JP6897363B2 - 鋼の溶製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、取鍋内に収容した溶鋼を環流式真空脱ガス装置で環流処理を行って清浄性の高い鋼を溶製する、鋼の溶製方法に関するものである。
転炉や電気炉などの製鋼炉で精錬された溶鋼は、製鋼炉から出鋼して取鍋に収容され、その後、必要に応じて取鍋内の溶鋼を対象に取鍋精錬が行われる。取鍋精錬装置としては、RH真空脱ガス装置に代表される、環流式真空脱ガス装置が好適に用いられる。RH真空脱ガス装置(以下単に「RH」ともいう。)は、真空槽を備え、真空槽の底部には2本の浸漬管を有する。取鍋内溶鋼に浸漬管を浸漬して真空槽内を減圧することにより、溶鋼が真空槽中に上昇する。一方の浸漬管(上昇管)の側壁から環流ガスを吹き込むことにより、取鍋内溶鋼が上昇管内を上昇し、真空槽内を経由して他方の浸漬管(下降管)から下降し、溶鋼が取鍋と真空槽の間で循環する。真空槽内で溶鋼が減圧雰囲気に曝されることによって溶鋼の脱ガスが進行する。また、取鍋内で溶鋼が攪拌されることにより、溶鋼中の非金属介在物の浮上分離、添加合金成分の混合が促進される。
特許文献1では、取鍋内径の10%になる距離だけ、上昇管が取鍋側壁に近づく方向に脱ガス槽をずらした位置にセットすることで、下降管から吐出された溶鋼流が取鍋内でよどみを生ずることなく上昇管に循環させることを特徴とする発明が提案されている。しかしながら、特許文献1で提案されている技術は、取鍋のよどみ部を解消させることにしか触れられていない。また、巻込みに関係する溶鋼とスラグの界面での溶鋼流速やスラグ性状やタイミングには触れられていない。
製鋼炉では、酸化精錬によって溶鉄中のPやCを除去する精錬を行っており、精錬後の製鋼炉内には、溶鋼とともに酸化精錬で生成した製鋼スラグが収容されている。製鋼炉から溶鋼を取鍋へ出鋼するにあたり、製鋼炉内の製鋼スラグの一部が取鍋に排出され、出鋼完了時において、取鍋内の溶鋼表面には排出された製鋼スラグが取鍋スラグとして存在している。製鋼スラグは、製鋼炉内の酸化精錬によって生成しているため、酸化度が高く、FeOやMnOなどのいわゆる低級酸化物含有量が高い。
鋼製品の高機能、高性能化に対するユーザーからの要求水準が高くなってきており、これら鋼製品の製造段階からの清浄化が求められている。取鍋内の溶鋼表面に存在する取鍋スラグは、上述のように製鋼炉での酸化精錬で生成したために酸化度が高い。そのため、取鍋精錬を行って溶鋼の清浄性を高めた後も、溶鋼中に含有するAlやSiなどの酸化力の強い成分が取鍋スラグと反応して酸化物を形成し、溶鋼の清浄性を低下させる原因となる。これまでにも、鋼の精錬段階からの清浄化に対して、製鋼炉から出鋼するに際して取鍋内に生石灰を添加し、不可避的に流出する酸化度の高いスラグへのスラグ改質方法、スラグ塩基度調整によるアルミナ吸収能の向上、RHにおける環流時間確保といった手法が採られてきた。これらの対策により、鋼の清浄度に強く相関している取鍋スラグの低級酸化物濃度は大きく低減した。一方で、ベースとなる鋼の清浄度が向上したことで、これまで目に付かなかった、すなわち、取鍋スラグから巻き込まれた酸化物を由来とする、いわゆる外来性の介在物の問題が顕在化してきた。外来性の介在物を低減するため、これまでもRH処理後の静置時間を確保するといった対策が採られてきた。また、連続鋳造前の溶鋼保持容器(タンディッシュ)においては堰を設ける、鋳型においては湯面制御するといった対策が取られてきた。しかしながら、更なる溶高清浄化に向けては、RHにおいても外来性の介在物低減が欠かせない。
鋼の清浄性向上と外来性介在物欠陥の低減を両立させることを考えた場合、精錬段階の課題としては、取鍋内混合の確保と取鍋表面流速の制御が挙げられる。すなわち、鋼の基本的な清浄度に関係する、取鍋内に存在する微細な介在物を低減させるには取鍋内の混合が欠かせない一方、外来性欠陥の元となるスラグ系介在物は、取鍋スラグがその直下の溶鋼の流れに引き込まれて生じる。このことから、スラグの物性を制御して、すなわち、スラグの粘性を高めて巻き込まれにくいようにする、溶鋼とスラグとの界面での溶鋼流速を低減する、といった対策が考案されてきた。
