10Nm3/minとした条件で、滝壺部に非窒素ガスを吹き付けた結果、Δ[N]は12〜19ppmとなり、発明の効果が認められた。中でも、初期のランス先端−滝壺間距離が4.5m以下、非窒素ガス流量が5Nm3/min以上の条件において、優れた発明の効果が認められた。No.14ではガス種をArとしたが、CO2を用いた場合と同様の効果が得られた。
No.17からNo.28(発明法)までは、低窒素ガスの温度を500℃まで高めた条件で、初期のランス先端−滝壺間距離を4.0〜5.5m、吹き付けガス流量を3〜10Nm3/minとした条件で、滝壺部に低窒素ガスを吹き付けた結果、Δ[N]は9〜19ppmとなり、発明の効果が認められた。中でも、初期のランス先端−滝壺間距離が4.5m以下、低窒素ガス流量が5Nm3/min以上の条件において、優れた発明の効果が認められ、低窒素ガスの温度が500℃の条件ではガス流量が10Nm3/minの条件において、特に優れた発明の効果が認められた。No.23およびNo.27ではガス種をArとし、No.19およびNo.21ではCO2もしくはArにO2を20%混合した非窒素ガスを用いたが、CO2を用いた場合と同様の効果が得られた。また、No.24およびNo.25ではガス中にNが20%以下含まれる低窒素ガス条件としたが、非窒素ガスを用いた場合と同様に吸窒抑制効果が得られた。
No.29(発明法)は、非窒素ガスの温度を600℃まで高めた条件で、初期のランス先端−滝壺間距離を4.5m、吹き付けガス流量を8Nm3/minとした条件で、滝壺部に非窒素ガスを吹き付けた結果、Δ[N]は9ppmとなり、特に優れた発明の効果が認められた。
No.30からNo.33(発明法)までは、低窒素ガスの温度を800℃まで高めた条件で、初期のランス先端−滝壺間距離を4.0〜4.5m、吹き付けガス流量を4〜8Nm3/minとした条件で、滝壺部に低窒素ガスを吹き付けた結果、Δ[N]は9〜17ppmとなり、発明の効果が認められた。中でも、初期のランス先端−滝壺間距離が4.5m以下、低窒素ガス流量が5Nm3/min以上の条件において、優れた発明の効果が認められ、低窒素ガスの温度が800℃の条件ではガス流量が8Nm3/minとしたNo.33において、特に優れた発明の効果が認められた。No.32ではガス種をArとし、No.31ではCO2にO2を20%混合した非窒素ガスを用いたが、CO2を用いた場合と同様の効果が得られた。
No.34(発明法)は、非窒素ガスの温度を900℃まで高めた条件で、初期のランス先端−滝壺間距離を4.5m、吹き付けガス流量を8Nm3/minとした条件で、滝壺部に非窒素ガスを吹き付けた結果、Δ[N]は10ppmとなり、特に優れた発明の効果が認められた。しかしながら、非窒素ガスの温度を900℃まで高めても、効果が飽和していることに加え、ガス加熱装置への負荷も大きいことから、非窒素ガスの温度は800℃までで十分である。
上記実施例から、滝壺部に吹き付ける非窒素ガス又は窒素濃度20%以下のガス(低窒素ガス)の温度を400℃以上とすることで、出鋼前後の吸窒量を低減できることが分かる。また、No.11以降の発明法において、No.15とNo.16、No.18および19とNo.20の結果を比較すると、ガス温度およびガス流量が同じ条件であっても、初期のランス先端−滝壺間距離が4.5m以内とすることで吸窒量が低減できており、初期のランス先端−滝壺間距離は4.5m以下であることが望ましいことが分かる。
図3は初期のランス先端−滝壺間距離を4.5m以下とした条件での、出鋼中の低窒素ガスの温度と吹き付けた低窒素ガスの流量の関係を示す。図3において、ブロットの印は前述のとおりに定めたものであり、△印は本発明の効果が認められた条件、○印は優れた効果が認められた条件、◎印は特に優れた効果が認められた条件、×印は本発明の効果が認められなかった条件である。No.9と12,No.10と13の比較から、初期のランス先端−滝壺間距離およびガス温度、吹き付けガス流量が同じであっても、発明の効果を得るには、低窒素ガスの温度は400℃以上である必要があることが分かる。また、No.11と12,17と20,30と32の比較から、初期のランス先端−滝壺間距離およびガス温度の条件、低窒素ガスの温度が同じであっても、吹き付けガス流量は5Nm3/min以上であることが好ましいことが分かる。
以上から、経済的に(すなわち、歩留を維持しつつ)低窒素鋼を溶製するには、本発明条件を満たすことが望ましいことがわかる。
溶鉄の出鋼時の吸窒を防止できるため、低窒素鋼の溶製方法において有益である。
1 取鍋
2 注入流
3 滝壺
4 ランス
5 ガス加熱装置
6 ガス供給ライン
7 温度調整器
8 電源
9 方向調整機構
10 デッキ
11 溶鋼面

Claims (4)

  1. 製鋼炉で溶製した溶鉄を取鍋に出鋼する際に、出鋼時の注入流が取鍋内溶鋼面と接触する部分(以下「滝壺」という。)に非窒素ガス又は窒素濃度20%以下のガス(以下まとめて「低窒素ガス」という。)を吹き付け、前記低窒素ガスを吹き出すランス出口でのガス温度を400℃以上とすることを特徴とする、低窒素鋼の溶製方法。
  2. 前記低窒素ガスを供給している期間は常に、前記ランス出口から滝壺部分までの距離を4.5m以内とし、低窒素ガス流量を5Nm3/min以上とすることを特徴とする、請求項1に記載の低窒素鋼の溶製方法。
  3. 前記低窒素ガスを吹き付けるガス吹き付け装置として、前記取鍋の上方に設けられ、ガスを吹き出すランスと、ランスに供給するガスを加熱するガス加熱装置とを備え、前記ガス加熱装置を用いて低窒素ガスを加熱し、ランス出口での前記低窒素ガス温度を400℃以上として吹き付けることができるガス吹き付け装置を用いることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の低窒素鋼の溶製方法。
  4. 出鋼された溶鋼を受ける取鍋の上方に設けるガス吹き付け装置であって、
    ガスを吹き出すランスと、ランスに供給するガスを加熱するガス加熱装置とを備え、前記ガス加熱装置を用いて非窒素ガス又は窒素濃度20%以下のガス(以下まとめて「低窒素ガス」という。)を加熱し、ランス出口での前記低窒素ガス温度を400℃以上として吹き付けることができることを特徴とする、ガス吹き付け装置。
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