JP5463797B2 - 高マンガン極低炭素鋼の溶製方法 - Google Patents

高マンガン極低炭素鋼の溶製方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5463797B2
JP5463797B2 JP2009194896A JP2009194896A JP5463797B2 JP 5463797 B2 JP5463797 B2 JP 5463797B2 JP 2009194896 A JP2009194896 A JP 2009194896A JP 2009194896 A JP2009194896 A JP 2009194896A JP 5463797 B2 JP5463797 B2 JP 5463797B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
manganese
dissolved oxygen
oxygen concentration
molten steel
vacuum
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2009194896A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011046984A (ja
Inventor
泰志 小笠原
直樹 菊池
由枝 中井
洋晴 井戸
政臣 妹尾
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2009194896A priority Critical patent/JP5463797B2/ja
Publication of JP2011046984A publication Critical patent/JP2011046984A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5463797B2 publication Critical patent/JP5463797B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Treatment Of Steel In Its Molten State (AREA)

Description

本発明は、真空脱ガス設備の真空槽内の溶鋼に酸素ガスなどの酸素源を供給し、溶鋼に対して真空脱炭処理を施して高マンガン極低炭素鋼を溶製する方法に関し、詳しくは、マンガンの酸化を抑え、効率良く脱炭することによって安価に高マンガン極低炭素鋼を溶製する方法に関するものである。
近年、鉄鋼材料は、その用途の多様化に伴い、より苛酷な環境下で使用されることが多くなり、材料特性の高性能化が従来にも増して求められている。このような状況下、構造物の軽量化を目的として、高い引張強さと高い加工性とを両立させた高マンガン極低炭素鋼が開発され、ラインパイプ用鋼板や自動車用鋼板などとして使用されるようになった。ここで、高マンガン極低炭素鋼とは、炭素濃度が0.01質量%以下で、マンガン濃度が0.3質量%以上の鋼のことである。
溶鋼中のマンガン濃度を調整するために用いられる安価なマンガン源は、マンガン鉱石や高炭素フェロマンガンであり、高マンガン極低炭素鋼の溶製時において、安価なマンガン源の使用比率が高いほど、高マンガン極低炭素鋼の製造コストは低下する。尚、高マンガン極低炭素鋼は、炭素濃度が0.01質量%以下であるので、転炉における大気圧下での脱炭吹錬のみでは溶製が困難であり、RH真空脱ガス装置などの真空脱ガス設備における減圧下での脱炭処理(「真空脱炭処理」と呼ぶ)が必須となる。
マンガンは鉄に比較して酸素との親和力が強く、高マンガン極低炭素鋼の真空脱炭処理時には、溶鋼中のマンガンが脱炭用酸素源(酸素ガスなどの気体酸素源や酸化鉄などの固体酸素源)と反応してマンガンの優先酸化が発生し、マンガン歩留りが低下するという問題が発生する。そのために従来は、高マンガン極低炭素鋼を溶製する場合には、真空脱炭処理が終了し、溶鋼をAlで脱酸した後に、高純度のマンガン源(電解マンガンなど)を添加して成分調整する方法が行われてきた。高純度のマンガン源は、マンガン鉱石や高炭素フェロマンガンなどの安価なマンガン源に比べて、マンガン純分あたりの価格が高く、高マンガン極低炭素鋼の製造コストを高める原因となっていた。
