JP2010248536A - 高Mn含有金属の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Mnを10質量%以上,炭素を0.1質量%以上,窒素を0.001質量%以上含有し残部鉄および不純物からなる高Mn含有溶融金属を脱炭および脱窒して,Mnが10質量%以上の高Mn含有金属を製造する。
【解決手段】溶融金属を保持する取鍋を容器内に収容し該容器ごと減圧して精錬する減圧精錬設備を用いる場合にはその取鍋に,真空槽と浸漬管を有する還流型脱ガス設備を用いる場合には取鍋に,MgOを20質量%以上含有する耐火物を用い,高Mn含有溶融金属の温度が1500〜1650℃、かつ、真空槽内の雰囲気圧力が6000〜16000Paの条件で酸素を供給して脱炭および脱窒する。高Mn含有溶融金属が,Mnおよび鉄の一部に代えて,Siを1質量%以下,Pを0.5質量%以下,Sを0.5質量%以下,Crを20質量%以下,Cuを1質量%以下およびNiを10質量%以下からなる群から選ばれた一種以上をさらに含有してもよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、Mnを10質量%以上、炭素を0.1質量%以上、窒素を0.005質量%以上含有し残部鉄および不純物からなる溶融金属からMnを10質量%以上含有する金属を製造する方法であって、より具体的には、前記溶融金属に対し減圧下で酸素を供給することにより脱炭および脱窒して、Mnを10質量%以上含有する金属を製造する方法に関する。
Mnを10質量%以上含み、残部炭素、窒素および鉄からなる金属は、Mnが10〜30質量%の高Mn鋼では、高強度および非磁性を有する鋼として有用であり、またMnが75質量%程度を含むフェロマンガン合金鉄もこの範疇に含まれ、鉄鋼製造上の有用な合金源である。Mnは遷移金属の中では精錬がなされる高温で蒸発し易い元素であるとともに、炭素および窒素との親和力が大きい。このため、高Mn濃度の溶融金属は、Mnが容易に蒸発する一方で、減圧下での脱炭および脱窒が生じがたいことが知られている。さらに脱炭精錬の要件である酸素を供給すると、容易に酸化して酸化マンガンを生じてしまい、製造コストに大きく影響するMn収率の悪化を生じる。
従来、高Mn鋼と表記される場合、(i)Mnを10質量%以上含む鋼および溶融合金、(ii)Mnを0.3質量%以上3質量%未満含む鋼、(iii)Mnを3質量%以上10質量%未満含む鋼、に概ね大別される。
特許文献1には、対象は(i)または(iii)に分類される[Mn]≧8質量%の高Mn溶銑を脱炭精錬して、[C]≦0.1質量%に脱炭する方法が開示されている。この方法は、減圧下でMn酸化物を含有する粉体状の脱炭精錬用添加剤を、精錬気体を搬送ガスに用いて吹き付ける方法が提案されている。これは減圧下で粉体状の精錬剤を溶鋼に吹き付ける装置を具備した設備に限られた方法である。
特許文献2には、対象は(ii)に分類されるMnが1質量%以上の高マンガン極低炭素鋼の溶製において、真空槽の雰囲気圧を5000Pa以上40000Pa以下に保持し、溶鉄表面に上吹きランスにより95vol%までの酸素を含む不活性ガスと酸素の混合気体を吹き付け、ガス中の酸素濃度を連続的あるいは段階的に減少させることを特徴とする極低炭高マンガン鋼の製造方法が示されている。不活性ガス中の酸素濃度を連続的あるいは段階的に可変させる装置を特別な具備する必要がある。加えて実施例にはMn濃度が1〜2質量%の溶鋼への適用が示されているのみである。
特許文献3には、対象は(i)または(iii)に分類される[Mn]≧3質量%の高Mn溶鋼を減圧下で脱炭精錬する方法が開示されている。その方法は酸化性ガスを溶鋼表面に吹き付け、高速で脱炭しながら昇温させる第1脱炭工程と、Mn酸化物を含有する粉体状の脱炭精錬用添加剤をキャリアガスによって、前記添加剤が溶鋼中に充分侵入しうる速度で溶鋼表面に吹き付け、溶鋼を冷却しながら脱炭する第2脱炭工程とを備え、第1脱炭工程を昇温手段、第2脱炭工程を冷却手段として溶鋼温度を制御し、少なくとも、第1脱炭工程の後に第2脱炭工程を行うことを特徴とする高Mn鋼の脱炭精錬方法である。この方法は、減圧下で粉体状の精錬剤を溶鋼に吹き付ける装置を具備した設備に限られた方法である。
