JP6838419B2 - 高窒素低酸素鋼の溶製方法 - Google Patents

高窒素低酸素鋼の溶製方法 Download PDF

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本発明は、高窒素低酸素鋼の溶製方法であって、高窒素濃度かつ低酸素濃度を可能とするRH式真空脱ガス処理装置における溶鋼の処理方法に関する。
鋼材中の窒素および酸素は、非金属介在物と呼ばれる微粒子を生成し、鋼材特性に悪影響を及ぼす。ただし、機械構造用鋼などといった一部の鋼材では、窒素は鋼材強度の向上に寄与するため、その濃度を高めることが求められる場合がある。
鋼材中の窒素濃度および酸素濃度は主に転炉処理後の二次精錬工程にて調整される。この二次精錬工程では、脱水素を目的として真空脱ガス処理が行われ、中でもRH式真空脱ガス処理が広く行われている。そのため、RH式真空脱ガス処理における高窒素濃度化および低酸素濃度化の技術が必要である。
高窒素濃度化の方法として、窒化マンガンといった窒素含有合金を溶鋼に添加する方法が簡便であるものの、合金は高価でありコストアップにつながる。そのため、RH式真空脱ガス処理装置にて環流ガスとして窒素ガスを吹き込み、吹き込んだ窒素ガスを溶鋼中に吸収させて鋼の高窒素化を図る方法がとられている。
転炉精錬後の溶鋼中に含まれるフリー酸素は、AlやSiなどといった酸素と親和力の強い脱酸元素を添加し、Al23やSiO2等といった酸化物系介在物を溶鋼中に生成させ、酸化物系介在物を溶鋼表面に浮上させて除去する。介在物の浮上分離を促進して溶鋼の低酸素濃度化を促進する方法として、真空脱ガス装置を用いた溶鋼の環流による取鍋表面に向かう流れによって介在物を浮上分離する方法が適用されている。
このようにRH式真空脱ガス処理において、高窒素濃度化または低酸素濃度化を個別に行う方法はあるものの、高窒素濃度かつ低酸素濃度である溶鋼を製造することは困難である。これは、高窒素濃度化のため、RHの環流ガスとして窒素ガスを吹き込むと、窒素ガス気泡から溶鋼へと窒素が吸収されて溶鋼中の窒素濃度は高くなるものの、吹き込んだ窒素ガス気泡の体積は減少し、環流ガス気泡による溶鋼の撹拌が弱くなってしまい、酸化物系介在物の浮上除去効果も小さくなってしまう。また、酸化物系介在物の浮上除去のために不活性ガスであるArガスを環流ガスとして吹き込むと、介在物は速やかに浮上除去される一方で、溶鋼中の窒素がArガス気泡中へ放出されてしまい、溶鋼中の窒素濃度は低くなってしまうためである。
そこで、RH式真空脱ガス処理装置を用いつつ、高窒素低酸素鋼を溶製するため、従来から技術開発がなされてきた。
特許文献1では、ガス底吹き機能を有する転炉に保持した溶銑を酸素ガスで脱炭すると共に、炭素濃度が0.25〜0.15%に低下した溶鋼に窒素ガスを吹き込むことによって吹き止め時の窒素濃度を100ppm以上とし、出鋼後の溶鋼を、攪拌ガスまたは環流ガスにArガスを使用することで、攪拌力が増大し、酸素や硫黄の含有量が少ない高清浄な含窒素鋼を溶製する方法を提案している。ただし、環流ガスとしてArガスを使用するため、転炉にて高めた窒素濃度が真空脱ガス処理中に低減されてしまい、高窒素濃度を維持することが困難である。