そこで、この問題を解決するために、多くの提案がなされている。例えば、特許文献1には、高マンガン溶鋼を真空脱ガス設備にて真空脱炭処理し、高マンガン極低炭素鋼を溶製するに際し、真空脱炭処理前の溶鋼中の炭素濃度を0.06質量%以下とし、真空脱炭処理中の溶鋼中の溶存酸素濃度を400ppm以下かつ200ppm以上の範囲に制御しながら真空脱炭処理する溶製方法が提案されている。しかしながら、特許文献1では、真空脱炭処理中の溶鋼中の溶存酸素濃度を400ppm以下200ppm以上の範囲に制御するために、溶鋼中にAlやSiなどの脱酸剤を添加する或いは上吹きランスから酸素ガスを溶鋼に吹き付けており、真空脱炭処理中での溶存酸素濃度の計測が煩雑である上に脱酸剤によるコストが嵩み、必ずしも安価な溶製方法とはいえない。
特許文献2には、真空脱ガス設備の真空槽内の溶鋼に酸素源を供給しつつ、溶鋼に対して真空脱炭処理を施して低炭素高マンガン鋼を溶製する際に、真空脱炭処理前の溶鋼中の溶存酸素濃度を0.01質量%以下とし、溶鋼中の炭素濃度が0.04質量%以下になった時点から酸素源の供給量を低減するという溶製方法が提案されている。しかしながら、真空脱炭処理中の溶鋼中炭素濃度の推定が難しく、酸素源の供給量を低減させる時期の把握が困難である。
また、特許文献3には、RH真空脱ガス装置にてMnを含有する溶鋼の表面に上吹ランスから酸素ガスを噴射して前記溶鋼からの脱炭を行う際に、前記溶鋼からの脱Mnを抑制する方法であって、前記溶鋼中の炭素濃度の低下に基づいて、前記上吹ランスからの酸素ガスの供給速度(「送酸速度」ともいう)を低下させるとともに、前記酸素ガスの噴射によって前記溶鋼の表面に形成される凹部の面積である火点面積の減少を抑制するように前記上吹ランスの高さを前記溶鋼表面に接近させるという溶製方法が提案されている。しかしながら、特許文献3においては、脱炭処理時の溶鋼中溶存酸素濃度を制御しておらず、マンガンロスを低減することは困難である。
このように、高マンガン極低炭素鋼の真空脱炭処理時のマンガンの酸化を抑制する方法がいくつか開示されているが、真空脱炭処理中に効率的にマンガンロスを低減させるという点で何れも十分とはいえない。また、減圧下で酸素ガスを上吹きした真空脱炭処理の場合、溶鋼中の溶存酸素濃度の変化が大きく、また、同一条件でもチャージによる溶存酸素濃度のばらつきが大きいという問題がある。これらの条件を踏まえ、前記課題を解決するためには、真空脱炭処理中の溶存酸素濃度を刻一刻と動的に推定し、推定した溶存酸素濃度に応じて酸素源の供給速度を変更することが望まれる。
ところで、転炉での酸素吹錬中に溶鋼の溶存酸素濃度を刻一刻と動的に推定し、推定した溶存酸素濃度に応じて上吹き酸素ガスの供給速度を動的に変更する精錬方法として、例えば特許文献4には、転炉脱燐吹錬中に、吹錬途中の溶鋼中炭素濃度、溶鋼中酸素濃度、溶鋼中燐濃度及び溶鋼温度を排ガス情報に基づいて推定し、当該チャージの特徴を表す当該ベクトルを求め、過去実績データベースから当該チャージと類似した類似ベクトルを抽出し、抽出した類似ベクトルに基づき最適送酸流量を求める近似モデルを作成し、作成した近似モデルを用いて当該チャージの最適送酸流量パターンを算出し、この最適送酸流量パターンで算出タイミング以降の当該チャージの送酸流量パターンを変更するという送酸流量パターン決定方法が提案されている。
しかしながら、特許文献4は、酸素ガスの供給速度を最適化することを目的に開発されており、マンガンロスを抑制することは目的ではない。また、大気圧下で且つ溶鋼浴面にスラグが存在する条件であるため、系内の酸素バランスのみでは溶存酸素濃度の制御は困難であり、減圧下での精錬とは異なる。
特開平9−170013号公報 特開2008−150710号公報 特開2005−281722号公報 特開2009−52082号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、真空脱ガス設備を用い、マンガンを含有する溶鋼に酸素ガスを供給して真空脱炭処理を施し、高マンガン極低炭素鋼を溶製するにあたり、真空脱炭処理時のマンガンの酸化を抑えて効率良く脱炭し、従来に比べて安価に高マンガン極低炭素鋼を溶製することのできる方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明に係る高マンガン極低炭素鋼の溶製方法は、マンガンを含有する、真空脱ガス設備の真空槽内の溶鋼に、上吹きランスから酸素ガスを供給し、減圧下での脱炭処理を施して高マンガン極低炭素鋼を溶製するにあたり、前記脱炭処理中に、溶鋼中の溶存酸素濃度を、脱炭処理開始前の溶存酸素濃度、上吹き酸素ガス量、及び排ガスの濃度分析結果に基づいて推定し、溶存酸素濃度の推定の都度、溶存酸素濃度の目標値を溶鋼中のマンガンと溶存酸素との平衡関係から定まる平衡溶存酸素濃度として、推定した溶存酸素濃度に応じて上吹きランスからの酸素ガス供給流量を調整することを特徴とするものである。
本発明によれば、真空脱炭処理中の溶存酸素濃度を推定し、溶存酸素濃度の推定の都度、推定した溶存酸素濃度が平衡溶存酸素濃度と一致するように、推定した溶存酸素濃度に応じて上吹きランスからの酸素ガス供給流量を調整するので、溶鋼中のマンガンの酸化を抑制しながら効率良く脱炭することが可能となり、その結果、安価なマンガン源を原料として使用することが実現され、高マンガン極低炭素鋼の製造コストの削減が達成される。
