JP2019014944A - 鋼の溶製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】取鍋内に収容した溶鋼を環流式真空脱ガス装置で環流処理するにあたり、環流処理中において取鍋スラグの酸化度を低減して、清浄性の高い鋼を溶製する、鋼の溶製方法を提供する。
【解決手段】取鍋内に収容した溶鋼を環流式真空脱ガス装置で環流処理するにあたり、環流式真空脱ガス装置は、底部に上昇管4と下降管5を備えた真空槽2を有し、下降管側壁14と取鍋壁面15との距離Dを下記(1)式の範囲内として環流処理を行うことを特徴とする鋼の溶製方法。
0.20<D/D0≦0.70 (1)
ただし、平面視において取鍋の中心10位置と真空槽の中心11位置を一致させたときの下降管側壁14と取鍋壁面15との距離をD0とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、取鍋内に収容した溶鋼を環流式真空脱ガス装置で環流処理を行って清浄性の高い鋼を溶製する、鋼の溶製方法に関するものである。
転炉や電気炉などの製鋼炉で精錬された溶鋼は、製鋼炉から出鋼して取鍋に収容され、その後、必要に応じて取鍋内の溶鋼を対象に取鍋精錬が行われる。取鍋精錬装置としては、RH真空脱ガス装置に代表される、環流式真空脱ガス装置が好適に用いられる。RH真空脱ガス装置(以下単に「RH」ともいう。)は、真空槽を備え、真空槽の底部には2本の浸漬管を有する。取鍋内溶鋼に浸漬管を浸漬して真空槽内を減圧することにより、溶鋼が真空槽中に上昇する。一方の浸漬管(上昇管)の側壁から環流ガスを吹き込むことにより、取鍋内溶鋼が上昇管内を上昇し、真空槽内を経由して他方の浸漬管(下降管)から下降し、溶鋼が取鍋と真空槽の間で循環する。真空槽内で溶鋼が減圧雰囲気に曝されることによって溶鋼の脱ガスが進行する。また、取鍋内で溶鋼が攪拌されることにより、溶鋼中の非金属介在物の浮上分離、添加合金成分の混合が促進される。
特許文献1では、取鍋内径の10%になる距離だけ、上昇管が取鍋側壁に近づく方向に脱ガス槽をずらした位置にセットすることで、下降管から吐出された溶鋼流が取鍋内でよどみを生ずることなく上昇管に循環させることを特徴とする発明が提案されている。また、特許文献2では、環流式の真空脱ガス方法において、取鍋を回転させることを特徴とする発明が提案されている。この発明は、取鍋を回転させることによって、取鍋内にできるよどみ部分を解消させることで溶鋼組成を均一化させる技術であり、清浄化には取鍋内の混合が重要であることがわかる。
製鋼炉では、酸化精錬によって溶鉄中のPやCを除去する精錬を行っており、精錬後の製鋼炉内には、溶鋼とともに酸化精錬で生成した製鋼スラグが収容されている。製鋼炉から溶鋼を取鍋へ出鋼するにあたり、製鋼炉内の製鋼スラグの一部が取鍋に排出され、出鋼完了時において、取鍋内の溶鋼表面には排出された製鋼スラグが取鍋スラグとして存在している。製鋼スラグは、製鋼炉内の酸化精錬によって生成しているため、酸化度が高く、FeOやMnOなどのいわゆる低級酸化物含有量が高い。
鋼製品の高機能、高性能化に対するユーザーからの要求水準が高くなってきており、これら鋼製品の製造段階からの清浄性が求められている。取鍋内の溶鋼表面に存在する取鍋スラグは、上述のように製鋼炉での酸化精錬で生成したために酸化度が高い。そのため、取鍋精錬を行って溶鋼の清浄性を高めた後も、溶鋼中に含有するAlやSiなどの酸化力の強い成分が取鍋スラグ中のFeOやMnOと反応して酸化物を形成し、生成した酸化物が溶鋼中に留まって非金属介在物となり、溶鋼の清浄性を低下させる原因となる。これまでにも鋼の精錬段階からの清浄性向上に向け、製鋼炉から出鋼するに際して取鍋内に生石灰を添加し、不可避的に流出する酸化度の高いスラグへの生石灰添加によるスラグ改質方法、スラグ塩基度調整によるアルミナ吸収能の向上、RHにおける環流時間確保といった手法が採られてきた。これらの対策により鋼の清浄度は大きく改善したものの、最終的な鋼の清浄度は取鍋スラグの酸化度と強く相関しており、取鍋精錬段階で鋼の清浄化処理を施した場合であっても、取鍋精錬後のスラグの酸化度が高い場合、スラグ中の低級酸化物によって溶鋼中の成分が酸化され再酸化が生じることで、最終的な清浄度が悪化してしまう。また、取鍋精錬中に、取鍋スラグの酸化度を下げるために副原料を添加したり、処理時間を延ばしたりすると、製造コストの上昇を招いてしまう。このため、従来の処理を大きく変えることなく、効率的にスラグの酸化度を低減する手法が求められている。