特開平5−125428号公報 特開平5−230519号公報 特開平7−90341号公報
本発明は、Mnを10質量%以上、炭素を0.1質量%以上、窒素を0.005質量%以上含有し残部鉄および不純物からなる高Mn含有溶融金属からMnを10質量%以上含有する金属を製造する方法であって、溶融金属に対し減圧可能でかつ減圧下で酸素を供給できる真空精錬設備を用いて、Mnを10質量%以上含有する前記溶融金属に対し減圧下で酸素を供給することにより効率的に脱炭および脱窒して、Mnを10質量%以上含有する金属を製造する方法を提供することを課題とする。
Mnは遷移金属の中では精錬がなされる高温で蒸発し易い元素であるとともに、炭素および窒素との親和力が大きい。さらには容易に酸化するため、酸化マンガンを生じてしまうことが知られている。このため、高いMn濃度を含む溶鋼では、Mnが容易に蒸発する一方で、減圧下での脱炭および脱窒が生じがたいことが知られている。さらに脱炭精錬を行うため溶鋼に酸素を供給すると、その酸素はマンガンと容易に反応して酸化マンガンを生じてしまい、この酸化マンガンは溶鋼表面上に浮遊するなどして、脱炭反応を阻害すると共に最終的なMn収率の悪化を生じる。
すなわち、効率的にMnを10質量%以上含有する溶融金属から脱炭を行うには、減圧や不活性ガス希釈といった方法でCO分圧を下げて(1)式なる脱炭反応を促進しながら、その時に生じるMn蒸発損失やMn酸化損失を抑制することに尽きる。
C + O =CO(g)↑ (1)
そこで、Mnを75質量%、炭素を1質量%、窒素を0.02質量%含み、残部鉄および不純物(Siが0.1質量%など)からなる溶融金属1300kgを、保持耐火物にMgOを25質量%含むマグネシアクロマイトレンガを使用して1450〜1700℃に保持した。脱炭およびMn蒸発を調査するために、溶融金属の保持温度、および雰囲気を種々の圧力に制御しながら、上方に設置した酸素上吹きランスよりその金属表面に向けて酸素を300Nl/分で供給し、その時の炉内の溶融金属表面の様子を目視観察した。
その結果、Mn蒸発に由来するヒューム発生、脱炭によって生じるフォーミング(泡立ち)、酸素が溶融金属表面に衝突する領域、すなわち火点領域での発光などが、温度と圧力でかなり異なる様相を呈することがわかった。
溶融金属温度が1500℃よりも低い場合、圧力が101kPaから3kPa程度の減圧であっても火点が遮光ガラスをとおして比較的明瞭に観察され、酸化物形成の様子は観察されるものの、Mn蒸発に由来するヒュームや、脱炭によって生じるフォーミングも明瞭には認められなかった。一方、1500℃よりも温度が50℃ないし100℃程度上昇すると、圧力の減少にしたがって、Mn蒸発に由来するヒュームや、脱炭によって生じるフォーミングやスピッティング(溶融金属飛散)が明確に認められ、大量のヒュームの発生によって火点付近での発光が僅かに認められる程度になった。さらに150℃程度上昇すると、さらに大量のヒュームが発生して炉内に充満し炉内は全く見えなくなったが、スピッティングの発生は余り変化がないように観察された。
さらにMn蒸発に由来するヒュームは、酸素上吹きを実施していないときでも、溶融金属の温度が1650℃を超えた場合には圧力を16kPa程度まで減圧すると明確に増大する様子が観察された。この炉は、溶融金属を撹拌するために不活性ガスを炉底および酸素上吹きランスから切り替えて導入することができるが、このガス量が増えた場合にも、ヒュームは顕著に増大した。