本発明を実施する際に用いたRH真空脱ガス装置の概略縦断面図である。 送酸速度を2水準に変更したときの溶鋼中のマンガン濃度と溶存酸素濃度との関係を示す図である。 真空脱炭処理時の送酸速度パターンを本発明法と従来法とで比較して示す図である。 真空脱炭処理時の溶存酸素濃度の推移を本発明法と従来法とで比較して示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。先ず、本発明に至った経緯について説明する。
本発明者らは、真空脱炭処理時のマンガンの酸化を抑え、効率良く脱炭処理して高マンガン極低炭素鋼を溶製することを目的に、図1に示すRH真空脱ガス装置を用いて試験操業を実施した。
図1は、本発明を実施する際に用いたRH真空脱ガス装置の概略縦断面図であり、図1において、1はRH真空脱ガス装置、2は取鍋、3は溶鋼、4はスラグ、5は真空槽、6は上部槽、7は下部槽、8は上昇側浸漬管、9は下降側浸漬管、10は環流用ガス吹き込み管、11はダクト、12は原料投入口、13は上吹きランス、14は排ガス分析装置、15は酸素濃度演算部、16は酸素濃度モニターであり、真空槽5は上部槽6と下部槽7とから構成され、また、上吹きランス13は上下移動が可能となっており、この上吹きランス13からは酸素ガスが真空槽5の内部の溶鋼3の湯面に吹き付けられるようになっている。
排ガス分析装置14は、ダクト11を通る排ガス中のCOガス、CO2ガス、O2ガスの濃度を定量分析できる装置であり、排ガス分析装置14によるガス分析値は、酸素濃度演算部15に入力されている。酸素濃度演算部15は、入力された排ガス分析値と、RH真空脱ガス装置を制御するプロセスコンピューターから別途入力される、脱炭処理開始前の溶鋼中溶存酸素濃度及び上吹き酸素ガス量とを用い、ガス分析測定時点の溶鋼中溶存酸素濃度を演算する装置である。酸素濃度演算部15によって演算された溶存酸素濃度は酸素濃度モニター16に表示される。酸素濃度モニター16は、その時点の溶鋼中溶存酸素濃度のみならず、過去の溶鋼中溶存酸素濃度、つまり、溶鋼中溶存酸素濃度の推移も表示されるように構成されている。
RH真空脱ガス装置1では、溶鋼保持容器としての取鍋2を昇降装置(図示せず)にて上昇させ、上昇側浸漬管8及び下降側浸漬管9を取鍋2に収容された溶鋼3に浸漬させる。そして、環流用ガス吹き込み管10から上昇側浸漬管8の内部に環流用Arガスを吹き込むとともに、真空槽5の内部をダクト11に連結される排気装置(図示せず)にて排気して真空槽5の内部を減圧する。真空槽5の内部が減圧されると、取鍋2に収容された溶鋼3は、環流用ガス吹き込み管10から吹き込まれるArガスとともに上昇側浸漬管8を上昇して真空槽5の内部に流入し、その後、下降側浸漬管9を経由して取鍋2に戻る流れ、所謂、環流を形成してRH真空脱ガス精錬が施される。
溶鋼3の環流が形成され、溶鋼3に対してRH真空脱ガス精錬が施されると、真空槽5の内部では、大気圧よりも低圧になることによって溶鋼中の炭素と溶存酸素との平衡関係がずれ、溶鋼3に含有される炭素と溶存酸素との反応が生じ、溶鋼3に含有される炭素はCOガスとなって排ガスとともに真空槽5からダクト11を介して排出される。かくして、溶鋼3は真空脱炭処理される。更に、上吹きランス13から酸素ガスが溶鋼3に向かって吹き込まれ、溶鋼3の脱炭反応が進行する。溶鋼3に酸素源の供給が無い場合には、真空脱炭処理の進行に伴って溶存酸素は減少するが、上吹きランス13から酸素ガスを供給することにより、溶存酸素濃度は維持される。上吹きランスから供給された酸素ガスの全てが溶鋼中に溶解するわけではなく、一部はそのままダクト11を介して系外に排出されたり、脱炭反応により生成するCOガスをCO2ガスに二次燃焼させたりする。本発明では、真空脱炭処理における上吹きランス13からの酸素ガスの供給流量として、2000Nm3/hrを基準とした。この値は、溶鋼量及び環流量によって変わるものであり、2000Nm3/hrの一定に限るものではない。
このようにして行う真空脱炭処理において、真空脱炭処理中の溶存酸素濃度の目標値を最適化するために、処理前の溶鋼中炭素濃度を0.03〜0.05質量%、マンガン濃度を0.3〜0.5質量%の範囲とし、酸素ガスの総供給量を一定とし、酸素ガスの供給流量(送酸速度)を変えて試験した。送酸速度は2000〜3000Nm3/hrと1000〜2000Nm3/hrとの2水準で実施した。