特許文献2では、真空脱ガスして精錬するに際し、Arと窒素の混合ガスまたは窒素ガスを目標とする窒素濃度に応じた流量にて溶鋼に20分以上吹き込む方法を提案している。Arと窒素の混合ガスを用いる場合は、気泡から溶鋼への窒素吸収速度が小さく処理時間が長くなるという課題がある。また、窒素ガスを用いる場合は、気泡から溶鋼への窒素吸収速度が大きく、気泡体積が減少して攪拌力が不足し、酸化物系の介在物の除去が抑制されるという課題がある。そのため、本発明が目的とするような高窒素低酸素鋼を溶製することは困難であった。
特許文献3においては、溶鋼を真空脱ガス処理するに際し、脱ガス処理を脱ガス期と窒素添加期に分け、脱ガス期には環流ガスとして窒素またはArを用いつつ高真空で操業し、窒素添加期には環流ガスとして窒素を用いながら槽内の窒素分圧を上げて溶鋼中に窒素を添加する方法が開示されている。
特許文献4においては、真空脱ガス処理において脱水素期と加窒期に分け、環流ガスとして窒素ガスを用い、脱水素期には槽内真空度を1Torrとし、加窒期には槽内真空度を100Torrとして、高窒素低酸素鋼を溶製する方法が開示されている。溶鋼中窒素濃度が真空脱ガス処理前において137ppm、処理後において122ppmとなっている。
特許文献5は、介在物の低減、脱水素を促進しながら窒素の濃度を精度よく調整することを目的とし、真空脱ガス処理を前半処理と後半処理に分け、前半処理では圧力を300Pa以下とし、Arガス単独またはArガスと窒素ガスの混合ガスを吹き込んで溶鋼を15分間以上環流し、溶鋼中のフリー酸素濃度が14ppm以下となった時点で後半処理に移行することとし、圧力を300Pa以下に維持すると共に、窒素ガス単独あるいは混合ガスで溶鋼を環流することとし、窒素ガスの流量は前半処理でサンプリングした溶鋼中の分析値に基づいて決定する方法を提案している。
特開2002−12908号公報 特開2004−76116号公報 特開昭56−25919号公報 特開平2−225615号公報 特開2013−224461号公報
特許文献3〜特許文献5に記載のように、真空脱ガス処理において脱ガス(低酸素化)工程と加窒工程を分離することにより、ある程度の高窒素化と低酸素化を両立させることは可能である。しかし、低酸素化を強化しようとすると低酸素化工程において脱窒が進行してしまい、高窒素化と両立することができない。そのため、従来の方法では、低酸素化を確保しつつ、窒素濃度が0.01%を超えるような高窒素濃度化は現実的には困難であった。このように、従来の方法では、真空脱ガス処理において、高窒素濃度化と介在物量低減ないしは介在物量の指標である酸素濃度の低減を両立することは困難であった。
本発明は、RH式真空脱ガス装置を用いて、高窒素濃度かつ低酸素濃度を可能とする、高窒素低酸素鋼の溶製方法を提供することを目的とする。
本発明は上述のように、二次精錬装置としてRH真空脱ガス処理装置を用い、RH真空脱ガス処理(以下「RH処理」ともいう。)で溶鋼の高窒素化と低酸素化を両立する溶製方法の提供を目的とする。
RH処理装置は、真空槽の下部に2本の浸漬管を有し、浸漬管を取鍋の溶鋼中に浸漬して真空槽内を減圧することで溶鋼を真空槽内に吸い上げ、1本の浸漬管(上昇管)の内壁から環流ガスを吹き込み、上昇する環流ガス気泡によって溶鋼を真空槽内に流入させ、もう1本の浸漬管(下降管)から真空槽内溶鋼を排出し、取鍋と真空槽の間で溶鋼を環流する。環流ガスとして窒素ガスを用いた場合、溶鋼中に窒素が吸収されて溶鋼の高窒素化が図れる一方、吹き込んだ窒素ガスが溶鋼に吸収されるため、真空槽内に気泡が浮上する前に気泡の容積が低減して環流能力を失い、脱酸生成物を除去して低酸素化する能力を十分に発揮することができない。一方、環流ガスとしてArガスを用いた場合、RH処理中の低酸素化能力を有する一方、溶鋼中の窒素が吹き込んだArガス中に移動し、溶鋼が低窒素化してしまう。