このような現象は、次のように理解される。実用的な減圧炉で生じるMnの蒸発は、より理想的な高真空下での自由蒸発よりは遙かに小さい。この理由は、Mn蒸発が、酸素が衝突する火点と、その周囲の溶融金属の表面、そして生成したMnO表面から生じるのに対して、COガス発生が火点、その周囲の溶融金属の表面、表面に存在するMnOとの界面および溶融金属の撹拌のために導入した撹拌ガスによって生じる気液界面から生じる、すなわち反応サイトやその寄与が異なることに由来する。さらには、気相側の物質移動は、気相境膜の物質移動の他にその境膜直上の気相バルク物質移動があるが、COガスが元来2原子分子気体であるのに対して、Mn蒸気は高温無酸化雰囲気で安定な単原子分子であり、気相バルクでは容易に酸化あるいは凝縮して粒子となり、気相バルクでの移動が極端に遅くなることも影響していると考えられた。
したがって、このような反応機構下では、溶融金属の温度と雰囲気圧力に対して、炭素除去が可能で、かつMn蒸発を抑制しうる好適な領域があるとの着想に至った。さらには炭素除去が可能な条件は、同じく気相を呈する二原子分子で除去される窒素についても同様に適用できるとの考えに至った。
溶融金属の温度については、溶融金属の温度は高いほど、炭素除去、Mn蒸発とも活発に反応する。一方、その温度は高いほど酸化性雰囲気ではMnの酸化反応も容易に生じるが、減圧雰囲気では火点で生成したMnOの分解反応も活発に生じる。その際には酸素は脱炭反応に寄与する一方、Mnの一部は蒸発し、残りは溶融金属側に吸収される。したがって、それらの均衡を考えれば、炭素除去には活発に生じる一方、Mn酸化は適度に生じ、Mn蒸発は穏やかな温度域が存在することが考えられた。またこの現象は、Mn蒸発が多い場合にはその蒸発潜熱で炭素除去が抑制される一方、Mn蒸発が少なくMn酸化が生じる場合には炭素除去が助長されるとも理解された。さらにはその反応は保持容器である耐火物近傍で生じ、その際にはMnOの反応性が最も高い、すなわち活量が1に近いような状態が好ましいことも理解された。
一方、雰囲気圧力は、溶融金属直上の圧力と、気相バルク側圧力の両方に関連しているので、その圧力を変化させた場合には以下のような現象が生じると考えられる。常圧、すなわち101kPaから徐々に圧力を減じていくとともに、炭素除去およびMn蒸発速度は上昇する。しかし炭素の除去速度は、圧力の低下とともに上昇するのに対して、Mn蒸発速度は、ある圧力まではその上昇は緩やかであった。この理由は、前述のようにMn蒸発速度は、界面でのMn蒸発、気相側境膜での物質移動だけでなく、気相側バルクでの物質移動も影響するためと推定される。なお雰囲気圧力は、いわゆる真空容器に取り付けられる指示圧力である。
したがって、Mnを高濃度含有する溶融金属の温度と雰囲気圧力の範囲を満たす条件下では、炭素除去速度のみが速く、それに比してMn蒸発速度が速くない条件があることを見出すに至った。さらにはこのような範囲を安定して得るには、火点よりむしろ遠方の耐火物近傍でMnOの反応性が高い領域であることも重要であり、このような知見に基づき耐火物組成を限定するに至った。
さらには、このMn蒸発と酸化にかかる現象は、Mnを多く含有する溶融金属に広く成立することが考えられた。具体的には、遷移金属元素で、かつ周期律表でMnの近傍にあり、原子番号で1大きい鉄を含む溶融合金に適用可能であるとの結論に至った。
また、後述するように、Mnを10質量%以上、炭素を0.1質量%以上、窒素を0.005質量%以上を含有し残部鉄および不純物からなる高Mn含有溶融金属の脱炭および脱窒処理において、Mnおよび鉄の一部に代えて、Siを1質量%以下、Pを0.5質量%以下、Sを0.5質量%以下、さらには周期律表でMnの近傍にある遷移金属のCrを20質量%以下,Cuを1質量%以下およびNiを10質量%以下からなる群から選ばれた一種または二種以上をさらに含有する場合にも、それらの元素の存在は、本発明に係るMn蒸発および炭素除去には影響しない。
以上の知見に基づき得られた本発明は次のとおりである。