真空脱炭処理中の溶鋼中のマンガン濃度と溶存酸素濃度との関係を図2に示す。図2中の△印が送酸速度を2000〜3000Nm3/hrとした水準であり、一方、□印が送酸速度を1000〜2000Nm3/hrとした水準である。図2に示すように、送酸速度を2000〜3000Nm3/hrとした水準の方が真空脱炭処理中の溶存酸素濃度が高くなることが分かった。
また、送酸速度を2000〜3000Nm3/hrとした水準での真空脱炭処理時のマンガンロス量が平均で0.15質量%であったのに対し、送酸速度を1000〜2000Nm3/hrとした水準での真空脱炭処理時のマンガンロス量は平均で0.05質量%であった。
これらの原因を追究するにあたり、本発明者らは、下記の(1)式に示す平衡関係に着目した。
[Mn]+[O]=(MnO) …(1)
但し、(1)式において、[Mn]は溶鋼中のマンガン、[O]は溶鋼中の溶存酸素、(MnO)はスラグ中の酸化マンガンである。
1673Kにおいて、スラグ中の酸化マンガンの活量を0.2として計算した(1)式の平衡関係を図2に曲線で示す。図2に示すように、平衡値は2つの水準の中間に位置し、送酸速度が2000〜3000Nm3/hrの水準では、脱炭処理中のマンガンと溶存酸素との関係が平衡関係よりも上側(溶存酸素濃度が平衡値よりも過多)となっており、逆に、送酸速度が1000〜2000Nm3/hrの水準では、脱炭処理中のマンガンと溶存酸素との関係が平衡関係よりも下側(溶存酸素濃度が平衡値よりも少ない)となっている。これは、送酸速度の違いにより、局所的な酸素分圧が変化したためであると考えられる。
これらの結果から、真空脱炭処理中のマンガンロスを抑制すると同時に、迅速な脱炭反応を行うことを目的とし、真空脱炭処理中の溶存酸素濃度の目標値として、図2に示す、溶存酸素濃度のマンガンとの平衡値を設定し、真空脱炭処理を実施することとした。
この場合、溶鋼のマンガン濃度に応じて溶存酸素濃度値を、目標とする平衡溶存酸素濃度値に制御すれば目的を達成できるが、チャージによる溶存酸素濃度のばらつきや真空槽内形状変動が大きく、静的(スタティック)な制御には限界があり、そこで、排ガスの分析結果を用いて真空脱炭処理中の溶存酸素濃度を刻一刻推定し、溶存酸素濃度を動的(ダイナミック)に制御する方法を用いることとした。
ここで、真空脱炭処理中の溶鋼中溶存酸素濃度は下記の(2)式を用いて推定した。
[O]t+Δt-[O]t=(α×qO2,t-β×CCO,t×Et-γ×CCO2,t×Et)×Δt …(2)
但し、(2)式において、[O]t+Δtは、時刻「t+Δt」における溶存酸素濃度、[O]tは、時刻tにおける溶存酸素濃度、qO2,tは、時刻tにおける送酸速度、CCO,tは、時刻tにおける排ガス中のCOガス濃度の割合、CCO2,tは、時刻tにおける排ガス中のCO2ガス濃度の割合、Etは、時刻tにおける排ガス流量、α、β、γは、単位変換係数である。(2)式の妥当性を確認するために、(2)式による溶存酸素濃度の計算値と、溶存酸素濃度の実測値(固体酸素プローブを先端に配置した溶存酸素測定器による測定値)とを比較対比したところ、誤差±5%以内で一致することを確認した。
RH真空脱ガス装置1における高マンガン極低炭素鋼の真空脱炭処理中に、排ガス分析装置14により測定された排ガス分析結果を用い、(2)式を用いて酸素濃度演算部15にて真空脱炭処理中の溶存酸素濃度を計算し、酸素濃度モニター16に表示される溶存酸素濃度に応じて、計算の都度、溶存酸素濃度が(1)式によるマンガンとの平衡溶存酸素濃度に向かって移行するように、上吹きランス13からの酸素ガスの供給流量を変化させた。具体的には、推定した溶存酸素濃度がマンガンとの平衡溶存酸素濃度値よりも低い場合には、送酸速度を増加させ、逆に、推定した溶存酸素濃度がマンガンとの平衡溶存酸素濃度値よりも高い場合には、送酸速度を減少させるという方法である。
図3に、溶存酸素濃度の推定値に基づいて上吹きランス13からの酸素ガスの供給流量を変化させたときの送酸速度パターンの例を示し、図4に、真空脱炭処理時の溶存酸素濃度の推移の例を示す。図3及び図4は、溶鋼中のマンガン濃度が0.47質量%のときの例であり、この場合の平衡溶存酸素濃度は約400ppmである。尚、図3及び図4では、上吹きランス13からの酸素ガス流量を2000Nm3/hrの一定とした場合を従来法として比較して示している。
図3及び図4に示すように、本発明法の場合には、真空脱炭処理の時間経過に伴って送酸速度が次第に低下し、これにより、溶存酸素濃度が目標値に到達した以降は、溶存酸素濃度はほぼ目標値に制御される。
本発明は、上記試験結果に基づきなされたものであり、マンガンを含有する、真空脱ガス設備の真空槽内の溶鋼に、上吹きランスから酸素ガスを供給し、減圧下での脱炭処理を施して高マンガン極低炭素鋼を溶製するにあたり、前記脱炭処理中に、溶鋼中の溶存酸素濃度を、脱炭処理開始前の溶存酸素濃度、上吹き酸素ガス量、及び排ガスの濃度分析結果に基づいて推定し、溶存酸素濃度の推定の都度、溶存酸素濃度の目標値を溶鋼中のマンガンと溶存酸素との平衡関係から定まる平衡溶存酸素濃度として、推定した溶存酸素濃度に応じて上吹きランスからの酸素ガス供給流量を調整することを特徴とする。