本発明は、溶鋼のRH処理に際して、RH真空脱ガス処理の期間の中に、Ar吹き込み期と窒素吹き込み期を設けることとした。Ar吹き込み期は、主に溶鋼の低酸素化を実現し、窒素吹き込み期は、主に溶鋼の高窒素化を実現する。これにより、RH真空脱ガス処理を用いた高窒素低酸素鋼の溶製方法を実現しようとするものである。
転炉からRH真空脱ガス処理を経て連続鋳造によって鋳片を製造する工程では、連続鋳造の1ヒートあたりのサイクルタイムが決まっているため、RH真空脱ガス処理の処理時間が長くなりすぎると、連続鋳造のサイクルタイムとマッチングをとることができなくなる。そのため、RH真空脱ガス処理における合計処理時間は制約を受ける。また、RH真空脱ガス処理時間が長くなるほど、処理コストが増大するので好ましくない。そこで本発明では、RH処理時間の合計を一定時間に制限し、当該制限した時間内において目的とする高窒素化と低酸素化を両立することのできる溶製方法の実現を図ることとした。
RH処理時間が一定の条件のもとで、RH処理を溶鋼低酸素化のためのAr吹き込み期と溶鋼高窒素化のための窒素吹き込み期に分け、溶鋼高窒素化のために窒素吹き込み期の時間を長くすると、Ar吹き込み期の時間が短くなって低酸素化が実現できなくなる。Ar吹き込み期の時間を長くすると、低酸素化は実現できるものの、窒素吹き込み期が短くなるとともに、Ar吹き込み期における溶鋼の低窒素化が進み、その両方の影響でRH処理後溶鋼窒素を十分に高くすることができなくなる。
RH処理中における真空槽内溶鋼表面と真空槽底との距離を、ここでは真空槽内浴深という。真空槽内溶鋼表面は、真空槽内圧力を目的とする圧力としたときの、静止浴面を意味する。真空槽内浴深を深くすると、上昇管の循環ガス吹き込み口から真空槽内溶鋼表面までの深さが深くなり、吹き込んだ気泡と溶鋼との接触時間が長くなるので、窒素吹き込みによる溶鋼の高窒素化を促進することができる。一方、Ar吹き込みによる脱窒も促進するので、十分な高窒素化を図ることができない。
本発明は、Ar吹き込み期と窒素吹き込み期の真空槽内浴深を異ならせることとし、窒素吹き込み期における真空槽内浴深を、Ar吹き込み期における真空槽内浴深よりも0.15m以上深くすることにより、溶鋼の高窒素化と低酸素化を両立できることをはじめて知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
(1)RH真空脱ガス処理を用いた高窒素低酸素鋼の溶製方法において、RH真空脱ガス処理の期間はAr吹き込み期と窒素吹き込み期を有し、Ar吹き込み期は環流ガスとしてArを80体積%以上含有するガスを吹き込み、窒素吹き込み期は環流ガスとして窒素を80体積%以上含有するガスを吹き込み、
窒素吹き込み期の処理時間は16分以上、Ar吹き込み期の処理時間は8分以上とし、
窒素吹き込み期における真空槽内浴深は、Ar吹き込み期における真空槽内浴深よりも0.15m以上深いことを特徴とする高窒素低酸素鋼の溶製方法。
(2)Ar吹き込み期における真空槽内浴深を0.06m以上とすることを特徴とする(1)に記載の高窒素低酸素鋼の溶製方法。
本発明の規定するRH式真空脱ガス処理装置における真空槽内の浴深を、窒素ガス吹き込み時とArガス吹き込み時とで適正な範囲に調整することで、高窒素低酸素鋼を溶製することが可能となる。