特許文献2では、溶鋼流によって巻き込まれた酸化物が取鍋内に残留することを低減するため、取鍋を5〜60分間静置することにより、スラグ系介在物を浮上させることを特徴とする発明が提案されている。この文献によれば、RH脱ガス精錬の環流によって発生する溶鋼流の取鍋内での対流により、取鍋内の溶鋼湯面近傍のAl23−SiO2−CaO系スラグ溶融層を巻き込むことで溶鋼の清浄性が悪化しており、溶鋼を静置することで浮上除去が進むと記述されている。しかしながら、この発明は、巻き込まれたスラグ系介在物の低減方法に関するものであり、そもそもスラグ溶融層を巻き込ませない方法には触れられていない。
特許文献3では、脱ガス処理では、その中期までは攪拌動力密度が50〜200W/tonとなるように吹込みガス流量を調整し、中期以降は攪拌動力密度が140W/tonとなるように吹込みガスの流量を調整し、2回目の2次精錬処理では、攪拌動力密度が25W/ton以下となるように吹込みガスの流量を調整することを特徴とする高清浄度鋼の製造方法が提案されている。この文献によれば、脱ガス処理ではスラグ巻込みが発生しないように、中期以降の攪拌動力を低下させ、新たなスラグ巻込みを防止している。しかしながら、この発明のようにスラグ巻込みを抑制するために攪拌動力密度を低下させた場合、生産性低下も低下することになるという別の課題が生じてしまう。
このため、生産性を低下させることなく、スラグ巻込みだけを防止する手法が必要である。
特開平6−299227号公報 特開2002−249817号公報 特開2007−231410号公報
浅井滋生:第100、101回西山記念講座 攪拌を利用した精錬プロセスにおける流体運動と物質移動 P90
本発明は、取鍋内に収容した溶鋼を環流式真空脱ガス装置で環流処理するにあたり、真空脱ガス処理が担う本来の脱ガス能力や非金属介在物除去能力、溶鋼の攪拌能力を低減することなく、環流処理中において、酸化度の高い取鍋スラグが溶鋼中に巻き込まれることを防止して、清浄性の高い鋼を溶製する、鋼の溶製方法を提供することを目的とする。
上記した従来技術を踏まえた上で、RHを用いた精錬を前提として、環流処理時のスラグ巻込みを低減する手法を鋭意検討した。その結果、取鍋スラグの巻込みに関して、第1に、スラグ中の低級酸化物濃度、すなわち、MnOとT.Feの合計(質量%)が一定値以下まで低減することで、スラグ巻込み頻度が低減することを見出した。第2に、取鍋内溶鋼表面において、スラグと溶鋼の界面での溶鋼流速が遅くなるほど、スラグ巻込み頻度が低減する一方、スラグ中の低級酸化物濃度の低減速度が遅くなることを見出した。また、取鍋内における真空槽下降管の位置を変化させることにより、環流による取鍋内の混合速度に影響することなく、スラグと溶鋼の界面での溶鋼流速を増減できることが明らかとなった。
そこで本発明は、環流処理を前半と後半とに分け、環流処理前半は取鍋スラグの低級酸化物濃度を低減させるために積極的に溶鋼とスラグの界面での溶鋼流速を高め、環流処理後半はスラグ巻込みを低減させるため、溶鋼とスラグの界面での溶鋼流速を弱めるという、環流処理中の機能分離を行うことで外来性の介在物欠陥を低減できることが判明した。そして、溶鋼とスラグの界面での溶鋼流速の増減は、取鍋内における下降管の位置を変更することによって制御が可能になる。また本発明は、スラグ巻込みが生じにくいスラグ中の低級酸化物濃度を明らかにすることで本発明を完成するに至った。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
[1]製鋼炉で溶製した溶鋼を環流型真空脱ガス装置で環流処理するにあたり、環流処理を前半と後半とに分け、
環流処理前半に下降管の浸漬位置を(3)式を満たす位置で環流処理を行い、
環流処理後半に下降管の浸漬位置を(1)式を満たす位置で8分以上環流処理を行うことを特徴とする、清浄性の高い鋼の溶製方法。
S/D0≧1.10・・・(1)
S /D 0 ≦1.0・・・(3)