(1)溶融金属を保持する取鍋を容器内に収容し、該容器ごと減圧して取鍋内溶融金属を精錬する減圧精錬設備を用いて、Mnを10質量%以上、炭素を0.1質量%以上、窒素を0.001質量%以上含有し残部鉄および不純物からなる高Mn含有溶融金属からMnを10質量%以上含有する高Mn含有金属を製造する方法であって、前記取鍋にMgOを20質量%以上含有する耐火物を用い、前記高Mn含有溶融金属の温度が1500℃以上1650℃以下、かつ、前記容器内の雰囲気圧力が6000Pa以上16000Pa以下の条件下において前記高Mn含有溶融金属に酸素を供給することにより脱炭および脱窒することを特徴とする、Mnを10質量%以上含有する高Mn含有金属の製造方法。
(2)真空槽と浸漬管を有する還流型脱ガス設備を用い、Mnを10質量%以上、炭素を0.1質量%以上、窒素を0.001質量%以上含有し残部鉄および不純物からなる高Mn含有溶融金属からMnを10質量%以上含有する高Mn含有金属を製造する方法であって、前記高Mn含有溶融金属を保持する取鍋にMgOを20質量%以上含有する耐火物を用い、前記高Mn含有溶融金属の温度が1500℃以上1650℃以下、かつ、前記真空槽内の雰囲気圧力が6000Pa以上16000Pa以下の条件下において前記高Mn含有溶融金属に酸素を供給することにより脱炭および脱窒することを特徴とする、Mnを10質量%以上含有する高Mn含有金属の製造方法。
(3)前記高Mn含有溶融金属の化学組成が、Mnおよび鉄の一部に代えて、Siを1質量%以下、Pを0.5質量%以下、Sを0.5質量%以下、Crを20質量%以下,Cuを1質量%以下およびNiを10質量%以下からなる群から選ばれた一種または二種以上をさらに含有する、(1)または(2)に記載したMnを10質量%以上含有する高Mn含有金属の製造方法。
なお、本発明において「高Mn含有溶融金属」とは、Mnを10質量%以上、炭素を0.1質量%以上、窒素を0.001質量%以上含有し残部鉄および不純物で構成される溶融金属であって、Mnを10質量%以上含有する溶銑や溶鋼のほか、Mnを75質量%程度含有する溶融フェロマンガン合金鉄も含むものである。
また、本発明において「高Mn含有金属」とは、Mnを10質量%以上含有する金属であって、上記「高Mn含有溶融金属」から本発明に係る脱炭および脱窒方法により製造される金属を意味し、脱炭および脱窒処理後に該溶融金属に添加されることがあるSiやNb,Vなどの合金元素やAlなどの脱酸元素を含んでもよい。
典型的には、C:0.1質量%以上1.0質量%以下、Mn:73質量%以上92質量%以下、N≦0.1質量%、残部Feおよび不純物からなるフェロマンガンや、C:0.05質量%以上1.0質量%以下、Mn:10質量%以上30質量%以下、N≦0.05質量%、残部Feおよび不純物からなる高Mn鋼、またはそのMnおよび鉄の一部に代えて、Siを1質量%以下、Pを0.5質量%以下、Sを0.5質量%以下、Crを20質量%以下,Cuを1質量%以下およびNiを10質量%以下からなる群から選ばれた一種または二種以上をさらに含有する高Mn鋼が例示されるが、それらに限られず、上記の「高Mn含有溶融金属」から本発明に係る脱炭および脱窒方法により得た全ての金属が対象に含まれる。
但し、精錬処理する意義を考えれば、脱炭量が0.05質量%以上、かつ、脱窒量が0.001質量%以上とすることが実際的である。
本発明により、Mn濃度の高い溶融金属から量産可能な減圧精錬設備を使用して、Mnの蒸発損失を可及的少量にしながら、効率よく炭素および窒素を除去することが可能となり、Mnを高濃度含む金属を安価に製造することが可能となる。
炭素除去速度と溶融金属温度および圧力との関係を示すグラフである。 Mn蒸発速度と溶融金属温度および圧力との関係を示すグラフである。 溶融金属温度1550℃におけるMn蒸発速度と圧力との関係を示すグラフである。 75質量%Mnにおける溶融金属温度が炭素除去速度とMn蒸発速度との比に及ぼす影響を示すグラフである。
本発明の高Mn含有金属の製造方法について以下に詳しく説明する。なお、以下の記載は、発明の趣旨をより良く理解させるためのものであるから、特に指定の無い限り、本発明を限定するものではない。
1.炭素の除去速度およびMnの蒸発速度に精錬条件が与える影響