以上述べたように、鋼の精錬段階からの清浄性向上を考えた場合の主な課題としては、取鍋内の混合の確保と、製鋼炉から不可避的に流出する酸化度の高いスラグからの再酸化抑制である。鋼の清浄化処理を行うことを考えた場合、代表的な取鍋精錬装置であるRH真空脱ガス装置を用いるのが最も一般的である。RHで溶鋼を環流処理する場合、処理初期には取鍋上に酸化度の高い取鍋スラグが堆積しているが、環流処理中にスラグメタル反応が生じ、スラグの酸化度は時間経過とともに緩やかに低下する。スラグの酸化度を下げるには、取鍋内の溶鋼流動を制御し、スラグメタル反応を促進させるのが効果的であると考えられ、これまでもRHを用いる際に取鍋内の流動を制御するための手法が数多く提案されてきた。
特許文献3では、RH処理後に浸漬管をスラグのみに浸漬し、取鍋を正転逆転させる操作を行うことにより、浸漬管を使ってスラグを撹拌する方法が提案されている。この方法は、RH処理中の取鍋を回転できる装置を備えることが必要である。また、特許文献4では、溶鋼循環処理中に、取鍋内の溶鋼に不活性ガスを吹き込むことを特徴とする取鍋内のスラグ改質方法が提案されている。この方法では、吹き込んだガスが取鍋表面を攪拌する際に、空気との接触で再酸化が起こることが避けられない。さらに、特許文献5では、環流型脱ガス装置において、整流板を下降管の下部に浸漬することを特徴とする取鍋内のスラグ改質方法が提案されている。この方法は、溶鋼に浸漬する整流板を配置することが必要である。これらの手法は、取鍋上のスラグ直下の溶鋼の流れが停滞することを防ぐことで、溶鋼中のAlを使ってスラグ改質を促進させる手法である。
特開平6−299227号公報 特開平5−247521号公報 特開平6−179907号公報 特開2001−254118号公報 特開2001−73022号公報
本発明は、取鍋内に収容した溶鋼を環流式真空脱ガス装置で環流処理するにあたり、取鍋回転装置、整流板の設置、取鍋内ガス吹き込みなどの手段を用いることなく、環流処理中において取鍋スラグの酸化度を低減して、清浄性の高い鋼を溶製する、鋼の溶製方法を提供することを目的とする。
環流式真空脱ガス装置での環流処理が終了した段階において取鍋スラグの酸化度を十分に低減するためには、環流処理中において溶鋼中成分による取鍋スラグの還元反応を促進することが有効である。そして、取鍋スラグと溶鋼との反応性に関しては取鍋内のスラグメタル界面における溶鋼流速と相関があることを見出した。このことを元に、取鍋内全体の混合状態を十分に確保しつつ、溶鋼表面流速を高めてスラグとの反応性を向上させる手法を検討した結果、RHの浸漬管の浸漬位置を変えることで、両者を達成できることを見出し、環流処理時の浸漬管の浸漬位置を明らかにすることで本発明を完成するに至った。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
(1)取鍋内に収容した溶鋼を環流式真空脱ガス装置で環流処理するにあたり、前記環流式真空脱ガス装置は、底部に上昇管と下降管を備えた真空槽を有し、下降管側壁と取鍋壁面との距離Dを下記(1)式の範囲内として環流処理を行うことを特徴とする鋼の溶製方法。
0.20<D/D0≦0.70 (1)
ただし、平面視において取鍋の中心位置と真空槽の中心位置を一致させたときの下降管側壁と取鍋壁面との距離をD0とする。
(2)取鍋を載置する取鍋台車が、取鍋の載置位置を水平方向に移動することのできる移動装置を備えていることを特徴とする上記(1)に記載の鋼の溶製方法。
本発明は、取鍋内に収容した溶鋼を環流式真空脱ガス装置で環流処理するにあたり、取鍋内溶鋼表面の溶鋼平均流速を増大することにより、還流処理中での取鍋スラグの酸化度低減を促進し、清浄度の高い鋼を溶製することを可能とした。