窒素吹き込み期とAr吹き込み期の真空槽内浴深の差(ΔH)とRH処理前後のN濃度差の関係について、(A)は真空槽内圧力が399Pa前後、(B)は真空槽内圧力が5320Pa前後の時の結果を示す。 窒素吹き込み期とAr吹き込み期の真空槽内浴深の差(ΔH)とRH処理前後のN濃度差の関係について、(C)は真空槽内圧力が12000Pa前後の時の結果を示す。 窒素吹き込み期とAr吹き込み期の真空槽内浴深の差(ΔH)とRH処理前後のO濃度差(Δ[O](%):RH処理前[O](%)−RH処理後[O](%))の関係について、(A)は真空槽内圧力が399Pa前後、(B)は真空槽内圧力が5320Pa前後の時の結果を示す。 窒素吹き込み期とAr吹き込み期の真空槽内浴深の差(ΔH)とRH処理前後のO濃度差(Δ[O](%):RH処理前[O](%)−RH処理後[O](%))の関係について、(C)は真空槽内圧力が12000Pa前後の時の結果を示す。
本発明は前述のように、溶鋼のRH処理に際して、RH真空脱ガス処理の期間の中に、Ar吹き込み期と窒素吹き込み期を設ける。そして、窒素吹き込み期は、気泡から溶鋼への窒素の吸収速度を高め、Ar吹き込み期は、溶鋼から気泡への窒素の放出速度を低下させつつ脱酸速度は高めることで、高窒素低酸素鋼を溶製する方法を考案した。
窒素吹き込み期において、窒素ガス吹き込み時の気泡から溶鋼への窒素の吸収速度を高めるには、羽口から吹き込まれた窒素ガス気泡が真空槽の溶鋼表面まで浮上する時間を増加させることが有効である。窒素吹き込み期における真空槽内浴深を深くすることにより、実現することができる。またAr吹き込み期において、Arガス吹き込み時の溶鋼から気泡への窒素の放出速度を低下させるには、気泡が真空槽の溶鋼表面まで到達する時間を減少させることが有効である。Ar吹き込み期における真空槽内浴深を浅くすることにより、実現することができる。さらにこの時、脱酸速度を高めるには、真空槽内の撹拌を強化し介在物を凝集合体させることが有効である。すなわち、取鍋または真空槽の昇降によって、真空槽内浴深を窒素ガスまたはArガス吹き込み時に変更させることで、高窒素低酸素鋼を溶製する方法を考案した。即ち、窒素吹き込み期における真空槽内浴深を、Ar吹き込み期における真空槽内浴深よりも深くすることにより、溶鋼の高窒素化と低酸素化を両立できる。
ここで、RH処理によって高窒素低酸素鋼を溶製する際に適正となる、窒素吹き込み期の真空槽内浴深(以下「HN2」と呼ぶ。)とAr吹き込み期の真空槽内浴深(以下「HAr」と呼ぶ。)の差(以下では「ΔH」と呼ぶ。)を、以下の試験により調査した。窒素吹き込み期とAr吹き込み期の合計処理時間を25分に制限した。
N濃度0.0120〜0.0125%、O濃度が0.0025〜0.0030%である溶鋼100トンに対し、RH式真空脱ガス処理を、窒素吹き込み期とAr吹き込み期の合計で25分間行った。環流ガスは、窒素吹き込み期は窒素の単体、Ar吹き込み期はArの単体であり、循環ガス流量は溶鋼1トンあたり6〜10NL/minである。真空槽内浴深は取鍋の昇降によって調整し、窒素吹き込み期の真空槽内浴深HN2を0.04〜0.40mの範囲で変更し、Ar吹き込み期の真空槽内浴深HArを0.04〜0.20mの範囲で変更した。「ΔH=HN2−HAr」である。