Mnを10質量%以上含有する溶融金属の精錬において炭素の除去速度およびMnの蒸発速度に精錬条件が与える影響を評価すべく、以下のような試験を行った。Mnを75質量%、炭素を1質量%、窒素を0.02質量%含み、残部鉄および不純物(Siが0.1質量%など)からなる溶融金属1300kgを保持耐火物にMgOを25質量%含むマグネシアクロマイトレンガを使用して1450〜1700℃に保持した。脱炭およびMn蒸発を調査するために、溶融金属の保持温度、および雰囲気を種々の圧力に制御しながら、上方に設置した酸素上吹きランスよりその金属表面に向けて酸素を300Nl/分で断続的に供給し、適宜試料を採取して溶融合金中の炭素濃度およびMn濃度を求めた。試料採取間での条件における炭素およびMnの減少挙動から、炭素の除去速度およびMnの蒸発速度を算出し、それらと炉条件の関係を図示した。なお、いずれの除去速度も、溶融金属表面からの単位時間当たりの蒸発量(単位:kg/s・m)として求めた。
はじめに、炭素除去速度と溶融金属温度および雰囲気圧力との関係を第1図に示す。炭素を除去するには、溶融金属温度が1500℃以上、望ましくは1550℃以上必要であることがわかる。なお雰囲気圧力は低いことが望ましいが、溶融金属温度が1650℃を超えると炭素の除去速度の増大はさほど大きくはならない。
次に、Mn蒸発速度と溶融金属温度および圧力との関係を第2図に示す。Mn蒸発速度は、溶融金属温度が高いほど増大する。また雰囲気圧力が低下するほど増大する。雰囲気圧力が6kPa以上16kPa以下の範囲では、溶融金属温度を1500℃から1650℃の範囲にすると、Mn蒸発速度が0.01kg/s・m以下と比較的低位になることがわかる。特に1500℃から1600℃の範囲では、0.006kg/s・m以下にすることが可能である。
圧力の依存性をみるために、溶融金属温度を1550℃としたときのMn蒸発速度を第3図に示す。図に示すように、6kPa以上でMn蒸発速度が低くなっていることがわかる。
さらに溶融金属の温度に好適な領域が存在することを明確にするため、Mn含有量が75質量%の溶融金属における溶融金属温度が炭素除去速度とMn蒸発速度との比に及ぼす影響を第4図に示す。この比が大きいと、炭素除去速度の方が高く、脱炭に有利と理解できる。雰囲気圧力が4.0kPa以下の低い領域では、炭素除去、Mn蒸発とも活発でその比は小さいが、圧力が6kPaを超えると炭素除去速度に比してMn蒸発速度が減少しその比は大きくなり、16kPaまで顕著である。しかし16kPaを超えた27kPaでは炭素除去速度の低下も顕著となり、速度比も大きくはならないと理解される。
2.本発明に係る精錬方法に供されるMnを10質量%以上含有する溶融金属の化学組成
(1)Mn:10質量%以上
本発明に係る精錬方法が適用される溶融金属中のMn濃度を10質量%以上とする。その理由は、本発明はMnのような合金成分として有用な遷移金属元素でありながら、蒸気圧が高く、製鋼温度域で蒸発反応が容易に生じる元素であるためになされたものであり、Mn濃度が10質量%を超えるとその蒸発反応における蒸発潜熱が脱炭反応のような他の製鋼反応にも影響を及ぼす濃度だからである。
(2)炭素:0.1質量%以上
本発明に係る精錬方法が適用される溶融金属中の炭素濃度を0.1質量%以上とする。その理由は、脱炭を開始する初期の一酸化炭素分圧が高い方が本発明の利点であるMn蒸発によるMn損失の抑制効果を享受しやすいからである。なお、脱炭を開始する初期の炭素濃度は望ましくは0.2質量%、さらに望ましくは0.5質量%であれば、本発明の利点をより充分に享受できる。上限は特に定めないが、コストを考慮すれば、減圧精錬を適用するので、1.5質量%以下、望ましくは1.0質量%以下に適用することが好適である。
(3)窒素:0.001質量%以上
本発明に係る精錬方法が適用される溶融金属中の窒素濃度を0.001質量%以上とする。その理由は、脱窒が脱炭と同時に進行する機構であって、窒素分圧が高い状態の方がその利点を享受しやすいからである。上限は特に定めないが、コストを考慮すれば、減圧精錬を適用するので、0.1質量%以下、望ましくは0.05質量%以下に適用することが好適である。