ただし、DS:下降管側壁と取鍋壁面との最短距離
0:平面視において取鍋の中心位置と真空槽の中心位置を一致させたときの下降管側壁と取鍋壁面との最短距離
[2]環流処理後半にて(1)式を満たす下降管位置で環流処理を行うにあたり、取鍋スラグ組成が(2)式を満たした状態で環流処理を行うことを特徴とする、上記[1]に記載の清浄性の高い鋼の溶製方法。
(MnO)+(T.Fe)<8.0(質量%)・・・(2
[3]取鍋を載置する取鍋台車が、取鍋の載置位置を水平方向に移動することのできる移動装置を備えていることを特徴とする、上記[1]または[2]に記載の清浄性の高い鋼の製造方法。
本発明は、取鍋内に収容した溶鋼を環流式真空脱ガス装置で環流処理するにあたり、環流処理を前半と後半に分け、前半では取鍋内溶鋼表面の溶鋼平均流速を増大することによって取鍋スラグの酸化度低減を促進し、後半では取鍋内溶鋼表面の溶鋼平均流速を低減することによってスラグ巻き込みを低減し、清浄度の高い鋼を溶製することを可能とした。
取鍋と浸漬管の位置関係を示す平面図であり、(A)はDS/D0=1となる通常位置、(B)はDS/D0>1となる位置、(C)はDS/D0<1となる位置である。 浸漬管の浸漬位置と規格化混合時間の関係を示す図である。 浸漬管の浸漬位置とスラグメタル界面の規格化平均表面流速の関係を示す図である。 S/D0と環流処理後半の環流時間が鋼の品質に及ぼす影響を示す図である。 環流前半終了時点でのスラグ中の低級酸化物濃度とスラグ系介在物除去指数ISが鋼の品質に及ぼす影響を示す図である。 取鍋内溶鋼流動についての数値解析結果の一例を示す図であり、(A)は上昇管と下降管の中心線を含む断面、(B)は溶鋼表面を示す。 移動装置を備える取鍋台車を示す図である。
本発明者らは、取鍋スラグ存在下のRHで環流処理を行う状況において、取鍋内の溶鋼の流れの挙動を、数値解析手法により再現した。そして、取鍋内における浸漬管の浸漬位置を変えた条件において、取鍋内の混合状況および取鍋上のスラグメタル界面の溶鋼流速を算出し、最適条件を検討した。数値解析は、溶鋼量が250ton規模のRHを想定し、下降管から同一流量の溶鋼が取鍋に流入し、上昇管から吸引される条件とした。計算では、真空槽における浸漬管の設置条件(浸漬管の内径および外径、上昇管と下降管の間隔、浸漬深さ)は同一とし、取鍋内における浸漬管の浸漬位置を変更した条件で計算した。数値解析で計算した一例を図6に示す。図6(A)は、2本の浸漬管3の中心軸を含む断面において、取鍋1内の溶鋼17と取鍋スラグ18の流れを矢印で示している。流速が速いほど矢印の色が濃くなっている。図面の右側に位置する下降管5からの流れが、取鍋1の底部まで到達し、そこから取鍋1の壁面に沿って横行流と上昇流が形成されている状況がわかる。
本数値解析手法を用いて取鍋内混合と表面流速を定量評価した。まず、取鍋内混合を評価するために、同一の物性を持つ溶鋼Aと溶鋼Bを液相として定義して検討した。取鍋内の流動が安定するまでの120秒間は溶鋼Aのみで環流処理を行った後、120秒以降は下降管から流入する液相を溶鋼Bに変更した。このため、120秒以降は、取鍋内の溶鋼が徐々に溶鋼Bに置き換わっていくことになり、置換率が70%以上になった領域を求めることで混合状況を判定した。そして、各数値解析条件において、取鍋内の溶鋼全てで置換率が70%を超える時間を、その条件における「混合時間」とした。さらに、取鍋スラグと溶鋼の界面での流速分布の平均値を求め、「平均流速」とした。