ここで、本発明における高マンガン極低炭素鋼とは、炭素濃度が0.01質量%以下で、マンガン濃度が0.3質量%以上の鋼のことであり、その他の成分の含有量はどの程度であっても構わない。また、本発明においては、高炉から出銑された溶銑に先ず転炉にて大気圧下での脱炭吹錬を施し、次いで、この脱炭吹錬で得られたマンガン含有溶鋼に、真空脱ガス設備での酸素ガスを供給して行う真空脱炭処理を施して所定の炭素濃度まで脱炭し、その後、Alなどにより脱酸し、脱酸後、更にマンガンを含めて化学成分を調整し、高マンガン極低炭素鋼を溶製する。
本発明においては、転炉脱炭吹錬は、マンガン源としてマンガン鉱石を添加しつつ、必要に応じて少量の生石灰、ドロマイトなどを媒溶剤として用い、酸素を上吹きまたは底吹きして溶銑の脱炭処理を行う。転炉脱炭吹錬において、マンガン源としてマンガン鉱石を添加するので、溶銑段階において予備脱燐処理を予め行うことが好ましい。予備脱燐処理を実施することにより、転炉脱炭吹錬では生石灰などの媒溶剤の使用量が少なくなり、安価なマンガン源として添加するマンガン鉱石の還元歩留りが向上するからである。
また、転炉内に添加したマンガン鉱石のみでは、溶鋼のマンガン濃度が目的とする高マンガン極低炭素鋼の成分規格範囲に不足する場合には、転炉から取鍋などの溶鋼保持容器への出鋼時に、高炭素フェロマンガンなどの安価な合金鉄系マンガン源を所定量添加し、溶鋼のマンガン濃度を成分規格と同等のレベルまで上昇させる。この場合、安価マンガン源を使用することによるコストメリットを十分に発揮させるために、出鋼後の溶鋼保持容器内の溶鋼中のマンガン濃度を、少なくとも高マンガン極低炭素鋼の成分規格値の90%以上望ましくは95%以上まで確保することが好ましい。
マンガン鉱石や高炭素フェロマンガンなどの安価なマンガン源を使用することから、溶鋼中の炭素濃度は必然的に高くなるが、それでも、マンガン濃度を調整した後の出鋼後の溶鋼中の炭素濃度を0.1質量%以下に抑えることが好ましい。溶鋼の炭素濃度が0.1質量%を越えると、次工程の真空脱ガス設備における真空脱炭処理に長時間を費やし、真空脱ガス設備の生産性の低下のみならず、真空脱炭処理時間の延長による温度補償として出鋼時の溶鋼温度を高くする必要が生じ、これに起因する鉄歩留りの低下や耐火物損耗量の増大などによって製造コストが上昇するため、好ましくない。
転炉脱炭吹錬の終了後、転炉から取鍋などの溶鋼保持容器へ出鋼された溶鋼に対して、上記説明の真空脱炭処理を実施する。尚、上記の真空脱炭処理の試験操業は、RH真空脱ガス装置を用いて実施したが、真空脱ガス設備はRH真空脱ガス装置に限るものではなく、DH真空脱ガス装置やVOD炉などの他の真空脱ガス設備においても、上記に準じて適用することができる。
以上説明したように、本発明によれば、真空脱炭処理中の溶存酸素濃度を動的に推定し、溶存酸素濃度の推定の都度、推定した溶存酸素濃度が平衡溶存酸素濃度と一致するように、推定した溶存酸素濃度に応じて上吹きランスからの酸素ガス供給流量を調整するので、溶鋼中のマンガンの酸化を抑制すると同時に、効率良く脱炭することが可能となり、その結果、安価なマンガン源を原料として使用することが実現され、高マンガン極低炭素鋼の製造コストの削減が達成される。
転炉より出鋼された250トンの未脱酸溶鋼を用いて、図1に示すRH真空脱ガス装置にて真空脱炭処理を施して高マンガン極低炭素鋼を溶製する試験を実施した。表1に試験条件を示す。
Figure 0005463797
転炉から出鋼後の溶鋼の炭素濃度は0.03〜0.05質量%、マンガン濃度は0.3〜0.5質量%であった。RH真空脱ガス装置からの排ガスの分析結果に基づき推定した溶存酸素濃度に応じて上吹きランスからの送酸量を変更した本発明法による試験(本発明例)と、送酸速度を一定(=2000Nm3/hr)とした従来法による試験(従来例)とを、それぞれ10チャージずつ実施した。表2に、本発明例及び従来例での試験結果の平均値を示す。
Figure 0005463797
本発明を適用することにより、真空脱炭処理中の溶存酸素濃度は所定値に制御され、表2に示すように、真空脱炭処理時のマンガンロスを従来の0.12質量%から0.06質量%へと大幅に低減することが実現できた。
1 RH真空脱ガス装置
2 取鍋
3 溶鋼
4 スラグ
5 真空槽
6 上部槽
7 下部槽
8 上昇側浸漬管
9 下降側浸漬管
10 環流用ガス吹き込み管
11 ダクト
12 原料投入口
13 上吹きランス
14 排ガス分析装置
15 酸素濃度演算部
16 酸素濃度モニター