(4)残部
本発明に係る精錬方法が適用される溶融金属の残部は、鉄および不純物である。
鉄は、周期律表においてMnよりも原子番号で1大きい遷移金属元素である。本発明の化学作用の根幹となる金属の蒸発や酸化挙動は鉄とMnは異なるものの、様々な化学的性質は類似し溶融金属にあって溶媒としての性質を示すものである。したがって、Mn蒸発および炭素除去に影響しない範囲であれば、Mnおよび鉄の一部をその他の元素で置き換えることが許容される。以下、その元素と許容範囲について述べる。
i)Si:1質量%以下
Siは、過剰に含まれると本発明で実施するような脱炭を阻害して本発明の効果を享受できなくなるから、1質量%以下であることが望ましい。より望ましくは0.5質量%以下である。
ii)P:0.5質量%以下
Pは、過剰に含まれると本発明を実施された後にさらにPを除く処理を要することがあるので、0.5質量%以下が望ましい。
iii)S:0.5質量%以下
Sは、界面活性元素で過剰に含まれると本発明で実施するような脱炭を阻害して本発明の効果を享受できなくなるから0.5質量%以下であることが望ましい。
iv)Cr:20質量%以下
Crは、周期律表にあってMnの近傍にある遷移金属元素であり、本発明の実施対象となるような合金の有用な添加元素であり、溶融金属にあっては溶媒としての性質を示す。一方、本発明を実施する際に脱炭を阻害する要因になるので20質量%以下であることが望ましい。
v)Cu:1質量%以下
Cuは、周期律表にあってMnの近傍にある遷移金属元素であり、溶融金属にあっては溶媒としての性質を示す。本発明を実施するにあたり、1質量%まで許容される。1質量%を超えると、Cuの蒸発も顕著になり、その影響を考慮する必要が生じる。
vi)Ni:10質量%以下
Niは、周期律表にあってMnの近傍にある遷移金属元素であり、溶融金属にあっては溶媒としての性質を示す。本発明を実施するにあたり、10質量%まで許容される。10質量%を超えると、減圧での脱炭が生じやすくなるので、その影響を考慮する必要が生じる。
2.精錬方法
(1)雰囲気圧力
本発明に係る精錬方法における雰囲気圧力について述べる。本発明においては雰囲気圧力を6000Pa以上16000Pa以下にする必要がある。雰囲気圧力が6000Pa未満ではMn蒸発によるMn収率の低下が著しい。また圧力が16000Paを超えると脱炭に時間を要し処理コストの増加が生じる。望ましくは、6000Pa以上13000Pa以下であれば炭素除去速度がより高い条件とすることができる。ここで雰囲気圧力とは、後述する減圧精錬設備の減圧容器の代表的な圧力を指す。
(2)溶融金属温度
本発明の精錬方法における溶融金属温度は1500℃以上1650℃以下である必要がある。溶融金属温度が1500℃未満では脱炭に時間を要し処理コストの増加が生じる。一方温度が1650℃を超えるとMn蒸発によるMn収率の低下が著しい。望ましい溶融金属温度は1500℃以上1600℃以下である。
(3)保持容器
その保持容器にはMgOを20質量%以上含有する耐火物を用いる必要がある。保持容器とは溶融金属を保持するために直接接触する耐火物およびその材質を意味する。MgOは塩基性酸化物であり、脱炭時に要求される充分な耐熱性と酸素上吹き時に不可避的に生成するMn酸化物であるMnOと接した際にも安定した耐食性を示し、そのMnOの活量が1近傍で安定することに寄与する。そのような耐火物となり得る化合物を例示すれば、マグネシアクロマイト、ドロマイト、マグネシアスピネルなどであり、必要に応じて熱衝撃性を向上させる炭素を含有することも許容される。
(4)精錬設備
使用される減圧精錬設備について述べる。
本発明は、取鍋を容器内に収容して容器ごと減圧するとともに、上方より酸素ガスを供給することが可能な脱炭設備を具備した設備を想定している。すなわち、VOD設備、それに電弧加熱設備を具備したVAD設備、誘導加熱および撹拌機構を具備した真空脱ガス設備等である。また、環流型脱ガス設備でも、酸素ガスを上方から供給する機能を有していれば、原理的に本発明を適用することが可能である。