数値計算にあたっては、取鍋1内における浸漬管の浸漬位置を種々変更した。平面視において、図1(A)に示すように、RHの真空槽の中心11位置と、取鍋の中心10位置が一致する状態を「通常位置」と定義し、このときの下降管側壁14と取鍋壁面15との距離をD0とする。次に、図1(B)(C)に示すように、上昇管の中心12と下降管の中心13を通る直線上において真空槽の位置を変化させた。このとき、下降管側壁14と取鍋壁面15との最短距離をDSとする。真空槽の位置変化により、下降管側壁14と取鍋壁面15との最短距離DSが変化する。なお、一連の検討において、浸漬管の内径および外径、上昇管と下降管の間隔はすべて同じ条件とした。取鍋形状や浸漬管径や上昇管と下降管の間隔が異なると、下降管位置を変えた効果が変わることから、下降管側壁14と取鍋壁面15との最短距離DSを、通常位置における下降管外側から取鍋内壁までの最短距離D0で除して「DS/D0」として規格化した。また、スラグメタル界面の平均流速および取鍋内の溶鋼全てで置換率が70%を超える時間(以下、混合時間)も、取鍋形状によって異なることから、浸漬管の浸漬位置を変えた条件で算出された平均流速および混合時間を、通常の浸漬管の浸漬位置で得られた平均流速、混合時間で除して規格化した値で整理した。ここで、下降管側壁14と取鍋壁面15との最短距離DSの定め方について説明する。平面視において、取鍋の中心10と下降管の中心13を通る直線を想定する。図1(B)(C)の場合のいずれも、当該直線上において、下降管側壁14と取鍋壁面15との間の間隔を、下降管側壁14と取鍋壁面15との最短距離DSとする。
S/D0を横軸とし、規格化した混合時間を縦軸として図2に示す。図2から明らかなように、同じ環流量において、取鍋内の混合時間は下降管の位置が変わっても大きな変化がなかった。また、DS/D0を横軸とし、規格化した平均流速を縦軸として図3に示す。図3から明らかなように、下降管位置についてDS/D0が大きくなるほど、同じ環流量であっても、取鍋内溶鋼表面における溶鋼の平均流速が小さくなる結果となった。即ち、取鍋内における真空槽の下降管の位置を変化させることにより、取鍋内の混合能力には影響を及ぼすことなく、取鍋内溶鋼表面における溶鋼の平均流速を変化させることが可能である。
次に、RH処理において、取鍋内における真空槽の下降管の位置を変化させて取鍋内溶鋼表面における溶鋼の平均流速を変化させ、それぞれの条件において、RH処理の環流中における取鍋スラグ中の低級酸化物濃度が低減する速度について評価した。その結果、取鍋内溶鋼表面における溶鋼の平均流速が速くなる条件とするほど、取鍋スラグ中低級酸化物濃度の低減速度が速くなることがわかった。
そこで本発明は、環流処理を前半と後半とに分け、前半と後半で異なった役割分担とすることとした。前半/後半といっても、処理時間の配分は、均等であっても、あるいは前半と後半で時間が異なっていてもかまわない。環流処理前半は取鍋スラグの低級酸化物濃度を低減させるために積極的に溶鋼とスラグの界面での溶鋼流速を高め、そのためにDS/D0が小さくなるように下降管の位置を定める。そして、環流処理後半はスラグ巻込みを低減させるため、溶鋼とスラグの界面での溶鋼流速を弱めることとし、そのためにDS/D0が大きくなるように下降管の位置を定める。このように、環流処理の前半と後半で機能分離を行うことで外来性の介在物欠陥を低減できることが判明した。
また、本発明者らは、スラグ巻込みが生じにくいスラグ組成を詳細に検討した。非特許文献1によれば、スラグ巻込みはスラグ−メタル界面張力が影響する。このため、スラグ中MnO+T.Feが高い場合、スラグ直下の溶鋼の界面張力は大きく低下することになるため、スラグ巻込みが生じやすくなることが分かる。本発明では、環流処理の前半で溶鋼表面流速を高めてスラグ中の低級酸化物濃度の低減を図っているので、後半で溶鋼表面流速を低めることと相まって、環流処理後半ではスラグ巻き込みを抑えることが可能となる。
環流型真空脱ガス装置を用いて取鍋内の溶鋼を環流処理する場合、製鋼炉から出鋼された溶鋼および不可避的に流出したスラグを取鍋に収容し、当該取鍋は工場のクレーンで搬送され、環流型脱ガス装置の取鍋台車に乗せられる。環流型脱ガス装置は、底部に浸漬管として上昇管と下降管とを備えた真空槽を有しており、真空槽はスチームエゼクタといった排気装置がつながり、真空排気される。取鍋台車に乗せられた取鍋は、真空槽の直下まで搬送された後、鉛直方向上側に持ち上げられ、浸漬管が溶鋼に浸漬することになる。取鍋内における浸漬管の浸漬位置は、一般的には取鍋壁面と浸漬管の干渉を避けるため、真空槽の中心、すなわち上昇管と下降管の中心を結ぶ直線の中央の位置と、取鍋の中心を一致させてある。浸漬管は、環流速度を高めるため、可能な限り大きく設計してあるが、下降管にはAlといった脱酸材を添加した際にAl23が付着するため、浸漬管側壁と取鍋壁面まで余裕を持っているのが通常である。