Claims (1)

  1. マンガンを含有する、真空脱ガス設備の真空槽内の溶鋼に、上吹きランスから酸素ガスを供給し、減圧下での脱炭処理を施して高マンガン極低炭素鋼を溶製するにあたり、前記脱炭処理中に、溶鋼中の溶存酸素濃度を、脱炭処理開始前の溶存酸素濃度、上吹き酸素ガス量、及び排ガスの濃度分析結果に基づいて推定し、溶存酸素濃度の推定の都度、溶存酸素濃度の目標値を溶鋼中のマンガンと溶存酸素との平衡関係から定まる平衡溶存酸素濃度として、推定した溶存酸素濃度に応じて上吹きランスからの酸素ガス供給流量を調整することを特徴とする、高マンガン極低炭素鋼の溶製方法。
JP2009194896A 2009-08-26 2009-08-26 高マンガン極低炭素鋼の溶製方法 Active JP5463797B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009194896A JP5463797B2 (ja) 2009-08-26 2009-08-26 高マンガン極低炭素鋼の溶製方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009194896A JP5463797B2 (ja) 2009-08-26 2009-08-26 高マンガン極低炭素鋼の溶製方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011046984A JP2011046984A (ja) 2011-03-10
JP5463797B2 true JP5463797B2 (ja) 2014-04-09