取鍋と浸漬管の位置関係を示す平面図であり、(A)は従来例、(B)(C)は本発明例である。 D/D0と規格化した混合時間の関係を示す図である。 D/D0と規格化した平均表面流速の関係を示す図である。 D/D0とスラグの改質割合の関係を示す図である。 取鍋内溶鋼流動についての数値解析結果の一例を示す図であり、(A)は上昇管と下降管の中心線を含む断面、(B)は溶鋼表面を示す。 移動装置を備える取鍋台車を示す図である。
本発明者らは、取鍋スラグ存在下のRHで環流処理を行う状況において、取鍋内の溶鋼の流れの挙動を、数値解析手法により再現した。そして、取鍋内における浸漬管の浸漬位置を変えた条件において、取鍋内の混合状況および取鍋上のスラグメタル界面の溶鋼流速を算出し、最適条件を検討した。数値解析は、溶鋼量が250ton規模のRHを想定し、下降管から同一流量の溶鋼が取鍋に流入し、上昇管から吸引される条件とした。計算では、真空槽における浸漬管の設置条件(浸漬管の内径および外径、上昇管と下降管の間隔、浸漬深さ)は同一とし、取鍋内における浸漬管の浸漬位置を変更した条件で計算した。数値解析で計算した一例を図5に示す。図5(A)は、2本の浸漬管3の中心軸を含む断面において、取鍋1内の溶鋼17と取鍋スラグ18の流れを矢印で示している。流速が速いほど矢印の色が濃くなっている。図面の右側に位置する下降管5からの流れが、取鍋1の底部まで到達し、そこから取鍋1の壁面に沿って横行流と上昇流が形成されている状況がわかる。
本数値解析手法を用いて、取鍋内混合と表面流速を定量評価した。まず、取鍋内混合を評価するために、同一の物性を持つ溶鋼Aと溶鋼Bを液相として定義して検討した。取鍋内の流動が安定するまでの120秒間は溶鋼Aのみで環流処理を行った後、120秒以降は下降管から流入する液相を溶鋼Bに変更した。このため、120秒以降は、取鍋内の溶鋼が徐々に溶鋼Bに置き換わっていくことになり、置換率が70%以上になった領域を求めることで混合状況を判定した。そして、各数値解析条件において、取鍋内の溶鋼全てで置換率が70%を超える時間を、その条件における「混合時間」とした。さらに、取鍋上スラグと溶鋼の界面での流速分布の平均値を求め、「平均流速」とした。
数値計算にあたっては、取鍋1内における浸漬管3の浸漬位置を種々変更した。平面視において、図1(A)に示すように、RHの真空槽の中心11位置と、取鍋の中心10位置が一致する状態を「通常位置」と定義し、このときの下降管側壁14と取鍋壁面15との距離をD0とする。次に、図1(B)に示すように、上昇管の中心12と下降管の中心13を通る直線上において真空槽の位置を変化させた。このとき、下降管側壁14と取鍋壁面15との距離をDとする。真空槽の位置変化により、下降管側壁14と取鍋壁面15との距離Dが変化する。取鍋形状が異なると下降管の移動量の効果が変わることから、下降管側壁14と取鍋壁面15との距離Dを通常位置での下降管側壁14と取鍋壁面15との距離D0で除して(D/D0)とし、規格化した。また、スラグメタル界面の平均流速および取鍋内の溶鋼全てで置換率が70%を超える時間(以下、混合時間)も、取鍋形状によって異なることから、浸漬管の浸漬位置を変えた条件で算出された平均流速および混合時間を、浸漬管の浸漬位置を「通常位置」として得られた平均流速、混合時間で除して規格化した値で整理した。ここで、下降管側壁14と取鍋壁面15との距離Dの定め方について説明する。平面視において、取鍋の中心10と下降管の中心13を通る直線を想定する。図1(B)の場合、図1(C)の場合のいずれも、当該直線上において、下降管側壁14と取鍋壁面15との間の間隔を、下降管側壁14と取鍋壁面15との距離Dとする。このように、距離Dは、下降管側壁14と取鍋壁面15の任意の位置との間の最短の距離を意味することとなる。
D/D0を横軸とし、規格化した混合時間を縦軸として図2に示す。図2から明らかなように、混合時間は下降管の位置が変わっても、大きな変化が無かった。また、D/D0を横軸とし、規格化した平均流速を縦軸として図3に示す。図3から明らかなように、下降管位置が通常よりも取鍋壁面側に近いほど、平均流速が大きくなる結果となった。