本発明では、スラグ巻込みを抑制するため、環流処理後半において、スラグと溶鋼の界面での溶鋼流速を低減させるため、下降管の浸漬位置を中心に近い位置に移動した状態で環流処理を行う。この時、発明の効果を確実に得るためには、DS/D0が1.10よりも大きくなる条件で環流処理を行う必要がある。図4に示すように、下降管の浸漬位置が取鍋の中心に近いほど、即ちDS/D0が大きくなるほど、スラグと溶鋼の界面での溶鋼流速は小さくなるため、DS/D0は大きいほど好ましい。しかしながら、下降管の浸漬位置が取鍋の中心位置に近い場合、上昇管が取鍋壁面に接触してしまう。このため、DS/D0は大きくても1.6程度であることが好ましい。
また、下降管の浸漬位置を中心側に移動させた状態で環流させる環流処理後半の環流処理時間は8.0分以上であることが必要である。好ましくは10分以上環流するのが良い。環流処理により巻き込まれたスラグ滴は、環流処理中に浮上除去されるため、時間経過とともに低減する。スラグと溶鋼の界面での溶鋼流速を低減すると、巻き込まれるスラグ滴の最大径も小さくなるが、環流処理時間が一定の条件で、溶鋼流速を低減させた状態での環流時間が8.0分よりも短い場合、環流処理前半で巻き込んだスラグ滴の浮上除去効果が十分に得られない状態で環流処理を完了してしまうことになる。このため、環流処理後半の環流処理時間は8.0分以上であることが必要である。
下降管の浸漬位置を中心側に移動させた状態で環流させる環流処理後半に先立つ、環流処理前半では、下降管の浸漬位置を通常位置(DS/D0=1)、もしくは、取鍋壁面までの距離が通常位置よりも近い位置(DS/D0<1)で環流処理を行う。環流処理前半において取鍋スラグの低級酸化物濃度を下げるほど、環流処理後半にてスラグ巻込みが生じる割合が低下することから、環流処理前半ではDS/D0を小さくして下降管を取鍋壁面に近い位置で環流処理を行うことが好ましい。この時、環流処理前半でのDS/D0は0.8よりも小さい条件で環流処理することが好ましい。環流処理後半で下降管の浸漬位置を中心に近い位置で環流処理を行えば、環流処理前半では通常位置で環流処理をしていた場合であっても発明の効果は得られるが、環流処理前半で下降管を取鍋壁面までの距離が通常位置よりも近い位置で環流処理した方が、スラグ中の低級酸化物濃度が低減できることから、得られる発明の効果は大きくなる。
環流処理の後半でスラグの巻き込みを低減するためには、環流処理開始時点において、取鍋スラグ中のMnOとT.Feの合計含有量が少ないほど好ましい。さらに本発明では、環流処理後半の開始時点において、スラグ中のMnOとT.Feの合計が8.0%以下であることが特に好ましい。これにより、環流処理終了時点における取鍋内溶鋼中へのスラグ巻き込みを十分に低減することが可能となる。
環流処理後半の開始時点において、スラグ中のMnOとT.Feの合計を8.0%以下にするための好ましい方法について説明する。スラグ中の低級酸化物濃度は、環流処理を行う前の酸化精錬の状況によっても変わるため、全ての場合において、環流処理前半に下降管の浸漬位置を取鍋壁面に近い位置で環流処理を行う必要はない。しかしながら、酸化精錬の状況から、環流処理を開始する前段階からスラグ中の低級酸化物濃度が高いことが予想される場合は、還流処理前半でのDS/D0を0.8よりも小さい条件とし、さらに好ましくは、この状態での環流時間を長く設定する。これにより、環流処理後半の開始時点において、確実にMnOとT.Feの合計が8.0%以下にすることができる。