Family

ID=43833605

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009194896A Active JP5463797B2 (ja) 2009-08-26 2009-08-26 高マンガン極低炭素鋼の溶製方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5463797B2 (ja)

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01301815A (ja) * 1988-05-30 1989-12-06 Sumitomo Metal Ind Ltd 低炭素鋼の溶製方法
JP5087840B2 (ja) * 2005-12-22 2012-12-05 Jfeスチール株式会社 真空脱ガス設備における脱炭終点判定方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2011046984A (ja) 2011-03-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN104004877B (zh) 一种降低转炉终点碳氧积的方法
JP6343844B2 (ja) 真空脱ガス設備における溶鋼の精錬方法
JP5904237B2 (ja) 高窒素鋼の溶製方法
JP2011516720A (ja) 極低炭素フェライト系ステンレス鋼の製造方法
JP2011208170A (ja) マンガン含有低炭素鋼の溶製方法
CN114293101A (zh) 一种经济型高等级焊丝钢h04e及其制备方法
JP5601132B2 (ja) 清浄性に優れた低炭素アルミキルド鋼の溶製方法
JP5493997B2 (ja) 転炉精錬方法
KR101484947B1 (ko) 중고탄소강의 제강정련방법
CN113913580B (zh) 一种超低碳低铝结构钢水的生产方法
JP5428447B2 (ja) Rh真空脱ガス装置における溶鋼の精錬方法
JP5614306B2 (ja) マンガン含有低炭素鋼の溶製方法
JP5509876B2 (ja) 低炭素高マンガン鋼の溶製方法
JP4463701B2 (ja) ステンレス溶鋼の脱炭方法および極低炭素ステンレス鋼の製造法
JP5831194B2 (ja) マンガン含有低炭素鋼の溶製方法
JP4687103B2 (ja) 低炭素アルミキルド鋼の溶製方法
JP5463797B2 (ja) 高マンガン極低炭素鋼の溶製方法
JP4844552B2 (ja) 低炭素高マンガン鋼の溶製方法
JP4686917B2 (ja) 真空脱ガス設備における溶鋼の溶製方法
JP4085898B2 (ja) 低炭素高マンガン鋼の溶製方法
JP5621618B2 (ja) マンガン含有低炭素鋼の溶製方法
KR20190076314A (ko) 저탄소강의 정련방법
JP7424350B2 (ja) 溶鋼の脱窒方法および鋼の製造方法
JP4035904B2 (ja) 清浄性に優れた極低炭素鋼の製造方法
KR101008159B1 (ko) 저탄소용강의 정련방법

Legal Events

Date Code Title Description
RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20120321

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20120327

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120423

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20131224

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140106

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5463797

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250