RH処理時の真空槽内の真空度(圧力)を、高真空(399Pa前後)、中真空(5320Pa前後)、低真空(12000Pa前後)に分け、それぞれの真空度において、高窒素化と低酸素化を両立することのできるRH処理条件を検討した。窒素吹き込み期の処理時間を一定時間としたとき、真空槽内の真空度が低いほど(圧力が高いほど)、溶鋼窒素濃度の上昇速度が高くなる。そこで、上記の高真空、中真空、低真空それぞれについて、処理時間が15〜20分のときに到達する溶鋼中の目標窒素濃度を、それぞれ設定した。
次に、高真空、中真空、低真空のそれぞれの真空度において、HN2とHArを種々に変更し、それぞれの条件において、上記設定した目標窒素濃度に到達するために必要な、窒素ガスの必要環流時間(窒素吹き込み期の処理時間)を実験によって求めた。ここで、合計処理時間を25分一定としているので、例えば窒素吹き込み期の時間を長くすると、Ar吹き込み期の時間が短くなるため、窒素吹き込み期での窒素上昇量が増大するとともにAr吹き込み期の窒素低下量が減少することになる。そのため、目標窒素濃度に到達するために必要な窒素吹き込み期の時間は、Ar吹き込み期における溶鋼窒素の挙動もあわせたところで定まることになる。
結果を図1に示す。図1(A)〜(C)においていずれも、横軸はΔHであり、HArの値によって符号を変化させている。高真空(図1(A))から低真空(図1(C))までのいずれにおいても、窒素ガスの必要環流時間はΔHによって整理することができ、ΔHが0.15m以上であれば、従来のRH処理条件(窒素吹き込み期とAr吹き込み期の真空槽内浴深を同一としてΔH=0とする)に比較して窒素ガスの必要環流時間を短くすることができる。これは、窒素ガス吹込み時は窒素ガス気泡から溶鋼への窒素の吸収が促進され、Arガス吹込み時は溶鋼からArガス気泡への窒素の放出が抑制されるためである。
また、この時のO濃度の変化も調査した。溶鋼中の処理前T.Oと処理後T.Oとの差をΔ[O]とし、縦軸をΔ[O]、横軸をΔHとして、図2(A)〜(C)に示した。(A)〜(C)と真空槽内真空度(圧力)との関係は図1と同様である。いずれの真空槽内圧力であっても、ΔHが0.15m以上においてΔ[O]は大きくなった。図1に示すように、いずれの条件でも、ΔHが0.15m以上では窒素吹き込み期の所要時間(窒素ガスの必要環流時間)が短くなるので、合計処理時間が25分で一定という条件のもと、Ar吹き込み期の時間が長くなり、溶鋼の低酸素化が促進されたためである。そこで本発明では、窒素吹き込み期における真空槽内浴深は、Ar吹き込み期における真空槽内浴深よりも0.15m以上深いことと規定した。
また、図2から明らかなように、Ar吹き込み時の真空槽内浴深が0.06m以上では、さらにΔ[O]が高位安定化した。これは、Ar吹き込み期において真空槽内浴深が浅すぎると、真空槽の底面と溶鋼との摩擦により環流量が低減してしまうのに対し、真空槽内浴深が0.06m以上であれば、十分に低酸素化が可能であるからである。そこで本発明の好ましい態様として、Ar吹き込み期における真空槽内浴深を0.06m以上と規定することとした。
本発明を転炉−RH式真空脱ガス処理装置の順序で実施する場合についての形態を述べる。なお、転炉とRH式真空脱ガス処理装置の間に、転炉から流出スラグを除滓または還元する工程を設けてもよい。また、予め窒素濃度を高めるため、窒素ガスを溶鋼に浸漬したバブリングランスまたは取鍋底部のポーラスレンガを通じて溶鋼内に吹き込む工程を設けてもよい。
転炉では、酸素ガス上吹きにより脱炭反応を生じさせつつ、底吹き羽口より窒素ガスを吹き込むことにより、転炉処理後の窒素濃度を高めることができる。目標とする炭素濃度まで脱炭した後、取鍋に溶鋼を出鋼する。出鋼後、取鍋ごと溶鋼をRH式真空脱ガス処理位置まで移送する。