本発明において、下降管の位置を変更する操作を行う。一般的にRHで環流処理を行う際に用いる取鍋台車は、取鍋を真空槽直下に搬送する機能(前後方向と呼ぶ)と取鍋を昇降および下降させる機能を持つだけであるが、これらの機能に加え、環流処理前後、もしくは環流処理中に浸漬管の浸漬位置を変更できる機能を具備していることが好ましい。具体的には、図7に示すように、取鍋1を載置する取鍋台車6が、取鍋の昇降装置7とともに、取鍋1の載置位置を水平方向に移動(前述の前後方向に対して、90°の角をなす左右方向に移動)することのできる移動装置8を備えているとよい。
以上の検討結果を元に、実機RHにて浸漬管の浸漬位置が通常の条件と変更した条件、加えて、環流処理後半開示時点でのスラグ中MnO+T.Fe濃度が異なる条件で環流処理を行い、溶鋼の清浄度(T.O)およびスラグ系介在物の個数密度を調査した。
製鋼炉(転炉)で脱炭精錬した250tonの溶鋼を取鍋に出鋼した後、溶鋼を収容した取鍋を搬送し、RH型真空脱ガス装置にて環流処理した。取鍋の内径は4.2mであり、RHでの通常位置(平面視で取鍋中心と真空槽中心が一致する位置)における浸漬管側壁から取鍋壁面までの距離D0は、0.66mである。出鋼後の成分は[C]:0.08%、[Si]:0.2%、[Mn]1.3%である。出鋼中に取鍋内に生石灰を添加するとともに、必要に応じて出鋼中にAlを添加することにより、スラグ中の低級酸化物濃度(%MnO+%T.Fe)を9〜12%、CaO/Al23は1.4〜1.5に調整した。
溶鋼をRHに搬送した後、通常の処理位置にて、浸漬管を溶鋼に浸漬した後、通常位置、もしくは、取鍋を移動させて下降管の浸漬位置を変更し、下降管側壁と取鍋壁面との距離DSを変更した条件で、環流処理前半の処理を開始した。表1に処理条件を示す。その後、真空槽内の圧力を677〜3300Pa(50〜100torr)に調整してArガスを2.0m3/min上昇管側に導入して、溶鋼を環流させた。環流開始直後に真空槽内溶鋼にAlを添加して脱酸するとともに、成分調整および脱ガス処理を行い、環流処理前半として10〜15分間環流させた。前半終了の時点で、下降管の浸漬位置を移動させることによってDS/D0を変更し、その後環流処理後半として5〜10分間環流させ、合計で20分環流させた時点で環流処理を完了した。環流処理前半が終了した時点で溶鋼およびスラグサンプルを採取した。また、環流処理後半が終了した時点で溶鋼サンプルを採取した。処理後、取鍋を移動させて浸漬管を通常位置に戻した後、浸漬管を溶鋼から抜き出し、取鍋を次工程の処理位置まで搬送した。
採取した溶鋼サンプルは切断し、鏡面研磨した面をEDS付きのSEMで100mm2の視野を観察し、形状が球状もしくは不定形、円相当径直径が10μm以上で、酸化物換算した組成が質量%でCaO>10%、SiO2>5%(残部Al23および不可避的不純物)を満たす介在物(=スラグ系介在物)の個数密度を算出した。環流処理後半が完了した時点でのスラグ系介在物個数密度を、環流処理前半が終了した時点での個数密度で除して、スラグ系介在物除去指数ISを算出し、ISが0.6以下となった条件を発明の効果があったと判定し、ISが0.4以下となった条件を、顕著な発明の効果があったと判定した。
Figure 0006897363
No.1〜No.15は、環流前半処理について、いずれも下降管の位置を「通常位置」、即ち、DS/D0=1.0として処理を行った。そして、環流後半における下降管の位置と環流時間を種々変更し、品質に及ぼす影響を評価した。
No.1とNo.2は環流後半に下降管の位置を変更させず、DS/D0=1.0として処理を行った比較例である。また、No.3とNo.4は環流後半に下降管の位置を変更して10分以上環流させた条件であるが、DS/D0が1.10よりも低位であり、発明の効果は得られなかった。
No.5からNo.12までは環流後半のDS/D0を1.10よりも大きい条件で8分以上環流させた条件であり、発明例である。
No.13からNo.15までは環流後半のDS/D0を1.10よりも大きい条件で環流させたものの、環流時間が8分未満であり、発明の効果は得られなかった。
No.16からNo.20までは、環流前半に下降管の浸漬位置をDS/D0が0.70から0.55として環流させ、環流後半のDS/D0を1.10よりも大きい条件で8分以上環流させた条件であり、発明例である。