本発明を、実施例を参照しながらより具体的に説明する。
Mnを13質量%ないし76質量%、炭素を0.3質量%ないし1質量%、窒素を0.004質量%ないし0.05質量%含み、残部にSiやCrなどを含むほか鉄および不純物からなる溶融金属1300kgを高周波誘導加熱真空炉にて溶解した。
保持耐火物にはMgOを25質量%含むマグネシアクロマイトレンガを使用した。この炉は、炉底部に設けた多孔質耐火物羽口を有するので、溶融金属を高周波誘導による撹拌、および羽口からの不活性ガス撹拌が可能である。
溶融金属の保持温度、および雰囲気圧力に制御するとともに、上方に設置した水冷型の酸素上吹きランスよりその溶融金属表面に向けて酸素を300Nl/分で断続的に供給した。
脱炭のための減圧装置には、蒸気エジェクターポンプを使用した。
適宜試料を採取して溶融合金中の炭素濃度およびMn濃度を求めた。試料採取間での条件における炭素、窒素およびMnの減少挙動を表1に示す。なお、表1における「処理後化学組成」の欄には、処理後の溶融金属の化学組成のうち、Mn,CおよびNについての含有量のみを示した。
Figure 2010248536
本発明に係る評価の判定基準として、10分間あたりの減少量で、Mnは0.4質量%以下、炭素は0.05質量%以上、窒素は0.001質量%以上を良好とした。
表1に示すように、本発明によれば、10分間の減圧酸素上吹き処理で、Mn蒸発は抑制できると共に、脱炭および脱窒処理を効率的に行うことができた。一方、同表の比較例Dに示すように雰囲気圧力が高い場合には脱炭、脱窒が生じなかった。比較例Eに示すように雰囲気圧力が低い場合にはMn蒸発が著しかった。比較例Fに示すように、溶融金属温度が低い場合には脱炭、脱窒が生じなかった。比較例Gに示すように、溶融金属温度が高い場合にはMn蒸発が著しかった。

Claims (3)

  1. 溶融金属を保持する取鍋を容器内に収容し、該容器ごと減圧して取鍋内溶融金属を精錬する減圧精錬設備を用いて、
    Mnを10質量%以上、炭素を0.1質量%以上、窒素を0.001質量%以上含有し残部鉄および不純物からなる高Mn含有溶融金属からMnを10質量%以上含有する高Mn含有金属を製造する方法であって、
    前記取鍋にMgOを20質量%以上含有する耐火物を用い、
    前記高Mn含有溶融金属の温度が1500℃以上1650℃以下、かつ、
    前記容器内の雰囲気圧力が6000Pa以上16000Pa以下の条件下において
    前記高Mn含有溶融金属に酸素を供給することにより脱炭および脱窒することを特徴とする、
    Mnを10質量%以上含有する高Mn含有金属の製造方法。
  2. 真空槽と浸漬管を有する還流型脱ガス設備を用い、
    Mnを10質量%以上、炭素を0.1質量%以上、窒素を0.001質量%以上含有し残部鉄および不純物からなる高Mn含有溶融金属からMnを10質量%以上含有する高Mn含有金属を製造する方法であって、
    前記高Mn含有溶融金属を保持する取鍋にMgOを20質量%以上含有する耐火物を用い、
    前記高Mn含有溶融金属の温度が1500℃以上1650℃以下、かつ、
    前記真空槽内の雰囲気圧力が6000Pa以上16000Pa以下の条件下において
    前記高Mn含有溶融金属に酸素を供給することにより脱炭および脱窒することを特徴とする、
    Mnを10質量%以上含有する高Mn含有金属の製造方法。
  3. 前記高Mn含有溶融金属の化学組成が、Mnおよび鉄の一部に代えて、Siを1質量%以下、Pを0.5質量%以下、Sを0.5質量%以下、Crを20質量%以下,Cuを1質量%以下およびNiを10質量%以下からなる群から選ばれた一種または二種以上をさらに含有する、請求項1または請求項2に記載したMnを10質量%以上含有する高Mn含有金属の製造方法。
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