RH式真空脱ガス処理位置に移送後は、取鍋または真空槽の昇降によって、真空槽の底部に設けられた浸漬管を溶鋼中に浸漬する。浸漬した後、片側の浸漬管(上昇管)内面から環流のためガスを吹き込みつつ、真空槽内を真空排気装置を用いて減圧することで、取鍋と真空槽の間で溶鋼の環流を生じさせる。
窒素吹き込み期の環流ガスは、窒素単体が好ましいが、環流ガス中の窒素含有量が80体積%以上であれば本発明の目的を達することができる。窒素ガス以外の含有成分としては不活性ガス、例えばArガスが好ましい。また、Ar吹き込み期の環流ガスは、Ar単体が好ましいが、環流ガス中のAr含有量が80体積%以上であれば本発明の目的を達することができる。Ar吹き込み期の環流ガスにおけるArガス以外の含有成分としては不活性ガス、例えば窒素ガスが好ましい。また、その流量は窒素ガスまたはArガスのいずれであっても、溶鋼1トンあたり4.8〜14.8NL/minの範囲が望ましい。4.8NL/minより低いと、環流量が低く、処理時間が長時間化してしまう場合がある。14.8NL/minより大きくしても、環流量はほぼ一定値となり、ガス流量増加の効果は飽和してしまう場合がある。
RH処理において、窒素吹き込み期とAr吹き込み期の順番は問わない。いずれを先に行っても本発明の効果を発揮することができる。また、窒素吹き込み期とAr吹き込み期を1回ずつ行うのみならず、それぞれを複数回、交互に行うこととしても良い。
真空槽内圧力は133〜20000Paの範囲が望ましい。圧力が133Paより低いと、環流ガス気泡の膨張率が過度に大きくなり、スプラッシュ飛散による鉄分の損失や、耐火物に付着した鉄との反応による耐火物溶損が激しくなる場合がある。圧力が20000Paより高いと、環流ガス気泡の膨張が抑制され、環流量が低下し、RH式真空脱ガス処理そのものが不十分となる場合がある。
真空槽内浴深は、取鍋または真空槽のいずれの昇降による調整でも良い。ただし、真空槽内の圧力変動に伴い、本発明の規定する溶鋼高さの範囲に調整するよう、取鍋または真空槽の昇降高さを変化させる必要がある。真空槽内の静止溶鋼浴面と取鍋内のスラグ表面位置との高さ差は、真空槽内の圧力と大気圧との圧力差、溶鋼の比重、取鍋内溶鋼表面のスラグ厚みとスラグ比重から、計算によって求めることができる。また、取鍋内のスラグ表面位置と真空槽との位置関係を計測することにより、取鍋内のスラグ表面位置と真空槽の槽底との位置関係(高さ差)を定めることができる。以上の検討結果に基づき、真空槽内浴深(静止浴面)を定めることができる。
上底吹き転炉で100トンの溶銑に対して脱炭処理を行い溶鋼とした。底吹き羽口より窒素ガスを吹き込むことにより、転炉精錬後の溶鋼中窒素濃度を上昇させた。溶鋼を転炉から取鍋に出鋼した後、RH式真空脱ガス処理装置まで取鍋ごと移送した。移送後、取鍋を上昇させることで、真空槽に取り付けられている浸漬管を溶鋼中に350〜650mmの範囲で浸漬させた。この時、真空槽内を真空排気装置を用いて減圧するとともに、環流ガスを片側の浸漬管(上昇管)の羽口を通じて溶鋼内に吹き込むことで、RH式真空脱ガス処理を実施した。
RH式真空脱ガス処理開始時の溶鋼組成は質量%で、C濃度が0.1〜0.4%、Si濃度が0.1〜0.4%、Mn濃度が0.6〜1.2%、S濃度が0.005〜0.03%、Al濃度が0.01〜0.05%、N濃度が0.0120〜0.0125%、O濃度が0.0025〜0.0030%であり、残部はNiやCrといった合金元素は2%以下であった。