環流前半と環流後半の一方又は両方において環流時に下降管の浸漬管の位置を変更した、No.3からNo.20まで、全ての条件で、後半の環流終了時点での全酸素濃度が大きく悪化するような傾向は認められておらず、下降管の浸漬位置を変更しても取鍋内の混合状況は変化していないことが分かる。
図4は、実施例において、DS/D0と後半の環流時間がスラグ系介在物除去指数ISに及ぼす影響を示した図であり、IS>0.6を×印、IS≦0.6を○印で表している。表1および図4に示すように、DS/D0が1.10よりも大きく、後半の環流時間が8.0分以上の場合に、スラグ系介在物除去指数ISが0.6以下に低減しており、発明の効果が認められた。
図5は環流前半終了時点でのスラグ中の低級酸化物濃度とスラグ系介在物除去指数ISが、発明の効果に及ぼす影響を示した図であり、表1の「発明の効果」と同様、発明の効果が得られなかった例(IS>0.6)を×印、発明の効果が認められた例(0.4<IS≦0.6)を○印、顕著な効果が認められた例(IS≦0.4)を◎印で表している。表1および図5に示すように、発明例の中でも、環流前半終了時点でのスラグ中の低級酸化物濃度が8.0%未満である条件において、スラグ系介在物除去指数ISが0.4以下に低減しており、顕著な発明の効果が認められた。
転炉での酸化精錬段階でのスラグ中の低級酸化物含有量の程度と、環流前半での処理条件が、環流前半終了時の取鍋スラグ中低級酸化物濃度に及ぼす影響について説明する。
環流前半でのDS/D0あるいは環流前半での環流時間を変更した実施例(No.11、12、16〜20)のうち、No.12、17、19、20については、酸化精錬段階でのスラグ中の低級酸化物含有量が格別に高いレベルではなかった上に、前半の環流時間延長(No.12)、又は前半のDS/D0を0.8未満とする(No.17、19、20)ことにより、IS≦0.4と顕著な効果を得ることができた。
一方、No.11、16、18については、酸化精錬段階でのスラグ中の低級酸化物含有量が通常よりは高いレベルであり、RH処理開始時の取鍋スラグ中低級酸化物濃度が高いことが予想されたため、前半の環流時間延長(No.11)、又は前半のDS/D0を0.8未満とする(No.16、18)ことにより、IS≦0.6と良好な効果を得ることができた。
上記の通り、本発明を用いることで、清浄性の高い鋼を経済的に溶製することができ、本発明の社会的貢献度は非常に大きい。
1 取鍋
2 真空槽
3 浸漬管
4 上昇管
5 下降管
6 取鍋台車
7 昇降装置
8 移動装置
10 取鍋の中心
11 真空槽の中心
12 上昇管の中心
13 下降管の中心
14 下降管側壁
15 取鍋壁面
17 溶鋼
18 取鍋スラグ

Claims (3)

  1. 製鋼炉で溶製した溶鋼を環流型真空脱ガス装置で環流処理するにあたり、環流処理を前半と後半とに分け、
    環流処理前半に下降管の浸漬位置を(3)式を満たす位置で環流処理を行い、
    環流処理後半に下降管の浸漬位置を(1)式を満たす位置で8分以上環流処理を行うことを特徴とする、清浄性の高い鋼の溶製方法。
    S/D0≧1.10・・・(1)
    S /D 0 ≦1.0・・・(3)
    ただし、DS:下降管側壁と取鍋壁面との最短距離
    0:平面視において取鍋の中心位置と真空槽の中心位置を一致させたときの下降管側壁と取鍋壁面との最短距離
  2. 環流処理後半にて(1)式を満たす下降管位置で環流処理を行うにあたり、取鍋スラグ組成が(2)式を満たした状態で環流処理を行うことを特徴とする、請求項1に記載の清浄性の高い鋼の溶製方法。
    (MnO)+(T.Fe)<8.0(質量%)・・・(2)
  3. 取鍋を載置する取鍋台車が、取鍋の載置位置を水平方向に移動することのできる移動装置を備えていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の清浄性の高い鋼の製造方法。
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