次に、これらの検討結果を元に、実機RHにて浸漬管の浸漬位置を通常の条件から変更した条件で環流処理を行い、スラグ中の低級酸化物濃度の低減効果および鋳片における全酸素濃度の低減効果を調査した。詳細は後記の実施例において説明するが、RH型真空脱ガス装置で溶鋼の環流処理を行うに際し、真空槽と取鍋の位置関係を調整することにより、前記D/D0を1(通常位置)から0.2の範囲で種々変更した。それぞれの条件で、環流処理前と環流処理後の間で取鍋スラグの低級酸化物が低減する割合を「スラグの改質割合」として評価した。結果を図4に示す。図4から明らかなように、D/D0が0.20〜0.70の範囲で、スラグの改質割合が大幅に向上することが明らかになった。そこで本発明では、下降管側壁と取鍋壁面との距離Dを下記(1)式の範囲内として環流処理を行うことと規定した。
0.20<D/D0≦0.70 (1)
ただし、平面視において取鍋の中心位置と真空槽の中心位置を一致させたときの下降管側壁と取鍋壁面との距離をD0とする。
環流型真空脱ガス装置を用いて取鍋内の溶鋼を環流処理する場合、製鋼炉から出鋼された溶鋼および不可避的に流出したスラグを取鍋に収容し、当該取鍋は工場のクレーンで搬送され、環流型脱ガス装置の取鍋台車に乗せられる。環流型脱ガス装置は、底部に浸漬管として上昇管と下降管とを備えた真空槽を有しており、真空槽はスチームエゼクタといった排気装置がつながり、真空排気される。取鍋台車に乗せられた取鍋は、真空槽の直下まで搬送された後、鉛直方向上側に持ち上げられ、浸漬管が溶鋼に浸漬することになる。取鍋内における浸漬管の浸漬位置は、一般的には取鍋壁面と浸漬管の干渉を避けるため、真空槽の中心、すなわち上昇管と下降管の中心を結ぶ直線の中央の位置と、取鍋の中心を一致させてある。浸漬管は、環流速度を高めるため、可能な限り大きく設計してあるが、下降管にはAlといった脱酸材を添加した際にAl23が付着するため、浸漬管側壁と取鍋壁面まで余裕を持っているのが通常である。
本発明では上述のとおり、下降管側壁と取鍋壁面との距離Dを上記(1)式の範囲内として環流処理を行う。即ち、下降管を浸漬させる位置を、「通常位置」での下降管側壁から取鍋壁面までの距離D0よりも、取鍋壁面に近い位置で環流処理を行う。その際の下降管側壁と取鍋壁面との距離Dは、D/D0が0.70以下であることが必要である。D/D0が0.70よりも大きい条件で、下降管を取鍋壁面側に移動させた場合、スラグメタル界面の平均流速は増加するものの、スラグ改質速度の増加幅が小さいことから、十分な発明の効果が得られない。
一方、D/D0が0.20未満となる場合、物理的に下降管と取鍋壁面が接触してしまい、操業トラブルを生じさせてしまいかねないため、D/D0は0.20よりも大きいことが必要である。浸漬管の位置調整は、環流処理を行う前に行うことが望ましく、浸漬管を浸漬するときに予め浸漬位置を変えていても、「通常位置」に浸漬した後に下降管位置を変えても良い。
図3において、D/D0に対して、規格化した平均表面流速がリニアに変化する一方、図4において、スラグの改質割合が0.7近傍を境に急に変わる理由としては、溶鋼/スラグ間流速が臨界値を超えると、スラグ巻き込みが生じ、反応界面積が急激に増加するためと思われる。
なお、D/D0の上限値として図4から0.70を規定したが、0.7〜0.77間のデータでスラグの改質割合の改善が見込まれれば0.70を多少こえる値であっても本発明の主旨から外れるものでは無いことは言うまでもない。
この操作を行うため、一般的にRHで環流処理を行う際に用いる取鍋台車は、取鍋を真空槽直下に搬送する機能と取鍋を昇降および下降させる機能を持つだけであるが、これらの機能に加え、環流処理前後、もしくは環流処理中に浸漬管の浸漬位置を変更できる機能を具備していることが好ましい。具体的には、図6に示すように、取鍋1を載置する取鍋台車6が、取鍋の昇降装置7とともに、取鍋1の載置位置を水平方向に移動することのできる移動装置8を備えているとよい。環流処理の途中に、溶鋼にAl等の脱酸剤を添加することがあり、その場合は下降管周囲にAl23が付着することになる。この状態で浸漬管を溶鋼から抜き出すと、付着したAl23の落下や、Al23に付着した溶鋼の飛散等が考えられるため、環流処理後、浸漬管の浸漬位置を通常処理位置に戻してから、浸漬管を抜き出すことが好ましい。