RH式真空脱ガス処理条件として、窒素吹き込み期の環流ガスとして窒素を、Ar吹き込み期の環流ガスとしてArを、上昇管の羽口を通じて吹き込んだ。窒素吹き込み期を先にし、Ar吹き込み期を後にした。窒素吹き込み期とAr吹き込み期の処理時間を表1に示す。合計処理時間は24〜29分とした。真空槽内圧力は処理開始時の減圧時や処理終了時の復圧時を除き、処理中は表1に示す圧力で制御した。
RH式真空脱ガス処理前後に溶鋼のブロックサンプル採取し、酸素窒素分析装置にてN濃度およびO濃度(T.O)の変化を調査した。
Figure 0006838419
調査結果を表1に示す。試験No.1〜4が本発明例、試験No.5〜7が比較例である。本発明から外れる数値にアンダーラインを付している。
真空槽内圧力が266〜665Paの条件において、本発明例である試験No.1、2において、本発明の規定する浴深差(ΔH)を保つことで、処理後のN濃度は0.0138〜0.0141%と高くでき、かつO濃度は0.0007〜0.0008%と低くなった。一方で比較例である試験No.5〜6は本発明の規定する浴深差(ΔH)よりも小さくなっている。
試験No.5では、処理後窒素濃度を高めるために窒素吹込み期の時間を長時間化したところ、Arガス吹込み期の時間を2分と極短時間にすることとなり、脱酸反応が主に生じるArガス吹込み時間の不足により、低酸素化が不十分で処理後のO濃度が0.0015%と高くなってしまった。
試験No.6では上記試験No.5と異なり、試験No.1、2と同様にArガス吹込み時間を8分と長くし、窒素ガス吹込み時間を17分と短くし、本発明の規定する浴深差がないΔH=0の条件としたところ、処理後の窒素濃度が0.0111%と低くなってしまった。これは、ΔHが小さく窒素吹き込み期の窒素濃度上昇が少なかったことに加え、Arガス吹込み中の脱窒反応が活発に生じたためである。
真空槽内圧力が5000Pa台と高い圧力でRH処理した本発明例の試験No.3、4では、処理後のN濃度は0.0163〜0.0167%と高くできた。また試験No.3の処理後のO濃度は0.0010%と十分に低くできた。試験No.4は真空槽内浴深(HAr)が0.06m未満であったため、処理後のO濃度が若干高い値となった。一方、比較例である試験No.7は、ΔHが本発明範囲外であったため、処理後のN濃度は0.0143%にとどまった。
このように本発明の規定する真空槽内浴深の範囲に制御することで、高窒素濃度化と介在物量の指標である酸素濃度の低減を両立させて高窒素低酸素鋼を溶製することが可能となる。

Claims (2)

  1. RH真空脱ガス処理を用いた高窒素低酸素鋼の溶製方法において、RH真空脱ガス処理の期間はAr吹き込み期と窒素吹き込み期を有し、Ar吹き込み期は環流ガスとしてArを80体積%以上含有するガスを吹き込み、窒素吹き込み期は環流ガスとして窒素を80体積%以上含有するガスを吹き込み、
    窒素吹き込み期の処理時間は16分以上、Ar吹き込み期の処理時間は8分以上とし、
    窒素吹き込み期における真空槽内浴深は、Ar吹き込み期における真空槽内浴深よりも0.15m以上深いことを特徴とする高窒素低酸素鋼の溶製方法。
  2. Ar吹き込み期における真空槽内浴深を0.06m以上とすることを特徴とする請求項1に記載の高窒素低酸素鋼の溶製方法。
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