下降管側壁と取鍋壁面との距離Dを上記(1)式の範囲内とするため、真空槽に対する相対的な取鍋の移動方向を、図1(B)の平面図に示すように、上昇管の中心12と下降管の中心13とを結ぶ直線上を移動することとすると好適である。本発明では、図1(C)に示すように、移動方向が、上昇管の中心12と下降管の中心13とを結ぶ直線から外れた方向としても良い。
製鋼炉(転炉)で脱炭精錬した250tonの溶鋼を取鍋に出鋼した後、溶鋼を収容した取鍋を搬送し、RH型真空脱ガス装置にて環流処理した。取鍋の内径は4.2mであり、RHでの通常位置(平面視で取鍋中心と真空槽中心が一致する位置)における浸漬管側壁から取鍋壁面までの距離D0は0.66mである。出鋼後の成分は[C]:0.04%、[Si]:0.2%、[Mn]:1.2%である。出鋼中に取鍋内に生石灰を添加することにより、スラグ中の低級酸化物濃度(%T.Fe+%MnO)を10〜15%に調整した。
溶鋼をRHに搬送した後、通常の処理位置にて、浸漬管を溶鋼に浸漬した後、取鍋を移動させて下降管の浸漬位置を変更し、下降管側壁と取鍋壁面との距離Dを変更した。表1に処理条件を示す。その後、真空槽内の圧力を677〜3300Pa(50〜100torr)に調整してArガスを2.0m3/min上昇管側に導入して、溶鋼を環流させた。環流開始直後に真空槽内溶鋼にAlを添加して脱酸するとともに、成分調整および脱ガス処理を行い、20分環流させた時点で環流処理を完了した。処理後、取鍋を移動させて浸漬管を通常位置に戻した後、浸漬管を溶鋼から抜き出し、取鍋を次工程の処理位置まで搬送した。この環流処理の間にスラグを採取してスラグ改質効果を調査するとともに、鋳片からもサンプルを採取して鋼の清浄度を調査した。スラグ分析結果のうち、RH処理前後の低級酸化物濃度の差をRH処理前の低級酸化物濃度で除して求めた値を「スラグの改質割合」とした。スラグの改質割合が50%以上であった条件を、発明の効果があったと判定した。
No.1から6までは、D/D0を1として、浸漬管を通常位置で環流させた際の結果であり(図1(A)参照)、比較例である。また、No.7および8は、下降管の浸漬位置を取鍋壁面側に、D/D0が0.85、0.77となるように変えて環流させた際の結果であり、比較例である。No.9から15までは、下降管の浸漬位置を取鍋壁面側にD/D0が0.24から0.7になるように変えて環流させた際の結果であり(図1(B)参照)、発明例である。
表1および図4に示すように、下降管の浸漬位置が通常位置であったNo.1から6までの比較例は、RH処理前後のスラグ改質率が13%未満であった。この結果に対し、下降管の浸漬位置を、D/D0が0.7超の範囲で取鍋壁面側に移動させたNo.7および8では、RH処理前後のスラグの改質割合が改善傾向であったものの、20%未満であり、十分な発明の効果は認められなかった。一方、D/D0が0.24から0.7になるように変えたNo.8から15までは、RH処理前後のスラグの改質割合が50%以上であり、発明の効果が認められた。
上記した試験における鋳片の全酸素濃度を表1に示した。RH処理前のスラグ中の低級酸化物濃度が同水準である比較例と発明例(例えば比較例No.7と発明例No.15)を比べた場合、発明例のほうが鋳片の全酸素濃度は10ppm以上低減できており、本発明により鋼の清浄度を向上できていることが分かる。
1 取鍋
2 真空槽
3 浸漬管
4 上昇管
5 下降管
6 取鍋台車
7 昇降装置
8 移動装置
10 取鍋の中心
11 真空槽の中心
12 上昇管の中心
13 下降管の中心
14 下降管側壁
15 取鍋壁面
17 溶鋼
18 取鍋スラグ

Claims (2)

  1. 取鍋内に収容した溶鋼を環流式真空脱ガス装置で環流処理するにあたり、前記環流式真空脱ガス装置は、底部に上昇管と下降管を備えた真空槽を有し、下降管側壁と取鍋壁面との距離Dを下記(1)式の範囲内として環流処理を行うことを特徴とする鋼の溶製方法。
    0.20<D/D0≦0.70 (1)
    ただし、平面視において取鍋の中心位置と真空槽の中心位置を一致させたときの下降管側壁と取鍋壁面との距離をD0とする。
  2. 取鍋を載置する取鍋台車が、取鍋の載置位置を水平方向に移動することのできる移動装置を備えていることを特徴とする請求項1に記載の鋼の溶製方法。
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